以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、この実施の形態に係る電流検出装置を備えた電動車両の構成の一例を示す概略図である。電動車両は、走行用の駆動源としてのモータ(回転電機)を有する車両である。図1の例では、電動車両は、走行用の駆動源として内燃機関(例えばガソリンエンジン)およびモータを有するハイブリッド車両である。
図1において、電動車両は、内燃機関としてのエンジン10、2つのモータMG1及びMG2、動力分配機構20、バッテリ30、昇圧コンバータ40、インバータ51,52、および制御装置60を有する。
エンジン10は、ガソリンや軽油などの燃料により動力を発生する動力源である。エンジン10は動力分配機構20に連結されており、エンジン10の動力はモータMG1と電動車両の車輪70とに分配される。
この例では、モータMG1,MG2は、発電機としても電動機としても機能し得る発電電動機(モータジェネレータ)である。
図1の例では、モータMG1,MG2は、それぞれ、3相交流同期発電電動機であり、U,V,W相の3つのコイルを備えた固定子と、不図示の回転子とを含む。U,V,W相の3つのコイルの一端は、中性点で互いに接続され、他端はインバータ51,52に接続される。なお、モータMG1,MG2としては同期型以外の方式の発電電動機を用いてももちろんよい。
この例では、モータMG1は、主として発電機として動作する。具体的には、モータMG1は、動力分配機構20により分配されたエンジン10の駆動力によって発電する。モータMG1により発電された電力は、モータMG2の駆動やバッテリ30の充電に利用される。
また、モータMG1は、バッテリ30からの電力の供給を受けて電動機として動作し、エンジン10をクランキングして始動させる。すなわち、モータMG1は、エンジン10を始動させる始動機としても用いられる。
モータMG2は、主として電動機として動作する。具体的には、モータMG2は、バッテリ30に蓄えられた電力およびモータMG1により発電された電力の少なくとも一方により駆動される。モータMG2は減速機80を介して車輪70に連結されており、モータMG2の駆動力は減速機80を介して車輪70に付与される。これにより、モータMG2は、エンジン10をアシストして電動車両を走行させたり、自己の駆動力のみにより電動車両を走行させたりする。
また、モータMG2は、電動車両の回生制動時には、車輪70により回転させられて発電機として動作する。モータMG2により発電された回生電力は、バッテリ30の充電に利用される。
動力分配機構20は、エンジン10の動力をモータMG1と車輪70とに分配する。具体的には、動力分配機構20は、エンジン10とモータMG1とモータMG2とに連結され、これらの間で動力を分配する。例えば、動力分配機構20は、遊星歯車機構として構成される。
バッテリ30は、モータMG1,MG2に電力を供給するための直流電源であり、例えば、ニッケル水素やリチウムイオン等のバッテリや、キャパシタなど、充電可能な蓄電装置である。
昇圧コンバータ40は、バッテリ30からの電圧(すなわち電源電圧)を昇圧して昇圧電圧をインバータ51,52に供給する。また、昇圧コンバータ40は、インバータ51,52から供給される電圧を降圧してバッテリ30を充電する。すなわち、昇圧コンバータ40は、バッテリ30とインバータ51,52との間で電圧変換を行う。
図1の例では、昇圧コンバータ40は、リアクトルL1と、スイッチング素子(例えばIGBT。ただしこれに限るものではない)Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを有する。スイッチング素子Q1,Q2は、インバータ51,52の電源ラインとアースラインとの間に直列に接続される。上アームのスイッチング素子Q1のコレクタは電源ラインに接続され、下アームのスイッチング素子Q2のエミッタはアースラインに接続される。スイッチング素子Q1,Q2の中間点、すなわちスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタの接続点は、電流を流す導体としてのバスバーBCLを介してリアクトルL1の一方端が接続されている。このリアクトルL1の他方端は、バッテリ30の正極に接続される。また、スイッチング素子Q2のエミッタは、バッテリ30の負極に接続される。また、各スイッチング素子Q1,Q2のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD1,D2が配置される。上記リアクトルL1の他方端とアースラインとの間には平滑用コンデンサC1が接続され、スイッチング素子Q1のコレクタとアースラインとの間には平滑用コンデンサC2が接続される。昇圧コンバータ40は、制御装置60からの制御信号に基づき、スイッチング素子Q1,Q2をスイッチング(オン/オフ)することにより電圧変換を行う。
