本発明に係る電動補助自転車の踏力検知装置及び制御装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
図1は、電動補助自転車(アシスト自転車)10の左側面図を示す図である。アシスト自転車10において、車体の左右に1つずつ対称的に設けられる機構乃至構成要素については、左のものの参照符号に「L」を付し、右のものの参照符号に「R」を付するものとする。アシスト自転車10は、車体前方に位置するヘッドパイプ12と、該ヘッドパイプ12から後方且つ下方に延びるダウンフレーム14と、ダウンフレーム14の後端から上方に立ち上がるシートパイプ16と、ヘッドパイプ12のダウンフレーム14の上方から後方に延びて前記シートパイプ16と連結されるトップフレーム18とを備える。
ステアリング軸20は、上部にハンドル22が連結されるとともに、ヘッドパイプ12によってステアリング軸20の略中間部が回転自在に保持される。前輪WFは、車体前方に設けられ、ステアリング軸20の下端側から延在する一対のフロントフォーク24L、24Rに回転可能に軸支される。前輪WFのハブ26内には、モータ部28が設けられ、ハブ26の外周に複数のスポーク30が取り付けられている。
シートパイプ16の後方に設けられた一対のプレート32L、32Rには、後方に延びる一対のリアフォーク34L、34Rが配設されており、この一対のリアフォーク34L、34Rの後端に後輪WRが軸支されている。また、トップフレーム18の下方でシートパイプ16から後方且つ下方に延びて一対のリアフォーク34L、34Rと連結される一対のステー36L、36Rが設けられている。
ダウンフレーム14及びシートパイプ16は、踏力検知装置38を支持する。シートパイプ16には、上端にシート40を有するシートポスト42がシート40の上下位置を調整可能に装着されている。トップフレーム18の内部に、モータ部28に電力を供給するためのバッテリ44が設けられている。このバッテリ44は、アシスト自転車10から取り外すことはできないようにトップフレーム18の内部に設けられている。したがって、モータ部28に発生した回生電力のみによって充電される。なお、充電器によって充電できるように、バッテリ44は取り外し可能であってもよい。
踏力検知装置38及びスプロケット(後輪駆動部材)46を貫通して、車体の幅方向に延びるクランク軸48が設けられ、クランク軸48の両側に、ペダル50Lを有するクランク52L、ペダル50Rを有するクランク52Rが接続されている。運転者がペダル50L、50Rを漕ぐことにより、クランク軸48に踏力トルク(動力)が与えられる。クランク軸48に与えられた踏力トルクに起因してスプロケット46が回転し、該スプロケット46の回転は、チェーン54を介して、後輪WR側の後輪側スプロケット56に伝達され、後輪WRが回転する。スプロケット46、チェーン54、及び後輪側スプロケット56は駆動系機構として機能する。
一対のフロントフォーク24L、24Rには、前輪WFの回転を止めるための前輪用カンチブレーキ58が設けられており、ステー36L、36Rには、後輪WRの回転を止めるための後輪用カンチブレーキ60が設けられている。ハンドル22には、グリップ62L、62Rとブレーキレバー64L、64Rとが設けられており、ブレーキレバー64Rを操作することで前輪用カンチブレーキ58が作動し、ブレーキレバー64Lを操作することで後輪用カンチブレーキ60が作動する。
車速センサ(車速情報検出部)66は、後輪WR(車輪)の回転数から車速を検出するものである。ハンドル22の上部には、車速センサ66に基づくアシスト自転車10の車速を表示する図示しないスピードメータ、及び、表示部68が設けられている。なお、ハンドル22の前方には前照灯70が設けられている。なお、車速センサ66は、前輪WF(車輪)の回転数から車速を検出してもよい。この場合は、車速センサ66は、前輪WFの回転数が検出できる位置に設けられる。
図2は、図1の踏力検知装置38のII−II線断面図である。踏力検知装置38は、アシスト自転車10が前に進む方向(正方向)に、ペダル50L、50Rを漕いだ場合にスプロケット46を回転させ、正方向とは逆方向にペダル50L、50Rを漕いだ場合にスプロケット46を回転させない機構を有する。具体的には、踏力検知装置38は、その筐体100内にクランク軸48の外周に挿嵌される中空トルク伝達部材102と、クランク軸48と中空トルク伝達部材102の一方の側部(図2では左側の側部)との間に設けられたワンウェイクラッチ手段104と、モータ部28内に設けられるブラシレスモータを駆動させる駆動ドライバ106と、駆動ドライバ106のPWM制御等を行う制御部108とを有する。
ワンウェイクラッチ手段104は、ペダル50L、50Rが正方向に漕がれたときにクランク軸48の踏力トルクを中空トルク伝達部材102に伝達し、ペダル50L、50Rが正方向とは逆方向に漕がれたときにクランク軸48の回転を中空トルク伝達部材102に伝達しない構造を有する。中空トルク伝達部材102の他方の側部(図2では右側の側部)にスプロケット46が連結されている。詳しくは、中空トルク伝達部材102の他方の側部にはスプラインが形成されており、スプロケット46が該スプラインに嵌合した状態で連結されている。
正方向にペダル50L、50Rに漕がれると、クランク軸48が回転するとともに、ワンウェイクラッチ手段104により中空トルク伝達部材102が回転する。これにより、スプロケット46が回転し、アシスト自転車10が進む。一方、正方向と逆方向にペダル50L、50Rが漕がれるとクランク軸48は回転するが、中空トルク伝達部材102は、ワンウェイクラッチ手段104によって回転しない。これにより、正方向と逆方向にペダル50L、50Rが漕がれてもスプロケット46は回転せず、アシスト自転車10が進むことはない。
また、クランク軸48に与えられた踏力トルクを検出する踏力センサ(磁歪センサ)110は、中空トルク伝達部材102上に、中空トルク伝達部材102と相対回転可能に配置される。踏力センサ110は、2つの検出コイル112、114を有し、検出コイル112、114に対向するように磁性膜116が中空トルク伝達部材102の外周に設けられている。踏力センサ110は、中空トルク伝達部材102が回転することで発生するねじれによって生じる各検出コイル112、114のインダクタンスの変化を電圧に変換して制御部108に出力する。
中空トルク伝達部材102は、クランク軸48からの踏力トルクを前記一方の側部で受けて回転するとともに、その外周に踏力センサ110が設けられた第1中空部材118と、第1中空部材118の他端側で第1中空部材118と嵌合し、嵌合部位とは反対側でスプロケット46に連結される第2中空部材120とを有する。第1中空部材118と第2中空部材120とは、嵌合部位で突き当て嵌合されている。中空トルク伝達部材102は、第1中空部材118と第2中空部材120とを有するので、第1中空部材118と第2中空部材120との嵌合部位で、強い踏力時に発生するクランク軸48を前下方に押下げる力とスプロケットにかかるチェーンの力との関係によるねじれの力の影響を緩和することができる。したがって、踏力センサ110に発生する該ねじれの影響を抑制することができ、踏力センサ110の検出精度を向上させることができる。
第1中空部材118は、ワンウェイクラッチ手段104が設けられる側にクランク軸48と係合する第1係合部122を備える。第2中空部材120は、第1中空部材118との嵌合部位でクランク軸48と係合する第2係合部124と、スプロケット46との連結部位でクランク軸48と係合する第3係合部126とを備える。この第1係合部122、第2係合部124、及び第3係合部126の3箇所でクランク軸48を支持するので、クランク軸48を前下方に押下げる力とスプロケット46にかかるチェーン54の力との関係によって中空トルク伝達部材102に発生するねじれを抑えることができ、踏力センサ110の検出精度を向上させることができる。
ワンウェイクラッチ手段104の車体外方側で、筐体100に対して回転自在にクランク軸48を支持する軸受け(第1軸受け)128と、第2係合部124と第3係合部126との間の位置で筐体100に対して回転自在に中空トルク伝達部材102及びクランク軸48を支持する軸受け(第2軸受け)130とが設けられている。軸受け130が、第2係合部124と第3係合部126との間に設けられているので、クランク軸48にかかる力を第2中空部材120を通して、軸受け130が良好に支持することができ、踏力センサ110の検出精度を向上させることができる。
クランク軸48には、第2中空部材120の第2係合部124をクランク軸48のスラスト方向に突き当てるスラスト止め凸部132が設けられている。つまり、第2係合部124とスラスト止め凸部132とで、中空トルク伝達部材102のスラスト方向への移動を禁止することができる。これにより、中空トルク伝達部材102のスラスト方向のズレを防止することができ、踏力センサ110の検出精度を向上させることができる。
第1中空部材118は、さらに、一端側にワンウェイクラッチ手段104のアウターが設けられた第3中空部材134と、第3中空部材134の他端側で第3中空部材134と嵌合する第4中空部材136とを有する。第2中空部材120は、第4中空部材136の第3中空部材134と嵌合する部位とは反対側で第4中空部材136と嵌合しており、第4中空部材136の外周に踏力センサ110が設けられる。第1中空部材118は、第3中空部材134と第4中空部材136とを有するので、第3中空部材134と第4中空部材136とが嵌合する部位と、第4中空部材136と第2中空部材120とが嵌合する部位とで、強い踏力時に発生するクランク軸48を前下方に押下げる力とスプロケット46にかかるチェーン54の力との関係によるねじれの力の影響をさらに緩和することができる。したがって、踏力センサ110に発生する該ねじれの影響を抑制することができ、踏力センサ110の検出精度を向上させることができる。
