JP5564357B2 - 銅合金及び鋳造品 - Google Patents

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Description

本発明は、洋白と同等の銀白色を呈し、自動車用キー、家庭用キー、メダル、遊戯用コイン、食器、装飾部材等の素材として適した銅合金及びこの銅合金からなる鋳造品に関するものである。
従来より、Cu―Ni−Znを主成分とする洋白は、美しい銀白色を呈することから、銀代用材料として装飾部材等に使用されている。また、特許文献1には、この洋白の被削性を向上させるために、Pbを0.1〜2.5質量%添加したものが提案されている。このように被削性を向上させることで、加工後の表面を滑らかに仕上げることができ、銀白色の色調を際立たせることが可能となる。
しかしながら、前述の洋白は、Niを多く含有することから、金属アレルギー等を引き起こすおそれがあるため、人が直接触れるような用途に使用することは敬遠されていた。
ここで、単にNiの含有量を低減した場合には、色調が黄味や赤味を帯びることになり、美しい銀白色が得られなくなってしまう。
そこで、例えば特許文献2及び非特許文献1には、Niの含有量を大幅に低減させつつ、洋白と同等の銀白色を呈する合金が提案されている。この銅合金は、Niの含有量が約9質量%とされていて、洋白の6〜7割程度に抑えられている。このため、前述した金属アレルギーの発生を抑制することができ、人が直接触れるような部材にも広く適用することができるものである。
また、この銅合金は、プレス成形性、被削性、ねじり強度、耐変色性、曲げ加工性、耐衝撃性、耐応力腐食割れ性、耐磨耗性に優れており、装飾部材等以外の様々な用途にも適している。
特開平01−177327号公報 国際公開第2009/113489号パンフレット
大石、岩崎、安田、「高強度白色銅合金WNS7について」、伸銅技術研究会誌、1992年、第31巻、P.88−96
しかしながら、特許文献2及び非特許文献1に記載された銅合金においては、溶湯の流動性が悪いことから、最終凝固部において凝固収縮によって生成された空間に溶湯が十分に供給されないために、大きな引け巣が発生することになる。すなわち、前述の銅合金では、例えば重力鋳造を行った場合に、鋳塊又は鋳物の頂部の最終凝固部において大きな引け巣(いわゆる外引け)が発生することになる。この引け巣(外引け)は、漏斗状をなしており、その下方側にも小さな収縮孔が点在することになる。
このように、特許文献2及び非特許文献1に記載された銅合金においては、鋳造時に大きな引け巣が発生するため、歩留りが著しく低下してしまうといった問題があった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、洋白と同等の銀白色を呈するとともに、鋳造時において大きな引け巣が発生することがなく生産性に優れた銅合金、及びこの銅合金からなる鋳造品を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の銅合金は、Cu;47.5質量%以上50.5質量%以下、Ni;7.8質量%以上9.8質量%以下、Mn;4.7質量%以上6.3質量%以下、P;0.001質量%以上0.5質量%以下、Ti及びHfのうち少なくとも1種以上;0.001質量以上0.5質量%以下、を含み、残部がZnと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴としている。
このような構成の銅合金においては、Cu;47.5質量%以上50.5質量%以下、Ni;7.8質量%以上9.8質量%以下、Mn;4.7質量%以上6.3質量%以下、さらにZnを含有していることから、洋白と同等の銀白色を呈することになる。
また、P;0.001質量%以上0.5質量%以下、Ti及びHfのうち少なくとも1種以上;0.001質量以上0.5質量%以下を含有していることから、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化することになる。
これにより、凝固の最終段階においても、溶湯の流動性が確保され、最終凝固部において凝固収縮によって生成された空間に溶湯が十分に供給されることになり、前述した「外引け」のような大きな引け巣の発生が抑制される。したがって、引け巣を除去するために鋳塊を切断除去する部位が少なくなり、鋳造時の歩留りを大幅に向上させることができる。
さらに、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化することによって、得られる鋳塊及び鋳物における凝固組織も微細化することになる。