この実施の形態では、昇圧コンバータ40を流れる電流を測定するために、電流センサSCLを設ける。図1の例では、電流センサSCLは、昇圧コンバータ40のスイッチング素子Q1,Q2の中間点とリアクトルL1とを結ぶバスバーBCLに対して設けられ、バスバーBCLを流れる電流ICLを検出する。電流センサSCLは、電流ICLにより誘起された磁界を検出し、磁界に応じた信号(この信号は電流値に対応している)を出力するタイプのセンサである。電流センサSCLは、集磁コアを有しないコア無し(コアレス)タイプのセンサである。なお、バスバーBCL及び電流センサSCLの配置構造の詳細については、後で詳しく説明する。
インバータ51は、昇圧コンバータ40から昇圧電圧を受けてモータMG1を制御する。具体的には、インバータ51は、昇圧コンバータ40から供給される直流電力を3相交流電力に変換し、U,V,W各相のバスバーBU1,BV1,BW1を介してモータMG1に供給し、これによりモータMG1を回転駆動する。また、インバータ51は、モータMG1で発電された交流電力を直流電力に変換して昇圧コンバータ40に供給する。すなわち、インバータ51は、昇圧コンバータ40とモータMG1との間で電力変換を行う。
図1の例では、インバータ51は、電源ラインとアースラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相のアームを含んで構成される。U相アームはスイッチング素子Q11,Q12の直列接続からなり、V相アームはスイッチング素子Q13,Q14の直列接続からなり、W相アームはスイッチング素子Q15,Q16の直列接続からなる。スイッチング素子Q11〜Q16は、例えばIGBT(ただしこれに限るものではない)である。各スイッチング素子Q11〜Q16のコレクタ−エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すダイオードD11〜D16が配置されている。U相アームのスイッチング素子Q11,Q12の中間点は、バスバーBU1を介してモータMG1のU相コイルに接続され、V相アームのスイッチング素子Q13,Q14の中間点はバスバーBV1を介してモータMG1のV相コイルに接続され、W相アームのスイッチング素子Q15,Q16の中間点はバスバーBW1を介してモータMG1のW相コイルに接続される。インバータ51は、制御装置60からの制御信号に基づき、スイッチング素子Q11〜Q16をスイッチング(オン/オフ)することにより電力変換を行う。
この例では、インバータ51とモータMG1を結ぶ3本のバスバーBU1,BV1,BW1のうちの2本のバスバーBU1,BW1に対して、それぞれ、電流センサSU1,SW1が装着されている。電流センサSU1,SW1は、それぞれバスバーBU1,BW1に対して設けられ、バスバーBU1,BW1を流れる電流IU1,IW1を検出する。ここで用いられる電流センサSU1,SW1は、電流IU1,IW1により誘起された磁界を検出し、磁界に応じた信号(この信号は電流値に対応している)を出力するタイプのセンサである。電流センサSU1,SW1は、集磁コアを有するコア有りタイプのものである。なお、バスバーBU1,BW1、及び電流センサSU1,SW1の配置構造の詳細については、後で詳しく説明する。
インバータ52は、昇圧コンバータ40から昇圧電圧を受けてモータMG2を制御する。具体的には、インバータ52は、昇圧コンバータ40から供給される直流電力を3相交流電力に変換してモータMG2に供給し、これによりモータMG2を回転駆動する。また、インバータ52は、モータMG2で発電された交流電力を直流電力に変換して昇圧コンバータ40に供給する。すなわち、インバータ52は、昇圧コンバータ40とモータMG2との間で電力変換を行う。
