JP5573504B2 - 内燃機関燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、筒内噴射用インジェクタと吸気通路噴射用インジェクタとを備え、これら両方のインジェクタによる燃料噴射比率を内燃機関運転状態に応じて設定するデュアル噴射型の内燃機関における内燃機関燃料噴射制御装置に関する。
筒内に向けて燃料を噴射する筒内噴射用インジェクタと、サージタンクや吸気ポートなどの吸気通路内に燃料を噴射する吸気通路噴射用インジェクタとを備えて、内燃機関運転状態に応じてこれらのインジェクタ間の燃料噴射比率を調節することで燃費特性や出力特性の改善を図るデュアル噴射型の内燃機関が知られている。
このような内燃機関では筒内噴射用インジェクタに対しては、吸気通路噴射用インジェクタに供給する燃料圧力よりも更に高圧化した燃料を供給する必要性から高圧燃料系を形成している。
しかし内燃機関がデュアル噴射型であると、内燃機関運転状態によっては、吸気通路噴射用インジェクタによる燃料噴射比率が大きくなって、その分、筒内噴射用インジェクタによる燃料噴射比率が低下することがある。特に全体の燃料噴射量が少なくなる運転状態にある場合には、筒内噴射用インジェクタから噴射される燃料の絶対量が低下することになる。このために高圧燃料系に流れる燃料量が減少したり、あるいは完全に流量ゼロとなったりする。
高圧燃料系では高圧燃料ポンプにより低圧燃料を高圧化することになるが、このような高圧燃料ポンプでの潤滑などのために、内燃機関運転時には高圧燃料ポンプにはエンジンオイルが噴霧され、高圧燃料ポンプ周りにはエンジンオイルが常に流れる。更にシリンダヘッドに取り付けられている筒内噴射用インジェクタや高圧燃料ポンプには内燃機関からの受熱量も大きい傾向にある。
このため吸気通路噴射用インジェクタによる燃料噴射比率が増加したり、あるいは燃料噴射比率が変化しなくても全体の燃料噴射量が減少したりして、高圧燃料系での燃料流量が低下すると、高圧燃料系が、流動燃料の熱容量によって奪い去られる熱量が極めて小さくなり、あるいは全くなくなる。このことにより高圧燃料系が高温化する場合がある。
この高温化により内部の燃料温度が極めて高くなり、燃料の飽和蒸気圧が高圧燃料系内の圧力より高くなると高圧燃料系内でのベーパーの発生を促して、筒内噴射用インジェクタによる燃料噴射量に影響し、内燃機関運転安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。
このような高圧燃料系の過熱状態を防止するために、吸気通路噴射用インジェクタにおける燃料噴射比率が高く、かつ燃料圧力又は燃料温度が高い場合には、高圧燃料系に設けたリターン通路により高圧燃料系内の燃料を燃料タンクに排出する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
国際公開 WO 2006/100938公報(第7,8頁、図4,5)
しかし特許文献1の手法では、高圧燃料系の燃料がリターン通路の開放により循環することにより高圧燃料系の温度は抑制されるが、燃料ベーパーは燃料タンクに排出されることになる。このため燃料タンクから大量の燃料ベーパーを発生させることになり、環境上好ましくない。更に、高圧燃料系にリターン通路が設けられていない構成を採用した場合には、特許文献1の手法自体が適用不能である。
本発明は、デュアル噴射型の内燃機関において、燃料タンクに燃料ベーパーを大量に発生させることなく、高圧燃料系における過熱状態を抑制して、内燃機関運転安定性を高めることを目的とするものである。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関燃料噴射制御装置は、筒内噴射用インジェクタと吸気通路噴射用インジェクタとを備え、これら両方のインジェクタによる燃料噴射比率を内燃機関運転状態に応じて設定するデュアル噴射型の内燃機関燃料噴射制御装置において、前記筒内噴射用インジェクタに燃料を供給する高圧燃料系内の燃料温度を実測又は推定により検出する燃料温度検出手段と、前記燃料温度検出手段にて検出される前記高圧燃料系の燃料温度が基準燃料温度より高い場合には、前記燃料噴射比率を変更することで前記筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射量を増加する燃料噴射比率変更手段とを備え、前記高圧燃料系では高圧燃料ポンプによる加圧により高圧燃料が形成され、前記高圧燃料系からの前記高圧燃料の放出は前記筒内噴射用インジェクタからのみであることを特徴とする。
燃料噴射比率変更手段では、燃料温度検出手段の検出する高圧燃料系の燃料温度が基準燃料温度より高い場合は、高圧燃料系が高温化して過熱状態あるいは過熱のおそれがあることから、燃料噴射比率を変更することで筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射量を増加している。このように燃料噴射比率を変更することで、筒内噴射用インジェクタと吸気通路噴射用インジェクタとの両方からなされる燃料噴射量の合計を変更せずに筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射量を増加することができる。
このような高圧燃料系での燃料流量増加制御は、高温化した高圧燃料のリターンによるものではない。したがって、高温化した高圧燃料が燃料タンクに排出されないので、燃料タンク内に燃料ベーパーを大量に発生させることはない。
ところで、高圧燃料系からの高圧燃料の放出が筒内噴射用インジェクタからのみである構成、すなわちリターン通路が存在しない高圧燃料系の構成を、デュアル噴射型の内燃機関に適用すると、燃料噴射比率によっては過熱状態になり易い。
この点、上記構成によれば、筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射量が増加されることにより、外部から高圧燃料系内に供給される燃料量は増加する。したがってその増加した燃料流により高圧燃料系は冷却されて高温化が抑制されるので過熱状態を解消あるいは過熱状態になることを抑制できる。
このように内燃機関運転時の過熱状態が抑制されることにより、高圧燃料系における燃料ベーパーを抑制でき、内燃機関を円滑に運転できるので、内燃機関運転安定性を高めることができる。
求項に記載の内燃機関燃料噴射制御装置では、請求項1に記載の内燃機関燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射比率変更手段は、前記高圧燃料系内での高圧燃料の飽和蒸気圧が燃料圧力以下である温度範囲内で、前記基準燃料温度を設定していることを特徴とする。
高圧燃料系内での高圧燃料の飽和蒸気圧が燃料圧力より高くなる場合に、高圧燃料系での燃料ベーパー発生のおそれが高まる。したがって燃料噴射比率変更手段では、上述のごとく設定した基準燃料温度を用いる。このことにより燃料噴射比率変更手段は、高圧燃料系内の燃料温度が基準燃料温度より高い場合に、高圧燃料系の過熱状態やそのおそれがある状態であるとして、燃料噴射比率を変更することで筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射量を増加することになる。
請求項に記載の内燃機関燃料噴射制御装置では、請求項1又は2に記載の内燃機関燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射比率変更手段は、前記高圧燃料系内での高圧燃料の飽和蒸気圧が燃料圧力以下である温度範囲内で目標燃料温度を設定し、前記燃料噴射比率の変更として、前記燃料噴射比率を、前記高圧燃料系内の燃料温度又は最高燃料温度が予想されるタイミングの燃料温度が前記目標燃料温度に低下する燃料量を前記筒内噴射用インジェクタから噴射する値に変更する処理を行うものであることを特徴とする。
燃料噴射比率変更手段では、上述したごとくの目標燃料温度を設定して、高圧燃料系内の燃料温度又は過熱が予想されるタイミングの燃料温度を、目標燃料温度まで低下させるように、燃料噴射比率を変更しても良い。
請求項に記載の内燃機関燃料噴射制御装置では、請求項1又は2に記載の内燃機関燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射比率変更手段は、前記燃料噴射比率の変更として、前記筒内噴射用インジェクタによる燃料噴射比率を100%にする処理を行うものであることを特徴とする。
高圧燃料系に対して現在可能となる燃料流の最大化は、筒内噴射用インジェクタによる燃料噴射比率を100%にすることである。したがって燃料噴射比率変更手段では、高圧燃料系の過熱状態やそのおそれがある状態の場合には、直ちに筒内噴射用インジェクタによる燃料噴射比率を100%にすることにしても良い。
このような簡単な制御により、燃料噴射比率変更手段は、高圧燃料系に対して迅速で最大の過熱抑制効果を生じさせることができる。
