JP5579570B2 - 溶接用電源装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電極先端電圧の検出に基づいてフィードバック制御を実施する溶接用電源装置に関するものである。
アーク溶接機等に用いる溶接用電源装置には、例えば特許文献1に開示のようなものがある。溶接用電源装置は、商用電源からの交流入力電力を整流した直流電力をインバータ回路にて高周波交流電力に変換し、溶接トランスにて電圧調整された高周波交流電力を整流回路と直流リアクトルとでアーク溶接に適した直流出力電力に変換している。電源装置にて生成された出力電力はトーチにて支持される電極に供給され、これにより電極先端と溶接対象との間にアークが生じて、溶接対象の溶接が行われるようになっている。
また、このような溶接用電源装置は、出力電流及び出力電圧の検出を行っており、制御装置は、その時々で検出された出力電流及び出力電圧をインバータ回路のPWM制御にフィードバックし、その時々の出力電力を適正値とする制御を実施することで、溶接性能の向上が図られている。
特公平8−103868号公報
ところで、好適なアークを生じさせるためには、電源装置内で検出する出力電圧をインバータ回路の制御値に反映させるのみならず、正にそのアークが生じている電極の先端電圧を検出し、検出した電極先端電圧を制御値に反映させるのが好ましい。
と言うのは、実際には溶接を行うトーチ(電極)と電源装置との間は離間していることが多く、両者間がパワーケーブルを介して接続されているのが一般的な使用形態である。従って、パワーケーブルのケーブル長が使用者毎に異なるため、ケーブル自体の抵抗値が異なるばかりか、ケーブルの敷設状態、例えば余長分を何周も周回させて敷設すると、直線的に敷設した場合や周回数の違いによってインダクタンス値も異なってくる。そのため、更なる溶接性能の向上を図るためには、パワーケーブルを含む電源装置外部の電極までの間での抵抗及びインダクタンスの電圧変動分が無視できないためである。
従って、電源装置内で検出する出力電圧をインバータ回路の制御値に反映させる態様では、真の電極先端電圧とは乖離した電圧値がインバータ回路の制御値に反映されることになり、このことが好適なアークの発生の妨げとなって、更なる溶接性能の向上の妨げとなることが懸念されるものである。
また本発明者らは、直流リアクトルに過飽和特性のものを用いることを検討している。具体的な特性としては、高電流領域では電流平滑のための波形制御に影響を及ぼさない必要最低限のインダクタンス値で一定であり、所定電流値以下の低電流領域ではアーク切れを防止するために電流値の減少に伴ってインダクタンス値が次第に大きくなるものである。このような直流リアクトルを用いる場合においても、電極先端電圧の検出を適切に行うことが望まれている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、制御に用いる電極先端電圧を精度良く検出し、溶接性能の更なる向上に寄与することができる溶接用電源装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、直流電力を高周波交流電力に変換するインバータ回路と、変換した交流電力の電圧調整を行う溶接トランスと、該溶接トランスの二次側交流電力から溶接に適した直流出力電力を生成する直流リアクトルを含む直流変換手段とを備え、生成した前記出力電力の電極への供給に基づいて溶接対象との間に溶接のためのアークを生じさせるものであり、装置内の検出手段にて検出した出力電流と出力電圧とに基づいて前記電極の先端電圧を算出し、算出した先端電圧に基づいて前記インバータ回路を制御する制御手段を更に備えた溶接用電源装置であって、前記直流リアクトルには、高電流領域でインダクタンス値が一定となる通常特性を示し、低電流領域でインダクタンス値が電流値の減少に伴って増大する過飽和特性を示す過飽和リアクトルが用いられており、前記電極を短絡状態として行われ、前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を所定電流値とした時の前記出力電圧の電圧値に基づいて前記電極先端までの経路上の合計抵抗値を算出する抵抗値算出手段と、前記電極を短絡状態として行われ、前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を前記直流リアクトルの通常特性領域に対応する少なくとも1つの電流値とした時からの電流減衰量と前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を前記直流リアクトルの過飽和特性領域に対応する少なくとも2つの電流値とした時からの電流減衰量に基づいて各インダクタンス値を検出し、前記電極先端までの経路上の合計インダクタンス値を先の検出した少なくともつのインダクタンス値の関数として算出するインダクタンス値算出手段とを備え、前記インダクタンス値算出手段では、前記過飽和特性領域におけるインダクタンス値の検出数が、前記通常特性領域におけるインダクタンス値の検出数よりも多くなるように構成されており、前記電極の先端電圧を算出する先端電圧算出手段は、検出する前記出力電圧の電圧値に対して前記電極先端までの経路上の前記合計抵抗値及び前記合計インダクタンス値にかかる電圧変化分を補正して前記先端電圧を算出することをその要旨とする。
