JP5576449B2 - 不揮発性記憶装置 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、不揮発性記憶装置に関する。
磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)において、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling MagnetoResistive)効果を示す強磁性トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子をデータ記憶部に用いる構成がある。この構成は、高速・大容量の不揮発性記憶装置として注目を集めている。また、電圧の印加によって、MTJ素子の磁化の方向を変化させる構成がある。このような不揮発性記憶装置において、安定した動作が望まれている。
国際公開第2009/133650号パンフレット
本発明の実施形態は、安定した動作の不揮発性記憶装置を提供する。
本発明の実施形態によれば、記憶部と、制御部と、を含む不揮発性記憶装置が提供される。前記記憶部は、前記磁気記憶素子と、磁界印加部と、を含む。前記磁気記憶素子は、積層体を含む。前記積層体は、第1強磁性層と、第2強磁性層と、第1非磁性層と、を含む。前記第1強磁性層の磁化の方向は、固定されている。前記第2強磁性層の磁化の方向は、変化可能である。前記第1非磁性層は、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられる。前記第1強磁性層、前記第2強磁性層及び前記第1非磁性層は、積層方向に積層されている。前記磁界印加部は、前記積層方向に対して垂直な第1面内方向の成分を含む磁界を前記第2強磁性層に印加する。前記制御部は、前記磁気記憶素子と電気的に接続され、前記磁気記憶素子の前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間の電圧を第1設定電圧から第2設定電圧に変化させる設定動作を実施する。前記第1強磁性層の前記磁化の方向の前記積層方向の成分は、前記第1強磁性層の前記磁化の方向の前記積層方向に対して垂直な平面に投影した成分よりも大きい。前記第2強磁性層は、少なくとも第1方向と第2方向とに変化可能である。前記第1方向を向く前記第2強磁性層の前記磁化の前記積層方向の成分は、前記平面に投影した成分よりも大きい。前記第2方向を向く前記第2強磁性層の前記磁化の前記積層方向の成分は、前記平面に投影した成分よりも大きい。前記第2方向を向く前記第2強磁性層の前記磁化の前記積層方向の成分の向きは、前記第1方向を向く前記第2強磁性層の前記磁化の前記積層方向の成分の向きに対して逆である。前記第1設定電圧から前記第2設定電圧に変化させたときの前記第2強磁性層の異方性磁界の前記積層方向の成分の変化をΔH(エルステッド)とする。前記第1設定電圧のときの前記第2強磁性層の異方性磁界の前記積層方向の成分をH(エルステッド)とする。前記磁界印加部の印加する前記磁界の前記第1面内方向の成分をHext(エルステッド)とする。前記第1設定電圧のときの前記第2強磁性層の異方性磁界の前記第1面内方向の成分をHdx(エルステッド)とする。前記磁界印加部の印加する前記磁界は、
Figure 0005576449
で表される条件を満足する。
第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置を示す模式的断面図である。 図2(a)及び図2(b)は、磁化を示す模式図である。 図3(a)及び図3(b)は、磁化平行状態及び磁化反平行状態を示す模式図である。 図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の動作を示す模式図である。 図5(a)〜図5(e)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の動作を示す模式図である。 図6(a)〜図6(d)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を示すグラフ図である。 図7(a)及び図7(b)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を示す模式図である。 図8(a)〜図8(d)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を示すグラフ図である。 図9(a)〜図9(f)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式図である。 図10(a)及び図10(b)は、第1の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の特性を示すグラフ図である。 図11(a)及び図11(b)は、第1の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の特性を示すグラフ図である。 図12(a)及び図12(b)は、第1の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の特性を示すグラフ図である。 図13(a)及び図13(b)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の別の動作を示すグラフ図である。 図14(a)〜図14(e)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。 図15(a)〜図15(i)は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を示すグラフ図である。 図16(a)及び図16(b)は、第3の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を示すグラフ図である。 図17(a)〜図17(d)は、第4の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を示すグラフ図である。 図18(a)及び図18(b)は、第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。 第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。 第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。 第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。 第6の実施形態に係る不揮発性記憶装置を示す模式図である。
以下に、各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置を示す模式的断面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置610は、記憶部101と、制御部550と、を含む。
記憶部101は、磁気記憶素子110と、磁界印加部MUと、を含む。磁気記憶素子110は、積層体SBを含む。
制御部550は、磁気記憶素子110と電気的に接続される。制御部550は、磁気記憶素子110に対して電圧の印加及び電流の供給を行うことにより、磁気記憶素子110の動作を制御する。
積層体SBは、第1強磁性層10と、第2強磁性層20と、第1非磁性層10nと、を含む。
第1強磁性層10は、主面10aを有する。第1強磁性層10の磁化11の方向は、実質的に固定されている。第2強磁性層20の磁化12の方向は、変化可能である。第1非磁性層10nは、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間に設けられる。第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第1非磁性層10nは、積層方向SD1に積層されている。積層方向SD1は、例えば、主面10aに対して垂直である。
本願明細書において、積層されている状態は、直接接して重ねられる状態の他に、間に他の要素が挿入されて重ねられる場合も含む。
積層体SBの積層方向SD1に対して平行な方向をZ軸方向とする。Z軸に対して垂直な1つの軸をX軸とする。X軸とY軸とに対して垂直な軸をY軸とする。積層体SBに含まれる層の膜面は、X−Y平面に対して平行である。例えば、主面10aは、X−Y平面に対して平行である。
第1強磁性層10の磁化11の方向は、例えば、主面10aに対して垂直な成分を有する。第1強磁性層10の磁化11の方向は、主面10aに対して非平行である。第1強磁性層10の磁化11の方向の積層方向SD1の成分は、第1強磁性層10の磁化11の方向の積層方向SD1に対して垂直な平面(X−Y平面)に投影した成分よりも大きい。
第2強磁性層20の磁化12は、少なくとも第1方向と第2方向とに変化可能である。磁化12の方向が第1方向のときにおいて、磁化12の積層方向SD1の成分は、磁化12のX−Y平面に投影した成分よりも大きい。磁化12の方向が第2方向のときにおいて、磁化12の積層方向SD1の成分は、磁化12のX−Y平面に投影した成分よりも大きい。第2方向の磁化12の積層方向SD1の成分の向きは、第1方向の磁化12の積層方向SD1の成分の向きに対して逆である。
第1強磁性層10の磁化11の方向の積層方向SD1の成分の向きは、例えば、実質的に変化しない。第1強磁性層10の磁化11の方向の変化は、第2強磁性層20の磁化12の方向の変化よりも小さい。第1強磁性層10は、例えば、第1の磁化固定層として機能する。第2強磁性層20は、データを記憶する役割をもつ。第2強磁性層20は、例えば、磁気記憶層として機能する。この例において、第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、垂直磁化膜が用いられる。
第1非磁性層10nは、例えば、第1のスペーサ層として機能する。第1非磁性層10nが絶縁材料に基づくトンネルバリア層である場合に、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20を含む積層体SBは、例えば、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)の構造を有する。積層体SBは、例えば、磁気記憶部として機能する。
磁界印加部MUは、積層方向SD1に対して垂直な第1面内方向の成分を含む磁界MFを第2強磁性層20に印加する。この例において、第1面内方向は、X軸方向である。第1面内方向は、X軸方向に限ることなく、積層方向SD1に対して垂直な任意の方向でよい。
磁界印加部MUは、例えば、第3強磁性層30と第2非磁性層20nとを含む。
第3強磁性層30は、積層方向SD1に沿って積層体SBに積層されている。第3強磁性層30の磁化13の方向は、実質的に固定されている。第3強磁性層30の磁化13の方向のX−Y平面に投影した成分は、第3強磁性層30の磁化13の方向の積層方向SD1の成分よりも大きい。この例において、第3強磁性層30の磁化13の方向のX軸方向の成分は、第3強磁性層30の磁化13の方向のY軸方向の成分、及び、第3強磁性層30の磁化13の方向の積層方向SD1の成分よりも大きい。
第2非磁性層20nは、第3強磁性層30と積層体SBとの間に設けられる。この例では、第3強磁性層30、第2非磁性層20n、第2強磁性層20、第1非磁性層10n及び第1強磁性層10が、この順に積層される。これにより、磁界印加部MUは、X軸方向の成分を含む漏洩磁界LMを第2強磁性層20に印加する。
第3強磁性層30は、例えば、第2の磁化固定層として機能する。この例において、第3強磁性層30には、面内磁化膜が用いられる。第2非磁性層20nは、例えば、第2のスペーサ層として機能する。第2非磁性層20nは、必要に応じて設けられ、省略可能である。
記憶部101は、第1導電層81と、第2導電層82と、をさらに含む。第1導電層81及び第2導電層82は、磁気記憶素子110に含めてもよい。積層体SBは、第1導電層81と第2導電層82との間に配置される。磁界印加部MUは、積層体SBと第1導電層81との間に配置される。第1導電層81は、磁界印加部MUに電気的に接続される。この例では、第1導電層81は、第3強磁性層30に電気的に接続される。第2導電層82は、積層体SBに電気的に接続される。この例では、第2導電層82は、第1強磁性層10に電気的に接続される。