凝固組織が微細である場合、強度、延性等の機械的特性が向上することになる。よって、鋳塊及び鋳物の加工性が大幅に向上し、熱間加工、冷間加工時において、割れ等の欠陥が発生することを抑制でき、生産効率を大幅に向上させることができる。
また、鋳塊及び鋳物の凝固組織が微細化されていることから、その後の加工においても結晶が粗大化することが抑制され、加工後の製品においても結晶粒径が微細化されることになる。よって、加工後の製品においても、強度、延性等の機械的特性の向上を図ることが可能となるのである。
ここで、前述の銅合金において、さらに、Zrを含有し、Zr,Ti及びHfの含有量が0.001質量以上0.5質量%以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、Zrを含有し、Zr,Ti及びHfの含有量が0.001質量以上0.5質量%以下の範囲内とされているので、晶出するデンドライトを、確実に等軸化及び微細化することが可能となる。
なお、Zrのみを添加した場合には、デンドライトの微細化効果が不十分であることから、Ti及びHfのいずれか1種とZrとを共添加する必要がある。
また、前述の銅合金において、Pの含有量[P]とTi及びHfのうち少なくとも1種以上の含有量[Ti,Hf]との質量比[P]/[Ti,Hf]が、0.1以上200以下であることが好ましい。
さらに、Zrを含有する場合には、Pの含有量[P]とZr,Ti及びHfのうち少なくとも2種以上の含有量[Zr,Ti,Hf]との質量比[P]/[Zr,Ti,Hf]が、0.1以上200以下であることが好ましい。
前述のように、P量とTi量及びHf量、並びに、P量とZr量、Ti量及びHf量、を規定することにより、晶出するデンドライトの等軸化及び微細化の効果を確実に奏功せしめることができる。なお、この作用効果をさらに確実に奏功せしめるためには、質量比[P]/[Ti,Hf]を0.1以上20以下、あるいは、質量比[P]/[Zr,Ti,Hf]を0.1以上20以下とすることが好ましい。
また、前述の銅合金において、Pb;0.001質量%以上0.08質量%以下、Bi;0.001質量%以上0.08質量%以下、C;0.0001質量%以上0.009質量%以下、S;0.0001質量%以上0.007質量%以下、から選択された1種以上の元素を含有することが好ましい。
Pb、Bi、C、Sといった元素は、銅合金の被削性、プレス成形性及び耐磨耗性を向上させる効果を有しており、用途にあわせて選択的に含有させることによって、これらの特性を向上させることが可能となる。
ここで、これらの元素の含有量が下限値より少ない場合には、前述した作用効果を奏功せしめることができない。一方、これらの元素の含有量が上限値よりも多い場合には、前述の効果がさらに向上することはなく、逆に、耐衝撃性、強度、延性、熱間加工性及び冷間加工性に悪影響を及ぼすことになる。
さらに、前述の銅合金において、Al;0.01質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.001質量%以上0.03質量%以下、から選択された1種以上の元素を含有することが好ましい。
Al、Mgといった元素は、溶湯の流動性をさらに高める効果を有していることから、引け巣の発生をさらに確実に抑制することが可能となる。また、Al、Mgといった元素は、強度、耐変色性を向上させる元素でもある。
ここで、これらの元素の含有量が下限値より少ない場合には、前述した作用効果を奏功せしめることができない。一方、これらの元素の含有量が上限値よりも多い場合には、前述の効果がさらに向上することはなく、逆に、延性、冷間加工性に悪影響を及ぼすことになる。
本発明の鋳造品は、前述の銅合金からなることを特徴としている
この構成の鋳造品においては、前述の銅合金で構成されていることから、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化することによって、その凝固組織も微細化し、柱状晶領域が少なくなる。ここで、肉眼で観察される柱状晶領域が前記断面の10%以下である場合には、晶出するデンドライトの等軸化及び微細化が十分に行われていることになり、この鋳造品の強度、延性等の機械的特性が向上することになる。よって、鋳造品の加工性が大幅に向上し、熱間加工、冷間加工時において、割れ等の欠陥が発生することを防止することができる。
さらに、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化することで、鋳造時の溶湯の流動性が向上し、大きな引け巣の発生が抑制され、鋳造時の歩留りが大幅に向上することになる。
ここで、前述の鋳造品において、粒状結晶又は等軸デンドライトが晶出したミクロ組織を有していることが好ましい。
