JP5571319B2 - 弾性クローラ - Google Patents
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Description
弾性クローラにとって、従来、弾性体の亀裂の防止は大きな課題であった。
この課題に対して、例えば、特許文献1には、縁石等への乗り上げおよびすべり落ちに起因してラグの幅方向端部に生じる耳切れを低減させるために、ラグ頂面の幅方向における長さが異なる2種類のラグを、周方向に交互に配した弾性クローラが開示されている。
しかし、一般に、弾性クローラは、縁石等に乗り上げたときに、隣り合うラグ間における芯金上の弾性体の薄くなった部分が起点となって、耳切れが発生しやすい。また、縁石に中途半端に乗り上げ、途中で縁石より滑り落ちるときにも弾性体に大きな負荷が加わり、この繰り返しによっても耳切れが生じやすい。
記クローラ本体の端までの距離より小さい範囲であり、前記クローラ本体は、周方向に隣り合う前記ラグ間における幅方向端の厚さ(以下「ラグ間端部厚さ」という。)が、前記外側面が連続する幅方向の端面における厚さ(以下「ラグ端部厚さ」という。)よりも小さく、それらの厚さの差は、3mm以上10mm以下であって、それらの厚さの差により、弾性クローラの幅の1/2の段差を備えた縁石に進入角度20°で乗り上げさせて走行させることを繰り返したときに、前記ラグの幅方向端部に耳切れが生ずるまでの回数が、前記ラグ間端部厚さと前記ラグ端部厚さとが同じ弾性クローラに対して10%以上向上することができる。
また、上記における「(クローラ本体の)幅方向の端面における厚さ」とは、クローラ本体の該当する部分における幅方向の端の厚さの意である。
弾性クローラ1は、クローラ本体2、複数の芯金3,3,3,3、複数のラグ4,…,4および1対の抗張体5,5等からなる。
以下の説明において、弾性クローラ1における外周側とは、弾性クローラ1がクローラ式走行車両に装着されたときに外周となる側であり、地面に接地する側(接地側)である。したがって、内周側とは、この外周側の反対側をいう。
クローラ本体2は、肉厚帯状の弾性体の両端が接合されて無端帯状に形成される。クローラ本体2は、後述するラグ4,…,4が突出する部分を除き、幅方向の端近傍における外周側の表面が、周方向および幅方向に拡がる仮想平面M1−G1(以下「仮想平面MG1」という)に対して傾斜している。この幅方向の端近傍において傾斜する表面を「端部傾斜面11」という。
端部傾斜面11は、クローラ本体2の幅方向の端面14と鈍角を形成して連続する。
クローラ本体2は、幅方向の端近傍の端部傾斜面11が形成された部分では、その厚さが端に近づくに伴い急激に減少する。
芯金3は、全体として略細長い形状を有し、長手方向両側のそれぞれの端から内方に向けて所定の範囲が略板状の翼部15,15となっている。芯金3,…,3は、その長手方向を弾性クローラ1の幅方向に一致させ、弾性クローラ1の周方向に一定の間隔をあけてクローラ本体2に埋め込まれている。周方向に隣り合う芯金3,3の間におけるクローラ本体2の幅方向中央には、外周側と内周側とを連通させる係合孔16が設けられている。係合孔16は、弾性クローラ1が装着されるクローラ式走行車両における駆動スプロケットの爪に係合されて、駆動スプロケットの回転により弾性クローラ1を循環運動させるためのものである。
ラグ4は、1つの係合孔16について幅方向のいずれか一方の側に設けられ、隣り合う係合孔16,16のそれぞれを起点とするラグ4,4は、常に幅方向の互いに異なる側に位置する。つまり、弾性クローラ1においては、周方向に並ぶラグ4,…,4は、千鳥状に配される。
ラグ4は、その起点となる係合孔16を挟んで配された2つの芯金3,3における翼部15,15の一部と、周方向において重なっている。ここで、「周方向において重なる」とは、ラグ4を外周側(または内周側)から見たとき(透視したとき)に重なる状態をいう。