請求項に記載の内燃機関燃料噴射制御装置では、請求項1〜のいずれか一項に記載の内燃機関燃料噴射制御装置において、内燃機関に対して自動停止条件が成立したときに内燃機関の運転を自動停止し、この自動停止中において自動始動条件が成立したときに内燃機関を自動始動される自動運転制御が実行されていると共に、前記燃料噴射比率変更手段による燃料噴射比率の変更では、前記高圧燃料系内の燃料温度又は最高燃料温度が予想されるタイミングの燃料温度を前記基準燃料温度よりも低下できない場合あるいは前記燃料噴射比率の変更自体が不可能な場合は、前記自動停止を禁止する自動停止禁止手段を備えたことを特徴とする。
内燃機関に対して上述した自動停止及び自動始動制御がなされている場合に、高圧燃料系に燃料ベーパーが生じ易い燃料温度状態で停止したときには、自動始動が不安定化するおそれがあるが、このような高圧燃料系にベーパーが生じ易い燃料温度状態は、前述したごとく本発明により解消あるいは防止される。
しかし、内燃機関運転状態によっては、燃料噴射比率変更手段による燃料噴射比率の変更では燃料温度を基準燃料温度よりも低下できない場合、あるいは前記燃料噴射比率の変更自体が不可能な場合がある。
このような場合には、上述した自動停止禁止手段により自動停止を禁止することができるので、再始動時の内燃機関不安定化を未然に防止できる。
実施の形態1の車両用駆動装置の概略構成を表すブロック図。 実施の形態1の内燃機関燃料系の構成説明図。 実施の形態1のECUが実行する燃料噴射比率制御処理のフローチャート。 実施の形態1の一制御例を示すタイミングチャート。 実施の形態1の一制御例を示すタイミングチャート。 実施の形態2のECUが実行する燃料噴射比率制御処理のフローチャート。 実施の形態2の一制御例を示すタイミングチャート。 実施の形態3のECUが実行する燃料噴射比率制御処理のフローチャート。 内燃機関停止中における高圧燃料の燃料温度の推移を示すタイミングチャート。 実施の形態3の一制御例を示すタイミングチャート。 実施の形態3の一制御例を示すタイミングチャート。 実施の形態4のECUが実行する燃料噴射比率制御処理のフローチャート。 実施の形態5のECUが実行する燃料噴射比率制御処理の一部のフローチャート。 実施の形態6の内燃機関燃料系の構成説明図。
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用された車両用駆動装置の概略構成を表すブロック図である。この車両用駆動装置は、ハイブリッド車両に搭載されたものであり、ハイブリッド車両を駆動するために内燃機関2と電動モータ4とを備えている。更にこの車両用駆動装置は内燃機関2の出力を受けて発電を行う発電機6を有している。
これらの内燃機関2、電動モータ4及び発電機6は、動力分割機構8を介して互いに接続されている。動力分割機構8は、内燃機関2の出力を発電機6と駆動輪10とに振り分ける役割、電動モータ4からの出力を駆動輪10に伝達する役割、駆動輪10に伝達される駆動力の変速機としての役割を果たしている。
バッテリ12に蓄えられた電力は、インバータ14により直流から交流に変換されて、電動モータ4に供給される。発電機6によって発電された電力は、インバータ14により交流から直流に変換されてバッテリ12に蓄えられる。
これら内燃機関2、電動モータ4、発電機6などの制御は、ECU(電子制御ユニット)16により実行される。ECU16は、マイクロコンピュータを中心としたものであり、内燃機関制御用ECU、モータ制御用ECU、バッテリ制御用ECUなどを含み、これらによって各構成の制御やハイブリッド車両全体の制御を実行している。
ECU16には各種センサが接続されている。ここではスロットル開度センサ18、吸気温センサ20、冷却水温センサ22、空燃比センサ24、アクセル開度センサ26、エアフロメータ28、機関回転センサ30、油温センサ32、燃料圧力センサ34である。スロットル開度センサ18は内燃機関2のスロットルバルブ開度TAを検出する。吸気温センサ20は内燃機関2の吸気口部分に取り付けられて吸気温度THAを検出する。冷却水温センサ22は内燃機関2のシリンダブロックに取り付けられて冷却水温THWを検出する。空燃比センサ24は内燃機関2の排気成分から空燃比A/Fを検出する。アクセル開度センサ26は車両ドライバーが踏み込むことにより内燃機関2の出力を調節するアクセルペダルの踏み込み量をアクセル開度ACCPとして検出する。エアフロメータ28は全気筒に共通の吸気経路に設けられて吸気経路を流れる吸入空気量GAを検出する。機関回転センサ30は内燃機関2のクランク軸回転を機関回転数NEとして検出する。油温センサ32は内燃機関2のシリンダブロックに取り付けられてエンジンオイルの温度を油温THOとして検出している。燃料圧力センサ34は、後述する高圧燃料系での高圧燃料の燃料圧力Pfhを検出している。
ここで内燃機関2は複数の気筒(例えば4気筒)を備え、その燃料系は、図2に示すごとく低圧燃料系50と高圧燃料系52とからなる。
低圧燃料系50は、PFI(吸気管噴射)デリバリパイプ54、このPFIデリバリパイプ54を介して連結されたPFIインジェクタ56、PFI配管58及びフューエルポンプ60を備えている。
高圧燃料系52は、DI(筒内噴射)デリバリパイプ62、このDIデリバリパイプ62を介して連結されたDIインジェクタ64、DI配管66及びこのDI配管66の途中に設けられた高圧燃料ポンプ68を備えている。尚、DIデリバリパイプ62には前述したごとく燃料圧力センサ34が取り付けられて内部の燃料圧力Pfhを検出している。
PFIインジェクタ56は、内燃機関2における気筒毎に分岐した吸気経路、例えば吸気ポートにおいて燃料を噴射するものである。このPFIインジェクタ56が接続するPFIデリバリパイプ54には燃料タンク70内の燃料がフューエルポンプ60にて供給される。このことにより各気筒の吸気経路内に燃料が噴射可能となっている。
DIインジェクタ64は、各気筒のシリンダヘッド部分に配置されて、筒内に直接燃料を噴射するものである。このDIインジェクタ64が接続するDIデリバリパイプ62には、燃料タンク70内の燃料がDI配管66を介してフューエルポンプ60により圧送されるが、更にこの燃料はDI配管66の途中に設けられた高圧燃料ポンプ68により高圧化されてDIデリバリパイプ62に供給される。このことによりDIインジェクタ64から各気筒の燃焼室内へ良好な噴霧状態で燃料を噴射することが可能となっている。
高圧燃料ポンプ68はDI配管66内の燃料を高圧化するために、シリンダヘッド上に配置されている動弁系のシャフトの回転を利用している。例えば吸気カムシャフトや排気カムシャフトの回転を利用してポンプシリンダ内でプランジャをピストン運動させ、このことで燃料を高圧化するものである。
したがって高圧燃料ポンプ68に対しては、その潤滑を確保するためにエンジンオイルが外側から噴霧されている。尚、噴霧された後のエンジンオイルは高圧燃料ポンプ68の外郭を下側へ流下して、シリンダヘッド上に集合し、その後、オイルパン側へと流下することになる。
このように低圧燃料が供給されるPFIインジェクタ56と高圧燃料が供給されるDIインジェクタ64とにおけるトータルの燃料噴射量は、主としてアクセル開度センサ26により検出されるアクセル開度ACCPに応じてECU16が設定する。
更にECU16は、内燃機関2の運転状態に応じてPFIインジェクタ56とDIインジェクタ64との燃料噴射比率を調節している。例えば機関回転センサ30にて検出される機関回転数NE及び負荷率に基づいて燃料噴射比率を決定する。機関回転数NEあるいは負荷率が高い側ではDIインジェクタ64の燃料噴射比率は大きくしている。逆方向ではDIインジェクタ64の燃料噴射比率は小さくしている。
尚、ここで負荷率とは、内燃機関負荷を表す指標の1つであり、内燃機関2の1回転当たりの基準最大吸入空気量に対する実際の1回転当たりの吸入空気量GA/NEの割合(%)である。このような内燃機関負荷としては、負荷率以外に、サージタンク内の吸気圧を測定して、この吸気圧を用いても良い。
このような内燃機関2が搭載されている車両は、図1に示したごとく電動モータ4を、共に駆動源として用いているハイブリッド車両であることから、ECU16において、間欠運転制御を実行している。
ここで間欠運転制御とは、広義の意味で使用しており、ハイブリッド車両にて行われる間欠運転制御やアイドルストップなどのエコラン制御を含むものであり、一時的な車両停止時又は車両走行時に内燃機関2の運転を自動停止・自動始動させる処理である。
例えば、発進時や軽負荷時には、低回転状態で高トルクを発生可能な電動モータ4の特性を利用して、電動モータ4のみをバッテリ12からの電力で駆動させて電動モータ4の駆動力によってハイブリッド車両を走行させる。或る程度の速度が出て、負荷も高くなってきた場合は、内燃機関2を駆動させ、内燃機関2の駆動力と、この内燃機関2の出力によって発電機6で発電した電力で駆動される電動モータ4の駆動力とによってハイブリッド車両を走行させる。更に全開加速時等のごとく更なる出力が必要な場合は、電動モータ4を発電機6からの電力とバッテリ12からの電力との双方で駆動すると共に、内燃機関2の駆動力も上昇させ、内燃機関2の駆動力と電動モータ4の駆動力とでハイブリッド車両を走行させる。更に、減速時や制動時には、駆動輪10の回転力を利用して電動モータ4によって回生発電を行ってハイブリッド車を回生制動させる。バッテリ12の充電量が低下したような場合は、軽負荷時であっても内燃機関2を駆動し、内燃機関2の出力を利用して発電機6で発電を行い、インバータ14を介してバッテリ12を充電するというような制御がなされている。