この場合、晶出するデンドライトの等軸化及び微細化が十分に行われていることになり、この鋳造品の強度、延性等の機械的特性が向上することになる。よって、鋳造品の加工性が大幅に向上し、熱間加工、冷間加工時において、割れ等の欠陥が発生することを防止することができる。
本発明によれば、洋白と同等の銀白色を呈するとともに、鋳造時において大きな引け巣が発生することがなく生産性に優れた銅合金、及びこの銅合金からなる鋳造品を提供することができる。
実施例における外引け長さの評価方法及び組織観察の部位を示す説明図である。 実施例における外引けの観察結果の一例を示す写真である。 実施例における外引けの観察結果の一例を示す写真である。 実施例におけるマクロ組織観察結果及びミクロ組織観察結果の一例を示す写真である。 実施例におけるマクロ組織観察結果及びミクロ組織観察結果の一例を示す写真である。 実施例におけるマクロ組織観察結果及びミクロ組織観察結果の一例を示す写真である。 実施例におけるマクロ組織観察結果及びミクロ組織観察結果の一例を示す写真である。
以下に、本発明の第1の実施形態である銅合金、及び、この銅合金からなる鋳造品について説明する。
本実施形態である銅合金は、Cu;47.5質量%以上50.5質量%以下、Ni;7.8質量%以上9.8質量%以下、Mn;4.7質量%以上6.3質量%以下、P;0.001質量%以上0.5質量%以下、Ti及びHfのうち少なくとも1種以上;0.001質量以上0.5質量%以下、を含み、さらに、Pb;0.001質量%以上0.08質量%以下、Bi;0.001質量%以上0.08質量%以下、C;0.0001質量%以上0.009質量%以下、S;0.0001質量%以上0.007質量%以下、から選択された1種以上の元素、及び、Al;0.01質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.001質量%以上0.03質量%以下、から選択された1種以上の元素を含有し、残部がZnと不可避不純物とからなる組成を有する。
ここで、Pの含有量[P]とTi及びHfのうち少なくとも1種以上の含有量[Ti,Hf]との質量比[P]/[Ti,Hf]が、0.1以上200以下とされている。
以下に、これらの元素の含有量を前述の範囲に設定した理由について説明する。
(Cu,Zn)
本実施形態である銅合金は、CuとZnとを主成分としている。
ここで、Cuの含有量が47.5質量%未満である場合、すなわち、Zn等に対してCuの含有量が少ない場合には、β相が多く存在することになり、延性、冷間加工性が低下することになる。また、耐変色性、耐応力腐食割れ性、プレス性についても低下することになる。
一方、Cuの含有量が50.5質量%を超える場合、すなわち、Zn等に対してCuの含有量が多い場合には、β相が少なくなり、強度が低下することになる。また、耐摩耗性、プレス成形性、被削性、熱間加工性、鋳造性が低下する。
このような理由から、Cuの含有量を、47.5質量%以上50.5質量%以下に設定している。
なお、Znは、引張強度、耐力等の機械的特性に影響を与える元素であるが、他の含有元素との関係から、Cu等の他の元素の残部として、含有量を規定している。
(Ni)
Niは、銅合金の色調に大きく影響を与える元素である。また、Niは、耐変色性、耐応力腐食割れを向上させる作用を有する。
ここで、Niの含有量が7.8質量%未満である場合には、色調が白色から黄色に変化してしまい、洋白同等の美しい銀白色を呈することができなくなるとともに、耐変色性、耐応力腐食割れを向上させることができなくなる。
一方、Niの含有量が9.8質量%を超える場合には、鋳造時の溶湯の流動性が低下するため、大きな引け巣が発生するおそれがある。また、熱間加工性、プレス成形性、被削性も低下することになる。さらに、Niを多く含有することで金属アレルギーを誘発するおそれがある。
このような理由から、Niの含有量を、7.8質量%以上9.8質量%以下に設定している。
(Mn)
Mnは、Niと同様に、銅合金の色調に大きく影響を与える元素である。また、Mnは、ねじり強度、耐磨耗性、プレス性、被削性、熱間加工性及び溶湯の流動性を向上させる作用を有する。また、Niに比べて安価な元素であることから、Niの代替として添加することが可能となる。
ここで、Mnの含有量が4.7質量%未満である場合には、色調が変化してしまい、洋白同等の美しい銀白色を呈することができなくなるとともに、耐磨耗性、プレス性、被削性、熱間加工性及び溶湯の流動性を向上させることができなくなる。
一方、Mnの含有量が6.3質量%を超える場合には、前述のような効果の更なる向上は認められず、かえって熱間加工性、冷間加工性が劣化することになる。
このような理由から、Mnの含有量を、4.7質量%以上6.3質量%以下に設定している。
(P/Ti,Hf)
Pと、Ti及びHfの少なくとも1種以上を共添加することにより、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化し、凝固組織も微細化することになる。
