JP5576297B2 - フィルムの表面処理方法及び装置並びに偏光板の製造方法 - Google Patents
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Description
重合性モノマーを、プラズマにより活性化させて、大気圧近傍の処理空間に配置した前記難接着性樹脂フィルムと反応させ、
前記処理空間内の酸素濃度(体積濃度)を0以上3000ppm以下になるよう設定することを特許請求しない特徴とする。
また、本発明に係るプラズマ表面処理装置は、易接着性樹脂フィルムと接着されるべき難接着性樹脂フィルムの表面を処理する装置であって、
重合性モノマーを、プラズマにより活性化させて大気圧近傍の処理空間に配置した難接着性樹脂フィルムに接触させるプラズマ処理部を備え、
前記処理空間内の酸素濃度が0以上3000ppm以下であることを特許請求しない特徴とする。
重合性モノマーの活性化は、重合性モノマーの開裂、重合、分解を含む。活性化した重合性モノマーが難接着性樹脂フィルムと反応する。例えば、難接着性樹脂フィルムの表面のC−C、C−O、C−H等の結合がプラズマガスとの接触やプラズマ光の照射によって切断され、この結合切断部に重合性モノマーの重合物がグラフト重合すると考えられる。或いは、結合切断部に重合性モノマーから分解した官能基が結合すると考えられる。これにより、難接着性樹脂フィルムの表面に接着性促進層が形成されると考えられる。処理空間内の酸素濃度を3000ppm以下にすることによって、重合性モノマーの活性化や結合切断部との結合等の反応が阻害されるのを防止でき、難接着性樹脂フィルムの表面に接着性促進層を確実に形成できる。これによって、難接着性樹脂フィルムの接着性を確実に向上できる。
特許請求する本発明方法は、易接着性樹脂フィルムと接着されるべき難接着性樹脂フィルムの表面を処理する方法であって、
重合性モノマーの蒸気を含有するプロセスガスを大気圧近傍の処理空間に供給し、前記重合性モノマーを、プラズマにより活性化させて、前記処理空間に配置した前記難接着性樹脂フィルムと反応させ、
前記難接着性樹脂フィルムを前記処理空間に対し相対移動させ、前記相対移動に伴って前記難接着性樹脂フィルムと一緒に前記処理空間内に巻き込んだ酸素を含む雰囲気ガスを前記プロセスガスによって前記処理空間から追い出すことによって、前記処理空間内の酸素濃度が3000ppm以下になるように、前記プロセスガスの前記処理空間への供給流量を、前記難接着性樹脂フィルムの相対移動速度に応じて設定することを特徴とする。
ここで、平行な一対の円筒状の電極どうしの間に前記処理空間を形成し、かつ前記処理空間内に放電を生成し、前記難接着性樹脂フィルムを前記一対の電極の周面に巻き付け、かつ前記電極どうしの間に於いては、前記難接着性樹脂フィルムを、一方の電極に接触させながら前記処理空間に通し、更に折り返して他方の電極に接触させながら前記処理空間に通し、前記一対の電極の回転により前記難接着性樹脂フィルムを移動させ、かつ前記プロセスガスの供給流量を、前記処理空間内の酸素濃度が3000ppm以下になるように、前記プロセスガスの前記処理空間への供給流量を、前記一対の電極の回転速度に応じて設定することが好ましい。
特許請求する本発明装置は、易接着性樹脂フィルムと接着されるべき難接着性樹脂フィルムの表面を処理する装置であって、
重合性モノマーを、プラズマにより活性化させて大気圧近傍の処理空間に配置した難接着性樹脂フィルムに接触させるプラズマ処理部と、
前記難接着性樹脂フィルムを前記処理空間に対し相対移動させる移動手段と、
前記重合性モノマーの蒸気を含有するプロセスガスを前記処理空間に供給するプロセスガス供給系と、
を備え、
前記プロセスガス供給系による前記プロセスガスの処理空間への供給流量が、前記相対移動に伴って前記難接着性樹脂フィルムと一緒に前記処理空間内に巻き込んだ酸素を含む雰囲気ガスを前記プロセスガスによって前記処理空間から追い出すことによって、前記処理空間内の酸素濃度が3000ppm以下になるように、前記相対移動の速度に応じて設定されていることを特徴とする。
ここで、前記プラズマ処理部が、前記処理空間内に放電を生成する一対の電極を有し、前記一対の電極が、それぞれ軸線を軸方向に向けた円筒状をなして前記軸方向と直交する並び方向に平行に並べられ、これら電極どうし間の最も狭くなった箇所及びその周辺が前記処理空間となり、前記難接着性樹脂フィルムが前記一対の電極の周面に巻き付けられ、かつ前記電極どうしの間に於いては、前記難接着性樹脂フィルムが、一方の電極に接触しながら前記電極どうしの間の大気圧近傍の処理空間に通され、更に折り返されて他方の電極に接触しながら前記処理空間に通されており、前記移動手段が、前記一対の電極の回転により前記難接着性樹脂フィルムを移動させ、前記プロセスガス供給系による前記プロセスガスの処理空間への供給流量が、前記処理空間内の酸素濃度が3000ppm以下になるように、前記一対の電極の回転速度に応じて設定されていることが好ましい。