第1導電層81及び第2導電層82は、制御部550と電気的に接続される。磁気記憶素子110は、第1導電層81及び第2導電層82を介して制御部550と直接または間接に接続される。第1導電層81及び第2導電層82は、磁気記憶素子110とは別と見なしても良い。
制御部550は、第1導電層81及び第2導電層82を介して磁気記憶素子110に電圧の印加及び電流の供給を行う。制御部550は、例えば、磁気記憶素子110の第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧を第1設定電圧から第2設定電圧に変化させる設定動作を実施する。第1設定電圧は、例えば、第2設定電圧を印加する直前の状態の電圧(初期電圧)である。第1設定電圧は、接地電位と実質的に同じ電圧でもよいし、接地電位との間に所定の電位差を持つ電圧でもよい。また、第1設定電圧は、浮遊電位でもよい。すなわち、第1設定電圧は、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間に意図的に電圧を印加していない状態における、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧でもよい。第1設定電圧が接地電位との間に所定の電位差を持つ場合、制御部550は、例えば、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間に、第1設定電圧を印加した後、第2設定電圧を印加する。以下では、第1設定電圧を浮遊電位として説明を行う。
磁界印加部MUの印加する磁界MFは、(1)式で表される条件を満足する。この例では、漏洩磁界LMが、(1)式で表される条件を満足する。
Figure 0005576449

(1)式では、第1設定電圧から第2設定電圧に変化させたときの第2強磁性層20の異方性磁界の積層方向SD1の成分の変化ΔH(Oe:エルステッド)と、第1設定電圧のときの第2強磁性層20の異方性磁界の積層方向SD1の成分H(Oe)と、磁界印加部MUの印加する磁界MFの第1面内方向(X軸方向)の成分Hext(Oe)と、第1設定電圧のときの第2強磁性層20の異方性磁界のX軸方向の成分Hdx(Oe)と、が用いられる。ΔHは、より詳しくは、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧が第1設定電圧のときの第2強磁性層20の異方性磁界の積層方向SD1の成分と、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧が第2設定電圧のときの第2強磁性層20の異方性磁界の積層方向SD1の成分と、の差である。
第2強磁性層20の異方性磁界のX軸方向の成分Hdxは、例えば、第2強磁性層20の形状異方性磁界である。第2面内方向を、積層方向SD1及び第1面内方向に対して垂直な方向とする。例えば、第2強磁性層20の第1面内方向の長さが、第2強磁性層20の第2面内方向の長さよりも長い場合、第2強磁性層20は、第1面内方向の成分を含む形状異方性磁界を持つ。このように、第2強磁性層20の異方性磁界の第1面内方向の成分Hdxは、例えば、第2強磁性層20の磁化12に作用する形状異方性磁界である。
ΔHは、例えば、第1設定電圧から第2設定電圧に変化させたときの共鳴周波数の変化を測定することで求めることができる。共鳴周波数の変化は、例えば、スペクトラムアナライザを用いたスペクトル解析によって測定することができる。共鳴周波数の変化は、例えば、磁化の磁場に対するヒステリシス応答の電圧依存性を見ることでもわかる。
ΔHは、例えば、第1設定電圧を印加している状態(例えば電圧を印加していない状態)における磁気抵抗と、第2設定電圧を印加している状態における磁気抵抗と、の変化を測定することによって求めることもできる。
は、例えば、熱揺らぎからHを見積もることができる測定方法である、Thermally excited FMR法(MagNoise測定)によって測定することができる。Hは、例えば、磁化の磁場に対するヒステリシス応答の電圧依存性を見ることでもわかる。
extは、例えば、固着層のパラメータを用いて、下記の論文(1)に記載の式から見積もることができる。
dxは、例えば、第2強磁性層20の飽和磁化Msと形状由来の反磁界係数Ndから見積もることができる。Ndは、下記の論文(2)に記載の式を用いて見積もることができる。
dxの最大値は、4πNdMsである。
論文(1):R. Engel-Herbert and T. Hesjedal, Journal of Applied Physics 97, 074504 (2005)
論文(2):A. Aharoni, Jounal of Applied Physics 83, 3432 (1998)
図2(a)及び図2(b)は、磁化を例示する模式図である。
図2(a)は、垂直磁化膜における磁化を例示している。図2(b)は、面内磁化膜における磁化を例示している。
図2(a)及び図2(b)に表したように、積層方向SD1に対して垂直な1つの方向を面内方向SD2とする。面内方向SD2は、X−Y平面内の方向である。磁化72の面内磁化成分72bは、磁化72をX−Y平面に投影した成分である。面内磁化成分72bは、面内方向SD2に対して平行である。磁化72の垂直磁化成分72aは、磁化72をZ軸方向に投影した成分である。垂直磁化成分72aは、積層方向SD1に対して平行である。
図2(a)に表したように、垂直磁化膜においては、垂直磁化成分72aが、面内磁化成分72bよりも大きい磁化状態を有する。垂直磁化膜において、磁化の方向が膜面に対して略垂直であることが動作特性上望ましい。
図2(b)に表したように、面内磁化膜においては、面内磁化成分72bが、垂直磁化成分72aよりも大きい磁化状態を有する。面内磁化膜において、磁化の方向が膜面に対して略平行であることが動作特性上望ましい。
説明の便宜上、第2強磁性層20から第1強磁性層10に向かう方向を「上」または「上向き」と言う。第1強磁性層10から第2強磁性層20に向かう方向を「下」または「下向き」と言う。
既に説明したように、第1強磁性層10の磁化11の方向は、実質的に固定されている。図1に表したように、磁気記憶素子110において、第1強磁性層10の磁化11の方向は上向きである。ただし、第1強磁性層10の磁化11の方向は、種々の変形が可能である。例えば、第1強磁性層10の磁化11の方向は、下向きでもよい。
例えば、第1導電層81及び第2導電層82を介して、積層体SB及び磁界印加部MUに電圧を印加することができる。積層体SB及び磁界印加部MUに電圧を印加することによって、第2強磁性層20の磁化12の方向を制御することができる。例えば、第2強磁性層20の磁化12の方向に応じて、「0」と「1」とがそれぞれ割り当てられる。これにより、「0」と「1」との情報が、磁気記憶素子110に記憶される。
この例では、例えば、第1方向を向く第2強磁性層20の磁化12の積層方向SD1の成分の向きが上向きであり、第2方向を向く第2強磁性層20の磁化12の積層方向SD1の成分の向きが下向きである。第1方向及び第2方向における磁化12の積層方向SD1の成分の向きは、上記と反対でもよい。
図3(a)及び図3(b)は、磁化平行状態及び磁化反平行状態を例示する模式図である。
図3(a)は、磁化平行状態を例示している。図3(b)は、磁化反平行状態を例示している。
図3(a)に表したように、磁化平行状態では、第1強磁性層10の磁化11の方向の積層方向SD1の成分の向きが、第2強磁性層20の磁化12の方向の積層方向SD1の成分の向きと同じである。
図3(b)に表したように、磁化反平行状態では、第1強磁性層10の磁化11の方向の積層方向SD1の成分の向きが、第2強磁性層20の磁化12の方向の積層方向SD1の成分の向きに対して逆である。
例えば、磁化平行状態が情報の「0」に割り当てられ、磁化反平行状態が情報の「1」に割り当てられる。すなわち、この例では、第2強磁性層20の磁化12を第1方向に向けた状態が、「0」であり、第2強磁性層20の磁化12を第2方向に向けた状態が、「1」である。「0」及び「1」の情報と磁化12の方向との関係は、上記と反対でもよい。第2強磁性層20の磁化12の変化可能な方向は、3つ以上でもよい。これにより、例えば、マルチビットの磁気記憶素子110を実現することができる。
以下では、磁気記憶素子110の構成及び動作の例について説明する。以下の説明は、磁気記憶素子110に加え、実施形態に係る、後述する他の磁気記憶素子にも適用できる。
まず、情報の書き込みの動作について説明する。
図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の動作を例示する模式図である。
図4(a)〜図4(c)は、電圧の印加にともなう第2強磁性層20の磁化12の方向の変化の方法を表す。図4(a)〜図4(c)では、簡単のため、積層体SBだけを図示して説明する。図4(a)は、電圧を印加する前(印加していないとき)の積層体SBを表す。図4(b)は、電圧を印加する前の第2強磁性層20を表す。図4(c)は、電圧を印加している時の第2強磁性層20を表す。図4(a)及び図4(b)において、第2強磁性層20の磁化12の方向の積層方向SD1の成分の向きは、上向きである。
図4(a)及び図4(b)に表したように、電圧を印加する前の状態においては、第2強磁性層20の磁化12の積層方向SD1に投影した成分が、面内方向SD2に投影した成分よりも大きい。磁気記憶素子110に立ち上がり時間の短い電圧(パルス電圧)を印加すると、磁化12の積層方向SD1に沿う方向の異方性磁界が、磁化12の面内方向SD2に沿う方向の有効磁界より小さくなる。この結果、第2強磁性層20の磁化容易軸EAが、積層方向SD1から45度以上面内方向SD2側に傾き、この磁化容易軸EAを軸として磁化12が歳差運動する。その結果、歳差運動中に、磁化12の積層方向SD1に投影した成分が、上向きの状態と下向きの状態とを繰り返す。
図5(a)〜図5(e)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の動作を例示する模式図である。
図5(a)〜図5(e)は、第2強磁性層20の磁化方向の決定方法について説明した図である。図5(a)〜図5(e)では、簡単のため、積層体SBだけを図示して説明する。図5(a)、図5(b)及び図5(d)では、歳差運動中の第2強磁性層20の磁化12の運動状態を球体SP内で考える。球体SPは、例えば、磁化12の歳差運動の軸PA上に中心CTを配置した仮想的な球である。
図5(a)に表したように、歳差運動中においては、第2強磁性層20の磁化12が、球体SPの上半球にある状態と球体SPの下半球にある状態とを繰り返す。ここで、上半球とは、球体SPにおいて、中心CTを含みX−Y平面に対して平行な平面よりも上側の部分である。下半球とは、球体SPにおいて、中心CTを含みX−Y平面に対して平行な平面よりも下側の部分である。この例において、軸PAは、中心CTを含みX−Y平面に対して平行な平面上の線である。この例において、磁化12の磁化ベクトルの原点VOは、中心CTとする。すなわち、歳差運動中においては、磁化12が、中心CTを含みX−Y平面に対して平行な平面をよぎるようになる。
図5(b)及び図5(c)に表したように、磁化平行状態を作るためには、磁化12が上半球にいる状態で電圧をオフにする。電圧をオフにすると、磁界の積層方向SD1の成分の影響が強くなり、磁化12は上向きに緩和する。その結果、第2強磁性層20の磁化12と第1強磁性層10の上向きの磁化11とが、磁化平行状態となる。
図5(d)及び図5(e)に表したように、磁化反平行状態を作るためには、磁化12が下半球にいる状態で電圧をオフにする。この場合、第2強磁性層20の磁化12は、下向きに緩和する。これにより、磁化11と磁化12とが、磁化反平行状態となる。
図6(a)〜図6(d)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示するグラフ図である。
図6(a)〜図6(d)は、電圧による磁化の制御方法について、より詳細に説明した図である。
図6(a)〜図6(d)の横軸は、時間TMである。図6(a)及び図6(c)の縦軸は、印加する電圧の値である。図6(b)及び図6(d)の縦軸は、磁化12の方向の積層方向SD1の成分が上向きの状態を「1」、磁化12の方向の積層方向SD1の成分が下向きの状態を「−1」として正規化した正規化値Mzである。図6(a)及び図6(c)では、第2強磁性層20の磁化12に着目し、磁化状態を球体SPで表している。