次にECU16により実行される燃料噴射比率制御処理について図3のフローチャートに基づいて説明する。本処理は、高圧燃料系での燃料温度を低下させるために、PFIインジェクタ56及びDIインジェクタ64から噴射されることが要求されるトータルの燃料噴射量は変更することなく、これらのインジェクタ56,64間の燃料噴射比率を変更する処理である。本処理は、内燃機関2の運転中において時間周期で繰り返し実行される処理である。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
本処理が開始されると、まず機関負荷率KLと機関回転数NEとに応じた基本燃料噴射比率Reが算出される(S102)。尚、本実施の形態にて説明する燃料噴射比率とは、式1に示すごとくであり、DIインジェクタ64のみで要求される燃料噴射量の全てを噴射している場合を燃料噴射比率100%とし、PFIインジェクタ56のみで要求される燃料噴射量の全てを噴射している場合を燃料噴射比率0%としている。
[式1] 燃料噴射比率=100×
DIインジェクタ64による燃料噴射量/トータルの燃料噴射量
ステップS102では、マップなどを用いて基本燃料噴射比率Reを算出している。具体的には、前述したごとく機関回転数NEあるいは機関負荷率KLが高い側では燃料噴射比率は大きくし、これとは逆方向では燃料噴射比率は小さくしている。
次に高圧燃料ポンプ68内の推定燃料温度Tphが作業メモリに読み込まれる(S104)。この推定燃料温度Tphは、ECU16により別途、実行している高圧燃料ポンプ内推定燃料温度算出処理により求められているものである。
具体的には、高圧燃料ポンプ68内の推定燃料温度Tphは、冷却水温THW、油温THO、吸気温度THA及びDIインジェクタ64からの燃料噴射量に基づいて算出される。尚、DIインジェクタ64からの燃料噴射量は、前記式1の関係に基づいて、現在の燃料噴射比率(後述する目標燃料噴射比率Rt)とトータルの燃料噴射量とから算出される。
すなわち、高圧燃料系52(特に高圧燃料ポンプ68及びその周辺)において、内燃機関の冷却水、エンジンオイル、周囲の空気、及び通過する燃料の間での熱量の授受を周期的に演算し、その熱量の収支を算出することで、現在の高圧燃料ポンプ68内の推定燃料温度Tphを算出する。これ以外に、冷却水温THW、油温THO、吸気温度THA及びDIインジェクタ64からの燃料噴射量に基づいて、マップなどにより推定燃料温度Tphを求めても良い。
ステップS104では、この高圧燃料ポンプ内推定燃料温度算出処理にて繰り返し更新されている推定燃料温度Tphを、ECU16内における本処理用の作業メモリに読み込む。
次に基準燃料温度Tfsが設定される(S106)。基準燃料温度Tfsは、高圧燃料系52内における高圧燃料の飽和蒸気圧が、その燃料圧力以下となる温度範囲内で設定した値である。内燃機関2の運転時ではDIデリバリパイプ62内の燃料圧力は狭い範囲に制御されほぼ一定であることから、燃料圧力の制御範囲で最低となる圧力あるいはこの圧力よりも少し低い圧力を、飽和蒸気圧として、これに対応する燃料温度を、基準燃料温度Tfsとして予め設定しておいたものを用いる。
基準燃料温度Tfsとしては、このように設定する以外に、燃料圧力センサ34にて検出されている燃料圧力Pfhを飽和蒸気圧とする燃料温度を用いても良く、あるいはこの温度よりも少し低い値を用いても良い。
次に推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfsより高いか否かが判定される(S108)。推定燃料温度Tph≦基準燃料温度Tfsであれば(S108でNO)、次に、過熱時対策処理中でないか、又は推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfs−ΔTより低くなっているかのいずれかの条件が満足されているか否かが判定される(S120)。
ここで、過熱時対策処理とは、後述するごとく推定燃料温度Tph>基準燃料温度Tfsであった場合(S108でYES)に行われるステップS110以下の一連の処理である。この過熱時対策処理が前回の制御周期において行われている場合には過熱時対策処理中と判定され、前回の制御周期において行われていない場合には過熱時対策処理中でないと判定される。
又、推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfs−ΔTより低くなっているかの条件は、ステップS108の判定条件に対してヒステリシスを設けたことにより、制御上のハンチングを防止するための条件である。ヒステリシス値ΔTは、ハンチングが防止できる温度幅が設定されている。
図4のタイミングチャートは本実施の形態における制御の一例を示している。このタイミングチャートに示すごとく、タイミングt0前では推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfsより高くない状態が継続し、タイミングt0前では過熱時対策処理はなされていない。このためタイミングt0に至るまでは、ステップS108にてNOと判定されると共に、ステップS120では過熱時対策処理中ではないとしてYESと判定される。
このように過熱時対策処理中ではない場合には(S120でYES)、目標燃料噴射比率Rtに、前記ステップS102で内燃機関2の運転状態(機関負荷率KL,機関回転数NE)に基づいて算出された基本燃料噴射比率Reが設定される(S122)。
こうして一旦本処理を出る。このことによりECU16によって別途実行される燃料噴射量制御では、アクセル開度ACCPに基づいて算出されるドライバーの出力要求に対応する要求燃料噴射量が、基本燃料噴射比率Reに従ってDIインジェクタ64とPFIインジェクタ56との間で分配されて、それぞれのインジェクタ56,64から噴射されることになる。
以後の制御周期においても、図4のタイミングt0以前に示している状態のごとく、推定燃料温度Tph≦基準燃料温度Tfsである状態が継続すれば(S108でNO、S120でYES)、基本燃料噴射比率Reに従って、噴射要求される燃料量が分配されて、それぞれのインジェクタ56,64から噴射されることになる。
次に図4のタイミングt0に示すごとく、推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfsより高くなった場合には(S108でYES)、推定燃料温度Tphを低下させる際の目標である目標燃料温度Tftが設定される(S110)。
この目標燃料温度Tftは、高圧燃料系52内での高圧燃料の飽和蒸気圧が燃料圧力以下となる温度範囲内で設定した値である。したがって基準燃料温度Tfsと同じ値であっても良いし、あるいは燃料温度を十分に低温化して高圧燃料系52での燃料ベーパーの発生を効果的に抑制するために、基準燃料温度Tfsよりも低い値に設定しても良い。
次に高圧燃料ポンプ68における現在の燃料温度である推定燃料温度Tphを、目標燃料温度Tftに低下させるために、必要な高圧燃料ポンプ通過燃料量Fpsを算出する(S112)。
ここでは前記ステップS104にて説明した高圧燃料ポンプ内推定燃料温度算出処理にて説明した冷却水温THW、油温THO、吸気温度THA及びDIインジェクタ64からの燃料噴射量に基づいて高圧燃料ポンプ68内の推定燃料温度Tphを算出する算出手法を利用して高圧燃料ポンプ通過燃料量Fpsを算出する。
すなわちDIインジェクタ64からの燃料噴射量を増加させた場合は、高圧燃料系52を通過する燃料量が増加し、このことにより排熱量が増えて推定燃料温度Tphは低下することになる。このことから冷却水温THW、油温THO、吸気温度THAが変化しない状態で、DIインジェクタ64からの燃料噴射量と、これに対応して最終的に収束する推定燃料温度Tphとの関係から、目標燃料温度Tftを達成できる燃料噴射量を求め、この燃料噴射量を高圧燃料ポンプ通過燃料量Fpsとして設定する。
あるいは現在の推定燃料温度Tphと目標燃料温度Tftとの差分の熱量を放出できる熱容量分の燃料流量を算出し、この燃料流量と現在のDI配管66での燃料流量(現在のDIインジェクタ64からの燃料噴射量)との合計を高圧燃料ポンプ通過燃料量Fpsとして設定しても良い。
次に現在の要求燃料噴射量Faにて、高圧燃料ポンプ通過燃料量Fpsを達成するための過熱時要求燃料噴射比率Rfを式2のごとく算出する(S114)。
[式2] Rf←100×Fps/Fa
尚、高圧燃料ポンプ通過燃料量Fpsが要求燃料噴射量Faより大きい場合、すなわち前記式2の計算で過熱時要求燃料噴射比率Rf>100%となった場合には、過熱時要求燃料噴射比率Rf=100%に設定する。
次に過熱時要求燃料噴射比率Rfが基本燃料噴射比率Reより高いか否かが判定される(S116)。過熱時要求燃料噴射比率Rf≦基本燃料噴射比率Reであれば(S116でNO)、目標燃料噴射比率Rtには、前記ステップS102で内燃機関2の運転状態(機関負荷率KL,機関回転数NE)に基づいて算出された基本燃料噴射比率Reが設定される(S122)。こうして一旦本処理を出る。
