JP5568410B2 - 有機薄膜及びその選択方法、並びに有機薄膜中のトラップキャリア数の測定方法、及び電子素子 - Google Patents
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例えば特許文献1には、少なくとも有機発光層を有する有機層を陽極と陰極とからなる一対の電極で挟持してなり、前記有機層を形成するために用いる有機化合物のうち、少なくとも一つは1mg当たりの電子スピン数が1013個以下である有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている。
また、特許文献2には、導電性を有する有機導電性材料と、前記有機導電性材料に添加した際、無処理で炭素ラジカル由来の電子スピン共鳴信号強度が、添加量に伴い増加する炭素ラジカル増加成分とを含有する有機電子デバイス用有機組成物が提案されている。
そして、前記知見に基づき本発明者らが更に鋭意検討を重ねた結果、電流密度25mA/cm2の電流を流したときの伝導キャリア数と、電流密度25mA/cm2の電流を流したときのトラップキャリア数との比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が大きいほど、有機薄膜の電荷輸送性が高くなり、この有機薄膜を用いた電子素子の駆動電圧を低くできることを知見した。
<1> 電流密度25mA/cm2の電流を流したときの伝導キャリア数と、電流密度25mA/cm2の電流を流したときのトラップキャリア数との比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が0.1以上であることを特徴とする有機薄膜である。
<2> 電子素子における正孔輸送膜及び電子輸送膜のいずれかに用いられる前記<1>に記載の有機薄膜である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機薄膜を少なくとも1つ有することを特徴とする電子素子である。
<4> 有機電界発光素子である前記<3>に記載の電子素子である。
<5> 電流を流したときの有機薄膜のキャリア移動度から求めた伝導キャリア数と、電流を流したときの有機薄膜中の全キャリア数とから、有機薄膜に電流を流したときのトラップキャリア数を測定することを特徴とする有機薄膜中のトラップキャリア数の測定方法である。
<6> 電流密度25mA/cm2の電流を流したときの伝導キャリア数と、電流密度25mA/cm2の電流を流したときのトラップキャリア数との比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が0.1以上である有機薄膜を電子素子用薄膜として選択することを特徴とする有機薄膜の選択方法である。
本発明の有機薄膜は、電流密度25mA/cm2の電流を流したときの伝導キャリア数と、電流密度25mA/cm2の電流を流したときのトラップキャリア数との比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)は、0.1以上であり、0.11以上であることが好ましい。
前記比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が、0.1未満であると、通電時の有機薄膜中のキャリアトラップにより電荷輸送性が低下し、該有機薄膜を用いた電子素子の駆動電圧が高くなってしまうことがある。
下記の条件でESR測定を行う。
・装置:Bruker Biospin社製E580
・マイクロ波周波数:9.5GHz(X−band)
・マイクロ波強度:2mW〜20mW
・変調磁場周波数:100kHz
・変調磁場振幅:1G〜4G
・試料管:直径5mmφ石英管
・温度:295K(室温)
実測ESRスペクトルからの全キャリア数(=スピン数)の導出には、下記数式1を用いる。
実測電流値及び電圧値からの伝導キャリア数の導出には、下記数式2を用いる。
前記電流密度Jは、図2の素子の陽極と陰極の交差部の面積をS、素子に流す電流量をIとして、J=I/Sから求めた。
前記電場強度Eは、図2の素子の有機層の厚みをT、素子への印加電圧をVとして、E=V/Tから求めた。
前記電気素量eは、1.602×10−19Cとして計算した。
・装置:住友重機械アドバンストマシナリー社製TOF−401
・光源:宇翔社製サブナノ色素レーザーKEC−150
・光源波長:337nm
・パルス幅:0.6nsec
・サンプル構成:ガラス基板/ITO(厚み100nm)/有機薄膜(厚み1.6μm)/Al(厚み100nm)
・TOF測定時の電圧(電場):106V/cm
(トラップキャリア数)=(全キャリア数)−(伝導キャリア数)
本発明の有機薄膜は、正孔輸送膜及び電子輸送膜のいずれにも用いることができる。
本発明の有機薄膜中のトラップキャリア数の測定方法は、電流を流したときの有機薄膜のキャリア移動度から求めた伝導キャリア数と、電流を流したときの有機薄膜中の全キャリア数とから、有機薄膜に電流を流したときのトラップキャリア数を測定するものである。
前記キャリア移動度は、上述した通り、例えばTime Of Flight(TOF)法により測定することができる。
前記有機薄膜中の全キャリア数は、上述したとおり、例えば電子スピン共鳴(ESR)法により測定することができる。
前記電流を流したときとは、電流密度25mA/cm2の電流を流したときであることが好ましい。
本発明の有機薄膜中のトラップキャリア数の測定方法によれば、これまでは困難であった、電流を流したときの有機薄膜中のトラップキャリア数を効率よく測定することができる。
本発明の有機薄膜の選択方法は、電流密度25mA/cm2の電流を流したときの伝導キャリア数と、電流密度25mA/cm2の電流を流したときのトラップキャリア数との比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が0.1以上である有機薄膜を電子素子用薄膜として選択するものである。