図6(a)及び図6(b)に表したように、例えば、磁化12が下向きの状態を初期状態とした場合に、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させる。第2設定電圧SV2は、例えば、パルス電圧である。第2設定電圧SV2は、第1立ち上がり時間tr1、第1時間幅tp1、及び、第1立ち下がり時間tf1を有する。第1立ち上がり時間tr1は、例えば、第1設定電圧SV1と第2設定電圧SV2との間の変化の時間である。第1時間幅tp1は、例えば、第1立ち上がり時間tr1の終点と、第1立ち下がり時間tf1の始点と、の間の時間である。第1時間幅tp1における第2設定電圧SV2の値は、実質的に一定でもよいし、変化してもよい。
第1立ち上がり時間tr1が1nsより短い(例えば10ピコ秒以上1ナノ秒未満)場合、第2強磁性層20の面内方向SD2の磁化投影成分が、積層方向SD1の磁化投影成分より大きくなる。磁化12が歳差運動中、上半球にいる間に第2設定電圧SV2をオフする(第2設定電圧SV2から第1設定電圧SV1に再び変化させる)と、磁化12は上向きに緩和する。すなわち、Mz=1となる。磁化12の歳差運動の周期Cp(秒)は、例えば、磁化容易軸方向の有効磁界の大きさで決まる。
第1時間幅tp1(秒)は、例えば、(Cp/2)×(2n−1)の0.75倍以上1.25倍以下(nは、1以上の整数)である。
これにより、始状態Mz=−1を終状態Mz=1にすることができる。
また、第1立ち上がり時間tr1は、第2強磁性層20の磁化12の方向の変化の緩和時間τrelaxより短くする。これにより、第2強磁性層20において、磁気異方性の変調をより効果的に働かせることができる。すなわち、tr1<τrelaxである第2設定電圧SV2を印加する。これにより、第2強磁性層20の磁化12が、第1方向及び第2方向とは異なる方向を軸として歳差運動する。τrelaxは、例えば、(2)式で求めることができる。
Figure 0005576449

(2)式には、第2強磁性層20のGilvertのダンピング定数α、第2強磁性層20の磁気ジャイロ定数γ(Hz/Oe:ヘルツ/エルステッド)、及び、第2強磁性層20における磁化容易軸方向の有効磁界Heff(Oe)が用いられる。
有効磁界Heffは、例えば、(3)式で求めることができる。
[数3]
eff=H+Hdemag+Hext …(3)
(3)式には、積層方向SD1の結晶磁気異方性H、反磁界Hdemag(Oe)、及び、外部磁界Hext(Oe)が用いられる。
磁化12が下向きを初期状態とした場合、磁化反平行状態を作る方法について以下に示す。この場合、磁化方向を変える必要がないため、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させなくてもよい。
図6(c)及び図6(d)に表したように、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させる場合、第2設定電圧SV2は、第1立ち上がり時間tr1、第2時間幅tp2、及び、第1立ち下がり時間tf1を有する。磁化12が下半球にいる間となるように第2時間幅tp2を選択して第2設定電圧SV2をオフする。これにより、磁化12が下向きに緩和する。すなわち、Mz=−1となる。
第2時間幅tp2(秒)は、例えば、(Cp/2)×2(n)の0.75倍以上1.25倍以下(nは、1以上の整数)である。
これにより、始状態Mz=−1を終状態Mz=−1にすることができる。
第1強磁性層10(参照層)、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20(記憶層)に電圧を印加すると、第1強磁性層10から第2強磁性層20に電流が流れる。その際、第1強磁性層10を通過した電子は、第1強磁性層10の磁化11と同じ方向のスピンを持つようになる。この電子が、第2強磁性層20へ流れると、このスピンの持つ角運動量が第2強磁性層20へ伝達され、第2強磁性層20の磁化12に作用する。すなわち、いわゆるスピントランスファトルクが働く。第2強磁性層20の磁化方向の変化は、このスピントランスファトルクを利用しているのではない。ここでは電圧印加時に生じる磁気異方性の変調を利用している。このことは、電圧印加した時の磁気記憶素子110の保磁力(Hc)や共鳴周波数が変化していることから確かめることができる。また、本実施形態に係る第2強磁性層20の磁化12の方向を変化させるために印加する第2設定電圧SV2の極性は、一方向でよい。
前述のように、第2設定電圧SV2の印加は、制御部550によって実施される。すなわち、磁気記憶素子110に対する情報の書き込みまたは消去が、制御部550によって実施される。設定動作は、例えば、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させることによって、第2強磁性層20の磁化12の方向を第1方向から第2方向または第2方向から第1方向に変化させる動作である。制御部550は、例えば、磁化12が第1方向を向いている状態において第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させることにより、磁化12を第2方向に変化させ、磁化12が第2方向を向いている状態において第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させることにより、磁化12を第1方向に変化させる。
次に、「読み出し」動作の例について説明する。
磁気記憶素子110における第2強磁性層20の磁化12の方向の検出は、例えば、磁気抵抗効果を利用して実施される。磁気抵抗効果においては、各層の磁化の相対的な向きにより電気抵抗が変わる。磁気抵抗効果を利用する場合、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間にセンス電流を流し、磁気抵抗が測定される。センス電流の電流値は、例えば、第2強磁性層20の磁化12の向きがスピントランスファトルクによって変化しない程度に設定される。
図7(a)及び図7(b)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示する模式図である。
これらの図は、磁気記憶素子110における「読み出し」動作の際の積層体SBの状態を例示している。これらの図では、磁界印加部MU、第1導電層81及び第2導電層82は省略されている。
図7(a)は、第1強磁性層10の磁化11の方向が、第2強磁性層20の磁化12の方向と同じ場合を例示している。図7(b)は、第1強磁性層10の磁化11の方向が、第2強磁性層20の磁化12の方向と反平行(逆向き)である場合を例示している。
図7(a)及び図7(b)に表したように、積層体SBにセンス電流61を流し、電気抵抗を検出する。ノーマルタイプの磁気抵抗効果においては、図7(a)の状態の抵抗は、図7(b)の状態の抵抗よりも低い。リバースタイプの磁気抵抗効果においては、図7(a)の状態の抵抗は、図7(b)の状態の抵抗よりも高い。
これらの抵抗が互いに異なる複数の状態のそれぞれに、それぞれ「0」と「1」とを対応付けることにより、2値データの記憶の読み出しが可能となる。なお、センス電流61の向きは、図7(a)及び図7(b)に例示した方向に対して逆向きでも良い。
図8(a)〜図8(d)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示するグラフ図である。
図8(a)〜図8(d)の横軸は、時間TMである。図8(a)及び図8(c)の縦軸は、印加する電圧である。図8(b)及び図8(d)の縦軸は、正規化値Mzである。
図8(a)及び図8(b)は、磁気記憶素子110の第1の読み出し方法を表す。図8(c)及び図8(d)は、磁気記憶素子110の第2の読み出し方法を表す。磁気記憶素子110では、2つの読み出し方法を用いることができる。すなわち、磁気記憶素子110では、センス電流61の供給に2つの方法を用いることができる。
図8(a)及び図8(b)に表したように、磁気記憶素子110の第1の読み出し方法では、磁気記憶素子110の第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧を第1基準電圧CV1から第1読み出し電圧RV1に変化させる。第1基準電圧CV1は、第1設定電圧SV1と同様に、接地電位でもよいし、接地電位との間に所定の電位差を有してもよいし、浮遊電位でもよい。以下では、第1基準電圧CV1を浮遊電位として説明を行う。第1読み出し電圧RV1は、例えば、パルス電圧である。第1読み出し電圧RV1の極性は、第2設定電圧SV2の極性に対して逆向きである。例えば、第2設定電圧SV2がプラスの極性のときには、第1読み出し電圧RV1にマイナスの極性を用いる。第1読み出し電圧RV1の立ち上がり時間tr1rは、緩和時間τrelaxより長くてもよいし、緩和時間τrelaxより短くてもよい。第1読み出し電圧RV1の印加により、磁気記憶素子110にセンス電流61が供給され、第2強磁性層20の磁化12の方向を読み出すことができる。
電圧による異方性変調において、逆極性の電圧の印加による磁化容易軸EAの方向の変化は、順極性の電圧の印加による磁化容易軸EAの方向の変化よりも小さい。磁化容易軸EAの方向は、逆極性の電圧の印加では実質的に変化しない。すなわち、逆極性の電圧の印加では、磁化の面内方向SD2の成分が、磁化の積層方向SD1の成分よりも大きくならない。これにより、第1読み出し電圧RV1の印加では、センス電流61の供給にともなう誤書き込みが抑制される。
図8(c)及び図8(d)に表したように、磁気記憶素子110の第2の読み出し方法では、磁気記憶素子110の第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧を第2基準電圧CV2から第2読み出し電圧RV2に変化させる。第2基準電圧CV2は、第1設定電圧SV1及び第1基準電圧CV1と同様に、接地電位でもよいし、接地電位との間に所定の電位差を有してもよいし、浮遊電位でもよい。以下では、第2基準電圧CV2を浮遊電位として説明を行う。第2読み出し電圧RV2は、例えば、パルス電圧である。第2読み出し電圧RV2の極性は、第2設定電圧SV2の極性と同じである。第2読み出し電圧RV2の立ち上がり時間tr2rは、緩和時間τrelaxよりも長い。
立ち上がり時間tr2rが緩和時間τrelaxよりも長い場合には、電圧を印加したときに第2強磁性層20の磁気異方性が変調されても、磁化12が面内方向SD2を向いた状態にならない。従って、第2読み出し電圧RV2の印加により、磁気記憶素子110にセンス電流61が供給され、第2強磁性層20の磁化12の方向を読み出すことができる。そして、第2読み出し電圧RV2の印加においても、センス電流61の供給にともなう誤書き込みが抑制される。
上記第1の読み出し方法及び第2の読み出し方法は、例えば、制御部550によって実施される。制御部550は、例えば、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧を第1基準電圧CV1から第1読み出し電圧RV1に変化させる第1読み出し動作を、さらに実施する。制御部550は、例えば、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧を第2基準電圧CV2から第2読み出し電圧RV2に変化させる第2読み出し動作を、さらに実施する。制御部550は、第1読み出し動作と第2読み出し動作との双方を実施してもよいし、第1読み出し動作と第2読み出し動作とのいずれか一方のみを実施してもよい。
次に、本願発明者が実施したシミュレーションの結果について説明する。
図9(a)〜図9(f)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式図である。
図9(a)〜図9(f)は、シミュレーションで検討した磁気記憶素子111〜113(シミュレーションモデル)の構成を表す。
図9(a)は、磁気記憶素子111の模式的平面図であり、図9(b)は、磁気記憶素子111の模式的断面図である。
図9(c)は、磁気記憶素子112の模式的平面図であり、図9(d)は、磁気記憶素子112の模式的断面図である。
図9(e)は、磁気記憶素子113の模式的平面図であり、図9(f)は、磁気記憶素子113の模式的断面図である。なお、図9(a)〜図9(f)では、第1導電層81、第2導電層82及び制御部550が省略されている。
