JP5570101B2 - 球状化浸炭鋼板の製造方法および焼鈍鋼帯 - Google Patents

球状化浸炭鋼板の製造方法および焼鈍鋼帯 Download PDF

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Description

本発明は鋼板素材の状態で既に表面に浸炭層が形成されかつ炭化物が球状化されている球状化浸炭鋼板の製造方法、および表面に浸炭層が形成されかつ炭化物が球状化されている球状化浸炭鋼帯に関する。
鋼材の浸炭法には、固定浸炭法、液体浸炭法、ガス浸炭法、真空浸炭法がある。
固体浸炭法は、被処理鋼材を浸炭箱に入れ、浸炭性ガス(主としてCO)を十分に発生させるために多量の固体浸炭剤を被処理鋼材の周囲に充填して密封し、約850℃以上に加熱するものである。
液体浸炭法は、浸炭剤を含有する塩浴などに被処理鋼材を浸漬するものであり、浴中の有害物質が問題になることがある。
ガス浸炭法は、被処理鋼材を900〜1000℃付近の変成ガス(CO、H2、N2、CH4、CO2等の混合ガス)に曝すことによって浸炭を行うものであり、一般に最も広く使用されている浸炭法である。
真空浸炭法は、被処理鋼材を入れた密閉容器を真空引きした後に、その容器中にメタン、プロパン、エチレン、アセチレン等のガスを直接装入して浸炭を行うものである。
これらの浸炭法を実施するには、いずれも高価な浸炭設備が必要となる。被処理鋼材の表面全体に良好な浸炭層を形成させるためには、浸炭性ガスを被処理鋼材の表面に均一に接触させることが重要である。浸炭性ガスの制御管理を十分に行う上で、浸炭箱、塩浴槽、加熱炉などを大規模化することは必ずしも容易ではない。このため、浸炭法を適用する鋼材は一般に小型部品に制限されることが多い。また、浸炭には長時間を要するので、エネルギーコストや生産性の面でも、従来の浸炭法には欠点がある。
浸炭の主目的は部品の表層部を焼入れ硬化させることにあるが、それらの部品には鋼板素材を加工して成形されるものが多い。この場合、鋼板素材の段階で表面に浸炭層を形成させておき、部品加工後には浸炭処理を省略して焼入れ処理に供するという工程を採用することが可能になれば、経済的メリットが大きい。そこで従来、鋼板素材の表面に浸炭剤を塗布して浸炭する方法が提案されている(特許文献1〜4)。
特開2000−119838号公報 特開2001−107217号公報 特開2001−115249号公報 特開2007−100210号公報
上記のような浸炭剤を塗布する浸炭法によれば、鋼板表面に素材の段階で浸炭層を形成させることができる。しかしながら、上記各特許文献に開示の方法に従うと、材料を概ね900℃以上の高温に加熱する必要がある。発明者らの検討によれば、それより低い温度域(例えばAc1点〜850℃)に加熱するだけでは十分に浸炭が進行しないことが明らかになった。浸炭だけの目的で鋼板を900℃以上という高温に曝すことは必ずしも有益ではない。結晶粒の粗大化や冷却時のパーライト変態による材料の硬質化が問題となりやすい。特に結晶粒の粗大化は、疲労特性や衝撃値の低下を招く要因になる。さらに、設備コストの増大や、工程増による生産性の低下も問題となる。
本発明は、このような現状に鑑み、鋼板製造プロセスにおいて実施されている既存の熱処理工程を利用して、鋼板表面に浸炭層を形成させ、かつ炭化物の球状化を図る合理的な浸炭処技術を提供すること、およびその技術を適用して得られる焼鈍鋼帯を提供することを目的とする。
