本発明ついて詳細に説明する。
[光塩基発生剤]
本発明は、下記式(1):
{式中、R1はπ電子を有する有機基を表し、R2及びR3は各々独立に有機基を表し、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは電子吸引性の置換基を有しており、R2とR3とは連結していてもよい。}
で表される化合物を含有することを特徴とする、光塩基発生剤を提供する。本発明の光塩基発生剤は、上記式(1)で表される、アシルオキシイミノ骨格を主骨格に有する化合物を含有する。
上記式(1)で表される化合物は、アシルオキシイミノ骨格を主骨格に有するため、波長200nm〜500nmの光によって良好に分解して塩基を発生させることが出来る。加えて、上記式(1)で表される化合物は電子吸引性の置換基を有するため、耐熱安定性、及び酸性物質存在下での安定性に優れる。すなわち、上記式(1)で表される化合物は電子吸引性の置換基を有するので、例えば従来の光塩基発生剤と比べ、耐熱安定性、及び酸性物質存在下での安定性が向上している。これは、電子吸引性置換基の効果により、アシルオキシイミノ基が電子不足の状態となり、アシルオキシイミノ基に含まれるアシル基の脱離が抑制される為と推定される。
本発明の光塩基発生剤による耐熱安定性の改善は、本発明に係る光塩基発生剤を含む感光性樹脂組成物を用いて形成した感光性フィルム(感光性樹脂組成物層)に、現像処理、及びその後の加熱処理による熱硬化(キュア)(以下、単にキュアとも表記する)を施した際に、フィルムの物性低下を引き起こさないという顕著な効果を奏する。
上記式(1)中、R1は、光吸収の観点からπ電子を有する有機基である。R1としては、特に制限はないが、光吸収の観点から、芳香族基が好ましい。特に、R1は、下記式(2)〜(5):
のいずれかで表される、π電子を有する芳香族骨格を有する有機基であることが好ましい。中でも光吸収の観点から、R1は、上記式(4)及び式(5)で表される芳香族骨格を有する有機基であることが好ましい。これは、ベンゾフェノン骨格が、長波長の光を吸収できるためである。
また、好ましいR1として、式(6)〜(9):
{式中、R4はジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、エステル基、トリフルオロメチル基、フッ素基及びクロロ基からなる群から選ばれる電子吸引性の置換基を表し、同一分子内に複数存在する場合のR4は同じでも互いに異なっていてもよい。}
のいずれかで表される、芳香族骨格を有する有機基が挙げられる。これらの有機基は、電子吸引性の置換基の存在により、耐熱安定性、及び酸性物質存在下での安定性の向上効果を与える。
上記式(1)中のR2は、揮発抑制の観点から有機基である。R2は、π電子を有さない有機基又はπ電子を有する有機基であることができる。
R2において、π電子を有さない有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、フェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びシクロヘキシル基、並びにこれらの基における水素の少なくとも1つが電子吸引性の置換基等の置換基で置換されたもの等が挙げられる。
また、R2において、π電子を有する有機基としては、特に制限はないが、光吸収の観点から、芳香族基が好ましい。例えば、前述の式(2)〜(5)のいずれかで表される、π電子を有する芳香族骨格を有する有機基が挙げられる。中でも光吸収の観点から、R2は、上記式(4)及び(5)で表される芳香族骨格を有する有機基であることが好ましい。これは、ベンゾフェノン骨格が、長波長の光を吸収できるためである。
また、好ましいR2としては、上記式(6)〜(9)で表される、芳香族骨格を有する有機基が挙げられる。これらの有機基は、電子吸引性の置換基の存在により、耐熱安定性、及び酸性物質存在下での安定性の向上効果を与える。
本発明においては、耐熱安定性、及び酸性物質存在下での安定性が特に良好であるという観点から、R1及びR2のうち少なくとも1つが、上記式(6)〜(9)のいずれかで表される、π電子を有する有機基であることが好ましい。
R3は、露光後に光塩基発生剤から生じる塩基性化合物の塩基性の観点から有機基である。R3において、有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、フェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びシクロヘキシル基、並びにこれらの基における水素の少なくとも1つが電子吸引性の置換基等の置換基で置換されたもの等が挙げられる。
R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは電子吸引性の置換基を有していることが好ましい。電子吸引性の置換基は、特に制限はないが、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、エステル基、トリフルオロメチル基、フルオロ基及びクロロ基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これは、電子吸引性の置換基の効果により、耐熱安定性、及び酸性物質存在下での安定性が向上するためである。