シミュレーションは、モンテカルロ法によるランジュバン方程式の数値積分で行われる。より具体的には、磁場中での磁化ベクトルの歳差運動を記述する微分方程式であるLLG(Landau-Lifshitz-Gilbert)方程式に、スピントルクの効果及び熱揺らぎを反映したランダム磁場を加えた方程式の数値計算をマクロスピンモデルで行う。また、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させることによって第2強磁性層20の磁気異方性が変化する効果は、例えば、前記方程式において、第2強磁性層20の異方性磁界を変化させることによって取り入れることができる。
図9(a)及び図9(b)に表したように、磁気記憶素子111では、X−Y平面に投影した形状が、実質的に円形である。磁気記憶素子111では、第2強磁性層20のX軸方向(第1面内方向)に沿う長さLx1が、第2強磁性層20のY軸方向(第2面内方向)に沿う長さLy1と実質的に同じである。このため、磁気記憶素子111の第2強磁性層20は、実質的に形状異方性磁界を持たない。
図9(c)及び図9(d)に表したように、磁気記憶素子112では、X−Y平面に投影した形状が、楕円形である。磁気記憶素子112では、第2強磁性層20のX軸方向の長さLx2が、第2強磁性層20のY軸方向の長さLy2よりも短い。このため、磁気記憶素子112の第2強磁性層20は、Y軸方向の成分を含む形状異方性磁界SMyを持つ。磁気記憶素子112では、第2強磁性層20の形状異方性磁界SMyに対して垂直な方向に、磁界印加部MUからの磁界MFが印加される。
図9(e)及び図9(f)に表したように、磁気記憶素子113では、X−Y平面に投影した形状が、楕円形である。磁気記憶素子113では、第2強磁性層20のX軸方向の長さLx3が、第2強磁性層20のY軸方向の長さLy3よりも長い。このため、磁気記憶素子113の第2強磁性層20は、X軸方向の成分を含む形状異方性磁界SMxを持つ。磁気記憶素子113では、第2強磁性層20の形状異方性磁界SMxに対して平行な方向に、磁界印加部MUからの磁界MFが印加される。
シミュレーションでは、第2強磁性層20の異方性磁界のX軸方向の成分Hdxを、第2強磁性層20の形状異方性磁界とし、第2強磁性層20の形状異方性磁界の方向と、磁界印加部MUの磁界MFの方向との関係について検討する。この例では、第2強磁性層20の異方性磁界の第2面内方向(Y軸方向)の成分をHdyとする。この例では、Hdxの方向が、磁界MFの方向に対して実質的に平行であり、Hdyの方向が、磁界MFの方向に対して実質的に垂直である。
磁気記憶素子111の第2強磁性層20は、形状異方性磁界を持たない。このため、磁気記憶素子111では、Hdx=0Oe、Hdy=0Oeである。磁気記憶素子112の第2強磁性層20は、第2面内方向の成分を含む形状異方性磁界SMyを持つ。磁気記憶素子112では、例えば、Hdx=0Oe、Hdy=1000Oeである。磁気記憶素子113の第2強磁性層20は、第1面内方向の成分を含む形状異方性磁界SMxを持つ。磁気記憶素子113では、例えば、Hdx=500Oe、Hdy=0Oeである。
シミュレーションでは、磁気記憶素子111〜113のそれぞれについて、第1モデルM1〜第9モデルM9の9個のモデルが採用される。
第1モデルM1では、Hext=100Oeの第3強磁性層30(磁界印加部MU)が採用される。
第2モデルM2では、Hext=200Oeの第3強磁性層30が採用される。
第3モデルM3では、Hext=300Oeの第3強磁性層30が採用される。
第4モデルM4では、Hext=400Oeの第3強磁性層30が採用される。
第5モデルM5では、Hext=500Oeの第3強磁性層30が採用される。
第6モデルM6では、Hext=600Oeの第3強磁性層30が採用される。
第7モデルM7では、Hext=700Oeの第3強磁性層30が採用される。
第8モデルM8では、Hext=800Oeの第3強磁性層30が採用される。
第9モデルM9では、Hext=900Oeの第3強磁性層30が採用される。
シミュレーションでは、磁気記憶素子111〜113の第1モデルM1〜第9モデルM9のそれぞれにおいて、H=1000Oeの第2強磁性層20が採用される。
そして、シミュレーションでは、磁気記憶素子111〜113の第1モデルM1〜第9モデルM9のそれぞれについて、電圧値の異なる第2設定電圧SV2を複数回印加する場合を検討する。これにより、0Oe〜1000Oeの範囲のΔHを生じさせたときの、スイッチング時間ST(ns:ナノ秒)が評価される。スイッチング時間STは、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させた後、第2強磁性層20の磁化12が、第1方向から第2方向または第2方向から第1方向に変化するまでの時間である。この例では、磁化12が上向きから下向きに変化するまでの時間、または、磁化12が下向きから上向きに変化するまでの時間である。以下では、磁化12の第1方向から第2方向への変化、または、磁化12の第2方向から第1方向への変化を、スイッチングと称す。シミュレーションでは、計算によってスイッチング時間STを求める。実験では、例えば、立ち上がり時間がτrelaxより短いパルスを磁気記憶素子に印加し、通電中の抵抗値の変化をサンプリングオシロスコープで観察することにより、磁化12の反転の周期を観察することができる。この反転周期からスイッチング時間STを把握することが可能である。
図10(a)及び図10(b)、図11(a)及び図11(b)、及び、図12(a)及び図12(b)は、第1の実施形態に係る別の不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
図10(a)及び図10(b)は、磁気記憶素子111の第1モデルM1〜第9モデルM9のシミュレーション結果を表すグラフ図である。
図11(a)及び図11(b)は、磁気記憶素子112の第1モデルM1〜第9モデルM9のシミュレーション結果を表すグラフ図である。
図12(a)及び図12(b)は、磁気記憶素子113の第1モデルM1〜第9モデルM9のシミュレーション結果を表すグラフ図である。
図10(a)、図11(a)及び図12(a)の横軸は、Hext(Oe)であり、縦軸は、ΔH(Oe)である。
図10(b)、図11(b)及び図12(b)の横軸は、ΔH(Oe)であり、縦軸は、スイッチング時間ST(ns)である。
図10(a)には、上記条件の磁気記憶素子111において、(1)式の条件を満足する領域AR1が示される。領域AR1は、図10(a)において網掛けを行った部分である。図10(a)に表される特性CT1は、磁気記憶素子111における(1)式の右辺部分に対応する。HextとΔHとが、領域AR1内にある関係のときに、磁気記憶素子111において、(1)式の条件を満足する。
図10(b)に表したように、磁気記憶素子111では、第1モデルM1〜第9モデルM9のそれぞれで、スイッチングが観察される。スイッチング時間STは、Hextを大きくするほど短くなる。また、スイッチング時間STは、ΔHを大きくするほど短くなる。このように、スイッチング時間STは、Hext及びΔHに相関する。
図10(b)に表される第1モデルM1〜第9モデルM9のそれぞれの特性では、スイッチング時間STが、2ns以下となる範囲を表している。例えば、第2モデルM2では、ΔHを約700Oe以下とする場合に、スイッチング時間STが、2nsより大きくなる。本願発明者らは数値解析の検討結果から、歳差運動の周期が2ns以上となると不安定化することを見出した。これは、上半球または下半球をよぎっている時間で考えると、パルス幅として用いるのは、その半分以下の時間とすることが望ましい。そこで、1ns以下で反転しているケースを重視している。このため、シミュレーションでは、スイッチング時間STが、1ns以下となる条件を検討する。例えば、磁気記憶素子111の第2モデルM2において、1ns以下のスイッチング時間STとなる範囲は、ΔH>840Oeである。シミュレーションにおいてスイッチング時間STが1ns以下となる範囲は、(1)式の条件を満足する範囲である。このように、Hext及びΔHは、(1)式の条件を満足し、かつ1ns以下のスイッチング時間STとなる範囲に設定することが好ましい。
図11(a)には、上記条件の磁気記憶素子112において、(1)式の条件を満足する領域AR2が示される。領域AR2は、図11(a)において網掛けを行った部分である。図11(a)に表される特性CT2は、磁気記憶素子112における(1)式の右辺部分に対応する。HextとΔHとが、領域AR2内にある関係のときに、磁気記憶素子112において、(1)式の条件を満足する。磁気記憶素子111と磁気記憶素子112とは、ともにHdx=0Oeである。従って、磁気記憶素子112の特性CT2は、磁気記憶素子111の特性CT1と同じである。
図11(b)に表したように、磁気記憶素子112では、第1モデルM1〜第9モデルM9のそれぞれで、スイッチングが観察される。磁気記憶素子112においても、スイッチング時間STは、Hext及びΔHに相関する。
図12(a)には、上記条件の磁気記憶素子113において、(1)式の条件を満足する領域AR3が示される。領域AR3は、図12(a)において網掛けを行った部分である。図12(a)に表される特性CT3は、磁気記憶素子113における(1)式の右辺部分に対応する。HextとΔHとが、領域AR3内にある関係のときに、磁気記憶素子113において、(1)式の条件を満足する。磁気記憶素子113のHdxは、500Oeであり、磁気記憶素子111のHdx及び磁気記憶素子112のHdxと異なる。従って、磁気記憶素子113の特性CT3は、磁気記憶素子111の特性CT1及び磁気記憶素子112の特性CT2と異なる。
磁気記憶素子113の領域AR3は、磁気記憶素子111の領域AR1及び磁気記憶素子112の領域AR2よりも狭い。すなわち、磁気記憶素子113では、磁化12をスイッチングさせるために必要なHextの下限値及びΔHの下限値が、磁気記憶素子111及び磁気記憶素子112に比べて高い。磁気記憶素子113において磁化12をスイッチングさせるためには、磁気記憶素子111及び磁気記憶素子112に比べて、HextまたはΔHを大きくする必要がある。
図12(b)に表したように、磁気記憶素子113では、第3モデルM3〜第9モデルM9で、2ns以下のスイッチング時間STのスイッチングが観察される。一方、磁気記憶素子113の第1モデルM1及び第2モデルM2では、この計算範囲の中では、2ns以下のスイッチング時間STとなるスイッチングが観察されていない。磁気記憶素子113おいてΔHを1000Oeとした場合に必要となるHextは、(1)式からHext>300Oeである。このように、ΔHを1000Oe以下とした場合、Hext<300Oeの範囲では、(1)式の条件が満足されない。
本願発明者は、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときに、磁化12がスイッチングする場合と、スイッチングしない場合とがある点に着目した。そして、本願発明者は、磁気記憶素子110の構成や第2設定電圧SV2の電圧値などを変化させて検討を重ねることにより、(1)式の条件を満たす場合に、磁化12が適切にスイッチングすることを見出した。このように、(1)式の条件を満足する場合に磁化12が適切にスイッチングすることは、本願発明者の検討によって導き出された新たな効果である。
本実施形態に係る不揮発性記憶装置610では、(1)式の条件を満足するように、磁気記憶素子110及び制御部550を構成する。これにより、第2強磁性層20の磁化12の方向を適切に変化させることができる。本実施形態に係る不揮発性記憶装置610では、安定した動作を得ることができる。
また、本願発明者は、Hdxを小さくすることによって、磁化12のスイッチングする条件が、広くなることを見出した。さらに、本願発明者は、磁化12のスイッチングに対するHdyの影響が、Hdxの影響よりも小さいことを見出した。例えば、第2強磁性層20の第1面内方向の長さを第2強磁性層20の第2面内方向の長さよりも短くすることによって、Hdxを小さくすることができる。これにより、例えば、磁化12のスイッチングに必要となるΔHの値を低減させることができる。これにより、例えば、第2強磁性層20などの材料選択の自由度を高めることができる。例えば、Hdxを500Oe以下とする。これにより、ΔHの値を抑えることができる。Hdxは、前述のように、第2強磁性層20の飽和磁化Msと形状由来の反磁界係数Ndから見積もることができる。Ndは、論文(2)に記載の式を用いて見積もることができる。
