JP6244602B2 - ワックス型射出成型用のクランプ装置及びワックス型の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ワックス型射出成型用のクランプ装置及びワックス型の製造方法に関し、特に、ロストワックス精密鋳造におけるワックス型射出成型におけるゴム型の固定に使用されるクランプ装置及び当該クランプ装置を用いたワックス型の製造方法に関する。
主として貴金属を用いた装飾品・アクセサリー・ジュエリーなどは、小さくて複雑、更に精密な形状をしている。このような製品を大量に生産したいという要望があり、ロストワックス精密鋳造法がこの業界で発達してきた。もちろん、上記以外の精密工業用部品製造においても応用可能である。
ジュエリー製造業界におけるロストワックス精密鋳造は、次のような工程を有する。
第一工程は原型を製作する工程。
第二工程は原型と同じ形状の空洞を有するゴム型を製作する工程。
第三工程はゴム型に溶解したワックス射出し、これを取り出すことで原型と同じ形状のワックス型を製造する工程。一般には、第三工程を繰り返して行うことで、多数のワックス型が製造される。
第四工程は第三工程で製造した多数のワックス型をワックス棒周辺にワックス型の湯道端部を溶解しつつ樹状に取り付け、これを筒状の耐熱容器内に装着して石膏を流し込み、石膏型を作成する工程。
第五工程は電気炉又はガス炉その他を用いて、低温で石膏型の内部にあるワックスを溶解流失させ、中温で空洞内部に付着したワックスを完全に燃焼させ、更に温度を上げることで石膏型が貴金属を流し込んだときの衝撃に耐えうる強度を出した後、貴金属を流し込むに適した温度まで下げて待機する焼成工程。
第六工程は原型と同じ空洞を沢山持つ石膏型内部に貴金属を流し込む鋳造工程。
第七工程は、貴金属が固まった時点で、石膏型を急速に水冷することで、ばらばらに石膏を割り、樹状の貴金属を取り出し、余分な部分を切り取り、原型と同じ形状の貴金属を磨く仕上げ工程。
図1を参照して第二工程のゴム型の製造方法を説明する。第二工程では、作成したいゴム型3の大きさに応じたサイズの型枠(不図示)と、原型1と、部品2(湯道2aと湯口2b)を使用する。型枠の下をプレートで塞ぎ、下半分にシリコンゴム加硫前の材料を入れ、その上に、原型1に部品2を接着したものを配置し、その後、上半分に加硫前の材料を入れ、枠の上部をプレートで塞ぎ、プレスしながら温度を上げて加硫する。加硫性のゴムの代わりに二液固化型のシリコンゴムを使用しても良い。
シリコンゴムが固まってゴム本来の弾性を持つようになったら、ゴム型3を前記の枠から取り出してジグザグの切り込み3cを入れ、原型1とこれに接着した部品2を取り出して、ゴム型を上ゴム型3aと下ゴム型3bに分離する。これにより、内部に原型1及び部品2と同形状の空洞4を有するゴム型3が得られる。このような切り込み3cを分離面全体に入れることにより、上下のゴム型3aと3bを合わせたとき、正確に合わせることができ、内部の空洞形状も正確に再現できる。
このような切り込み3cはまた、ゴム型3にワックスを射出してワックス型を作成する際、真空引きと加圧したワックスのシールを容易にする作用も有する。ワックス型をゴム型3から取り出す場合、合わせ面(切り込み)3cから上ゴム型3aを分離した後、下ゴム型3bを変形させながら取り出し作業をすると、複雑な形状のワックス型であっても、壊さずに容易に取り出すことができる。場合によっては、ゴム型内部を幾つかに分割したり、中子を入れることもある。
原型は様々な大きさがあるため、ゴム型もそれに合わせて大きさと厚みは様々に変化する。また、ゴム型の耐久性や、ワックス型をゴム型内部から取り出すときの難易度に合わせて、ゴムの硬度も変えることが多い。
図2、図3に、第三工程で使用されるワックス型射出成型機とクランプ装置の概念図を示す。
ワックス型射出成型機6は射出ノズル7を有し、基本的に射出ノズル7からゴム型内の空洞4を真空引きする機能と溶解したワックスを加圧して射出する機能を持つ。更に良質なワックス型を歩留まりよく大量に生産するため、溶解ワックスの温度制御と射出ノズルの温度制御、射出圧力の制御、真空引き時間の制御、射出時間の制御等の機能を要求される場合がある。
クランプ装置5は、ゴム型3を載置台9とクランプ力発生器11で駆動されるクランププレート10で挟み込んでクランプ力(クランプ力F1、クランプ反力F2)を作用させ、射出ノズル7と湯口4aを上下左右で位置合わせし、ゴム型3を押しつけ力F3で射出ノズル7に押しつけてシールする。その状態で、射出ノズル7からゴム型3の空洞4内にワックスが注入される。
原型1の体積や形状は様々であり、従って原型から製作したゴム型3、3’の上から見たときの縦横の長さと横から見たときの厚みもまた様々なものになる。そこで、これに対応して、溶解したワックスを適切にゴム型内の空洞4へ射出し、所定のワックス型を製作するためには、図2の基本的な機能に追加して更に必要な機能が発生する。
ゴム型3は必ずしも厚さが一定とは限らず、またクランププレート10と載置台9は完全な平行ではないため、クランプ力発生器11とクランププレート10は球面軸受部によりクランププレート10を揺動可能に支持するフローティング機構12で結合するのが一般的である。
ゴム型3をクランプし適切にシールする上で、ゴム型合わせ面3cに均一な面圧を加える必要がある。そのためゴム型の全面に平均して力を加えてクランプすることが望ましい。ゴム型3,3’は大きさがいろいろであるため、クランプ力F1の作用点(クランプ力発生器11)をある範囲R1内で移動させる必要がある。
上下移動機構5bは、異なる厚さを有するゴム型3,3’の湯口4aを射出ノズル7の高さに合わせることができるように、載置台9の高さをある範囲R2で調整するためのものである。