なお、図3に示すように中空トルク伝達部材102を1つの部材で形成してもよい。図3は、中空トルク伝達部材102を1つの部材で構成した場合における図1の踏力検知装置38のII−II線断面図である。図3では、図2に示す構成と同様の構成については同一の符号をしている。図3の場合であっても、第1係合部122、第2係合部124、及び第3係合部126の3箇所でクランク軸48を支持するので、クランク軸48を前下方に押下げる力とスプロケット46にかかるチェーン54の力との関係によって中空トルク伝達部材102に発生するねじれを抑えることができ、踏力センサ110の検出精度を向上させることができる。
図4は、図1のIV−IV線要部断面図である。ハブ26内には、モータ部28が設けられ、モータ部28は、軸ねじ150Lとナット152Lをによって左側のフロントフォーク24Lに、軸ねじ150Rとナット152Rによって右側のフロントフォークR24にそれぞれ固定される。この軸ねじ150L、150Rが前輪WFの回転軸となる。モータ部28は、左ケース156及び右ケース158で形成される空間内に設けられたブラシレスモータ160と、ブラシレスモータ160の回転角度を検出する磁極センサ162とを備える。ブラシレスモータ160は周知技術なので詳しくは説明しないが、円周方向に交互に配置されたN極及びS極の永久磁石164を有するロータ166と、ロータ166を回転させる回転磁界を発生するUVW相のステータコイルを有するステータ168とを有する。ロータ166の回転軸がモータ部28の駆動軸170となる。磁極センサ162は、ロータ166の回転軸と一緒に回転する磁石172と、磁石172を検出するホールIC174とを有し、ホールIC174は、磁石172と対向するようにホールICハウジング176によって保持される。磁石172は、ブラシレスモータ160の円周方向に沿って複数個(例えば、ロータ166の永久磁石164と同じ数分)設けられており、N極の磁石172とS極の磁石172が交互に配置されている。左ケース156にホールICハウジング176が設けられ、右ケース158にブラシレスモータ160が設けられている。
モータ部28の駆動軸170は、第1ドライブギア178に接続されており、第1ドライブギア178の回転は、右ケース158によって回転可能に軸支されたギア軸180に設けられた第1ドリブンギア182に伝達される。ギア軸180にはさらに第2ドライブギア184が設けられ、駆動軸170の回転によって第1ドリブンギア182が回転することでギア軸180も回転する。このギア軸180の回転によって第2ドライブギア184が回転する。ハブ26は、左ケース156に設けられた軸受け186と、右ケース158に設けられた軸受け188によって、モータ部28に対して回転可能に支持されている。したがって、ハブ26は、軸ねじ150L、150Rを中心に回転することができ、これにより前輪WFが回転可能となる。
ハブ26は、左ハブプレート190と、左ハブプレート190にねじ192で固定された右ハブプレート194とからなる。左ハブプレート190と左ケース156との間に軸受け186が設けられ、右ハブプレート194と右ケース158との間に軸受け188が設けられている。右ハブプレート194には、第2ドライブギア184と嵌合する第2ドリブンギア196が設けられている。したがって、モータ部28の駆動力は、第1ドライブギア178、第1ドリブンギア182、第2ドライブギア184、第2ドリブンギア196を介してハブ26に伝達され、ハブ26が回転する。これにより、モータ部28の駆動力によって前輪WFが回転する。
制御部108は、クランク軸48に与えられた踏力トルクとアシスト自転車10の車速とに応じたアシスト比によって定められる補助トルクをブラシレスモータ160が発生するように、駆動ドライバ106をPWM制御する。駆動ドライバ106は、複数相(本実施の形態では、UVW相)の各スイッチング素子を有し、制御部108は、決められたデューティ比でUVW相の各スイッチング素子をオン・オフ制御することで駆動ドライバ106をPWM制御する。このPWM制御により、駆動ドライバ106は、バッテリ44の直流電流を3相交流電流に変換して、3相の交流電流をブラシレスモータ160のUVW相のステータコイルに通電する。これにより、ブラシレスモータ160の駆動軸170が回転する。
また、坂道などでブラシレスモータ160の駆動軸170が回転した場合には、UVW相のステータコイルに3相交流電流が発生するので(通電されるので)、駆動ドライバ106をPWM制御することで、駆動ドライバ106に3相交流電流を直流電流に変換させる。この変換された直流電流はバッテリ44に充電される。これにより、電気的エネルギーを回生することができ、回生された電気エネルギーを充電することができる。なお、制御部108は、クロック回路を有し、タイマーとしても機能する。
図5は、表示部68の概略外観図である。表示部68は、メモリカード(メディア)200が装着可能なスロット(メディア装着部)202と、装着されたメモリカード200を機械的に取り出すための取り出しボタン204と電源スイッチ206とが設けられている。また、表示部68は、現在アシスト自転車10がアシストを行っているか回生充電を行っているかを示すアシスト回生表示領域208と、現在のモードを示すモード表示領域210と、メモリカード200が装着されているかを示すメモリ表示領域212と、アシスト自転車10の前照灯70が点灯しているかを表示する前照灯表示領域214と、現在のバッテリ44の電池残量を表示する電池残量表示領域216とを有する。
電源スイッチ206は、アシスト自転車10の電源をオンにするためのものであり、電源スイッチ206がオンにされると、電源スイッチ206を点灯させる図示しない発光素子が表示部68に設けられている。
アシスト回生表示領域208は、現在アシスト自転車10の状態がアシストか回生充電かを示すものであり、さらに、アシスト及び回生充電の度合いを示す。詳しくは、複数の発光領域220(220a、220b)が縦方向に複数配置され、中心線218を境に上半分の複数(本実施の形態では3つ)の発光領域220aは、アシストが行われていることを示す領域であり、下半分の複数(本実施の形態では3つ)の発光領域220bは、回生充電が行われていることを示す領域である。また、上半分の複数の発光領域220aは、現在のアシスト度合いに応じて点灯し、下半分の複数の発光領域220bは、現在の回生充電の度合いに応じて点灯する。
例えば、上半分の3つの発光領域220aは、アシストの度合いを3段階のレベルで表示させ、アシストの度合い(バッテリ44が放電する電力量)がレベル1(最も低い)の場合は中心線218に最も近い発光領域220aが点灯し、アシストの度合いがレベル3(最も高い)の場合は全ての発光領域220aが点灯する。また、下半分の3つの発光領域220bは、回生充電の度合いを3段階のレベルで表示させ、回生充電の度合い(バッテリ44に充電される電力量)がレベル1(最も低い)の場合は中心線218に最も近い発光領域220bが点灯し、回生充電の度合いがレベル3(最も高い)の場合は全ての発光領域220bが点灯する。なお、アシストの度合いは、アシスト制御の制御量に比例して高くなり、回生充電の度合いは、回生制御の制御量に比例して高くなる。
モード表示領域210は、現在設定されているモードを表示させるものであり、詳しくは、「パワー」、「オート」、「エコ」の三種類のモードが表示されており、その左に、現在設定されているモードを表示するための発光領域222が設けられている。例えば、「パワー」の左に設けられた発光領域222が点灯している場合は、現在設定されているモードがパワーであることを示し、「エコ」の左に設けられた発光領域222が点灯している場合は、現在設定されているモードがエコであることを示している。また、モード表示領域210には、設定されるモードを変更するためのモード切替スイッチ224が設けられ、該モード切替スイッチ224を操作することで運転者は設定されるモードを変更させることができる。「パワー」モードは、アシストが強めになるモードであり、「エコ」モードは、回生充電が強めになるモードである。また、「オート」は走行状態等に応じて自動的にアシストが強くなったり、回生充電が強くなったりするモードである。
メモリ表示領域212は、メモリカード200が装着されると点灯し、前照灯表示領域214は、前照灯70が点灯すると点灯する。電池残量表示領域216には、現在の電池残量を表示するものである。表示領域及び発光領域の点灯は、図示しない発光素子(例えば、LED)等が発光することで点灯し、表示部68は、発光素子と該発光素子を駆動するための駆動部(図示略)を有する。駆動部は、制御部108によって制御される。
図6は、アシスト自転車10の制御装置250の電気的構成図である。制御装置250は、踏力センサ110と、車速センサ66と、制御部108と、記憶部252とを備える。制御部108は、充電状態検出部260、判定マップ選択部262、モード判定部264、ΔV演算部266、ΔV積算部268、アシスト制御部270、回生制御部272、ΔSOC算出部274、制御量補正部276、アシスト過渡制御部278、過渡係数設定部280、及びクランク回転回数検出部282を備える。制御部108は、CPU等のコンピュータ(情報処理装置)からなり、該コンピュータが所定のプログラムを実行することによって本実施の形態の制御部108として機能する。前記所定のプログラムは、記憶部252に格納されていてもよく、図示しない記録媒体に格納されていてもよい。
