JP5575057B2 - 等速ジョイント - Google Patents

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Description

本発明は、駆動回転軸から従動回転軸に回転駆動力を伝達するための等速ジョイントに関する。
バーフィールド型等速ジョイント(以下、単に等速ジョイントともいう)は、自動車の走行駆動力伝達機構において、駆動回転軸であるドライブシャフトから従動回転軸であるハブに回転駆動力を伝達する継手として周知である。
一層具体的には、等速ジョイントは、ボール溝が形成されたアウタ部材と、該アウタ部材の有底穴に挿入されてボール溝が形成されたインナ部材と、前記2つのボール溝内で摺動するトルク伝達ボールを保持する略円環形状のリテーナとを有する。ドライブシャフトの回転駆動力は、該ドライブシャフトの先端部に外嵌された前記インナ部材から前記トルク伝達ボールを介して前記アウタ部材に伝達され、さらに、該アウタ部材の軸部に連結されたハブを介してタイヤに伝達される。
ここで、ドライブシャフトの延在方向に対してハブが傾斜したときには、トルク伝達ボールは、前記2つのボール溝の各壁に摺接しながら転動する。この転動により、リテーナが所定の角度で傾斜する(特許文献1参照)。
この際には、前記リテーナの外壁がアウタ部材の前記有底穴の内壁に対して摺接する。この結果、アウタ部材とリテーナとの間に滑り摩擦が発生する。これに伴って損失が生じるため、等速ジョイントを介してドライブシャフトからハブに伝達される回転駆動力が低減する。すなわち、伝達効率が低下してしまう。
このような不具合を回避するには、特許文献2に記載されるように、リテーナ(特許文献2においては「ケージ」と称呼されている)の外壁に対し、固体潤滑剤を含む被膜を形成することが有効であるとも考えられる。固体潤滑剤によってリテーナの外壁と有底穴の内壁との間の潤滑性が良好となるので、アウタ部材に対するリテーナの摺動抵抗が低減すると予測されるからである。
特許第4217195号公報(特に段落[0040]) 特開2002−372066号公報(特に段落[0010]、[0011])
特許文献2に記載されるようにリテーナの外壁に対して被膜を形成する場合、バインダ樹脂と固体潤滑剤を含むコーティング剤をリテーナの外壁に塗布した後に焼成処理を施すか、又は、固体電解質を含むメッキ浴を用いて無電解メッキを行う必要がある。すなわち、リテーナに対して被膜を形成する工程が加わる。従って、等速ジョイントを組み立て上げるに至るまでの工程数が増加する。また、塗布・焼成処理や、無電解メッキ等の煩雑な作業を実施しなければならない。
以上から諒解されるように、一般的な等速ジョイントには高い伝達効率を発現させることが容易ではないという不具合が顕在化している。また、これを回避するべく、特許文献2に記載されるように固体潤滑剤を含む被膜をリテーナの外壁に形成する場合には、等速ジョイントを効率よく得ることができないという不都合が惹起される。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、アウタ部材のカップ部とリテーナとの間に滑り摩擦が発生することを回避して高い伝達効率を得ることが可能であり、しかも、容易に組み立て得る等速ジョイントを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、有底穴が形成されたアウタ部材と、回転軸に外嵌されて前記アウタ部材の前記有底穴に挿入されるインナ部材と、前記アウタ部材と前記インナ部材との間に介装され且つ前記有底穴の内壁に陥没形成された複数個の第1ボール溝、及び前記インナ部材の側壁に陥没形成された複数個の第2ボール溝の各々に挿入された複数個のトルク伝達ボールと、前記トルク伝達ボールを保持するリテーナとを有する等速ジョイントにおいて、
前記有底穴の内壁に凹部が陥没形成され、
前記凹部に収容され、その一部が該凹部から露呈して前記リテーナの外壁に摺接する転動体を設けたことを特徴とする。
すなわち、本発明においては、リテーナの外壁が転動体に摺接する。転動体が転動することにより、リテーナと転動体との間が転がり接触となる。すなわち、滑り摩擦に比して抵抗が小さい転がり摩擦となる。このため、転動体が存在しない場合に比して、アウタ部材に対するリテーナの摺動抵抗が低減する。
