JP5570922B2 - 鋳物の寸法修正方法 - Google Patents
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Description
石膏鋳型53の底面には湯道53bが削孔され、この湯道53bがキャビティ53aに連通している。一方、蓋部材52には、圧搾空気導入孔52aと、石膏鋳型53の湯道53bに連通する湯道52bとが形成されており、この湯道52bに、一端が溶湯保持炉51の溶湯50内に配置された溶湯導入管55の他端側が連結されている。これにより、圧搾空気導入孔52aから溶湯保持炉51内に圧搾空気を導入すれば、溶湯50は溶湯導入管55内を押し上げられて、蓋部材52の湯道52bから石膏鋳型53の湯道53bを通ってキャビティ53a内に充填される。
例えば、前記低圧鋳造法で鋳造したセクターモールド10は、図9に示すように、外周面10bがトレッドパターン形成面10a側とは反対の方向へ反り返る。この反りの大きさは外周面10bの最高位置と最低位置との差である反り量sで表わされる。反り量sは、鋳造条件や鋳物の形状によって異なるが、自然冷却した場合、約0.3〜0.5mm程度である。
従来、反りや捩れなどを低減する方法として、予め反りや捩れなどを予測し、金型に形状変化分を付与しておくことで、出来上がった鋳物の反りや捩れをなくすようにする方法(例えば、特許文献1参照)や、鋳造後の鋳物に外力を与えて変形させる方法(例えば、特許文献2参照)などが行われている。
一方、鋳物に外力を加えて修正する方法では、作業者の経験やスキルが大きく影響するため、経験が浅い作業者が行うと工数が多くかかってしまったり、修正後の寸法が安定しないといった問題点があった。
これにより、修正すべき鋳物に与える入力の大きさを適切に設定できるので、鋳物の寸法を短時間でかつ確実に修正することができる。
また、入力の大きさを設定できるので、例えば、鋳物を上下から挟んで圧縮して変形させるプレス機のような機械を用いて鋳物を自動修正することができる。したがって、修正後の寸法を安定させることができる。
鋳物の寸法は、ある方向を伸長させるとこの方向と直交する方向が縮小するので、本発明のように、互いに異なる2つの方向p,qの寸法P,Qがともに規格値内になるように入力の大きさを設定すれば、修正後の鋳物の寸法のバラツキを更に小さくすることができる。
なお、サンプルについては、鋳造後の鋳物の中から取り出すのではなく、例えば、5番目に鋳造した鋳物と10番目に鋳造した鋳物とをサンプルにするなど、サンプルとする鋳物を予め決定しておいてもよい。
本例では、図2に示すように、鋳造により得られたタイヤの加硫金型のセクターモールド10の寸法を修正する方法について説明する。
始めに鋳造されたセクターモールド10の寸法を測定する(ステップS10)。
本例では、セクターモールド10の互いに異なる2つの方向p,qにそれぞれ平行な方向の寸法P,Qを測定する。方向pはタイヤ軸方向とタイヤ周方向とに垂直な方向で、径方向寸法Pは、セクターモールド10の凹部であるトレッドパターン形成面10aのタイヤ幅方向中央10mにおける深さである。方向qはタイヤ軸方向に平行な方向で、寸法Qはセクターモールド10のトレッドパターン形成面10aの幅である。
セクターモールド10に、寸法Pが大きくなる方向に曲げモーメントMを作用させると、寸法Qは小さくなり、逆に、寸法Pが小さくなる方向に曲げモーメントmを作用させると、寸法Qは大きくなる。具体的には、セクターモールド10の両端部をクランプして中央部にシリンダーなどにより外力(入力)を与えるなどすることで寸法P,Qを変化させることができる。
なお、セクターモールド10の寸法P及び寸法Qの測定は鋳造されたセクターモールド10全てについて行う。