前後移動機構5cは、載置台9を前後方向に移動させるためのものである。前後移動機構5cにより、ゴム型3,3’の湯口4aを射出ノズル7方向へ移動して押しつけ力F3を発生させることにより、第三工程におけるゴム型3内部の空洞4の真空引きと内部へワックスを射出する際の圧力のシールを行うことができる。
また、空洞4の形状やワックスの性質に合わせて射出ノズル7からのワックスの射出圧力を変更するために、及び/又は、ワックスの射出圧力に負けないように、クランプ力F1や押しつけ力F3を調整する必要がある。ただし、クランプ力F1や押しつけ力F3が過大になると、ゴム型3が変形するため、原型に近いワックス型を取ることができなくなる。
国際公開第2013/038448号 特開2002−254137号公報
図4は、クランプ装置5でゴム型3をクランプしてワックスを射出するときの力バランスを示す。
クランプ力発生器11は、クランププレート10に対してクランプ力F1を加えるための装置である。
載置台9上に載置したゴム型3を載置台9とクランププレート10の間でクランプしたとき、クランプ力F1によりゴム型3はたわみ(圧縮)D1を生じ、空洞4の容積、形状も変化する(4→4’)。このとき、ゴム型3の弾性係数をKとすると、ゴム型3には、Fr=K×D1の弾性力Frが発生する。F1とFrは大きさが等しく方向が反対で、力がバランスする。クランプ力F1は空洞4’の断面積Sには作用せず、ゴム型合わせ面3cの面積Aに作用する。従って、F1/A=K×D1/Aの値が、ゴム型3のゴム型合わせ面3cに作用する面圧を意味する。なお、図1にも示すように、一般のゴム型3では、面積Aと比較して面積Sは小さく、面圧の計算等に際しては、ゴム型3の全体の断面積を、A+S≒Aとして計算できる場合が多い。
ゴム型3を前進させて射出ノズル7に押しつけ、真空引き後、ノズル7からワックスをある圧力Pで射出してゴム型3の内部にワックスを充満させる。このとき、空洞4には、断面積Sと射出圧力Pを乗じた力Fpが発生し、クランプ力F1とFr+Fpの合力がバランスするので、ゴム型3の弾性力Frは、F1からF1−Fpに減少し、ゴム型合わせ面3cの面圧は、(F1−Fp)/Aに減少する。これに伴い、ゴム型3のたわみは、D1からD2(D2<D1)に減少し、空洞4の容積及び形状が変化する(4’→4’’)。
弾性力Frの減少は、ワックス射出時のゴム型合わせ面3cからのワックス滲み出しの原因となり、後工程でバリ取り等の必要を生じさせる。これを防ぐために過剰にクランプ力F1を大きくすると、ゴム型3への負担が大きくなることに加え、ワックス射出時の空洞の容積、形状(4’’)が当初の容積、形状(4)から大きく変化してしまう。空洞の変形は、原型1と異なる製品形状となることを意味するので問題である。製品が工業用精密部品である場合にこの問題が重大であることは明らかである。空洞容積の変化は、製品の金属使用量が安定しない原因となる。特に、製品が貴金属である場合、わずかな使用量の増大であっても、製品を大量に生産するため、製造業者の利益管理に多大な影響を与える。
そのため、ゴム型3の種類と射出圧力Pに応じて適切なクランプ力F1を決めなくてはならない。しかし、ゴム型3の大きさや硬度は多種多様であり、射出圧力Pもワックスの種類や空洞4の大きさ・形状等に応じて変化させる必要があり、このような多様な要因に基づいて適切なクランプ力F1を求めることは、実際上不可能である。そのため、ゴム型3毎に試行錯誤でクランプ力F1を決定しているのが現状である。
製造業者は、多数のゴム型3毎にこのような試行錯誤を行い、更には、それにより決定した射出圧力Pやクランプ力F1等の製造条件をゴム型3毎に装置に入力し、記憶させる作業(特許文献2)を強いられている。また、試行錯誤であるから、最適な製造条件を決定するには作業者の熟練が必要であり、品質の良い製品を製造することの困難性を増大させている。試行錯誤で決定されることから製造条件にバラツキがあり、それにより、製品の容積、形状にバラツキを生じさせていた。
本出願には、下記の発明が開示される。
<観点1>
ゴム型を載置する載置台と、
上下方向に移動可能なクランププレートと、
前記クランププレートに対してクランプ力を作用させるためのクランプ力発生器を有し、
前記載置台と前記クランププレートの間で前記ゴム型をクランプするワックス型射出成型用のクランプ装置であって、
前記ゴム型に発生する面圧を測定するための面圧測定機構と、
面圧目標値を入力するための入力手段と、
前記面圧目標値と前記面圧測定機構で測定した前記面圧に基づいて、前記クランプ力を制御する制御手段
を更に有することを特徴とするクランプ装置。
<観点2>
前記載置台に対する前記クランププレートの上下方向の位置を固定するロック機構を更に有すること
を特徴とする観点1に記載のクランプ装置。
<観点3>
前記クランププレートの下面に前記ゴム型よりも低硬度の受圧板が貼付されていること
を特徴とする観点1又は2に記載のクランプ装置。
<観点4>
前記面圧測定機構は、面圧センサーを有し、
前記面圧センサーは、前記クランププレートの下面に形成された凹部に取り付けられていること
を特徴とする観点1〜3のいずれかに記載のクランプ装置。
<観点5>
前記ゴム型へのワックスの注入は、前記クランプ装置をワックス型射出成型機と隣接させた状態で行われ、
前記ワックスの注入の方向を第1の方向とし、前記第1の方向に垂直な水平面内の方向を第2の方向として、
前記面圧センサーは、前記クランププレートの前記ワックス型射出成型機側の端部からの前記第1の方向の距離が0〜20mmであり、前記クランププレート上の前記クランプ力の作用点からの前記第2の方向の距離が5mm〜17.5mmである領域に設置されること
を特徴とする観点4に記載のクランプ装置。
<観点6>
前記第1の方向及び/又は前記第2の方向の離間した位置に複数の前記面圧センサーが設置されること
を特徴とする観点4又は5に記載のクランプ装置。
<観点7>