電流密度25mA/cm2の電流を流したときの伝導キャリア数と、電流密度25mA/cm2の電流を流したときのトラップキャリア数との比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が0.1以上である有機薄膜は、キャリアトラップが少なく、電荷輸送性が良好であり、駆動電圧を下げることができるので、電子素子用薄膜として有用である。
本発明の有機薄膜の選択方法により選択された有機薄膜は、キャリアトラップ数が少なく、電荷輸送性が良好であり、駆動電圧を下げることができるので、各種分野に用いることができるが、以下に説明する電子素子に特に好適に用いることができる。
本発明の電子素子は、本発明の前記有機薄膜を少なくとも1つ有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
前記電子素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトランジスタ・電界効果トランジスタ(FET)、サイリスタ(SCR)、ダイオード(整流器)、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子、光電変換素子、太陽電池、電子写真感光体などが挙げられる。これらの中でも、有機電界発光素子は、駆動時の電流密度が大きく、電荷輸送性が駆動電圧、更には消費電力に大きく影響するため、本発明の前記有機薄膜を用いた場合の効果が大きい。
前記有機電界発光素子は、陽極及び陰極の間に少なくとも発光層を含む有機層を有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の構成を有してなる。
前記有機層は、少なくとも前記発光層を有し、必要に応じて電子輸送層、電子注入層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、などを有していてもよく、電子輸送層、電子注入層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層及び電子ブロック層から選ばれる少なくとも1層を有することが好ましい。
前記発光層は、発光性ドーパントとホスト化合物とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記発光性ドーパントとホスト化合物としては、一重項励起子からの発光(蛍光)が得られる蛍光発光材料とホスト化合物との組み合せでも、三重項励起子からの発光(燐光)が得られる燐光発光材料とホスト化合物との組み合せでもよいが、これらの中でも、発光効率の観点から、燐光発光材料とホスト化合物との組み合せであることが特に好ましい。
なお、前記発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光性ドーパントを含有することができる。
前記発光性ドーパントとしては、燐光発光材料及び蛍光発光材料のいずれも用いることができる。
前記燐光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば遷移金属原子、ランタノイド原子を含む錯体などが挙げられる。
前記遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらの中でも、レニウム、イリジウム、白金が好ましく、イリジウム、白金が特に好ましい。
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社、1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオン等)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、又はフェナントロリン等)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトン等)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子等)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子等)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、発光効率が小さくなることがあり、40質量%を超えると、燐光発光材料自身の会合により、発光効率が低下することがある。
前記蛍光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、ペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン又はこれらの誘導体、などが挙げられる。
前記ホスト化合物としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト化合物及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物を用いることができる。
前記正孔輸送性ホスト化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、又はそれらの誘導体、などが挙げられる。
これらの中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、アザインドール誘導体、アザカルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、分子内にインドール骨格、カルバゾール骨格、アザインドール骨格、アザカルバゾール骨格、又は芳香族第三級アミン骨格を有するものがより好ましく、カルバゾール骨格を有する化合物が特に好ましい。
また、前記ホスト化合物の水素を一部又はすべて重水素に置換したホスト材料を用いることができる(特願2008−126130号明細書、特表2004−515506号公報)。
