JP5561670B2 - 金属溶解用ルツボ - Google Patents

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Description

本発明は、不純物含量の少ない高純度合金を製造する際に用いられる金属溶解用ルツボに関する。
材料に含まれる不純物元素であるC、N、O、S等は、合金の加工性、靱性、耐食性等を低下させるという問題を生じるとともに、また、材質が均一化されにくく製造工程において歩留まりを低下させ材料の特性を最大限に発揮できないという問題を起こしていた。そのため、これらの不純物を低減させて、金属を超高純度化し、材料の特性を最大限に発揮する方法が種々検討されており、その1つの方法として真空誘導溶解炉(VIM)を用いて高真空下で溶解・精錬する方法が知られている。
金属材料の特性は酸化物を作る酸素が材質に影響し、真空溶解は、酸素量を極限まで減らすことができるため、材料特性を飛躍的に向上させることができるが、微量の酸素は残る。そこで脱酸効果の高い脱酸剤であるAlを添加することで、微量酸素も取り除いている。
また、金属中のSやOを効果的に低減させるため、真空溶解では、溶鋼を清浄にする効果のあるカルシア(CaO)ルツボが使われている。
しかしながら、このように真空溶解で用いるCaOルツボは、激しい溶損減肉により3〜5回の使用で、交換せねばならず、ルツボの寿命が短いという問題がある。特に、溶鋼界面に近い側壁や、ルツボ底に近い側壁では溶損が激しい。
このCaOルツボの損傷は、溶鋼の脱酸に用いられるAlとの反応による低融点化合物のCaO−Al共晶の生成による。すなわち、このCaO−Al共晶の融点は約1400℃であるため、真空溶解において鉄を溶解する際の溶解温度の約1600℃によって数mm単位で容損するためであった。
そこで、本出願人は、ルツボの寿命を延ばすために、CaOとの共晶温度が高いジルコニア(ZrO)が有効なことを見出し、ジルコニア粉末をエタノールに分散させたスラリーをルツボ表面に塗布し、これを1500℃程度の高温で焼成することで、高融点(約2260℃)のCaO−ZrOを形成することを見出し、ルツボの寿命が飛躍的に向上することを出願している(特許文献1)。
また、真空溶解に用いるルツボの化学的侵食を防ぐ対策として、無機質耐火物よりなるルツボの内周面を含む器壁の表面にジルコニア(ZrO)を残留させた金属溶解用ルツボが示された先行技術として特許文献2も知られている。
さらに、本出願人は、ジルコニア粉末の表面塗布ではなく、液状のジルコニウムキレートをバインダとして用いて、原料のCaOを成形して焼成することで液体から析出するジルコニアによってCaOを均一に被覆して、均一なCaO−ZrO共晶を形成することで、溶損の防止と、内表面に付着した溶鋼の剥がし作業と同時に改質層が剥がされることのない強固な改質が得られる金属溶解用ルツボについて出願している(特許文献3)。
特開2008−267797号公報 特開昭61−116284号公報 特開2009−243723号公報
しかし、これら特許文献1〜3に示される技術は、主に、CaOルツボの溶鋼時の化学的な浸食による内壁面の溶損減肉を防止して、ルツボの寿命延長を図るものであり、CaOルツボ自体の強度確保による耐久性向上についてはさらなる改良が望まれている。
すなわち、CaOは、空気中の水分よって水和崩壊が生じやすく、他の材質のルツボに比べて低強度であるため、機械的強度不足、内部熱応力によってルツボ自体の成形時や、ルツボからの溶鋼排出時の移動や傾動作業に際して亀裂が発生しやすく、これらの原因で数回の溶鋼によって亀裂が発生し使用できなくなることもある。
その結果、溶鋼時の化学的な浸食による内壁面の溶損減肉を防止して、本来的には溶解回数が10回以上使用可能な改質ルツボでありながらこれを壊して交換しなければならず溶解コストが向上し、ルツボ寿命延長による製造設備、原材料等に関するコスト低減効果を得ることができない。