記憶部252は、複数の判定マップ(判定手段)が記憶された判定マップ記憶領域290、ΔV積算値補正マップが記憶された積算値補正マップ記憶領域292、ΔSOC補正マップが記憶されたΔSOC補正マップ記憶領域294、及びアシスト制御用及び回生制御用のΔSOC補正係数が記憶されるΔSOC補正係数記憶領域296を少なくとも有する。
充電状態検出部260は、現在のバッテリ44の充電状態SOC(State Of Charge)、つまり、バッテリ44の残容量を検出する。バッテリ44には、図示しない電圧センサ、電流センサが設けられ、充電状態検出部260は、電圧センサが検出したバッテリ44の電圧、電流センサが検出したバッテリ44に流れる電流に基づいて、充電状態SOCを検出する。
判定マップ選択部262は、充電状態検出部260が検出した充電状態SOCに基づいて、記憶部252に記憶されている判定マップから使用する判定マップを選択する。記憶部252は、複数の判定マップを記憶しており、判定マップには、踏力トルクのトルク値Tとアシスト自転車10の車速を示す車速情報値Vとに応じてアシストモード及び回生モードのどちらかを実行するか、及びその制御量が定められている。
図7は、記憶部252の判定マップ記憶領域290に記憶されている判定マップを示す図であり、図7Aは、低充電判定マップを示し、図7Bは、通常判定マップを示し、図7Cは、高充電判定マップを示す。横軸は、トルク値Tを示し、縦軸は車速情報値Vを示す。図8は、判定マップ選択部262によって低充電判定マップ、通常判定マップ、及び高充電判定マップが選択されるときのバッテリ44の充電状態を示す図である。
低充電判定マップは、バッテリ44の充電状態SOCが低充電のときに用いられる判定マップであり、高充電判定マップは、バッテリ44の充電状態SOCが高充電のときに用いられる判定マップであり、通常判定マップは、バッテリ44の充電状態SOCが通常のとき(低充電及び高充電以外のとき)に用いられる判定マップである。
低充電判定マップは、回生重視の制御(回生制御を行う比率を高くしてアシスト制御及び回生制御の切り替え制御)を行うための判定マップであり、高充電判定マップは、アシスト重視の制御(アシスト制御を行う比率を高くしてアシスト制御及び回生制御の切り替え制御)を行うための判定マップであり、通常判定マップは、通常の制御(アシスト制御及び回生制御の切り替え制御)を行うための判定マップである。
判定マップ選択部262は、図8に示すように、選択している判定マップが通常判定マップの時に、バッテリ44の充電状態SOCが第1レベル(例えば、20%)より低下すると、低充電判定マップを選択する。そして、選択している判定マップが低充電判定マップの時に、バッテリ44の充電状態SOCが第2レベル(例えば、40%)より大きくなると通常判定マップを選択する。判定マップ選択部262は、選択している判定マップが通常判定マップの時に、バッテリ44の充電状態SOCが第3レベル(例えば、110%)を超えると、高充電判定マップを選択する。そして、選択している判定マップが高充電判定マップの時に、バッテリ44の充電状態SOCが第4レベル(例えば、90%)より低下すると通常判定マップを選択する。
なお、バッテリ44は、バッテリ44の充電状態SOCが制御目標範囲(例えば、60%〜70%)の間となるようにアシスト制御及び回生制御が行われる。この制御目標範囲は記憶部252に記憶されている。つまり、第1レベルと第3レベルは、制御目標範囲から略同じ差分のレベルに設定されており、前記第2レベルと前記第4レベルとは、前記差分の略中間レベルにそれぞれ設定されている。これにより、回生重視の制御とアシスト重視の制御が、制御目標範囲を基準にバッテリ44の充電状態の増減方向(20〜110%)で同じようなタイミングで切り替えられ、運転者のバッテリ44の充電状態の認識に違和感を生じさせないアシスト制御と回生制御とを実現することができる。また、第2レベル及び第4レベルが、制御目標範囲から第1レベルと第3レベルの中間位置にあることから、回生重視の制御と通常の制御との切り替わり頻度、及び、アシスト重視の制御と通常の制御との切り替わりの頻度を抑えることができ、バッテリ44の制御目標範囲への容量制御も同じレベルで到達することができる。
判定マップは、トルク値Tが所定レベル(スレッショルド)より大きい場合は、アシストモードを実行させ、トルク値Tが所定レベル以下の場合は、回生モードを実行させることが定められたマップである。詳しくは、トルク値Tが所定レベルより大きい、又は、車速情報値Vが所定速度値より大きい場合は、アシストモードを実行させ、トルク値Tが所定レベル以下であり、且つ、車速情報値Vが所定速度値以下の場合は、回生モードを実行させることが定められたマップである。所定レベルの値及び所定速度値は、低充電判定マップ、通常判定マップ、高充電判定マップに応じて異なり、低充電判定マップにおける所定レベルの値及び所定速度値が最も高く、高充電判定マップにおける所定レベル及び所定速度値が最も低い。したがって、バッテリ44の充電状態が低いほど、回生モードが実行されるモードとして判定され易くなる。
本実施の形態では、高充電判定マップにおける所定レベルの値及び所定速度値は0としている。したがって、高充電判定マップにおいては、トルク値T及び車速情報値Vの全領域において、アシストモードを実行させることが定められたマップとなっている。したがって、バッテリ44を過充電から保護することができ、運転者は、運転フィーリングからバッテリ44の満充電を認識することができる。また、本実施の形態では、低充電判定マップにおける所定速度値は、アシスト自転車10が出すことができない速度値(例えば、100km/h)に設定しておく。
通常判定マップは、トルク値Tが所定レベルである第1の所定値以下で、且つ、車速情報値Vが所定速度値である第2の所定値以下の場合に回生モードが実行され、トルク値Tが所定レベルである第1の所定値より大きい又は車速情報値Vが第2の所定値より大きい場合はアシストモードが実行されるように定められている。つまり、高車速又は高踏力のときのみアシストモードが実行され、それ以外では回生モードが実行されるので、バッテリ44の充電状態が適正な範囲で維持される可能性が高く、バッテリ44の別途充電器での充電をなくす、又は、少なくすることができる。
低充電判定マップは、トルク値Tが所定レベルである第3の所定値より大きいときのみアシストモードが実行され、トルク値Tが第3の所定値以下の場合は回生モードが実行されるように定められている。第3の所定位置は、第1の所定値より大きい。したがって、バッテリ44を過放電から保護することができ、運転者は、運転フィーリングからバッテリ44の充電状態が低いことを認識することができる。なお、低充電判定マップにおける所定速度値は、アシスト自転車10が出すことができない速度値であるので、速度情報値Vを考慮しなくて済む。
このように、判定マップ選択部262は、バッテリ44の充電状態SOCに応じて判定マップの選択を切り替えることで、所定レベル及び所定速度値を変更する。
判定マップは、さらに各トルク値T及び車速情報値Vに対応して、アシスト制御及び回生制御の制御量(デューティ比)が記憶されている。例えば、通常判定マップにおいて、トルク値Tが第1の所定値より大きく、又は車速情報値Vが第2の所定値より大きい場合には、該トルク値T及び車速情報値Vに応じたアシスト制御の制御量が記憶されており、トルク値Tが第1の所定値以下で、車速情報値Vが第2の所定値以下の場合には、該トルク値T及び車速情報値Vに応じた回生制御の制御量が記憶されている。
このように、トルク値T及び車速情報値Vに応じてアシスト制御及び回生制御の制御量が定められた判定マップを用いて、アシスト制御及び回生制御の切り替え、及び、アシスト制御及び回生制御の制御量を決めるので、適切に、且つ、簡単にアシスト制御及び回生制御の切り替えが行うことができるととともに、制御量も決めることができる。
図6の説明に戻り、モード判定部264は、踏力センサ110が検出した踏力トルクのトルク値Tと、車速センサ66が検出したアシスト自転車10の車速情報値(車速値)Vとを用いて、判定マップ選択部262が選択した判定マップから実行するモードを判定する。本実施の形態においては、車速センサ66を用いてアシスト自転車10の車速情報値Vを検出するようにしたが、車速を示す情報を検出することができるセンサであればよい。例えば、車速センサ66に代えて、クランク軸48の回転数(車速情報値V)を検出するクランク軸回転数検出センサ(車速情報検出部)を設けてもよい。クランク軸48の回転数により、アシスト自転車10の車速を求めることができるからである。
また、モード判定部264は、判定したモードがアシストモードから回生モードに変わった後で、踏力センサ110が検出したトルク値Tのピークが前記所定レベル以下になったことを検出した場合には、アシスト過渡モードを実行すると判定する。アシスト過渡モードとは、本来は回生モードを実行すべきところ、便宜的にアシスト制御を行う特別のモードである。
ΔV演算部266は、車速センサ66が検出した前回の(所定時間前の)車速情報値Vと今回の車速情報値Vの差分(変化量)であるΔVを演算する。つまり、今回の車速情報値Vから前回の車速情報値Vを減算することで、差分であるΔVを演算する。したがって、アシスト自転車10が加速方向の場合は、ΔVは正の値となり、アシスト自転車10が減速方向の場合は、ΔVは負の値となる。