発明者らは詳細な研究の結果、浸炭塗膜を鋼板の表面に形成して、その浸炭塗膜と鋼板表面の間に一定以上の接触圧力を付与した状態としたとき、不活性ガス雰囲気下の比較的低い温度域で浸炭が進行することを見出した。本発明はこのような新たな知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、C含有量0.8質量%未満の鋼からなる鋼板の表面に、不活性ガス雰囲気中720〜850℃の温度域でCOガスを発生する性質の浸炭塗膜を0.2MPa以上の圧力で接触させることにより「鋼板/浸炭塗膜」の接触構造を形成させ、その接触構造を構成する鋼板および浸炭塗膜に対して、不活性ガス雰囲気中720〜850℃の範囲に3hr以上保持する工程(第1ステップ)、次いで660℃以上Ac1点未満の範囲内の温度まで15℃/hr以下の冷却速度で徐冷する工程(第1ステップ→第2ステップの冷却)、前記徐冷後に660℃以上Ac1点未満の範囲内の温度に10hr以上保持する工程(第2ステップ)を有する熱処理を施す、球状化浸炭鋼板の製造方法が提供される。特に、前記浸炭塗膜をコイル状に巻かれた鋼帯の隣り合う鋼板表面間に介在させることによって、その両側の鋼板表面との間に「鋼板/浸炭塗膜」の接触構造を形成させることができる。
浸炭塗膜は、浸炭剤(炭素源)を含有する塗膜であり、水性の浸炭塗料を使用する場合は、塗布後に塗料中の水分の大部分を乾燥除去して得られる塗膜を意味する。浸炭塗膜は、浸炭剤として木炭粉、グラファイト、カーボンブラックの1種以上を3〜30質量%、浸炭促進剤として炭酸ナトリウムなどの炭酸塩を3〜30質量%含有するものが適用できる。浸炭塗膜中のこれらの成分の含有量は、塗膜中の水分を除いた全成分中に占める含有量である。これは、水性塗料を調製する際に添加する水を除いた全成分に占める含有量に相当する。
不活性ガスは、窒素ガス、希ガス(アルゴン等の第18族元素のガス)、NXガス(窒素ベースの変成ガス)など、非還元性かつ非酸化性のガスである。
また、本発明では、C含有量0.8質量%未満の亜共析鋼を溶製して得た焼鈍鋼帯(熱延焼鈍材または冷延焼鈍材)であって、表層部に浸炭層を有し、表面から50μm深さまでの平均炭素濃度C1(質量%)と板厚中心位置±25μmの板厚方向領域における平均炭素濃度C0(質量%)の差ΔC=C1−C0の値が0.1質量%以上であり、表面から50μm深さまでの領域における炭化物の球状化率が90%以上である球状化浸炭鋼帯が提供される。鋼帯の状態で既にこのような浸炭層を有するものは、従来得られていなかった。
ここで、平均炭素濃度C1およびC0は、当該鋼帯から切り出した鋼板サンプルについて板厚方向に平行な断面内の所定の板厚領域を、EPMA等の分析手法で板厚方向にライン分析することによって求めることができる。本明細書では、板厚方向に平行な断面に観察される炭化物において、その最も長い部分の径を長径、長径に直角方向の最大径を短径と呼ぶとき、長径/短径で表されるアスペクト比が2以下であるものを、球状炭化物と定義している。表面から50μm深さまでの領域における炭化物の球状化率は、その領域の観察視野に存在する炭化物に占める球状炭化物の割合をいう。
本発明によれば、以下のようなメリットが得られる。
(1)概ね850℃以下の比較的低温での浸炭処理が可能になる。このため、結晶粒の粗大化が防止され、部品の靱性向上に繋がる。
(2)コイル状に巻かれた鋼帯に対して浸炭処理を施すことが可能であり、大量生産に適する。
(3)鋼板素材の段階で既に浸炭が完了しているので、部品加工後には浸炭処理を省略することが可能であり、部品メーカーでの負荷が軽減される。
(4)現状の鋼板製造プロセスで実施されている炭化物球状化焼鈍(TCA)の工程を利用して浸炭処理することができる。この場合、新たな熱処理炉を必要とせず、また熱処理工程の増加を伴わないので、製造コストの増大が抑制される。
(5)表面炭素濃度が高い焼鈍鋼板が得られるので、製品形状に打ち抜く場合に「だれ量」が軽減され、部品の精度・品質が向上する。