そこで、本発明はかかる課題に鑑み、溶鋼時の溶損を防止するために耐熱性を向上するだけではなく、同時に、ルツボ自体の耐水性を向上して強度を確保して、ルツボの移動や傾動作業に際して亀裂が発生しにくい金属溶解用ルツボを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る金属溶解用ルツボは、真空溶解炉で使用される酸化カルシウム(CaO)を主成分とする金属溶解用ルツボにおいて、原料となるCaOの粉体と、バインダとして、ジルコニウム成分がルツボ成形体の0.15〜3重量%となる量の液状のジルコニウムキレートと、アルミニウム成分がルツボ成形体の0.05〜2重量%となる量の液状のアルミニウムキレートとポリビニルピロリドン(PVP)とを含む混合物を型内に嵩密度2.4g/cm 以上の密度で充填して、焼結した、上記と同等の密度を有する焼結体構成されていることを特徴とする。
かかる発明によれば、液状のジルコニウムキレート(以下Zrキレートと略す)と液状のアルミニウムキレート(以下Alキレートと略す)との両者を採用することに特徴がある。
このZrキレートとAlキレートとは、相溶性があり、その結果、Zrキレート単独では接着効果がなく、また、Alキレート単独では発熱し乾燥して割れが生じやすく亀裂の発生の一因となっていたが、両者を混合することで発熱せず、乾燥しない液体となり、強度すなわち耐水性と耐熱性との両方を向上するルツボを形成できる。
つまり、Zrキレートが、バイダのPVPを溶解する溶媒として作用することが分かった。さらに、Zrキレートは、Alキレートに対する溶媒であることも分かった。この2つの作用から強度を向上して耐水性を有するルツボができる。さらに、ZrキレートによるCaOとの高融点共晶の形成によって溶損防止を図った耐熱性を有するルツボができる。このようにZrキレートとAlキレートの混合キレートとすることで、耐水性と耐熱性との両方を向上するルツボができる。
1つ目の作用のZrキレートが、バイダのPVPを溶解する溶媒として作用することについては、成形時の強度を得るには有機バイダのPVPが必要であるが、これを溶解するために従来はエタノールを使用していたが、エタノールは蒸発しやすく成形状態が変化する問題があった。また、原料のCaOを高密度にすればするほど乾燥しにくくなるが、脱型できない問題もあった。
これに対して、Zrキレートが、バインダのPVPの溶媒として作用するため、エタノールを使用せずにPVPを溶解でき、その結果エタノールを不要とするとともにエタノールの揮発による原料の変化を防止できて、エタノールなしでPVPをバインダとして機能させることができる。
2つ目の作用のZrキレートが、Alキレートに対する溶媒として作用することについては、Alキレート単独では発熱し乾燥して割れが生じやすく亀裂の発生の一因のため、乾燥により手早く型に充填しないと接着しない問題があったが、Zrキレートの溶媒作用によって、Alキレートの発熱および乾燥が抑制されて、Alキレートが確実にCaO粒子表面をフイルム状に覆って、接着、補強効果によって、成形体全体の強度を確保できる。
さらに、3つ目の作用のZrキレートから析出するジルコニア(ZrO)が、CaOと高融点共晶のCaO−ZrOを形成することについては、CaO−ZrO共晶の析出によって、鉄の溶解時の溶解温度の約1600℃以上の高融点(約2260℃)となるため、鉄の溶解時の溶損の防止ができ、溶損の進展を確実に防止できる。
以上のように、成形時の強度についてはPVPのバインダの作用によって、乾燥から焼成にかけての強度についてはAlキレートの作用によって効果が発揮され、溶解時にはZrキレートから派生したジルコニア(ZrO)とCaOとの高融点共晶を析出して保護することで溶損防止効果が発揮される。
また、本発明において、好ましくは、前記ジルコニウムキレートのジルコニウム成分がルツボ成形体の0.15〜3重量%含まれているとよい。また、前記アルミニウムキレートのアルミニウム成分がルツボ成形体の0.05〜2重量%含まれているとよい。
ジルコニウムが0.15%より少ないと、CaO−ZrO共晶の析出が少なく、溶損防止および強度向上の効果が得られ難くなり、3%を超えると原料コストが増大するので、かかる範囲が原料コストと溶損防止および強度向上との観点から望ましい。