式(1)中のR2とR3とは、各々独立していても構わないが、連結している方がより好ましい。R2とR3とが連結している場合、アシルオキシイミノ基が環状構造内に含まれているため、光による解裂で生成するラジカル種同士が共有結合で結ばれており、副生成物が遊離しないためである。さらに、光による開裂後発生するラジカル種同士が共有結合で結ばれている光塩基発生剤においては、ラジカル再カップリングの効率が非環状型の光塩基発生剤より高くなり、それにより塩基の発生効率を向上させることが可能となるからである。
本発明においては、耐熱安定性及び酸性物質存在下での安定性の向上の観点、副生成物の遊離の抑制の観点、並びに塩基の発生効率の向上の観点から、上記式(1)で表される化合物が、下記式(10):
{式中、R4はジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、エステル基、トリフルオロメチル基、フッ素基及びクロロ基からなる群から選ばれる電子吸引性の置換基を表す。}
で表される化合物であることが特に好ましい。
本発明の光塩基発生剤は、上記式(1)で表される化合物のみで構成されていてもよいし、式(1)で表される化合物と公知の光塩基発生剤とで構成されていてもよい。公知の光塩基発生剤としては、例えば、非環状のアシルオキシイミノ化合物、非環状のカルバモイルオキシム化合物、カルバモイルヒドロキシルアミン化合物、カルバミン酸化合物、ホルムアミド化合物、アセトアミド化合物、カルバメート化合物、ベンジルカルバメート化合物、ニトロベンジルカルバメート化合物、スルホンアミド化合物、イミダゾール誘導体化合物、アミンイミド化合物、ピリジン誘導体化合物、α−アミノアセトフェノン誘導体化合物、4級アンモニウム塩誘導体化合物、α−ラクトン環誘導体化合物、アミンイミド化合物、フタルイミド誘導体化合物等を用いることができる。中でも比較的アミンの発生効率が高いアシルオキシイミノ化合物が好ましい。
光塩基発生剤の耐熱性及び酸性物質存在下での安定性の観点からは、公知の光塩基発生剤の使用量は少ない方が好ましい。本発明の光塩基発生剤中の、式(1)で表される化合物の含有量は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。特に、上記含有量が90質量%以上である場合、光塩基発生剤の耐熱性及び酸性物質存在下での安定性が良好である。一方、上記含有量が80質量%以下である場合、公知の光塩基発生剤を併用することによるポリアミド酸の効率的イミド化という利点が得られる。
本発明の光塩基発生剤は、200nm〜500nmの範囲内のいずれかの波長を有する光に対する吸収を有することが好ましい。この場合、約200〜約500nmの範囲の複数の波長の光を発する高圧水銀灯の光を直接吸収し、塩基を効率よく発生させることができる。なお、光塩基発生剤が200nm〜500nmの範囲内のいずれかの波長を有する光に対する吸収を有するか否かは、UVスペクトル測定において、波長200nm〜500nmの範囲で吸収波長があるか否かによって評価される。
次に本発明に係る光塩基発生剤の合成方法について説明する。本発明に係る光塩基発生剤において、上記式(1)で表される化合物は、例えば、適当なカルボニル基を含有するカルボニル化合物を原料として、置換基の導入、水酸基の脱離、オレフィンの酸化解裂、オキシム化、及び縮合環化の5工程を経て合成可能である。
まず置換基の導入の工程について説明する。原料として、適当なカルボニル基を含有するカルボニル化合物を用い、適当な求核試薬を用いて置換基を導入することができる。カルボニル化合物に、求核試薬を用いて置換基を導入する方法としては、従来公知の任意の方法を採用できる。
カルボニル化合物としては、例えば、1−インダノン、α―テトラロン等が挙げられる。中でも、合成された光塩基発生剤から得られる塩基の安定性の観点から、1−インダノンが好ましい。
求核試薬としては、例えば、p−トリフルオロメチルフェニルマグネシウムブロミド、2,4−ジトリフルオロメチルフェニルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
置換基の導入は、典型的には溶媒中で行う。このとき用いる溶媒には特に制限はないが、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル等の有機溶媒を用いることが可能である。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
次に、水酸基の脱離工程について説明する。この工程では、上記の置換基の導入の工程によって得られた、置換基を有する中間体から、従来公知の任意の方法で水酸基を脱離させることが出来る。
水酸基の脱離は、例えば、p−トルエンスルホン酸、ピリジウムp−トルエンスルホン酸等を上記の中間体と反応させることにより行うことが出来る。
脱離反応は、典型的には溶媒中で行う。このとき用いる溶媒には特に制限はないが、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を用いることが可能である。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