図1の例では、インバータ52は、電源ラインとアースラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相のアームを含んで構成される。U相アームはスイッチング素子Q21,Q22の直列接続からなり、V相アームはスイッチング素子Q23,Q24の直列接続からなり、W相アームはスイッチング素子Q25,Q26の直列接続からなる。スイッチング素子Q21〜Q26は、例えばIGBTである。各スイッチング素子Q21〜Q26のコレクタ−エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すダイオードD21〜D26が配置されている。U相アームのスイッチング素子Q21,Q22の中間点はバスバーBU2を介してモータMG2のU相コイルに接続され、V相アームのスイッチング素子Q23,Q24の中間点はバスバーBV2を介してモータMG2のV相コイルに接続され、W相アームのスイッチング素子Q25,Q26の中間点はバスバーBW2を介してモータMG2のW相コイルに接続される。インバータ52は、制御装置60からの制御信号に基づき、スイッチング素子Q21〜Q26をスイッチング(オン/オフ)することにより電力変換を行う。
この例では、インバータ52とモータMG2を結ぶ3本のバスバーBU2,BV2,BW2のうちの2本のバスバーBU2,BW2に対して、それぞれ、電流センサSU2,SW2が装着されている。電流センサSU2,SW2は、それぞれバスバーBU2,BW2に対して設けられ、バスバーBU2,BW2を流れる電流IU2,IW2を検出する。ここで用いられる電流センサSU2,SW2は、電流IU2,IW2により誘起された磁界を検出し、磁界に応じた信号(この信号は電流値に対応している)を出力するタイプのセンサである。電流センサSU2,SW2は、集磁コアを有するコア有りタイプのものである。なお、バスバーBU2,BW2、及び電流センサSU2,SW2の配置構造の詳細については、後で詳しく説明する。
制御装置60は、昇圧コンバータ40およびインバータ51,52を制御して、モータMG1,MG2の動作を制御する。制御装置60は、一つの態様では、ハードウェア資源とソフトウェアとの協働により実現され、例えば電子制御ユニット(ECU: Electronic Control Unit)である。具体的には、制御装置60の機能は、ROM(Read Only Memory)等の記録媒体に記録された制御プログラムがメインメモリに読み出されてCPU(Central Processing Unit)により実行されることによって実現される。上記制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されることも可能であるし、データ信号として通信により提供されることも可能である。ただし、制御装置60は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。また、制御装置60は、物理的に1つの装置により実現されてもよいし、複数の装置により実現されてもよい。例えば、制御装置60は、エンジン10を制御するエンジンECUと、モータMG1,MG2を制御するモータECUと、これらを制御するハイブリッドECUとにより実現されてもよい。
制御装置60には、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサからのアクセル開度や、車速センサからの車速Vなど、制御に必要なデータが入力される。制御装置60は、アクセル開度や車速などのデータに基づき、車輪70に出力すべき要求トルクを算出し、この要求トルクに対応する要求動力が車輪70に出力されるように、エンジン10およびモータMG1,MG2を運転制御する。
また、制御装置60には、各電流センサSCL,SU1,SW1,SU2,SW2が検出した電流値ICL,IU1,IW1,IU2,IW2が入力される。制御装置60は、それら各電流センサから供給される電流値の信号に基づき、昇圧コンバータ40,インバータ51及び52を制御するための制御信号を生成し、それら制御信号を昇圧コンバータ40,インバータ51及び52に供給する。従来の電動車両における駆動電力系では、一般に昇圧コンバータを流れる電流は監視していなかった。これに対し、この実施の形態では、制御装置60は、特に電流センサSCLが検出した昇圧コンバータ40を流れる電流ICLも考慮して、昇圧コンバータ40,インバータ51及び52を制御する。