JP5579570B2 - 溶接用電源装置 - Google Patents
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Description
図1は、消耗電極式のアーク溶接機10を示す。アーク溶接機10では、溶接用電源装置11のプラス側出力端子にトーチTHにて支持されるワイヤ電極12が接続され、該電源装置11のマイナス側出力端子に溶接対象Mが接続され、該電源装置11にて生成された直流出力電力がワイヤ電極12に印加されることでアーク溶接が行われる。このとき、ワイヤ電極12は溶接時に消耗するため、ワイヤ供給装置13にて消耗に応じて送給がなされる。ワイヤ電極12及び溶接対象Mには、電源装置11の出力端子に接続されるパワーケーブル14を介して出力電力が供給されるようになっている。
図3に示すように、先ずインバータ回路22を動作させて、出力電流Iが電流値Ip1まで増大される。この電流値Ip1は、過飽和特性を有する直流リアクトル25の単体において、インダクタンス値Laで一定となる通常特性領域A1の電流値である。実際には図2に示すように、パワーケーブル14の敷設状態等で特性がオフセットするため、合計インダクタンス値Lはオフセットした値La1で一定となるが、そのオフセット分も考慮した通常特性領域A1の電流値に設定される。そして、このような電流値Ip1で保持した区間での平均電圧値Veが測定される。これにより、先ず合計抵抗値Rが次式(a)にて算出される。
R=Ve/Ip1 ・・・ (a)
次いで、インバータ回路22の動作を停止させて、この時の時刻T0から計時が開始される。同時に、時刻T0を起点に刻々と変化する出力電流Iのサンプリングが行われ、時定数に該当する電流減衰量となる電流値ΔIp1(Ip1×36.8%)に到達した時刻をT1とし、その時刻T1−T0間の時間(時定数)τ1が求められる。これにより、通常特性領域A1で変化する合計インダクタンス値La1(リアクトル25の単体ではインダクタンス値La)が次式(b)にて算出される。
La1=R・τ1(=Ve・τ1/Ip1) ・・・ (b)
次いで、再びインバータ回路22を動作させて、出力電流Iが過飽和特性領域A2内の所定電流値Ip2に調整される。調整後、インバータ回路22の動作を再び停止させて、この時の時刻T2から計時が開始される。同時に、時刻T2を起点に刻々と変化する出力電流Iのサンプリングが行われ、時定数に該当する電流減衰量となる電流値ΔIp2(Ip2×36.8%)に到達した時刻をT3とし、その時刻T3−T2間の時間(時定数)τ2が求められる。これにより、過飽和特性領域A2で変化する合計インダクタンス値Lb1(リアクトル25の単体ではインダクタンス値Lb)が次式(c)にて算出される。
Lb1=R・τ2=(Ve・τ2/Ip2) ・・・ (c)
次いで、図2に示すように、算出された通常特性領域A1の合計インダクタンス値La1と過飽和特性領域A2の合計インダクタンス値Lb1とが直線補完により、合計インダクタンス値Lが電流Iの関数L(I)として得られる。そして、このようにして得られた合計インダクタンス値Lの関数L(I)と、先に求めた合計抵抗値Rとが制御装置31内に保持される。以上で、測定モードが終了する。
Va=V−L(I)・dI/dt−RI ・・・ (d)
因みに、具体的数値で示すと、インバータ回路22のオンに基づいて出力電流Iの電流値Ip1=400[A]を10[ms]間出力させ、その後、インバータ回路22をオフさせる。この間の平均電圧値Veが4[V]であると、上記式(a)から、
R=Ve/Ip1=4/400=0.01[Ω]
と合計抵抗値Rが算出される。
ΔIp1=400×0.368=147[A]
であり、インバータ回路22をオフしてから出力電流Iが400[A]からその147[A]に達するその時定数τ1が3[ms]であれば、上記式(b)から、
La1=R・τ1=0.01×3=0.03[mH]
と通常特性領域A1において、直流リアクトル25の単体のインダクタンス値Laを含む合計インダクタンス値La1が算出される。尚、上記した電流値Ip1は、予め使用する直流リアクトル25の仕様から推定し、過飽和特性領域A2に達しない値に設定する必要がある。
ΔIp2=20×0.368=7[A]
であり、インバータ回路22をオフしてから出力電流Iが20[A]からその7[A]に達するその時定数τ2が10[ms]であれば、上記式(c)から、
Lb1=R・τ2=0.01×10=0.1[mH]
と過飽和特性領域A2において、直流リアクトル25の単体のインダクタンス値Lbを含む合計インダクタンス値Lb1が算出される。
