JP5567792B2 - 高硬度耐食耐磨耗合金素材およびそれを用いた耐摩耗性部材並びにその製造方法 - Google Patents

高硬度耐食耐磨耗合金素材およびそれを用いた耐摩耗性部材並びにその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高硬度耐食耐磨耗合金素材およびそれを用いた耐磨耗合金部材並びにその製造方法に関するものである。
従来から、粉末や粒体などの原料物質を圧縮して、医薬品、医薬部外品、化粧品、農薬、飼料、食料などのタブレットを成形する場合、タブレット形状に応じた貫通孔を有する臼と、この臼の貫通孔(臼孔)内に挿入される下杵および上杵とを組合せた成形型が用いられている。このような成形型を使用したタブレット成形機では、まず下杵が挿入された臼内に粉末などの原料物質を充填し、この原料物質を上杵で圧縮することにより、所望のタブレットが成形される。
タブレット成形機などに用いられる成形型には、例えば特開平7−8540号公報に記載されているように、合金工具鋼(例えばSKS2やSKD11など)のような鉄基合金、あるいはMoやWなどの化合物を主体とする超硬合金などが従来から用いられている。しかし、これら従来の成形型用合金では、必ずしも耐食性や強度の点で満足した特性が得られておらず、原料物質の性質によっては成形型の寿命が大幅に低下するというような問題が生じている。
例えば、近年用途の多様化などに伴って、酸性粉末やアルカリ性粉末のような腐食性の高い粉末などを加圧成形する必要が生じている。このような腐食性の高い粉末の成形に、従来の合金工具鋼などからなる成形型を用いた場合、それらの表面が早期に腐食されてしまう。型表面の腐食は、原料粉末の離型性の低下要因となったり、さらには強度劣化などを招くことになる。
また、合金工具鋼などからなる成形型の耐食性を向上させるために、クロムメッキで表面をコーティングすることも試みられているが、メッキ層の剥離により十分な効果は得られていない。クロムメッキ層は表面硬度の向上などに対しても一定の効果を示すものの、それ自体が容易に剥離してしまうことから、十分にかつ安定して耐磨耗性の向上効果などを得ることはできない。このようなことから、成形型用部材の強度や硬度を維持しつつ、耐食性や耐磨耗性などの向上を図ることが望まれている。
このような耐磨耗性の問題を解決するために特開2001−62595号公報(特許文献1)には高硬度、高耐食性を備える錠剤成形用杵および臼が記載されている。この合金は高硬度、高耐食性の他に離型性も兼ね備えているが、錠剤成形直後から数時間程度の離型性は良いものの、量産を行なうにあたっては更なる離型性の改善が望まれていた。また、この合金は疲労強度が比較的低いので高強度化、そして成形面の鏡面仕上げ性も望まれていた。
一方、耐食性が求められる用途としては、上述した腐食性粉末の成形型のような製造装置に限らず、例えば薬品類の処理装置、廃液や廃泥の処理装置、燃焼装置やその周辺部品などが挙げられる。また、樹脂レンズやエンプラなどの樹脂成形金型や刃物、直動軸受けなどの部品もこのような主として耐食性が求められる用途には、従来、ステンレス鋼のような耐食鋼が用いられてきた。しかしながら、ステンレス鋼のような耐食鋼は強度や硬度などが不十分であり、特に硬度や耐磨耗性が求められる用途には使用することができない。
例えば特開昭63−18031号公報(特許文献2)には、耐食性に優れた熱間プレス金型として、Cr20〜50質量%、Al1.5〜9質量%、残部が実質的にNiからなる金型が記載されている。このプレス金型は、温度500〜800℃、プレス圧500〜2000kg/cm(50〜200MPa)での熱間プレスに対して高硬度を示し、耐座屈性を有するというような特性を有しており、またNiやCrにより耐食性を得ている。しかし、このNi−Cr−Al系合金からなる金型部品は、材料硬度や耐食性に優れるものの、必ずしも十分な耐磨耗性を有しておらず、使用条件によっては部品の摺動部に磨耗が進行し、部品寿命が短くなるという欠点を有している。