本発明では、鋼板表面に浸炭剤(炭素源)を配合した塗料を塗布して浸炭塗膜を形成したのち、熱処理に供する浸炭方法を利用する。ただし、850℃以下という比較的低温域で浸炭を効率的に進行させるために、以下の2点が重要である。
(i)浸炭塗膜を0.2MPa以上の圧力で鋼板表面に接触させること。
(ii)浸炭処理の雰囲気を不活性ガス雰囲気とすること。
浸炭には概ね以下のような反応が関与していると考えられる。
C+O2 → CO2 ……(1)
C+CO2 → 2CO ……(2)
2CO+Fe → [Fe+C]+CO2 ……(3)
(1)式は浸炭剤由来のCと、酸素とが反応してCO2ガスが生成する過程である。本発明の場合、酸素は浸炭塗膜に配合されている浸炭促進剤(炭酸塩)から供給される。
(2)式は発生したCO2ガスが浸炭剤由来のCと反応して、浸炭性ガスであるCOを生じる過程である。
(3)式は(2)式で生じたCOが鋼板表面のFeと反応して浸炭が起きる過程である。[Fe+C]の部分におけるCは、鋼中に浸入したCを意味する。
「鋼板/浸炭塗膜」の接触構造を形成させることにより、浸炭塗膜から発生したCO2およびCOが逃げにくくなり、鋼板表面近傍に比較的高濃度の浸炭性ガス(主としてCO)が存在する環境が維持されやすくなると考えられる。ただし、単に「鋼板/浸炭塗膜」の接触構造を形成しただけでは、850℃以下の温度域で浸炭を進行させることが困難である。
ところが、発明者らの研究によれば、鋼板と浸炭塗膜の間に一定以上の接触圧力を付与した状態で不活性ガス中での熱処理に供すると、850℃以下の温度で浸炭が進行することが明らかになった。そのメカニズムについては現時点で明確ではないが、接触圧力を付与したときには発生した浸炭性ガス(CO)の分圧が高くなり、(3)式の反応が進行しやすい状況になるのではないかと考えられる。
以下、本発明を特定するための事項について説明する。
〔素材鋼板〕
素材鋼板(浸炭処理に供する鋼板)は、C含有量が0.8質量%未満の公知の亜共析鋼の鋼種が広く適用できる。例えば、普通鋼、機械構造用鋼、機械構造合金鋼など、用途に応じて種々の鋼種が選択可能である。具体的にはSS400、SPHC、SPCC、SC、SK、SCr、SCM、SNCMをはじめとする規格鋼種の他、新たに開発された亜共析鋼の鋼種が広く適用対象となる。浸炭処理に供する鋼板は、熱延鋼板または冷延鋼板が適用できる。素材鋼板は鋼帯の状態であることが好ましい。
〔浸炭塗膜〕
鋼板表面に形成する浸炭塗膜は、不活性ガス雰囲気中720〜850℃の温度域でCOガスを発生する性質を有するものである。この温度域でCOガスが発生しないと、球状化焼鈍を兼ねた熱処理を利用して850℃以下という低い温度での浸炭を実現できない。また、後述のように浸炭処理は不活性ガス雰囲気で行うので、不活性ガス雰囲気中の上記温度域でCOガスが発生する必要がある。
このような性質の塗膜は、以下のような成分を配合する水性塗料を鋼板表面に塗布した後、乾燥することにより得ることができる。
<浸炭剤>
浸炭剤(炭素源)としては、木炭粉、グラファイト、カーボンブラック等の固体浸炭剤が使用できる。固体浸炭剤の粒径は0.5μm以下であることが望ましい。一般には粒径が小さいほど均一分散させやすいが、0.2μm以下では固体浸炭剤どうしが凝集しやすいので、粒径0.2〜0.5μmのものを使用することが好ましい。浸炭塗膜(乾燥工程を経たもの)における固体浸炭剤の配合量は、3質量%以上とすることが望ましい。それより浸炭剤の濃度が低いと、前記ΔCが0.1質量%以上となるような効果的な浸炭を安定して行うことが難しい。ΔCが0.1質量%に満たない場合は通常のガス浸炭で製造した材料と同等の疲労特性、摩耗特性が十分発揮されない。5質量%以上とすることがより好ましい。一方、30質量%を超えて含有させても720〜850℃程度の焼鈍温度では浸炭効果はほぼ飽和する。したがって浸炭塗膜における浸炭剤の含有量は3〜30質量%とすることが望ましく、通常5〜20質量%とすれば十分である。