これにより、昇圧コンバータ40のスイッチング素子Q1,Q2を流れる電流を従来よりも精密に制御することが可能になる。また、スイッチング素子Q1,Q2を流れる電流を従来よりも精密に制御することで、コンデンサC1及びC2の間の電圧変動を抑えることも可能になる。この点に関し、従来は、スイッチング素子Q1,Q2を流れる電流の制御がそれほど精密ではなかったので、ある程度大きな安全率を採用し、使用するスイッチング素子Q1,Q2として許容電流量及び耐圧がある程度大きいものを用いていた。これに対し、この実施の形態では、スイッチング素子Q1,Q2として許容電流量又は耐圧又はその両方が従来よりも小さい素子を用いたとしても、その許容電流量及び耐圧を超えないよう、スイッチング素子Q1,Q2を流れる電流を精密に制御できる。スイッチング素子Q1,Q2として許容電流量又は耐圧又はその両方が従来よりも小さい素子を用いれば、コスト削減が可能になる。
図2に、この実施の形態の電流検出装置の一例を示す。図2の上段(a)は、バスバー群に装着された電力検出装置をバスバーの延びる方向に垂直な面で切断した状態を示す模式的な断面図であり、下段(b)は、その電流検出装置を(a)の断面図における上方から見た状態を模式的に示す図である。図2は、バスバーBU1,BV1,BW1,BU2,BV2,BW2及びBCLの全延長のうち、この実施の形態の電流検出装置が装着される部分を示している。
図2の例では、モータMG1用のバスバーBU1,BV1,BW1及びモータMG2用のバスバーBU2,BV2,BW2は、同一の略平面上に配置されており、同一の方向A(図2の(b)に矢印で示す)に沿って互いに平行に延びている。モータMG1用のバスバーBU1,BV1,BW1は、それらバスバー自身が配列される略平面内において方向Aに対して垂直な方向に沿って図示のように左からBU1,BV1,BW1の順に並んでいる。すなわち、バスバーBU1及びBW1はそれら3本一組のバスバーの両端に位置し、バスバーBV1はそれらバスバーBU1及びBW1の間に位置する。モータMG2用のバスバーBU2,BV2,BW2も同様の順序で配列されている。
また、モータMG1用の右端のBW1とモータMG2用の左端バスバーBU2との間の間隔に、それらバスバーと同一の略平面内にて同一方向Aに向かって、昇圧コンバータ40のスイッチング素子Q1,Q2とリアクトルL1とを結ぶバスバーBCLが延びている。
図2に示した部分は、バスバー群の全延長のうちの電流検出装置を装着する部分のみである。図示した部分以外では、バスバーBU1,BV1,BW1,BU2,BV2,BW2,及びBCLは、同一の略平面上に配置されていなくてもよいし、同一の方向に沿って互いに平行に延びていなくてもよい。
なお、バッテリ30と昇圧コンバータ40の下アームのスイッチング素子Q2のエミッタとバッテリ30の負極とを結ぶ導体(バスバーでもよい)は、バスバーBCL上に設けられたコアレスの電流センサSCLの近傍を通らない経路に配置されている。これにより、その導体を流れる電流による磁界が電流センサSCLに干渉することを防いでいる。
MG1用のバスバーBU1,BV1,BW1の電流を測定するために、図2の例では、3つのバスバーのうちの両端のバスバーBU1及びBW1に対し、電流センサSU1及びSW1が装着されている((a)参照)。より詳しくは、(b)に示すように、U相のバスバーBU1に対して、当該バスバーの延びる方向に並んだ2つの電流センサSU11,SU12が設けられている。すなわち、電流センサSU1は、2つの電流センサSU11,SU12から構成されている。これら2つの電流センサSU11,SU2は、バスバーBU1を取り囲む集磁コアCU1に設けられた間隙(ギャップ)内に配設されている。電流センサSU11,SU12は、バスバーBU1に流れる電流により誘起される磁界を検出し、検出した磁界に応じた信号を出力する。またW相のバスバーBW1に対して同様に2つの電流センサSW11,SW12が設けられている。すなわち、電流センサSW1は、2つの電流センサSW11,SW12から構成されている。それら電流センサSW11,SW12は、バスバーBW1を取り囲む集磁コアCW1の間隙内に配設されている。集磁コアCU1及びCW2は略C字型の電磁コアである。そして、V相のバスバーBV1には電流センサは設けられていない。