樹脂レンズやエンプラなどの樹脂成形金型は鏡面仕上げ性が良好であることが望まれる。従来の鋼材では析出した比較的大きな炭化物によって硬化する合金である。このため研磨時の析出炭化物粒子の脱落による小孔の発生、脱落粒子による研磨面の損傷が発生し、鏡面仕上げ加工が困難であった。また従来の鋼材では離型性を良くするためにNiメッキやCrNコーティングを行なうが、満足できる離型性ではなく、表面粗度によっては離型性が悪くなったり、磨耗によって離型性が変化するという問題があった。
また、より特性を向上させるために国際公開第2006/035671号パンフレット(特許文献3)には、Ni−Cr−Al合金の時効処理後のX線回折強度を調製することにより、金型としての特性を向上させることが開示されている。これにより、未時効組織を低減することができている。
しかしながら、従来のように未時効組織の制御だけでは不十分であることが分かった。この原因を追及したところNi−Cr−Al合金はCrの偏析が起きやすく、Crの偏析が多いところでは時効熱処理後にその周辺との硬度差によって、研磨後の鏡面に微細な凹凸が発生しやすいといった問題があった。
特開2001−62595号公報 特開昭63−18031号公報 国際公開第2006/035671号パンフレット
従来のNi−Cr−Al合金ではCrの偏析を十分改善できず。その結果、部分的な硬度差が生じ、研磨加工を施したときに研磨面に微細な凹凸が発生していた。微細な凹凸が残ると表面を平坦にできず、例えば、金型等の用途では成型面を平坦にせねばならず。従来の材料では微細な表面凹凸を解消するために必要以上に研磨工程に時間がかかったり、時間をかけて研磨を行っても改善させず不良となることもあった。均一な平坦面でない面を使って、金型成型すると成形品の面が凸凹になりきれいな成形品が作れないといった問題も生じていた。また、刃物に適用した場合もきれいな刃面ができないといった問題もあった。
本発明は、このような問題を解決するためのものでCr偏析を低減することにより、部分的な硬度差を無くし、研磨加工を施した際に研磨面の微細な凹凸を無くすための高硬度耐食耐磨耗合金素材およびそれを用いた耐摩耗性部材並びにその製造方法を提供するためのものである。
本発明の高硬度耐食耐摩耗性合金素材は、Crを30〜45質量%、Alを2〜6質量%含み、残部をNiおよび不可避不純物からなり、単位面積500μm×500μmのCr濃度のバラツキが3質量%以下であることを特徴とするものである。また、硬度の平均がHv150以上Hv200以下であることが好ましい。また、単位面積500μm×500μmを25個の小単位100μm×100μmに分割したとき、Cr濃度が、単位面積の平均よりも1.5%以上ずれている小単位が25個中3個以下(0含む)であることが好ましい。
また、このような高硬度耐食耐磨耗合金素材は、表面の一部あるいはすべてを研磨加工して成る耐磨耗性部材に好適である。また、耐摩耗性部材は、硬度の平均がHv600以上Hv750以下であり、同一平面の硬度のバラツキが2.0%以下であることが好ましい。また、研磨加工された箇所の表面凹凸の最大値が0.5μm以下であることが好ましい。また、研磨された箇所の面積が10mm以上であることが好ましい。また、表面粗さRaが1μm以下であることが好ましい。
また、本発明の耐摩耗性部材の製造方法は、Crを30〜45質量%、Alを2〜6質量%含み、残部をNiおよび不可避不純物である原料を混合し、溶解してNi−Cr−Al合金溶湯を調製する工程と、前記Ni−Cr−Al合金溶湯を使って、鋳型の冷却面からの最短距離が120mm以下のインゴットを調製する工程と、前記インゴットを溶体化処理して硬度Hvが150〜200の高硬度耐食耐磨耗合金素材を調製する工程と、前記高硬度耐食耐磨耗合金素材に機械加工を施す工程と、500〜750℃で時効熱処理を施す工程と、表面研磨加工を施す工程を具備することを特徴とするものである。
また、インゴットサイズは冷却面からの最長距離が80mm以下であることが好ましい。また、鋳型温度を50℃以上200℃以下として鋳造を行なうことが好ましい。また、インゴットを鋳造する工程において、鋳型の肉厚が50mm以上であることが好ましい。また、研磨加工後の表面粗さRaが1μm以下であることが好ましい。