上記フィルム処理装置において、前記プラズマ処理部が、前記処理空間内に放電を生成する一対の電極を有し、前記重合性モノマーの蒸気を含有するプロセスガスを前記処理空間に供給するプロセスガス供給系を、更に備え、前記プロセスガス供給系のプロセスガスの供給流量が、前記処理空間内の酸素濃度が0以上3000ppm以下になるよう設定されていることが好ましい。
処理空間にプロセスガスを供給することによって、処理空間内の空気等のガスを追い出してプロセスガスに置換できる。プロセスガスの供給流量を調節することによって、処理空間内の酸素量を調節できる。この態様では、処理空間が放電空間になる。処理対象の難接着性樹脂フィルムが放電空間内に配置され、放電空間内のプラズマと直接的に接触する。
前記プロセスガスの供給流量を、前記処理空間内の酸素濃度が好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下になるよう設定することが望ましい。
これによって、難接着性樹脂フィルムの接着性を一層確実に向上させることができる。
上記フィルム処理装置において、前記難接着性樹脂フィルムを前記処理空間に対し相対移動させる移動手段を更に備え、前記移動手段による前記相対移動の速度が10m/min以上であることが好ましい。
難接着性樹脂フィルムを相対移動させると、空気等の雰囲気ガスが難接着性樹脂フィルムと一緒に処理空間内に巻き込まれやすい。難接着性樹脂フィルムの相対移動速度が大きくすると、雰囲気ガスの巻き込み流量が増える。したがって、処理空間内の酸素濃度の上昇につながる。そこで、プロセスガスの供給流量を大きくする。これにより、巻き込んだ雰囲気ガスを処理空間から追い出すことができ、処理空間内の酸素濃度を所望の大きさにすることができる。これによって、難接着性樹脂フィルムの良好な接着性を確保しつつ、難接着性樹脂フィルムの相対移動速度を大きくすることができ、高速処理を行なうことができる。
処理空間内の空気等のガスをプロセスガスに置換することにより、処理空間内の酸素濃度を確実に低下させることができる。酸素ガスを実質的に含有しないとは、プロセスガスの酸素含有量が0である場合の他、表面処理に影響しない程度に微量の酸素が含有されている場合を含む。具体的に酸素ガスを実質的に含有しないプロセスガスの酸素濃度(体積濃度)は、好ましくは0以上1ppm以下であり、より好ましくは0以上0.1ppm以下であり、一層好ましくは0以上0.01ppm以下である。
ここで、大気圧近傍とは、1.013×104〜50.663×104Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×104〜10.664×104Paが好ましく、9.331×104〜10.397×104Paがより好ましい。
一対の側部閉塞部材によって、処理空間の前記直交方向の両側をほぼ塞ぐことができる。これによって、外部の酸素を含む雰囲気ガスが電極の周面どうし間から処理空間に侵入するのを防止又は抑制できる。したがって、処理空間内の酸素濃度を確実に所定(3000ppm)以下にすることができ、難接着性樹脂フィルムの接着性を確実に向上させることができる。
前記隙間の厚さは、前記一対の電極どうし間の最も狭くなった箇所の間隔以下であることが好ましく、前記処理空間の厚さ以下であることがより好ましい。これによって、プロセスガスの供給流量を小さくしても、処理空間内の酸素濃度を確実に所定(3000ppm)以下にすることができる。ここで、前記処理空間の厚さは、前記一対の電極どうし間の最も狭くなった箇所の間隔から前記難接着性樹脂フィルムの厚さの2倍を差し引いた大きさに相当する。前記一対の電極どうし間の最も狭くなった箇所の間隔は、少なくとも前記難接着性樹脂フィルムの厚さの2倍より大きく、かつ3mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
難接着性樹脂フィルムを円筒状の電極の周面に巻き付け、円筒状の電極を回転させることによって、難接着性樹脂フィルムを搬送することができる。円筒状の電極は、上記移動手段を兼ねることができる。