過熱時要求燃料噴射比率Rf>基本燃料噴射比率Reであれば(S116でYES)、目標燃料噴射比率Rtに過熱時要求燃料噴射比率Rfを設定する(S118)。こうして本処理を一旦出る。
このようにRf>Reであれば、目標燃料噴射比率Rtに過熱時要求燃料噴射比率Rfを設定することで、目標燃料噴射比率Rtの変更により、両インジェクタ56,64からのトータルの燃料噴射量は変更することなく、DIインジェクタ64からの燃料噴射量を増加させることができる。
このことにより高圧燃料系52内の燃料流量を増加させて、高圧燃料系52内の燃料温度を低下させることができる。
その後の制御周期において、推定燃料温度Tphが低下して、推定燃料温度Tph≦基準燃料温度TfsとなることでステップS108にてNOと判定される。そして次のステップS120の判定では、前述したごとく過熱時対策処理中であるので、Tph<Tfs−ΔTか否かが判定される。
図4のタイミングt0〜t1に示すごとく、Tph≧Tfs−ΔTであれば(S120でNO)、前述した過熱時対策処理(S110〜)が継続することになる。
そしてこのように過熱時対策処理が継続した後に、図4のタイミングt1に示したごとく、Tph<Tfs−ΔTとなると(S120でYES)、過熱時対策処理は終了して、図4のタイミングt1後に示すごとく、直ちにステップS122にて目標燃料噴射比率Rtに基本燃料噴射比率Reが設定される状態に戻ることになる。
尚、図5のタイミングチャートは、タイミングt10にて、推定燃料温度Tph>基準燃料温度Tfs(S108でYES)となった後、タイミングt11にて過熱時要求燃料噴射比率Rf≦基本燃料噴射比率Re(S116でNO)となった例を示している。したがってタイミングt11から目標燃料噴射比率Rtには基本燃料噴射比率Reが設定される(S122)。更に図5のタイミングt12以後に示すごとく、Tph<Tfs−ΔTとなった後(S120でYES)も、目標燃料噴射比率Rtに基本燃料噴射比率Reが設定される状態(S122)が継続することになる。
上述した構成において、請求項との関係は、ECU16が内燃機関燃料噴射制御装置に相当し、推定燃料温度Tphを算出する高圧燃料ポンプ内推定燃料温度算出処理が燃料温度検出手段としての処理に相当する。燃料噴射比率制御処理(図3)のステップS106〜118が燃料噴射比率変更手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(1)燃料噴射比率制御処理(図3)では高圧燃料系52の推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfsより高いと判定された場合には(S108でYES)、高圧燃料系52が高温化して、過熱状態にある、あるいはそのおそれがあると判断できる。この場合には、ステップS110〜S118にて目標燃料噴射比率Rtを変更することでDIインジェクタ64からの燃料噴射量を増加している。このように両インジェクタ56,64間での燃料噴射比率を変更することで、DIインジェクタ64とPFIインジェクタ56との両方からなされる燃料噴射量の合計を変更せずにDIインジェクタ64からの燃料噴射量を増加することができる。このことにより高圧燃料系52からの排熱量を増加させて高圧燃料系52内の燃料温度を低下させることができる。
このような高圧燃料系52での燃料流量増加制御は、高温化した高圧燃料のリターンによるものではないので、高圧燃料系52から燃料タンク70へのリターン通路の存在有無に拘わらず、本実施の形態は実行可能であり、燃料タンク70内に燃料ベーパーを大量に発生させることはない。
本実施の形態では、高圧燃料系52において燃料タンク70へのリターン通路は、最初から組み込まれていない。すなわち高圧燃料系52には高圧燃料ポンプ68により加圧された高圧燃料が導入されるが、高圧燃料系52からの高圧燃料の放出はDIインジェクタ64からのみである。したがって燃料流量増加制御時のみでなく、常に高圧燃料が燃料タンク70には戻ることはないので、燃料タンク70内における燃料ベーパーの大量発生は完全に阻止される。
そしてDIインジェクタ64からの燃料噴射量が増加されることにより、外部から高圧燃料系52内に供給される燃料量は増加することから、その増加した燃料流により高圧燃料系52は冷却されて高温化が抑制される。したがって過熱状態又はそのおそれがある状態を解消できる。
このように内燃機関運転時において高圧燃料系52の過熱状態あるいはそのおそれが解消されることにより、高圧燃料系52における燃料ベーパー発生を抑制でき、内燃機関2を円滑に運転できるので、内燃機関運転安定性を高めることができる。
(2)高圧燃料系52は、特に高圧燃料ポンプ68において、その周辺を流れるエンジンオイルを介して内燃機関2の発熱の影響を受け易い。このためECU16の処理により高圧燃料系52の推定燃料温度Tphを推定する場合には、高圧燃料系52の受熱が、主として高圧燃料ポンプ68及びこの周辺からの受熱であることを考慮している。このことで高圧燃料系52の温度状態を容易に検出できる。
(3)高圧燃料系52内で高圧燃料の飽和蒸気圧が燃料圧力より高くなると、高圧燃料系52での燃料ベーパー発生のおそれが高まる。したがって前述したごとく設定した基準燃料温度Tfsを用いている(S106,S108)。
このことにより高圧燃料系52内の燃料温度(ここでは推定燃料温度Tph)が基準燃料温度Tfsより高い場合に、高圧燃料系52が過熱状態やそのおそれがある状態であると、容易に判断でき、燃料噴射比率にて対策することができるようになる。
(4)本実施の形態の内燃機関2はハイブリッド車両に電動モータ4と共に搭載されたものであり、内燃機関2の出力の増減や停止及び再始動は、頻繁になされる。
このような内燃機関2においても、本実施の形態の燃料噴射比率制御処理(図3)により内燃機関2の運転時での高圧燃料系52における燃料ベーパーを効果的に抑制できる。したがってハイブリッド車両に用いられる内燃機関2においても自動制御における運転安定性を高めることができ、ハイブリッド車両の円滑な駆動制御が可能となる。
[実施の形態2]
本実施の形態における燃料噴射比率制御処理を図6のフローチャートに示す。他の構成は前記実施の形態1と同じであるので、図1,2を参照して説明する。
本処理が開始されると、まず機関負荷率KLと機関回転数NEとに応じた基本燃料噴射比率Reが算出され(S202)、高圧燃料ポンプ68内の推定燃料温度Tphが作業メモリに読み込まれ(S204)、基準燃料温度Tfsが設定され(S206)、推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfsより高くなっているか否かが判定される(S208)。
これらステップS202〜S208は、前記図3のステップS102〜S108と同じ処理である。
推定燃料温度Tph≦基準燃料温度Tfsであれば(S208でNO)、次に、過熱時対策処理中でないとの条件と、推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfs−ΔTより低くなっている条件とのいずれかの条件が満足されているか否かが判定される(S212)。この判定処理は前記図3のステップS120と同じ判定である。
図7のタイミングチャートは本実施の形態における制御の一例を示している。このタイミングチャートにおいて、タイミングt20前では推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfsより高くない状態が継続し、タイミングt20前では過熱時対策処理はなされていない。このためタイミングt20に至るまでは、ステップS208にてNOと判定されると共に、ステップS212では過熱時対策処理中ではないとしてYESと判定される。したがって目標燃料噴射比率Rtには基本燃料噴射比率Reが設定される(S214)。
こうして一旦本処理を出る。このことにより、ECU16によって別途実行される燃料噴射量制御では、アクセル開度ACCPに基づいて算出されるドライバーの出力要求に対応する燃料噴射量が、基本燃料噴射比率Reに従ってDIインジェクタ64とPFIインジェクタ56との間で分配されて噴射されることになる。
以後の制御周期にても、推定燃料温度Tph≦基準燃料温度Tfsである状態が継続すれば(S208でNO、S212でYES)、基本燃料噴射比率Reに従って燃料量が分配されて、それぞれのインジェクタ56,64から噴射されることになる。
次に図7のタイミングt20に示すごとく、推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfsより高くなった場合には(S208でYES)、目標燃料噴射比率Rtには直ちに100%が設定される(S210)。
このように推定燃料温度Tph>基準燃料温度Tfsであれば(S208でYES)、直ちに目標燃料噴射比率Rtを100%とする変更により、両インジェクタ56,64からのトータルの燃料噴射量は変更することなく、DIインジェクタ64からの燃料噴射量を最大限に増加させることができる。