その結果として損失が低減するので、ドライブシャフトからハブに伝達される回転駆動力が等速ジョイントを介して効率よく伝達される。従って、優れた伝達効率を得ることができる。
しかも、この等速ジョイントは、凹部に転動体を収容することを除いては一般的な等速ジョイントと同様にして組み立てることができる。従って、該等速ジョイントを得るに至るまでの工程数が徒に増加することはなく、組立作業が煩雑となることもない。
また、本発明においては、リテーナに対して被膜を形成するための煩雑な作業を行う必要がない。従って、被膜形成作業を行うために等速ジョイントの生産効率が低下することが回避される。
転動体は、前記凹部に収容することで位置決めするようにしてもよい。又は、複数個の転動体を循環可能に収容するようにしてもよい。
複数個の転動体を循環可能に構成するには、例えば、転動体をハウジングに収納し、該ハウジングの内部で循環させればよい。勿論、このハウジングは、前記凹部に収容される。
本発明によれば、リテーナの外壁を転動体に摺接させるようにしているので、リテーナと転動体との間が、滑り摩擦に比して抵抗が小さい転がり摩擦となる。このため、アウタ部材に対するリテーナの摺動抵抗が低減するとともに損失が低減し、その結果、ドライブシャフトからハブに伝達される回転駆動力が高効率で伝達される。すなわち、優れた伝達効率を示す等速ジョイントを得ることができる。
しかも、この等速ジョイントは、簡素な工程を経て容易に組み立てることが可能である。
本発明の第1実施形態に係る等速ジョイントの軸線方向に沿う概略全体一部縦断面図である。 図1の等速ジョイントの概略全体正面図である。 図1の等速ジョイントの要部拡大斜視図である。 図1の等速ジョイントを構成するインナ部材の概略全体斜視図である。 図1の等速ジョイントを構成するリテーナの概略全体斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る等速ジョイントの要部拡大縦断面図である。 図6の等速ジョイントを構成して転動体であるニードルベアリングを収容するためのハウジングを分解して示した分解斜視図である。 前記ハウジングを構成した状態を示す概略全体斜視図である。 転動体として球状ベアリングを収容したハウジングを示す概略全体斜視図である。
以下、本発明に係る等速ジョイントにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2は、それぞれ、第1実施形態に係る等速ジョイント10(バーフィールド型等速ジョイント)の軸線方向に沿う概略全体一部縦断面図、概略全体正面図である。この等速ジョイント10は、アウタ部材12と、インナ部材14と、これらアウタ部材12とインナ部材14の間に介在するトルク伝達ボール16と、該トルク伝達ボール16を保持するリテーナ18とを具備する。
この中のアウタ部材12は、図示しないハブが連結される軸部20と、有底穴22が形成されたカップ部24とを有し、該カップ部24の湾曲した内壁には、互いに等角度で離間した6個のアウタ側ボール溝26(第1ボール溝)が陥没形成される。さらに、隣接するアウタ側ボール溝26、26同士の間には、図1及び図3に示すように、転動体としての転動ローラ28を2個収容するための転動体収容用凹部30が陥没形成される。第1実施形態では、アウタ側ボール溝26が6本存在するので、転動ローラ28の全個数は12個である。
転動体収容用凹部30は、その軸線がカップ部24の軸線に対して直交する方向に延在するように形成されている(図3参照)。従って、転動ローラ28の軸線も、カップ部24の軸線に対して直交する。
転動ローラ28の両底面からは、支軸32が突出形成される。両支軸32、32を含めた転動ローラ28の軸線方向寸法は、転動体収容用凹部30の軸線方向寸法に比して若干短尺である。従って、転動ローラ28は、両支軸32、32を回転中心として回転自在な状態で転動体収容用凹部30に収容され、この状態で位置決めされる。
転動体収容用凹部30の深さは、転動ローラ28の直径に比して若干小さい。このため、転動ローラ28の一部は、転動体収容用凹部30から突出するように露呈している。この露呈した転動ローラ28の一部に、リテーナ18の外壁が摺接する(図1参照)。
一方、インナ部材14には、図4に示すように、直径方向外方に膨出するように湾曲した外周面を切り欠くようにして、アウタ側ボール溝26と同数個のインナ側ボール溝34(第2ボール溝)が陥没形成される。また、その厚み方向に沿って挿通孔36が貫通形成されている。この挿通孔36には、ドライブシャフト38の先端部が挿入される。すなわち、インナ部材14は、ドライブシャフト38の先端部に外嵌されるとともに、リテーナ18の内方に挿入された状態で前記有底穴22に収容される(図2参照)。