ここで、鋳造したセクターモールド10の個数をN0、修正の必要のないセクターモールド10、すなわち、寸法Pと寸法Qとがともに規格値内にあるセクターモールド10の個数をn0、サンプルとして抽出するセクターモールド10の個数をmとすると、寸法修正を行う必要のあるセクターモールド10の個数Nは、N=N0−n0−mとなる。本例では、サンプルは修正を行う必要のあるセクターモールド10のなかから抽出する。具体的には、サンプル抽出の目安として、寸法Pと寸法Qの両方が規格値からずれており、かつ、そのズレ量がN個の中の平均的な値のセクターモールド10を用いた。なお、寸法Pの規格値からのズレ量がN個の中の平均的なセクターモールド10を用いるなど、別な抽出方法を用いてもよい。あるいは、5番目に鋳造したセクターモールド10と10番目に鋳造したセクターモールド10などのように、予めサンプルとなるセクターモールド10を決定しておいてもよい。
寸法Pの変化量は、サンプルに作用する外力を一定値ずつ徐々に加算していき、その都度寸法Pのデータを取得して得られる。
図2の左下に示す図はグラフ1の一例で、横軸が入力の大きさ(入力値)で縦軸が寸法Pの変化量である。外力の大きさである入力値が小さい場合、寸法Pはほとんど変化しないが、入力値が大きくなるにつれて寸法Pの変化量は急激に大きくなる。
一方、方向pと方向qとは直交しているので、寸法Pが伸長すると寸法Qは縮小する。したがって、横軸を寸法Qの値とし縦軸を寸法Pの値としたとき、グラフ2は、図2の右下の図に示すように右下がりとなる。
まず、修正すべきセクターモールド10に番号付けをし(ステップS14)、1個目(n=1)から順に寸法P,Qの狙い値を決定する(ステップS15)。狙い値の決定の仕方は以下の通りである。
図3(a)に示すグラフ2上の×印は修正すべきセクターモールド10の寸法Pと寸法Qである初期値(P1,Q1)を示す。このセクターモールド10の寸法P1と寸法Q1とを同図の四角い枠で囲った規格値の領域R内に入るように修正するために、寸法Pと寸法Qの目標値である狙い値(P2,Q2)を決定する。狙い値(P2,Q2)は、グラフ2の直線の規格値の領域R内にある箇所であればどこでもよいが、本例では、同図の白丸で示す直線が領域Rで切り取られた線分の中点近傍に設定している。なお、前記規格値の領域Rは、目標値である設計寸法を(P0,Q0)、許容値を±δP,±δQとしたときに、中心が(P0,Q0)、横軸の長さが2δQ、縦軸の長さが2δPの矩形となる。
そして、図3(a)に示すように、グラフ2を用いて初期値(P1,Q1)と狙い値(P2,Q2)との差から寸法P1の必要変化量ΔP=P2−P1を求めた後、図3(b)に示すように、グラフ1を用いて必要入力値Fを決定する(ステップS16)。グラフ1において、変化量ΔPに対応する入力値Fが必要入力値となる。
寸法修正装置20は、基台21と、基台21の幅方向両端に立設された左右の縦フレーム22,23と、縦フレーム22,23を橋絡するように設けられた水平フレーム24と、この水平フレーム24に設置されたシリンダー装置25とを備える。シリンダー装置25の本体25aは水平フレーム24に固定され、シリンダーロッド25bの先端には、押圧板26が設けられている。ここで、基台21側を下側、水平フレーム24側を上側とすると、シリンダーロッド25bは上下方向に伸縮する。
修正するセクターモールド10は、外周面10bが上側でトレッドパターン形成面10aが下側になるように、基台21の上面21aに設置された板状の置き台27上に載置される。
そして、図4(b)に示すように、シリンダー装置25を駆動してシリンダーロッド25bを伸長させ、押圧板26をセクターモールド10の外周面10bに押し付けることで、セクターモールド10を変形させて寸法修正を行う。
なお、本例の寸法修正装置20は、2個のセクターモールド10の寸法を同時に修正できるように、シリンダー装置25を2台設置しているが、シリンダー装置25の個数を1個としてセクターモールド10の寸法を1個ずつ修正するようにしてもよいし、シリンダー装置25を増やして3個以上のセクターモールド10の寸法を同時に修正するようにしてもよい。