このことにより高圧燃料ポンプ68を通過する高圧燃料系52内の燃料流量を、現在の燃料噴射量にて可能な最大限に増加させて、高圧燃料系52内の燃料温度を低下させることができる。
その後の制御周期において、推定燃料温度Tphが低下して、推定燃料温度Tph≦基準燃料温度TfsとなることでステップS208にてNOと判定された場合には、前述したごとく過熱時対策処理中であるので、Tph<Tfs−ΔTか否かが判定される。図7のタイミングt20〜t21に示すごとく、Tph≧Tfs−ΔTであるので(S212でNO)、前述した目標燃料噴射比率Rtを100%とする過熱時対策処理(S210)が継続することになる。
そして、このように過熱時対策処理が継続した後に、図7のタイミングt21に示したごとく、Tph<Tfs−ΔTとなると(S212でYES)、過熱時対策処理は終了して、図7のタイミングt21後に示すごとく、直ちにステップS214にて目標燃料噴射比率Rtに基本燃料噴射比率Reが設定される状態に戻ることになる。
上述した構成において、請求項との関係は、ECU16が内燃機関燃料噴射制御装置に相当し、推定燃料温度Tphを算出する高圧燃料ポンプ内推定燃料温度算出処理が燃料温度検出手段としての処理に相当する。燃料噴射比率制御処理(図6)のステップS206〜S210が燃料噴射比率変更手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(1)前記実施の形態1の効果を生じる。更に、高圧燃料系52の推定燃料温度Tphが基準燃料温度Tfsより高いと判定された場合には(S208でYES)、過熱対策のために直ちに目標燃料噴射比率Rt=100%にして、DIインジェクタ64からの燃料噴射量を最大限に増加している。
このため前記実施の形態1の燃料噴射比率制御処理(図3)よりもDIインジェクタ64による噴射燃料量増加処理が迅速であると共に、処理が簡素化されるので、ECU16の処理負荷が低減でき、低コストのCPUを用いても高速に処理ができる。
このように過熱状態又はそのおそれがある状態を迅速に解消でき、内燃機関運転安定性を十分に維持できる。
[実施の形態3]
本実施の形態における燃料噴射比率制御処理を図8のフローチャートに示す。他の構成は前記実施の形態1と同じであるので、図1,2を参照して説明する。
本処理が開始されると、まず機関負荷率KLと機関回転数NEとに応じた基本燃料噴射比率Reが算出される(S302)。この処理は前記図3のステップS102と同じ処理である。
次にこの直後に内燃機関2が停止することを仮定して計算された停止中の高圧燃料系52内(ここでは高圧燃料ポンプ68とその周辺)の最高燃料温度Temxが作業メモリに読み込まれる(S304)。この最高燃料温度Temxは、ECU16により別途、実行している内燃機関停止中最高燃料温度算出処理により求められているものである。
内燃機関2が間欠運転制御処理などによって停止すると、インジェクタ56,64による燃料噴射は停止する。このことにより特に高圧燃料ポンプ68により燃料を高圧化している高圧燃料系52の燃料温度が大きく上昇する。これは内燃機関2の停止により、高圧燃料系52が、特に高圧燃料ポンプ68及びその周辺から、内燃機関2の熱を受けるからである。特に内燃機関2の停止中に高圧燃料ポンプ68周りに滞留するエンジンオイルからの熱伝達の影響が大きい。
内燃機関2の運転中は、高圧燃料系52内を流れている燃料流により高圧燃料系52自体が冷却されている。しかし、このような燃料流により高圧燃料系52の過熱状態が阻止されていたとしても、内燃機関2が停止すると高圧燃料系52内の燃料流も停止して、高圧燃料系52は上述したごとくの熱の授受により一旦昇温することになる。
図9に示すタイミングチャートは、タイミングts1にて内燃機関2が停止した後に、高圧燃料系52の燃料温度が一旦上昇する状態を示している。内燃機関2の停止(ts1)の直前において燃料温度=Thである場合には、内燃機関2の停止中のタイミングts3において最高燃料温度=Tmaxhとなる状態を示している。又、内燃機関2の停止(ts1)の直前において、燃料温度=Thより低い燃料温度Tlである場合には、内燃機関2の停止中のタイミングts4において最高燃料温度=Tmaxl(<Tmaxh)となる状態を示している。
したがって内燃機関2の運転時における高圧燃料系52内の燃料温度が高いほど、その直後に停止した後の最高燃料温度も高くなる。このため内燃機関2の停止時点において高圧燃料系52の燃料温度が或る程度高い状態にあった場合(図では燃料噴射比率=30%の場合)には、内燃機関2の停止中に過熱状態となる場合がある。
尚、図9においては、燃料温度=Thでの運転状態はDIインジェクタ64の燃料噴射比率が低い場合(ここでは一例として30%)であり、燃料温度=Tlでの運転状態は両インジェクタ56,64のトータルの燃料噴射量は同一であるがDIインジェクタ64の燃料噴射比率が高い場合(ここでは一例として100%)である。
したがってこのような内燃機関2の停止中の過熱状態を判定するために、ECU16は、直後に内燃機関2が停止した場合に、その停止中での高圧燃料系52内の最高燃料温度Temxを求める処理を、別途実行している。
具体的には、最高燃料温度Temxは、冷却水温THW、油温THO、吸気温度THA及びDIインジェクタ64からの燃料噴射量に基づいて算出される。尚、DIインジェクタ64からの燃料噴射量は、前記式1の関係に基づいて現在の燃料噴射比率(目標燃料噴射比率Rt)とトータルの燃料噴射量とから算出される。
内燃機関2の停止中において高圧燃料系52の最高燃料温度Temxの決定要因となるのは、内燃機関2の停止時点における高圧燃料ポンプ68内の燃料温度、冷却水温THW、油温THO、高圧燃料ポンプ68周りの気温(吸気温度THA)である。
ここで内燃機関2の停止時点における高圧燃料ポンプ68内の燃料温度については、前記実施の形態1にて推定燃料温度Tphを算出する手法と同じであり、収支計算やマップから算出することで推定する。
そして、この燃料温度に対して、冷却水、エンジンオイル、高圧燃料ポンプ68周りの空気との間の熱授受による温度変化を考慮して内燃機関2の停止中において生じる高圧燃料系52の最高燃料温度Temxを推定する。
ステップS304では、この内燃機関停止中最高燃料温度算出処理にて繰り返し更新されている最高燃料温度Temxが読み込まれる。
次に基準燃料温度Tefsが設定される(S306)。基準燃料温度Tefsは、高圧燃料系52内での高圧燃料の飽和蒸気圧が、燃料圧力以下となる温度範囲内で設定した値である。内燃機関2の停止中においても、高圧燃料系52は密閉されており、運転時でのDIデリバリパイプ62内の燃料圧力とほぼ同じ値であることから、燃料圧力の制御範囲で最低となる圧力あるいはこの圧力よりも少し低い圧力を、飽和蒸気圧として、これに対応する燃料温度を、基準燃料温度Tefsとして予め設定しておいたものを用いる。
基準燃料温度Tefsとしては、このように設定する以外に、内燃機関2の運転時に燃料圧力センサ34にて検出されていた燃料圧力Pfhを飽和蒸気圧とする燃料温度を用いても良く、あるいはこの温度よりも少し低い値を用いても良い。
次に最高燃料温度Temxが基準燃料温度Tefsより高くなっているか否かが判定される(S308)。最高燃料温度Temx≦基準燃料温度Tefsであれば(S308でNO)、次に、停止中過熱時対策処理中でない条件と、最高燃料温度Temxが基準燃料温度Tefs−ΔTより低くなっている条件とのいずれかの条件が満足されているか否かが判定される(S320)。
ここで停止中過熱時対策処理とは、最高燃料温度Temx>基準燃料温度Tefsであった場合(S308でYES)に行われる後述するステップS310以下の一連の処理である。この停止中過熱時対策処理が前回の制御周期において行われている場合には停止中過熱時対策処理中と判定され、前回の制御周期において行われていない場合には停止中過熱時対策処理中でないと判定される。
最高燃料温度Temxが基準燃料温度Tefs−ΔTより低くなっている条件は、ステップS308の判定条件に対してヒステリシスを設けたことにより、制御上のハンチングを防止するための条件である。ヒステリシス値ΔTは、ハンチングが防止できる温度幅が設定されている。
図10に示すタイミングチャートにおいて、タイミングt30前では最高燃料温度Temxは基準燃料温度Tefsより高くなく、停止中過熱時対策処理がなされていない。このためタイミングt30に至るまでは、ステップS308にてNOと判定されると共に、ステップS320では停止中過熱時対策処理中ではないとしてYESと判定される。
このように停止中過熱時対策処理中ではない場合には(S320でYES)、目標燃料噴射比率Rtに、前記ステップS302で内燃機関2の運転状態(機関負荷率KL,機関回転数NE)に基づいて算出された基本燃料噴射比率Reが設定される(S322)。
こうして一旦本処理を出る。このことにより、ECU16によって別途実行される燃料噴射量制御では、アクセル開度ACCPに基づいて算出されるドライバーの出力要求に対応する燃料噴射量が、基本燃料噴射比率Reに従ってDIインジェクタ64とPFIインジェクタ56との間で分配されて噴射されることになる。