この発明では、抵抗値算出手段では、電極を短絡状態として行われ、インバータ回路の動作にて生じる出力電流を所定電流値とした時の出力電圧の電圧値に基づいて電極先端までの経路上の合計抵抗値(装置内部及び外部の抵抗値)が算出される。インダクタンス値算出手段では、同じく電極を短絡状態として行われ、インバータ回路の動作にて生じる出力電流を直流リアクトルの通常特性領域に対応する少なくとも1つの電流値とした時からの電流減衰量とインバータ回路の動作にて生じる出力電流を直流リアクトルの過飽和特性領域に対応する少なくとも2つの電流値とした時からの電流減衰量に基づいて各インダクタンス値が検出され、電極先端までの経路上の合計インダクタンス値(装置内部及び外部のインダクタンス値)が先の検出した少なくともつのインダクタンス値の関数として算出される。そして、先端電圧算出手段はでは、検出する出力電圧の電圧値に対して電極先端までの経路上の合計抵抗値及び合計インダクタンス値にかかる電圧変化分が補正されて先端電圧が算出される。これにより、通常特性領域と過飽和特性領域とを有する直流リアクトルを用いても電極先端までの経路上の合計抵抗値、特に合計インダクタンス値を適切に算出でき、先端電圧が適切に算出される。従って、過飽和特性のリアクトルを用いることとの相乗効果で、全電流領域に亘って一層適切なアーク溶接のための出力電力を生成でき、溶接性能の更なる向上に寄与できる。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の溶接用電源装置において、前記抵抗値算出手段は、前記インダクタンス値算出手段にて前記通常特性領域に対応するインダクタンス値を検出すべく前記出力電流をその電流値に設定した際に、その時の前記出力電圧の電圧値から前記合計抵抗値を算出することをその要旨とする。
この発明では、抵抗値算出手段では、インダクタンス値算出手段にて通常特性領域に対応するインダクタンス値を検出すべく出力電流をその電流値に設定した際に、その時の出力電圧の電圧値から合計抵抗値が算出される。これにより、通常特性領域に対応するインダクタンス値を検出するために設定される出力電流の電流値で合計抵抗値の検出も可能となるため、出力電流の電流値の設定数を少なくできる。つまり、出力電流の電流値の設定毎にインバータ回路を動作させる必要があるため、その動作回数を低減でき、先端電圧の算出を効率良く短時間で行うことが可能となる。
本発明によれば、制御に用いる電極先端電圧を適切に検出し、溶接性能の更なる向上に寄与することができる溶接用電源装置を提供することができる。
本実施形態における溶接用電源装置の構成を示す構成図である。 過飽和リアクトルの単体及び電圧変化分全体のインダクタンス値の変化を説明するための説明図である。 抵抗値及びインダクタンス値の算出手法を説明するための説明図である。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、消耗電極式のアーク溶接機10を示す。アーク溶接機10では、溶接用電源装置11のプラス側出力端子にトーチTHにて支持されるワイヤ電極12が接続され、該電源装置11のマイナス側出力端子に溶接対象Mが接続され、該電源装置11にて生成された直流出力電力がワイヤ電極12に印加されることでアーク溶接が行われる。このとき、ワイヤ電極12は溶接時に消耗するため、ワイヤ供給装置13にて消耗に応じて送給がなされる。ワイヤ電極12及び溶接対象Mには、電源装置11の出力端子に接続されるパワーケーブル14を介して出力電力が供給されるようになっている。
溶接用電源装置11は、商用電源から供給される三相の交流入力電力をアーク溶接に適した直流出力電力に変換するものである。交流入力電力は、ダイオードブリッジ及び平滑コンデンサよりなる整流平滑回路21にて直流電力に変換され、変換された直流電力はインバータ回路22で高周波交流電力に変換される。インバータ回路22は、IGBT等のスイッチング素子TRを4個用いたブリッジ回路にて構成され、制御装置31によるPWM制御が実施される。
インバータ回路22にて生成された高周波交流電力は、溶接トランス23にて所定電圧値に調整された二次側交流電力に変換される。溶接トランス23の二次側交流電力は、ダイオードを用いた整流回路24と直流リアクトル25とで、アーク溶接に適した直流出力電力に変換される。