電流センサSU11,SU12,SW11,SW12は、基板200に対して電気的に接続されている。基板200上には、例えば電流測定回路(図示省略)が設けられており、この電流測定回路は、電流センサSU11,SU12,SW11,SW12から入力される信号に基づき、バスバーBU1,BV1,BW1を流れる電流を求める。U相(バスバーBU)の電流は、電流センサSU11,SU12の信号から求められ、W相(バスバーBW)の電流は、電流センサSW11,SW12の信号から求められる。V相(バスバーBV)の電流は、U及びW相の電流測定値を用いて、3相の電流の総和が0になるという原理に基づき計算される。
各電流センサSU11,SW12,SU21,SW22は、バスバーBU1,BW1,BU2,BW2に流れる電流により誘起される磁界をそれぞれ検出し、検出した磁界に応じた信号を出力する。電流センサSU11,SW12,SU21,SW22は、例えば磁気センサ(ホール素子等)を用いた非接触型の電流センサである。
例えば、MG1用のバスバーBU1を流れる電流により誘起された磁界は、バスバーBU1の延びる方向Aに垂直な面内でバスバーBU1を循環する場を形成しており、集磁コアCU1はこのような磁界を集めて電流センサSU11及びSU12に導く。また集磁コアCU1は、隣のバスバーBV1の電流による磁界が電流センサSU11及びSU12に干渉することを防止するシールドの役目も果たす。同様に、バスバーBW1を流れる電流により誘起された磁界Fは、方向Aに垂直な面内でバスバーBW1を循環する場を形成しており、集磁コアCW1はこのような磁界Fを集めて電流センサSW11及びSW12に導くとともに、電流センサSW11及びSW12への他のバスバーからの磁気干渉を遮蔽するシールドとなる。また、同様に、集磁コアCU2は、バスバーBU2を流れる電流により誘起された磁界F'を集磁して電流センサSU21及びSU22に導くとともに、電流センサSU21及びSU22への他のバスバーからの磁気干渉を遮蔽するシールドとなる。集磁コアCW2は、バスバーBW2を流れる電流により誘起された磁界を集磁して電流センサSW21及びSW22に導くとともに、電流センサSW21及びSW22への他のバスバーからの磁気干渉を遮蔽するシールドとなる。
この構成では、1本のバスバーBU1に対して設けられた2つの電流センサSU11及びSU12は同じバスバーの電流を測定するので、異常が生じていなければ、同じレベルの信号を出力する。バスバーBW1に対して設けられた2つの電流センサSW11及びSW12についても同様である。そこで、基板200上の電流測定回路又は制御装置60は、同じバスバーに設けられた2つの電流センサの出力同士を比較し、両者の差が許容値以上であれば、そのバスバーに設けられた電流検出装置(すなわちバスバーの延びる方向に並んだ2つの電流センサの組)に異常が生じていると判定する。
以上では、MG1用のバスバーBU1〜BW1を流れる電流の検出のための構成について説明したが、MG2用のバスバーBU2〜BW2についても同様の電流検出のための構成が設けられている。すなわち、3つのバスバーのうちの両端のバスバーBU2及びBW2に対し、電流センサSU2及びSW2が装着されている。(b)に示すように、電流センサSU2はバスバーBU2の延びる方向に並んだ2つの電流センサSU21,SU22から、電流センサSW2はバスバーBW2の延びる方向に並んだ2つの電流センサSW21,SW22から、それぞれ構成されている。そして、電流センサSU21,SU22は、バスバーBU2を取り囲む集磁コアCU2に設けられた間隙に、電流センサSW21,SW22は、バスバーBW2を取り囲む集磁コアCW2に設けられた間隙に、それぞれ配設されている。各電流センサSU21,SU22,SW21,SW22は基板200上の電流測定回路に接続されており、この電流測定回路は、電流センサSU11,SU12,SW11,SW12から入力される信号に基づき、バスバーBU1,BV1,BW1を流れる電流を求める。電流測定回路又は制御装置60は、同じバスバーに設けられた2つの電流センサの出力同士を比較し、MG2用の電流検出装置に異常がないかどうかを判定する。
また、図2の例では、バスバーBW1とバスバーBU2との間を通るバスバーBCLに対して、電流センサSCLが配設されている。電流センサSCLは、集磁コアを持たない、コア無し(コアレス)タイプのセンサである。電流センサSCLは、例えば磁気センサ(ホール素子等)を用いた非接触型の電流センサであり、バスバーBCLを通る電流により誘起された磁界を検出し、その磁界に応じた信号を出力する。すなわち、バスバーBCLを通る電流により、バスバーBCLに垂直な面内を通る、バスバーBCL回りの磁界が生じるが、電流センサSCLはこの磁界を検出する。電流センサSCLは、基板200に対して電気的に接続されており、その基板200上の電流測定回路又は制御装置60は、その電流センサSCLから入力される信号に基づき、バスバーBCLを流れる電流の値を求める。