図10(b)及び図11(b)に表したように、Hdxを小さくし、Hextを600Oe以上とした場合には、400Oe以上のΔHの範囲において、スイッチング時間STの変化が小さい。例えば、スイッチング時間STは、0.5nsと一定である。ΔHの値は、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときの第2強磁性層20の周囲の磁界の影響などによって、変化する場合がある。図12(b)の計算結果を加味すると、Hdxを0.5H以下とし、Hextを600Oe以上とする。これにより、例えば、ΔHの変化にともなうスイッチング時間STの変化を抑えることができる。不揮発性記憶装置610の動作を、より安定させることができる。
以下、磁気記憶素子110の各層の構成の例について説明する。以下の説明は、実施形態に係る任意の磁気記憶素子に適用できる。
第1強磁性層10には、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む金属材料を用いることが好ましい。さらに、上記の群から選択された少なくともいずれかと、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの金属を含む合金を用いることができる。
第1強磁性層10は、含まれる磁性材料の組成や熱処理により磁気異方性などの特性を調整することができる。また、第1強磁性層10には、TbFeCo及びGdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。第1強磁性層10には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等は、下地層との組み合わせで垂直磁化膜となる。膜の結晶配向方向を制御することで、Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等を、第1強磁性層10に用いることができる。
第1非磁性層10nの単位面積当たりの抵抗値は、例えば、1Ωμm以上20Ωμm以下である。第1非磁性層10nには、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ハフニウム、セリウム、ストロンチウム、タンタル及びチタンなどの酸化物、窒化物、並びにフッ化物などが用いられる。例えば、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2への変化による第1強磁性層10の磁気異方性エネルギーの変化は、第1強磁性層10と第1非磁性層10nとの界面の蓄積電荷量に依存する。このため、第1非磁性層10nの材料としては、高い比誘電率を室温において有する常誘電体を用いることが好ましい。
書き込みと読み出しの電圧極性を同じとする場合(第2の読み出し方法の場合)、第2強磁性層20のスピン偏極度は、高すぎないことが望ましい。これにより、読み出し時において、スピントランスファトルクによる誤書き込みを抑えることができる。また、書き込みと読み出しの電圧マージンを広げることができる。
第2強磁性層20には、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)等の磁性元素、磁性元素の合金、磁性を含む合金、酸化物(フェライト)、並びに希土類元素ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)及びテルビウム(Tb)などと磁性元素を含む化合物及び合金等からなる層を用いることができる。
第2強磁性層20には、磁性遷移金属としてのFe、Co及びNiのいずれかとPt、Pd、Ru及びReのいずれかとの合金、規則合金又は多層積層構造からなる層を用いることもできる。第2強磁性層20は、第2強磁性層20と第1非磁性層10nとの界面における電界によって、面内磁気異方性と垂直磁気異方性との間での遷移が起こる膜厚を有する。第2強磁性層20の膜厚は、例えば、0.5nm以上3.5nm以下である。
書き込みと読み出しの電圧極性を変化させる場合(第1の読み出し方法の場合)、書き込みと読み出しの電圧マージンは広くとることができる。この場合、第2強磁性層には、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)等の磁性元素、磁性元素の合金、磁性を含む合金、酸化物(フェライト)、並びに希土類元素ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)及びテルビウム(Tb)などと磁性元素を含む化合物及び合金等からなる層を用いることができる。また、第1の読み出し方法を用いる場合、第2強磁性層20には、磁性遷移金属としてのFe、Co及びNiのいずれかとPt、Pd、Ru及びReのいずれかとの合金、規則合金又は多層積層構造からなる層を用いることもできる。第2強磁性層20としてハーフメタルを用いてもよい。
第3強磁性層30には、例えば、第1強磁性層10及び第2強磁性層20と実質的に同じ材料が用いられる。第2非磁性層20nには、例えば、非磁性金属層や非磁性トンネルバリア層などが用いられる。
非磁性金属層には、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)及びビスマス(Bi)よりなる群から選択されたいずれかの非磁性金属、または、上記の群から選択された少なくともいずれか2つ以上の非磁性金属を含む合金を用いることができる。
非磁性トンネルバリア層は、絶縁材料を含む。非磁性トンネルバリア層には、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む、酸化物、窒化物又は弗化物を用いることができる。
非磁性トンネルバリア層は、例えば、Al、SiO、MgO、AlN、Ta−O、Al−Zr−O、Bi、MgF、CaF、SrTiO、AlLaO、Al−N−O、または、Si−N−Oなどでもよい。非磁性トンネルバリア層は、例えば、非磁性半導体(ZnOx、InMn、GaN、GaAs、TiOx、Zn、Te、または、これらに遷移金属がドープされたもの)などでもよい。
非磁性トンネルバリア層の厚さは、約0.2ナノメートル(nm)以上2.0nm以下程度の範囲の値とすることが望ましい。これにより、例えば、絶縁膜の均一性を確保しつつ、抵抗が過度に高くなることが抑制される。
例えば、第1非磁性層10nと第2非磁性層20nとが、絶縁体(非磁性トンネルバリア層)を含み、第2強磁性層20が、第1非磁性層10n及び第2非磁性層20nと接しているとする。この場合では、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときに、第2強磁性層20と第1非磁性層10nとの界面にかかる電界の向きが、第2強磁性層20と第2非磁性層20nとの界面にかかる電界の向きと実質的に同じとなる。これにより、例えば、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときの、第2強磁性層20の磁気異方性の変化を大きくすることができる。
第1導電層81及び第2導電層82には、例えば、導電性の磁性材料または導電性の非磁性材料が用いられる。導電性の磁性材料としては、例えば、第1強磁性層10及び第2強磁性層20に用いられる材料と実質的に同じ材料を挙げることができる。
第1導電層81及び第2導電層82に用いられる導電性の非磁性材料には、例えば、金(Au)、銅(Cu)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、上記の群から選択された2つ以上の金属を含む合金を用いることができる。さらに、第1導電層81及び第2導電層82に用いられる導電性の非磁性材料は、上記の群から選択された少なくともいずれかの元素を含む、導電性窒化物、導電性酸化物及び導電性弗化物の少なくともいずれかでもよい。第1導電層81及び第2導電層82に用いられる導電性の非磁性材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ及びグラフェンなどでもよい。
第1導電層81及び第2導電層82の少なくともいずれかに、トランジスタが直接または間接に接続される場合がある。このときには、第1導電層81及び第2導電層82の上記の少なくともいずれかには、例えば、そのトランジスタのソース部またはドレイン部が用いられても良い。また、このときには、第1導電層81及び第2導電層82の上記の少なくともいずれかには、例えば、そのトランジスタのソース部またはドレイン部に接続されるコンタクト部が用いられても良い。
X−Y平面に投影したときの積層体SBの形状及び磁界印加部MUの形状は任意である。X−Y平面に投影したときの積層部SBの形状及び磁界印加部MUの形状は、例えば、円形、楕円形、扁平円、及び、多角形などである。多角形とする場合には、四角形や六角形などの3つ以上の角を有することが好ましい。また、多角形は、角丸状でもよい。
次に、第1の実施形態に係る磁気記憶素子110の製造方法の例について説明する。
ウェーハ上に下部電極(図示せず)を形成した後、そのウェーハを超高真空スパッタ装置内に配置する。次に、下部電極上に、Ta/Ru層(電極とのコンタクト層、兼ストッパー層)、FePd/CoFeB層(第2強磁性層20)、MgO層(第1非磁性層10n)、CoFeB/FePt層(第1強磁性層10)、及び、Ru(キャップ層)をこの順に積層させる。ここで、磁場中でアニールすることによって、FePd/CoFeB層とCoFeB/FePt層との膜面垂直方向の磁気異方性の強さを調節することもできる。
次に、EBレジストを塗布してEB露光を行い、直径20nmのレジストマスクを形成する。イオンミリングによってレジストで被覆されていない部分を、ストッパ層を兼ねた下部電極上のTa層が露出するまで削る。
次に、ウェーハを超高真空スパッタ装置内に配置して、Ru層(第2非磁性層20n)を積層させる。
加工体の全面にレジストを塗布し、第2非磁性層20nの位置にレジストで被覆される部分ができるように、ステッパ露光装置を用いてレジストをパターニングする。イオンミリングによって、レジストで被覆されていない部分を削る。絶縁埋め込みすべくSiO膜を成膜した後、レジストをリフトオフする。
次に、ウェーハを超高真空スパッタ装置内に配置して、FePt/CoFeB/Cu/Py層(第3強磁性層30)、及び、その上にTa層(電極とのコンタクト層)をこの順に積層させる。
次に、磁気記憶素子110を絶縁埋め込みすべくSiO膜を成膜した後、CMP等で平坦化した後、RIE(Reactive Ion Etching)等で全面をエッチングすることで電極とのコンタクト層を露出させる。
加工体の全面にレジストを塗布し、ビアの位置にレジストが被覆されない部分ができるように、ステッパ露光装置を用いてレジストをパターニングする。イオンミリングによってレジストで被覆されていない部分を削り、レジストを除去する。
加工体の全面にレジストを塗布し、ビアと上部電極の位置にレジストで被覆されない部分ができるように、ステッパ露光装置を用いて、レジストをパターニングする。ビアと上部電極とに対応した開口をCuで埋め込み成膜し、レジストを除去する。上部電極には、図示しない配線を設けて電気的入出力ができるようにする。
以上により、磁気記憶素子110が完成する。
図13(a)及び図13(b)は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の別の動作を例示するグラフ図である。
図13(a)及び図13(b)の横軸は、時間TMである。図13(a)及び図13(b)の縦軸は、印加する電圧である。
図13(a)に表したように、この例では、第2設定電圧SV2の第1立ち上がり時間tr1が、tr1<τrelaxであり、第2設定電圧SV2の第2立ち下がり時間tf2が、tf2>τrelaxである。第2立ち下がり時間tf2は、例えば、第2設定電圧SV2から再び第1設定電圧SV1に変化させるまでの時間である。これにより、より安定した書き込み動作を行うことができる。第1立ち上がり時間tr1及び第2立ち下がり時間tf2を有する第2設定電圧SV2は、第1の読み出し方法及び第2の読み出し方法の双方に適用することができる。
図13(b)に表したように、この例では、第2読み出し電圧RV2の立ち上がり時間tr2rが、tr2r>τrelaxであり、第2読み出し電圧RV2の立ち下がり時間tf2rが、tf2r>τrelaxである。これにより、第2読み出し電圧RV2の印加にともなう誤書き込みを、より適切に抑えることができる。
図14(a)〜図14(e)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