以後の制御周期にても、図10のタイミングt30以前に示している状態のごとく、最高燃料温度Temx≦基準燃料温度Tefsである状態が継続すれば(S308でNO、S320でYES)、基本燃料噴射比率Reに従って、噴射要求される燃料量が分配されて、それぞれのインジェクタ56,64から噴射されることになる。
次に図10のタイミングt30に示すごとく、最高燃料温度Temxが基準燃料温度Tefsより高くなった場合には(S308でYES)、最高燃料温度Temxを低下させる目標燃料温度Teftが設定される(S310)。
この目標燃料温度Teftは、高圧燃料系52内での高圧燃料の飽和蒸気圧が、燃料圧力以下となる温度範囲内で設定した値である。したがって基準燃料温度Tefsと同じ値であっても良い。あるいは内燃機関運転時の燃料温度を十分に低温化することで、内燃機関停止中の燃料ベーパーの発生を効果的に抑制できるように、基準燃料温度Tefsよりも低い値に設定しても良い。
次に現時点で推定している最高燃料温度Temxを目標燃料温度Teftに低下させるために、必要な高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsが算出される(S312)。
ここでは前記ステップS304にて説明した内燃機関停止中最高燃料温度算出処理にて説明した冷却水温THW、油温THO、吸気温度THA及びDIインジェクタ64からの燃料噴射量に基づいて高圧燃料ポンプ68内の最高燃料温度Temxを算出する算出手法を利用して高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsを算出する。
すなわちDIインジェクタ64からの燃料噴射量を増加させた場合には、推定される最高燃料温度Temxは低下することになる。このことから冷却水温THW、油温THO、吸気温度THAが変化しない状態で、DIインジェクタ64からの燃料噴射量と、これに対応して最終的に収束する最高燃料温度Temxとの関係(マップや関係式など)から、目標燃料温度Teftを達成できる燃料噴射量を求め、この燃料噴射量を高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsとして設定する。
あるいは図9に示したごとく内燃機関停止前の温度差(Th−Tl)と、停止中の最高燃料温度の温度差(Tmaxh−Tmaxl)とは一致しないことから、最高燃料温度Temxと目標燃料温度Teftとの差を、マップや関係式などにより、内燃機関停止前での温度差に変換し、この差分の熱量が放出できる熱容量分の燃料流量を算出する。そしてこの燃料流量と現在のDI配管66での燃料流量(現在のDIインジェクタ64からの燃料噴射量)との合計を高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsとして設定しても良い。
次に現在の要求燃料噴射量Faにて、高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsを達成するための停止中過熱時要求燃料噴射比率Refを式3のごとく算出する(S314)。
[式3] Ref←100×Feps/Fa
尚、高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsが要求燃料噴射量Faより大きい場合、すなわち前記式3の計算で、停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref>100%となった場合には、停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref=100%に設定する。
次に停止中過熱時要求燃料噴射比率Refが基本燃料噴射比率Reより高いか否かが判定される(S316)。停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref≦基本燃料噴射比率Reであれば(S316でNO)、目標燃料噴射比率Rtには、前記ステップS302で算出された基本燃料噴射比率Reが設定される(S322)。こうして一旦本処理を出る。
停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref>基本燃料噴射比率Reであれば(S316でYES)、目標燃料噴射比率Rtに停止中過熱時要求燃料噴射比率Refを設定する(S318)。こうして本処理を一旦出る。
このようにRef>Reであれば、目標燃料噴射比率Rtに停止中過熱時要求燃料噴射比率Refを設定することで、目標燃料噴射比率Rtの変更がなされて、両インジェクタ56,64からのトータルの燃料噴射量は変更することなく、DIインジェクタ64からの燃料噴射量を増加させることができる。
このことにより内燃機関2の運転時に、高圧燃料ポンプ68を通過する高圧燃料系52内の燃料流量を増加させて、高圧燃料系52内の燃料温度を低下させ、このことにより直後に内燃機関2が停止しても、その停止中に生ずる最高燃料温度Temxを抑制することができる。
このように、内燃機関2の運転時に最高燃料温度Temxを低下させる処理を実行することで、最高燃料温度Temx≦基準燃料温度Tefsとなると、ステップS308にてNOと判定される。この場合は、前述したごとく停止中過熱時対策処理中であるので、Temx<Tefs−ΔTか否かが判定される(S320)。図10のタイミングt30〜t31に示すごとく、Temx≧Tefs−ΔTであれば(S320でNO)、前述した停止中過熱時対策処理(S310〜)が継続することになる。
そして、このように停止中過熱時対策処理が継続した後に、図10のタイミングt31に示したごとく、Temx<Tefs−ΔTとなると(S320でYES)、停止中過熱時対策処理は終了して、図10のタイミングt31後に示すごとく、直ちにステップS322にて目標燃料噴射比率Rtに基本燃料噴射比率Reが設定される状態に戻ることになる。
尚、図11のタイミングチャートは、タイミングt40にて、最高燃料温度Temx>基準燃料温度Tefs(S308でYES)となった後、タイミングt41にて停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref≦基本燃料噴射比率Re(S316でNO)となった例を示している。したがってタイミングt41から目標燃料噴射比率Rtには基本燃料噴射比率Reが設定される(S322)。更に図11のタイミングt42以後に示すごとく、Temx<Tefs−ΔTとなった後(S320でYES)も、目標燃料噴射比率Rtに基本燃料噴射比率Reが設定される状態(S322)が継続することになる。
上述した構成において、請求項との関係は、ECU16が内燃機関燃料噴射制御装置に相当し、最高燃料温度Temxを算出する内燃機関停止中最高燃料温度算出処理が最高燃料温度推定手段としての処理に相当する。燃料噴射比率制御処理(図8)のステップS306〜318が燃料噴射比率変更手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(1)燃料噴射比率制御処理(図8)では、内燃機関停止中における高圧燃料系52の最高燃料温度Temxが基準燃料温度Tefsより高いと判定された場合は(S308でYES)、内燃機関停止中において高圧燃料系52の過熱が予想される状態であると判断できる。この場合には、ステップS310〜S318にて目標燃料噴射比率Rtを変更することでDIインジェクタ64からの燃料噴射量を増加している。このことにより高圧燃料系52からの排熱量を増加させて高圧燃料系52内の燃料温度を低下させることができる。そしてこの内燃機関運転中の高圧燃料系52内の燃料温度低下処理により、直後に内燃機関2が停止したとしても、最高燃料温度Temxを抑制でき、停止中に高圧燃料系52が過熱状態とならないようにできる。
このように燃料噴射比率を変更することで、DIインジェクタ64とPFIインジェクタ56との両方からなされる燃料噴射量の合計を変更せずにDIインジェクタ64からの燃料噴射量を増加することができる。しかもこのような高圧燃料系52での燃料流量増加制御は、高温化した高圧燃料のリターンによるものではないので、高圧燃料系52から燃料タンク70へのリターン通路の存在有無に拘わらず、本実施の形態は実行可能であり、燃料タンク70内に燃料ベーパーを大量に発生させることはない。
本実施の形態では、高圧燃料系52において燃料タンク70へのリターン通路は、最初から組み込まれていない。すなわち高圧燃料系52には高圧燃料ポンプ68により加圧された高圧燃料が導入されるが、高圧燃料系52からの高圧燃料の放出はDIインジェクタ64からのみである。したがって燃料流量増加制御時のみでなく、常に高圧燃料が燃料タンク70には戻ることはないので、燃料タンク70内における燃料ベーパーの大量発生は完全に阻止される。
そしてDIインジェクタ64からの燃料噴射量が増加されることにより、外部から高圧燃料系52内に供給される燃料量は増加する。したがってその増加した燃料流により高圧燃料系52は冷却されて高温化が抑制されるので、直後に内燃機関2が停止しても過熱状態に至るのを未然に防止できる。
このように内燃機関停止中の過熱状態が防止されることにより、高温始動時における高圧燃料系52における燃料ベーパーを抑制でき、内燃機関2を円滑に始動できるので、内燃機関運転安定性を高めることができる。