ΔV積算部268は、ΔV演算部266が演算した正及び負のΔVを積算する。ΔV積算部268は、ΔVを正負に応じて積算する。つまり、ΔV積算部268は、正のΔV同士、負のΔV同士を積算し、正のΔVと負のΔVとを積算することはない。
アシスト制御部270は、モード判定部264によってアシストモードと判定された場合に、ブラシレスモータ160を駆動制御してアシスト制御を行う。詳しくは、アシスト制御部270は、踏力センサ110によって検出されたトルク値T及び車速センサ66によって検出された車速情報値Vに応じた制御量を、判定マップ選択部262が選択した判定マップから取得し、取得した該制御量(デューティ比)で駆動ドライバ106をPWM制御することで、アシスト制御を行う。アシスト制御の制御量が増加すればするほどアシスト比も増加し、制御量が減少するほどアシスト比も減少する。アシスト比が増加すると踏力トルクに対するブラシレスモータ160による補助トルクの割合が大きくなる。
回生制御部272は、モード判定部264によって回生モードと判定された場合に、ブラシレスモータ160を駆動制御して回生制御を行う。詳しくは、回生制御部272は、踏力センサ110によって検出されたトルク値T及び車速センサ66によって検出された車速情報値Vに応じた制御量を、判定マップ選択部262が選択した判定マップから取得し、取得した該制御量(デューティ比)で駆動ドライバ106をPWM制御することで、回生制御を行う。回生制御の制御量が増加すればするほど回生充電される電力量も増加し、制御量が減少すればするほど回生充電される電力量も減少する。回生制御の制御量が増加すると、その分回生ブレーキが強くなり、運転者のペダル50L、50Rを漕ぐ負荷が大きくなる。
ΔSOC算出部274は、前回のアシスト自転車10の使用による電源オン及びオフ時の充電状態SOCの差であるΔSOCを算出する。詳しくは、前回のアシスト自転車10の使用開始時(電源オン時)のバッテリ44の充電状態SOCから前回のアシスト自転車10の使用終了時(電源オフ時)のバッテリ44の充電状態SOCを減算することで、ΔSOCを算出する。このΔSOCにより前回のアシスト自転車10の1回当たりのアシスト制御が行われた状態(アシスト状態)及び回生制御が行われた状態(回生状態)が分かる。つまり、アシスト制御によるバッテリ44の放電の状態及び回生制御によるバッテリ44の充電の状態がわかる。ΔSOCが正の値の場合は、前回のアシスト自転車10の使用によりアシスト制御が回生制御より多く行われたことを示し、ΔSOCが負の値の場合は、前回のアシスト自転車10の使用により回生制御がアシスト制御より多く行われたことを示している。
制御量補正部276は、積算された正及び負のΔV積算値に応じてアシスト制御及び回生制御による制御量を補正する。制御量補正部276は、負のΔV積算値に応じて回生制御の制御量を減少させる方向に補正し、正のΔV積算値に応じてアシスト制御の制御量を増加させる方向に補正する。
詳しくは、制御量補正部276は、積算された正及び負のΔV積算値に応じたΔV積算値補正係数を、記憶部252の積算値補正マップ記憶領域292に記憶されたΔV積算値補正マップから取得し、取得したΔV積算値補正係数をアシスト制御及び回生制御の制御量に乗算することで、アシスト制御及び回生制御の制御量を補正する。アシスト制御部270及び回生制御部272は、この補正された制御量にしたがってアシスト制御及び回生制御を行う。
また、制御量補正部276は、算出された正及び負のΔSOCに応じてアシスト制御及び回生制御の制御量を補正する。制御量補正部276は、バッテリ44の充電状態SOCが制御目標範囲(60%〜70%)に収まるようにアシスト制御及び回生制御の制御量を補正する。制御量補正部276は、ΔSOCが正の場合は、回生制御の制御量を増加させ、アシスト制御の制御量を減少させる方向に補正し、ΔSOCが負の場合は、回生制御の制御量を減少させ、アシスト制御の制御量を増加させる方向に補正する。
詳しくは、制御量補正部276は、正及び負のΔSOCに応じたアシスト制御用及び回生制御用のΔSOC補正係数を、記憶部252のΔSOC補正マップ記憶領域294に記憶されたΔSOC補正マップから取得し、該取得したΔSOC補正係数を記憶部252のΔSOC補正係数記憶領域296に記憶する。そして、ΔSOC補正係数記憶領域296に記憶したアシスト制御及び回生制御のΔSOC補正係数をアシスト制御及び回生制御の制御量に乗算することで、アシスト制御及び回生制御の制御量を補正する。アシスト制御部270及び回生制御部272は、この補正された制御量にしたがってアシスト制御及び回生制御を行う。正負のΔSOC補正マップには、バッテリ44の充電状態SOCが制御目標範囲(60%〜70%)に収まるようにアシスト制御及び回生制御の制御量を補正するΔSOC補正係数が定められている。
図9は、記憶部252の積算値補正マップ記憶領域292に記憶されているΔV積算値補正マップを示す図であり、図9Aは、−ΔV積算値補正マップを示し、図9Bは、+ΔV積算値補正マップを示す。横軸は、−(負の)ΔV積算値又は+(正の)ΔV積算値の絶対値を示し、縦軸は、ΔV積算値補正係数を示す。−ΔV積算値補正マップは、アシスト自転車10の車速が減少している場合に用いられる補正マップであり、+ΔV積算値補正マップは、アシスト自転車10の車速が増加している場合に用いられる補正マップである。
−ΔV積算値補正マップは、回生制御用のΔV積算値補正係数が、−ΔV積算値の絶対値が第1の閾値より大きくなるまでは1.0となるように設定されており、−ΔV積算値の絶対値が第1の閾値より大きくなると徐々に減少し、−ΔV積算値の絶対値が第3の閾値以上になると0.6となるように設定されている。アシスト制御用のΔV積算値補正係数は、−ΔV積算値にかかわらず1.0に設定されている。
+ΔV積算値補正マップは、アシスト制御用のΔV積算値補正係数が、+ΔV積算値の絶対値が第2の閾値より大きくなるまでは1.0となるように設定されており、+ΔV積算値の絶対値が第2の閾値より大きくなると徐々に増加し、+ΔV積算値の絶対値が第4の閾値以上になると1.4となるように設定されている。回生制御用のΔV積算値補正係数は、+ΔV積算値にかかわらず1.0に設定されている。
このように、ΔV積算値が負の場合(アシスト自転車10が減速している場合)は、負のΔV積算値の絶対値に応じて回生制御の制御量が小さくなるように補正するので、回生制御によりペダル50L、50Rの回転数が大きく減少した場合には、回生制御の制御量を減少させてペダル50L、50Rの回転数の減少を抑えることができる。ΔV積算値が正の場合(アシスト自転車10が加速している場合)は、正のΔV積算値の絶対値に応じてアシスト制御の制御量が大きくなるように補正するので、速やかに運転者が所望する車速となるようにアシスト制御することができる。したがって、クランク軸48の回転中にアシスト制御と回生制御とが切り替わることによるクランク軸48の回転数の変動を抑えることが可能となり、運転者に与える違和感を軽減させることができる。
図10は、記憶部252のΔSOC補正マップ記憶領域294に記憶されているΔSOC補正マップを示す図であり、図10Aは、+ΔSOC補正マップを示し、図10Bは、−ΔSOC補正マップを示す。横軸は、+(正の)ΔSOC又は−(負の)ΔSOCの絶対値を示し、縦軸は、ΔSOC補正係数を示す。+ΔSOC補正マップは、算出されたΔSOCが正の場合に用いられる補正マップであり、−ΔSOC補正マップは、算出されたΔSOCが負の場合に用いられる補正マップである。
+ΔSOC補正マップは、算出された+ΔSOCの絶対値が、前回の電源オフ時における充電状態SOCの5%となる値(所定値)以下の場合は、ΔSOC補正係数が1.0となるように設定されており、算出された+ΔSOCの絶対値が、前回の電源オフ時における充電状態SOCの5%となる値より大きい場合は、+ΔSOCの絶対値大きさに応じて、回生制御の制御量を徐々に増加させ、アシスト制御の制御量を徐々に減少させるようにΔSOC補正係数が設定されている。つまり、アシスト制御用のΔSOC補正係数と、回生制御用のΔSOC補正係数が+ΔSOCの絶対値に対応して設定されている。
−ΔSOC補正マップは、算出された−ΔSOCの絶対値が、前回の電源オフ時における充電状態SOCの5%となる値(所定値)以下の場合は、ΔSOC補正係数が1.0となるように設定されており、算出された−ΔSOCの絶対値が、前回の電源オフ時における充電状態SOCの5%となる値より大きい場合は、−ΔSOCの絶対値の大きさに応じて、回生制御の制御量を徐々に減少させ、アシスト制御の制御量を徐々に増加させるようにΔSOC補正係数が設定されている。つまり、アシスト制御用のΔSOC補正係数と、回生制御用のΔSOC補正係数が−ΔSOCの絶対値に対応して設定されている。
なお、ΔSOC補正係数は、1.4より大きく、0.6より小さくならないように制限が設けられており、ΔSOC補正係数が1.4若しくは0.6になった場合は、それ以上+ΔSOC及び−ΔSOCの絶対値が大きくなってもΔSOC補正係数が、1.4若しくは0.6に保持される。