弾性クローラ1のクローラ本体2は、周方向に並ぶラグ4,4間における幅方向端の厚さa(以下「ラグ間端部厚さa」という)が、ラグ4が突出する部分の幅方向端の厚さb(以下「ラグ端部厚さb」という)よりも小さい(a<b)。また、クローラ本体2は、端面14における内周側の端縁19を通る仮想平面MG3(図2における仮想平面M3−G3)と交線12を通る仮想平面MG1との距離c(以下「基準厚さc」という)が、ラグ端部厚さbに等しい。
また、弾性クローラ1では、端部傾斜面11は、幅方向において芯金3の翼部15の先端よりも外方に設けられる。図1および図2において、交線12とクローラ本体2の幅方
向の端面14との距離d1は、芯金3の翼部15の先端と端面14との距離d2よりも小さい。
弾性クローラ1における縁石等への乗り上げ易さは、ラグ間端部厚さaがラグ端部厚さbより小さく、縁石等に乗り上げたときに、周方向に並ぶラグ4,4間における幅方向端の縁石への掛かりが増えることによる。また、ラグ端部厚さbがラグ間端部厚さaより大きく、ラグ4が突出する部分の幅方向端におけるラグ4の張り出しにより、縁石への掛かりが増えることによる。
また、弾性クローラ1は、クローラ式走行車両が縁石に乗り上げラグ4が縁石に掛からない場合にはラグ4がスムーズに縁石等から滑り落ち、クローラ本体2の幅方向端部に加わるダメージを減少させることができる。
弾性クローラは、一般に、縁石等に乗り上がった後に、転輪等を介してクローラ式走行車両の重量が加わり弾性体が伸びきった状態で縁石等から滑り落ちるときに亀裂が生じ易い。上記のように形成された弾性クローラ1は、縁石等への乗り上がりが弾性体に負担を掛けない状態で円滑に行われ、滑り落ちも同様に弾性体に負担を掛けない状態で円滑に行われるので、亀裂が生じにくい。
図3は他の弾性クローラ1B,1C,1Dの幅方向断面部分図である。図3の(a),(b),(c)各図に示される弾性クローラ1B,1C,1Dにおいて、弾性クローラ1と同じ構成の部分については弾性クローラ1におけるものと同じ符合を付し、その説明を省略する。また、弾性クローラ1B,1C,1Dにおけるa,b,cの定義も弾性クローラ1におけるものと同じである。
弾性クローラ1Bにおける交線12は、内方表面13を幅方向に拡大した面と端部傾斜面11との交線である。弾性クローラ1Bにおけるクローラ本体2は、周方向に並ぶラグ4,4間の幅方向端の厚さa(ラグ間端部厚さa)が、ラグ4が突出する部分の幅方向端の厚さb(ラグ端部厚さb)よりも小さい(a<b)。
弾性クローラ1B,1C,1Dはいずれも、交線12とクローラ本体2の幅方向の端面14との距離d1が、芯金3の翼部15の先端と端面14との距離d2よりも小さい。
弾性クローラ1B,1C,1Dは、縁石等を通過するときにラグ4が縁石等に乗り上げやすく、またラグ4が縁石に掛からない場合にはラグ4がスムーズに縁石等から滑り落ち、クローラ本体2の幅方向端部に加わるダメージを減少させて耳切れを減少させることができる。
試験は、弾性クローラ1,51が装着されたクローラ式走行車両(重量4t)を、高さ20cmの縁石に進入角度(縁石が伸びた方向に対する弾性クローラの幅方向の(傾き)角度)20度で乗り上げさせる走行を、耳切れが生ずるまで繰り返すことにより行った。
耐耳切れ性は、耳切れが生ずるまでの繰り返し回数を用い、耐ラグ側面変形は、目視により観察した試験時における弾性クローラの幅方向端面の変形(反り)の程度を用いて求めた。
弾性クローラでは、通常その変形は、変形の原因が取り除かれれば復元するので、表1における評価は、耐耳切れ性の結果を重視して行った。
表1に示されるように、弾性クローラ1は、ラグ間端部厚さaとラグ端部厚さbとの差が3mm以上10mm以下の場合に、耐耳切れ性が良好となり、耐ラグ側面変形の低下の程度がわずかである。