また、アルミニウムが0.05%より少ないと、接着効果が不足し強度向上の効果が得られ難くなり、2%を超えると融点が低下し溶解中に表面が溶融しやすくなり、また、原料コストも増大するからである。
また、本発明において、好ましくは、前記CaOの粉体が、粒径が3〜1mmの粗粒と1〜0.3mmの細粒と0.3mm以下の微粒とが混合され前記粗粒と細粒と微粒とが重量比で1:2:2の割合に混合されるとよい。
このように、粗粒を減らして、微粒を増やす配分にすることによって、粒子間の細小隙間率を高くして原料粒子間への溶鋼の差込みをなくして溶損の防止を図ることができる。
なお、細粒、微粒を増やすことでCaOの欠点である水和の進行が速くなるが、この点については、前記のようにPVPと2種類のキレート混合液によって、エタノール等の溶媒を使用することなく成形可能としたことによって強度を高くすることで解消される。
また、本発明において、好ましくは、前記CaOの粉体とジルコニウムキレートとアルミニウムキレートとPVPとを含む混合物が、2.4g/cm以上の密度で型内に充填されて焼成される高密度成形体によって構成されるとよい。
このように、2.4g/cm以上の密度で充填されて焼成される高密度のルツボ成形体によって金属溶解用ルツボを構成するため、ルツボの気密性が向上して、原料粒子間への溶鋼の差込みをなくして溶損の防止が図られて、耐久性が向上する。なお、2.5g/cm以上の密度であればより好ましい。
本発明によれば、真空溶解炉で使用されるカルシアを主成分とする金属溶解用ルツボにおいて、原料となるCaOの粉体と、バインダとしての液状のZrキレートと液状のAlキレートとポリビニルピロリドン(PVP)とを含む混合物の焼結体として構成されるので、耐水性と耐熱性との両方を向上するルツボができる。
すなわち、Zrキレートが、バイダのPVPを溶解する溶媒として作用し、さらに、Zrキレートが、Alキレートに対する溶媒として作用することから強度を向上して耐水性を有するルツボができる。さらに、ZrキレートによるCaOとの高融点共晶の形成によって溶損防止を図った耐熱性を有するルツボができる。
このように混合キレートとすることで、耐水性と耐熱性との両方を向上した耐久性のある安定したルツボを得ることができる。
本発明の実施例に係る金属溶解用ルツボの製造手順を示す説明図である。 実施例の成分配合率を説明する図表である。 実施例1の具体的な配合値を説明する図表である。 ルツボの成形型の構造を示す一部断面説明図である。 底型に設けられるベントホール部分の断面図である。 強度試験結果を示す図表である。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明の実施例について、図1を参照しながら説明する。図1は、カルシアを主成分とする金属溶解用ルツボの製造手順を示す。
まず、骨材となるカルシアの粉末を準備する(S1)。カルシアの粉末は、粒径3〜1mmの粗粒と、粒径1〜0.3mm中粒と、0.3mm以下の微粒とを用意する。
次に、室温で形状を保持するためのバインダとしての高分子PVP(ポリビニルピロリドン)を乾燥微粉としてカルシア粒子に添加する(S2)。さらに、液体の有機ジルコニウムのジルコニウムキレート(以下Zrキレートと略す)を添加(S3)するとともに、液体の有機アルミナのアルミニウムキレート(以下Alキレーと略す)を添加(S4)する。そして、これら、カルシアの粒子、高分子PVP、Zrキレート、Alキレートを混合して混練器1によって混練する(S5)。
なお、Zrキレートとしては、例えば、オルガチックス(登録商標)ZC−540(ジルコニウムトリプトキシモノアセチルアセトネート、マツモトファィンケミカル社製)が例示される。
ZrキレートとAlキレートとは、相溶性があるため、混練器1によって両方のキレーは混合した状態で、カルシアの粉末およびPVPと混練する。
Zrキレート単独では接着効果がなく、また、Alキレート単独では発熱し乾燥して割れが生じやすく亀裂の発生の一因となっていたが、両者を混合することで発熱せず、乾燥しない液体となり、強度すなわち耐水性と、耐熱性との両方を向上することができる。