なお、寸法修正装置20を用いない場合には、図5(c)に示すように、セクターモールド10の外周面10bの両端部をクランプしてタイヤ幅方向中央10mにシリンダーなどにより外力(入力)Fを、同図の下側方向(もしくは上側方向)に向けて与えるようにすればよい。
これにより、セクターモールド10の寸法P,Qを、図3(a)の×印の点で示した初期値から、同図の白丸で示す狙い値に修正することができる。
寸法P,Qが規格値内に入っている場合には、セクターモールド10の修正が全個数(N個)終了したかどうかを判定し(ステップS19)、全個数(N個)終了した場合には修正作業を完了する。また、セクターモールド10の修正が終了していない場合には、次に修正するセクターモールド10に番号付け(ステップS20)をした後、ステップS15に戻って、寸法修正を継続する。
なお、ステップS18において、寸法P,Qが規格値内に入っていない場合には、ステップS15に戻って、再度寸法修正を行う。
前記例では、寸法Pをタイヤ軸方向とタイヤ周方向とに垂直な方向の寸法とし、寸法Qをタイヤ軸方向に平行な方向寸法としたが、これに限るものではなく、鋳物の互いに異なる2つの方向にそれぞれ平行な方向の寸法であればよい。
また、前記例では、測定した寸法P,Qと、入力値と寸法Pの変化量との関係を示すグラフ1と、寸法P,Qとの関係を示すグラフ2とを用いて寸法修正時の入力値を決定したが、入力値と寸法Pの変化量との関係を示すグラフ1と測定した寸法P1とから入力値を決定することも可能である。具体的には、寸法P1と設計寸法P0との差ΔP=P1−P0を寸法Pの変化量として、グラフ1から入力値Fを決定すればよい。但し、寸法Pのみで入力値Fを決定した場合には、狙い値が、図3(a)の規格値領域Rで切り取られた線分の中点近傍ではなく、規格値領域Rの境界付近に設定されることもあるので、本例のように、グラフ1とグラフ2とを用いて狙い値を決定した方が寸法修正の精度が高くなるので好ましい。
図6と図7とを比較すると、本発明の修正方法では鋳物の修正後の寸法のバラツキは従来の修正方法とほぼ同等であるが、修正に要した時間が約46%削減できていることがわかる。これは、本発明の修正方法では入力値を設定できるため、機械による自動修正が可能なことによる。また、機械による自動修正のため、修正作業中に作業員は別の作業を行うことができるので、更なる工数削減効果が得られる。
10m トレッドパターン形成面のタイヤ幅方向中央、
20 寸法修正装置、21 基台、22,23 縦フレーム、24 水平フレーム、
25 シリンダー装置、25a 本体、25b シリンダーロッド、26 押圧板。
Claims (1)
- 鋳造により製造された鋳物に入力を与えて変形させ、前記鋳物の寸法を修正する鋳物の寸法修正方法であって、
鋳造された複数の鋳物の予め設定された互いに異なる2つの方向p,qにそれぞれ平行な方向の寸法P,Qを測定するステップ(A)と、
前記複数の鋳物の中からサンプルとなる鋳物を取り出して、前記サンプルに入力を与えて当該サンプルの寸法Pと寸法Qとを測定するステップ(B)と、
前記入力の大きさと前記寸法Pの変化量との関係もしくは前記入力の大きさと前記寸法Qの変化量との関係、及び、前記寸法Pと前記寸法Qとの関係を求めるステップ(C)と、
前記求められた入力の大きさと寸法Pの変化量との関係もしくは入力の大きさと寸法Qの変化量との関係、前記寸法Pと寸法Qとの関係、及び、前記測定された寸法P,Qから、修正すべき鋳物に与える入力の大きさを設定するステップ(D)と、
前記設定された入力を前記修正すべき鋳物に与えて前記鋳物を変形させ、前記鋳物の寸法を修正するステップ(E)とを備えたことを特徴とする鋳物の寸法修正方法。
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