観点1〜6のいずれかのクランプ装置を用いたワックス型の製造方法であって、
前記制御手段の制御に従って前記ゴム型をクランプする第1ステップと、
前記第1ステップの終了時点のクランプ力を維持する第2ステップと、
前記第1ステップの終了時点から一定時間経過後に前記ゴム型へのワックスの注入を行う第3ステップ
を有することを特徴とするワックス型の製造方法。
上記発明が解決しようとする課題は、当業界において20年以上の長年に渡り解決が望まれていたにも関わらず、今日まで解決がなされなかったものである。下記(1)〜(3)の事情は、上記発明が解決しようとする課題が長年に渡り解決が望まれ、解決が試みられていたものであり、それにも関わらず、当業界の何人も観点1,7の発明に想到することができなかったことの証左である。
(1)上記発明が解決しようとする課題に取り組んだものとしては、特許文献2がおおよそ唯一の従来技術である。
(2)特許文献2の装置は、観点1,7の発明と比較すると、データ入力等に係る人的コストや管理コスト・効率性・利便性等の点において問題を有している。
(3)上記(2)の問題を抱える特許文献2の実施品が、その装置価格の高額さにも関わらず、発売から今日に至る約10年の期間に渡って一応の商業上の成功を納めている。
上記を考慮すれば、少なくとも当業界においては、観点1,7の発明は、容易に想到できたものではないと言える。
本願では、上下、前後、左右は、相互に垂直な方向を意味する。第1及び第2の方向は、水平面内における相互に垂直な方向を意味する。ただし、この定義は、厳密なものではなく、発明の効果が達成できる範囲で柔軟に解釈されるべきである。発明の効果が達成できる限り、上下、前後、左右等の相互間の角度は、垂直と異なる角度であり得る。また、上下方向は、必ずしも鉛直方向を意味しない。例えば、下記実施形態におけるクランプ装置を横置きで使用するような形態では、上下方向は、水平面内の方向であり得る。
図1は、ゴム型の製造方法の説明図である。 図2は、ワックス型射出成型機及びクランプ装置の側面図である。 図3は、クランプ装置の側面図である。 図4(a)〜(c)は、クランプ装置でゴム型をクランプしてワックスを射出するときの力バランスを示す。 図5(a)は、本発明の一実施形態に係るクランプ装置5Aを示す。図5(b)は、他の実施形態に係るクランプ装置5Bを示す。 図6(a)は、第三工程におけるクランプ装置5Aでの典型的な面圧測定値Pmの推移を示す。図6(b)は、第三工程におけるクランプ装置5での典型的な面圧測定値Pmの推移を示す。 図7は、本発明の一実施形態に係るクランプ装置5Cの正面図である。 図8は、本発明の一実施形態に係るクランプ装置5Cの側面図である。 図9は、ロック機構20Aを示す。 図10は、楔受部材25を示す。 図11は、凹部25cを有することによる楔効果を説明する。 図12は、ロック機構の変形形態を示す。 図13は、ロック機構の変形形態を示す。 図14は、面圧測定機構30を示す。 図15は、面圧センサー31A及び31Bの好ましい設置位置の範囲Rを示す。 図16(a)、図16(b)は、例示的な面圧センサー31A〜31Dの上面及び側面を示す。 図17は、面圧測定機構30による面圧測定のメカニズムを示す。
本発明の一実施形態に係るクランプ装置5Aを示す図5(a)を用いて本発明の原理を説明する。
クランプ装置5Aは、載置台9と、クランププレート10と、クランプ力発生器11と、面圧センサー31と、目標値入力部40と、制御部50を有する。本実施形態では、面圧センサー31が面圧測定手段を構成する。
クランプ力発生器11は、エアSの供給によりクランプシャフト11aを下降させることにより載置台9とクランププレート10の間でゴム型3を押圧(クランプ)し、エアSの排気と復帰バネ11bの作用によりクランプシャフト11aを上昇させる単動のエアシリンダーを用いるのが良い。その理由は、ピストンとシリンダー壁その他の摩擦を少なくすることができ、エアSの供給圧力を制御することで押圧力を自在に変えられるからである。
面圧センサー31は、クランプによってゴム型3に発生する面圧に応じた信号を制御部40に提供する。好ましくは、面圧センサー31は、クランププレート10の下面に取り付けられる。面圧センサー31の個数は、1つでも良く、複数でも良い。クランプ装置5Aでは、面圧センサー31は、ゴム型3におけるゴム型合わせ面3c(空洞4及び湯口4a以外の部分)に対応する位置に設置される。面圧センサー31は、ゴム型合わせ面3cに発生する圧力に応じた信号を発生させる。よって、面圧センサー31の信号に基づいてゴム型合わせ面3cに発生する圧力を求めることが可能である。
目標値入力部40は、面圧目標値Paを制御部50に入力するための手段である。目標値入力部40は、例えば、キーボードやタッチパネル、マウス、ボタン等で構成し得る。
制御部50は、面圧センサー31の信号に基づいて、クランプ力発生器11によるクランプ力F1を制御する。クランプ力F1の制御は、クランプ力発生器11へのエアSの供給の制御により行い得る。好ましくは、制御部50は、面圧センサー31の信号から適正な演算値を求め、これに基づいてクランプ力F1若しくはエアSの供給をフィードバック制御する。好ましい態様では、制御部50は、面圧センサー31の信号から求まる面圧(面圧測定値Pm)に基づいて、クランプ力発生器11へのエアSの供給を制御する。以下では、説明の便宜上、この態様を前提として説明する。制御部50は、面圧測定値Pmが面圧設定値Pa未満のときはエアSの供給を行い、面圧測定値Pmが面圧設定値Pa以上のときは、エアSの供給を停止する。面圧測定値Pmが面圧設定値Pa以上のときは、エアSを排気しても良い。制御部50の制御は、PID制御とすることができる。