図2の例では、電流センサSU11及びSU12及び集磁コアCU1からなる検出ユニット,電流センサSW11及びSW12及び集磁コアCW1からなる検出ユニット,電流センサSU21及びSU22及び集磁コアCU2からなる検出ユニット,並びに、電流センサSW21及びSW22及び集磁コアCW2からなる検出ユニットは、バスバーBU1,BV1,BW1,BU2,BV2,BW2の延びる方向Aについて、同じ位置に配設されている。そして、方向Aについての電流センサSCLの配設位置は、図2の(b)に示すように、その方向Aについてのそれら検出ユニットの配設位置と同じ位置となっている。このため、バスバーBCLの両隣のバスバーBW1及びBU2のうち、コア無しの電流センサSCLと方向Aについて同じ位置(及びその近傍)の部分は、集磁コアCW1及びCU2でそれぞれ取り囲まれている。このような配置によれば、バスバーBW1及びBU2を流れる電流により誘起される磁界は、それぞれ集磁コアCW1及びCU2により遮られるので、コアなしの電流センサSCLにはほとんど届かない。同様に、バスバーBU1及びBW2上の電流により生じる磁界は、集磁コアCU1及びCW2によりそれぞれ遮蔽されるので、電流センサSCLにはほとんど届かない。
また、バスバーBV1及びBV2には集磁コアが設けられていない。しかし、これらバスバーBV1及びBV2は、バスバーBW1及びBU2よりも電流センサSCLからの距離が遠い(例えば2倍程度)ので、バスバーBV1及びBV2上の電流により生じる磁界による電流センサSCLへの干渉は、仮にあったとしても、バスバーBW1及びBU2からの磁気干渉に比べてそもそも小さい。更には、バスバーBV1及びBV2上の電流により生じる磁界は、それぞれその隣のバスバーBW1及びBU2に設けられた集磁コアCW1及びCU2によりその大部分が集磁されてしまうため、電流センサSCLには殆ど届かない。このように、集磁コアCW1及びCU2は、バスバーBV1及びBV2からの磁気干渉を遮蔽する部材としても機能する。
以上に説明したように、図2に例示した配置構成によれば、MG1,MG2用の各バスバーからの電流センサSCLへの磁気干渉は、集磁コアCW1及びCU2により遮蔽される。したがって、電流センサSCLとしてコア無しセンサを用いたとしても、他のバスバーからの磁気干渉をほとんど受けることなく、バスバーBCLを流れる電流を精度よく測定することができる。
図2の電流センサ配置構成を適用する場所の具体例を、図3に示す。図3の例では、電流センサ群は、ハイブリッド車両のパワーモジュール100と各バスバーとの接続部分の近傍に設けられる。
図3では、(a)がパワーモジュール100を上面側から、すなわち当該モジュール内に設けられる主基板(各種の素子が搭載される基板。図示省略)の面に対して垂直な方向から見た状態を模式的に示している。(b)はパワーモジュール100を、パワーモジュール100からバスバーBU1,BV1等が延び出す側から見た状態を模式的に示す側面図である。また、(c)は、パワーモジュール100を、バスバーBW2側の方向から見た状態を模式的に示す側面図である。図3の例では、パワーモジュール100内では、MG1用のインバータ部51、昇圧コンバータ部40及びMG2用のインバータ部52が図中左から順に並んでいる。MG1用のインバータ部51の側面からはバスバーBU1,BV1,BW1が、昇圧コンバータ部40の側面からはバスバーBCLが、MG2用のインバータ部52の側面からはバスバーBU2,BV2,BW2が、それぞれ延び出している。(c)に示すように、この例では、各バスバーBU1,BV1,BW1,BU2,BV2,BW2,BCLは、パワーモジュール100の側面から主基板の面に沿った方向に延び出し、L字上に屈曲して主基板に垂直な同一方向に延びている。そして、(b)及び(c)に示すように、それらバスバーBU1,BW1,BU2,BW2,BCLのうちの同じ高さの領域110内の部分に、電流センサSU1,SW1,SU2,SW2,SCLを配設する。