このように、ΔSOCが正の場合は、前回のアシスト自転車10の使用によって、回生制御よりアシスト制御の方が多く行われたので、+ΔSOC補正マップにより、回生制御の制御量を多く、アシスト制御の制御量を少なくさせるように制御量を補正することで、バッテリ44の充電状態SOCを制御目標範囲に収めることが可能となる。また、ΔSOCが負の場合は、前回のアシスト自転車10の使用によってアシスト制御より回生制御が多く行われたので、−ΔSOC補正マップにより、回生制御の制御量を少なく、アシスト制御の制御量を多くさせるように制御量を補正することでバッテリ44の充電状態SOCを制御目標範囲に収めることが可能となる。なお、ΔSOCの絶対値が前回のアシスト自転車10の電源オフ時における充電状態SOCの5%以内にある場合は、アシスト制御及び回生制御の制御量を補正しないので、ΔSOC補正係数が頻繁に変動することを抑えることができる。
図6の説明に戻り、アシスト過渡制御部278は、モード判定部264によりアシスト過渡モードと判定された場合に、ブラシレスモータ160を駆動制御してアシスト過渡制御を行う。アシスト過渡制御とは、所定回数のクランク軸48の回転(本実施の形態では、クランク軸48の1回転)の間、アシスト制御によるアシスト比を減少させたアシスト比でブラシレスモータ160を駆動制御することをいう。詳しくは、アシスト過渡制御部278は、前回の踏力トルクがピークとなった時に行われたアシスト制御の制御量(デューティ比)を後述する過渡係数(1未満の係数)で乗算した制御量で、今回の踏力トルクのピークが検出されてから所定期間、駆動ドライバ106をPWM制御することでアシスト過渡制御を行う。アシスト過渡制御部278は、クランク軸48の半回転毎に、アシスト過渡制御を行う。
過渡係数設定部280は、アシスト過渡制御に用いられる過渡係数を設定する。過渡係数設定部280は、半回転毎に設定する過渡係数を減少させる。例えば、過渡係数設定部280は、最初に過渡係数を0.8に設定し、クランク軸48が半回転すると過渡係数を0.3に設定する。これにより、アシスト過渡制御によってブラシレスモータ160に発生する補助トルクは、半回転毎に小さくなる。
クランク回転回数検出部282は、クランク軸48の回転回数を検出するものである。クランク回転回数検出部282は、カウンタ回路とカウント値算出部とを有する(図示略)。カウンタ回路は、一定時間(例えば、10msec)毎にカウント値をインクリメントする。カウント値算出部は、現在の車速から、クランク軸48の半回転及び1回転分のカウント値を算出する。つまり、現在の車速からクランク軸48が半回転するのにかかる時間が分かるので、該時間からクランク軸48の半回転分のカウント値と1回転分のカウント値を算出する。クランク回転回数検出部282は、カウンタ回路のカウント値が算出した該カウント値になった否かでクランク軸48の半回転及び1回転を検出する。
次に、アシスト自転車10の制御装置250によるアシスト制御及び回生制御の動作を図11〜図14のフローチャートにしたがって説明する。電源スイッチ206がオンにされ、アシスト自転車10の制御装置250が駆動すると、充電状態検出部260は、現在のバッテリ44の充電状態SOCを検出し(図11のステップS1)、起動時におけるバッテリ44の充電状態SOCを記憶部252に記憶させる(ステップS2)。このステップS2の動作は、起動時に最初に検出した充電状態SOCを記憶し、起動後の2回目以降に検出した充電状態SOCは記憶しない。
次いで、判定マップ選択部262は、ステップS1で検出したバッテリ44の充電状態SOCが第1レベル(20%)よりも低いか否かを検出する(ステップS3)。ステップS3で検出したバッテリ44の充電状態SOCが第1レベル(20%)よりも低くないと判断すると、判定マップ選択部262は、検出したバッテリ44の充電状態SOCが第2レベル(40%)より大きいか否かを検出する(ステップS4)。
ステップS4で、検出したバッテリ44の充電状態SOCが第2レベル(40%)よりも大きくない判断すると、判定マップ選択部262は、現在選択している判定マップが通常判定マップであるか否かを判断する(ステップS5)。
ステップS3で検出した充電状態SOCが第1レベル(20%)より低いと判断された場合、及び、充電状態SOCが第1レベル(20%)以上且つ第2レベル(40%)以下の場合であって、ステップS5で現在選択している判定マップが通常判定マップでないと判断された場合は、判定マップ選択部262は、低充電判定マップを選択する(ステップS6)。これにより、バッテリ44の充電状態が低いときは、低充電判定マップを選択するので、充電状態が低いときに合ったアシスト制御及び回生制御の切り替えを適切に行うことができる。
一方、ステップS4で、検出した充電状態SOCが第2レベル(20%)より大きいと判断されると、判定マップ選択部262は、検出した充電状態SOCが第4(90%)レベルより低いか否かを判断する(ステップS7)。ステップS7で、検出した充電状態SOCが第4レベル(90%)より低くないと判断すると、判定マップ選択部262は、検出した充電状態SOCが第3レベル(110%)より大きいか否かを判断する(ステップS8)。
ステップS8で、検出した充電状態SOCが第3レベル(110%)より大きくないと判断すると、判定マップ選択部262は、現在選択している判定マップが通常判定マップであるか否かを判断する(ステップS9)。ステップS8で検出した充電状態SOCが第3レベルより大きいと判断された場合、充電状態SOCが第4レベル(90%)以上第3レベル(110%)以下であって、ステップS9で現在選択されている判定マップが通常判定マップでないと判断された場合は、判定マップ選択部262は、高充電判定マップを選択する(ステップS10)。これにより、バッテリ44の充電状態が高いときは、高充電判定マップを選択するので、充電状態が高いときに合ったアシスト制御及び回生制御の切り替えを適切に行うことができる。
充電状態SOCが第1レベル以上且つ第2レベル以下であって、ステップS5で現在選択している判定マップが通常判定マップであると判断された場合、ステップS7で検出した充電状態SOCが第4レベルより低いと判断された場合、及び、充電状態SOCが第4レベル以上且つ第3レベル以下であって、ステップS9で現在選択している判定マップが通常判定マップであると判断された場合は、判定マップ選択部262は、通常判定マップを選択する(ステップS11)。
このように、現在通常判定マップが選択されている状態で、バッテリ44の充電状態SOCが第1レベルより低くなると、ステップS6で低充電判定マップが選択される。その後、バッテリ44の充電状態SOCが第1レベルより大きい第2レベルを上回ると、ステップS11で通常判定マップが選択されることになる。また、現在通常判定マップが選択されている状態で、バッテリ44の充電状態SOCが第3レベルより大きくなると、ステップS10で高充電判定マップが選択される。その後、バッテリ44の充電状態SOCが第3レベルより低い第4レベルを下回ると、ステップS11で通常判定マップが選択されることになる。また、判定マップの切り替えにヒステリシスを設けたので(通常判定マップから低充電判定マップ及び高充電判定マップに切り替わる充電状態SOCと、低充電判定マップ及び高充電判定マップから通常判定マップに切り替わる充電状態SOCとを異ならせたので)、充電状態に応じて選択される判定マップが頻繁に切り替わることを防止することができる。
ステップS6、ステップS10、及びステップS11の何れかで判定マップが選択されると、踏力センサ110は踏力トルクのトルク値Tを検出し、車速センサ66は車速情報値Vを検出する(ステップS12)。検出されたトルク値T及び車速情報値Vは記憶部252に記憶される。なお、踏力センサ110及び車速センサ66は周期的にトルク値T及び車速情報値Vを検出し、ステップS12のタイミングで、制御部108は、直近に検出されたトルク値T及び車速情報値Vを取得するようにしてもよい。
次いで、ΔV演算部266は、検出した車速情報値VのΔVを算出する(ステップS13)。つまり、一定時間前に検出された車速情報値Vと今回検出された車速情報値Vの差を示すΔVを算出する。この算出されたΔVは記憶部252に記憶される。
次いで、ΔV積算部268は、ステップS13で算出したΔVの正負が反転したか否かを判断する(ステップS14)。つまり、前回算出したΔVの正負の符号と今回算出したΔVとの正負の符号が反転しているか否かを判断する。
ステップS14で、ΔVの正負が反転していないと判断されると、ΔV積算部268は、今回算出されたΔVを積算して(ステップS15)、図12のステップS21に進む。つまり、今回算出されたΔVを、既に積算されたΔV積算値に積算する。新たに積算したΔV積算値は記憶部252に記憶される。一方、ステップS14で、ΔVの正負が反転していると判断されると、ΔV積算部268は、既に積算されたΔV積算値をリセットして(ステップS16)、図12のステップS21に進む。ΔV積算値をリセットした場合は、今回算出されたΔVがそのままΔV積算値となる。つまり、ステップS16では、記憶部252に記憶されているΔV積算値を消去するとともに、今回算出されたΔVをΔV積算値として記憶部252に記憶する。
図12のステップS21に進むと、モード判定部264は、ステップS12で検出された踏力トルクのトルク値T及びアシスト自転車10の車速を示す車速情報値Vとを用いて、直近に選択された判定マップから実行するモードを判定する。つまり、直近にステップS6、ステップS10、及びステップS11の何れかで選択された判定マップからアシストモード及び回生モードのうち、どちらのモードを実行するかを判定する。