軸端閉塞部材によって、外部の酸素を含む雰囲気ガスが処理空間の軸方向の端部から処理空間内に入り込むのを抑制又は防止できる。したがって、プロセスガスの供給流量を更に小さくしても、処理空間内の酸素濃度を確実に所定(3000ppm)以下にすることができる。ひいては、難接着性樹脂フィルムの接着性を確実に向上させることができる。
前記軸端閉塞部材が、前記一対の側部閉塞部材の少なくとも一方に取り付けられていることが好ましい。
前記軸端閉塞部材と円筒状の電極の軸方向の端部との間にラビリンスシールが形成されていてもよい。例えば、前記軸端閉塞部材の前記電極を向く側面には部分環状の凸部が形成され、前記電極の軸方向の端面には環状の凹溝が形成され、これら凸部と凹溝が噛み合うことによって、上記ラビリンスシールが構成される。或いは、上記ラビリンスシールとして、前記軸端閉塞部材の前記電極を向く側面には部分環状の凹溝が形成され、前記電極の軸方向の端面には環状の凸部が形成されていてもよい。
前記一対の電極の少なくとも一方と前記軸端閉塞部材との間にラビリンスシールが形成されていることが好ましい。
前記難接着性樹脂フィルムの主成分としては、例えばトリアセテートセルロース(TAC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、シクロオレフィン重合体(COP)、シクロオレフィン共重合体(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。
不飽和結合及びカルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マイレン酸、2−メタクリロイルプロピオン酸等が挙げられる。
不飽和結合及びアセチル基を有するモノマーとしては、酢酸ビニル等が挙げられる。
不飽和結合及びグリシジル基を有するモノマーとしては、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
不飽和結合及びエステル基を有するモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸2−エチル等が挙げられる。
不飽和結合及びアルデヒド基を有するモノマーとしては、アクリルアルデヒド、クロトンアルデヒド等が挙げられる。
アクリル酸やメタクリル酸等の重合性モノマーの多くは、常温常圧で液相である。そのような重合性モノマーは、不活性ガス等のキャリアガス中に気化させ、重合性モノマー蒸気とキャリアガスの混合ガスからなる重合性モノマー含有ガスを得るとよい。重合性モノマーをキャリアガス中に気化させる方法としては、重合性モノマー液の液面上の飽和蒸気をキャリアガスで押し出す方法、重合性モノマー液中にキャリアガスをバブリングする方法、重合性モノマー液を加熱して蒸発を促進させる方法等が挙げられる。押し出しと加熱、又はバブリングと加熱を併用してもよい。
上記表面処理方法を採用することによって接着性を確保でき、ひいては偏光板の品質を向上させることができる。
図2は、本発明の実施形態に係る表面処理方法を利用して作製された液晶ディスプレイ用の偏光板10を示したものである。図2(a)に示すように、偏光板10は、偏光フィルム12と、この偏光フィルム12の両面に積層された一対の保護フィルム11とを有している。
プロセスガス供給系3は、重合性モノマー供給源30と、不活性ガス供給源31を備えている。重合性モノマー供給源30は、恒温容器(恒温槽)で構成されている。恒温容器30内に、表面処理の反応成分として重合性モノマーが蓄えられている。重合性モノマーは、不飽和結合及び所定の官能基を有することが好ましく、親水性を有することがより好ましい。重合性モノマーとして、アクリル酸又はメタクリル酸を用いることが更に好ましい。ここでは、重合性モノマーとして、アクリル酸(CH2=CHCOOH)が用いられている。アクリル酸は、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を有する親水性の重合性モノマーである。アクリル酸AAは液体の状態で恒温容器30内に収容されている。恒温容器30内の液体アクリル酸AAの液面より上側の部分には、液体アクリル酸AAから気化したアクリル酸の飽和蒸気が存在している。
キャリアガスないしはプラズマ生成用ガスは、酸素を実質的に含有しないことが好ましい。
キャリア路35の先端部をアクリル酸AAの液の内部まで延ばし、アクリル酸AA内で窒素ガスをバブリングさせてもよい。
[プロセスガス供給工程]