次に、オレフィンの酸化解裂の工程について説明する。この工程では、上記の水酸基の脱離工程によって得られた中間体について、従来公知の任意の方法でオレフィンの酸化解裂を行うことが出来る。オレフィンの酸化解裂は、例えば、過ヨウ素酸ナトリウム、塩化ルテニウム(III)水和物等を用いて行うことが出来る。
酸化解裂反応は、典型的には溶媒中で行う。このとき用いる溶媒には特に制限はないが、アセトニトリル、ヘキサン、塩化メチレン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、水等の溶媒を用いることが可能である。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
次に、オキシム化の工程について説明する。この工程では、上記の酸化解裂工程におけるオレフィンの酸化解裂によって得られた中間体について、従来公知の任意の方法でオキシム化を行うことが出来る。
オキシム化は、例えば、NH2OH水溶液、NH2OH・HCl等を用いて行うことができる。立体障害が大きい置換基を持つケトン化合物をオキシム化する場合は、NH2OH・HClをNaOH存在下で用い、加熱し溶媒を還流させながら反応を行うことが好ましい。
オキシム化反応は、典型的には溶媒中で行う。このとき用いる溶媒には特に制限はないが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、水、酢酸等の極性溶媒を用いることが可能である。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
オキシム化工程を経て得た生成物は、次の縮合環化の工程を効率良く行うために、例えば、シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶等の従来公知の方法によって精製することが好ましい。
次に縮合環化の工程について説明する。縮合環化反応の方法としては、例えば、SOCl2を用いる方法、POCl3を用いる方法、縮合剤を用いる方法等が挙げられる。
SOCl2を用いる場合、縮合環化は、例えば、上記のオキシム化工程により得られた生成物(以下、オキシム体とも表記する)を適当な溶媒中に添加し、あらかじめ同様の溶媒で希釈しておいたSOCl2をこれに徐々に添加することで実施することができる。
POCl3を用いる場合、縮合環化は、例えば、SOCl2を用いる場合と同様に、オキシム体を適当な溶媒中に添加し、あらかじめ同様の溶媒で希釈しておいたPOCl3をこれに徐々に添加することで実施することができる。
SOCl2を用いる場合及びPOCl3を用いる場合に用いる上記の溶媒には特に制限はないが、反応性の観点からエーテル系の溶媒を用いることができる。エーテル系の溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル等が挙げられる。また反応熱による発熱の為、反応は冷却をしながら行うことが好ましい。
縮合環化においては縮合剤を用いてもよい。この場合、縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、2,4,6―トリクロロベンゾイルクロリド、4−トリフルオロメチルベンゾイックアンハイドライド、2−メチル−6ニトロベンゾイックアンハイドライド等を用いることができる。中でも高い反応収率の観点から2,4,6―トリクロロベンゾイルクロリド(以下TCBCと表記する)が好ましい。
縮合剤を用いる場合は、助剤として、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン等を反応液中に添加することができる。反応溶媒には特に制限はないが、反応性の観点からエーテル系、炭化水素系、エステル系等の溶媒を用いることができる。
エーテル系の溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル等が挙げられる。炭化水素系の溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、塩化メチレン等が挙げられる。エステル系の溶媒としては、例えば、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
縮合環化を実施した後は、得られた粗体を精製することが好ましい。例えば、高極性化合物は、粗体を適当な有機溶媒に溶解し、飽和食塩水にてよく洗浄することで除去できる。また、例えば、結晶性の低い化合物は、再結晶法により精製して除去できる。なお、精製の工程にて粗体を強アルカリで洗浄すると、得られた光塩基発生剤が分解する懸念があるため、強アルカリを用いずに精製を行うことが好ましい。
式(1)で表される化合物として、例えば式(11):
で表される化合物を製造する場合には、α−テトラロンを原料として用い、Grignard試薬としてp−トリフルオロメチルフェニルマグネシウムブロミドを用いて、該α−テトラロンに置換基としてフェニル基を導入した後、ピリジウムp−トルエンスルホン酸、過ヨウ素酸ナトリウム、塩化ルテニウム(III)水和物、及びNH2OH・HClを用いたオキシム化を経て、最後にTCBCを縮合剤として用いた縮合環化により、合成することが可能である。下記式(12):
に合成経路を示す。以上、本発明の光塩基発生剤について説明した。
[感光性樹脂組成物]
次に本発明の光塩基発生剤を含む感光性樹脂組成物について説明する。