本実施形態の直流リアクトル25には、過飽和特性を有する過飽和リアクトルが用いられている。図2に示すように、直流リアクトル25の特性は、電流値Ip1を含む所定電流値Iaより大となる高電流領域は、必要最低限のインダクタンス値Laで一定となる通常特性領域A1である。一方、所定電流値Ia以下となる低電流領域は、電流値の減少に伴ってインダクタンス値が直線的に次第に大きくなる過飽和特性領域A2である(電流値Ip2でインダクタンス値Lb)。つまり、このような特性の直流リアクトル25を用いることで、高電流領域ではインダクタンス値が小さいことから電流平滑のための波形制御への影響が小さく、低電流領域ではインダクタンス値が増大することでアーク切れが防止されると言うように、全電流領域に亘って好適な直流出力電力が生成される。
図1に示すように、制御装置31は、インバータ回路22のスイッチング素子TRに対しPWM制御を実施し、直流出力電力をその時々で適正値とする制御を行っている。このとき、制御装置31は、その時々の出力電流I及び出力電圧Vの検出を行い、検出した出力電流I及び出力電圧Vに基づくPWM制御へのフィードバックを行っている。
即ち、電源装置11内のマイナス側出力端子の電源線上に電流センサ33が備えられており、制御装置31は、処理部(CPU)32においてその電流センサ33を介して電源装置11の出力電流Iを検出している。また、整流回路24の直後の電源線間に電圧センサ34が備えられており、制御装置31は、処理部32においてその電圧センサ34を介して電源装置11の出力電圧Vを検出している。制御装置31は、処理部32にてその時々に検出した出力電流I及び出力電圧Vに基づいてPWM制御のデューティの算出を行い、インバータ回路22に出力するPWM制御信号を生成する。
ここで、PWM制御には、制御に用いる出力電圧Vとして、正にアークが生じるワイヤ電極12の先端電圧Vaを用いるのが好ましいが、先端電圧Vaの直接的な検出は困難である。そこで、制御装置31は、電圧センサ34から電極12までの間の電圧変化分を記憶装置(図示略)に予め保持しておき、その時々に検出した出力電圧Vにその電圧変化分の補正を行って先端電圧Vaを得るようにし、算出した先端電圧Vaを用いたPWM制御を実施する。
ところで、電圧センサ34から電極12までの間の電圧変化分には、電源装置11内部の電圧変化分(整流回路24から出力端子までの抵抗値R1とインダクタンス値L1による電圧変化分)と、外部の電圧変化分(出力端子からパワーケーブル14を介しての電極12先端までの抵抗値R2とインダクタンス値L2による電圧変化分)とがある。電源装置11の内部電圧変化分は、使用状態の影響を受けないために予め補正項として先端電圧Vaの算出に組み込むことが可能であるが、外部電圧変化分は、パワーケーブル14のケーブル長や敷設状態(直線敷設や周回敷設、その周回数)等、使用者毎に条件が相違するため、抵抗値R2、特にインダクタンス値L2の変化の影響を大きく受ける。
そのため、使用者がアーク溶接機10を現場に設置し、パワーケーブル14の敷設も含めて正に使用状態としたところで、内部の抵抗値R1及びインダクタンス値L1と、外部の抵抗値R2及びインダクタンス値L2とを合計した抵抗値R及びインダクタンス値Lが測定される。測定した合計抵抗値R及び合計インダクタンス値Lは、制御装置31内に保持される。
尚、本実施形態の電源装置11には、前記合計抵抗値R及び合計インダクタンス値Lを測定する測定モードが備えられており、スイッチ等の選択に基づいて制御装置31が測定モードに移行できるようになっている。測定モードでの測定時においては、ワイヤ電極12の先端が溶接対象Mと短絡状態として行う。因みに、電極12の短絡は、溶接対象Mと直接的な短絡を行わず、電極12を支持するトーチTHの先端部分(ワイヤを除く給電部分)を溶接対象Mと短絡させて行う。この場合、短絡用の特殊治具を作製して対応してもよい。また、ワイヤ電極12の代用としてコンタクト用電極を用いて短絡させてもよい。
以降は、制御装置31の測定モードを中心に説明する。
図3に示すように、先ずインバータ回路22を動作させて、出力電流Iが電流値Ip1まで増大される。この電流値Ip1は、過飽和特性を有する直流リアクトル25の単体において、インダクタンス値Laで一定となる通常特性領域A1の電流値である。実際には図2に示すように、パワーケーブル14の敷設状態等で特性がオフセットするため、合計インダクタンス値Lはオフセットした値La1で一定となるが、そのオフセット分も考慮した通常特性領域A1の電流値に設定される。そして、このような電流値Ip1で保持した区間での平均電圧値Veが測定される。これにより、先ず合計抵抗値Rが次式(a)にて算出される。

