JP5576720B2 - フラーレンの高濃度飽和炭化水素溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
検出器:紫外吸光度計
カラム:Inertsil ODS-2 4.6×250mm GLサイエンス(株)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール420mLを量り、トルエンを加えて1000mLとする。
希釈条件:調製した試料を約100mg量りとり、移動相にて正確に50mLとする。
<比較例1> メノウ鉢を用いた粉砕混合溶解
(試験方法)
フラーレン混合物20.7mgに植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)を1滴ずつ添加し、メノウ鉢(乳鉢)で攪拌しながら約30gとなるようにした(20分程度)。その後、80℃水浴にて2時間加熱した。これを0.2μmフィルターにて濾過し、試料溶液とした。
(結果)
C60濃度:21.9ppm
なお、乳鉢攪拌のみでは試料溶液の色調が80℃水浴にて加熱したものと比較するとかなり薄かったため、HPLCでの濃度分析を行わなかった。
<比較例2> 超音波処理による溶解
分散、溶解法として汎用されている超音波を用いた溶解について検討を行った。
(試験方法)
フラーレン混合物46.8mgに植物性スクワラン30gを加え、超音波洗浄器(HONDA社製ULTRASONIC CLEANER W-232)にて超音波を30分間照射した。その後、0.2μmフィルターにて濾過し、試料溶液とした。
(結果)
C60濃度:21ppm
超音波処理後、独特の臭いが出てしまった。
<比較例3−1> 攪拌溶解(1)
(試験方法)
表1の条件でフラーレン混合物に植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)を加え、室温(18℃)にて90分間スターラーにより攪拌を行った。その後、この溶液を0.8μmフィルターにて濾過し、試料溶液とした。
(結果)
<比較例3−2> 攪拌溶解(2)
(試験方法)
表2の条件でフラーレン混合物に植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)を加え、50℃の水浴にて90分間スターラーにより攪拌を行った。その後、この溶液を0.8μmフィルターにて濾過し、試料溶液とした。
(結果)
<比較例3−3> 攪拌溶解(3)
攪拌時の温度を高くし、攪拌時間を長くすることで、200ppm以上の試料の調製ができるかどうかについて検討を行った。
(試験方法)
フラーレン混合物24.9mgに植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)51.3gを加え、90℃の水浴にて7時間スターラーにより攪拌を行った。その後、0.8μmフィルターにて濾過を行い、試料溶液とした。
(結果)
C60濃度:109ppm
攪拌時の温度を高くし、攪拌時間を長くしても、200ppm以上の試料は調製できなかった。また、50℃での攪拌溶解時よりも濃度が薄くなってしまい、攪拌温度および攪拌時間との間に相関関係が見られなかった。
<比較例4> 減圧下での溶解
減圧下での溶解は工業的によく用いられる溶解方法である。そこで、フラーレンのスクワランへの溶解にこの方法が有効であるかどうかについて検討を行った。
(試験方法)
フラーレン混合物24.5mgと植物性スクワラン(高級アルコール工業(株)製)45gを減圧しながら(0.1MPa)、150℃オイルバスにて2時間攪拌した。その後、0.8μmフィルターにて濾過し、得られた試料溶液をHPLCにて分析した。
(結果)
30分間処理 C60濃度:83.9ppm
2時間処理 C60濃度:76.4ppm
減圧し始めてから5分位は溶液から泡が出ており、スクワラン中に含まれる沸点の低い不純物が減圧留去されていたのではないかと考えられる。減圧処理を行うことで、色調は幾分濃くなった。また、30分間処理したものと、2時間処理した溶液の色調にあまり変化はなかった。このことより、長時間処理しても200ppm以上溶解することは難しいと考えられる。
<比較例5> トルエン処理
スクワランに溶解する前にフラーレン混合物を一旦トルエンで溶解し、トルエンを留去した後に、スクワランを添加する方法を試みた。これにより、フラーレン中にトルエン分子が入り込み、溶媒に溶解しやすい状態を期待した。
(結果)
ナスフラスコの壁にフラーレンが張り付いてしまい、スクワランにさらに溶解しにくくなってしまった。
<比較例6−1> ボールミル処理(1)
(試験方法)
ボールミル(FRITSCH社製)用容器(500mL)にフラーレン混合物49.9mg、植物性スクワラン(高級アルコール工業(株)製)97.3g、およびボールミルを加え、450rpmにて15分間処理した。その後0.8μmフィルターにて濾過し、得られた試料溶液の色調を比較した。
(結果)
C60濃度:137.3ppm
色調がかなり薄かった。
<比較例6−2> ボールミル処理(2)
