JP5569858B2 - 貯留槽の溢水防止フェンス - Google Patents

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Description

本発明は、原子力発電所における気水分離器等貯蔵プールを連接した原子炉や、使用済燃料プール等の上面が開放している貯留槽の廻りに設置されるもので、貯留層内の液体が、大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により溢水してしまう事態の発生を防止した、貯留槽の溢水防止フェンスに関するものである。
原子力発電所における気水分離器等貯蔵プール、原子炉、使用済燃料プール等の貯留槽Pは、例えば、核燃料集合体を移動等するために、また、適正な冷却状態を維持するために、図8に示すように、貯留槽Pの上面が開放される。この貯留槽Pの廻りには、施設の重要設備に影響を与えないようにするために、所定のフェンス100が設置されている。
このフェンス100は、比較的に軽微な地震を原因として生じるスロッシング現象により、貯留槽P内の液体Wに小さな波が発生した場合であっても、これに充分に対応できる高さを備えており、発生した波がフェンス100を越えて貯留槽Pの外へ溢水するのを防止できる。
同様に、比較的に軽微な地震を原因として生じるスロッシング現象に対応するために、図9に示すように、貯留槽Pにおける縁部分の高さを床面101よりも嵩上げした堰102を形成したり、或いは、貯留槽Pに収容する液体Wの量を減らして、貯留槽P内の液面を低くすることにより、貯留槽P内の液面と、貯留槽Pにおける堰102の上端部までの距離を大きくとる措置も施されている。
特になし
しかしながら、図8・図9に示すフェンス100は、比較的に軽微な地震を原因として生じるスロッシング現象には対応できるものの、予想を超えるような大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象には充分に対応することができず、溢水してしまう事態が発生し得る場合があった。
スロッシング現象は、大量の液体Wを収容しているプール等の貯留槽Pが、地震による地震動を受けると、この地震動に共震して貯留槽P内の液面がうねって揺れ動くような波(液面の上下運動)が発生する現象であるが、予想を超えるような大きな地震が起こると、貯留槽Pがこの地震動に共震して、貯留槽P内の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じることがある。
例えば、使用済燃料プール等の貯留槽Pは、核燃料集合体を水中において移動できるよう、核燃料集合体の長さ寸法の2倍以上の深さに設定されていることが多い。この様に非常に深さのある貯留槽Pで大量の液体Wを収容している状態において、大きな地震が起こると、貯留槽P内の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じるのである。
この様な大きな波(液面の上下運動)が貯留槽Pの内壁面に沿って生じると、図10(a)(b)に示すように、大量の液体Wがフェンス100の上方に向けて勢い良く押し上げられたような状態となる。
そして、図10(c)(d)に示すように、上方に押し上げられた大量の液体Wがしぶきをあげながら落下するときに、液体Wの一部がフェンス100を超えることにより、溢水してしまう事態が発生し得るのである。
また、貯留槽Pの隅角部分においては、貯留槽Pの内壁面同士が所定の角度で隣り合って閉鎖されたような状態となっていることから、図11に示すように、スロッシング現象により比較的に小さな波(液面の上下運動)が生じた場合であっても、大量の液体Wがフェンス100の上方に向けて勢い良く押し上げられたような状態となり、落下時にフェンス100を超えて溢水してしまう事態が発生し得る状況となっていた。
この様なスロッシング現象による溢水を防止する措置として、貯留槽Pの内部に種々のスロッシングを抑制する機構を設け、貯留槽Pにおいて激しいスロッシング現象が起きないようにする措置も存在する。
しかし、この様な措置は、新規のプラントのように建設の当初から講じていれば有効であるものの、既設のプラントにおいては、スロッシングを抑制する機構を新たに設置する追加の工事が必要となり、多額の建設費用を要する事になってしまう。また、設備停止の期間も、非常に長期化してしまう。