本発明によれば、Cr偏析を低減しているので、部分的な硬度差を無くし、研磨加工後の研磨面の微細な凹凸を低減することが可能な高硬度耐食耐摩耗性合金素材を提供することができる。また、このような高硬度耐食耐摩耗性合金素材を使った耐摩耗性部材は、微細な凹凸が低減されているので平坦な研磨面を得ることができる。また、耐摩耗性部材の製造方法は、本発明の耐摩耗性部材を効率よく得ることができる。
本発明の耐摩耗性部材(刃物)の一例を示す図。 図1の断面図。 インゴットの一例を示す図。 単位面積500μm×500μmを示す図。
本発明の高硬度耐食耐磨耗合金素材は、Crを30〜45質量%、Alを2〜6質量%含み、残部をNiおよび不可避不純物からなり、単位面積500μm×500μmの断面Cr濃度のバラツキが3質量%以下であることを特徴とするものである。
Cr(クロム)は耐食性および加工性を確保するための材料で30〜45質量%、さらには35〜41質量%が好ましい。30質量%未満では耐食性が不十分であり、45質量%を超えるとCrの偏析が発生し易くなり加工性が低下する。また、Al(アルミニウム)は硬さを調製するための材料である。その含有量は2〜6質量%、さらには3〜5質量%が好ましい。また、残部Ni(ニッケル)である。
また、不可避不純物は、Ni、Cr、Al以外の元素を示すが、その含有量は合計で1質量%以下が好ましい。また、Ni、Cr、Al以外の成分として、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、V(バナジウム)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)から選択される少なくとも1種以上の元素を0.2〜2質量%含有させてもよい。これら元素は合金素材の硬度を向上させるために有効である。
また、Mg(マグネシウム)は脱酸剤として効果的であり、その添加量は0.001〜0.015質量%が好ましい。0.001質量%未満では添加の効果が不十分であり、0.015質量%を超えるとそれ以上の効果が得られないだけでなく硬度が低下する恐れがある。
本発明は、上記合金組成を具備するNi−Cr−Al合金素材において、単位面積500μm×500μmのCr濃度のバラツキが3質量%以下であることを特徴とするものである。また、Cr濃度のバラツキは小さいほどよく、好ましくは2質量%以下である。
Cr濃度のバラツキは、SEM−EDX法(エネルギー分散型X線分光器を使ったX線分光法)で行う。高硬度耐食耐磨耗合金素材またはそれを使った耐摩耗性部材の任意の測定面(測定においては切断面を使ってもよい)を選択し、単位面積500μm×500μmをSEM−EDX法で平均のCr量を測定し、その測定部を100μm×100μm単位(小単位)に分割し、各小単位(100μm×100μm)ごとにCr量を分析する。Cr濃度のバラツキは、単位(100μm×100μm)において、最大値(Crの質量%)−最小値(Crの質量%)=Cr濃度のバラツキ(質量%)、とする。
本発明は、このCr濃度のバラツキが3質量%以下である。3質量%を超えると部分的にCr量リッチな領域ができ硬度差が発生する。Cr偏析を低減することにより、部分的な硬度差を無くし、研磨加工を行い易くする。Cr濃度のバラツキは小さい程よいが、製造管理の煩雑さを考慮するとCr濃度のバラツキは0.5〜1.4質量%が好ましい。また、同様の方法においてAlを分析するとAl濃度のバラツキは0.5%質量以下、さらには0.1〜0.3質量%が好ましい。
また、高硬度耐食耐磨耗合金素材とは、鋳造後のインゴットに鍛造、圧延等の塑性加工を施し、溶体化処理を施したものを示す。また、耐摩耗性部材は、合金素材を加工して時効熱処理を施したもの、また、さらに研磨加工を施したものを示す。