本発明はまた、(A)前述した本発明の光塩基発生剤、すなわち上記式(1)で表される化合物を含有する光塩基発生剤と、(B1)光塩基発生剤(A)より発生する塩基により反応が促進される化合物(以下、化合物(B1)ともいう)及び(B2)該塩基と反応する化合物(以下、化合物(B2)ともいう)、のうち少なくとも一方と、を含む感光性樹脂組成物を提供する。
本発明は、一態様において、(A)上述した本発明の光塩基発生剤(以下、光塩基発生剤(A)ともいう)と、(B)ポリアミド酸並びにエポキシ基及びチオール基のうち1種以上の基を有する樹脂からなる群から選ばれる感光性樹脂(以下、感光性樹脂(B)ともいう)とを含む、感光性樹脂組成物を提供する。上記感光性樹脂(B)において、ポリアミド酸、並びに、エポキシ基及びチオール基のうち1種以上の基を有する樹脂は、上記化合物(B1)に包含されるものであり、エポキシ基を有する樹脂は、上記化合物(B2)に包含されるものである。感光性樹脂(B)は、上記の各構造を有することにより感光性樹脂として使用できる機能を有する。
感光性樹脂組成物における光塩基発生剤(A)の配合量は、感光性及び硬化後の樹脂の機械的特性を考慮して、感光性樹脂(B)100質量部に対して1質量部〜50質量部であることが好ましい。上記配合量は、より好ましくは2質量部〜30質量部、特に好ましくは3質量部〜20質量部である。
次に、光塩基発生剤(A)より発生する塩基により反応が促進される化合物(B1)について説明する。光塩基発生剤(A)より発生する塩基により反応が促進される化合物(B1)とは、該塩基が触媒として働くことによって反応が進行する化合物を意味する。光塩基発生剤(A)より発生する塩基により反応が促進される化合物(B1)としては、例えば、ポリアミド酸、エポキシ基を有する樹脂、及び、チオール基を有する樹脂とエポキシ基を有する樹脂との混合物が挙げられる。特に好ましくは、塩基により良好にポリイミドへの閉環反応が促進されるポリアミド酸が挙げられる。
上記ポリアミド酸は、例えば、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを原料として得ることができる。ジアミンとしては、具体的には例えば、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタンヘプタン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノ安息香酸、1,2−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジアミノ−3,5−ジヒドロキシベンゼン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、2−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)メタン、4−[(2,4−ジアミノ−5−ピリミジニル)メチル]フェノール、p−(3,6−ジアミノ−s−トリアジン−2−イル)フェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。これらのジアミン成分は、単独又は2種以上組合せて用いることができる。
上記テトラカルボン酸二無水物としては、具体的には例えば、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル、1,3−プロパンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ブタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ヘプタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、デカンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。好ましくは、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、及びデカンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステルが挙げられる。
より好ましくは、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステルとペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステルとの組合せ、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステルとデカンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステルとの組合せ、オキシジフタル酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,5−シクロオクタジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,6−トリカルボン酸−2,3:5,6−二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホン、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物成分は、単独又は2種以上組合せて用いることができる。