(試験方法)
比較例6−1で調製した溶液をさらに1時間処理し、0.8μmフィルターにて濾過し、得られた試料溶液の色調を比較した。
(結果)
比較例6−1よりも試料溶液の色調が濃くなり、処理時間を増やすことで、濃度が濃くなっていることが確認された。しかし、室温にて3〜4時間放置後、細かい不溶物が析出した。フィルター濾過してみると、色調が比較例6−1よりも薄くなり、C60濃度もかなり下がってしまっていると考えられる。
<比較例6−3> ボールミル処理(3)
(試験方法)
比較例6−2で調製した溶液を一晩放置後、さらに2時間処理し、0.8μmフィルターにて濾過し、得られた試料溶液の色調を比較した。
(結果)
比較例6−1よりも試料溶液の色調が薄くなった。
[溶媒溶解調製法の検討]
以上の比較例より、物理溶解ではC60濃度200ppm以上のスクワラン溶液を調製することが難しいことが分かった。そこで、C60が植物性スクワランよりも溶解しやすい置換溶媒に溶解した後に、スクワランを添加、置換溶媒を留去する方法について検討を行った。
(試験方法)
フラーレン混合物約45mgに置換溶媒75mLを加え、室温にて30分間攪拌した。攪拌後、0.2μmフィルターで濾過し、HPLCにてC60含有量を測定した。
(結果)
<実施例1>
(調製方法)
フラーレン混合物41.9mgにトルエン(純正化学(株)製)45.5gを加え、30分間室温で攪拌機により攪拌した。0.2μm PTFEフィルターで濾過後、濾液に植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)66gを加えた。室温にて30分間攪拌後、ロータリーエバポレーターにて、トルエンを留去した(水浴温度80℃, 0.1MPa, 2h)。得られた溶液を試料溶液とし、HPLCにて定量分析を行った。
(結果)
C60濃度:279.1ppm
試料溶液からはトルエン臭が確認されなかった。また、この溶液を室温にて6ヶ月放置しても沈殿は発生せず変色も起こらなかった。
<実施例2>
(調製方法)
フラーレン混合物25mgにトルエン25g(29mL)を加え、30分間室温で攪拌機により攪拌した。0.2μm PTFEフィルターで濾過後、濾液に植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)25gを加えた。室温にて15分間攪拌後、ロータリーエバポレーターにて、トルエンを留去した(水浴温度90℃, 0.1MPa, 4h)。トルエン臭がしなくなったこと確認した後、さらに植物性スクワラン16gを添加し、10分間攪拌し、試料溶液を得た。
(結果)
C60濃度:217ppm
試料溶液からはトルエン臭が確認されなかった。また、ガスクロマトグラフィーによってトルエン濃度を測定したところ59ppmと十分にトルエンを留去できたことが確認できた。また、この溶液を室温にて2ヶ月放置しても沈殿は発生せず変色も起こらなかった。
<実施例3>
(調製方法)
フラーレン混合物20.9mgにトルエン51.9g(60mL)を加え、30分間室温で攪拌機により攪拌した。0.45μm PTFEフィルターで濾過後、濾液に植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)23.7gを加えた。室温にて30分間攪拌後、ロータリーエバポレーターにて、トルエンを留去した(水浴温度90℃, 0.1MPa, 2h)。この溶液に植物性スクワラン23.7gを添加、10分間攪拌後、0.45μmPTFEフィルターで濾過後、試料溶液を得た。
(結果)
C60濃度:233ppm
試料溶液の残留トルエン濃度は86ppmであった。また、この溶液を室温にて2ヶ月放置しても沈殿は発生せず変色も起こらなかった。
<実施例4>
(調製方法)
フラーレン混合物43.4mgにシクロヘキサン(和光純薬工業(株)製)150mLを加え、70℃水浴中で30分間攪拌機により攪拌した。0.2μm PTFEフィルターで濾過後、濾液に植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)17.7gを加えた。室温にて30分間攪拌後、ロータリーエバポレーターにて、シクロヘキサンを留去した(水浴温度80℃, 0.1MPa, 2h)。得られた溶液を試料溶液とし、HPLCにて定量分析を行った。
(結果)
C60濃度:277.0ppm
試料溶液からのシクロヘキサン臭は微かであった。また、この溶液を室温にて6ヶ月放置しても沈殿は発生せず変色も起こらなかった。
<実施例5>
(調製方法)
C60(ALDRICH, 99.9%)8.21mgにトルエン42.4gを加え、45分間室温で攪拌機により攪拌した。次に植物性スクワラン(高級アルコール工業(株)製)16.8gを加え、室温にて35分間攪拌後、ロータリーエバポレーターにて、トルエン留去を20分間行った(水浴温度92℃, 0.1MPa)。この溶液に植物性スクワラン14.15gを添加し混合した。この溶液をさらにロータリーエバポレーター(0.1MPa, 水浴92℃)で1時間乾燥させた。この溶液を0.45μmフィルターにて濾過し、試料溶液を得た。