また、単位面積500μm×500μmを25個の小単位100μm×100μmに分割したとき、Cr濃度が、単位面積の平均よりも1.5%以上ずれている小単位が25個中3個以下であることが好ましい。Cr濃度のバラツキ(最大値−最小値)を3質量%以下にするだけでなく、濃度ずれを極力抑えることがCr偏析を低減することに有効である。図4に単位面積500μm×500μmを25個の小単位100μm×100μmに分割した図を示した。まず、SEM−EDX法を用いて、単位面積500μm×500μmの視野にてCr濃度を求め、この値を平均値とする。次に、小単位100μm×100μmの視野にてCr濃度を分析する。この作業を小単位25個について行い、平均値と比べてCr濃度が1.5%以上ずれている小単位の数を数える。本発明では、このような分析方法を用いたとき、Cr濃度が、単位面積の平均よりも1.5%以上ずれている小単位が25個中3個以下(0含む)となる。
また、高硬度耐食耐磨耗合金素材は、硬度の平均がHv150〜200であることが好ましい。特に、鋳造後のインゴットに鍛造、圧延を施し、溶体化熱処理を施した合金素材の硬度がHv150〜200の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、時効熱処理後の硬度の平均をHv600〜750の範囲に調整し易い。
高硬度耐食耐磨耗合金素材を使って耐摩耗性部材にするには、鍛造、圧延、打抜き等の機械加工を施して形状を整える。次に時効熱処理を施し、硬度を向上させる。本発明ではCr偏析を低減しているので、硬度の平均がHv600以上Hv750以下であり、さらに硬度のバラツキを2.0%以下とすることができる。
硬度の測定方法は、JIS−Z−2244に基づき荷重1kgで行う。同一測定面において、5か所測定し、その平均値を求める。硬度のバラツキは、[(最大の硬度−最小の硬度)/(硬度の平均値)]×100%により求める。また、硬度の測定箇所は、研磨加工した箇所がある場合は、研磨加工部(研磨加工した箇所)から任意の5か所を選定し、各箇所で硬度Hvを測定するものとする。
本発明では、合金素材のCr濃度バラツキを提言しているので、耐摩耗性部材の硬度をHv600以上Hv750以下と高くした上で、さらに硬度バラツキを2.0%以下と低減できる。また、研磨加工を施したときに微細な凹凸のない研磨面を得ることができる。このため、表面粗さRaが1μm以下、さらには0.5μm以下の鏡面研磨加工を施したとしても研磨時間の短縮も可能である。そのため、研磨効率が向上する。また、このような鏡面加工を施したとき、研磨加工した箇所の表面凹凸を0.5μm以下と平坦にすることができる。このため、不良発生率も下がり、製品歩留まりが向上する。
従来は単に表面粗さRaで管理していたが、Cr偏析を制御していないと、同じRa1μmであってもその研磨面の表面凹凸は1.5μm以上と非常に大きかった。この表面凹凸の原因を追及したところ、Cr偏析部の境界に表面凹凸の原因があることが判明した。このような研磨面では、例えば成形品を作るための金型に使うと成形品の表面凹凸が大きくなり、きれいな成形品ができないまたは成形品の離型性が不十分といった不具合があった。本発明のようにCr偏析を低減することにより、表面凹凸を0.5μm以下にできるので成形品を作る金型に使ったとしても表面が平滑で離型性の良い金型を作ることができる。また、刃物に使った場合、表面が平滑で切れ味のよい刃面(刃先)を得ることができる。
また、表面凹凸の測定方法は、研磨面を表面粗さ計で測定し、断面曲線を求め、最も大きな凹凸差を求めるものとする。凹凸差は隣り合う凹部と凸部の差を取り、最も大きな凹凸差を表面凹凸の最大値とする。
また、研磨加工後の表面凹凸を小さくできるので、研磨された箇所の面積が10mm以上と広い研磨加工部であったとしても平坦な面が得られる。そのため、短辺の長さが4mm以上の幅広の耐摩耗性部材であったとしても研磨ムラがなく、均一な鏡面を得ることができる。