上記ポリアミド酸は、上記ジアミンと上記テトラカルボン酸二無水物とを任意の溶媒中にて混合することにより合成でき、ポリアミド酸溶液が得られる。ポリアミド酸の製造方法としては、公知方法を含め、ポリアミド酸を製造可能な任意の方法を適用できる。中でも、有機溶媒中でポリアミド酸を合成することが好ましい。ポリアミド酸の合成において用いられる溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して用いられる。
ポリアミド酸を合成する際の混合物における、ジアミンのテトラカルボン酸二無水物に対するモル比は、0.8〜1.2の範囲内であることが好ましい。この場合、分子量が大きく、伸度等にも優れるポリアミド酸が得られる。上記モル比は、より好ましくは0.9〜1.1である。
化合物(B1)として使用できる、エポキシ基を有する樹脂としては、例えば、エポキシ基を分子中に1つ有する単官能エポキシ化合物、及びエポキシ基を分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物が挙げられる。
単官能エポキシ化合物としては、具体的には例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、等が挙げられる。
多官能エポキシ化合物としては、具体的には例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
化合物(B1)として使用できる、チオール基を有する樹脂としては、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,3,6−ヘキサントリチオール及びその類似物;アルケンチオール類、例えば、2−ブテン−1,4−ジチオール及びその類似物;アルキンチオール類、例えば、3−ヘキシン−1,6−ジチオール及びその類似物が挙げられる。
次に、光塩基発生剤(A)より発生する塩基と反応する化合物(B2)について説明する。該塩基と反応する化合物(B2)とは、該塩基が化合物に直接反応することで反応が進行する化合物を意味する。該塩基と反応する化合物(B2)としては、例えば、エポキシ基を有する樹脂等が挙げられる。特に好ましくは、1級アミン又は2級アミンと良好に反応する樹脂である、エポキシ基を有する樹脂が挙げられる。
エポキシ基を有する樹脂の好ましい例としては、例えば、エポキシ基を分子中に1つ有する単官能エポキシ化合物、及びエポキシ基を分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物が挙げられる。
単官能エポキシ化合物としては、具体的には例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、等が挙げられる。
多官能エポキシ化合物としては、具体的には例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
本発明に係る感光性樹脂組成物は、本発明の効果を逸脱しない範囲内で、既に公知である添加剤を必要に応じて含有することができる。具体的な添加剤としては、光増感剤、難燃剤、可塑剤、密着性向上剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、可塑剤、ワックス類、充填剤、顔料、染料、発泡剤、消泡剤、脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、レベリング剤、分散剤、エチレン性不飽和化合物等が挙げられる。光塩基発生剤の光分解の促進の目的で光増感剤の使用が好適である。また感光性樹脂組成物に難燃性を付与する目的で難燃剤の使用が好適であり、フィルムにした際の低反り性及び低反発性を付与する目的で可塑剤の使用が好適である。
さらに、本発明に係る感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤(A)、感光性樹脂(B)及び必要に応じて使用される既に公知である添加剤を、任意の溶媒中にて混合して得ることができる、感光性樹脂組成物溶液の状態としてもよい。溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール等を使用できる。本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記の溶液の状態で使用される場合を含め、フィルムを形成することが好ましい。該フィルムは、光塩基発生剤(A)、感光性樹脂(B)及び必要に応じて使用される既に公知である添加剤、を上記任意の溶媒中にて混合した後、任意の方法で乾燥させることにより得ることができる。
[感光性樹脂組成物の用途]
次に、本発明に係る感光性樹脂組成物の効果が顕著に得られる具体的な用途について説明する。