<浸炭促進剤>
鋼板表層部に浸炭層を形成するためにCO2等の圧力を高めて浸炭を促進する目的で、浸炭塗料中には浸炭促進剤を添加するのが一般的である。浸炭促進剤としてはベースとなる水性塗料への添加時にCO2等の気体を発生せず、浸炭温度に加熱した際にはじめて気体を発生するものであれば特に制限されるものでない。使用する水性媒体の種類や皮膜の形成方法に応じて選択されるが炭酸ナトリウム、炭酸バリウムといった炭酸塩好適である。炭酸塩を使用する場合は、浸炭塗膜中の含有量が5質量%以上となるようにする。それより少ないと浸炭効果が不足する場合がある。一方、30質量%を超えて過剰に添加しても浸炭促進効果はほとんどかわらない。したがって浸炭塗膜における浸炭促進剤の含有量は5〜30質量%とすることが望ましく、通常5〜20質量%とすれば十分である。
<分散剤>
塗料に使用する水溶性高分子としては、一般に用いられている水溶性樹脂もしくは水可溶性樹脂の分散剤として使用されている天然高分子、ポリアクリル酸、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体やポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が適用できる。水性塗料としての性質、非処理物上への皮膜の形成や加工性を勘案して、平均粒径で1〜3μm程度の粉体を使用するのが好ましい。また、これらの樹脂は水100質量部に対し10〜40質量部の量で配合するのが好ましい。水に対する水溶性高分子の配合量がこれより少ないと塗布時の密着性が不足する場合があり、逆に多いと剥離する場合がある。また、塗料と鋼板の濡れ性を向上させるために有機溶剤、消泡剤等を少量添加してもよい。
〔前処理〕
均一な塗布層を得る目的で予め鋼板表面を洗浄するのが好ましい。洗浄方法としては、塗布型組成物を塗布して焼き付けた後に均一な皮膜が形成され、ついで浸炭処理を施した際に均一な浸炭層ができれば特に制限されるものではなく、例えばアルカリ脱脂、有機溶剤による脱脂等が挙げられる。
〔塗布〕
塗布方法は浸漬法、ロールコート法、スプレー法、バーコート法等があり、付着方法はこだわらない。また、鋼帯の片面に浸炭組成の皮膜を形成させてもよく、コイル状に巻取ることで鋼帯と鋼帯の界面に介在させ両面に塗布した形となる。この場合、片面に対して浸炭塗料を乾燥後に40〜80g/m2とすれば、浸炭効果は十分発揮される。もちろん両面塗布しても差し支えない。塗布量が少なすぎると浸炭効果が不安定となり、多すぎると浸炭効果が飽和するとともに製造コストが増加する。
〔乾燥〕
塗料の水分の蒸発を目的しており、100〜130℃×1min程度でよく、水溶性高分子の沸騰や溶融が生じない範囲の加熱条件であればなんら差し支えない。
〔接触圧力〕
接触圧力は浸炭効果の安定性に最も重要である。「鋼板/浸炭塗膜」の間には0.2MPa以上の接触圧力を確保する。これにより850℃以下の温度域でのΔCが0.1質量%以上となるような効果的な浸炭が進行することがわかった。詳細な検討の結果、接触圧力がかなり高くても浸炭は十分進行するが、あまり圧力が大きくなると鋼板の表面に木炭等の固体浸炭剤が押し込まれ、最終的に疵となる場合がある。通常0.2〜50MPaの範囲とすればよいが、設備に過剰な負荷をかけずに安定した圧力を維持する上で、接触圧力は1〜25MPa程度とすることが好ましく、2〜10MPaとすることがより好ましい。浸炭塗膜をコイル状に巻かれた鋼帯の隣り合う鋼板表面間に介在させる場合は、鋼帯に張力を付与しながら巻き取ることのできるラインを用いて、巻取張力を制御することにより種々の接触圧力に調整することができる。巻き取られたあとは、鉄製のコイルバンドなどを用いてコイル全体を締め付ける等により接触圧力の低下を防止することができる。接触圧力と巻取張力との関係は事前に間圧紙、ロードセル、歪ゲージ等を用いて確認すればよい。