R=Ve/Ip1 ・・・ (a)

次いで、インバータ回路22の動作を停止させて、この時の時刻T0から計時が開始される。同時に、時刻T0を起点に刻々と変化する出力電流Iのサンプリングが行われ、時定数に該当する電流減衰量となる電流値ΔIp1(Ip1×36.8%)に到達した時刻をT1とし、その時刻T1−T0間の時間(時定数)τ1が求められる。これにより、通常特性領域A1で変化する合計インダクタンス値La1(リアクトル25の単体ではインダクタンス値La)が次式(b)にて算出される。

La1=R・τ1(=Ve・τ1/Ip1) ・・・ (b)

次いで、再びインバータ回路22を動作させて、出力電流Iが過飽和特性領域A2内の所定電流値Ip2に調整される。調整後、インバータ回路22の動作を再び停止させて、この時の時刻T2から計時が開始される。同時に、時刻T2を起点に刻々と変化する出力電流Iのサンプリングが行われ、時定数に該当する電流減衰量となる電流値ΔIp2(Ip2×36.8%)に到達した時刻をT3とし、その時刻T3−T2間の時間(時定数)τ2が求められる。これにより、過飽和特性領域A2で変化する合計インダクタンス値Lb1(リアクトル25の単体ではインダクタンス値Lb)が次式(c)にて算出される。

Lb1=R・τ2=(Ve・τ2/Ip2) ・・・ (c)

次いで、図2に示すように、算出された通常特性領域A1の合計インダクタンス値La1と過飽和特性領域A2の合計インダクタンス値Lb1とが直線補完により、合計インダクタンス値Lが電流Iの関数L(I)として得られる。そして、このようにして得られた合計インダクタンス値Lの関数L(I)と、先に求めた合計抵抗値Rとが制御装置31内に保持される。以上で、測定モードが終了する。
そして、制御装置31は、溶接動作時において、その時々の出力電流I及び出力電圧Vから次式(d)にて先端電圧Vaを算出している。

Va=V−L(I)・dI/dt−RI ・・・ (d)

因みに、具体的数値で示すと、インバータ回路22のオンに基づいて出力電流Iの電流値Ip1=400[A]を10[ms]間出力させ、その後、インバータ回路22をオフさせる。この間の平均電圧値Veが4[V]であると、上記式(a)から、

R=Ve/Ip1=4/400=0.01[Ω]

と合計抵抗値Rが算出される。
次いで、電流値Ip1が時定数τ1に相当する電流減衰量となる電流値ΔIp1は、

ΔIp1=400×0.368=147[A]

であり、インバータ回路22をオフしてから出力電流Iが400[A]からその147[A]に達するその時定数τ1が3[ms]であれば、上記式(b)から、

La1=R・τ1=0.01×3=0.03[mH]

と通常特性領域A1において、直流リアクトル25の単体のインダクタンス値Laを含む合計インダクタンス値La1が算出される。尚、上記した電流値Ip1は、予め使用する直流リアクトル25の仕様から推定し、過飽和特性領域A2に達しない値に設定する必要がある。
次いで、インバータ回路22を再びオンさせて出力電流Iを過飽和特性領域A2内となる例えばアーク溶接機10の最小電流に相当する電流値Ip2=20[A]として10[ms]間出力させ、その後、インバータ回路22をオフさせる。電流値Ip2が時定数τ2に相当する電流減衰量となる電流値ΔIp2は、