本発明に係る感光性樹脂組成物は、好ましくは感光性インク又は感光性フィルムとして使用でき、これらは感光性樹脂組成物からなる層(以下、感光性樹脂組成物層ともいう)を形成できる。本発明に係る感光性樹脂組成物を感光性インク又は感光性フィルムに用いた場合、ネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。本発明に係る感光性樹脂組成物は層間絶縁膜、光導波路等に用いることができる。中でも層間絶縁膜としての利用が好適である。本発明においては、光塩基発生剤(A)の耐熱安定性が改善されていることにより、本発明に係る感光性樹脂組成物を用いたフィルムに対して、現像処理後にキュアを施した際にも、フィルムの物性低下を引き起こすことなくフィルム形成が可能となるからである。
[層間絶縁膜の製造方法]
本発明はまた、基材上に、上述した本発明の感光性樹脂組成物層を形成する感光性樹脂組成物層形成工程と、該感光性樹脂組成物層形成工程の後に、該感光性樹脂組成物層にパターン露光を行う露光工程と、該露光工程の後に、該パターン露光後の該感光性樹脂組成物層を現像する現像工程と、該現像工程の後に、該現像後の該感光性樹脂組成物層を熱硬化させることにより、該感光性樹脂組成物層の硬化体からなる層間絶縁膜を形成する硬化工程とを含む、層間絶縁膜の製造方法を提供する。
<感光性樹脂組成物層形成工程>
本工程においては、基材上に、本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を形成する。典型的な態様において、感光性樹脂組成物を感光性インクの形態で用いる場合には、例えば層間絶縁膜が形成されることになる基板を基材とし、該基材上に感光性樹脂組成物層を形成し、後述の露光工程に供することができる。また、感光性樹脂組成物を感光性フィルムの形態で用いる場合には、例えば後述のようなキャリアフィルムを基材として用い、該基材上に感光性樹脂組成物層を形成した後、これを、層間絶縁膜が形成されることになる基板上に圧着して、後述の露光工程に供することができる。
本発明に係る感光性樹脂組成物を感光性インクとして用いて感光性樹脂組成物層を形成する場合は、感光性樹脂組成物を任意の基材上にスクリーン印刷にて塗布後乾燥させることにより、任意の基材上に、層間絶縁膜を形成するための感光性樹脂組成物層を形成することができる。スクリーン印刷法とは公知の印刷法で、パターンを形成したスクリーン上にスキージ等を用いてインクを通過させて印刷する方法である。
本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて感光性フィルムとして感光性樹脂組成物層を形成する場合、まず、本発明に係る感光性樹脂組成物を、キャリアフィルムである基材にコートし感光性フィルムを作製する。該キャリアフィルムは、感光性フィルム形成の際に損傷しないものであれば、限定されない。
キャリアフィルムの材質としては、例えば、耐熱性樹脂、ポリエチレンテレフタレートフィルム、金属フィルム等が挙げられる。耐熱性樹脂としてはポリイミド等を例示でき、金属フィルムとしては銅箔、アルミ箔等を例示できる。これらの中でも取扱いの良さから、耐熱性樹脂及びポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
本発明に係る感光性樹脂組成物で構成された感光性フィルム(感光性樹脂組成物層)は、キャリアフィルムを具備する積層フィルムに加工することができる。また、この積層フィルムは、カバーフィルムを更に具備していてもよい。
感光性樹脂組成物のキャリアフィルムへのコートは、例えば、バーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、等によって行うことができる。コート後、必要に応じてオーブン、ホットプレート等により加熱処理を行い、溶媒を乾燥させ、キャリアフィルムと、感光性フィルムである感光性樹脂組成物層とを有する積層フィルムを形成できる。
上記カバーフィルムとしては、任意の防汚用及び保護用のカバーフィルムを少なくとも1層設けることができる。カバーフィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン等で形成される任意の防汚用のフィルム及び保護用のフィルムが挙げられる。
以上のようにして作製した感光性フィルムを、配線を有する基板に該配線を覆うように圧着することにより、いわゆる層間絶縁膜を形成するための、感光性樹脂組成物層を形成できる。これにより基板上に層間絶縁膜を備えた回路基板を形成することができる。また、上記の感光性フィルムである感光性樹脂組成物層を形成する際に、キャリアフィルムと感光性フィルムとを備える積層フィルム若しくはこの積層フィルムの上に更にカバーフィルムを備えた積層フィルムを形成し、同様に層間絶縁膜を形成してもよい。尚、本発明における層間絶縁膜とは、具体的には例えば、カバーレイ、ボンディングシート、バッファーコート等を含むことができる。
基材としては、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板等のような硬質基材、あるいはポリイミドフィルム等のフレキシブルな基板等の任意の基材上に配線を有するものが挙げられる。これらの中で、折り曲げ可能の観点からフレキシブルな基板上に配線を有する基材が好ましい。
上記方法によって感光性インク又は感光性フィルムを用いて形成された、任意の基材上に形成された感光性樹脂組成物層には、更に、露光、現像及びキュア等の処理が施される。