本願発明者は、本発明のクランプ装置を使用し、当業界で現在使用されている様々な大きさ・材質や様々な空洞形状のゴム型3に対して、ワックスの滲み出しを防ぐのに必要なゴム型合わせ面3cの最小の面圧(以下、シール圧力Psと言う。)を調べるための実験を行った。その結果、シール圧力Psは、ワックスの射出圧力Pのみから概算値を統計的に把握することが可能であり、ゴム型3の大きさ・材質や空洞4の大きさ・形状等によっては、シール圧力Psはさほど大きく影響されないことが判った。本発明者が行った実験では、大きさや材質、空洞4の大きさや形状の異なる種々のゴム型3に対し、下記式(1)のような一次式によってシール圧力Psの概算値を求めることが可能であるとの結果が得られた。(C1及びC2は定数である。)
Ps=C1×P+C2 (1)
よって、上記式(1)等によって求めたシール圧力Psの概略値に、あるマージン(ワックス射出の際の面圧測定値Pmの減少分をカバーするためのマージン)を加えた値を面圧目標値Paとして設定することにより、ワックスの滲み出しを生じることなく、ゴム型3へのワックス注入を行うことができる。例えば、C3×Psのような簡単な数式で求めた値を面圧目標値Paとして使用することができる。C3は、例えば、1.1〜1.5程度の定数である。
図6(a)は、第三工程におけるクランプ装置5Aでの典型的な面圧測定値Pmの推移を示す。横軸は時間である。一般的には、クランプ力F1の作用点がゴム型3の中心になるようにゴム型3を配置し、均一な面圧でゴム型3のクランプが行われる。制御部50がエアSの制御を開始する(時点t0)と、ある時点t1でクランププレート10がゴム型3の上面に接触し、以降、ゴム型3のたわみ(圧縮)が増大し、面圧測定値Pmは上昇する。そして、面圧測定値Pmが面圧目標値Paに到達すると(時点t2)、制御部50は、エアSの供給を停止させる。これにより、面圧測定値Pmは一定値(面圧目標値Pa)に保たれる。その後、時点t3においてワックス射出を開始すると、ワックスの射出圧力Pによりゴム型3のたわみが減少し、面圧測定値Pmが減少するが、面圧目標値Paを上述したように適切に設定しておけば、面圧測定値Pmがシール圧力Psを下回らないようにすることができる。よって、大きさ・材質や空洞4の大きさ・形状等が異なる種々のゴム型3に対して、ワックスの滲み出しを生じることなく、ゴム型3へのワックス注入を行うことができる。また、従来の試行錯誤によるクランプ力F1等の決定や装置への入力等の煩雑な作業が不要化又は軽減され、品質の良い製品をより容易に製造することが可能になる。更に、適切な面圧目標値Paの設定により、過剰なクランプ力F1がゴム型3に掛かることを防止し、ゴム型3の負担や空洞4の容積/形状の変化を小さくすることが可能になる。
通常は、ワックスの射出が完了した時点t4から、ワックスがある程度冷却/固化するまでのある時間(ある時点t5まで)、この状態が維持される。その後、ゴム型3を射出ノズル7から取り外して、第三工程は完了する。
制御部50によるエアSの制御は、時点t0〜時点t3の間のみ行っても良いが、時点t3以降の所定時間に渡って制御を継続しても良い。時点t3以降も制御を継続する場合、時点t3以降に面圧測定値Pmが減少したときに制御部50がエアSを供給するため、面圧測定値Pmの減少幅が小さくなる。よって、より小さい面圧目標値Paを設定することが可能になる。
図5(b)は、他の実施形態に係るクランプ装置5Bを示す。クランプ装置5Bは、ロック機構20を有することを除いて、クランプ装置5Aと同様の構成を有する。ロック機構20は、本願出願人が先に出願したPCT/JP2015/073015において開示されたものであり、ゴム型3をクランプした状態でクランププレート10の載置台9に対する上下方向の位置を固定するための機構である。クランププレート10の位置を固定することで、ワックスの射出の際の面圧測定値Pmの減少幅を小さくすることができる。これにより、面圧目標値Paをより小さくする(よりシール圧力Psに近い値にする)ことが可能になり、過剰なクランプ力F1によるゴム型3の負担や空洞の容積、形状の変化をより小さくすることが可能になる。それにより、原型1により忠実な製品製造が可能となり、精密部品等の品質向上を図り得る。
図6(b)は、第三工程におけるクランプ装置5Bでの典型的な面圧測定値Pmの推移を示す。横軸は時間である。図6(a)の場合と同様にして、面圧測定値Pmが面圧目標値Paに到達した時点t2(又は当該時点t2からワックス射出を開始する時点t3までの間の適宜のタイミング)で、ロック機構20によりクランププレート10の位置を固定する。これにより、時点t3以降のワックス射出による面圧測定値Pmの減少幅は、図6(a)の場合よりも小さくなる(理想的には、減少幅がゼロになる)。よって、シール圧力Psに対する面圧目標値Paのマージンをより小さくでき、クランプ力F1によるゴム型3の負担や空洞の容積、形状の変化を一層小さくすることが可能になる。ロック機構20によるクランププレート10の位置固定は、手動で行ってもよく、制御部50の制御によって行ってもよい。制御部50は、好ましくは、時点t2のタイミング(又は時点t2と時点t3の間の適宜のタイミング)でクランププレート10の位置を固定するようにロック機構20を制御する。
図7〜9は、特に好ましい形態のクランプ装置5Cを示す。図7及び図8は、図3におけるクランプ機構部5aのゴム型載置台9より上の部分に対応する。
本実施形態のクランプ装置5Cは、クランプ機構部筐体8と、ゴム型3を載置するための実質的に水平な載置面を有する載置台9と、鉛直方向に移動可能なクランププレート10と、クランプ力発生器11と、フローティング機構12と、クランプ力発生器移動機構13と、左右移動機構14と、ロック機構20Aと、面圧測定機構30を有する。
筐体8は、板金等の金属材料で形成され得る。載置台9は、ゴム型3を装着可能なアクリル板等で形成されるゴム型位置決め挿入プレート9aを有し、上記載置面は、ゴム型位置決め挿入プレート9a上に形成されている。
