JP5582711B2 - ローション状の塗薬 - Google Patents
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そこで本発明では、万人に害がなく、しかも、やけどやアトピーの治療薬としても優れた効能を発揮するローション状の塗薬を提供することを目的とする。
この塗薬は、PH値が高いだけで、電気分解により還元した自然水である。しかも、この塗薬は、実験により、やけどやアトピーの患部に塗って治療を行うと優れた改善効果を発揮した。
電解還元水のPH値を安定的に保つことができるゲル化剤としては、実験により、カルボキシメチルセルロースナトリウムを用いることが最適であることが見出されたので、本発明の塗薬としては、カルボキシメチルセルロースをゲル化剤として用いることが好ましい。
ところで、一般に室温(15℃〜20℃)の自然水の表面張力は70dyn/cm以上であるが、この電解還元水としては、請求項2に記載したように、表面張力が70dyn/cm以下のものを用いることが好ましい。表面張力が小さいと、患部への電解還元水の浸透がスムーズに進み、患部の改善に効能があるからである。
[ 1.電解還元水を用いたローションの治癒効果についての概要 ]
電解還元水(以下、電解水)を含有するローション(本発明のローション状の塗薬に相当する)を調製し、そのローションにおける熱傷創の治癒効果を検討した。まず、マウス背部皮膚にIII度熱傷創を作成し、創傷直後より電解水ローションおよび対照として生理食塩水(以下、生食)を含んだローションを熱傷創部位にそれぞれ塗布(1日1回)した。そして、その創傷面積を経時的に計測し、さらに熱傷創部位(3日目)の組織学的検討を行った。熱傷創部位に関して、電解水ローションを塗布した群((+)群)および生食ローションを塗布した群((−)群)を比較すると、(+)群において創傷面積の縮小が有意に認められた。さらに、組織学的所見として、(−)群の皮下組織には組織間隙や血管・リンパ管が多く確認できたのに対して、(+)群では少なかった。以上の結果から、電解水ローションは対照と比較して熱傷創部位の治癒に有効性が認められ、熱傷創の治癒を促進する可能性が示唆された。
創傷治癒とは、外傷などで損傷を受けた組織が破壊され、欠損した組織や細胞に対し再生あるいは修復反応が起こる現象のことをいう。外傷には切創、挫創、刺創、熱傷および化学損傷などが含まれる。このような機転で喪失した組織自体と機能を生体が自主的に回復・再構築しようとする一連の生体反応を創傷治癒と呼ばれている。
本実施形態で用いる特殊電解還元性水(以下、電解水と略す:本発明の電解還元水に相当)は、自然水を電気分解で処理し、通電・加圧させて得られた物理的に電子過剰な水であり、特殊なアルカリ性質とマイナスイオンにより、匂いの元となる汚れや細菌の剥離作用によって除去するため、洗浄効果や消臭効果、除菌効果や防塵効果を示すことが知られている(商品名S−100:株式会社エー・アイ・システムプロダクト製造)。また、酸化を防止するため防錆および防腐効果も有している。さらに、乳化剤を添加せずに電解水のみによる乳化作用を示すことも見いだされた。これらの性質を利用して、現在は各種工業製品の洗浄液として広く用いられている。
この電解水の水素イオン濃度指数は、PH12に限らず、PH10.5〜PH14で安定化していればよく、より好ましくはPH11.5〜PH12.5で安定していればよい。
本実施形態では、この電解水の医薬品への応用を検討するため、電解水を用いて熱傷創における治癒の促進効果を検討した。
<4.1.動物の取り扱いについて>
本検討では、7〜10週齢のddy雄性マウスを計20匹使用した。
電解水は、株式会社エー・アイ・システムプロダクト社製の電解水S−100を用いた 。また、各種試薬はすべて特級品を使用した。
電解水および生食ローションは分散媒(電解水あるいは生食)に、撹拌下でゲル化剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学株式会社)を添加し、最終濃度で7%になるようにそれぞれ調製した。
ペントバルビタールナトリウム(ナカライテスク株式会社)の腹腔内注射による麻酔下、橋本らおよび射場らの報告を参考にしてマウス背部を電気バリカンで刈り、さらに除毛クリームで除毛した。そして、背部に300℃に熱した電気ゴテ(白光株式会社製)のコテ先を5秒間当てることで、III度熱傷創を作成した。電気ゴテはコテ先の側面を均一にあて、創傷作成時の圧力が一定になるようにした。なお、実験の不均一性を極力避けるため創傷の作成は同一実験者が行った。
マウス14匹に対して熱傷創を作成した後、7匹ずつ2群に分けた。
そして、それぞれ電解水ローションを塗布した群((+)群)および生食ローションを塗布した群((−)群)とした。まず、創傷を作成した直後にデジタルカメラで創傷部位の撮影を行った(0日目)。創傷作成後、1日1回電解水および生食ローションを各群に塗布し、1,2,3,6,8,10,11,13,15日目に写真撮影を行った。そして、デジタルカメラで得られた画像データをソフトウェアImage J(株式会社バイオアーツ社)を使用して、創傷面積を計測した。創傷作成日の測定値を100%として、各測定日の創傷面積の比率(%)を求め、電解水ローションの治癒効果を検討した。
6匹のマウスの背部1カ所に電気ゴテをあて、同様に熱傷創を作成した。
3匹ずつの2群にわけ、1日1回電解水および生食ローションを各群に塗布した。創傷作成3日後、ジエチルエーテルの吸入麻酔下でサクリファイスし、創傷周辺の組織も含めた皮膚を摘出した。病理検査用20%中性緩衝ホルマリン溶液(関東化学株式会社)で浸漬固定後、4μmの厚さのパラフィン切片を作製し、へマトキシリン・エオジン染色(以下、HE染色)を施し皮膚断面の組織標本を作製した。その後、光学顕微鏡を用いて各標本を写真撮影し、組織観察をした。なお、組織標本の作製およびその評価は、株式会社組織科学研究所に依頼した。