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、貯留槽の周囲に設置する立設板に、貯留槽側に向けて傾斜した波返し板を固定することにより、予想を超えるような大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により貯留槽内の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じた場合であっても、液体を貯留槽内に留めて、溢水してしまう事態の発生を防止した貯留槽の溢水防止フェンスを提供することを目的とする。
本発明は、原子力発電所における気水分離器等貯蔵プール・原子炉・使用済燃料プール等の貯留槽の周囲に設置する溢水防止フェンスであり、所定の高さを備えている立設板の上部に、貯留槽側に向けて傾斜している波返し板を固定し、波返し板の傾斜角度が、水平面に対しておよそ30度乃至60度前後であり、波返し板の長さが、138.6mm乃至240mmであり、波返し板の液面への投影長さが、120mm乃至207.8mmであることで、上述した課題を解決した。
さらに、立設板に、波返し板を2段に固定していることで、同じく上述した課題を解決した。
また、立設板の上方部分と波返し板の下方部分に当接するように、略三角形状の補強板を固定していることで、同じく上述した課題を解決した。
加えて、気水分離器等貯蔵プール・原子炉・使用済燃料プール等の貯留槽の隅角部分に位置している波返し板を、大きく形成していることで、同じく上述した課題を解決した。
本発明は、原子力発電所における気水分離器等貯蔵プール・原子炉・使用済燃料プール等の貯留槽の周囲に設置する溢水防止フェンスであり、所定の高さを備えている立設板の上部に、貯留槽側に向けて傾斜している波返し板を固定していることから、予想を超えるような大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により貯留槽内の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じた場合であっても、液体を貯留槽内に留めて、溢水してしまう事態の発生を防止することができる。
具体的には、非常に深さのある貯留槽で大量の液体を収容している状態において、大きな地震が起こると、貯留槽の内壁面に沿うようにして、貯留槽の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じ、大量の液体が立設板に沿って上方に向けて勢い良く押し上げられるような状態となる(図10(a)(b)参照)。
このとき、立設板の上端部に、貯留槽側に向けて傾斜している波返し板が存在することから、上方に向けて勢い良く押し上げられた液体が波返し板に衝突して強制的に貯留槽側に押し戻されて、貯留槽内に留まるのである(図1(b)参照)。
また、波返し板の傾斜角度は、水平面に対しておよそ30度乃至60度前後であることで、上方に向けて勢い良く押し上げられた液体を波返し板に衝突させて、効率良く貯留槽側に押し戻すことができる。
さらに、立設板に、波返し板を2段に固定していることで、上方に向けて勢い良く押し上げられた液体Wを2段の波返し板に衝突させて、貯留槽側に確実に押し戻すことができる。
また、立設板の上方部分と波返し板の下方部分に当接するように、略三角形状の補強板を固定していることから、溢水防止フェンス全体の堅牢性を維持している。
加えて、気水分離器等貯蔵プール・原子炉・使用済燃料プール等の貯留槽の隅角部分に位置している波返し板を、大きく形成していることで、貯留槽の隅角部分において溢水してしまう事態の発生を防止することができる。
具体的には、貯留槽の隅角部分において大量の液体が上方に向けて勢い良く押し上げられたような場合(図11参照)であっても、この隅角部分に、貯留槽側に向けて傾斜している大きな波返し板が存在することから、上方に向けて勢い良く押し上げられた液体が大きな波返し板に衝突して強制的に貯留槽側に押し戻されて、貯留槽内に留まるのである。
この他、本発明は、貯留槽の周囲に設置する溢水防止フェンスにより溢水してしまう事態の発生を防止することから、既設のプラントに事後的に講じることができる。
また、設置の手順も比較的に容易であることから、溢水防止フェンスを設置する工事期間を短縮でき、同時に、溢水防止フェンスの全体を安価に構築することもできる。
さらに、溢水防止フェンスを設置する際の、設備を停止する期間も極めて短いものとなる。