クランププレート10は、実質的に平板状の金属板等により形成される。クランププレート10には、後述の面圧センサー31を収容するための1つ又は複数の凹部10b(図17)及び面圧センサー31から回路基板33への配線を通すための1つ又は複数の配線孔10c(図14)が形成されている。
クランプ力発生器11は、載置台9に対するクランププレート10の上下方向の位置を変化させ、クランププレート10に対してクランプ力F1を作用させるための装置である。好ましくは、クランプ力発生器11は、圧縮エアにより動作するクランプシャフト11aによってクランププレート10を上下に移動させ、クランププレート10に対してクランプ力F1を作用させることが可能な単動式エアシリンダーである。
クランプシャフト11aとクランププレート10は、フローティング機構12を介して連結されている。フローティング機構12は、揺動軸受部12aと、移動制限機構12bを有する。
揺動軸受部12aは、ボールジョイント等によって、クランププレート10を前後左右に揺動可能にクランプシャフト11aに結合させる。
移動制限機構12bは、クランププレート10が上死点にあるときには、クランプシャフト11aの前後方向の移動を許容する一方で、クランププレート10が上死点から下降したときには、クランプシャフト11aのクランププレート10に対する前後方向の位置を固定する。これにより、クランププレート10が上死点にあるときには、ゴム型3の大きさに合わせて、クランププレート10に対するクランプ力F1の作用点を前後方向で調整することが可能であり、クランププレート10の下降過程では、クランプ力F1の作用点がずれてしまうことが防止される。
クランププレート10は、左右に突起部10aを有し、クランプ機構部筐体8は、上死点にあるクランププレート10の突起部10aに係合する係合部8aを有する。突起部10aと係合部8aが係合することで、クランプシャフト11aの前後方向への移動の際にクランププレート10が一緒に前後に移動することが防止される。
クランプ力発生器移動機構13は、前後方向にクランプ力発生器11を移動させるための機構である。
クランプ力発生器移動機構13は、クランプ力発生器11を前後に案内するガイドシャフト13aと、クランプ力発生器11を前後に駆動するためのラック13b及びピニオン13cと、ピニオン13cを回転操作するためのツマミ13dを有する。
ガイドシャフト13aはクランプ機構部筐体8に若干の隙間を有して装着されており、クランプ力発生器11が作動しても、大きな反力がガイドシャフト13aに作用せずにクランプ機構部筐体8に直接作用させるためのクランプ反力受け13eがクランプ力発生器移動機構13の移動方向全域においてその左右に取り付けられている。
クランプ力発生器11をツマミ13dの回転により移動させるときは、クランプ反力受け13eとクランプ機構部筐体8との間に若干の隙間を設けてあり、自由に移動可能であるが、クランプシャフト11aが下降してゴム型3をクランプしたとき、その反力によってガイドシャフト13aが持ち上がり、クランプ反力受け13eがクランプ機構部筐体8に密着して、大きな反力を受け止める。
クランプ力発生器移動機構13の載置台9に対する上下方向の位置は基本的に固定されている。クランププレート10がゴム型3をクランプした状態では、クランプ反力受け13eがクランプ機構部筐体8に密着し、クランプ力発生器移動機構13の載置台9に対する上下方向の位置は、実質的に固定される。
左右移動機構14は、クランプ機構部5aに作用する左右方向への力に応じてクランプ機構部5aを左右方向に案内する機構である。
図9は、ロック機構20Aを示す。図示のように、ロック機構20Aは、ロック棒21と、ブロック部材22と、弾性部材23と、エアシリンダー24と、楔受部材25を有する。
ロック棒21は、一端に円形孔21aを有し、他端に円形孔21bを有する平板棒状の部材である。円形孔21aは、クランプ力発生器移動機構13の筐体13fに固定された固定軸13gの周りで水平面内で回転自在に支持される。円形孔21bは、エアシリンダー24のピストン24a先端に形成された駆動軸24bの周りで回転自在に支持される。
ロック棒21は、円形孔21a,21bの中間位置にクランプシャフト11aに係合可能な係合部21cを有する。係合部21cは、クランプシャフト11aに相補的な形状とすることができる。係合部21cは、円形孔21a,21b間の距離Nが円形孔21aと係合部21cの距離nよりも充分大きくなる位置に設けられる。
ブロック部材22は、クランプ力発生器移動機構13の筐体13fに固定されている。ロック棒21の他端側とブロック部材22の間には、バネ等の弾性部材23が介挿されている。
エアシリンダー24は、エアS1の圧力と弾性部材23の付勢力でピストン24aを水平方向(図8(a)の左右)に駆動する。エアシリンダー24は、エアS1の供給が無いときに、係合部21cとクランプシャフト11aの間に僅かな隙間が形成されるように位置決めされている。
図10は、楔受部材25を示す。図10(a)は、斜視図であり、図10(b)は、図9(b)のC−C断面である。楔受部材25は、突起部25aを有する概略円筒状の外形を有する部材である。楔受部材25には、クランプシャフト11aを案内するためのクランプシャフト11aと概略同径の案内穴25bと、案内穴25bに開口する凹部25cが形成されている。案内穴25b及び凹部25cは、楔受部材25を上下方向に貫通している。好ましい実施形態では、凹部25cは、案内穴25bの偏心位置に形成された案内穴25bより小径の円弧状の断面形状を有する。案内穴25bと凹部25cの接続部位は、クランプシャフト11aとの間で摩擦を発生させる摩擦部25d,25eを構成する。摩擦部25d,25eの間の距離r1は、案内穴25b(クランプシャフト11a)の径r2よりも小さい。
