JP5560637B2 - 医療用材料 - Google Patents

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Description

本発明は医療用材料に関するもので、該医療用材料は、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バック、血液回路、創傷被覆材および各種の薬剤担体などの医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適に用いられる。
第4級アンモニウム塩モノマーと親水性モノマーの共重合体を医療用材料などの素材に利用することはすでに知られている。
例えば、特許文献1にはメタアクリレートと側鎖に4級アンモニウム塩を有するモノマー共重合体の抗菌性ハイドロゲル及び抗菌性ソフトコンタクトレンズが開示されている。しかし、これらの共重合体は抗菌性を有するもののタンパク質や脂質などに対する防汚性の機能を有するものではない。
特許文献2には、分子内にアンモニウム基を有するモノマー単位を有する高分子化合物(A)が、ハイドロゲル(B)中に分散されてなる眼用レンズが開示されている。しかし、これらの眼用レンズは酸素透過性が高く優れた抗菌性を示すものの、タンパク質や脂質などに対する防汚性の機能を有するものではなく、含水率も眼用レンズとしては不適当である。また、分子内にアンモニウム基を有するモノマー単位を有する高分子化合物(A)として、アンモニウム塩構造を有するモノマーと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体が例示されている(第0044段落)ものの、その防汚性についての記述はなく、好適な共重合比率の範囲についても記載がない。
特開1994−337378号公報 国際公開第2008/038721号パンフレット
本発明は、透明で適度な含水率を有し、かつ抗菌性および防汚性を有する医療用材料を提供することを目的とする。該医療用材料は各種医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズに好適に用いられ、コンタクトレンズに特に好適である。
上記の目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。すなわち、
(1) イミダゾリウム塩構造を有するモノマー2〜38重量%、および水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー62〜98重量%を共重合して得られるポリマーを含むことを特徴とする医療用材料。
(2) 前記ポリマーがさらに重合性基を2つ以上有するモノマーを0.1〜10重量%共重合して得られたものである上記(1)に記載の医療用材料。
(3) 前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーが、ヒドロキシアルキルメタクリレートである上記(1)または(2)に記載の医療用材料。
(4) 前記ヒドロキシアルキルメタクリレートが、2−ヒドロキシエチルメタクリレートである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の医療用材料。
(5) 該医療用材料の用途が眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バック、血液回路、創傷被覆材および薬剤担体から選ばれた1種である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の医療用材料。
(6) 該医療用材料の用途が眼用レンズである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の医療用材料。
本発明によれば、適度な含水率を有し、実質的に透明で、かつ、抗菌性、防汚性などの機能を有する医療用材料を得ることができる。該医療用材料は各種医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適に用いられる。
本発明の医療用材料は、イミダゾリウム塩構造を有するモノマーと水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを重合して得られる。
本発明においてイミダゾリウム塩構造を有するモノマーとは、イミダゾリウム塩構造を有し、かつ重合可能な炭素炭素不飽和結合を有する化合物である。その好適な構造は化学式(a)又は(b)で表される。
Figure 0005560637
[式(a)中、Xは、任意の陰イオンである。
mは、1〜8の整数であり、
は、H又はCHであり、
及びRは、それぞれ(CHYで表されるアルキル基である(ここで、iは、0〜20の整数であり、Yは、フッ素、塩素、及び臭素から選択されるハロゲン原子、H、NH、OH、及びCOHからなる群から選択される官能基である)]。
式(a)中、Xは、任意の陰イオンであるが、合成の容易さ、および式(a)のモノマーの溶解性の観点から好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、ヨウ素イオン、OH、BF 、PF 、SbF 、NO 、CF 、SO 、(CFSO、ArSO 、CFCO 、およびCHCO からなる群から選択される陰イオンであり、さらに好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、ヨウ素イオンからなる群から選択される陰イオンである。
式(a)中、mは、1〜8の整数であるが、合成の容易さおよび抗菌性の観点から、1〜4の整数がより好ましく、2が最も好ましい。
は、H又はCHであるが、得られる医療用材料の化学的安定性の点から好ましくはCHである。
及びRは、それぞれHまたは(CHYで表されるアルキル基である(ここで、iは、0〜20の整数であり、Yは、フッ素、塩素、及び臭素から選択されるハロゲン原子、H、NH、OH、及びCOHからなる群から選択される官能基である)。Rとしては、抗菌性の観点から(CHYが好ましく、iの好ましい範囲は1〜18、より好ましくは2〜12である。また該イミダゾリウム塩モノマーの製造の容易さの観点から、Yとして好ましいのはHである。Rとしては、合成の容易さの点でHが最も好ましい。
Figure 0005560637
[式(b)中、Rは炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を表す。R〜R10はH、炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基および炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基から選ばれた置換基を表す。Zは任意のアニオンを表す。]
式(b)中、Rは炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を表すが、炭素数が少なすぎても多すぎても親水性モノマーとの相溶性が低下することから、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜15がより好ましい。
〜R10はH、炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基および炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基から選ばれた置換基を表すが、RとRは互いに結合して環を形成していてもよいが、合成の容易さおよび抗菌性の観点からはHが最も好ましい。
は任意のアニオンを表すが、その例として、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、OH、SO 、NO 、BF などが挙げられる。それらのうち、合成の容易さの点でハロゲンイオンが最も好ましい。