この様に、本発明は、予想を超えるような大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により、貯留槽内の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じた場合であっても、液体を貯留槽内に留めて、想定エリア外への溢水を確実に防止する措置として、極めて有効なものとなる。
溢水防止フェンスの形状を示すもので、(a)は立設板の上端部に、貯留槽側に向けて傾斜している波返し板を固定している溢水防止フェンスの構成を示す側面図、(b)は地震を原因とするスロッシング現象により、上方に向けて勢い良く押し上げられた液体が、波返し板に衝突して強制的に貯留槽側に押し戻されて、貯留槽内に留まる状態を示す概略の側面図である。 溢水防止フェンスの配置例を示すもので、(a)は気水分離器等貯蔵プールや使用済燃料プール等の矩形状の貯留槽の周囲に沿うようにして、溢水防止フェンスを設置している状態を示す斜視図、(b)は原子炉が存在している略円形の貯留槽の周囲に沿うようにして、溢水防止フェンスを設置している状態を示す斜視図である。 溢水防止フェンスにおける、種々の波返し板の構成を示す側面図である。 溢水防止フェンスにおける、種々の構成の波返し板がもたらす溢水量低減率を示す説明図である。 立設板の上方部分と波返し板の下方部分に当接するように、略三角形状の補強板を固定している状態を示す斜視図である。 立設板に、波返し板を2段に固定している状態を示す斜視図である。 貯留槽の隅角部分に位置している波返し板を、大きく形成している状態を示す斜視図である。 原子力発電所における気水分離器等貯蔵プール、原子炉、使用済燃料プール等の貯留槽の構成を示す斜視図である。 従来のフェンスの構成を示す側面図である。 地震を原因として生じるスロッシング現象による貯留槽内の液体の状態を示すもので、(a)(b)は、大きな波(液面の上下運動)が貯留槽の内壁面に沿って生じ、大量の液体がフェンスの上方に向けて勢い良く押し上げられて行く状態を示す概略の説明図、(c)(d)は、上方に押し上げられた大量の液体が落下するときに、液体の一部がフェンスを超えて溢水してしまう状態を示す概略の説明図である。 貯留槽の隅角部分において、大量の液体がフェンスの上方に向けて勢い良く押し上げられている状態を示す概略の説明図である。
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
本発明は、原子力発電所における気水分離器等貯蔵プール・原子炉・使用済燃料プール等の貯留槽Pの周囲に設置する、貯留槽Pの溢水防止フェンスFである。
この溢水防止フェンスFは、図1(a)に示すように、所定の高さを備えている立設板1と、波返し板2により構成されている。具体的には、立設板1の上端部に、貯留槽P側に向けて傾斜している波返し板2を固定しているのである。
立設板1の下端部は、図1(a)に示すように、ボルト部材等を用いて、貯留層Pの堰3に固定されている。この堰3は、貯留槽Pにおける縁部分の高さを、施設の床面4よりも嵩上げした部分である。
本発明に係る貯留槽Pの溢水防止フェンスFは、立設板1の上端部に固定している波返し板2により、溢水を防止するものである。
即ち、使用済燃料プール等の非常に深さのある貯留槽Pで、大量の液体Wを収容している状態において、大きな地震が起こると、貯留槽Pの内壁面に添うようにして、貯留槽Pの液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じ、大量の液体Wが立設板1に沿って上方に向けて勢い良く押し上げられるような状態となる(図10(a)(b)参照)。
しかし、溢水防止フェンスFにおいては、立設板1の上端部に、貯留槽P側に向けて傾斜している波返し板2が存在することから、図1(b)に示すように、上方に向けて勢い良く押し上げられた液体Wが波返し板2に衝突し、強制的に貯留槽P側に押し戻されて貯留槽P内に留まるのである。
そして、施設の全体としては、図2(a)に示すように、気水分離器等貯蔵プールや使用済燃料プール等の矩形状の貯留槽Pの周囲に沿うようにして、立設板1に波返し板2を固定している溢水防止フェンスFを配置する。
同様に、図2(b)に示すように、原子炉が存在している略円形の貯留槽Pの周囲に沿うようにして、立設板1に波返し板2を固定している溢水防止フェンスFを配置する。
図3(a)に示す波返し板2の水平面に対する角度θ、波返し板2の長さW、波返し板2の高さH、液面への投影長さW´等は、以下の点を考慮して決定している。