一方、すでにフィルム状の感光性フィルムを用いる場合は、前記配線を有する基材の配線側と感光性フィルムを接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネート等を行う方法等が挙げられる。この中で、配線間への感光性フィルムの埋め込みの観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。前記配線を有する基材上に感光性フィルムを積層する際の加熱温度は、感光性フィルムが基材に密着し得る温度であれば限定されない。基材への密着の観点や感光性フィルムの分解や副反応の観点から、30℃〜400℃が好ましい。より好ましくは、50℃〜150℃である。
<露光工程>
本工程では、上記の感光性樹脂組成物層形成工程の後に、基材上に形成された感光性樹脂組成物層にパターン露光を行う。露光に用いる光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー等が挙げられる。中でも、i線照度の観点から、高圧水銀灯が好ましい。
なお本発明においては、上記露光工程の後、後述の現像工程に入る前に、光塩基発生剤から生じた塩基を感光性樹脂組成物に含まれる化合物と反応させる、または該塩基が該化合物の反応を促進する目的で必要に応じて加熱処理(以下、PEBとも表記する)を施してもよい。PEBを実施する際の加熱温度は現像性の観点から100℃〜160℃が好ましい。加熱は、空気雰囲気下及び窒素雰囲気下のいずれで行ってもよい。また、加熱方法としては特に制限はないが、オーブン、焼成炉、ホットプレート等を用いて行うことができる。
<現像工程>
本工程では、上記の露光工程(又は任意のPEB)の後に、パターン硬化後の感光性樹脂組成物層を現像する。現像の方法としては、環境保護の観点から、アルカリ水溶液を現像液として用いる方法が好ましい。感光性樹脂組成物層の未露光部位をアルカリ現像にて溶解することにより、ネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。
現像に用いるアルカリ水溶液は、未露光部位を溶解し得る溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等が挙げられる。現像性の観点から、炭酸ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像等が挙げられる。
本発明に係る感光性樹脂組成物の露光部と未露光部との間の溶解度差及び/又は溶解速度差に差が生じる機構は、例えば感光性樹脂(B)がポリアミド酸である場合、次のように推定される。露光により光塩基発生剤より発生する塩基が、ポリアミド酸をポリイミドへ変換する際のイミド化触媒として作用することにより、露光部のイミド化率が未露光部と比較して高くなるため、露光部のアルカリ現像液に対する溶解度及び/又は溶解速度が低下すると考えられる。更に、上記PEBを施す場合には、イミド化反応を促進することが可能である。このアルカリ現像液に対する溶解度及び/又は溶解速度を利用して、アルカリ現像を行うことにより、露光部が現像液に対して溶け残るネガ型のフォトリソグラフィーが可能となる。
<硬化工程>
本工程では、上記現像工程の後に、現像後の感光性樹脂組成物層を熱硬化させる(キュア)ことにより、感光性樹脂組成物層の硬化体からなる層間絶縁膜を形成する。キュアの条件としては、120〜450℃、0.5〜3時間が挙げられる。上記キュアによって、現像後の感光性樹脂組成物において感光性樹脂組成物に含まれる化合物が反応することによって硬化体が得られる。以上のようにして、層間絶縁膜を得ることができる。
本発明の感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤が耐熱安定性及び酸性物質存在下の安定性に優れ、感光性樹脂に対して良好に作用することによって、優れた現像性を有する。またこのような感光性樹脂組成物を用いて形成された層間絶縁膜は良好な耐薬品性を示す。よって本発明は、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネル等に使用されるプリント配線板及び回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身等の保護の用途、並びに、絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用できる。
次に、本発明の効果をより明確にするために行った実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
光塩基発生剤として、実施例1,3,5及び実施例2,4,6では、それぞれ式(11)及び式(13)で表される化合物a及び化合物bを用い、比較例1及び比較例2では、それぞれ式(14)及び式(15)で表される化合物c及び化合物dを用いた。
化合物a(式(11)):
化合物b(式(13)):
化合物c(式(14)):
化合物d(式(15)):
なお化合物a〜dは、以下の方法で得た。
(化合物aの合成方法)
α−テトラロンを原料として用い、Grignard試薬としてp−トリフルオロメチルフェニルマグネシウムブロミドを用いて、該α−テトラロンに置換基としてフェニル基を導入した後、ピリジウムp−トルエンスルホン酸、過ヨウ素酸ナトリウム、塩化ルテニウム(III)水和物、及びNH
2OH・HClを用いたオキシム化を経て、最後にTCBCを縮合剤として用いた縮合環化により、合成した。合成経路を下記式(12):