不活性ガス供給源31の窒素ガスを、不活性ガス供給路33からプラズマ生成用ガス路34とキャリア路35に分配する。分配比を流量調節手段34v,35vにて調節する。キャリア路35に分流された窒素ガスが、恒温容器30に導入され、恒温容器30内の液体アクリル酸の液面より上側のアクリル酸蒸気を重合性モノマー蒸気路36に押し出す。プロセスガス路37において、重合性モノマー蒸気路36からのガス(窒素+アクリル酸蒸気)とプラズマ生成用ガス路34からの窒素ガスとが混合され、プロセスガスが生成される。プロセスガス(アクリル酸+窒素)中のアクリル酸の濃度は、爆発限界を考慮して2%以下であることが好ましく、1%程度がより好ましい。プロセスガスの濃度は、窒素ガスの2つの路34,35への分配比、加熱器32によるアクリル酸の加熱温度によって調節できる。このプロセスガスが、プロセスガス路37を経てプロセスガスノズル39に送られる。プロセスガスが、プロセスガスノズル39においてTACフィルム11の幅方向(図1の紙面直交方向)に均一化されたうえで、処理空間22へ吹き出される。
電源23からの電圧供給によって、電極21,21間に大気圧放電を形成し、電極間空間22を放電空間にする。これにより、プロセスガス中の窒素がプラズマ化され、かつアクリル酸蒸気が活性化され、二重結合の開裂、重合等が起きる。また、TACフィルム11への窒素プラズマの接触や、窒素プラズマからの紫外線(337nm)の照射によって、TACフィルム11の表面分子のC−C、C−O、C−H等の結合が切断される。この結合切断部にアクリル酸の重合物が結合(グラフト重合)し、或いはアクリル酸から分解したCOOH基等が結合すると考えられる。これにより、TACフィルム11の表面に接着性促進層が形成される。
さらに、ガス温調手段38によって重合性モノマー蒸気路36及びプロセスガス路37を通過中のガスの温度を所望になるよう調節する。かつプロセスガスノズル39内の温調路によってプロセスガスノズル39を通過中のプロセスガスの温度を所望になるよう調節する。これにより、プロセスガスが、プロセスガスノズル39から吹き出される時の温度(以下「吹出し温度」と称す)を設定温度にすることができる。吹出し温度の上限は、TACフィルム11が膨潤等の熱変形を来たさない範囲で設定するのが好ましい。TACフィルム11が膨潤等の熱変形を来たさない限界温度は、処理条件等にも依るが、例えば80℃前後である。吹出し温度の下限は、ガス路36,37及びノズル39内での結露を防止する観点から室温以上であることが好ましい。吹出し温度は、35℃〜80℃程度であることが好ましく、40℃〜50℃程度がより好ましい。
上記のプロセスガス供給工程及びプラズマ処理工程と併行して、ロール電極21を図1において時計回りに継続的に回転させ、TACフィルム11を右方向に送る。TACフィルム11の各ポイント(被処理箇所)は、左側のロール電極21に掛け回された後、該左側のロール電極21から離れる直前に処理空間22を通過し、折り返しロール27,27で折り返した後、右側のロール電極21に掛けられつつ再び処理空間22を通過する。TACフィルム11の各ポイント(被処理箇所)は、処理空間22を通過する度にプラズマ処理される。したがって、1つの処理空間22でTACフィルム11を2回表面処理できる。
ここで、左側のロール電極21上のTACフィルム11の移動に伴なって、該TACフィルム11の周辺の雰囲気ガス(空気)が該TACフィルム11と一緒に処理空間22に巻き込まれる。TACフィルム11の移動速度が大きくなればなるほど、空気の巻き込み量が増大する傾向がある。これに対応し、プロセスガスの供給流量を大きくする。キャリア路35の流量を一定に保ちながらプラズマ生成用ガス路34の流量を調節することで、プロセスガスの供給流量を調節するのが好ましい。これにより、処理空間22内のガスをプロセスガス(ほとんど窒素、残部アクリル酸蒸気)に置換し、処理空間22から空気ひいては酸素を追い出す。
以上のようにして表面処理された難接着性樹脂のTACフィルム11を接着剤13によって易接着性樹脂のPVAフィルム12と接着する。TACフィルム11の表面に接着性促進層が確実に形成されているため、TACフィルム11をPVAフィルム12にしっかりと接着できる。これにより、良品質の偏光板10を得ることができる。
図3は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態では、プラズマ生成部2に3つのロール電極21が設けられている。3つの電極21は、互いに同一の大きさのロール状(円柱形)をなし、軸線を図3と直交する方向に向け、左右に並べられている。3つの電極21を互いに区別するときは、左側の電極21を「電極21L」とし、中央の電極21を「電極21C」とし、右側の電極21を「電極21R」とする。