このような合金素材は、様々な耐摩耗性部材に適用できる。特に、その表面の一部または全部に研磨加工を施すような耐摩耗性部材に好適である。また、Ni−Cr−Al合金は高硬度、高耐食性を示す材料であるため、このような特性が必要な分野にも適用できる。耐摩耗性部材の一例としては、粉末や粒体などの原料物質を圧縮して、医薬品、医薬部外品、化粧品、農薬、飼料、食料などのタブレットを成形する場合の成形型、臼、杵などが挙げられる。また、手術用メス、ハサミ、さらには一般用の刃物などもある。また、耐食性を利用して、ピンセット、手術用メスなどの手術用機器にも好適である。いずれの分野でもRa1μm以下、さらには0.5μm以下の鏡面加工が必要な分野である。
図1に本発明の耐摩耗性部材の一例である刃物を示した。図中、1は刃物、2は刃先、3は刃物本体部である。また、図2は図1の刃先を厚さ方向から見た断面図である。刃先2は研磨加工が施された箇所であり、刃物本体部は研磨加工が施されていない箇所である。
次に本発明の耐摩耗性部材の製造方法について説明する。本発明の耐摩耗性部材の製造方法は特に限定されるものではないが、効率よく得るための方法として次のものが挙げられる。
本発明の耐摩耗性部材の製造方法は、Crを30〜45質量%、Alを2〜6質量%含み、残部をNiおよび不可避不純物である原料を混合し、溶解してNi−Cr−Al合金溶湯を調製する工程と、前記Ni−Cr−Al合金溶湯を使って、鋳型の冷却面からの最長距離が120mm以下のインゴットを調製する工程と、前記インゴットを溶体化処理して硬度Hvが150〜200の高硬度耐食耐磨耗合金素材を調製する工程と、前記高硬度耐食耐磨耗合金素材に機械加工を施す工程と、500〜750℃で時効熱処理を施す工程と、表面研磨加工を施す工程を具備することを特徴とするものである。
まず、原料としてのCr、Al、Ni、必要に応じ、Zr、Hf、V、Ta、Mo、W、Nbから選ばれる元素を所定量秤量して混合し、溶解する。このとき真空溶解法を用いれば、溶解時に不純物が混入することを低減することができる。
原料を溶解してできた原料溶湯を鋳型に注入してインゴットを製造する。このとき、鋳型の冷却面からインゴットの最短距離が120mm以下となるようにインゴットサイズを調製する。鋳型の冷却面とは、鋳型において原料溶湯と接する面を示す(つまり、鋳型の内面が冷却面となる)。例えば、直径<長さの円柱状インゴットの場合はインゴットの半径が冷却面からインゴットの最短距離になる。また、四角の短辺長さ<長さの四角柱のインゴット、平板状のインゴットを製造する場合は厚さ方向断面における中心点までの長さが冷却面からインゴットの最短距離となる。また、直径>長さの円柱状インゴットの場合はインゴットの厚さ方向長さの半分が冷却面からインゴットの最短距離になる。図3にインゴットの一例を示した。矢印は直径であり、冷却面からインゴットの最短距離とは円柱の半径を示す。
インゴットのサイズを半径120mm以下、さらには半径80mm以下と小さくすることにより冷却時の冷却むらを無くすことができる。また、鋳型温度を50℃以上200℃以下として鋳造を行なうことが好ましい。インゴットサイズや鋳型温度を調製することによりインゴットを急冷処理することができ冷却むらを無くす。急冷処理することにより、均一に混ざった原料溶湯をそのままインゴットにできるため、インゴット内のCr偏析を無くすことができる。
本発明の製造方法においては冷却むらが生じないように制御すること、特に部分的な除冷状態とならないように冷却工程を管理することが重要である。また、冷却むらをなくすにはインゴットを小さくすることが有効であるが、あまり小さいと量産性が低下するのでインゴットの短辺の長さは30mm以上が好ましい。インゴットの短辺の長さとは、円柱状インゴットの円の直径を示し、四角柱状インゴットの場合は四角の短辺を示す。
また、鋳型の肉厚を50mm以上、さらには100mm以上と厚い鋳型を使うことも冷却むらをなすく上で有効である。鋳型は、鋳鉄や炭素鋼などの鉄合金で出来ている。鋳型の肉厚を厚くすることにより鋳型の熱容量を大きくすることができ冷却ムラを低減することができる。