〔焼鈍雰囲気〕
浸炭に際しては、不活性ガス雰囲気中にて焼鈍することが必要である。不活性ガスとして工業的にはNXガスが好ましい。水素を含むような還元性ガスでは水素と浸炭剤のCとが反応し、CH4とH2Oが発生し、脱炭することがある。また、大気等の酸化性ガスでは浸炭剤が燃焼して浸炭しないことがある。また鋼板が酸化し、脱炭する。不活性雰囲気の露点は−40℃以下が好ましい。
〔焼鈍条件〕
焼鈍は、浸炭する第1ステップと、炭素濃度が高い表層部のセメンタイトを球状化する第2ステップで構成される。
第1ステップでは720〜850℃の温度で3hr以上の加熱が必要である。720℃以下では炭素の拡散速度がきわめて遅いため、浸炭が効果的に進行し難い。例えば、一般的な木炭の分解反応は700℃以上であるとされ、発明者らの検討によれば720℃以上の焼鈍温度とすることが望ましいことがわかった。通常のガス浸炭では850℃を超える加熱が必須となっているのが現状である。しかし、本発明では、比較的低温の720〜850℃の範囲で浸炭可能である。
850℃を超えても浸炭は可能であるが、高温における鋼帯の変形等によって界面での浸炭ガスの確保ができない場合があり、850℃を上限とすることが浸炭性の安定化に好ましい。第1ステップの浸炭保持時間は3hr以上であれば、表層部の炭素濃度が母材(浸炭前の鋼板)より高くなるが、コイル内の均熱性を考慮すると10hr以上の保持が好ましい。保持時間が30hrを超えるような長時間では浸炭剤の消失から極表層部で脱炭する場合がある。また、長時間の保持は製造コストを増加させる。このため、第1ステップにおける保持時間は3〜30hrとすることが望ましく、10〜20hrがより好ましい。
第1ステップから第2ステップまでの冷却速度は、15℃/hr以下とする。焼鈍温度720〜850℃において炭素濃度が高い表層部は部分的にオーステナイトとなり、冷却速度が15℃/hrを超えると棒状セメンタイトが生成する場合があり、加工性を劣化させる要因となる。
次いでセメンタイトの球状化焼鈍を目的にした第2ステップでは、660℃〜Ac1点の範囲で10hr以上の保持を行う必要がある。これは、析出するセメンタイトを球状化し軟化させるためである。第1ステップからの冷却速度が15℃/h以下を満足すれば、その後、660℃までを10hr以上徐冷してもよい。第2ステップの保持温度が660℃を下回ると球状化が遅滞し、通常の成形加工性を満足する球状化率90%以上を確保できない恐れがある。
〔焼鈍後の鋼帯〕
以上の処理により、表層部に浸炭層を有し、表面から50μm深さまでの平均炭素濃度C1(質量%)と板厚中心位置±25μmの板厚方向領域における平均炭素濃度C0(質量%)の差ΔC=C1−C0の値が0.1質量%以上であり、表面から50μm深さまでの領域における炭化物の球状化率が90%以上である球状化浸炭鋼帯を得ることができる。ΔCが0.1質量%未満の場合は、本発明で製造した鋼帯を用いて焼入焼戻処理した場合に、通常のガス浸炭で製造した材料と同等の疲労特性、摩耗特性が十分発揮されない。
浸炭処理されて得られた鋼板は、プレス打抜きや各種成形加工を経て部品形状に加工される。部品形状の鋼材は、従来工程で必要であった浸炭処理を省略して、焼入れおよび焼戻し処理に供され、表面硬化処理が施された浸炭部品となる。
供試材の化学成分を表1に示す。