に示す。
(化合物bの合成方法)
化合物bは、Grignard試薬としてp−クロロフェニルマグネシウムブロミドを原料として用い、化合物aと同様な方法で合成した。合成経路を下記式(16):
に示す。
(化合物cの合成方法)
化合物cは、Grignard試薬としてフェニルマグネシウムブロミドを原料として用い、化合物aと同様な方法で合成した。合成経路を下記式(17):
に示す。
(化合物dの合成方法)
化合物dは、原料としてアセトフェノンオキシムとフェニル酢酸を用い、塩化チオニルで縮合することによって合成した。合成経路を下記式(18):
に示す。
[実施例1,2、比較例1,2]
<熱安定性、酸性物質存在下での安定性の評価>
光塩基発生剤の熱安定性、及び酸性物質存在下での安定性を、示差熱熱重量同時測定装置(SII ナノテクノロジー社製 TG/DTA6200)を用いて評価した。熱安定性の評価については、光塩基発生剤(化合物a〜d)の熱分解温度を測定し、熱分解温度が220℃以上を○、220℃未満を×とした。酸性物質存在下での安定性の評価については、光塩基発生剤(化合物a〜d)とn−オクチル安息香酸とを1:1(モル比)で配合し、光塩基発生剤の分解熱のピークトップ温度を測定し、分解熱のピークトップ温度が200℃以上を○、200℃未満を×とした。結果を表1に示す。
[実施例3,4、比較例3,4]
<暗反応、触媒性能測定>
次に、感光性樹脂(B)としてのポリアミド酸を用い、光塩基発生剤(化合物a〜d)の暗反応、イミド化触媒としての性能を評価した。なお評価に用いたポリアミド酸は以下の方法で合成した。
攪拌器を取り付けた1リットルのセパラブル3つ口フラスコを用いた。窒素気流下にて、γ―ブチロラクトン80g(和光純薬株式会社製)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン9.41g(33.1ミリモル)(和歌山精化工業株式会社)、オキシジフタル酸二無水物10.3g(33.2ミリモル)(マナック株式会社製)、を仕込み室温で5時間攪拌した。得られたポリアミド酸溶液のポリマー濃度は20質量%であった。
得られたポリアミド酸溶液2.5g、光塩基発生剤50mg、ジエチルチオキサントン15mg(和光純薬株式会社)、γ―ブチロラクトン0.5mlを配合し感光性樹脂組成物を得た。シリコンウエハ上に上記感光性樹脂組成物をスピンコートした後、95℃で15分間乾燥した。
高圧水銀灯を用い2000mJの露光量で露光をした後、140℃でそれぞれ5分間、10分間、15分間、30分間PEBを行った。さらに、イミド化を完全に進行させる為180℃で1時間加熱処理を行った。イミド基に由来する吸収をFT−IRで測定しイミド化率を計算した。ポリアミド酸のみのサンプルをブランクとして同様にイミド化率を測定し、ブランクのイミド化率(%)と未露光部のイミド化率(%)との差を暗反応として、評価した。PEBを30分間行った時の暗反応につき、10%未満を暗反応○、10%以上を暗反応×とした。
また露光部のイミド化率と未露光部のイミド化率との差からコントラストを評価した。露光部のイミド化率(%)と未露光部のイミド化率(%)との差につき、20%以上をコントラスト○、20%未満をコントラスト×とした。結果を表2に示す。
[実施例5,6、比較例5,6]
<パターニング評価>
次に、パターニング評価を行った。なお評価に用いたポリアミド酸は以下の方法で合成した。
攪拌器を取り付けた1リットルのセパラブル3つ口フラスコを用いた。窒素気流下にて、N−メチルピロリドン47g(和光純薬株式会社製)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン5.61g(19.2ミリモル)(和歌山精化株式会社製)、オキシジフタル酸二無水物6.2g(20ミリモル)(マナック株式会社製)、を仕込み室温で5時間攪拌した。得られたポリアミド酸溶液のポリマー濃度は20質量%であった。
得られたポリアミド酸溶液5g、光塩基発生剤(化合物a〜d)100mg、ジエチルチオキサントン50mg(和光純薬株式会社製)を配合し感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を25μm厚のカプトンフィルム(カプトンEN−100/東レ・デュポン株式会社製)にブレードコーターで塗工後、95℃/12分間オーブンで乾燥した。
得られたフィルムに、ネガ型のマスクを用い超高圧水銀灯(オーク社製、商品名:HMW−201KB)でコンタクト露光を行った。露光量は1,000mJ/cm2とした。露光後110℃のオーブンにて20分間加熱した。1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で現像温度30℃、スプレー圧0.2MPaでスプレー現像を行った。30℃の蒸留水にてスプレー圧0.2MPaでスプレー水洗を行い、残膜率を測定した。膜厚測定は、膜厚計(Mitutoyo社製、ID−C112B)を用いて行った。
残膜率については、現像前にくらべ現像後の膜厚比が90%以上のものを◎、残膜率が90%未満80%以上のものを○、残膜率が80%未満10%以上のものを△、残膜率が10%未満のものを×とした。
現像時間については、現像時間が90秒以内のものを○、90秒以上のものを×とした。