このように冷却工程を管理してCrの偏析を低減した上で、インゴットを調製する。次に、得られたインゴットに必要に応じ、鍛造、圧延加工、表面研磨を施して形状を整える。鍛造工程や圧延工程は熱間で行ってもよい。その後、1000〜1300℃で熱処理する溶体化熱処理を施す。溶体化熱処理後は、合金素材の硬度Hvが150〜200であることが好ましい。Cr偏析を低減してもインゴットの硬さが100未満と小さいと後述する時効処理後に目的とする硬度が得られない。また、200を超えると硬くなりすぎ切削加工が行い難い。また、溶体化熱処理は、酸化等の汚染を防ぐために、アルゴン雰囲気中、真空熱処理を使うことが好ましい。
次に、得られた合金素材に機械加工を施す工程を行う。機械加工は、鍛造加工、圧延加工、切断加工、切削加工、打抜き加工などの塑性加工を施す加工を示す。また、必要に応じ、各種加工を組合せてもよいし、途中に洗浄工程や熱処理工程を入れてもよい。この機械加工により、最終的に用いる耐摩耗性部材の形状またはそれに近い形状まで加工する。
次に、500〜750℃で時効熱処理を施す工程を行う。また、熱処理時間は1〜15時間が好ましい。また、時効熱処理は、酸化等の汚染を防ぐために、アルゴン雰囲気中、真空熱処理を使うことが好ましい。また、未時効組織をなくすために特許文献3に記載されたように時効熱処理前の前処理加熱を行うことも有効である。時効熱処理前の好ましい前処理加熱としては、例えば(イ)400〜700℃の温度に、昇温速度100℃/h以上、500℃/h以下、好ましくは100℃/h以上、400℃/h以下、で加熱することからなるもの、または(ロ)400〜500℃の温度範囲において少なくとも0.5時間保持することからなるもの、を挙げることができる。ここで、上記(イ)における昇温速度が100℃/hより遅い場合、特性はでるが処理に時間がかかりすぎることから製造上好ましくない。一方、昇温速度が500℃/hを越えるような過度である場合、温度分布の不均一化や析出に伴う体積収縮が過度になってクラック発生の誘因となる場合がある。(ロ)における保持時間が0.5時間未満である場合、この前処理加熱による効果が十分得られない場合がある。保持時間の上限は5時間が好ましい。5時間を越えて熱処理を施したとしても、それ以上の効果は得難い。
次に、表面研磨加工を施す工程を行う。表面研磨加工は、表面粗さRaが1μm以下、さらにはRa0.5μm以下の鏡面加工が必要な個所に施す。例えば、成形型(金型)の場合、内面を研磨加工する。また、刃物であれば刃として機能する部分を研磨する。研磨方法はダイヤモンド砥石を使った研磨、例えばポリッシング研磨加工が挙げられる。また、必要に応じ、切削加工等を施してもよい。
[実施例]
(実施例1〜5、比較例1〜2)
Crを38質量%、Alを3.8質量%、残部Niからなる原料粉末を混合、溶解し、原料溶湯を調整した。
次に表1に示した円柱状インゴット、鋳型温度にしてインゴットを調整した。
各インゴットに熱間鍛造および熱間圧延を施した後、真空熱処理炉を使いアルゴン雰囲気中1000〜1300℃で溶体化熱処理を施して合金素材を作製した。
次に、得られた合金素材を鍛造、圧延、切削加工を施すことにより、縦30mm×横5mm×厚さ1mmの板材を製造した。先端部(縦2mm×横5mm)をプレスして断面三角形になるようにとがらせた。その後、真空熱処理炉を使いアルゴン雰囲気中650〜700℃×4〜10時間の時効熱処理を施した後、先端部を表面粗さRa0.5μmの鏡面となるように研磨加工を施した。なお、先端部は刃先となる部分である。
比較例1はインゴットサイズが鋳型の冷却面から200mm離れたもの、比較例2は鋳型の温度を事前に温めず室温(25℃)で行ったなどの製造条件が合わないものを用意した。
各パラメータの測定は、研磨加工を施した個所を選択し、前述に記載の方法で行った。
Figure 0005567792
Figure 0005567792
表から分かる通り、本実施例にかかる耐摩耗性部材(刃物)は、Cr濃度バラツキ(Cr偏析)を抑制してあるので、平面硬度のバラツキが小さい。その結果、研磨加工を施したときの表面凹凸の差が小さくできる。
(実施例6〜10)
表3に示すNi−Cr−Al合金組成を使って錠剤成形用の金型として杵を製造した。