楔受部材25の側面には、ロック棒21を水平面内で案内するためのロック棒21の厚みと概略同幅の切込部25fが形成されている。楔受部材25は、例えば、円筒状のロッドを加工することにより形成した一体物の部材であることが、コスト、強度の面から好ましい。凹部25cはエンドミル等により、切込部25fはフライス等により加工できる。楔受部材25は、突起部25aを筐体13fの係合穴13hに挿入した状態で筐体13fに固定される。図中25gは、固定軸13gの受け孔である。
ロック機構20Aの動作を説明する。
エアシリンダー24へのエアS1未供給時には、係合部21cとクランプシャフト11aの間、及び、クランプシャフト11aと摩擦部25d,25eの間に隙間が有り、クランプシャフト11aは上下方向に自由に移動可能である。
エアシリンダー24にエアS1が供給されると、ピストン24aがロック棒21を固定軸13gの周りで回転させ、係合部21cによりクランプシャフト11aが凹部25c側に押し付けられる。この押付力により、クランプシャフト11aと摩擦部25d,25eの間に摩擦が生じ、クランプシャフト11aの載置台9に対する上下方向の位置が固定される。
このとき、距離Nが距離nよりも充分大きいため、クランプシャフト11aから楔受部材25への押付力を大きくすることができる。また、クランプシャフト11aの押付力が2点(摩擦部25d,25e)に作用することにより、楔効果で大きい反力が発生し、クランプシャフト11aの上下方向の位置固定が強固にできる。
図11は、凹部25cを有することによる楔効果を説明する。凹部25cが無い場合、楔受部材25の一箇所でしか抗力が発生せず、その抗力の大きさはクランプシャフト11aの押付力Fに等しい。しかし、本実施形態では、凹部25cがあることで、2箇所の摩擦部25d,25eで抗力Fa,Fbが発生する。摩擦部25d,25eの距離r1を大きくしていくと(ただし、r1<r2)、抗力Fa,Fbを、Fa2,Fb2のように増大させることができる。
クランプシャフト11aに作用する摩擦力は抗力Fa,Fbと摩擦係数の積で作用するため、上記楔効果により摩擦力を効果的に高めることができる。摩擦係数はクランプシャフト11aの外壁と凹部25cの内壁の材質と表面粗さによって決まるため、適切な材質の選択と適正な表面粗さ仕上げにより、又は、クランプシャフト11a及び/又は凹部25cに螺旋溝などを施すことで、摩擦係数を高めることが可能である。
ピストン24aが直線運動をするのに対してロック棒21は回転運動をするが、円形孔21bの径を駆動軸24bより少し大きくしておけば上記動作に問題は生じない。クランプシャフト11aを凹部25cに向けて押し付ける際に、クランプシャフト11aの駆動方向に直角方向の力が作用するが、クランプシャフト11aと案内穴25bの径差を充分小さくしておけば、クランプ力発生器11の機能、動作に悪影響は生じない。
本実施形態では、特に好ましい態様として、突起部25aや案内穴25b、切込部25f等を有する楔受部材25を示したが、摩擦部25d,25eさえ有れば上記楔効果によるクランプシャフト11aの固定が可能であり、その他の構成は、省略することも可能である。
上記実施形態におけるロック機構20Aには、種々の変形形態が考えられる。
図12は、ロック機構の第1の変形形態を示す。図12のロック機構20Bでは、割26aを入れたテーパ26b付きスリーブ26と、テーパ26bに相補的なテーパ27aを有するスリーブ27がクランプシャフト11aに嵌挿されている。エアシリンダー28のピストン28a等でスリーブ27をスリーブ26に押し付ければ、スリーブ26の締め付けによりクランプシャフト11aの位置を固定することができる。
図13は、ロック機構の第2の変形形態を示す。図13のロック機構20Cは、クランプシャフト11aに係合するテーパ29aを有する一対のブロック又は板29を有する。ブロック又は板29の一端を回転可能に支持し、他端に押付力を作用させ、クランプシャフト11aをテーパ29aで挟み込むことによって、クランプシャフト11aの位置を固定することができる。
更に他の形態として、クランプシャフト11aの外壁に上下方向にラックを形成し、当該ラックにピニオンを係合させ、ピニオンを固定することにより、クランプシャフト11aの位置を固定することもできる。
図14は、面圧測定機構30を示す。面圧測定機構30は、面圧センサー31と、受圧板32と、回路基板33を有する。
本実施形態の面圧測定機構30は、4つの面圧センサー31A〜31Dを有する。各面圧センサー31A〜31Dは、クランププレート10の下面に形成された複数の凹部10bに設置される。
後述の制御部(不図示)は、面圧センサー31Aの出力に基づいてクランプ力発生器11へのエアSの供給を制御する。面圧センサー31A〜31Dの2つ以上の出力に基づく制御も可能である。面圧センサー31Bは、予備のセンサーであり、面圧センサー31Aが故障した場合には、制御部は、面圧センサー31Bの出力に基づいてクランプ力発生器11へのエアSの供給を制御する。
面圧センサー31A及び31Bは、ゴム型3におけるゴム型合わせ面3c(空洞4及び湯口4a以外の部分)に対応する位置であって、最もサイズの小さいゴム型3の外形の範囲内の位置に配置することが好ましい。面圧センサー31A及び31Bの好ましい設置位置の範囲Rを図15に示す。図示のように、好ましい範囲Rは、クランププレート10の中心Cから左右方向への距離が5〜17.5mmの範囲であって、クランププレート10の前端E(射出ノズル7側の端部)から後方への距離が0〜20mmの範囲である。