すなわち、図4に示される幅方向断面における端部傾斜面11F(の断面端縁における曲線)について、距離の自乗の和が最小となる直線S−Lを求め、この直線S−Lを含み断面に直交する仮想平面と内方表面13を幅方向に拡大した面とにより形成される仮想交線12Fから、端面14までの距離をd1とする。
図5は他のラグ形態を有する弾性クローラ1Eを外周側から見た図、図6は図5におけるB−B矢視断面図である。
弾性クローラ1Eは、幅方向に対して傾斜するラグ4E,…,4Eを有する。
ラグ4Eにおける幅方向の端で幅方向外方を向く側面(外側面)18Eは、幅方向に直交して周方向に拡がる仮想平面M2−G2に対して傾斜している。
また、クローラ本体2は、ラグ4E,…,4Eが突出する部分を除く幅方向の端近傍に、周方向および幅方向に拡がる仮想平面M1−G1に対して傾斜する端部傾斜面11Eを
備える。
弾性クローラ1Eにおいても、弾性クローラ1と同様に、端部傾斜面11Eは、芯金3の翼部15の先端よりも幅方向の外方に設けられる。つまり、内方表面13Eと端部傾斜面11Eとが交差して形成される交線12Eとクローラ本体2の幅方向の端面14との距離d1は、芯金3の翼部15の先端と端面14との距離d2よりも小さい。
図5および図6において図1および図2と同じ符合を付した部分は、弾性クローラ1におけるものと略同一である。
2 クローラ本体
3 芯金
4,4E ラグ
11,11B,11E 傾斜面(端部傾斜面)
14 (クローラ本体の幅方向の)端面
18,18E 外側面
a (クローラ本体の)周方向に隣り合うラグ間における幅方向端の厚さ
b (クローラ本体の)外側面が連続する幅方向の端面における厚さ
c (クローラ本体の)所定の範囲よりも内方における厚さ
d1 所定の範囲
d2 芯金の端からクローラ本体の端までの距離
Claims (3)
- 無端帯状に形成されたクローラ本体と、
周方向に間隔を有して前記クローラ本体に埋設された複数の芯金と、
周方向に間隔を有して前記クローラ本体の外周側の表面から突出する複数のラグと、で形成され、
前記クローラ本体は、周方向に隣り合う前記ラグ間における前記外周側の表面の幅方向の端から内方に所定の範囲に、前記端に近づくに伴い前記クローラ本体の厚さを減少させるための傾斜面を備えており、
前記ラグは、幅方向の端において幅方向外方を向く外側面が傾斜して前記クローラ本体の幅方向の端面に連続しており、
前記所定の範囲は、幅方向における前記芯金の端から前記クローラ本体の端までの距離より小さい範囲であり、
前記クローラ本体は、周方向に隣り合う前記ラグ間における幅方向端の厚さ(以下「ラグ間端部厚さ」という。)が、前記外側面が連続する幅方向の端面における厚さ(以下「ラグ端部厚さ」という。)よりも小さく、
それらの厚さの差は、3mm以上10mm以下であって、
それらの厚さの差により、弾性クローラの幅の1/2の段差を備えた縁石に進入角度20°で乗り上げさせて走行させることを繰り返したときに、前記ラグの幅方向端部に耳切れが生ずるまでの回数が、前記ラグ間端部厚さと前記ラグ端部厚さとが同じ弾性クローラに対して10%以上向上することができる、弾性クローラ。 - それらの厚さの差により、前記ラグの幅方向端部に耳切れが生ずるまでの回数が、前記ラグ間端部厚さと前記ラグ端部厚さとが同じ弾性クローラに対して10%以上30%以下向上することができる
請求項1に記載の弾性クローラ。 - 前記クローラ本体は、
周方向に隣り合う前記ラグ間における前記所定の範囲よりも内方における厚さが、前記外側面が連続する幅方向の端面における厚さよりも小さい
請求項1または請求項2に記載の弾性クローラ。
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