各インゴットに熱間鍛造および熱間圧延を施した後、1100〜1250℃で溶体化熱処理を施して合金素材を作製した。次に表4に示した形状となるように鍛造、圧延、切削加工を施した後、600〜700℃×6〜12時間の時効熱処理を施した。その後、杵の成型面として使う面については表面粗さRa0.2μmとなるように研磨した。各杵について実施例1と同様の測定を行った。
Figure 0005567792
Figure 0005567792
表4から分かる通り、金型にも使える。幅広の耐摩耗性部材においてもCr偏析を低減できる。そのため、表面凹凸の小さな研磨面を得ることができる。この杵を使って錠剤を成形したところ、離型性が良かった。
1…刃物
2…刃先
3…刃物本体部

Claims (13)

  1. Crを30〜45質量%、Alを2〜6質量%含み、残部をNiおよび不可避不純物からなり、単位面積500μm×500μmのCr濃度のバラツキが3質量%以下であることを特徴とする高硬度耐食耐磨耗合金素材。
  2. 硬度の平均がHv150以上Hv200以下であることを特徴とする請求項1記載の高硬度耐食耐磨耗合金素材。
  3. 単位面積500μm×500μmを25個の小単位100μm×100μmに分割したとき、Cr濃度が、単位面積の平均よりも1.5%以上ずれている小単位が25個中3個以下(0含む)であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の高硬度耐食耐磨耗合金素材。
  4. 請求項1ないし請求項3記載の高硬度耐食耐磨耗合金素材を用いて製造され、表面の一部あるいはすべてを研磨加工して成る耐磨耗性部材。
  5. 硬度の平均がHv600以上Hv750以下であり、同一平面の硬度のバラツキが2.0%以下であることを特徴とする請求項4記載の耐摩耗性部材。
  6. 研磨加工された箇所の表面凹凸の最大値が0.5μm以下であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の耐摩耗性部材。
  7. 研磨された箇所の面積が10mm 以上であることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の耐摩耗性部材。
  8. 表面粗さRaが1μm以下であることを特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか1項に記載の耐摩耗性部材。
  9. Crを30〜45質量%、Alを2〜6質量%含み、残部をNiおよび不可避不純物である原料を混合し、溶解してNi−Cr−Al合金溶湯を調製する工程と、
    前記Ni−Cr−Al合金溶湯を使って、鉄合金で出来ている鋳型の冷却面からの最短距離が120mm以下のインゴットを調製する工程と、
    前記インゴットを溶体化処理して硬度Hvが150〜200の高硬度耐食耐磨耗合金素材を調製する工程と、
    前記高硬度耐食耐磨耗合金素材に機械加工を施す工程と、
    500〜750℃で時効熱処理を施す工程と、
    表面研磨加工を施す工程を
    具備することを特徴とする耐摩耗性部材の製造方法。
  10. インゴットサイズは冷却面からの最長距離が80mm以下であることを特徴とする請求項9の耐摩耗性部材の製造方法。
  11. 鋳型温度を50℃以上200℃以下として鋳造を行なうことを特徴とする請求項9ないし請求項10のいずれか1項に記載の耐摩耗性部材の製造方法。
  12. インゴットを鋳造する工程において、鉄合金で出来ている鋳型の肉厚が50mm以上であることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の耐摩耗性部材の製造方法。
  13. 研磨加工後の表面粗さRaが1μm以下であることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか1項に記載の耐摩耗性部材の製造方法。
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