2つの処理空間22A,22Bに供給されるガスを互いに区別するときは、処理空間22Aに供給されるガス(アクリル酸蒸気+窒素)を「第1プロセスガス」と表記し、処理空間22Bに供給されるガス(窒素)を「第2プロセスガス」と表記する。
第1、第2プロセスガス供給源31,41が、共通の不活性ガス供給源にて構成されていてもよい。
なお、電極21,21間の最も狭くなった箇所の間隔gは、被処理フィルム11の厚さの2倍より大きく、かつ3mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
この実施形態では、第3実施形態(図4及び図5)の側部閉塞部材71,72に加えて、軸端閉塞部材80が設けられている。図8に示すように、軸端閉塞部材80は、電極21,21の軸方向の両端部にそれぞれ配置されている。図7に示すように、各軸端閉塞部材80は、一対の電極21,21及び一対の側部閉塞部材71,72の軸方向の互いに同じ側の端部どうし間に跨り、処理空間22の軸方向の上記同じ側の端部22eに被さっている。
なお、側板82の上下の端縁と側部閉塞部材71,72との間に隙間が形成されていてもよい。
詳述すると、図14に示すように、軸端閉塞部材90の内側(電極21を向く側)の面の左側部分には、複数の円弧状ないしは部分環状の凸部95が形成されている。これら部分環状凸部95は、互いに左側の電極21の軸線を中心とする同心円状になっている。軸端閉塞部材90の内側(電極21側)の面の右側部分には、複数の円弧状ないしは部分環状の凸部96が形成されている。これら部分環状凸部96は、互いに右側の電極21の軸線を中心とする同心円状になっている。
ラビリンスシールとして、軸端閉塞部材90に部分環状の凹溝が形成され、電極21の端面に上記凹溝と噛み合う環状の凸部が形成されていてもよい。
例えば、プロセスガス流量調節工程において、プラズマ生成用ガス路34の流量調節に加え、キャリア路35の流量をも調節することで、プロセスガスの供給流量を調節してもよい。プラズマ生成用ガス路34の流量を一定に保ちながらキャリア路35の流量を調節することで、プロセスガスの供給流量を調節してもよい。プラズマ生成用ガス路34の流量をゼロにし、キャリア路35の流量を調節することで、プロセスガスの供給流量を調節してもよい。
処理空間22及びその周辺の雰囲気ガスを不活性ガス(例えば窒素)に置換することにより、処理空間22の酸素濃度が所定以下、すなわち好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下、一層好ましくは1000ppm以下になるよう調節してもよい。処理空間22及びその周辺をチャンバーで囲み、チャンバーの内部のガスを不活性ガス(例えば窒素)に置換することにより、処理空間22の酸素濃度が所定以下になるよう調節してもよい。
処理空間22の周辺部分に不活性ガス(例えば窒素)のガスカーテンを形成し、このガスカーテンにて空気等の雰囲気ガスが処理空間22に入り込むのを阻止又は抑制することにより、処理空間22の酸素濃度が所定以下になるよう調節してもよい。
難接着性樹脂フィルム11が静止され、処理空間22が移動されるようになっていてもよい。
難接着性樹脂フィルム11及び処理空間22を相対移動させずにプラズマ処理を行なうことにしてもよい。
プラズマ処理工程の後、接着工程前に、難接着性樹脂フィルムを水性洗浄液にて洗浄してもよい。
難接着性樹脂フィルムの表面処理方法及び表面処理装置は、偏光板の製造以外の用途に適用してもよい。
複数の実施形態を要素を互いに組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態(図3)にも第3〜第5実施形態又はそれらの変形例の閉塞手段7を設けることにしてもよい。その場合、閉塞手段7は、処理空間22A,22Bのうち少なくとも処理空間22Aに対応して設けられる。
軸端閉塞部材80,90,92が、軸方向の片側にだけ設けられていてもよい。
実施例1では放電空間への酸素混入量と接着性との関係を調べた。用いた表面処理装置の概略構成を図15に示す。
下側の電極25上にTACフィルム11を置いた。電極25の温度ひいてはフィルム温度を25℃に調節した。したがって、プロセスガスとTACフィルムの温度差は7℃であった。
以上の操作を3回繰り返し、同一条件(酸素混入量)の試行データを3つずつ取得した。
(イ)供給電力:918W(270V、3.4Aの直流を交流変換)
印加電圧:Vpp=15.3kV
(ロ)供給電力:891W(270V、3.3Aの直流を交流変換)
印加電圧:Vpp=15.3kV
(ハ)供給電力:864W(270V、3.2Aの直流を交流変換)