組織学的評価で用いたマウス6匹について、熱傷創作成の3日後サクリファイスし、背部皮膚を摘出した後、皮下組織の毛細血管の状態を確認した。
今回行った実験では、医薬品への応用を検討するため、電解水ローションを用いて熱傷創における治癒効果を検討した。創傷治癒を評価する一般的な指標としては、別の上皮化が完了するまでの日数や創傷面積が用いられている。
<5.1.創傷面積の時間的経過>
図1には、熱傷創作成直後の写真(A)と計測部位を描出したもの(B)を示した。図1Bにおいて、楕円で囲んだ箇所が電気ゴテの接触した部分で、創傷と判断した部位である。
図2の写真に示すように、熱傷創作成後、1日1回電解水および生食ローションを各群に塗布し、0,3,6,8,11日目に写真撮影を行った。そして、(+)群および(−)群の創傷部位を比較した。
<5.3.熱傷作成3日後の皮膚組織画像>
1)熱傷創周囲の鏡検
熱傷創処理3日後のHE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)した創傷部位断面の全体像(2倍)を示した(図3AB)。図3A及び図3A1〜A3は、(+)群の写真で、電解水ローションを塗布したものである。図3B及び図3B1〜B3は、(−)群の写真で、生食ローションを塗布したものである。比較例として、図3C1〜C2は、「正常部位」の写真で、表皮や付属器に異常の見られない部位を示している。また、写真中に示した矢頭印は創傷部位の中心を表し、Epiは表皮、Derは真皮、SCは皮下組織、CMは皮筋をそれぞれ示す。
創傷直下の皮膚の厚さを正常皮膚と比較したところ、(−)群は表皮および真皮に変形が見られるものの、(+)群と同様に有意な差は認められなかった(図3A4、B4)。また、(+)および(−)の創傷直下では、HE染色で青紫色に染色された炎症性細胞(主に好中球)がより多く浸潤していることが観察された。
皮下組織側から創傷付近の血管について確認した。図4は、その損傷付近の血管の拡大写真である。図4に示すように、熱傷創およびその周辺の部位において、(−)群は(+)群と比較し、血管が確認できた。
電解水の熱傷創治癒を確認するため、電解水の創面への塗布効果を検討した。当初、電解水をそのまま塗布したが、すぐに乾いてしまい、湿潤環境が維持できなかった。そこで、創面の湿潤環境を維持するために軟膏剤の調製や被覆材などの使用も検討したが、創面の経時的変化を観察しやすくするため、透明で粘度があり、それ自体には薬理作用がないカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMC-Naと略す)を用いて、ローションの剤形にした。このCMC-Naは、被覆材にも用いられている製剤用高分子で、水に容易に溶け、粘性、安定性、保護コロイド性などの特性を持っていることから、分散剤や結合剤として多く用いられている。実験に際して、粘性のあるローションの剤形にすることで、熱傷創部位に長時間電解水を留め、その治癒の持続効果を図った。
[ 5.結論 ]
III度熱傷創に対する電解水ローションの創傷治癒効果を実験的に検討した。その結果、電解水ローションは熱傷創の改善に有効であり、熱傷創治癒を促進する可能性が示唆された。
〈6.1〉
上記実験では、やけどの効能についてのみ示しているが、他の実験において、アトピー性疾患の患部に、本実施形態の電解水ローションを塗布したところ、2週間程度で、患部が目立たない程度にまで改善される結果を見た。
本実施形態の電解水ローションは殺菌作用を発揮することも見出されているが、口内から取り出した歯周菌に電解水ローションを垂らすと、99%の歯周菌が死滅した。
酪酸は、歯茎を通して体内に侵入すると白血球の免疫細胞を破壊する機能を有するので、本実施形態の電解水ローションによって口内の酪酸を中和することで、体内の免疫細胞を保護することができる。その結果、体内の免疫細胞は体内でガン細胞やエイズウイルス等を破壊するので、本実施形態の電解水ローションを歯の治療薬や歯磨き剤として利用すると、歯槽膿漏や虫歯の治療及び予防になるだけでなく、ガンの治療及び予防、エイズの治療及び予防にもなる。
また、上記実験とは別に行っている保存実験により、本実施形態の電解水ローションは1年以上を経過しても、PH値に変化がないため保存性能のあることがわかっている。つまり、ゲル化剤としては上述したカルボキシメチルセルロースナトリウムがもっとも好ましいという発見があった。
セルロース類としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等が好ましい。
上記実施形態では、電解水ローションとしては、7%の濃度(重量比、電解水93:CMC−Na7)のものを用いたが、これに限られるものではない。用途に応じて、濃度を変えてもよいことはもちろんである。
Claims (4)
- PH10.5〜PH14の電解還元水93wt%に対し、カルボキシメチルセルロースナトリウム7wt%を含有させ、カルボキシメチルセルロースナトリウムによってゲル化させたことを特徴とするローション状の塗薬。
- 請求項1に記載の塗薬において、
前記電解還元水は、
表面張力が70dyn/cm以下であることを特徴とするローション状の塗薬。 - 請求項2に記載の塗薬において、
前記電解還元水は、
表面張力が62dyn/cm以下であることを特徴とするローション状の塗薬。 - 請求項3に記載の塗薬において、
前記電解還元水は、
表面張力が58dyn/cm以下であることを特徴とするローション状の塗薬。
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