ΔIp2=20×0.368=7[A]

であり、インバータ回路22をオフしてから出力電流Iが20[A]からその7[A]に達するその時定数τ2が10[ms]であれば、上記式(c)から、

Lb1=R・τ2=0.01×10=0.1[mH]

と過飽和特性領域A2において、直流リアクトル25の単体のインダクタンス値Lbを含む合計インダクタンス値Lb1が算出される。
そして、これらLa1=0.03[mH]、Lb1=0.1[mH]の直線補完を行うことで合計インダクタンス値Lの関数L(I)が得られ、先に得られた合計抵抗値Rとで、上記式(d)からその時々の先端電圧Vaが算出できるようになっている。尚、上記に挙げた具体的数値は一例であり、これに限定されない。
このように過飽和特性を有する直流リアクトル25を用いた本実施形態の溶接用電源装置11であっても先端電圧Vaが適切に算出されることから、適切に算出される先端電圧Vaに基づいたインバータ回路22のその時々の制御が一層適切に行われる。従って、過飽和特性のリアクトル25を用いることとの相乗効果で、全電流領域に亘って一層適切なアーク溶接用の直流出力電力の生成ができるものとなっている。
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)制御装置31の測定モードにおいて、合計抵抗値R(内部抵抗値R1+外部抵抗値R2)及び合計インダクタンス値L(内部インダクタンス値L1+外部インダクタンス値L2)を測定する際には、ワイヤ電極12(代用する電極も含む)が上記の手法で短絡状態として行われる。合計抵抗値Rは、インバータ回路22の動作にて生じる出力電流Iを所定電流値Ip1とした時の出力電圧Vの電圧値(平均電圧値Ve)に基づいて算出される。合計インダクタンス値Lは、インバータ回路22の動作にて生じる出力電流Iを直流リアクトル25の通常特性領域A1と過飽和特性領域A2とのそれぞれに対応する2つの電流値Ip1,Ip2とした時の各インダクタンス値La1,Lb1が検出され、この2つのインダクタンス値La1,Lb1の直線補完にて関数L(I)として算出される。このようにして得られた合計抵抗値R及び合計インダクタンス値Lの関数L(I)は制御装置31内に保持される。そして、制御装置31は、溶接動作時において、検出する出力電圧Vの電圧値に対して合計抵抗値R及び合計インダクタンス値Lにかかる電圧変化分の補正を行い、先端電圧Vaを算出している。これにより、通常特性領域A1と過飽和特性領域A2とを有する直流リアクトル25を用いても電極12先端までの経路上の合計抵抗値R、特に合計インダクタンス値Lを適切に算出でき、先端電圧Vaを適切に算出することができる。従って、過飽和特性のリアクトル25を用いることとの相乗効果で、全電流領域に亘って一層適切なアーク溶接のための出力電力を生成でき、溶接性能の更なる向上に寄与することができる。
(2)合計インダクタンス値Lの算出において、直流リアクトル25の通常特性領域A1と過飽和特性領域A2とのそれぞれに対応する2つの電流値Ip1,Ip2とした時に検出する2つのインダクタンス値La1,Lb1からその合計インダクタンス値Lの関数L(I)の算出が行われる。つまり、インダクタンス値La1,Lb1の検出数を少なくしているため、その検出にかかる時間や合計インダクタンス値Lの算出にかかる時間を短くでき、先端電圧Vaの算出にかかる時間を短くすることができる。また、これらの演算負荷を軽減することもできる。
(3)合計抵抗値Rの算出において、通常特性領域A1に対応するインダクタンス値La1を検出すべく出力電流Iをその電流値Ip1に設定した際に、その時の出力電圧Vの電圧値(平均電圧値Ve)からその合計抵抗値Rの算出が行われる。これにより、通常特性領域A1に対応するインダクタンス値La1を検出するために設定される出力電流Iの電流値Ip1で合計抵抗値Rの検出も可能となるため、出力電流Iの電流値の設定数を少なくすることができる。つまり、出力電流Iの電流値の設定毎にインバータ回路22を動作させる必要があるため、その動作回数を低減でき、先端電圧Vaの算出を効率良く短時間で行うことができる。
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、合計インダクタンス値Lの算出において、直流リアクトル25の通常特性領域A1と過飽和特性領域A2とに対応する2つの電流値Ip1,Ip2に対しての2つのインダクタンス値La1,Lb1からその算出を行ったが、3以上のインダクタンス値の検出を行うようにしてもよい。また、各領域A1,A2のそれぞれで2以上のインダクタンス値の検出を行うようにしてもよい。また、電流値の変化に伴ってインダクタンス値が変化する過飽和特性領域A2側でインダクタンス値の検出数を多くしてもよい。
・上記実施形態では、合計抵抗値Rの算出において、通常特性領域A1に対応するインダクタンス値La1を検出すべく出力電流Iを電流値Ip1に設定した際に、その時の出力電圧Vの電圧値(平均電圧値Ve)からその算出を行ったが、合計抵抗値Rの算出のために出力電流Iの電流値を別途設定してもよい。また、インダクタンス値La1の検出の前に合計抵抗値Rの検出を行ったが、インダクタンス値La1,Lb1の検出の間やインダクタンス値Lb1の後に合計抵抗値Rの検出を行ってもよい。
・上記実施形態では、図1の如くインバータ回路22、溶接トランス23、直流変換手段(整流回路24、直流リアクトル25)等にて電源装置11を構成したが、これら各回路構成を適宜変更してもよい。
11 溶接用電源装置
12 ワイヤ電極(電極)
22 インバータ回路
23 溶接トランス
24 整流回路(直流変換手段)
25 直流リアクトル(直流変換手段)
31 制御装置(制御手段、先端電圧算出手段、抵抗値算出手段、インダクタンス値算出手段)
33 電流センサ(検出手段)
34 電圧センサ(検出手段)
M 溶接対象
I 出力電流
Ip1 電流値
Ip2 電流値
V 出力電圧
Va 先端電圧
R 合計抵抗値
L 合計インダクタンス値
La1 インダクタンス値
Lb1 インダクタンス値
L(I) 関数
A1 通常特性領域
A2 過飽和特性領域