印加電圧:Vpp=15kV
(ニ)供給電力:810W(270V、3Aの直流を交流変換)
印加電圧:Vpp=14.8kV
比較例1として、図3においてキャリア路35の流量を0とし、窒素ガス10L/minをガス路33,34,37,39の順に流して処理空間22Aに供給しプラズマ化した。したがって、比較例1の第1プロセスガス中のアクリル酸含有量は0である。第1プロセスガスの吹出し温度は40℃とし、TACフィルム11の温度は25℃とした。また、第2プロセスガスとして窒素ガス10L/minを処理空間22Bに供給した。TACフィルムの搬送速度は2m/minとした。供給電力は1107W(270V、4.1Aの直流を交流変換)であった。電極間の印加電圧はVpp=15.6kVであった。プラズマ処理後のTACフィルムを実施例1と同様にしてPVAフィルムとの接着を試みたが、ほとんど接着されなかった。
第1プロセスガスの供給流量(図16のグラフの横軸)が一定かつ相対的に小さい値の場合、移動速度が大きくなるにしたがって、処理空間22Aの酸素濃度が増大した。これは、移動速度が大きくなればなるほど、空気の処理空間22A内への巻き込み量が増大することを示している。また、移動速度が一定の場合、第1プロセスガスの供給流量が大きくなるにしたがって、処理空間22Aの酸素濃度が減少した。これは、第1プロセスガスの供給流量を増やすことで、処理空間22A内のガスを第1プロセスガスに置換できることを示している。第1プロセスガスの供給流量が20Lを越えると、移動速度に拘わらず、処理空間22Aの酸素濃度が1000ppm以下になり、確実に3000ppm以下になった。さらに、第1プロセスガスの供給流量が30Lを越えると、移動速度に拘わらず、処理空間22Aの酸素濃度がほぼ0ppmになった。これは、処理空間22A内のガスがほぼ完全に第1プロセスガスに置換されていることを示している。
被処理フィルム11の幅(電極21の軸方向に沿う寸法)は330mmであり、フィルム11の厚さは、0.1mmであった。
閉塞部材71,72の軸方向の長さ及び電極21,21の軸方向の長さは330mmであった。電極21,21の直径は310mmであった。電極21,21の最も狭くなった箇所の間隔(処理空間22の厚さ)は、0.7mmであった。
電極21,21の軸線が配置された水平面に対して上に21.5mm離れた位置にノズル兼閉塞部材71の下端面を位置させた。上記水平面に対して下に21.5mm離れた位置に閉塞部材72の上端面を位置させた。したがって、処理空間22の上下方向の寸法は43mmであった。処理空間22の軸線と直交する断面の断面積は、72.97mm2であった。処理空間22の体積は、0.02408Lであった。
側部隙間73e,73f,74e,74fの厚さtは、それぞれt=0.5mm程度とした。
側板82と電極21の端面との間の隙間82eの厚さt8はt8=0.1mmとした。
軸端閉塞部材80の上下の長さは134mmであり、軸端閉塞部材80の幅(電極21,21の並び方向に沿う寸法)は48mmであった。軸端閉塞部材80の軸方向の寸法は35mmであった。
供給ガス流量が10slmのときは、搬送速度が0〜10m/minでは処理空間22内の酸素濃度は2桁台のppm濃度であったが、搬送速度を20m/min〜30m/minにすると酸素濃度が大きく増大して5桁台のppm濃度になった。
供給ガス流量が20slmのときは、搬送速度を20m/min〜30m/minにしても酸素濃度が2桁台のppm濃度に維持された。
供給ガス流量が30slm〜40slmのときは、搬送速度を増大させても酸素濃度はほとんど変化しなくなった、
なお、上段部材83の穴83bは、ノズル兼閉塞部材71の軸方向の端部との連結用のボルト穴である。下段部材85の穴85bは、下側の閉塞部材72の軸方向の端部との連結用のボルト穴である。
上記のガス供給と併行して、電極21,21を図7において時計周りに回転させ、フィルム11を搬送した。フィルム11の搬送速度は、10m/min、20m/min、30m/minの3通りとした。
電極21及びノズル兼閉塞部材71の温度調節は行わなかった。
そして、上述のノズル兼閉塞部材71を高さ調節したときと同様にして、処理空間22の酸素濃度を計測した。
表4において、最下欄以外の欄が、下側の閉塞部材72の位置を固定し、上側の閉塞部材71を上昇させたときのデータである。最下欄が、上側の閉塞部材71の位置を固定し、下側の閉塞部材72を下降させたときのデータである。
これに対し、搬送速度を上記と同じ10m/minのまま、供給ガス流量を20slmにすると、閉塞部材71の高さに拘わらず、処理空間22内の酸素濃度があまり変化しなくなり、30ppm以下に維持できた。