面圧センサー31Aと面圧センサー31C及び/又は31Dは、クランププレート10の押圧バランス(前後方向におけるクランプ力F1の作用点の適切性)のチェックに使用される。面圧センサー31Aと面圧センサー31C及び/又は31Dの信号を比較することにより、押圧バランスが不適切であると判断される場合には、クランプ力発生器移動機構13によりクランプ力発生器11を前後方向の位置を調整することができる。クランプ力発生器移動機構13にクランプ力発生器11を前後方向に駆動するための駆動装置を設け、制御部が、面圧センサー31Aと面圧センサー31C及び/又は31Dの信号に基づいて、クランプ力発生器11を自動的に移動させるように構成しても良い。ゴム型3が比較的小型のときには面圧センサー31Cを使用し、比較的大型のときには面圧センサー31Dを使用することができる。
図16(a)、図16(b)は、例示的な面圧センサー31A〜31Dの上面及び側面を示す。本実施形態では、面圧センサー31A〜31Dは、カーボン抵抗式のセンサーである。面圧センサー31A〜31Dは、一対の櫛形電極を含む回路パターン(不図示)が形成された基板31aと、各櫛形電極に電気的に接続された端子31b,31bを有する。櫛形電極の上部には、スペーサ31cを介してカーボン膜31dが取り付けられており、カーボン膜31dに作用する圧力に応じて櫛形電極間の導電抵抗が変化することにより、圧力の変化が検出される仕組みである。カーボン抵抗式のセンサーは、面圧検出精度はそれほど高くないものの、非常に薄くて形状も小さく、耐久性も高い等の利点を有する。
面圧センサー31A〜31Dは、カーボン膜31dの表面がクランププレート10の下面と概略一致するようにクランププレート10に形成された凹部10bに設置される。また、各面圧センサー31A〜31Dの端子31b,31bは、フローティング機構12の可動部分を避けるように、クランププレート10に設けた配線孔10cを通して回路基板33上の配線に半田付けされる。
クランププレート10の下面には、受圧板32を取り付けることが好ましい。受圧板32は、ゴム型3よりも硬度の低い材質(例えば、ゴム、プラスチック等)とするとよい。受圧板32は、クランププレート10の下面の概略全体を覆うようにクランププレート10の下面に貼り付けるとよい。本実施形態のクランプ装置5Cは、ロック機構20Aを有するため、受圧板32は極力薄くすることが好ましい。ロック機構20Aは、受圧板32を介してゴム型3をクランプするため、ロック効果が薄れる可能性があるからである。本実施形態の面圧センサー31A〜31Dの肉厚は極めて薄く0.05mm程度である(カーボン膜31dの作動範囲はそれ以下である)から、受圧板32の肉厚も薄くて良い。受圧板32の硬度にもよるが、受圧板32の肉厚は、好ましくは、0.03〜5mmであり、より好ましくは、0.05〜3mmであり、特に好ましくは、0.1mm〜2mmである。ロック機構20Aを使用しないクランプ装置の場合は、受圧板32の肉厚に制約はなく、肉厚の大きい受圧板32を使用してよい。
図17は、面圧測定機構30による面圧測定のメカニズムを示す。図17(a)に示すように、受圧板32が無い場合、ゴム型3が変形しない限り、カーボン膜31dにはクランプ力が作用しないことから、ゴム型3の圧力を適切に検出できない場合が考えられる。硬度の低い受圧板32をクランププレート10の下面に配置すると、図17(b)に示すように、受圧板32が変形することでクランプ力がカーボン膜31dに作用し易くなり、ゴム型3の圧力をより確実に検出することができる。
回路基板33は、面圧センサー31A〜31Dの配線をとりまとめて制御部に接続するための回路パターンを担持する。回路パターンとクランププレート10の絶縁を確保するため、回路基板33は、スペーサ33aを介してクランププレート10に取り付けられる。回路基板33は、フローティング機構12の可動部分を避けるようにコの字の形状となっている。
クランプ装置5Cは、クランプ装置5A,5Bの目標値入力部40、制御部50と同様の目標値入力部及び制御部を有し得る。本実施形態では、制御部は、面圧センサー31Aの出力に基づいてクランプ力発生器11へのエアSの供給を制御することでクランプ力F1を制御する。実際の作業現場では、クランプ装置5Cを用いて1日に数百〜千回以上のワックス型製造が行われることもめずらしくない。多数回の反復使用等により面圧センサー31A又はその配線が故障した場合、制御部は、面圧センサー31Bの出力に基づいてクランプ力発生器11へのエアSの供給圧力を制御することができる。
以上、好ましい実施形態を説明したが、上記実施形態は例であり、本発明は、請求の範囲において種々の変更が可能である。
例えば、クランプ装置5Cの実施形態では、カーボン抵抗式の面圧センサー31A〜31Dを使用する例を示したが、他の方式のセンサーを使用することも可能である。例えば、金属等の導電性のある微細粉末をゴム板を用いた導電性ゴム抵抗式のセンサーを使用しても良い。ただし、導電性ゴム抵抗式のセンサーは、カーボン抵抗式のセンサーと比較すると、厚みが大きく、耐久性が低く、精度も低い。ストレンゲージや磁気センサーを応用して精度の高い面圧センサーを構成することもできるが、薄く、形状を小さくするのが困難である。現在入手可能な面圧センサーの中では、カーボン抵抗式が最も好適である。
上記実施形態では、面圧センサー31A〜31Dをクランププレート10の下面に設置する場合を示したが、載置台9の上面に設置してもよい。
上記実施形態では、面圧センサー31Bは予備のセンサーであり、面圧センサー31C及び/又は31Dは、押圧バランスのチェック等に使用される場合を示したが、面圧センサー31A〜31Dの2つ以上の出力の平均値を用いてエアSの供給圧力を制御しても良い。