(2)高圧燃料系52は、特に高圧燃料ポンプ68において、その周辺に存在するエンジンオイルを介して内燃機関2側から受熱し易い。このためECU16の処理により内燃機関停止中の最高燃料温度Temxを推定する場合には、高圧燃料系52の受熱が、主として高圧燃料ポンプ68及びこの周辺からの受熱であることを考慮している。このことで内燃機関停止中における最高燃料温度Temxを容易に推定できる。
(3)内燃機関停止中は高圧燃料系52内での燃料流が停止するため、高圧燃料系52内の高圧燃料が昇温して、その飽和蒸気圧が燃料圧力より高くなる。このことで高圧燃料系52にて燃料ベーパー発生のおそれが高まることになる。したがってステップS306,S308では、前述したごとく設定した基準燃料温度Tefsを用いている。
このことにより内燃機関停止中における高圧燃料系52内の最高燃料温度Temxが、基準燃料温度Tefsより高い場合に、内燃機関停止中に高圧燃料系52の過熱状態が予想されると容易に判断でき、内燃機関運転中の燃料噴射比率にて対策することができるようになる。
(4)前記実施の形態の(4)と同様な効果を生じる。特にハイブリッド車両では間欠運転制御により、自動停止と自動始動とを頻繁に行うことから、本実施の形態を適用することにより、自動停止から自動始動までの間で、高圧燃料系52が過熱状態となることを未然に防止できる。
このことにより内燃機関2の始動不安定が防止できるので、円滑な間欠運転制御が可能となり、ドライバーに違和感を生じさせることがない。
[実施の形態4]
本実施の形態における燃料噴射比率制御処理を図12のフローチャートに示す。他の構成は前記実施の形態1と同じであるので、図1,2を参照して説明する。
この燃料噴射比率制御処理(図12)は、前記実施の形態3にて説明した内燃機関停止中における高圧燃料系52内の最高燃料温度Temxが過熱状態となることが予想される値である場合(すなわちTemx>Tefs)に、前記実施の形態2と同様に、目標燃料噴射比率Rtを直ちに100%にする処理である。
したがってステップS402〜S408、S412,S414は、前記実施の形態3における図8のステップS302〜S308、S320,S322と同じ処理である。
すなわち基本燃料噴射比率Reの算出(S402)、最高燃料温度Temxの読込(S404)、基準燃料温度Tefsの設定(S406)の後に、最高燃料温度Temx>基準燃料温度Tefsか否かが判定される(S408)。この判定の結果、Temx>Tefsであれば(S408でYES)、目標燃料噴射比率Rtに直ちに100%が設定される(S410)。このことにより燃料は全てDIインジェクタ64から筒内に噴射されることになる。したがって高圧燃料系52内が燃料流により最大限に冷却される。
このため以後、内燃機関2が停止しても、この内燃機関停止中における最高燃料温度Temxを抑制でき、過熱状態となるのを未然に防止できる。
そして最高燃料温度Temxが十分に低下するまでは、ステップS408でNO、ステップS412ではNOと判定とされて、目標燃料噴射比率Rtが100%とされる状態(S410)が継続する。
その後、最高燃料温度Temxが十分に低下して、最高燃料温度Temx<Tefs−ΔTとなれば(S408でNO、S412でYES)、目標燃料噴射比率Rtには基本燃料噴射比率Reが設定される状態(S414)となる。
上述した構成において、請求項との関係は、ECU16が内燃機関燃料噴射制御装置に相当する。最高燃料温度Temxを算出する内燃機関停止中最高燃料温度算出処理、燃料噴射比率制御処理(図12)のステップS406〜S410が燃料噴射比率変更手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(1)前記実施の形態3の効果を生じる。更に、内燃機関停止中の高圧燃料系52の最高燃料温度Temxが基準燃料温度Tefsより高いと判定された場合には(S408でYES)、内燃機関停止中での過熱予防対策のために直ちに目標燃料噴射比率Rt=100%にして、DIインジェクタ64からの燃料噴射量を最大限に増加している。
このため前記実施の形態3の燃料噴射比率制御処理(図8)よりもDIインジェクタ64による噴射燃料量増加処理が迅速であると共に、処理が簡素化されるので、ECU16の処理負荷が低減でき、低コストのCPUを用いても高速に処理ができる。
このように過熱が予想される状態を迅速に解消でき、内燃機関運転安定性を十分に維持できる。
[実施の形態5]
本実施の形態では、前記実施の形態3の燃料噴射比率制御処理(図8)の一部を、図13の部分フローチャートに示すごとく変更している。
図1に示したごとく内燃機関2はハイブリッド車両において電動モータ4と共に用いられている。そしてECU16によって前記実施の形態1にて述べたごとくの間欠運転制御を実行している。したがって頻繁に内燃機関2の運転を自動停止させたり、自動始動させたりしている。
まず前記図8のステップS308において、Temx>Tefsと判定されると、次に内燃機関停止中における最高燃料温度Temxを低下させる目標燃料温度Teftが設定され(S310)、最高燃料温度Temxを目標燃料温度Teftに低下させるために必要な高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsが算出される(S312)。
次に図13に示すごとく現在の要求燃料噴射量Faにより、高圧燃料系52での高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsを達成するための停止中過熱時要求燃料噴射比率Refを前記実施の形態3に示した式3のごとく算出する(S514)。尚、高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsが要求燃料噴射量Faより大きい場合、すなわち前記式3の計算で、停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref>100%となった場合は、前記実施の形態3の場合と異なり、そのままの値を停止中過熱時要求燃料噴射比率Refに設定する。
次に停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref≦100%か否かが判定される(S516)。
停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref≦100%である場合には(S516でYES)、前記図8のステップS316に処理が移行する。
すなわちRef≦100%である場合は、両インジェクタ56,64のトータルの燃料噴射量を変化させずに、燃料噴射比率を変更するのみで、高圧燃料ポンプ通過燃料量Feps(すなわちDIインジェクタ64の燃料噴射量)を達成することができる場合である。このため前記図8にて述べたごとく、停止中過熱時要求燃料噴射比率Refが基本燃料噴射比率Reより高いか否かが判定される(S316)。停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref≦基本燃料噴射比率Reであれば(S316でNO)、目標燃料噴射比率Rtには基本燃料噴射比率Reが設定される(S322)が、停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref>基本燃料噴射比率Reであれば(S316でYES)、目標燃料噴射比率Rtに停止中過熱時要求燃料噴射比率Refを設定する(S318)。
停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref>100%である場合は(S516でNO)、両インジェクタ56,64のトータルの燃料噴射量を変化させずに、燃料噴射比率を変更するのみでは、高圧燃料ポンプ通過燃料量Fepsを達成することができない状態である。
この状態では、燃料噴射比率を100%にしても、間欠運転制御により直ちに内燃機関2が停止すると、主として高圧燃料ポンプ68及びその周辺からの伝熱により、高圧燃料系52内の燃料温度が上昇して過熱状態となり、燃料ベーパーを発生するおそれが高まることになる。
このため、Ref>100%である場合は(S516でNO)、間欠運転禁止設定がなされる(S518)。そして目標燃料噴射比率Rtには100%を設定して(S520)、できる限り高圧燃料系52内の燃料温度の上昇を抑制して、本処理を一旦出る。
上述した構成において、請求項との関係は、ECU16が内燃機関燃料噴射制御装置に相当する。最高燃料温度Temxを算出する内燃機関停止中最高燃料温度算出処理、燃料噴射比率制御処理(図8)のステップS306〜S312及び図13のステップS514,S316,S318が燃料噴射比率変更手段としての処理に、ステップS516〜S520が自動停止禁止手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態5によれば、以下の効果が得られる。