前記電子輸送性ホスト化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサール、オキサジアゾール、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、又はそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、などが挙げられる。
金属錯体中の金属イオンは、特に制限はなく、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、又はパラジウムイオンである。
前記配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる)、ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、及びキノリルオキシなどが挙げられる)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、及び2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、及びトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、及びアントラニルアニオンなどが挙げられる)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、及びベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、又はシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、又は芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
前記発光層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
前記電子注入層、電子輸送層としては、本発明の有機薄膜、及び本発明の有機薄膜の選択方法により選択された電子注入材料又は電子輸送材料を用いることができる。
前記電子注入層としては、陰極と有機層の間に、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物の薄層(厚み0.1nm〜10nm)を用いることもできる。
前記電子輸送層の厚みとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、前記電子注入層の厚みとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
前記電子注入層、電子輸送層は、1種又は2種以上の材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。該正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記正孔注入層、前記正孔輸送層としては、本発明の有機薄膜、及び本発明の有機薄膜の選択方法により選択された正孔注入材料又は正孔輸送材料を用いることができる。
前記電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属;五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物、などが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物;キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電子受容性ドーパントの使用量は、特に制限はなく、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜30質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の厚みは、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜250nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機層として設けられる。
前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機層として設けられる。
前記正孔ブロック層、前記電子ブロック層としては、本発明の有機薄膜、及び本発明の有機薄膜の選択方法により選択された電子注入材料、電子輸送材料、正孔注入材料、及び正孔輸送材料のいずれかを用いることができる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物としては、例えばBAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、などが挙げられる。
前記電子ブロック層を構成する化合物としては、例えば前記正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
前記正孔ブロック層及び前記電子ブロック層の厚みは、1nm〜200nmであるのが好ましく、1nm〜50nmであるのがより好ましく、3nm〜10nmであるのが更に好ましい。また、前記正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち陽極と陰極とを含む。前記有機電界発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。通常、陽極は有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。
前記電極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物などが挙げられる。
前記陽極を構成する材料としては、例えば、アンチモン、フッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物、などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが特に好ましい。