P量の含有量が0.001質量%未満では、デンドライトの等軸化及び微細化の効果が認められない。一方、P量の含有量が0.5質量%を超える場合には、さらなる微細化の効果が認められず、かえって鋳造性が低下するおそれがある。
このような理由から、Pの含有量を、0.001質量%以上0.5質量%以下に設定している。なお、Pの含有量が0.01質量%以上となると前述の微細化効果が顕著となり、さらに前述の微細化効果を確実に奏功せしめるためには、Pの含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。
また、Ti及びHfの少なくとも1種以上の含有量が0.001質量%未満では、デンドライトの等軸化及び微細化の効果が認められない。一方、Ti及びHfの少なくとも1種以上の含有量が0.5質量%を超える場合には、さらなる微細化の効果が認められず、単に原料コストが増加することになる。
このような理由から、Ti及びHfの少なくとも1種以上の含有量を、0.001質量%以上0.5質量%以下に設定している。なお、Ti及びHfの少なくとも1種以上の含有量が0.005質量%以上となると微細化効果が顕著となり、さらに前述の微細化効果を確実に奏功せしめるためには、Ti及びHfの少なくとも1種以上の含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。
ここで、Pの含有量[P]とTi及びHfのうち少なくとも1種以上の含有量[Ti,Hf]との質量比[P]/[Ti,Hf]が0.1以上200以下の範囲内である場合には、前述したデンドライトの等軸化及び微細化の効果がさらに顕著となる。さらに、この微細化効果を確実に奏功せしめるためには、質量比[P]/[Ti,Hf]を0.1以上20以下の範囲内に設定することが好ましい。
(Pb,Bi,C,S)
Pb,Bi,C,Sといった元素は、これらの元素を含む粒子が微細に析出または晶出することにより、被削性、プレス成形性及び耐磨耗性を向上させる作用を有するものである。
ここで、これらの元素の含有量が下限値より少ない場合には、前述した作用効果を奏功せしめることができない。
一方、これらの元素の含有量が上限値よりも多い場合には、前述の効果がさらに向上することはなく、逆に、これらの元素を含む粒子が必要以上に多く析出または晶出することで、耐衝撃性、強度、延性、熱間加工性及び冷間加工性に悪影響を及ぼすことになる。
以上のような理由により、Pb,Bi,C,Sの含有量をそれぞれ規定しているのである。
(Al,Mg)
Al、Mgといった元素は、溶湯の流動性をさらに高める効果を有している。また、Al、Mgといった元素は、強度、耐変色性を向上させる元素である。
ここで、これらの元素の含有量が下限値より少ない場合には、前述した作用効果を奏功せしめることができない。
一方、これらの元素の含有量が上限値よりも多い場合には、前述の効果がさらに向上することはなく、逆に、延性、冷間加工性に悪影響を及ぼすことになる。
以上のような理由により、Al,Mgの含有量をそれぞれ規定しているのである。
なお、不可避不純物としては、Fe,Si,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,希土類元素,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Re,Ru,Os,Se,Te,Rh,Ir,Pd,Pt,Au,Cd,Ga,In,Li,Ge,As,Sb,Tl,O,Co,Ag,B,Sn,Be,N,H,Hg等が挙げられる。これらの不可避不純物は、総量で0.3質量%以下であることが好ましい。
特に、Feは、含有量が0.3質量%を超えるとプレス性、被削性が低下することになるが、0.2質量%以下とすることで特性への悪影響を抑制することが可能となる。
また、Siは、含有量が0.1質量%以上であると、Ni、Mn等と化合物を生成し、プレス性、被削性等の特性が低下することになるが、0.05質量%以下とすることで特性への悪影響を抑制することが可能となる。
また、本実施形態である鋳造品は、前述の組成とされた銅合金で構成されており、断面のマクロ組織観察において、肉眼で観察される柱状晶領域が前記断面の10%以下とされている。さらに、本実施形態である鋳造品は、粒状結晶又は等軸デンドライトが晶出したミクロ組織を有している。このようなマクロ組織及びミクロ組織を有する鋳造品は、鋳造組織の微細化が十分に達成されていることになる。