まず、浸炭塗膜中における浸炭剤含有量と塗布量ならびに焼鈍雰囲気の影響について調査した。
表1の鋼A(Ac1点726℃)を用いて板厚4mmの熱延鋼板(幅920mm)を製造し、酸洗後、冷延率50%として厚さ2.0mmの冷延鋼帯に仕上げた。
一方、なお、浸炭塗料は、一般的な水溶性高分子(日本純薬製、アクリル酸共重合体;ジュンロン)を用い、浸炭剤として木炭粉(パーカー熱処理製;KG6を粉砕して粒径0.5μm以下に調整したもの)を1〜30質量%の範囲で変化させ、浸炭促進剤として炭酸ナトリウムを浸炭剤とほぼ同量含有させ、残部を蒸留水とした水性塗料を種々用意した。この浸炭剤および浸炭促進剤の含有量は、蒸留水を除いた全成分に占める割合である。
前記冷延鋼帯をアルカリ脱脂後、浸炭塗料を乾燥後塗布量が20〜80g/m2になるようにロールコート法にて連続塗布し、次いで100℃の熱風で2分間乾燥して浸炭塗膜形成した後、連続して鋼帯を巻取った。巻取では張力制御によって鋼板と鋼板の界面での接触圧力は4MPaとして巻き取った。その後、鉄製のコイルバンドでコイルの接触圧力が低下しないよう締め付け、コイル端面(鋼帯のエッジ部)が上下になるようにして焼鈍した。
熱処理の第1ステップは750℃に加熱後、10hr保持し、引き続き、冷却速度10℃/hrで冷却して、第2ステップでは720℃の範囲で20h保持した。焼鈍雰囲気ガスをアルゴン、窒素、NX(N2ベースの3%H2)、水素、大気として浸炭性への影響を調べた。得られた焼鈍後の鋼帯から板厚方向に垂直な断面を観察できる試料を作製し、EPMAにより前述の方法でC含有量を測定することにより、表面から50μm深さまでの平均炭素濃度C1(質量%)と板厚中心位置±25μmの板厚方向領域における平均炭素濃度C0(質量%)の差ΔCを求めた。
結果を表2に示す。
本発明例のものはいずれもΔCが0.1質量%以上の良好な浸炭が実現できた。
これに対し、No.1は浸炭剤含有量が低いためΔCが0.1質量%を下回った。No.10は水素雰囲気としたこと、またNo.11は大気雰囲気としたことにより、脱炭が生じた。
次に素材の炭素濃度の異なる材料(表1の鋼A、鋼B)について、浸炭性と加工性に及ぼす接触圧力と焼鈍条件の影響を調査した。
板厚4mmの熱延鋼板(幅920mm)を製造し、酸洗後、冷延率50%として厚さ2.0mmの冷延鋼帯に仕上げた。
一方、浸炭塗料は実施例1と同様の成分を含有するものを使用した。ただしここでは、浸炭剤(木炭)の含有量は5質量%(適正)、浸炭促進剤(炭酸ナトリウム)の含有量は5質量%(適正)と一律にした。
前記冷延鋼帯をアルカリ脱脂後、浸炭塗料を乾燥後塗布量が20〜80g/m2になるようにロールコート法にて連続塗布し、次いで100℃の熱風で2分間乾燥して浸炭塗膜形成した後、連続して鋼帯を巻取った。巻取では張力制御によって鋼板と鋼板の界面での接触圧力が0.1〜24MPaの種々の範囲となるようにして巻き取った。その後、鉄製のコイルバンドでコイルの接触圧力が低下しないよう締め付け、コイル端面(鋼帯のエッジ部)が上下になるようにして焼鈍した。
熱処理の第1ステップは保持温度を700〜850℃の範囲の種々の温度で、2〜20hr保持し、引き続き、冷却速度7〜50℃/hrで冷却して、第2ステップでは600〜800℃の範囲で6〜30hr保持した。焼鈍雰囲気ガスはNX(N2ベースの3%H2)とした。得られた焼鈍後の鋼帯について実施例1と同様の方法で表面から50μm深さまでの平均炭素濃度C1(質量%)と板厚中心位置±25μmの板厚方向領域における平均炭素濃度C0(質量%)の差ΔCを求めた。ΔCが0.1質量%以上のものを○(浸炭性良好)、それ以外を×(浸炭性不良)と評価し、○評価を合格とした。