例えば、低充電判定マップが選択された場合は、検出されたトルク値Tが所定レベル(第3の所定値)以下の場合は回生モードを実行すると判定し、トルク値Tが所定レベルより大きい場合はアシストモードを実行すると判定する。高充電判定マップが選択された場合は、トルク値Tが検出されるとアシストモードを実行すると判定する。通常判定マップが選択された場合は、検出されたトルク値Tが所定レベル(第1の所定値)より大きい場合は、又は、車速情報値Vが第2の所定値より大きい場合はアシストモードを実行すると判定し、トルク値Tが所定レベル(第1の所定値)以下であり且つ車速情報値Vが第2の所定値以下の場合は、回生モードを実行すると判定する。
ステップS21で実行するモードとしてアシストモードが判定されると、アシスト制御部270は、磁極センサ162によって検出されたブラシレスモータ160の回転角度に応じて、ブラシレスモータ160のU、V、W相のステータコイルに電流を通電させるアシスト通電タイミングを設定する(ステップS22)。このアシスト通電タイミングに基づいて、制御部108は、駆動ドライバ106をPWM制御する。
次いで、アシスト制御部270は、直近に検出したトルク値T及び車速情報値Vを用いて、直近に選択した判定マップからアシスト制御のデューティ比(制御量)を取得する(ステップS23)。
次いで、制御量補正部276は、記憶部252のΔSOC補正係数記憶領域296に記憶されているアシスト制御用のΔSOC補正係数を取得する(ステップS24)。ΔSOC補正係数記憶領域296へのアシスト制御用のΔSOC補正係数の記憶動作については後述する。
次いで、制御量補正部276は、直近のステップS13で算出されたΔVの絶対値が所定の値(例えば、1km/h)より大きいか否かを判断する(ステップS25)。
ステップS25で、ΔVの絶対値が所定の値より大きいと判断した場合は、制御量補正部276は、現在記憶部252に記憶されているΔV積算値(図11のステップS15で算出して記憶したΔV積算値、又は、ステップS16で記憶したΔV積算値)の絶対値に基づくアシスト制御用のΔV積算値補正係数をΔV積算値補正マップから取得する(ステップS26)。ΔV積算値が負の場合は、−ΔV積算値補正マップから記憶部252に記憶されている負の(−)ΔV積算値の絶対値に対応するアシスト制御用のΔV積算値補正係数を取得する。ΔV積算値が正の場合は、+ΔV積算値補正マップから記憶部252に記憶されている正の(+)ΔV積算値の絶対値に対応するアシスト制御用のΔV積算値補正係数を取得する。
次いで、制御量補正部276は、ステップS24で取得したアシスト制御用のΔSOC補正係数と、ステップS26で取得したアシスト制御用のΔV積算値補正係数とを用いて、ステップS23で取得したアシスト制御のデューティ比を補正し、補正後のデューティ比をアシスト制御のデューティ比として設定して(ステップS27)、ステップS29に進む。詳しくは、ステップS23で取得したアシスト制御のデューティ比に、ステップS24で取得したアシスト制御用のΔSOC補正係数及びステップS26で取得したアシスト制御用のΔV積算値補正係数を乗算することでアシスト制御のデューティ比を補正する。つまり、補正後のアシスト制御のデューティ比=アシスト制御のデューティ比×アシスト制御用のΔSOC補正係数×アシスト制御用のΔV積算値補正係数、の関係式が成り立つ。
一方、ステップS25で、ΔVの絶対値が所定の値より大きくないと判断された場合は、制御量補正部276は、ステップS24で取得したアシスト制御用のΔSOC補正係数を用いて、ステップS23で取得したアシスト制御のデューティ比を補正して設定して(ステップS28)、ステップS29に進む。詳しくは、ステップS23で取得したアシスト制御のデューティ比に、ステップS24で取得したアシスト制御用のΔSOC補正係数を乗算することでアシスト制御のデューティ比を補正する。つまり、補正後のアシスト制御のデューティ比=アシスト制御のデューティ比×アシスト制御用のΔSOC補正係数、の関係式が成り立つ。
図9Aの−ΔV積算値補正マップに示すように、ΔV積算値が負の場合(アシスト自転車10が減速している場合)には、アシスト制御用のΔV積算値補正係数は1.0に保持されているので、ΔV積算値補正係数によってアシスト制御のデューティ比は補正されない。一方で、図9Bの+ΔV積算値補正マップに示すように、ΔV積算値が正の場合(アシスト自転車10が加速している場合)には、アシスト制御用のΔV積算値補正係数は、ΔV積算値の絶対値が第2の閾値より大きくなると、1.0より大きくなるので、アシスト制御のデューティ比が増加する方向に補正される。アシスト制御のデューティ比が増加することでアシスト比が増加するので、踏力トルクに対する補助トルクの割合が大きくなる。
ここで、+ΔV積算値の絶対値が第2の閾値より大きくない場合は、デューティ比を補正しないこととしたのは、+ΔV積算値の絶対値が第2の閾値より大きくない場合は、運転者は加速しようとしてペダル50L、50Rを漕いでいるのかどうか定かではないからであり、運転者の意図に反してアシスト比を増加させることを防ぐためである。
また、ステップS25では、ΔVの絶対値が所定の値より大きいか否かを判断し、ΔVの絶対値が所定の値より大きくない場合は、ΔV積算値補正係数に基づく補正を行わないこととしたのは、ΔVが所定の値以下の場合は、車速変動が少く、車速変動が少ない場合にも補正をしてしまうとドライバビリティが低下してしまうからである。
ステップS29に進むと、アシスト制御部270は、設定されたデューティ比で駆動ドライバ106をPWM制御する。このとき、アシスト制御部270は、ステップS22で設定されたアシスト通電タイミングに基づいてPWM制御を行う。このPWM制御により、バッテリ44の直流電力が駆動ドライバ106によって3相の交流電力に変換されてブラシレスモータ160に供給され、ブラシレスモータ160が駆動する。
次いで、アシスト制御部270は、踏力センサ110により検出されたトルク値Tのピークが検出されたか否かを判断する(ステップS30)。トルク値Tのピークは、例えば、検出されたトルク値Tが徐々に上昇している状態の時に、今回検出されたトルク値Tが前回検出されたトルク値Tより小さくなったか否かにより、トルク値Tのピークを検出することができる。検出されたトルク値Tが前回検出されたトルク値Tより小さくなった場合は、前回検出されたトルク値Tがピークとなる。
ステップS30で、トルク値Tのピークが検出されたと判断すると、アシスト制御部270は、踏力トルクがピークにおける設定されたデューティ比を記憶部252に記憶させる(ステップS31)。つまり、前回検出したトルク値Tがピークとなるので、前回設定したデューティ比を記憶部252に記憶させて、図11のステップS1に戻る。一方で、ステップS30で、トルク値Tのピークが検出されていないと判断すると、そのまま図11のステップS1に戻る。
ステップS21で実行するモードとして回生モードを判定すると、図13のステップS41に進み、モード判定部264は、踏力センサ110により検出されたトルク値Tのピークが検出されたか否かを判断する。
ステップS41で、踏力トルクのトルク値Tのピークが検出されていないと判断すると、モード判定部264は、現在アシスト過渡モード中であるか否かを判断する(ステップS42)。ステップS42でアシスト過渡モード中であると判断すると、図14のステップS57に進み、ステップS42でアシスト過渡モード中でないと判断すると、回生制御部272は、磁極センサ162によって検出されたブラシレスモータ160の回転角度に応じて、ブラシレスモータ160のU、V、W相のステータコイルに電流が通電する回生通電タイミングを設定する(ステップS43)。この回生通電タイミングに基づいて、制御部108は、駆動ドライバ106をPWM制御する。
次いで、回生制御部272は、直近に検出したトルク値T及び車速情報値Vを用いて、直近に選択した判定マップから回生制御のデューティ比を取得する(ステップS44)。
次いで、制御量補正部276は、記憶部252のΔSOC補正係数記憶領域296に記憶されている回生制御用のΔSOC補正係数を取得する(ステップS45)。ΔSOC補正係数記憶領域296への回生制御用のΔSOC補正係数の記憶動作については後述する。
次いで、制御量補正部276は、直近のステップS13で算出されたΔVの絶対値が所定の値(例えば、1km/h)より大きいか否かを判断する(ステップS46)。
ステップS46で、ΔVの絶対値が所定の値より大きいと判断した場合は、制御量補正部276は、現在記憶部252に記憶されているΔV積算値(図11のステップS15で算出して記憶したΔV積算値、又は、ステップS16で記憶したΔV積算値)の絶対値に基づく回生制御用のΔV積算値補正係数をΔV積算値補正マップから取得する(ステップS47)。ΔV積算値が負の場合は、−ΔV積算値補正マップから記憶部252に記憶されている負の(−)ΔV積算値の絶対値に対応する回生制御用のΔV積算値補正係数を取得する。ΔV積算値が正の場合は、+ΔV積算値補正マップから記憶部252に記憶されている正の(+)ΔV積算値の絶対値に対応する回生制御用のΔV積算値補正係数を取得する。
次いで、制御量補正部276は、ステップS45で取得した回生制御用のΔSOC補正係数と、ステップS47で取得した回生制御用のΔV積算値補正係数とを用いて、ステップS44で取得した回生制御のデューティ比を補正し、補正したデューティ比を回生制御のデューティ比として設定して(ステップS48)、ステップS50に進む。詳しくは、ステップS44で取得した回生制御のデューティ比に、ステップS45で取得した回生制御用のΔSOC補正係数及びステップS47で取得した回生制御用のΔV積算値補正係数を乗算することで回生制御のデューティ比を補正する。つまり、補正後の回生制御のデューティ比=回生制御のデューティ比×回生制御用のΔSOC補正係数×回生制御用のΔV積算値補正係数、の関係式が成り立つ。