Claims (2)

  1. 直流電力を高周波交流電力に変換するインバータ回路と、変換した交流電力の電圧調整を行う溶接トランスと、該溶接トランスの二次側交流電力から溶接に適した直流出力電力を生成する直流リアクトルを含む直流変換手段とを備え、生成した前記出力電力の電極への供給に基づいて溶接対象との間に溶接のためのアークを生じさせるものであり、装置内の検出手段にて検出した出力電流と出力電圧とに基づいて前記電極の先端電圧を算出し、算出した先端電圧に基づいて前記インバータ回路を制御する制御手段を更に備えた溶接用電源装置であって、
    前記直流リアクトルには、高電流領域でインダクタンス値が一定となる通常特性を示し、低電流領域でインダクタンス値が電流値の減少に伴って増大する過飽和特性を示す過飽和リアクトルが用いられており、
    前記電極を短絡状態として行われ、前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を所定電流値とした時の前記出力電圧の電圧値に基づいて前記電極先端までの経路上の合計抵抗値を算出する抵抗値算出手段と、
    前記電極を短絡状態として行われ、前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を前記直流リアクトルの通常特性領域に対応する少なくとも1つの電流値とした時からの電流減衰量と前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を前記直流リアクトルの過飽和特性領域に対応する少なくとも2つの電流値とした時からの電流減衰量に基づいて各インダクタンス値を検出し、前記電極先端までの経路上の合計インダクタンス値を先の検出した少なくともつのインダクタンス値の関数として算出するインダクタンス値算出手段とを備え、
    前記インダクタンス値算出手段では、前記過飽和特性領域におけるインダクタンス値の検出数が、前記通常特性領域におけるインダクタンス値の検出数よりも多くなるように構成されており、
    前記電極の先端電圧を算出する先端電圧算出手段は、検出する前記出力電圧の電圧値に対して前記電極先端までの経路上の前記合計抵抗値及び前記合計インダクタンス値にかかる電圧変化分を補正して前記先端電圧を算出することを特徴とする溶接用電源装置。
  2. 請求項1に記載の溶接用電源装置において、
    前記抵抗値算出手段は、前記インダクタンス値算出手段にて前記通常特性領域に対応するインダクタンス値を検出すべく前記出力電流をその電流値に設定した際に、その時の前記出力電圧の電圧値から前記合計抵抗値を算出することを特徴とする溶接用電源装置。
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