また、板厚方向に平行な断面についての表面から50μm深さまでの領域を含む1000倍のSEM写真から、その領域内に存在する炭化物のアスペクト比(前述)を測定し、表層部の炭化物の球状化率を求めた。
さらに、打抜きポンチ径φ10mm、クリアランス片側5%として熱処理後の鋼板を打抜き、打抜き端面のせん断面長さを測定し、板厚に対するせん断面長さの比率を算出して、これをせん断面率とした。
球状化率が90%以上かつせん断率20%以上のものを○(加工性良好)、それ以外のものを×(加工性不良)と評価し、○評価を合格とした。
結果を表3に示す。
本発明例のものはいずれもΔCが0.1質量%以上と浸炭性が良好であり、加工性も良好と判定された。
これに対し、No.12は接触圧力が低すぎ、No.13の第1ステップの温度が低すぎ、No.17は第1ステップの保持時間が短すぎたことにより、これらは浸炭性が悪かった。No.16、24は第1ステップから第2ステップへの冷却速度が速すぎ、No.18は第2ステップの焼鈍温度が低すぎ、No.19は第2ステップの保持時間が短すぎ、No.22は第2ステップの焼鈍温度が高すぎたことにより、これらは加工性を劣化させる棒状セメンタイトが生成し、球状化率が低下し、せん断面率も低下した。
図1には参考のため、浸炭を行っていない比較材および浸炭を行った本発明材についての代表的な金属組織を示す。
浸炭を行っていない比較材および浸炭を行った本発明材についての代表的な金属組織の光学顕微鏡写真。

Claims (5)

  1. C含有量0.8質量%未満の鋼からなる鋼板の表面に、不活性ガス雰囲気中720〜850℃の温度域でCOガスを発生する性質の浸炭塗膜を0.2MPa以上の圧力で接触させることにより「鋼板/浸炭塗膜」の接触構造を形成させ、その接触構造を構成する鋼板および浸炭塗膜に対して、不活性ガス雰囲気中720〜850℃の範囲に3hr以上保持する工程(第1ステップ)、次いで660℃以上Ac1点未満の範囲内の温度まで15℃/hr以下の冷却速度で徐冷する工程(第1ステップ→第2ステップの冷却)、前記徐冷後に660℃以上Ac1点未満の範囲内の温度に10hr以上保持する工程(第2ステップ)を有する熱処理を施す、球状化浸炭鋼板の製造方法。
  2. C含有量0.8質量%未満の鋼からなる鋼板の表面に、浸炭剤(炭素源)の粉体を3〜30質量%、炭酸塩を3〜30質量%含有する浸炭塗膜を0.2MPa以上の圧力で接触させることにより「鋼板/浸炭塗膜」の接触構造を形成させ、その接触構造を構成する鋼板および浸炭塗膜に対して、不活性ガス雰囲気中720〜850℃の範囲に3hr以上保持する工程(第1ステップ)、次いで660℃以上Ac1点未満の範囲内の温度まで15℃/hr以下の冷却速度で徐冷する工程(第1ステップ→第2ステップの冷却)、前記徐冷後に660℃以上Ac1点未満の範囲内の温度に10hr以上保持する工程(第2ステップ)を有する熱処理を施す、球状化浸炭鋼板の製造方法。
  3. 前記浸炭剤(炭素源)は木炭粉、グラファイト、カーボンブラックの1種以上で構成される請求項2に記載の球状化浸炭鋼板の製造方法。
  4. 前記浸炭塗膜は、コイル状に巻かれた鋼帯の隣り合う鋼板表面間に介在させたものである請求項1〜3のいずれかに記載の球状化浸炭鋼板の製造方法。
  5. C含有量0.8質量%未満の亜共析鋼を溶製して得た焼鈍鋼帯であって、表層部に浸炭層を有し、表面から50μm深さまでの平均炭素濃度C1(質量%)と板厚中心位置±25μmの板厚方向領域における平均炭素濃度C0(質量%)の差ΔC=C1−C0の値が0.1質量%以上であり、表面から50μm深さまでの領域における炭化物の球状化率が90%以上である球状化浸炭焼鈍鋼帯。
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