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えばLi、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が特に好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)を意味する。
前記有機電界発光素子は、基板上に設けられていることが好ましく、電極と基板とが直接接する形で設けられていてもよいし、中間層を介在する形で設けられていてもよい。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料、などが挙げられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、例えば窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層、封止容器、樹脂封止層、封止接着剤などを挙げることができる。
前記保護層、前記封止容器、前記樹脂封止層、前記封止接着剤などの内容としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2009−152572号公報等に記載の事項を適用することができる。
前記有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
前記有機電界発光素子は、薄膜トランジスタ(TFT)によりアクティブマトリックスへ適用することができる。薄膜トランジスタの活性層としてアモルファスシリコン、高温ポリシリコン、低温ポリシリコン、微結晶シリコン、酸化物半導体、有機半導体、カーボンナノチューブ等を適用することができる。
本発明の有機電界発光素子は、例えば国際公開2005/088726号パンフレット、特開2006−165529号公報、米国特許出願公開2008/0237598号明細書などに記載の薄膜トランジスタを適用することができる。
前記有機電界発光素子からの光取り出し方式は、トップエミッション方式であってもボトムエミッション方式であってもよい。
第2の態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返して共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長を得るのに最適な値となるよう調整される。
前記第1の態様の場合の計算式は、例えば特開平9−180883号公報に記載されている。
前記第2の態様の場合の計算式は、例えば特開2004−127795号公報に記載されている。
前記有機電界発光素子は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
前記有機電界発光ディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機電界発光素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
図2に、ESR測定及び有機薄膜の駆動電圧の測定に使用したサンプルの平面図を示す。
表1に記載の材料を用い、以下のようにして、下記に示す(1)正孔素子サンプル及び(2)電子素子サンプルを作製した。
(2)電子素子サンプルの構成:ITO(100nm)/有機薄膜(160nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
ただし、( )内の値は厚みを表す。
−正孔素子サンプルの作製−
基板としては、ITO付きガラス基板(アイ・ジー・シー社製)を用いた。基板の材質は、ESR測定において邪魔となる常磁性不純物の少ないものを選択し、無アルカリガラス(コーニング1737、コーニング社製)とした。基板サイズは3mm×25mm、厚みは0.7mmである。ITOの膜厚は100nm、抵抗は15W/cm2とした。
次に、ITO膜上に、下記表1及び下記構造式に示す材料No.1〜No.3を、それぞれ真空蒸着して、膜厚160nmの有機薄膜を形成した。
次に、有機薄膜上に、金属アルミニウム(Al)を厚み100nmとなるように蒸着した。
−電子素子サンプルの作製−
基板としては、ITO付きガラス基板(アイ・ジー・シー社製)を用いた。基板の材質は、ESR測定において邪魔となる常磁性不純物の少ないものを選択し、無アルカリガラス(コーニング1737、コーニング社製)とした。基板サイズは3mm×25mm、厚みは0.7mmである。ITOの膜厚は100nm、抵抗は15Ω/cm2とした。
次に、ITO膜上に、下記表1及び下記構造式に示す材料No.4〜6を、それぞれ真空蒸着して、膜厚160nmの有機薄膜を形成した。
次に、有機薄膜上に、フッ化リチウム(LiF)を厚みが1nmとなるように真空蒸着して、電子注入層を形成した。
次に、電子注入層上に、金属アルミニウム(Al)を厚み100nmとなるように蒸着した。
下記の条件でESR測定を行った。
・装置:Bruker Biospin社製E580
・マイクロ波周波数:9.5GHz(X−band)
・マイクロ波強度:2mW〜20mW
・変調磁場周波数:100kHz
・変調磁場振幅:1G〜4G
・試料管:直径5mmφ石英管
・温度:295K(室温)
実測ESRスペクトルからの全キャリア数(=スピン数)の導出は、下記数式1を用いた。
実測電流値及び電圧値からの伝導キャリア数の導出には、下記数式2を用いた。
前記電流密度Jは、図2の素子の陽極と陰極の交差部の面積をS、素子に流す電流量をIとして、J=I/Sから求めた。
前記電場強度Eは、図2の素子の有機層の厚みをT、素子への印加電圧をVとして、E=V/Tから求めた。
前記電気素量eは、1.602×10−19Cとして計算した。
・装置:住友重機械アドバンストマシナリー社製TOF−401
・光源:宇翔社製サブナノ色素レーザーKEC−150
・光源波長:337nm
・パルス幅:0.6nsec