(1)制御装置31の測定モードにおいて、合計抵抗値R(内部抵抗値R1+外部抵抗値R2)及び合計インダクタンス値L(内部インダクタンス値L1+外部インダクタンス値L2)を測定する際には、ワイヤ電極12(代用する電極も含む)が上記の手法で短絡状態として行われる。合計抵抗値Rは、インバータ回路22の動作にて生じる出力電流Iを所定電流値Ip1とした時の出力電圧Vの電圧値(平均電圧値Ve)に基づいて算出される。合計インダクタンス値Lは、インバータ回路22の動作にて生じる出力電流Iを直流リアクトル25の通常特性領域A1と過飽和特性領域A2とのそれぞれに対応する2つの電流値Ip1,Ip2とした時の各インダクタンス値La1,Lb1が検出され、この2つのインダクタンス値La1,Lb1の直線補完にて関数L(I)として算出される。このようにして得られた合計抵抗値R及び合計インダクタンス値Lの関数L(I)は制御装置31内に保持される。そして、制御装置31は、溶接動作時において、検出する出力電圧Vの電圧値に対して合計抵抗値R及び合計インダクタンス値Lにかかる電圧変化分の補正を行い、先端電圧Vaを算出している。これにより、通常特性領域A1と過飽和特性領域A2とを有する直流リアクトル25を用いても電極12先端までの経路上の合計抵抗値R、特に合計インダクタンス値Lを適切に算出でき、先端電圧Vaを適切に算出することができる。従って、過飽和特性のリアクトル25を用いることとの相乗効果で、全電流領域に亘って一層適切なアーク溶接のための出力電力を生成でき、溶接性能の更なる向上に寄与することができる。
・上記実施形態では、合計インダクタンス値Lの算出において、直流リアクトル25の通常特性領域A1と過飽和特性領域A2とに対応する2つの電流値Ip1,Ip2に対しての2つのインダクタンス値La1,Lb1からその算出を行ったが、3以上のインダクタンス値の検出を行うようにしてもよい。また、各領域A1,A2のそれぞれで2以上のインダクタンス値の検出を行うようにしてもよい。また、電流値の変化に伴ってインダクタンス値が変化する過飽和特性領域A2側でインダクタンス値の検出数を多くしてもよい。
12 ワイヤ電極(電極)
22 インバータ回路
23 溶接トランス
24 整流回路(直流変換手段)
25 直流リアクトル(直流変換手段)
31 制御装置(制御手段、先端電圧算出手段、抵抗値算出手段、インダクタンス値算出手段)
33 電流センサ(検出手段)
34 電圧センサ(検出手段)
M 溶接対象
I 出力電流
Ip1 電流値
Ip2 電流値
V 出力電圧
Va 先端電圧
R 合計抵抗値
L 合計インダクタンス値
La1 インダクタンス値
Lb1 インダクタンス値
L(I) 関数
A1 通常特性領域
A2 過飽和特性領域
Claims (2)
- 直流電力を高周波交流電力に変換するインバータ回路と、変換した交流電力の電圧調整を行う溶接トランスと、該溶接トランスの二次側交流電力から溶接に適した直流出力電力を生成する直流リアクトルを含む直流変換手段とを備え、生成した前記出力電力の電極への供給に基づいて溶接対象との間に溶接のためのアークを生じさせるものであり、装置内の検出手段にて検出した出力電流と出力電圧とに基づいて前記電極の先端電圧を算出し、算出した先端電圧に基づいて前記インバータ回路を制御する制御手段を更に備えた溶接用電源装置であって、
前記直流リアクトルには、高電流領域でインダクタンス値が一定となる通常特性を示し、低電流領域でインダクタンス値が電流値の減少に伴って増大する過飽和特性を示す過飽和リアクトルが用いられており、
前記電極を短絡状態として行われ、前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を所定電流値とした時の前記出力電圧の電圧値に基づいて前記電極先端までの経路上の合計抵抗値を算出する抵抗値算出手段と、
前記電極を短絡状態として行われ、前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を前記直流リアクトルの通常特性領域に対応する少なくとも1つの電流値とした時からの電流減衰量と前記インバータ回路の動作にて生じる前記出力電流を前記直流リアクトルの過飽和特性領域に対応する少なくとも2つの電流値とした時からの電流減衰量とに基づいて各インダクタンス値を検出し、前記電極先端までの経路上の合計インダクタンス値を先の検出した少なくとも3つのインダクタンス値の関数として算出するインダクタンス値算出手段とを備え、
前記インダクタンス値算出手段では、前記過飽和特性領域におけるインダクタンス値の検出数が、前記通常特性領域におけるインダクタンス値の検出数よりも多くなるように構成されており、
前記電極の先端電圧を算出する先端電圧算出手段は、検出する前記出力電圧の電圧値に対して前記電極先端までの経路上の前記合計抵抗値及び前記合計インダクタンス値にかかる電圧変化分を補正して前記先端電圧を算出することを特徴とする溶接用電源装置。 - 請求項1に記載の溶接用電源装置において、
前記抵抗値算出手段は、前記インダクタンス値算出手段にて前記通常特性領域に対応するインダクタンス値を検出すべく前記出力電流をその電流値に設定した際に、その時の前記出力電圧の電圧値から前記合計抵抗値を算出することを特徴とする溶接用電源装置。
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