図14(a)に表したように、磁気記憶素子114では、第3強磁性層30が、第1強磁性層10の上に設けられている。このように、第3強磁性層30を第1強磁性層10の上に設け、第3強磁性層30からの漏洩磁界LMを第2強磁性層20に印加してもよい。
図14(b)に表したように、磁気記憶素子115では、第3強磁性層30が、第2非磁性層20nを介して第2強磁性層20と交換結合している。このように、第3強磁性層30を第2強磁性層20と交換結合させ、第3強磁性層30からの交換結合磁界CMを第2強磁性層20に印加してもよい。
第2強磁性層20と第3強磁性層30とを交換結合させる場合には、例えば、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及び、イリジウム(Ir)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、前記群から選択された少なくとも2つ以上の金属を含む合金が、第2非磁性層20nに用いられる。第2非磁性層20nの厚さは、例えば、3nm以下である。これにより、第2非磁性層20nを介して十分強い交換結合磁界CMが得られる。
図14(c)に表したように、磁気記憶素子116では、第3強磁性層30が、第2強磁性層20に接する。このように、第3強磁性層30を第2強磁性層20に接触させ、第2強磁性層20と第3強磁性層30とを直に交換結合させて、第3強磁性層30からの交換結合磁界CMを第2強磁性層20に印加してもよい。
図14(d)に表したように、実施形態に係る記憶部102においては、磁界印加部MUが、磁気記憶素子117の積層体SBと積層されていない。この例では、例えば、磁界印加部MUが、外部磁界として磁界MFを第2強磁性層20に印加する。この場合、磁界印加部MUには、例えば、永久磁石PMや電磁石EMなどが用いられる。このように、磁界印加部MUは、積層体SBに対して積層されていなくてもよい。
図14(e)に表したように、磁気記憶素子118では、積層体SBが、第4強磁性層40と、第3非磁性層30nと、をさらに含む。第4強磁性層40は、積層方向SD1に沿って第2強磁性層20側に積層されている。第4強磁性層40の磁化14の方向は、変化可能である。第3非磁性層30nは、第2強磁性層20と第4強磁性層40との間に設けられる。第4強磁性層40の磁化14は、第3非磁性層30nを介して、第2強磁性層20の磁化12と交換結合する。これにより、磁気記憶素子118には、第2強磁性層20と第4強磁性層40と第3非磁性層30nとを含む積層部22が、積層体SBに設けられる。第4強磁性層40には、例えば、第2強磁性層20と実質的に同じ材料が用いられる。第3非磁性層30nには、例えば、磁気記憶素子115に関して説明した第2非磁性層20nと実質的に同じ材料が用いられる。
磁気記憶素子118では、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させて第2強磁性層20の磁化12の方向が変化すると、それに応じて第4強磁性層40の磁化14の方向も、磁化12と実質的に同じ方向に変化する。静磁状態では、第2強磁性層20と第4強磁性層40とが結合しているので、熱擾乱耐性を高めることができる。第2強磁性層20の結晶磁気異方性をKu1、第4強磁性層40の結晶磁気異方性をKu2とすると、積層部22の結晶磁気異方性は、例えば、Ku1とKu2との平均値となる。これにより、磁気記憶素子118では、記憶保持のΔ値を高めることができる。Δ値とは、例えば、積層部22の磁化反転に必要なエネルギー障壁と熱エネルギーとの比である。Δ値は、例えば、Δ=MsHV/2kBTで表すことができる。式において、Msは飽和磁化であり、Vは積層部22の体積であり、kBはボルツマン定数であり、Tは磁気記憶素子の絶対温度である。Δ値が大きいほど、磁化は安定する。例えば、記憶保持時間が長くなる。
磁気記憶素子114〜118においても、(1)式の条件を満たすことで、安定した動作を得ることができる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、第2強磁性層20のGilvertのダンピング定数αを0.01よりも大きく0.4よりも小さくする。ダンピング定数αを、0.01<α<0.4とする。これにより、本実施形態では、電流起因のスピントランスファトルクを併用することができる。
以下、第2強磁性層20のダンピング定数αに関するシミュレーションについて説明する。
シミュレーションでは、第2強磁性層20のダンピング定数αの異なる複数のシミュレーションモデルを採用する。モデルでは、磁気記憶素子111の積層体SBの構成を用いる。複数のモデルにおいて、ダンピング定数αは、それぞれ0.01、0.02、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、及び、0.5である。シミュレーションでは、上記のようにダンピング定数αを変化させた10個のモデルを採用する。複数のモデルのそれぞれにおいて、第2強磁性層20のHは、1000Oeである。
シミュレーションでは、複数のモデルのそれぞれについて、Hext及びΔHを変化させて第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときの、第2強磁性層20の磁化12の方向の変化を評価する。シミュレーションでは、(1)式の不等式を等式とした条件で、Hext及びΔHを変化させる。
前述のように、磁化12は、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときに、第1方向及び第2方向と異なる方向を軸に歳差運動する。シミュレーションでは、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたした後、何回目の回転で磁化12がスイッチングするかを評価する。また、シミュレーションでは、3回目の回転でスイッチングする条件まで許容する。
図15(a)〜図15(i)は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
図15(a)〜図15(i)の横軸は、Hext(Oe)であり、縦軸は、ΔH(Oe)である。
図15(a)は、α=0.01のモデルのシミュレーション結果を表す。
図15(b)は、α=0.02のモデルのシミュレーション結果を表す。
図15(c)は、α=0.05のモデルのシミュレーション結果を表す。
図15(d)は、α=0.1のモデルのシミュレーション結果を表す。
図15(e)は、α=0.15のモデルのシミュレーション結果を表す。
図15(f)は、α=0.2のモデルのシミュレーション結果を表す。
図15(g)は、α=0.25のモデルのシミュレーション結果を表す。
図15(h)は、α=0.3のモデルのシミュレーション結果を表す。
図15(i)は、α=0.4のモデルのシミュレーション結果を表す。
また、図15(a)〜図15(c)では、四角形のマーカが、1回目の回転でスイッチングしたシミュレーション結果を表し、円形のマーカが、2回目の回転でスイッチングしたシミュレーション結果を表し、三角形のマーカが、3回目の回転でスイッチングしたシミュレーション結果を表す。
図15(a)〜図15(i)に表したように、0.01<α<0.4の範囲では、1回の回転で磁化12の歳差運動を停止させることができる条件が得られる。これに対して、ダンピング定数αが0.01よりも小さい範囲では、磁化12が2回転以上してしまう。ダンピング定数αが0.01よりも小さい範囲では、1回の回転で磁化12の歳差運動を停止させる条件が得られない。また、α=0.5の試料では、磁化12の歳差運動が、発生しない。ダンピング定数αが0.5よりも大きい範囲では、磁化12の方向を変化させることが困難になる。
このように、ダンピング定数αを、0.01<α<0.4とすることにより、磁化12の歳差運動を適切に停止させることができる。すなわち、不揮発性記憶装置610の動作をより安定させることができる。これは、例えば、電圧印加時に発生する電流起因のスピントランスファトルクによって、方向を変化させた後の磁化12の動きが、抑制されたためであると考えられる。
(第3の実施形態)
本実施形態では、書き込み時に、電圧トルクとスピントランスファトルクとを併用する。
図16(a)及び図16(b)は、第3の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示するグラフ図である。
図16(a)及び図16(b)の横軸は、時間TMである。図16(a)及び図16(b)の縦軸は、印加する電圧である。
図16(a)は、第2強磁性層20の磁化12を平行状態から反平行状態に変化させるときの電圧波形を表す。
図16(b)は、第2強磁性層20の磁化12を反平行状態から平行状態に変化させるときの電圧波形を表す。
図16(a)に表したように、本実施形態では、磁化12を平行状態から反平行状態に変化させる場合に、制御部550が、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させた後、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧を第2設定電圧SV2から第3設定電圧SV3にさらに変化させる。第3設定電圧SV3の極性は、第2設定電圧SV2の極性と同じである。第3設定電圧SV3の絶対値は、第2設定電圧SV2の絶対値よりも小さい。
第2設定電圧SV2の第1時間幅tp1の間、磁化12は、歳差運動する。制御部550は、磁化12を反平行状態にした後、第3設定電圧SV3に変化させる。制御部550は、例えば、磁化12を反平行状態にした後、磁気異方性変化が小さくなるように電圧を下げる。第3設定電圧SV3の時間幅ts1の間は、スピントランスファトルクが併用される。このため、磁化12は、ダンピングによって緩和が促進される。第3設定電圧SV3の時間幅ts1は、例えば、第2設定電圧SV2の第1時間幅tp1よりも長い。
第2設定電圧SV2から第3設定電圧SV3に変化させるときに、第2設定電圧SV2の立ち下がり時間を、緩和時間τrelaxよりも長い第2立ち下がり時間tf2としてもよい。第2立ち下がり時間tf2では、磁気異方性変調が起きにくいため、磁化12は、安定点に向かって緩和する。この時、時間幅ts1の間は、スピントランスファトルクが併用されて緩和が促進される。
図16(b)に表したように、本実施形態では、磁化12を反平行状態から平行状態に変化させる場合に、制御部550が、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させた後、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧を第2設定電圧SV2から第4設定電圧SV4にさらに変化させる。第4設定電圧SV4の極性は、第2設定電圧SV2の極性に対して逆である。第4設定電圧SV4の絶対値は、第2設定電圧SV2の絶対値よりも小さい。
第1時間幅tp1磁化12は、歳差運動する。制御部550は、例えば、磁化12が平行状態となったときに、逆極性の電圧に切り替える。第4設定電圧SV4の時間幅ts2の間は、スピントランスファトルクが併用される。これにより、ダンピングによって磁化12の緩和が促進される。
このように、第3設定電圧SV3の印加及び第4設定電圧SV4の印加を行うことにより、不揮発性記憶装置610の動作をより安定させることができる。
(第4の実施形態)
本実施形態では、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときに、磁化12の歳差運動が、半回転しか起きないようにする。
図17(a)〜図17(d)は、第4の実施形態に係る不揮発性記憶装置の動作を例示するグラフ図である。
図17(a)〜図17(d)の横軸は、時間TMである。図17(a)及び図17(c)の縦軸は、第2強磁性層20の磁化12の静磁エネルギーME(erg/cm)である。図17(b)及び図17(d)の縦軸は、印加する電圧である。
初期状態における第2強磁性層20の磁化12の静磁エネルギーをEini(erg/cm)と定義し、初期状態における第2強磁性層20の磁化12の熱擾乱指数をΔiniと定義する。
図17(a)及び図17(b)に表したように、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させると、容易軸方向が変化することによって、熱擾乱指数は、Δへと変化する。その結果、磁化12は、よりエネルギーが低い状態へと遷移する。この時に第2設定電圧SV2をオフにすると、熱擾乱指数は、Δiniへ戻る。このため、磁化12は、元の状態に戻らない。この関係は、(4)式で与えられる。