(結果)
C60濃度:224.6ppm
色調は透明な紫色で、試料溶液からのトルエン臭は若干であった。また、この溶液を室温にて1週間放置しても沈殿は発生せず変色も起こらなかった。
<実施例6>
(調製方法)
フラーレン混合物27.3mgにトルエン24.3gを加え、30分間室温で攪拌機により攪拌した。0.2μm PTFEフィルターで濾過後、濾液に流動パラフィン(和光純薬工業(株)製)24.2gを加えた。室温にて30分間攪拌後、ロータリーエバポレーター(0.1MPa, 80℃)にて40分間トルエン留去を行った。さらに流動パラフィン20.6gを添加し、30分間撹拌機により室温で攪拌し、ロータリーエバポレーター(0.1MPa, 80℃)にて3時間減圧乾燥させた。さらに流動パラフィン9.2gを添加し、その後ロータリーエバポレーター(0.1MPa, 92℃)にて1時間25分間トルエン留去を行い、試料溶液を得た。
(結果)
C60濃度:250.0ppm
試料溶液からはトルエン臭が確認されなかった。また、この溶液を室温にて3週間放置しても沈殿は発生せず変色も起こらなかった。
<実施例7>
(調製方法)
フラーレン混合物24.5mgにトルエン40.8gを加え、30分間室温で攪拌機により攪拌した。0.2μm PTFEフィルターで濾過後、濾液に流動パラフィン(和光純薬工業(株)製)24.3gを加えた。室温にて30分間攪拌後、ロータリーエバポレーター(0.1MPa, 80℃)にて30分間トルエン留去を行った。さらに流動パラフィン16.4gを添加し、30分間撹拌機により室温で攪拌し、ロータリーエバポレーター(0.1MPa, 80℃)にて1時間30分減圧乾燥させた。さらに流動パラフィン15.3gを添加し、その後ロータリーエバポレーター(0.1MPa, 92℃)にて1時間25分間トルエン留去を行い、試料溶液を得た。
(結果)
C60濃度:250.8ppm
試料溶液からはトルエン臭が確認されなかった。また、この溶液を室温にて3週間放置しても沈殿は発生せず変色も起こらなかった。
<比較例7>
(調製方法)
フラーレン混合物42.0mgにn-ヘキサン(和光純薬工業(株)製)150mLを加え、43℃水浴中で2時間攪拌機により攪拌した。0.2μm PTFEフィルターで濾過後、濾液に植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)21.5gを加え、一晩放置した。
(結果)
沈澱が析出した。濾過しヘキサンを留去した後、C60濃度を測定したところ、91ppmであった。
<比較例8>
(調製方法)
フラーレン混合物45.4mgにn-ヘキサン(和光純薬工業(株)製)150mLを加え、65℃水浴中で2時間攪拌機により攪拌した。0.2μm PTFEフィルターで濾過後、濾液に植物性スクワラン((株)岸本特殊肝油工業所製)14.6gを加え、室温にて30分間攪拌後、ロータリーエバポレーターにてヘキサンを留去した(水浴温度80℃, 0.1MPa, 30min)。
(結果)
C60濃度:176.0ppm
以上の実施例1〜7、比較例7、8の試験結果を表5に纏めて示す。
抗酸化活性の評価は、日本老化制御研究所の「抗酸化能測定キット(油脂用)」を用いてキットに示された方法に従って行った。Cu2+試薬とサンプルを混合すると、サンプル中の抗酸化物質の還元作用によりCu+が生成する。Cu+は発色試薬(Bathocuproine)と複合体を形成し、480〜490nmにおいて吸光を示す。発生したCu+よりサンプルの抗酸化能(還元能)を評価した。
(設定群)
1.検体
・スクワラン溶解フラーレン(実施例1〜3と同様にしてトルエン溶媒置換法にて作製)
2.比較対象
・ビタミンE(α-トコフェロール、ナカライテスク(株))
・ビタミンA(レチノール、シグマ アルドリッチ社)
・アスタキサンチン(太陽化学(株))
(結果)
Claims (6)
- フラーレンをトルエンに予め溶解させ、この溶液と沸点150℃以上の油状の飽和炭化水素とを混合し、この混合液からトルエンを減圧留去してフラーレンを溶解する飽和炭化水素溶液を調製することを特徴とするフラーレンの飽和炭化水素溶液の製造方法。
- 飽和炭化水素は、スクワランであることを特徴とする請求項1に記載のフラーレンの飽和炭化水素溶液の製造方法。
- 飽和炭化水素は、流動パラフィンであることを特徴とする請求項1に記載のフラーレンの飽和炭化水素溶液の製造方法。
- フラーレンをシクロヘキサンに予め溶解させ、この溶液と沸点150℃以上の油状の飽和炭化水素とを混合し、この混合液からシクロヘキサンを減圧留去してフラーレンを溶解する飽和炭化水素溶液を調製することを特徴とするフラーレンの飽和炭化水素溶液の製造方法。
- 飽和炭化水素は、スクワランであることを特徴とする請求項4に記載のフラーレンの飽和炭化水素溶液の製造方法。
- 飽和炭化水素は、流動パラフィンであることを特徴とする請求項4に記載のフラーレンの飽和炭化水素溶液の製造方法。
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