すなわち、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化することで、柱状晶の幅及び長さが減少して柱状晶領域が減少することになり、等軸晶領域が増加することになる。より好ましくは、柱状晶領域がなく全面が等軸晶領域となっていることが好ましい。但し、等軸晶の粒径が非常に微細となった場合には、肉眼で等軸晶を確認できないこともある。
なお、粒状結晶が晶出した場合、ミクロ組織の以下の観察により、粒径を測定できる。本実施形態である鋳造品の結晶粒度をJIS H 0501に規定された試験方法(切断法)で測定した場合、その粒状結晶の結晶粒度は0.05mm以下、好ましくは0.01mm以下である。
この鋳造品は、次のようにして製造される。
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、元素の添加には、元素単体や母合金等を用いることができる。また、これらの元素を含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。
ここで、銅溶湯は、純度が99.99%以上とされたいわゆる4NCuとすることが好ましい。また、当然ながら、本合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。
また、溶解工程では、Ti及びHf等の酸化を抑制するために、真空炉、あるいは、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気とされた雰囲気炉を用いることが好ましい。大気炉の場合は、酸化による減少分を考慮して添加すればよい。
そして、成分調整された銅合金溶湯を鋳型に注入して鋳塊を製出する。なお、量産を考慮した場合には、連続鋳造法または半連続鋳造法を用いることが好ましい。
以上のような構成とされた本実施形態である銅合金、及び、この銅合金からなる鋳造品によれば、Cu;47.5質量%以上50.5質量%以下、Ni;7.8質量%以上9.8質量%以下、Mn;4.7質量%以上6.3質量%以下、さらにZnを含有していることから、洋白と同等の銀白色を呈することになる。これにより、自動車用キー、家庭用キー、メダル、遊戯用コイン、食器、装飾部材等の素材として広く使用することが可能となる。
また、Niの含有量が少ないことから、金属アレルギーの発生を抑制することができ、人が直接触れるような用途であっても使用することができる。
また、P;0.001質量%以上0.5質量%以下、Ti及びHfのうち少なくとも1種以上;0.001質量以上0.5質量%以下を含有していることから、前述のように、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化することになる。よって、凝固の最終段階においても、溶湯の流動性が確保されることになり、大きな引け巣の発生が抑制され、鋳造時の歩留りが大幅に向上することになる。
さらに、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化することによって、鋳造品(鋳塊及び鋳物)における凝固組織も微細化することになる。具体的には、本実施形態である鋳造品は、断面のマクロ組織観察において、肉眼で観察される柱状晶領域が前記断面の10%以下とされており、さらに、粒状結晶又は等軸デンドライトが晶出したミクロ組織を有している。
このように、鋳造品において凝固組織が微細であることから、強度、延性等の機械的特性が向上することになる。よって、鋳造品の加工性が大幅に向上し、熱間加工、冷間加工時において、割れ等の欠陥が発生することを防止することができる。
特に、本実施形態では、Pの含有量[P]とTi及びHfのうち少なくとも1種以上の含有量[Ti,Hf]との質量比[P]/[Ti,Hf]が0.1以上200以下の範囲内としていることから、前述したデンドライトの等軸化及び微細化の効果がさらに顕著となり、前述の作用効果を確実に奏功せしめることができる。好ましくは、質量比[P]/[Ti,Hf]は0.1以上20以下の範囲である。
また、Pb;0.001質量%以上0.08質量%以下、Bi;0.001質量%以上0.08質量%以下、C;0.0001質量%以上0.009質量%以下、S;0.0001質量%以上0.007質量%以下、から選択された1種以上の元素を含有しているので、強度、延性、加工性に悪影響を及ぼすことなく、被削性、プレス成形性及び耐磨耗性を向上させることができる。
さらに、Al;0.01質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.001質量%以上0.03質量%以下、から選択された1種以上の元素を含有しているので、溶湯の流動性をさらに高めることができ、大きな引け巣の発生を確実に防止することができる。また、これらの元素によって強度、耐変色性を向上させることが可能となる。
以下に、本発明の第2の実施形態である銅合金について説明する。