この傾向は、搬送速度を20m/minにしたときも同様であった。すなわち、搬送速度が20m/minかつ供給ガス流量が10slmのときは、処理空間22内の酸素濃度が5桁台のppm濃度になったが、搬送速度を20m/minのまま、供給ガス流量を20slmにすると、閉塞部材71の高さに拘わらず、処理空間22内の酸素濃度を30ppm以下のほぼ一定値に維持できた。
搬送速度を30m/min、供給ガス流量を30slmにして、閉塞部材71の高さを調節したときも、閉塞部材71の高さに拘わらず、処理空間22内の酸素濃度を30ppm以下のほぼ一定値に維持できた。
搬送速度を30m/min、供給ガス流量を30slmにして、下側の閉塞部材72の高さを調節したときも、閉塞部材72の高さに拘わらず、処理空間22内の酸素濃度を2桁のppm濃度に維持できた。なお、この場合は、同じ搬送速度及び同じ供給ガス流量で上側の閉塞部材71を高さ調節したときより酸素濃度は少し大きくなった。
10 偏光板
11 TACフィルム(難接着性樹脂フィルム)
12 PVAフィルム(易接着性樹脂フィルム)
13 接着剤
14 ハードコート層
2 プラズマ処理部
21 電極兼移動手段
21L 左側の電極
21C 中央の電極
21R 右側の電極
22 処理空間(放電空間)
22A 処理空間(放電空間)
22B 処理空間(放電空間)
22e 軸端開口
23 電源
24 上側の平板電極
25 下側の平板電極
27 折り返しロール(難接着性フィルムの移動手段)
28 フィルム温度調節手段
3 プロセスガス供給系
03A 第1プロセスガス供給系
30 恒温容器(重合性モノマー供給源)
31 不活性ガス供給源
32 加熱器
33 不活性ガス供給路
34 プラズマ生成用ガス路
34v 流量調節手段
35 キャリア路
35v 流量調節手段
36 重合性モノマー蒸気路
37 プロセスガス路
38 ガス温調手段
39,39A プロセスガスノズル
4 第2プロセスガス供給系
41 第2プロセスガス供給源
43 第2プロセスガスノズル
42 第2プロセスガス供給路
51 酸素混入路
61 排気手段
62 吸引ノズル
7 閉塞手段
71 プロセスガスノズル兼用の側部閉塞部材
72 側部閉塞部材
72A プロセスガスノズル兼用の側部閉塞部材
73 凹曲面
73e,73f 側部隙間
74 凹曲面
74e,74f 側部隙間
75 整流部
76 吹出し路
77 下側の整流部
78 下側の吹出し路
79 温調路
80 軸端閉塞部材
81 正面板
82 側板
82e 軸端隙間
90 軸端閉塞部材
91 軸端隙間
92 軸端閉塞部材
93 ラビリンスシール
94 ラビリンスシール
95 部分環状の凸部
96 部分環状の凸部
97 環状凹溝
98 環状凹溝
Claims (16)
- 易接着性樹脂フィルムと接着されるべき難接着性樹脂フィルムの表面を処理する方法であって、
重合性モノマーの蒸気を含有するプロセスガスを大気圧近傍の処理空間に供給し、前記重合性モノマーを、プラズマにより活性化させて、前記処理空間に配置した前記難接着性樹脂フィルムと反応させ、
前記難接着性樹脂フィルムを前記処理空間に対し相対移動させ、前記相対移動に伴って前記難接着性樹脂フィルムと一緒に前記処理空間内に巻き込んだ酸素を含む雰囲気ガスを前記プロセスガスによって前記処理空間から追い出すことによって、前記処理空間内の酸素濃度が3000ppm以下になるように、前記プロセスガスの前記処理空間への供給流量を、前記難接着性樹脂フィルムの相対移動速度に応じて設定することを特徴とするフィルム表面処理方法。 - 平行な一対の円筒状の電極どうしの間に前記処理空間を形成し、かつ前記処理空間内に放電を生成し、前記難接着性樹脂フィルムを前記一対の電極の周面に巻き付け、かつ前記電極どうしの間に於いては、前記難接着性樹脂フィルムを、一方の電極に接触させながら前記処理空間に通し、更に折り返して他方の電極に接触させながら前記処理空間に通し、前記一対の電極の回転により前記難接着性樹脂フィルムを移動させ、かつ前記プロセスガスの供給流量を、前記処理空間内の酸素濃度が3000ppm以下になるように、前記プロセスガスの前記処理空間への供給流量を、前記一対の電極の回転速度に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載のフィルム表面処理方法。
- 前記プロセスガスが、酸素ガスを実質的に含有しないことを特徴とする請求項2に記載のフィルム表面処理方法。