カルシア粉末の配分割合は、粒径3〜1mmの粗粒を約20%(以下重量%を示す)と、粒径1〜0.3mmの中粒を約40%と、0.3mm以下の微粒を約40%として重量比で1対2対2の割合で配合する。
このように、粗粒を減らして、微粒を増やす配分にすることによって、強度を確保するとともに、粒子間の細小隙間率を高くして原料粒子間への溶鋼の差込みをなくして溶損の防止を図ることができる。
さらに、高分子PVPは骨材のカルシア重量に対して約1.0%添加するのが好ましい。
また、Zrキレートのジルコニウムは骨材のカルシア重量に対して0.15〜5%含むのが好ましい。ジルコニウムが0.15%より少ないと、CaO−ZrO共晶の析出が少なく、溶損防止および強度向上の効果が得られ難くなり、5%を超えると原料コストが増大するので、かかる範囲が原料コストと溶損防止および強度向上との観点から望ましい。
また、Alキレートのアルミニウム成分は骨材のカルシア重量に対して0.05〜2%含むのが好ましい。アルミニウムが0.05%より少ないと、接着効果が不足し強度向上の効果が得られ難くなり、2%を超えると融点が低下し溶解中に表面が溶融しやすくなり、また、原料コストも増大するからである。また、AlキレートはZrキレートに対して1/3〜1/2の範囲が望ましい。
次に、中子2、外型4、底型6からなる成形型10に、前記混練された混合物を流入してルツボ成形体12を成形する(S6)。その後、ルツボの成形型10からルツボ成形体12を取り出して、80℃で5時間乾燥し(S7)、1650℃で2時間焼成して(S8)、ルツボ焼成体13が製造される。なお、焼成温度1650℃×2時間保持後は、炉冷する。また、昇温速度は50℃hrで昇温する。
また、図2には、混練するカルシア、Zrキレート、Alキレート、PVPの混合率の望ましい範囲および具体例を示し、図3に図2の実施例1に用いたカルシア、Zrキレート、Alキレート、PVPのより具体的な数値例を示す。この図3における具体例では、粗粒、細粒、微粒の重量比が1対2対2であり、Zrキレートは0.95kg含み、キレート中の有機成分のジルコニウムは10.2%のため0.097kgとなり、CaO全体重量53.5kgの0.18%含まれている。また、Alキレートについても、0.47kg含み、キレート中の有機成分のアルミニウムは9.8%のため0.046kgとなり、CaO全体重量に対して0.09%含まれている。
前記ルツボ成形体12の製造について、図4を参照してさらに詳細に説明する。
成形型10を構成する底型6と外型4とは分離されており、まず、ルツボ成形体12の底板14の部分は、予め成形型10の底型6の上面に、カルシアの原料、液体のZrキレート、液状のAlキレートおよびPVPを混練した混合物を、密度が2.4g/cm以上になるように、ハンマー等で叩いて充填する。
この底型6は円盤形状をなし、径方向および周方向に一定間隔で通気用のベントホール16が形成され、ベントスリット部材18(図5参照)がその内部に装着されている。このため、底型6の上面に充填する混合物をハンマーで叩いて押し込んでも、ベントホール16のベントスリット部材18によって充填物内部や充填物と底板14との間のガスや液体が抜けるので、密度を上げることができるようになり、さらに、脱型の際には成形型10内の圧力が調整されて容易に型抜きができるようになる。
さらに、カルシアの原材料に液分を多めに添加しても、このベントホール16のベントスリット部材18を介して排出されるため均一のルツボの組成成分が得られる。
このように底型6に予め充填された底板14を基台19に設置し、その底型6上に外型4を載置し、次に、外型4と中子2との間の円筒筒部20に、カルシアの原料、液体のZrキレート、液状のAlキレート、およびPVPを密充填する。この円筒筒部20の部分も、底板14と同様に密度を上げて溶鋼が差し込まない状態まで密にする。実施例では、円筒筒部20を形成する部分においては、密度が2.5g/cm以上に高める必要がある。円筒筒部20を密にする作業においてもハンマー等で叩いて密度を上げても、ベントスリット部材18によって充填物内部や充填物と成形型10との間のガスや液体が放出されるため密度を高めることができる。