リテーナ18は、図5に示すように円環形状をなす。リテーナ18の内径IRは、インナ部材14におけるインナ側ボール溝34が存在しない箇所の外径OR(図4参照)に比して若干大きい。従って、インナ部材14は、リテーナ18の内方に容易に挿入可能である。
リテーナ18には、内壁から外壁まで貫通した窓40が複数個形成されている。前記トルク伝達ボール16は、この窓40に収容されるとともに、アウタ側ボール溝26とインナ側ボール溝34に挿入される(図2参照)。
第1実施形態に係る等速ジョイント10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、動作との関係で説明する。
上記したように構成される等速ジョイント10は、自動車の走行駆動力伝達機構において、駆動回転軸であるドライブシャフト38から、従動回転軸である前記ハブに回転駆動力を伝達する継手として好適に採用される。
この場合において、ドライブシャフト38の延在方向に対して前記ハブが傾斜したときには、トルク伝達ボール16が前記2つのボール溝26、34の各壁に摺接しながら転動するとともに、リテーナ18が所定の角度で傾斜する。この際、アウタ部材12に形成された有底穴22の内壁に対し、リテーナ18の外壁が摺接する。
ここで、上記したように、アウタ部材12の内壁には転動ローラ28が設けられている。従って、リテーナ18の外壁は、転動ローラ28に摺接する。この際には、転動ローラ28が両支軸32を回転中心として転動体収容用凹部30内で回転動作する。
すなわち、第1実施形態によれば、リテーナ18の外壁と転動ローラ28の側壁の間が転がり接触となる。換言すれば、滑り摩擦に比して抵抗が小さい転がり摩擦となるので、転動ローラ28が存在しない場合に比して、アウタ部材12のカップ部24に対するリテーナ18の摺動抵抗が低減する。
その結果として、損失も低減する。このため、ドライブシャフト38からハブに伝達される回転駆動力が等速ジョイント10を介して効率よく伝達される。すなわち、優れた伝達効率を得ることができる。
このように、有底穴22の内壁に転動ローラ28を設けたことにより、いわゆる作動角が生じる場合であっても、カップ部24(アウタ部材12)に対するリテーナ18の摺動抵抗が小さく、伝達効率に優れた等速ジョイント10を構成することができる。
しかも、この等速ジョイント10は、転動体収容用凹部30に転動ローラ28を収容する以外は一般的な等速ジョイントと同様にして組み立てることが可能である。従って、製造の際の工程数が徒に増加することはなく、また、作業が煩雑となることもない。
その上、リテーナ18に対して被膜を形成するための作業(コーティング剤の塗布・焼成処理や無電解メッキ等)を行う必要がないので、被膜形成作業を行うことに起因して生産効率が低下することを回避することもできる。
なお、転動ローラ28の個数は2個に特に限定されるものではなく、1個でもよいし、3個以上でもよい。
上記した第1実施形態では、転動ローラ28を転動体収容用凹部30に直接収容し、その状態で回転動作させるようにしているが、転動ローラ28を循環可能な構成を採用するようにしてもよい。以下、この実施の形態につき、第2実施形態として説明する。
第2実施形態に係る等速ジョイント50(バーフィールド型等速ジョイント)は、その要部を拡大した図6に示すように、アウタ部材52の内壁にハウジング収容用凹部54が形成されるとともに、該ハウジング収容用凹部54にハウジング56が収容されている。さらに、該ハウジング56内には、略円柱体形状をなす複数個のニードルベアリング58(転動体)が循環可能に収納されている。
すなわち、図7に示すように、ハウジング56は、第1ケーシング部材60及び第2ケーシング部材62を有する。これら第1ケーシング部材60、第2ケーシング部材62の各々には、第1環状溝64、第2環状溝66(図6参照)が形成される。第1環状溝64、第2環状溝66の深さは、それぞれ、ニードルベアリング58の高さ方向寸法の略半分である。
第1ケーシング部材60には嵌合用凹部68が形成される一方、第2ケーシング部材62には嵌合用凸部70が形成される。嵌合用凹部68に嵌合用凸部70が嵌合されることにより、図8に示すハウジング56が構成されるとともに、ニードルベアリング58がハウジング56内で第1環状溝64及び第2環状溝66の双方に収納される。