- 前記処理空間内の酸素濃度が2000ppm以下になるよう設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフィルム表面処理方法。
- 前記処理空間内の酸素濃度が1000ppm以下になるよう設定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフィルム表面処理方法。
- 前記相対移動の速度を10m/min以上とすることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフィルム表面処理方法。
- 前記重合性モノマーが、アクリル酸又はメタクリル酸であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のフィルム表面処理方法。
- 前記難接着性樹脂フィルムが透明な保護フィルムであり、前記易接着性樹脂フィルムが、偏光フィルムであり、請求項1〜7の何れか1項に記載のフィルム表面処理方法を実行した後、前記難接着性樹脂フィルムを易接着性樹脂フィルムに透明な接着剤を介して接着することを特徴とする偏光板の製造方法。
- 易接着性樹脂フィルムと接着されるべき難接着性樹脂フィルムの表面を処理する装置であって、
重合性モノマーを、プラズマにより活性化させて大気圧近傍の処理空間に配置した難接着性樹脂フィルムに接触させるプラズマ処理部と、
前記難接着性樹脂フィルムを前記処理空間に対し相対移動させる移動手段と、
前記重合性モノマーの蒸気を含有するプロセスガスを前記処理空間に供給するプロセスガス供給系と、
を備え、
前記プロセスガス供給系による前記プロセスガスの処理空間への供給流量が、前記相対移動に伴って前記難接着性樹脂フィルムと一緒に前記処理空間内に巻き込んだ酸素を含む雰囲気ガスを前記プロセスガスによって前記処理空間から追い出すことによって、前記処理空間内の酸素濃度が3000ppm以下になるように、前記相対移動の速度に応じて設定されていることを特徴とするフィルム表面処理装置。 - 前記プラズマ処理部が、前記処理空間内に放電を生成する一対の電極を有し、
前記一対の電極が、それぞれ軸線を軸方向に向けた円筒状をなして前記軸方向と直交する並び方向に平行に並べられ、これら電極どうし間の最も狭くなった箇所及びその周辺が前記処理空間となり、前記難接着性樹脂フィルムが前記一対の電極の周面に巻き付けられ、かつ前記電極どうしの間に於いては、前記難接着性樹脂フィルムが、一方の電極に接触しながら前記電極どうしの間の大気圧近傍の処理空間に通され、更に折り返されて他方の電極に接触しながら前記処理空間に通されており、前記移動手段が、前記一対の電極の回転により前記難接着性樹脂フィルムを移動させ、前記プロセスガス供給系による前記プロセスガスの処理空間への供給流量が、前記処理空間内の酸素濃度が3000ppm以下になるように、前記一対の電極の回転速度に応じて設定されていることを特徴とする請求項9に記載のフィルム表面処理装置。 - 前記一対の電極どうし間の最も狭くなった箇所及びその周辺が前記処理空間となり、
更に、前記処理空間を挟んで前記軸方向及び前記並び方向と直交する直交方向の両側に設けられ、前記軸方向に延び、かつ前記各電極の周面との間に前記難接着性樹脂フィルムの前記各電極への巻き付けを許容する隙間を形成するようにして前記一対の電極の前記周面どうし間に跨る一対の側部閉塞部材を備え、前記一対の側部閉塞部材のうち少なくとも1つが、前記プロセスガス供給系の下流端のプロセスガスノズルを構成していることを特徴とする請求項10に記載のフィルム表面処理装置。 - 前記一対の電極及び前記一対の側部閉塞部材の前記軸方向の互いに同じ側の端部どうし間に跨り、前記処理空間の前記軸方向の前記同じ側の端部に被さる軸端閉塞部材を、更に備えたことを特徴とする請求項11に記載のフィルム表面処理装置。
- 前記軸端閉塞部材が、前記一対の側部閉塞部材の少なくとも一方に取り付けられていることを特徴とする請求項12に記載のフィルム表面処理装置。
- 前記一対の電極の少なくとも一方と前記軸端閉塞部材との間にラビリンスシールが形成されていることを特徴とする請求項12に記載のフィルム表面処理装置。
- 前記難接着性樹脂フィルムを前記処理空間に対し相対移動させる移動手段を更に備え、前記移動手段による前記相対移動の速度が10m/min以上であることを特徴とする請求項9〜14の何れか1項に記載のフィルム表面処理装置。
- 前記重合性モノマーが、アクリル酸又はメタクリル酸であることを特徴とする請求項9〜15の何れか1項に記載のフィルム表面処理装置。
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