本実施形態である銅合金は、Cu;47.5質量%以上50.5質量%以下、Ni;7.8質量%以上9.8質量%以下、Mn;4.7質量%以上6.3質量%以下、P;0.001質量%以上0.5質量%以下、Zr,Ti及びHfのうち少なくとも2種以上;0.001質量以上0.5質量%以下、を含み、さらに、Pb;0.001質量%以上0.08質量%以下、Bi;0.001質量%以上0.08質量%以下、C;0.0001質量%以上0.009質量%以下、S;0.0001質量%以上0.007質量%以下、から選択された1種以上の元素、及び、Al;0.01質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.001質量%以上0.03質量%以下、から選択された1種以上の元素を含有し、残部がZnと不可避不純物とからなる。
ここで、Pの含有量[P]とZr,Ti及びHfのうち少なくとも1種以上の含有量[Zr,Ti,Hf]との質量比[P]/[Zr,Ti,Hf]が、0.1以上200以下とされている。
すなわち、この第2の実施形態である銅合金は、前述の第1の実施形態である銅合金と比較して、Zr,Ti及びHfの2種以上を含有する点で相違している。そこで、これらZr,Ti及びHfについて以下に説明する。
(Zr,Ti及びHf)
Zr,Ti及びHfの少なくとも2種以上と、Pとを共添加することにより、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化し、凝固組織も微細化することになる。
Zr,Ti及びHfの少なくとも2種以上の含有量が0.001質量%未満では、デンドライトの等軸化及び微細化の効果が認められない。一方、Zr,Ti及びHfの少なくとも2種以上の含有量が0.5質量%を超える場合には、さらなる微細化の効果が認められず、単に原料コストが増加することになる。
このような理由から、Zr,Ti及びHfの少なくとも2種以上の含有量を、0.001質量%以上0.5質量%以下に設定している。なお、Zr,Ti及びHfの少なくとも2種以上の含有量が0.005質量%以上となると、微細化効果が顕著となり、さらに微細化効果を確実に奏功せしめるためには、Zr,Ti及びHfの少なくとも2種以上の含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。
なお、ZrのみをPとともに共添加した場合には、デンドライトの微細化効果が不十分であることから、Ti及びHfのいずれか1種とZrと、Pとを共添加する必要がある。
ここで、Pの含有量[P]と、Zr,Ti及びHfのうち少なくとも2種以上の含有量[Zr,Ti,Hf]との質量比[P]/[Zr,Ti,Hf]が0.1以上200以下の範囲内である場合には、前述したデンドライトの等軸化及び微細化の効果がさらに顕著となる。さらに、この微細化効果を確実に奏功せしめるためには、質量比[P]/[Zr,Ti,Hf]を0.1以上20以下の範囲内に設定することが好ましい。
この第2の実施形態である銅合金においても、第1の実施形態と同様に、洋白と同等の銀白色を呈することになり、自動車用キー、家庭用キー、メダル、遊戯用コイン、食器、装飾部材等の素材として広く使用することができる。
また、P;0.001質量%以上0.5質量%以下、Zr,Ti及びHfのうち少なくとも2種以上;0.001質量以上0.5質量%以下、を含有していることから、晶出するデンドライトが等軸化及び微細化することになる。よって、凝固の最終段階においても、溶湯の流動性が確保されることになり、大きな引け巣の発生が抑制され、鋳造時の歩留りが大幅に向上することになる。
以上、本発明の実施形態である銅合金について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、Cu,Zn,Ni,Mn,P,Ti,Hf以外の元素を含有するものとして説明したが、これに限定されることはなく、これら以外の元素(Pb,Bi,C,S,Al,Mg)については必要に応じて添加すればよい。
また、Pb,Bi,C,S,Al,Mgは、不可避不純物として混入することもある。この場合、Pb,Bi,C,S,AL,Mgの含有量は、上述の範囲から逸脱していてもよい。
また、銅合金の製造方法の一例について説明したが、製造方法は本実施形態に限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
純度99.99%以上の無酸素銅からなる銅原料を準備し、これをアルミナ坩堝内に装入して、Arガス雰囲気とされた雰囲気炉内において高周波溶解した。得られた銅溶湯内に、各種添加元素を添加して表1及び表2に示す成分組成に調製し、カーボン鋳型に注湯して鋳塊を製出した。なお、鋳込み温度は1100℃とし、鋳塊の大きさは、厚さ約20mm×幅約20mm×長さ約60〜70mmとした。