上記実施形態では、クランプ力発生器11が1台である場合を示したが、小型の(出力が小さい)複数台のクランプ力発生器11を前後方向に並べて設置し、面圧センサー31Aと面圧センサー31C又は31Dの信号を用いて、前後方向の押圧バランスが均一になるように、各クランプ力発生器11のクランプ力F1(エアSの供給圧力)を制御する変形形態も可能である。この変形形態では、クランプ力発生器移動機構13は省略することも可能である。面圧センサー31A,31C,31Dの前後方向の位置関係や個数は、上記実施形態の場合に限らず、適宜調整することができる。なお、この変形形態では、前後方向における押圧バランスを均一にするのではなく、ゴム型3の特性や空洞4の配置、形状等に応じて前後方向における押圧バランスを調整する(ゴム型3の前部のクランプ力を後部より強くしたり弱くしたりするなど)ことも可能である。それにより、より良好なワックス注入が可能となる場合がある。
本発明のクランプ装置は、上述の効果の他に、次の効果を有し得る。
上記の通り、クランプ力発生器11は、エアSの供給と復帰バネ11bの作用によりクランプシャフト11aを上下動させるエアシリンダーを使用するのが好ましい。また、ゴム型3の厚さは様々であり、ゴム型位置決め挿入プレート9a(アクリル板)の厚さも顧客によって様々である。そして、ゴム型3の厚みやゴム型位置決め挿入プレート9aの厚さが変わると、ゴム型3をクランプしたときの復帰バネ11bのたわみ量が異なるため、エアSの圧力が同じでも、実際のクランプ力F1に相違が生じる。すなわち、クランプ力発生器11に付加したエアSの圧力が一定でも、ゴム型3の厚みやアクリル板(ゴム型位置決め挿入プレート9a)の厚みが異なると、クランプ力F1は異なる。これが、クランプ力の適正値を求める事を一層困難にしており、様々にクランプ力を変えなくてはいけない原因の一つになっている。本発明は、実際に測定した面圧Pmに基づいてクランプ力を制御するため、ゴム型3の厚みの違いやアクリル板の厚みの違いに関わらず、クランプ力を一定にできるという効果も有し得る。
本発明は、宝飾品、アクセサリ等の小物や工業製品等の製造のためのワックス型射出成型の際のゴム型の固定に使用されるクランプ装置及びワックス型の製造に適用することができる。
1・・・原型
2・・・部品
3,3’・・・ゴム型
4,4’,4’’・・・空洞
5,5A,5B・・・クランプ装置
5a・・・クランプ機構部
5b・・・上下移動機構
5c・・・前後移動機構
6・・・ワックス型射出成型機
7・・・射出ノズル
8・・・クランプ機構部筐体
9・・・ゴム型載置台
10・・・クランププレート
11・・・クランプ力発生器
11a・・・クランプシャフト
12・・・フローティング機構
13・・・クランプ力発生器移動機構
14・・・左右移動機構
20、20A〜20C・・・ロック機構
21・・・ロック棒
21c・・・係合部
24・・・エアシリンダー
24b・・・駆動軸
25・・・楔受部材
25d,25e・・・摩擦部
30,30A〜30D・・・面圧測定機構
31・・・面圧センサー
31a・・・基板
31b・・・端子
31d・・・カーボン膜
31c・・・スペーサ
32・・・受圧板
33・・・回路基板
33a・・・スペーサ
40・・・目標値入力手段
50・・・制御部

Claims (7)

  1. ゴム型を載置する載置台と、
    上下方向に移動可能なクランププレートと、
    前記クランププレートに対してクランプ力を作用させるためのクランプ力発生器を有し、
    前記載置台と前記クランププレートの間で前記ゴム型をクランプするワックス型射出成型用のクランプ装置であって、
    前記ゴム型に発生する面圧を測定するための面圧測定機構と、
    面圧目標値を入力するための入力手段と、
    前記面圧目標値と前記面圧測定機構で測定した前記面圧に基づいて、前記クランプ力を制御する制御手段
    を更に有することを特徴とするクランプ装置。
  2. 前記載置台に対する前記クランププレートの上下方向の位置を固定するロック機構を更に有すること
    を特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
  3. 前記クランププレートの下面に前記ゴム型よりも低硬度の受圧板が貼付されていること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のクランプ装置。
  4. 前記面圧測定機構は、面圧センサーを有し、
    前記面圧センサーは、前記クランププレートの下面に形成された凹部に取り付けられていること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクランプ装置。
  5. 前記ゴム型へのワックスの注入は、前記クランプ装置をワックス型射出成型機と隣接させた状態で行われ、
    前記ワックスの注入の方向を第1の方向とし、前記第1の方向に垂直な水平面内の方向を第2の方向として、
    前記面圧センサーは、前記クランププレートの前記ワックス型射出成型機側の端部からの前記第1の方向の距離が0〜20mmであり、前記クランププレート上の前記クランプ力の作用点からの前記第2の方向の距離が5mm〜17.5mmである領域に設置されること
    を特徴とする請求項4に記載のクランプ装置。
  6. 前記第1の方向及び/又は前記第2の方向の離間した位置に複数の前記面圧センサーが設置されること
    を特徴とする請求項4又は5に記載のクランプ装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項のクランプ装置を用いたワックス型の製造方法であって、
    前記制御手段の制御に従って前記ゴム型をクランプする第1ステップと、
    前記第1ステップの終了時点のクランプ力を維持する第2ステップと、
    前記第1ステップの終了時点から一定時間経過後に前記ゴム型へのワックスの注入を行う第3ステップ
    を有することを特徴とするワックス型の製造方法。
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