一方、ステップS46で、ΔVの絶対値が所定の値より大きくないと判断された場合は、制御量補正部276は、ステップS45で取得した取得した回生制御用のΔSOC補正係数を用いて、ステップS44で取得した回生制御のデューティ比を補正して設定して(ステップS49)、ステップS50に進む。詳しくは、ステップS44で取得した回生制御のデューティ比に、ステップS45で取得した回生制御用のΔSOC補正係数を乗算することで回生制御のデューティ比を補正する。つまり、補正後の回生制御のデューティ比=回生制御のデューティ比×回生制御用のΔSOC補正係数、の関係式が成り立つ。
ステップS46では、ΔVの絶対値が所定の値より大きいか否かを判断し、ΔVの絶対値が所定の値より大きくない場合は、ΔV積算値補正係数に基づく補正を行わないこととしたのは、ΔVが所定の値以下の場合は、車速変動が少く、車速変動が少ない場合にも補正をしてしまうとドライバビリティが低下してしまうからである。
図9Aの−ΔV積算値補正マップに示すように、ΔV積算値が負の場合(アシスト自転車10が減速している場合)には、回生制御用のΔV積算値補正係数は、ΔV積算値の絶対値が第1の閾値より大きくなると、1.0より小さくなるので、回生制御のデューティ比が減少する方向に補正される。回生制御により発生した回生ブレーキによってペダル50L、50Rの回転数が減少した場合であっても、回生制御の制御量を減少させてペダル50L、50Rの回転数の減少を防ぐことができる。一方で、図9BのΔV積算値補正マップに示すように、ΔV積算値が正の場合(アシスト自転車10が加速している場合)には、回生制御用のΔV積算値補正係数は1.0に保持されているので、ΔV積算値補正係数によって回生制御のデューティ比は補正されない。ここで、−ΔV積算値の絶対値が第1の閾値より大きくない場合は、デューティ比を補正しないこととしたのは、−ΔV積算値が第1の閾値より大きくない場合は、ペダル50L、50Rの回転数が減少したかどうか定かではないからであり、回生充電量を低下させることを防ぐためである。
ステップS50に進むと、回生制御部272は、設定されたデューティ比で駆動ドライバ106をPWM制御して、図11のステップS1に戻る。このとき、回生制御部272は、ステップS43で設定された回生通電タイミングに基づいてPWM制御を行う。このPWM制御により、ブラシレスモータ160に発生した3相の交流電力が駆動ドライバ106によって直流電力に変換されてバッテリ44に供給される。
実行するモードとして回生モードが判定され、図13のステップS41で踏力トルクのトルク値Tのピークが検出された場合は、図14のステップS51に進み、モード判定部264は、前回の踏力ピーク時において、アシスト制御が行われたか否かを判断する。
ステップS51で、前回の踏力ピーク時において、アシスト制御が行われていないと判断すると(つまり、前回の踏力ピーク時において、回生制御やアシスト過渡制御が行われたと判断すると)、図13のステップS42に進み、アシスト制御が行われたと判断すると、ステップS52に進み、モード判定部264は、アシスト過渡モードと判定する。次いで、過渡係数設定部280は、過渡係数として1.0の以下の係数(本実施の形態では、0.8)を設定する(ステップS53)。
次いで、アシスト過渡制御部278は、前回の踏力トルクがピークとなった時に行われたアシスト制御のデューティ比を記憶部252から読み出し(ステップS54)、該読み出したアシスト制御のデューティ比をステップS52で設定された過渡係数を用いて補正する(ステップS55)。詳しくは、読み出したアシスト制御のデューティ比に設定された過渡係数を乗算することでデューティ比を補正する。
次いで、アシスト過渡制御部278は、駆動ドライバ106を補正されたデューティ比で所定期間PWM制御を行って(ステップS56)、ステップS57に進む。この場合、アシスト過渡制御用の通電タイミングを設定し、該設定した通電タイミングでPWM制御を行ってもよい。これにより、所定期間、バッテリ44の直流電力が駆動ドライバ106によって3相の交流電力に変換されてブラシレスモータ160に供給され、ブラシレスモータ160が駆動する。
ステップS57に進むと、クランク回転回数検出部282は、カウント値をインクリメントする(ステップS57)。クランク回転回数検出部282は、一定時間毎にカウント値をインクリメントし、前回インクリメントを行ってから一定時間(例えば、10msec)が経過していない場合は、経過するまでインクリメントを行わずに待ち処理を行う。
次いで、クランク回転回数検出部282は、現在のカウント値に基づいて、現在クランク軸48が半回転したタイミングであるか否かを判断する(ステップS58)。ステップS58でクランク軸48が半回転したタイミングでないと判断すると、クランク回転回数検出部282は、現在クランク軸48が1回転したタイミングであるか否かを判断する(ステップS59)。ステップS59で、クランク軸48が1回転したタイミングでないと判断すると、図11のステップS1に戻る。
一方、ステップS58で、クランク軸48が半回転したタイミングであると判断すると、過渡係数設定部280は、前回設定した過渡係数より小さい係数(本実施の形態では、0.3)を過渡係数として設定して(ステップS60)、ステップS55に戻る。これにより、ステップS53で読み出したデューティ比が新たに設定された過渡係数(0.3)で補正されて(ステップS55)、新たに補正されたデューティ比で所定期間の間PWM制御が行われる(ステップS56)。
一方、ステップS59で、クランク軸48が1回転したと判断されると、クランク回転回数は、カウンタ値をリセットし(ステップS61)、モード判定部264は、アシスト過渡モードを解除して(ステップS62)、図11のステップS1に戻る。なお、アシスト過渡モード中に、図12のステップS21でアシストモードと判定された場合(所定レベルより大きい踏力トルクのトルク値Tが検出された場合)も、カウンタ値をリセットし、アシスト過渡モードを解除して、図12のステップS22に進む。
ここで、図15は、運転者がペダル50L、50Rを漕いでアシスト自転車10を運転している場合に、踏力センサ110によって検出されたトルク値Tを示すものである。踏力センサ110のトルク値Tは、クランク軸48の角度位置(クランク角度位置)によってその値が異なる。横軸は、時間を表し、縦軸はトルク値Tを表している。図15に示すように検出されるトルク値Tは、クランク軸48の半回転毎にトルク値Tがピークとなる波形を有する。図15に示す所定レベルは、説明の便宜上、判定マップとして低充電判定マップが選択されているときの所定レベルを示している。
トルク値Tが所定レベル以下の場合は、実行するモードとして回生モードが判定されるので、検出されるトルク値Tより所定レベル以下の期間は回生制御が行われる。トルク値Tが所定レベルより大きい場合は、実行するモードとしてアシストモードが判定されるので、トルク値Tより大きい場合は、アシスト制御が行われる。このアシスト制御及び回生制御においては、検出されたトルク値T及び車速情報値Vに基づいてデューティ比が決まるが、ΔSOCの状態及びΔV積算値の状態に応じたΔSOC補正係数及びΔV積算値補正係数によって、該デューティ比が補正されてPWM制御が行われる。
ここで、図15に示すように、検出されるトルク値Tは徐々に減少し、4回目の踏力トルクのピークは、所定レベルより低い値となり、回生制御が実行されてしまう。しかしながら、今までは、トルク値Tが最小となる付近では回生制御を行い、トルク値Tが最大となる付近ではアシスト制御を行うというように、アシスト制御と回生制御とを交互に行っていたにもかかわらず、急にトルク値Tが最大となる付近でも回生制御を行うと(トルク値Tが最小から最大となる全領域で回生制御を行うと)、急にペダル50L、50Rが重たくなり運転者の負荷が増加し、運転に違和感を感じてしまう。このことは、アシスト制御→回生制御→アシスト制御というようにアシスト制御と回生制御とが交互に行われた場合に限られず、トルク値Tが最小から最大となる全領域でアシスト制御を行っていた場合に、急にトルク値Tが最小から最大となる全領域で回生制御を行った場合も同様である。
このような場合は、つまり、アシストモードから回生モードに切り替わった後、最初に踏力センサ110が検出したトルク値Tのピークが所定レベル以下になったことを検出した場合には、所定回数のクランク軸48の回転(本実施の形態では、1回転)の間、アシスト制御におけるアシスト比を減少させたアシスト過渡制御を行う。具体的には、アシストモードから回生モードに切り替わった、最初に踏力センサ110が検出したトルク値Tのピークが所定レベル以下になったことを検出した場合には、所定期間、前回検出されたトルク値Tがピークの場合におけるアシスト制御の制御量(デューティ比)を1未満の係数である過渡係数(本実施の形態では、0.8)で乗算したデューティ比で駆動ドライバ106をPWM制御する。つまり、トルク値Tのピークが所定レベル以下になったことを検出した場合は、該検出したタイミングから所定期間、ブラシレスモータ160に交流電力を供給させ、ブラシレスモータ160を駆動させる。これにより当該所定期間、アシスト自転車10の走行をアシストすることができる。
その後、トルク値Tのピークが所定レベル以下になったタイミングからクランク軸48が半回転し、且つアシストモードが実行されていない場合は、前回の過渡係数よりさらに係数を低くした過渡係数(本実施の形態では、0.3)で当該アシスト制御の制御量を乗算したデューティ比で駆動ドライバ106をPWM制御する。つまり、トルク値Tのピークが所定レベル以下になったことを検出してからクランク軸48が半回転すると、該クランク軸48が半回転したタイミングから所定期間、ブラシレスモータ160に交流電力を供給させ、ブラシレスモータ160を駆動させる。