(外引け評価)
得られた鋳塊を長手方向に沿って半分に切断し、図1に示すように、鋳塊頂部の最底部(最も鋳塊長さが短い部分)から、外引けの底部までの長さを測定した。なお、実際の観察結果を図2及び図3に示す。図2に示すように、不連続に孔部が形成されている場合には、最も底部側の孔部の位置を測定した。
(凝固組織の判定)
図1に示すように、鋳塊の底部から50mmの部分を切断するとともに長手方向に沿って半分に切断した。この縦断面に対して研磨を実施し、硝酸を用いてエッチング処理してマクロ組織を観察した。
また、鋳塊の底部から20mm、側部から10mmの部分から観察試料を採取し、観察面を研磨した。そして、腐食液として硫酸と硝酸の混合液を用いてエッチングを行い、光学顕微鏡にて観察した。
ここで、図4から図7に、マクロ組織及びミクロ組織を観察した例を示す。図4の試料は、柱状晶領域もミクロ観察を行っている。図4に示すマクロ組織では柱状晶領域が大きく、断面の10%を超えている。なお、鋳塊の頂部や底部を除いた中間部(底部より約15mmから約35mm)の断面で評価している。また、ミクロ組織も、柱状晶領域では柱状のデンドライトが観察される。
このような図4に示すマクロ組織、ミクロ組織を有するものは、凝固組織の判定を「×」とした。
図5から図7に示すマクロ組織においては、実質的に柱状晶領域がなく、柱状晶領域が10%以下とされている。また、図5のミクロ組織では等軸デンドライトが晶出している。また、図6のミクロ組織では微細な等軸デンドライトが晶出している。さらに、図7のミクロ組織では粒状結晶が晶出している。
このような図5から図7に示すマクロ組織、ミクロ組織を有するものは、凝固組織の判定を「○」とした。
評価結果を表1及び表2に示す。
Pと、Zr,Ti及びHfとが、共添加されていない比較例1−5では、外引け長さが長く、凝固組織においても結晶粒の微細化は認められなかった。
また、Pと、Zrとを共添加した比較例6では、凝固組織においても結晶粒の微細化が不十分であった。また、外引け長さは、比較例1−5に比べて改善されたものの、不十分であった。
これに対して、Pと、Ti及びHfの少なくとも1種以上、あるいは、Pと、Zr,Ti及びHfの少なくとも2種以上が、共添加された本発明例1−33では、凝固組織が十分に微細化されており、外引け長さも、比較例に比べて大幅に短くなっている。
以上のことから、本発明によれば、鋳造時において大きな引け巣が発生することがなく生産性に優れた銅合金及び鋳造品を提供できることが確認された。

Claims (7)

  1. Cu;47.5質量%以上50.5質量%以下、Ni;7.8質量%以上9.8質量%以下、Mn;4.7質量%以上6.3質量%以下、P;0.001質量%以上0.5質量%以下、Ti及びHfのうち少なくとも1種以上;0.001質量以上0.5質量%以下、を含み、残部がZnと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴とする銅合金。
  2. 請求項1に記載の銅合金において、
    さらに、Zrを含有し、Zr,Ti及びHfの含有量が0.001質量以上0.5質量%以下の範囲内とされていることを特徴とする銅合金。
  3. 請求項1に記載の銅合金において、
    Pの含有量[P]とTi及びHfのうち少なくとも1種以上の含有量[Ti,Hf]との質量比[P]/[Ti,Hf]が、0.1以上200以下であることを特徴とする銅合金。
  4. 請求項2に記載の銅合金において、
    Pの含有量[P]とZr,Ti及びHfのうち少なくとも2種以上の含有量[Zr,Ti,Hf]との質量比[P]/[Zr,Ti,Hf]が、0.1以上200以下であることを特徴とする銅合金。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の銅合金において、
    Pb;0.001質量%以上0.08質量%以下、Bi;0.001質量%以上0.08質量%以下、C;0.0001質量%以上0.009質量%以下、S;0.0001質量%以上0.007質量%以下、から選択された1種以上の元素を含有することを特徴とする銅合金。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の銅合金において、
    Al;0.01質量%以上0.5質量%以下、Mg;0.001質量%以上0.03質量%以下、から選択された1種以上の元素を含有することを特徴とする銅合金。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の銅合金からなることを特徴とする鋳造品。
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