(1)前記実施の形態3の効果に加えて、両インジェクタ56,64のトータルの燃料噴射量を変化させずに燃料噴射比率のみで対応できない場合には(S516でNO)、間欠運転禁止がなされることにより、間欠運転制御の内で特に自動始動時における始動不安定性を生じることがない。
更に、このような場合にも、目標燃料噴射比率Rt=100%に設定することにより、極力、高圧燃料系52内の低温化に努めているので、間欠運転禁止解除を速めることができる。
[実施の形態6]
本実施の形態では、図14に示すごとく高圧燃料系152にてリターン通路152aが存在している。このリターン通路152aには、電磁リリーフ弁152bが設けられている。ECU116は、DIデリバリパイプ162内の燃料圧力に応じて電磁リリーフ弁152bを開弁して、リターン通路152aを介して燃料タンク170に高圧燃料を戻している。
尚、燃料圧力センサ134、低圧燃料系150、PFIインジェクタ156、PFI配管158、フューエルポンプ160、DIデリバリパイプ162、DIインジェクタ164、DI配管166、高圧燃料ポンプ168については、前記実施の形態1にて説明した各構成と同じである。他の構成についても図1に示したごとくである。
このような構成において前記実施の形態1〜5のいずれかの燃料噴射比率制御処理(図3,6,8,12,13)が実行される。
このように電磁リリーフ弁152bにて高圧燃料系152内の燃料を燃料タンク170に戻すことができる構成であれば、高圧燃料系152内の高圧燃料を燃料タンク170に戻すと、燃料タンク170内に大量の燃料ベーパーが大量発生する可能性が高まる。
この場合も燃料噴射比率制御処理(図3,6,8,12,13)を実行することで、燃料タンク170へ、高温状態にある高圧燃料のリターン量を少なくすることができ、燃料タンク170内での燃料ベーパーの大量発生を抑制できる。
このことにより前記各実施の形態の効果(リターン通路が存在しないことによる効果を除く)を生じる。
これと共に、リターン通路が存在する従来技術に比較して、本実施の形態では、リターン通路152aが存在しても燃料ベーパーを排出しにくくなり、環境上、より好ましいものとなる。
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態1,2において、高圧燃料系52内の高圧燃料温度は、推定燃料温度Tphとして推定した値であったが、高圧燃料ポンプ68、高圧燃料ポンプ68に近接した位置のDI配管66、あるいはDIデリバリパイプ62に温度センサを設けることで、該当する部分の温度を、高圧燃料温度として実測して制御に用いても良い。
・前記図3,6,8,12では、ヒステリシス処理(S120,S212,S320,S412)を実行していたが、このようなヒステリシスは設けずに、推定燃料温度Tphや最高燃料温度Temxが基準燃料温度Tfs,Tefsより高くない場合には、直ちに目標燃料噴射比率Rtに基本燃料噴射比率Reを設定するようにしても良い。
・前記実施の形態5では、前記図13に示したごとく間欠運転禁止設定(S518)を実行していた。このように特別に間欠運転禁止設定を実行するのではなく、停止中過熱時要求燃料噴射比率Ref≦100%を間欠運転制御の実行条件として、間欠運転制御処理に組み込んでも良い。このことにより、燃料噴射比率制御処理側で、間欠運転制御禁止設定をしなくても、間欠運転制御処理側にて過熱状態となるおそれがある場合に、間欠運転を実行しないようにできる。
・前記実施の形態5では、前記図13に示したごとく停止中過熱時要求燃料噴射比率Refが100%を超える場合に(S516でNO)、間欠運転禁止設定(S518)を実行していた。すなわち燃料噴射比率の変更では、高圧燃料系52内の最高燃料温度が予想されるタイミングの燃料温度を十分に低下できない場合に(S516でNO)、間欠運転制御を禁止していた(S518)。
これ以外に、燃料噴射比率を変更できない場合として、車両の定速走行時での燃料噴射比率変更によるショックを防止するために燃料噴射比率変更を禁止している場合がある。このような燃料噴射比率変更禁止によって燃料噴射比率の変更自体が不可能な場合に、間欠運転禁止設定(S518)を実行するようにしても良い。更にこのように燃料噴射比率の変更自体が不可能な場合を、間欠運転制御の実行条件として間欠運転制御処理に組み込んでも良い。
・前記実施の形態5では内燃機関停止中の最高燃料温度Temxに基づいて目標燃料噴射比率Rt設定と共に間欠運転の禁止有無を判断していたが、前記実施の形態1のごとく現在の高圧燃料系52内における推定燃料温度Tphに基づいて目標燃料噴射比率Rt設定と共に間欠運転の禁止有無を判断しても良い。上述した間欠運転制御処理に組み込む場合も同様である。
・前記各実施の形態では、ハイブリッド車両の例を示したが、電動モータを用いない内燃機関のみを駆動源とする車両にも本発明は適用できる。すなわち図3,6,8,12の各燃料噴射比率制御処理を、内燃機関駆動車両に適用して、該当する効果を生じさせることができる。又、図13については間欠運転制御がなされていることが前提であるが、エコラン制御などの広義の意味での間欠運転制御がなされていれば、同様に内燃機関駆動車両に適用して該当する効果を生じさせることができる。
2…内燃機関、4…電動モータ、6…発電機、8…動力分割機構、10…駆動輪、12…バッテリ、14…インバータ、16…ECU、18…スロットル開度センサ、20…吸気温センサ、22…冷却水温センサ、24…空燃比センサ、26…アクセル開度センサ、28…エアフロメータ、30…機関回転センサ、32…油温センサ、34…燃料圧力センサ、50…低圧燃料系、52…高圧燃料系、54…PFIデリバリパイプ、56…PFIインジェクタ、58…PFI配管、60…フューエルポンプ、62…DIデリバリパイプ、64…DIインジェクタ、66…DI配管、68…高圧燃料ポンプ、70…燃料タンク、116…ECU、134…燃料圧力センサ、150…低圧燃料系、152…高圧燃料系、152a…リターン通路、152b…電磁リリーフ弁、156…PFIインジェクタ、158…PFI配管、160…フューエルポンプ、162…DIデリバリパイプ、164…DIインジェクタ、166…DI配管、168…高圧燃料ポンプ、170…燃料タンク。

Claims (5)

  1. 筒内噴射用インジェクタと吸気通路噴射用インジェクタとを備え、これら両方のインジェクタによる燃料噴射比率を内燃機関運転状態に応じて設定するデュアル噴射型の内燃機関燃料噴射制御装置において、
    前記筒内噴射用インジェクタに燃料を供給する高圧燃料系内の燃料温度を実測又は推定により検出する燃料温度検出手段と、
    前記燃料温度検出手段にて検出される前記高圧燃料系の燃料温度が基準燃料温度より高い場合には、前記燃料噴射比率を変更することで前記筒内噴射用インジェクタからの燃料噴射量を増加する燃料噴射比率変更手段と、
    を備え
    前記高圧燃料系では高圧燃料ポンプによる加圧により高圧燃料が形成され、前記高圧燃料系からの前記高圧燃料の放出は前記筒内噴射用インジェクタからのみであることを特徴とする内燃機関燃料噴射制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射比率変更手段は、前記高圧燃料系内での高圧燃料の飽和蒸気圧が燃料圧力以下である温度範囲内で、前記基準燃料温度を設定していることを特徴とする内燃機関燃料噴射制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の内燃機関燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射比率変更手段は、前記高圧燃料系内での高圧燃料の飽和蒸気圧が燃料圧力以下である温度範囲内で目標燃料温度を設定し、前記燃料噴射比率の変更として、前記燃料噴射比率を、前記高圧燃料系内の燃料温度又は最高燃料温度が予想されるタイミングの燃料温度が前記目標燃料温度に低下する燃料量を前記筒内噴射用インジェクタから噴射する値に変更する処理を行うものであることを特徴とする内燃機関燃料噴射制御装置。
  4. 請求項1又は2に記載の内燃機関燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射比率変更手段は、前記燃料噴射比率の変更として、前記筒内噴射用インジェクタによる燃料噴射比率を100%にする処理を行うものであることを特徴とする内燃機関燃料噴射制御装置。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の内燃機関燃料噴射制御装置において、内燃機関に対して自動停止条件が成立したときに内燃機関の運転を自動停止し、この自動停止中において自動始動条件が成立したときに内燃機関を自動始動される自動運転制御が実行されていると共に、
    前記燃料噴射比率変更手段による燃料噴射比率の変更では、前記高圧燃料系内の燃料温度又は最高燃料温度が予想されるタイミングの燃料温度を前記基準燃料温度よりも低下できない場合あるいは前記燃料噴射比率の変更自体が不可能な場合は、前記自動停止を禁止する自動停止禁止手段を備えたことを特徴とする内燃機関燃料噴射制御装置。
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