[数4]
ini−Edm>Δini>Eini−Ert …(4)
(4)式には、静磁エネルギーをEini、熱擾乱指数Δini、ダンピングで失われるエネルギーEdm(erg/cm)、及び、磁化が緩和する間に消費されるエネルギーErt(erg/cm)が用いられる。ダンピングで失われるエネルギーEdmとは、詳しくは、スピントルクに起因してダンピングが働いて失われるエネルギーである。
第2設定電圧SV2は、(4)式で表される条件を満足する。制御部550は、(4)式で表される条件を満足する第2設定電圧SV2を磁気記憶素子110に印加する。これにより、磁化12の歳差運動を半回転に抑えることができる。すなわち、不揮発性記憶装置610の動作をより安定させることができる。
図17(c)及び図17(d)は、本実施形態の別の動作を表す。
図17(c)及び図17(d)に表したように、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させると、容易軸方向が変化することによって、熱擾乱指数は、Δへと変化する。その結果、磁化12は、よりエネルギーが低い状態へと遷移する。ダンピングで失われるエネルギーEdmが大きい場合、Δのエネルギーバリアを超えることができないため、磁化12が元の状態に戻らない。この関係は、(5)式で与えられる。
[数5]
ini−Edm>Δ>Eini−Ert …(5)
第2設定電圧SV2は、(5)式で表される条件を満足する。制御部550は、(5)式で表される条件を満足する第2設定電圧SV2を磁気記憶素子110に印加する。これにより、磁化12の歳差運動を半回転に抑えることができる。すなわち、不揮発性記憶装置610の動作をより安定させることができる。
(第5の実施形態)
本実施形態では、第2強磁性層20の異方性磁界の積層方向SD1の成分Hと、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときの第2強磁性層20の異方性磁界の積層方向SD1の成分の変化ΔHとが、実質的に同じとなるように第2設定電圧SV2を設定する。具体的には、制御部550が、0.85H≦ΔH≦1.2Hの条件を満足する第2設定電圧SV2を磁気記憶素子110(第1強磁性層10と第2強磁性層20との間)に印加する。
本実施形態では、磁化12の積層方向SD1に沿う方向の異方性磁界を、磁化12の面内方向SD2に沿う方向の有効磁界よりも、より適正に小さくすることができる。例えば、ΔHによってHを打ち消すことができる。これにより、本実施形態では、第2強磁性層20の磁化12の反転エラー率を小さくすることができる。ここで、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電圧を第1設定電圧から第2設定電圧に変化させた回数(スイッチング動作の回数)をSTTとする。スイッチング動作を実施したにも関わらず磁化12の方向が変化しなかった回数(書き込みエラーの回数)をWETとする。反転エラー率は、例えば、STTとWETとの比WET/STTで表すことができる。例えば、第1設定電圧から第2設定電圧に変化させるスイッチング動作を10回実施し、そのうちの1回のスイッチング動作において磁化12の方向が変化しなかったとする。この場合、反転エラー率は、0.1となる。
前述のように、ΔHは、例えば、第1設定電圧から第2設定電圧に変化させたときの共鳴周波数の変化や磁気抵抗の変化を測定することで求めることができる。
は、MagNoise測定やヒステリシス応答の電圧依存性によって求めることができる。 第2設定電圧SV2が、0.85H≦ΔH≦1.2Hの条件を満足しているか否かは、例えば、上記の方法で求めたΔH及びHの比で判別することができる。
以下、ΔHとHとの関係に関するシミュレーションについて説明する。
このシミュレーションでは、磁気記憶素子111の積層体SBの構成を有するモデルを採用する。すなわち、シミュレーションでは、Hdx=0Oe、Hdy=0Oeである。また、シミュレーションでは、H=1000Oeの第2強磁性層20が採用される。磁界印加部MUによる外部磁界Hextは、500Oeである。ダンピング定数αは、0.01である。シミュレーションは、前述のように、マクロスピンモデルを用いた数値計算で行われる。
図18(a)及び図18(b)は、第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。
図18(a)の横軸は、Hext(Oe)であり、縦軸は、ΔH(Oe)である。
図18(b)の横軸は、第2強磁性層20のΔ値であり、縦軸は、反転エラー率ERである。ここで、Δ値は、磁化反転に必要なエネルギー障壁をkBTで規格化した値である。すなわち、第2強磁性層20の磁化反転に必要なエネルギー障壁と熱エネルギーとの比である。なお、kBはボルツマン定数であり、Tは磁気記憶素子の絶対温度である。
図18(a)には、上記条件の磁気記憶素子111において、(1)式の条件を満足する領域AR4が示される。領域AR4は、図18(a)において網掛けを行った部分である。図18(a)に表される特性CT4は、磁気記憶素子111における(1)式の右辺部分に対応する。HextとΔHとが、領域AR4内にある関係のときに、磁気記憶素子111において、(1)式の条件を満足する。この例において、特性CT4は、前述の特性CT1及び特性CT2と実質的に同じである。
図18(a)において、点PT1は、ΔH=1000OeでΔH=Hとしたときの第1条件を表している。点PT2は、ΔH=500OeでΔH=1/2Hとしたときの第2条件を表している。シミュレーションでは、この第1及び第2条件において、マクロスピンモデルによる反転エラー率ERを計算する。
図18(b)は、第1及び第2条件において、第2強磁性層20のΔ値を変化させたときの反転エラー率ERの変化を表している。第2強磁性層20のΔ値は、例えば、第2強磁性層20の飽和磁化Msや第2強磁性層20の体積を調節することによって変化させる。また、シミュレーションにおいて、第2強磁性層20の磁化12の向きを変化させる際に印加する第2設定電圧SV2の第1時間幅tp1は、それぞれの条件における磁化12の歳差運動の周期Cpのほぼ1/2である。
図18(b)には、第1条件におけるシミュレーション結果を表す特性CT51と、第2条件におけるシミュレーション結果を表す特性CT52と、が示される。
図18(b)に表したように、Δ値が増加すると、反転エラー率ERは、指数関数的に低下する。そして、特性CT51では、特性CT52と比較して、Δ値の増大に対してより急峻に反転エラー率ERが低下する。データを10年保持するための基準となる条件は、例えば、Δ≧60である。そこで、特性CT51及び特性CT52の片対数プロットをそれぞれΔ=60まで外挿する。この場合、第2条件では、反転エラー率ERが1×10−12程度であるが、第1条件では、1×10−25程度であり、第2条件の場合に比べて、はるかに小さい値になる。
第1条件の場合に反転エラー率ERが小さくなる理由について以下に説明する。
第1条件では、第2強磁性層20の磁化12の異方性磁界の積層方向SD1の成分が実質的にゼロになり、外部磁界Hextのみが第2強磁性層20に作用している。第2強磁性層20の異方性磁界は、磁化12の向きに依存する。例えば、磁化12が膜面に対して垂直である場合に、異方性磁界Hの絶対値が最大になる。そして、磁化12が面内方向を向いている場合、異方性磁界Hの絶対値はゼロになる。一方、外部磁界Hextは磁化12の向きに依存しない。第1条件のように異方性磁界Hが実質的にゼロになり外部磁界Hextのみが第2強磁性層20に作用している条件おいては、第2強磁性層20の磁化12がどのような初期角(積層方向SD1に対する傾き角)であっても同じ周期Cpで歳差運動を行なう。これに対して、第2条件のように異方性磁界Hが残っている条件においては、初期角によって磁化12の歳差運動の周期Cpが異なり、反転エラー率ERが増大する。
次に、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときに、異方性磁界Hがわずかに残った場合に、どの程度反転エラー率ERが増大するかを検討したシミュレーション結果について説明する。
図19は、第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。 図19の横軸は、Δ値であり、縦軸は、反転エラー率ERである。
図19は、第1設定電圧SV1から第2設定電圧SV2に変化させたときの第2強磁性層20の異方性磁界の積層方向SD1の成分の変化ΔHがHに対して30%小さい条件から30%大きい条件まで変えて反転エラー率ERを計算した結果である。例えば+10%はΔH=H×1.1という条件の計算結果である。
図19には、
ΔH=Hとしたときの特性CT61と、
ΔHをHに対して10%大きくしたときの特性CT62と、
ΔHをHに対して10%小さくしたときの特性CT63と、
ΔHをHに対して20%大きくしたときの特性CT64と、
ΔHをHに対して20%小さくしたときの特性CT65と、
ΔHをHに対して30%大きくしたときの特性CT66と、
ΔHをHに対して30%小さくしたときの特性CT67と、
が示される。
図19に表したように、ΔHのずれ量が±10%の範囲では殆ど反転エラー率ERは変化しない。一方、ΔHのずれ量が±10%よりも大きくなると、ΔHのずれ量の絶対値の増加にともなって、反転エラー率ERも増加する。
ここで、図19の特性CT61は、図18(b)の特性CT51と実質的に同じである。図18(b)の特性CT52は、換言すると、ΔHをHに対して50%小さくしたときの特性である。図18(b)に表したシミュレーションでは、特性CT51及び特性CT52の双方において、磁化12の方向が180°変化するように、第2設定電圧SV2の時間幅をそれぞれ調節している。これに対し、図19に表したシミュレーションでは、特性CT61において、磁化12の方向が180°変化するように、第2設定電圧SV2の時間幅を調節し、特性CT61と同じ時間幅を用いて、特性CT62〜特性CT67を計算している。このように、図19に表したシミュレーションの条件は、図18(b)に表したシミュレーションの条件と異なる。このため、例えば、特性CT67では、特性CT52よりも反転エラー率ERが大きくなっている。
図20は、第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。 図20の横軸は、Δ値であり、縦軸は、反転エラー率ERである。
図20は、図19のシミュレーション結果を外挿したグラフである。
図20には、特性CT71〜特性CT75が示される。特性CT71は、特性CT61を外挿した結果を表す。特性CT62及び特性CT63の外挿の結果は、特性CT71と実質的に同じであるので、図示を省略している。特性CT72は、特性CT64を外挿した結果を表す。特性CT73は、特性CT65を外挿した結果を表す。特性CT74は、特性CT66を外挿した結果を表す。特性CT75は、特性CT67を外挿した結果を表す。このグラフから、Δ=60に設定した時の反転エラー率ERを見積もることができる。
図21は、第5の実施形態に係る不揮発性記憶装置の特性を例示するグラフ図である。 図21の横軸は、ΔHとHとの比ΔH/H(%)であり、縦軸は、反転エラー率ERを対数表示したLog10(ER)である。
図21は、特性CT71〜特性CT75のそれぞれの、Δ=60のときの反転エラー率ERをプロットしたグラフである。
図21に表したように、汎用メモリーの反転エラー率ERの許容値1×10−16を閾値に設定した場合、Δ=60で条件を実現するためのΔHの範囲は、Hの85%から120%の間である。従って、制御部550が、0.85H≦ΔH≦1.2Hの条件を満足する第2設定電圧SV2を磁気記憶素子110に印加することにより、第2強磁性層20の磁化12の反転エラー率ERを小さくすることができる。
(第6の実施形態)
本実施形態においては、複数の磁気記憶素子がマトリクス状に配置される。
図22は、第6の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図22に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置620は、記憶セルアレイ部MCAを含む。記憶セルアレイ部MCAは、マトリクス状に配列された複数の記憶セルMCを有する。
各記憶セルMCは、第1の実施形態に係る磁気記憶素子のいずれかを有する。この例では、磁気記憶素子110が用いられている。