第1ケーシング部材60及び第2ケーシング部材62には、それぞれ、第1露呈窓72、第2露呈窓74が形成される。従って、ハウジング56が形成されると、複数個のニードルベアリング58の中の数個が第1露呈窓72、第2露呈窓74から露呈する。
なお、図6においては、複数個のニードルベアリング58が第1環状溝64及び第2環状溝66に循環可能に収納されていること、及びニードルベアリング58の中の数個が第1露呈窓72、第2露呈窓74から露呈していることの理解を容易にするべくハウジング56内を視認し得るように、第1ケーシング部材60を取り外して第2ケーシング部材62のみを図示している。
この場合においては、ドライブシャフト38(図1及び図2参照)の延在方向に対して前記ハブが傾斜することに伴ってリテーナ18が所定の角度で傾斜したとき、リテーナ18の外壁がニードルベアリング58に摺接する。例えば、リテーナ18が図6中の矢印X方向に向かうように傾斜したときには、該リテーナ18の外壁が摺接するニードルベアリング58が矢印Y方向に回転動作する。同時に、ニードルベアリング58は、該ニードルベアリング58に摺接するリテーナ18に同伴されて移動する。
この移動によって、ニードルベアリング58が、自身に隣接するニードルベアリング58を押し出す。その結果、ハウジング56内のニードルベアリング58に、矢印Z方向に向かう流れが生じる。すなわち、複数個のニードルベアリング58の全てが第1環状溝64及び第2環状溝66に沿って矢印Z方向に向かい、ハウジング56内で循環する。
ニードルベアリング58がこのように動作することにより、リテーナ18の外壁とニードルベアリング58の間が転がり接触となる。すなわち、第1実施形態と同様に滑り摩擦に比して抵抗が小さい転がり摩擦となるので、この場合も、アウタ部材52に対するリテーナ18の摺動抵抗が低減する。このために損失が低減するので、優れた伝達効率が得られる。
また、第2実施形態においても、リテーナ18に対して被膜を形成するための作業を行う必要がない。このため、被膜を形成する場合に比して等速ジョイント50の生産効率が向上する。
なお、転動ローラ28やニードルベアリング58に代替し、球状ベアリングを転動体として採用するようにしてもよい。例えば、第2実施形態の場合、図9に示すように上記と同様に構成されたハウジング56内に球状ベアリング80を収納し、このハウジング56を、アウタ部材52に形成されたハウジング収容用凹部54(図6参照)に収容すればよい。
本発明は、上記した第1実施形態及び第2実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
10、50…等速ジョイント 12、52…アウタ部材
14…インナ部材 16…トルク伝達ボール
18…リテーナ 20…軸部
22…有底穴 24…カップ部
26…アウタ側ボール溝 28…転動ローラ
30…転動体収容用凹部 34…インナ側ボール溝
38…ドライブシャフト 40…窓
54…ハウジング収容用凹部 56…ハウジング
58…ニードルベアリング 64…第1環状溝
66…第2環状溝 72…第1露呈窓
74…第2露呈窓 80…球状ベアリング

Claims (3)

  1. 有底穴が形成されたアウタ部材と、回転軸に外嵌されて前記アウタ部材の前記有底穴に挿入されるインナ部材と、前記アウタ部材と前記インナ部材との間に介装され且つ前記有底穴の内壁に陥没形成された複数個の第1ボール溝、及び前記インナ部材の側壁に陥没形成された複数個の第2ボール溝の各々に挿入された複数個のトルク伝達ボールと、前記トルク伝達ボールを保持するリテーナとを有する等速ジョイントにおいて、
    前記有底穴の内壁に凹部が陥没形成され、
    前記凹部に収容され、その一部が該凹部から露呈して前記リテーナの外壁に摺接する転動体を設けたことを特徴とする等速ジョイント。
  2. 請求項1記載の等速ジョイントにおいて、前記転動体が複数個設けられるとともに、前記複数個の転動体は、前記凹部に循環可能に収容されることを特徴とする等速ジョイント。
  3. 請求項2記載の等速ジョイントにおいて、前記転動体は、ハウジングに収納されて前記凹部に収容されることを特徴とする等速ジョイント。
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