底板14の密度は2.4(g/cm)以上、および円筒筒部20の2.5(g/cm)以上が望ましく、この密度の設定値はルツボ成形体12を成形後の移動等において崩壊を繰り返した過去の試験結果に基づいて設定されたものであり、密度2.3g/cmの成形体では崩壊した結果に基づくものである。
底板14の具体的な一例としては、直径366mm、厚さ37mmの底板に対して原料重量9.42kgを充填して密度が、約2.4g/cmの底板を成形した。また、円筒筒部20の具体的な一例としては、円筒筒部の容積12740cmに対して原料重量31.8kgを充填し、密度が約2.5g/cmである筒部を成形した。
前記底板14の密度および円筒筒部20の密度は、ルツボ成形体12の焼成前の密度であるが、成形時に充填物内部や充填物と成形型10との間のガスや液体を、ベントホール16を介して放出することで高密度に充填しているため、焼成後においても略同等の密度のルツボが得られる。
ルツボ成形体12の底板14の部分は、円筒筒部20と同時に成形型内で充填すると、底板14部分への充填が十分になされないため、円筒筒部20と比較して低密度になりがちであるが、予め、底板14を充填して、その後に底型6上に外型4を装着して円筒筒部20を充填することで、ルツボ成形体12全体を均一な高密度状態にできる。
なお、底板14の部分については、底板14を予め焼成したものを用いるようにしてもよい。
以上のようにして底板14および円筒筒部20を成形型10内に充填した後に、中子2の脱型を行う。水和しやすいカルシアルツボは、成形時に高密度化することが重要であるが、高密度化すると脱型が困難になるため、図4に示すような脱型装置22が装着される。
この脱型装置22による脱型の手順は、まず、脱型装置本体24をルツボの外型4の上面に乗せる。この脱型装置本体24は天板26と周方向の4箇所下方向に折り曲げられた脚部28とを備え、該脚部28がルツボの外型4の上面に乗る。脱型装置本体24の天板26には周方向の4か所に、ボルト30を通す孔32が形成されている。
また、中子2の上面には、周方向に4組のボルト30がダブルナット34によって固定されている。そして、天板26の上方に突出したボルト30をフランジナット36によって、上面から締め込むことで、中子2が持ち上がる。
中子2が持ち上がり、ルツボ成形体12の内面との間に隙間ができれば、その後はルツボ成形体12の内面の抜け勾配によって、クレーンで吊り上げが可能になり、係合リング38にクレーンのフックを係合させて引き上げる。
この脱型装置22によって、高密度に成形したルツボ成形体12であっても、前記ベントホール16の通気機能と合わさり脱型ができるようになり、さらに、中子2を脱型後にクレーンで外す際に、成形型10が傾いたため、筒部が剥がれて周方向に断層を生じるようなこともない。
(評価試験結果)
以上のようにして製造した、ルツボ成形体12の強度試験を行い、強度を確認した。
まず、水和性、すなわち耐水性については、Φ30×40hの丸棒試験片を準備し、常温の室内に放置して、水和による重量や寸法変化を調べた。市販のルツボ素材の丸棒は、3日で崩壊したが、本実施例で製造したルツボ成形体12は、2倍以上の耐久性を確認した。
また、ルツボ成形体12の一部を切り出して、切り出し材の3点曲げ試験を実施した。図6にその結果を示す。
切り出し方向の周方向は、ルツボの周壁を周方向に切り出したものであり、切り出し方向の縦方向は、ルツボの周壁を縦方向に切り出したものを試験片としたものである。3点曲げ試験は、柱状の試験片の両端側を支持し中央部に荷重を作用させて破断荷重を計測するものである。
また、荷重方向の内面強さは、ルツボの周壁の内面側に位置する面に荷重を作用させた場合であり、荷重方向の外面強さは、ルツボの周壁の内面側に位置する面に荷重を作用させた場合である。