なお、昇圧コンバータ部40から出るバスバーBCL以外の配線(すなわち図1でバッテリ30の負極とスイッチング素子Q2のエミッタとを結ぶ配線)は、電流センサSCLに対して磁気干渉を起こす位置を通らないように配設する。例えば、そのような配線は、昇圧コンバータ部40のうちバスバーBCLが延び出す側面とは逆の側面から延び出るようにしてもよい。これにより、その配線とバスバーBCLとの距離は非常に遠くなるので、その配線から電流センサSCLへの磁気干渉は極めて小さくなる。また、その配線が、昇圧コンバータ部40のうちバスバーBCLが延び出す側面と同じ側面から延び出る場合でも、例えばその配線がバスバーBCLとは逆向きに延びるように配設することで、その配線が電流センサSCLの近傍を通らないようにしてもよい。
また、図3は、バスバーBU1,BV1,BW1,BU2,BV2,BW2,BCLのうち、パワーモジュール100の近傍の部分のみを示したものである。図3に図示されない場所では、バスバーBU1,BV1,BW1,BU2,BV2,BW2,BCLは、図3に示したような配置関係となっていなくてもよい。
また、図3のようにバスバーBU1,BW1,BU2,BW2,BCLのうちパワーモジュール100の近傍の部分に電流センサを配設するのはあくまで一例に過ぎない。
以上に説明した図2の例では、MG1,MG2用の3本ずつのバスバーのうち、それぞれその両端のバスバーBU1及びBW1,BU2及びBW2に集磁コア付きの電流センサを設けたが、これは一例に過ぎない。重要なのは、電流センサSCLに最も近い位置にあるバスバーBW1及びBU2に対して集磁コアCW1及びCU2が設けられることである。これら最近傍の位置にあるバスバーに集磁コアを設ければ、それより遠い位置にあるバスバーからの磁界は、それら最近傍の集磁コアによりそれぞれ集磁され、電流センサSCLへはほとんど干渉しなくなる。したがって、図2の構成以外にも、例えばバスバーBV1及びBW1,BU2及びBV2に集磁コア付きの電流センサを設ける構成を採用してもよい。
上述のように、図2の例では、電流センサSCLに対する左右からの磁気干渉は、集磁コアCW1及びCU2によりそれぞれ効果的に遮蔽される。なお、図2の例では、(a)にて電流センサSCLの上又は下方向について電流センサSCLの近傍には、電流センサSCLへ磁気干渉を起こすような配線は設けられていないものとする。電動車両の場合、電流センサSCLの精度に悪影響を与えるほど大きな磁気干渉の懸念のある大電流が流れる配線は、図2に示したバスバーBU1,BV1,BW1,BU2,BV2,BW2,BCLの他には、上述したバッテリ30の負極とスイッチング素子Q2のエミッタとを結ぶ配線ぐらいしかないので、この配線が電流センサSCLの上下の近傍を通らないように配置構成を定めておけば、そのような上下方向からの磁気干渉も実質的に防止される。
図2の例では、各集磁コアCU1,CW1,CU2、CW2は、バスバーの延びる方向Aについて同じ位置に配置されたが、これは必須ではない。電流センサSCLの最近傍のバスバーBW1及びBU2に対して設けられる集磁コアCW1及びCU2の方向Aについての存在範囲が互いに重複しており、方向Aについてその重複範囲内の位置に電流センサSCLが配置されていればよい。このような配置構成であれば、最近傍のバスバーBW1及びBU2のみならず、それらより遠い各バスバーBU1,BV1,BV2,BW2からの磁界もそれら集磁コアCW1及びCU2により遮蔽又は集磁されるので、電流センサSCLにはほとんど干渉しない。バスバーBU1及びBW2に設けられる集磁コアCU1及びCW2の方向Aについての配置位置は、集磁コアCW1及びCU2の配置位置とずれていてもよい。ただし、図示のようにすべての集磁コア及び電流センサが方向Aについて同一の位置にある構成を採用すれば、基板200も含めた電流検出装置全体の構成をコンパクトにすることができる。
次に、図4を参照して、変形例を説明する。図4において、図2に示した構成要素と同様の構成要素には同一符号を付した。
図4の例におけるMG1用及びMG2用のバスバーBU1,BV1,BW1,BU2,BV2,BW2の配置は、図2の例と同様である。図4の例が図2の例と異なるのは、MG1用及びMG2用のバスバー群に対する、バスバーBCL及び電流センサSCLの位置関係である。