記憶セルアレイ部MCAには、複数のビット配線対(ビット配線BL及びビット配線バー\BL)及び、複数のワード配線WLが配置されている。複数のビット配線対のそれぞれは、列(カラム)方向に延在する。複数のワード配線WLのそれぞれは、行(ロウ)方向に延在する。
ビット配線BLとワード配線WLとの交差部分に、記憶セルMCが配置される。各記憶セルMCは、磁気記憶素子(例えば磁気記憶素子110)と選択トランジスタSTRとを有する。磁気記憶素子110の一端は、ビット配線BLに接続されている。磁気記憶素子110の他端は、選択トランジスタSTRのドレイン端子に接続されている。選択トランジスタSTRのゲート端子は、ワード配線WLに接続されている。選択トランジスタSTRのソース端子は、ビット配線バー\BLに接続されている。
ワード配線WLには、ロウデコーダ751が接続されている。ビット配線対のうちの一方(例えばビット配線バー\BL)の一端は、読み出し部510に接続されている。ビット配線対のうちの一方(例えばビット配線バー\BL)の他端は、スイッチ756を介して第1の電源ソース/シンク回路757に接続されている。ビット配線対のうちの他方(例えばビット配線BL)は、スイッチ754を介して第2の電源ソース/シンク回路755に接続されている。
例えば、読み出し部510、ロウデコーダ751、第1の電源ソース/シンク回路757及び第2の電源ソース/シンク回路755によって、制御部550が構成される。制御部550は、ビット配線BL、ワード配線WL及び選択トランジスタSTRなどを介して、複数の磁気記憶素子110のそれぞれと電気的に接続される。制御部550は、複数の磁気記憶素子110のそれぞれに対して、データの書き込み及びデータの読み出しを実施する。
このような構成により、記憶セルアレイ部MCAの任意の記憶セルMC(例えば磁気記憶素子110)にデータを書き込み、また、磁気記憶素子110に書き込まれたデータを読み出すことができる。このように構成された不揮発性記憶装置620においても、(1)式で表される条件を満たすことによって、安定した動作を得ることができる。
実施形態によれば、安定した動作の不揮発性記憶装置が提供される。
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、不揮発性記憶装置に含まれる記憶部、磁気記憶素子、制御部、積層体、磁界印加部、第1〜第4強磁性層及び第1〜第3非磁性層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施形態として上述した不揮発性記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての不揮発性記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…第1強磁性層、 10a…主面、 10n…第1非磁性層、 11〜14…磁化、 20…第2強磁性層、 20n…第2非磁性層、 22…積層部部、 30…第3強磁性層、 30n…第3非磁性層、 40…第4強磁性層、 61…センス電流、 72…磁化、 72a、72b…磁化成分、 81…第1導電層、 82…第2導電層、 101、102…記憶部、 110〜118…磁気記憶素子、 510…読み出し部、 550…制御部、 610、620…不揮発性記憶装置、 751…ロウデコーダ、 754…スイッチ、 755…第2の電源ソース/シンク回路、 756…スイッチ、 757…第1の電源シース/シンク回路、 \BL…ビット配線バー、 BL…ビット配線、 CV1、CV2…第1及び第2基準電圧、 EA…磁化容易軸、 Lx1〜Lx3、Ly1〜Ly3…長さ、 MC…記憶セル、 MCA…記憶セルアレイ部、 MF…磁界、 MU…磁界印加部、 RV1、RV2…第1及び第2読み出し電圧、 SB…積層体、 SD1…積層方向、 SD2…面内方向、 STR…選択トランジスタ、 SV1〜SV4…第1〜第4設定電圧、 tf1、tf2、tf2r…立ち下がり時間、 tp1、tp2、ts1、ts2 …時間幅、 tr1、tr2、tr1r、tr2r…立ち上がり時間、 WL…ワード配線

Claims (15)

  1. 磁化の方向が固定された第1強磁性層と、
    磁化の方向が変化可能な第2強磁性層と、
    前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
    を含み、前記第1強磁性層、前記第2強磁性層及び前記第1非磁性層が積層方向に積層された積層体を含む磁気記憶素子と、
    前記積層方向に対して垂直な第1面内方向の成分を含む磁界を前記第2強磁性層に印加する磁界印加部と、
    を含む記憶部と、
    前記磁気記憶素子と電気的に接続され、前記磁気記憶素子の前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間の電圧を第1設定電圧から第2設定電圧に変化させる設定動作を実施する制御部と、
    を備え、
    前記第1強磁性層の前記磁化の方向の前記積層方向の成分は、前記第1強磁性層の前記磁化の方向の前記積層方向に対して垂直な平面に投影した成分よりも大きく、
    前記第2強磁性層は、少なくとも第1方向と第2方向とに変化可能であり、
    前記第1方向を向く前記第2強磁性層の前記磁化の前記積層方向の成分は、前記平面に投影した成分よりも大きく、
    前記第2方向を向く前記第2強磁性層の前記磁化の前記積層方向の成分は、前記平面に投影した成分よりも大きく、
    前記第2方向を向く前記第2強磁性層の前記磁化の前記積層方向の成分の向きは、前記第1方向を向く前記第2強磁性層の前記磁化の前記積層方向の成分の向きに対して逆であり、
    前記第1設定電圧から前記第2設定電圧に変化させたときの前記第2強磁性層の異方性磁界の前記積層方向の成分の変化をΔH(エルステッド)とし、
    前記第1設定電圧のときの前記第2強磁性層の異方性磁界の前記積層方向の成分をH(エルステッド)とし、
    前記磁界印加部の印加する前記磁界の前記第1面内方向の成分をHext(エルステッド)とし、
    前記第1設定電圧のときの前記第2強磁性層の異方性磁界の前記第1面内方向の成分をHdx(エルステッド)とするとき、
    前記磁界印加部の印加する前記磁界は、
    Figure 0005576449
    で表される条件を満足する不揮発性記憶装置。
  2. 前記制御部は、前記第1設定電圧から前記第2設定電圧に変化させることによって、前記第2強磁性層の前記磁化の方向を前記第1方向から前記第2方向または前記第2方向から前記第1方向に変化させる請求項記載の不揮発性記憶装置。
  3. 前記第2強磁性層の前記第1面内方向の長さは、前記積層方向及び前記第1面内方向に対して垂直な第2面内方向の、前記第2強磁性層の長さよりも短い請求項1又は2に記載の不揮発性記憶装置。
  4. 前記第2強磁性層のダンピング定数αは、0.01よりも大きく0.4よりも小さい請求項1〜のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  5. 前記制御部は、前記設定動作において、
    前記第2強磁性層の前記磁化の方向の前記積層方向の成分の向きが、前記第1強磁性層の前記磁化の方向の前記積層方向の成分の向きと同じときに、前記第1設定電圧から前記第2設定電圧に変化させた後、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間の電圧を前記第2設定電圧から前記第3設定電圧にさらに変化させ、
    前記第2強磁性層の前記磁化の方向の前記積層方向の成分の向きが、前記第1強磁性層の前記磁化の方向の前記積層方向の成分の向きに対して逆のときに、前記第1設定電圧から前記第2設定電圧に変化させた後、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間の電圧を前記第2設定電圧から前記第4設定電圧にさらに変化させ、
    前記第3設定電圧の極性は、前記第2設定電圧の極性と同じであり、
    前記第3設定電圧の絶対値は、前記第2設定電圧の絶対値よりも小さく、
    前記第4設定電圧の極性は、前記第2設定電圧の極性に対して逆であり、
    前記第4設定電圧の絶対値は、前記第2設定電圧の絶対値よりも小さい請求項1〜のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  6. 前記磁界印加部は、前記積層方向に沿って前記積層体に積層され磁化の方向が固定された第3強磁性層を含み、
    前記第3強磁性層の前記磁化の方向の前記第1面内方向の成分は、前記積層方向の成分よりも大きい請求項1〜のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  7. 前記磁界印加部は、前記第3強磁性層と前記積層体との間に設けられた第2非磁性層をさらに含む請求項記載の不揮発性記憶装置。
  8. 前記第3強磁性層は、前記第2強磁性層に接する請求項記載の不揮発性記憶装置。
  9. 前記積層体は、
    前記積層方向に沿って前記第2強磁性層側に積層され、磁化の方向が変化可能な第4強磁性層と、
    前記第2強磁性層と前記第4強磁性層との間に設けられた第3非磁性層と、
    をさらに含む請求項1〜のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  10. 前記制御部は、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間の電圧を第1基準電圧から第1読み出し電圧に変化させる第1読み出し動作を、さらに実施し、
    前記第1読み出し電圧の極性は、前記第2設定電圧の極性に対して逆向きである請求項1〜のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  11. 前記制御部は、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間の電圧を第2基準電圧から第2読み出し電圧に変化させる第2読み出し動作を、さらに実施し、
    前記第2基準電圧と前記第2読み出し電圧との間の変化の時間は、前記第1設定電圧と前記第2設定電圧との間の変化の時間よりも長く、
    前記第1設定電圧と前記第2設定電圧との間の変化の前記時間は、前記第2強磁性層の前記磁化の方向の変化の緩和時間よりも短く、
    前記第2基準電圧と前記第2読み出し電圧との間の変化の前記時間は、前記第2強磁性層の前記磁化の方向の変化の緩和時間よりも長い請求項1〜10のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  12. 初期状態における前記第2強磁性層の前記磁化の静磁エネルギーをEini(erg/cm)とし、
    ダンピングで失われるエネルギーをEdm(erg/cm)とし、
    初期状態における前記第2強磁性層の前記磁化の熱擾乱指数をΔiniとし、
    磁化が緩和される間に消費されるエネルギーをErt(erg/cm)とするとき、
    前記第2設定電圧は、
    ini−Edm>Δini>Eini−Ert
    で表される条件を満足する請求項1〜11のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  13. 初期状態における前記第2強磁性層の前記磁化の静磁エネルギーをEini(erg/cm)とし、
    ダンピングで失われるエネルギーをEdm(erg/cm)とし、
    前記第2設定電圧を印加しているときの前記第2強磁性層の前記磁化の熱擾乱指数をΔとし、
    磁化が緩和される間に消費されるエネルギーをErt(erg/cm)とするとき、
    前記第2設定電圧は、
    ini−Edm>Δ>Eini−Ert
    で表される条件を満足する請求項1〜12のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  14. 前記制御部は、0.85H≦ΔH≦1.2Hの条件を満足する前記第2設定電圧を前記磁気記憶素子に印加する請求項1〜13のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
  15. 前記磁気記憶素子は、複数設けられ、
    前記制御部は、前記複数の磁気記憶素子のそれぞれと電気的に接続される請求項1〜14のいずれか1つに記載の不揮発性記憶装置。
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