図6の結果より、実施例によって製造されたルツボの試験片と、比較例として市販のルツボ素材の試験片は、略同形状または、比較例が若干小さめであるが、破断荷重の平均値が、55kgfから151kgfに向上し、3点曲げ強さの平均値が40.0kgf/cmから66.3kgf/cmに向上していることが確認された。
さらに、周方向と縦方向の強度さが縮小して、ルツボ全体に均一に強度向上が図れたことが確認できた。つまり、図6において、比較例では周方向の3点曲げ強度が周方向51.1kgf/cmと縦方向29.1kgf/cmで76%程度の差があったが、実施例においては、周方向77.8kgf/cmと縦方向60.4kgf/cmで29%程度の差となり、強度差が縮まったことが分かる。
以上のように、Zrキレートが、バイダのPVPを溶解する溶媒として作用すること、およびZrキレートが、Alキレートに対して溶媒としての作用があることの知見に基づいて、この2つの作用から強度を向上して耐水性を有するルツボができた。
さらに、ZrキレートによるCaOとの高融点共晶の形成によって溶損防止を図った耐熱性を有するルツボができ、さらに、高密度のルツボ成形体によって金属溶解用ルツボを構成するため、ルツボの気密性が向上して、原料粒子間への溶鋼の差込みをなくして溶損の防止が図られて、耐久性が向上したルツボを得ることができた。
ZrキレートとAlキレーとの併用によって、Zrキレーは、バイダのPVPを溶解する溶媒として作用するため、従来のエタノールの使用が不要になり、エタノールによる不具合が解消された。
すなわち、エタノールは蒸発しやすく成形状態が変化する問題があり、さらに、原料のCaOを高密度にすればするほど乾燥しにくくなるが、脱型できない問題もあったが、これら問題に対して、エタノールを使用せずにPVPを溶解できることによって解消され、PVPのバインダとしての機能はそのまま発揮させることができ強度を確保できた。
さらに、Zrキレートは、Alキレートに対する溶媒として作用するため、Alキレート単独では発熱し乾燥して割れが生じやすく亀裂の発生の一因のため、乾燥により手早く型に充填しないと接着しない問題があったが、Zrキレートの溶媒作用によって、Alキレートの発熱および乾燥が抑制されて、Alキレートが確実にCaO粒子表面を覆ってフイルム化して、接着、補強効果が得られ、成形体全体の強度を確保できるようになった。
なお、Zrキレートから析出するジルコニア(ZrO)が、CaOと高融点共晶のCaO−ZrOを形成することで、鉄の溶解時の溶解温度が約1600℃以上となることによる溶損の進展を確実に防止でき、さらに、前述したように、原料のカルシアの粒径の選定および成形型10内への原料の充填時の高密度化によって溶鋼の差し込みを防止して、溶解時の溶損防止効果を得ることができる。
本発明によれば、カルシアの原料と、Zrキレートと、Alキレートと、樹脂バインダのPVPの混合物を、成形型内に高密度に充填可能としたので、耐水性と耐熱性との両方を向上した耐久性のある安定したルツボを得ることができるため、金属溶解用ルツボに適している。
1 混練器
2 中子
4 外型
6 底型
10 成形型
12 ルツボ成形体
13 ルツボ焼成体
14 底板
16 ベントホール
18 ベントスリット部材
20 円筒筒部
22 脱型装置

Claims (2)

  1. 真空溶解炉で使用される酸化カルシウム(CaO)を主成分とする金属溶解用ルツボにおいて、
    原料となるCaOの粉体と、バインダとして、ジルコニウム成分がルツボ成形体の0.15〜3重量%となる量の液状のジルコニウムキレートと、アルミニウム成分がルツボ成形体の0.05〜2重量%となる量の液状のアルミニウムキレートとポリビニルピロリドン(PVP)とを含む混合物を型内に嵩密度2.4g/cm 以上の密度で充填して、焼結した、上記と同等の密度を有する焼結体構成されていることを特徴とする金属溶解用ルツボ。
  2. 前記CaOの粉体が、粒径が3〜1mmの粗粒と1〜0.3mmの細粒と0.3mm以下の微粒とが混合され前記粗粒と細粒と微粒とが重量比で1:2:2の割合に混合さてなれることを特徴とする請求項1記載の金属溶解用ルツボ。
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