すなわち、図2の例では、MG1用のバスバー組とMG2用のバスバー組の間、すなわちバスバーBW1とバスバーBU2との間にバスバーBCLが配設されていたのに対し、図4の例では、MG1用のバスバー組の図中左端BU1の更に左側、すなわちMG1用のバスバー組の両隣のうちMG2用のバスバー組から遠い側の位置に、バスバーBCLが設けられる。そして、そのバスバーBCLを通る電流を計測するために、コア無しの電流センサSCLが、バスバーBCLに対して設けられている。バスバーの延びる方向Aについての電流センサSCLの配置位置は、MG1用及びMG2用のバスバーに設けられる各集磁コアの方向Aについての配置位置と実質的に同じ位置である。
図4の電流センサ配置構成を適用する場所の具体例を、図5に示す。図5は、図3と同様、パワーモジュール100を3方向から見た状態を模式的に示しており、図5に示す構成要素のうち図3の構成要素と同様の構成要素には同一符号を付す。
図5の例では、分図(a)での左方向から順に昇圧コンバータ部40,MG1用インバータ部51,及びMG2用インバータ部52が並んでいる。そして、それら昇圧コンバータ部40,MG1用インバータ部51,及びMG2用インバータ部52の側面からそれぞれ対応するバスバーがL字状に延び出しており、それら同一平面内を同一方向に延びるバスバーのうち同じ高さの領域110内に、各電流センサSCL,SU1,SW1,SU2,SW2が設けられている。
図4及び図5の例では、電流センサSCLに対する最も近いバスバーBU1からの磁気干渉は、集磁コアCU1により遮蔽される。また、それよりも遠い各バスバーBV1,BW1,BU2,BV2,BW2を流れる電流により生じた磁界は、その磁気コアCU1の集磁作用により、電流センサSCLへはほとんど届かない。また、各バスバーBW1,BU2,BW2から発せられる磁界は、それぞれに設けられた集磁コアCW1,CU2,CU2によっても遮蔽され、電流センサSCLには届かない。
以上に説明した図4の例では、MG1,MG2用の3本ずつのバスバーのうち、それぞれその両端のバスバーBU1及びBW1,BU2及びBW2に集磁コア付きの電流センサを設けたが、これは一例に過ぎない。重要なのは、電流センサSCLに最も近い位置にあるバスバーBU1に対して集磁コアCW1が設けられることである。最近傍の位置にあるバスバーに集磁コアを設ければ、それより遠い位置にあるバスバーからの磁界は、それら最近傍の集磁コアによりそれぞれ集磁され、電流センサSCLへはほとんど干渉しなくなる。したがって、最近傍のバスバーBU1に対して集磁コア付きの電流センサを設ければ、後はMG1用及びMG2用のどのバスバーに対して集磁コア付きの電流センサを設けても構わない。
なお、図4の例では、分図(a)における電流センサSCLの左、上又は下方向についての電流センサSCLの近傍には、電流センサSCLへ磁気干渉を起こすような配線は設けられていないものとする。電動車両の場合、電流センサSCLの精度に悪影響を与えるほど大きな磁気干渉の懸念のある大電流が流れる配線は、上述したバッテリ30の負極とスイッチング素子Q2のエミッタとを結ぶ配線ぐらいしかないので、この配線が電流センサSCLの近傍を通らないように配線構成を定めておけば、MG1,MG2用の以外の配線からの磁気干渉も実質的に防止される。
図4の例では、各集磁コアCU1,CW1,CU2、CW2は、バスバーの延びる方向Aについて同じ位置に配置されたが、これは必須ではない。電流センサSCLの方向Aについての配置位置が、最近傍のバスバーBU1に対して設けられる集磁コアCU1の方向Aについての存在範囲内に入っていればよい。このような配置構成であれば、最近傍のバスバーBU1のみならず、それらより遠い各バスバーBV1,BW1,BU2,BV2,BW2からの磁界もそれら集磁コアCU1により遮蔽又は集磁されるので、電流センサSCLにはほとんど干渉しない。このように、集磁コアCW1,CU2,CW2の方向Aについての配置位置は、集磁コアCU1の方向Aについての配置位置とずれていてもよい。ただし、図示のようにすべての集磁コア及び電流センサが方向Aについて同一の位置にある構成を採用すれば、基板200も含めた電流検出装置全体の構成をコンパクトにすることができる。
以上に説明したように、この実施の形態によれば、昇圧コンバータ40内を流れる電流を検出する電流センサとしてコア無しの電流センサSCLを用いつつも、MG1用及びMG2用のバスバーを流れる電流からその電流センサへの磁気干渉を防止することができる。コア無しの電流センサSCLを用いることは、コスト削減に繋がる。