角度θ…波返し板2の水平面に対する角度θは、30度、60度、90度でそれぞれ実験を行い、好ましい角度を選択する。
波返し板2の長さW・波返し板2の高さH…波返し板2の長さW・波返し板2の高さHは、溢水防止フェンスFが、貯留槽P上を移動する燃料交換機に干渉するかどうかを考慮する。
具体的には、燃料交換機の主ホイスト格納レベルと、溢水防止フェンスFとの垂直距離は、270mmであるので、波返し板2の投影高さHを、250mm以内とする。
また、使用済燃料貯蔵ラックと溢水防止フェンスFとの水平距離は、最も近い所で214mmであるので、液面への波返し板2の投影長さW´を214mm以内とする。
波返し板2の形状については、液面への投影長さW´が同じものを製作する。また、投影高さHが同じ波返し板2を製作する。
以上の点を考慮すると、波返し板2の長さWを、240mm以内にすることが好ましいものとなる。
そして、図4に示すように、No1,No2,No3,No4の異なる構成の波返し板2について、具体的な実験を行ったところ、No1,No2,No3の波返し板2について、顕著な溢水量の低減率%が得られることが判明した。
これらのことから、波返し板2の水平面に対する角度θは、およそ30度乃至60度前後、また、波返し板2の長さWは、138.6mm乃至240mm、さらに、液面への投影長さW´は、120mm乃至207.8mm、であることが好ましい事実が判明している。
この他、図2(a)(b)、図5に示すように、立設板1の上方部分と波返し板2の下方部分に当接するように、略三角形状の補強板5を固定しても良い。この補強板5を、所定の間隔を有するようにして立設板1に複数固定することにより、溢水防止フェンスF全体の堅牢性を維持している。
また、図6に示すように、立設板1に、波返し板2・20を2段に固定しても良い。この2段の波返し板2・20は、いずれも水平面に対する角度θが同一である。さらに、下方に位置している波返し20は、その長さWが、上方に位置している波返し2よりも短くなるように形成されている。また、下方に位置している波返し20には、略三角形状に形成された小さめの補強板50が固定されている。
加えて、図7に示すように、気水分離器等貯蔵プール・原子炉・使用済燃料プール等の貯留槽Pの隅角部分Cに位置している波返し板200を、隣接している通常の波返し板2に比べて大きく形成しても良い。
この波返し板200は、隣接している通常の波返し板2よりも上方に向けて突出している、左右の側板201,202により形成されている。波返し板200は、貯留槽Pの隅角部分Cの上方を、左右の側板201,202によりすっぽりと覆うように配置されている。
その為、貯留槽Pの隅角部分Cにおいて大量の液体が上方に向けて勢い良く押し上げられたような場合であっても、この液体Wが大きな波返し板2に衝突して強制的に貯留槽P側に押し戻されて、貯留槽P内に留まるのである。
本発明に係る貯留槽の溢水防止フェンスは、貯留槽としての使用済燃料プールや原子炉廻り、気水分離器等の貯蔵プール廻りに設置されることの他に、様々な分野における貯留槽において、想定エリア外への溢水を確実に防止する措置として、幅広く利用することができる。
F…溢水防止フェンス
P…貯留槽
W…液体
100…フェンス
101…床面
102…堰
1…立設板
2…波返し板
3…堰
4…床面
5…補強板

Claims (4)

  1. 原子力発電所における気水分離器等貯蔵プール・原子炉・使用済燃料プール等の貯留槽の周囲に設置する溢水防止フェンスであり、所定の高さを備えている立設板の上部に、貯留槽側に向けて傾斜している波返し板を固定し
    波返し板の傾斜角度は、水平面に対しておよそ30度乃至60度前後であり、波返し板の長さは、138.6mm乃至240mmであり、波返し板の液面への投影長さは、120mm乃至207.8mmであることを特徴とする貯留槽の溢水防止フェンス。
  2. 立設板に、波返し板を2段に固定している請求項1に記載の貯留槽の溢水防止フェンス。
  3. 立設板の上方部分と波返し板の下方部分に当接するように、略三角形状の補強板を固定している請求項1に記載の貯留槽の溢水防止フェンス。
  4. 気水分離器等貯蔵プール・原子炉・使用済燃料プール等の貯留槽の隅角部分に位置している波返し板を、大きく形成している請求項1に記載の貯留槽の溢水防止フェンス。
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