トルク値Tのピークが所定レベル以下になったタイミングからクランク軸48が1回転すると、アシスト過渡モードを解除し、踏力トルクのトルク値Tが所定レベル以下の場合は回生モードに移行する。
次に、アシスト自転車10の制御装置250によるアシスト自転車10の停止動作を図16のフローチャートにしたがって説明する。電源スイッチ206がオフにされると、充電状態検出部260は、電源スイッチ206のオフ操作直前に検出されたバッテリ44の充電状態SOCを記憶部252に記憶させる(ステップS71)。
次いで、ΔSOC算出部274は、記憶部252に記憶されているアシスト自転車10の制御装置250の起動時(アシスト自転車10の使用開始時)におけるバッテリ44の充電状態SOC(図11のステップS2で記憶した充電状態SOC)とアシスト自転車10の制御装置250の停止時(アシスト自転車10に使用終了時)におけるバッテリ44の充電状態SOCの差であるΔSOCを算出する(ステップS72)。詳しくは、起動時のバッテリ44の充電状態SOCから停止時のバッテリ44の充電状態SOCを減算することでΔSOCを算出する。つまり、ΔSOC=起動時のバッテリ44の充電状態SOC−停止時のバッテリ44の充電状態SOC、の関係式が成り立つ。
次いで、制御量補正部276は、算出したΔSOCに基づいて、ΔSOC補正マップからΔSOC補正係数を取得して、記憶部252のΔSOC補正係数記憶領域296に記憶させる(ステップS73)。ΔSOCが正の場合は、+ΔSOC補正マップから該算出した+ΔSOCの絶対値に対応するアシスト制御用のΔSOC補正係数と回生制御用のΔSOC補正係数とを取得して記憶部252に記憶させる。ΔSOCが負の場合は、−ΔSOC補正マップから該算出した−ΔSOCの絶対値に対応するアシスト制御用のΔSOC補正係数と回生制御用のΔSOC補正係数とを取得して記憶部252に記憶させる。このΔSOCにより、アシスト自転車10の1回当たりの使用におけるアシスト状態及び回生状態が分かる。つまり、ΔSOCが正であれば、回生制御よりアシスト制御の方が多く行われたことがわかり、ΔSOCが負であれば、アシスト制御より回生制御の方が多く行われたことがわかる。
次いで、制御部108は、アシスト自転車10の制御装置250を停止させる(ステップS74)。この記憶部252に記憶されたアシスト制御用及び回生制御用のΔSOC補正係数が、次回のアシスト自転車10の使用におけるアシスト制御及び回生制御の制御量の補正に用いられる。
このように、クランク軸48の角度位置における踏力トルクを検出し、踏力トルクのトルク値Tに応じて(トルク値Tが所定レベル以下であるか否かに応じて)、アシスト制御と回生制御とを切り替えるので、より多くの回生状態を作り出すことができ、バッテリ44への充電頻度を高めることができ、バッテリ44を長持ちさせることができる。
また、アシスト自転車10の速度を示す車速情報値Vの変化量に応じたΔV積算値補正係数を用いてアシスト制御の制御量及び回生制御の制御量を補正するので、クランク軸48の回転中にアシスト制御と回生制御とが切り替わることによるクランク軸48の回転数の変動を抑えることができ、運転者に違和感を与えることがない。具体的には、回生制御によりクランク軸48の回転数が減少方向に大きく変化した場合(−ΔV積算値の絶対値が第1の閾値より大きくなった場合)は、回生制御の制御量を減少させてクランク軸48の回転数の減少を抑え、アシスト制御によりクランク軸48が上昇している場合(+ΔV積算値の絶対値が第2の閾値より大きくなった場合)には、アシスト制御を増加させることにより、速やかに運転者が所望する車速となるようにアシスト制御を行うことでクランク軸48の回転数の増加を抑えることができる。
前回のアシスト自転車10の使用開始時の充電状態から使用終了時の充電状態を減算した値が、正の場合は、+ΔSOC補正マップを用いて回生制御の制御量を増加させる方向に補正し、負の場合は−ΔSOC補正マップを用いてアシスト制御の制御量を増加させる方向に補正するので、可及的にバッテリ44の充電状態を良好な状態となる範囲(制御目標範囲)内に収めることができる。前回のアシスト自転車10の使用開始時の充電状態から使用終了時の充電状態を減算した値の絶対値が所定値より大きい場合のみ、アシスト制御の制御量及び回生制御の制御量を補正するので、安定した制御量でアシスト制御及び回生制御を行うことができ、アシスト制御及び回生制御の制御量を補正するΔSOC補正係数が頻繁に変動することを抑えることができる。
踏力センサ110が検出したトルク値Tのピークが所定レベル以下になった場合は、アシスト過渡制御を行った後に回生制御に移行するので、急にクランク軸48が重くなり運転者の負荷が急に増大することはなく、運転者に違和感を感じさせることなく、良好に回生制御に移行させることができる。つまり、アシストモードから回生モードに切り替わった後に、踏力センサ110が検出したトルク値Tのピークが所定レベル以下になった場合は、アシスト過度モードと判定するので、回生モードと判定した場合であってもアシスト過渡モードの判定中は、アシスト比を小さくしてアシストを継続することができ、運転者に違和感を感じさせることがない。
また、クランク軸48の半回転毎にアシスト比を減少させる過渡係数を設定するので、さらに違和感がなくアシスト制御から回生制御に移行させることができる。バッテリ44の充電状態に応じて判定マップが複数設けられるので、バッテリ44の充電状態に応じて適切、且つ、簡単に実行するモードを判定することができる。この複数のバッテリ44の充電状態は、低い充電状態に対応する判定マップほど、所定レベルが高くなるように定められているので、バッテリ44の充電状態が低いほど、回生モードが実行するモードとして判定され易くなり、バッテリ44が充電され易くなる。
上記実施の形態は、以下のように変形可能である。
(変形例1)
上記実施の形態では、アシスト自転車10の制御装置250の停止時に、ΔSOCを算出し、該算出したΔSOCに対応するΔSOC補正係数をΔSOC補正マップから取得して、記憶部252のΔSOC補正係数記憶領域296に記憶するようにしたが、アシスト自転車10の制御装置250の停止時に、ΔSOCを算出し、該算出したΔSOCを記憶部252に記憶するようにしてもよい。
この場合は、図12のステップS24及び図13のステップS45では、記憶部に記憶されたΔSOCに対応するΔSOC補正係数をΔSOC補正マップから取得する。ここで、ΔSOC補正マップは、算出されたΔSOCの絶対値が、現在のバッテリ44の充電状態SOCが5%となる値以下の場合は、ΔSOC補正係数が1.0となるように設定されている。
なお、ΔSOCの絶対値がバッテリの充電状態SOCの5%となる値(つまり、充電状態SOCよって変動する所定値)以下の場合は、ΔSOC補正係数を1.0とし、5%より大きい場合にΔSOC補正係数が増減するようにΔSOC補正マップを定めたが、ΔSOCの絶対値が一定値ある所定値以下の場合は、ΔSOC補正係数を1.0とし、該一定値である所定値より大きい場合にΔSOC補正係数が増減するようにΔSOC補正マップを定めてもよい。
(変形例2)
上記実施の形態及び変形例1において、制御部108は、記憶部252に記憶されたΔSOC又はΔSOC補正係数を、表示部68に装着されたメモリカード200に記憶させてもよい。ΔSOC又はΔSOC補正係数が記憶されたメモリカード200を表示部68から取り外し、他のアシスト自転車10に装着することが可能である。この場合、当該メモリカード200が装着された他のアシスト自転車10の制御装置250は、メモリカード200に記憶されたΔSOC又はΔSOC補正係数に基づいてアシスト制御の制御量及び回生制御の制御量を補正してもよい。
このような使い方をすることで、例えば、アシストの比重が大きい運転者の使用によって得られたΔSOC又はΔSOC補正係数が記録されたメモリカード200を、バッテリ44の充電状態SOCが低いがアシスト自転車10に装着することで、バッテリ44の充電状態を早期に回復させることができたり、回生の比重が大きい運転者の使用によって得られたΔSOC又はΔSOC補正係数が記録されたメモリカード200を、体力のない女性が使用するアシスト自転車10に装着することで、強いアシスト制御を受けることができるという使い方をすることができる。
(変形例3)
上記実施の形態、変形例1、及び変形例2において、クランク軸48の1回転の間、アシスト過渡制御を行うようにしたが、所定回数のクランク軸の回転(例えば、5回転)の間、アシスト過渡制御を行うようにしてもよい。また、半(0.5)回転毎に過渡係数を小さくするように設定したが、1回転毎、1.5回転毎等の一定回転毎に過渡係数を小さくするように設定してもよい。
(変形例4)
上記実施の形態、変形例1〜3において、判定マップ、ΔV積算値補正マップ、ΔSOC補正マップ等のマップを用いるようにしたが、これらのマップを用いずに、計算によって行うようにしてもよい。例えば、トルク値Tと車速情報値Vとから計算によって、実行するモードを判定するとともに、制御量を算出してもよい。
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲に記載された括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号をつけた要素に限定して解釈されるものではない。