・サンプル構成:ガラス基板/ITO(厚み100nm)/有機薄膜(厚み1.6μm)/Al(厚み100nm)
・TOF測定時の電圧(電場):106V/cm
(トラップキャリア数)=(全キャリア数)−(伝導キャリア数)
作製した各サンプルについて、ソースメータ(Keithley社製、Model 2400)の電圧表示により、駆動電圧を測定した。
昇華精製した材料No.1の化合物を使用した実施例1の有機薄膜に比べて、昇華精製していない材料No.1の化合物を使用した比較例2の有機薄膜では、比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が小さく、駆動電圧が高いことが分かった。これは、比較例2では昇華精製していない材料を使用しているため、有機薄膜中の不純物が多く、この不純物がキャリアをトラップする作用があるためと考えられる。
(1)正孔輸送膜評価用有機電界発光素子
ITO(100nm)/正孔輸送膜(40nm)/NPD(10nm)/CBP−10質量%Ir(ppy)3(30nm)/CBP(10nm)/材料No.4(40nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
ただし、( )内の値は厚みを表す。
ITO(100nm)/化合物No.1(40nm)/NPD(10nm)/CBP−10質量%Ir(ppy)3(30nm)/CBP(10nm)/電子輸送膜(40nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
ただし、( )内の値は厚みを表す。
−正孔輸送膜評価用及び電子輸送膜評価用有機電界発光素子の作製−
厚み0.5mm、2.5cm角のガラス基板上に、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚みが100nmとなるようにスパッタ法により設けた。次に、このITO付きガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
次に、ITO付きガラス基板上に、下記構造式で表される材料No.1の化合物(昇華精製有り)を、真空蒸着して、厚み40nmの正孔輸送膜を形成した。
以上により作製した積層体を、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶、及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ株式会社製)を用いて封止した。以上により、実施例5の有機電界発光素子を作製した。
−正孔輸送膜評価用有機電界発光素子の作製−
実施例5において、正孔輸送膜における上記構造式で表される材料No.1の化合物(昇華精製有り)を、下記構造式で表される材料No.2の化合物(昇華精製有り)に代えた以外は、実施例5と同様にして、実施例6の有機電界発光素子を作製した。
−正孔輸送膜評価用有機電界発光素子の作製−
実施例5において、正孔輸送膜における上記構造式で表される材料No.1の化合物(昇華精製有り)を、下記構造式で表される材料No.3の化合物(昇華精製有り)に代えた以外は、実施例5と同様にして、比較例4の有機電界発光素子を作製した。
−正孔輸送膜評価用有機電界発光素子の作製−
実施例5において、正孔輸送膜における上記構造式で表される材料No.1の化合物(昇華精製有り)を、上記構造式で表される材料No.1の化合物(昇華精製なし)に代えた以外は、実施例5と同様にして、比較例5の有機電界発光素子を作製した。
−電子輸送膜評価用有機電界発光素子の作製−
実施例5において、電子輸送膜における上記構造式で表される材料No.4の化合物(昇華精製有り)を、下記構造式で表される材料No.5の化合物(昇華精製有り)に代えた以外は、実施例5と同様にして、実施例7の有機電界発光素子を作製した。
−電子輸送膜評価用有機電界発光素子の作製−
実施例5において、電子輸送膜における上記構造式で表される材料No.4の化合物(昇華精製有り)を、上記構造式で表される材料No.6の化合物(昇華精製有り)に代えた以外は、実施例5と同様にして、比較例6の有機電界発光素子を作製した。
<有機電界発光素子の駆動電圧の測定>
作製した各有機電界発光素子について、定電流駆動時のソースメータ(Keithley社製、Model 2400)の電圧表示により、駆動電圧を測定した。
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
10 有機電界発光素子
Claims (6)
- 昇華精製されている電子輸送材料、及び昇華精製されている正孔輸送材料の少なくともいずれかを有し、
電流密度25mA/cm2の電流を流したときの伝導キャリア数と、電流密度25mA/cm2の電流を流したときのトラップキャリア数との比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が0.1以上であることを特徴とする有機薄膜。 - 電子素子における正孔輸送膜及び電子輸送膜のいずれかに用いられる請求項1に記載の有機薄膜。
- 請求項1から2のいずれかに記載の有機薄膜を少なくとも1つ有することを特徴とする電子素子。
- 有機電界発光素子である請求項3に記載の電子素子。
- 電流を流したときの有機薄膜のキャリア移動度から求めた伝導キャリア数と、電流を流したときの有機薄膜中の全キャリア数とから、有機薄膜に電流を流したときのトラップキャリア数を測定することを特徴とする有機薄膜中のトラップキャリア数の測定方法。
- 昇華精製されている電子輸送材料、及び昇華精製されている正孔輸送材料の少なくともいずれかを有し、
電流密度25mA/cm2の電流を流したときの伝導キャリア数と、電流密度25mA/cm2の電流を流したときのトラップキャリア数との比(伝導キャリア数/トラップキャリア数)が0.1以上である有機薄膜を電子素子用薄膜として選択することを特徴とする有機薄膜の選択方法。
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