本発明の医療用材料に用いるイミダゾリウム塩モノマーの含有量は、少なすぎると抗菌性などの十分な効果が得られず、多すぎるとモノマー混合液に溶解しにくく、透明な医療用材料が得られにくくなることから、医療用材料の乾燥状態でのポリマー全重量に対して2〜38重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、8〜25重量%がさらに好ましく、10〜20重量%が最も好ましい。イミダゾリウム塩モノマーの含有量が5重量%以上であれば抗菌性がより顕著に発現されるため好ましい。なお、本願において乾燥状態とは40℃、圧力300Pa以下、16時間の条件で真空乾燥させた状態を指す。
本発明の医療用材料に用いる水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの好適な例は、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エリスリトール(メタ)アクリレート、キシリトール(メタ)アクリレート、ソルビトール(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの中で防汚性の観点からはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、中でも好ましいのは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであり、最も好ましいのは2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)である。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの使用量は、好適な含水率が得られることから、62〜98重量%が好ましく、65〜90重量%がより好ましく、70〜80重量%が最も好ましい。
本発明の医療用材料は、重合性基を2つ以上有するモノマーを共重合成分として含むことができる。その場合、本発明の医療用材料に耐溶剤性が付与される。重合性基を2つ以上有するモノマーの好適な例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。これらの中で架橋性の観点からはジメタクリレートが好ましく、中でも好ましいのはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、およびテトラエチレングリコールジメタクリレートである。重合性基を2つ以上有するモノマーの使用量は、好適なレンズ形状が得られることから、0.1〜10重量%が好ましく、1〜8重量%がより好ましく、2〜5重量%が最も好ましい。
本発明の医療用材料の含水率は、少なすぎると固くなり、多すぎると医療用材料表面から水分が蒸発し装用時に乾燥感が生じることから、20〜50重量%が好ましく、25〜45重量%がより好ましく、30〜40重量%が最も好ましい。含水率の求め方は以下の通りである。
まず、本発明の医療用材料を含水状態とする。本発明において医療用材料の含水状態とは、医療用材料を25℃の純水に6時間以上浸漬した状態を意味する。次に表面の水分をガーゼで軽く拭き取った医療用材料の重量(W1)を測定する。その後、該医療用材料を乾燥状態として重量(W2)を測定し、次式により含水率を算出する。
含水率(%)=(W1−W2)/W1×100
本発明の医療用材料を重合により得る際は、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有する熱重合開始剤を選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40℃〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそモノマー成分100重量部に対して1重量部くらいまでの量で使用される。
本発明の医療用材料を重合により得る際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、テトラヒドロリナロールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶剤であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらの中でアルコール系溶剤およびグリコールエーテル系溶剤は得られた医療用材料中から溶剤を水による洗浄で容易に除去できる点で好ましい。
本発明の医療用材料は、単独で所望の形状に成型して使用することもできるし、他の材料と混合してから成型することもできる。また成型品の表面にコーティングして適用することも好適である。
本発明の医療用材料の用途としては、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バック、血液回路、創傷被覆材および各種の薬剤担体などが挙げられるが、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレー、角膜オンレーなどの眼用レンズに特に好適に用いられ、コンタクトレンズに最も好適である。
本発明の医療用材料を成型して眼用レンズとして用いる場合、その重合方法、成形方法としては通常次の方法を使用することができる。たとえば一旦、丸棒や板状に成形し、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト法などである。
一例として本発明の医療用材料からなる眼用レンズをモールド重合法により得る場合について、次に説明する。
モノマー組成物をレンズ形状を有する2枚のモールドの空隙に充填する。そして光重合あるいは熱重合を行ってレンズ形状に賦型する。モールドは樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されているが、光重合の場合は光学的に透明な素材が用いられ、通常は樹脂またはガラスが使用される。医療用材料を製造する場合には、多くの場合、2枚の対向するモールドにより空隙が形成されており、その空隙にモノマー組成物が充填される。続いて、空隙にモノマー組成物を充填したモールドは、紫外線のような活性光線を照射されるか、オーブンや液槽に入れて加熱されて、モノマーを重合する。光重合の後に加熱重合したり、逆に加熱重合後に光重合するなど、両者を併用する方法もあり得る。光重合の場合は、例えば水銀ランプや捕虫灯を光源とする紫外線を多く含む光を短時間(通常は1時間以下)照射するのが一般的である。熱重合を行う場合には、室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めていく条件が、ポリマーの光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
本発明の医療用材料は、種々の方法で改質処理を行うことができる。用途が眼用レンズである場合は表面の水濡れ性を向上させる改質処理を行うことが好ましい。
具体的な改質方法としては、電磁波(光を含む)照射、プラズマ照射、蒸着およびスパッタリングなどのケミカルベーパーデポジション処理、加熱、塩基処理、酸処理、その他適当な表面処理剤の使用、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの改質手段の中で、簡便であり好ましいのは塩基処理および酸処理である。
塩基処理または酸処理の一例としては、成型品を塩基性または酸性溶液に接触させる方法、成型品を塩基性または酸性ガスに接触させる方法等が挙げられる。そのより具体的な方法としては、例えば塩基性または酸性溶液に成型品を浸漬する方法、成型品に塩基性または酸性溶液または塩基性または酸性ガスを噴霧する方法、成型品に塩基性または酸性溶液をヘラ、刷毛等で塗布する方法、成型品に塩基性または酸性溶液をスピンコート法やディップコート法などを挙げることができる。最も簡便に大きな改質効果が得られる方法は、成型品を塩基性または酸性溶液に浸漬する方法である。
医療用材料を塩基性または酸性溶液に浸漬する際の温度は特に限定されないが、通常−50℃〜300℃程度の温度範囲内で行われる。作業性を考えれば−10℃〜150℃の温度範囲がより好ましく、−5℃〜60℃が最も好ましい。
医療用材料を塩基性または酸性溶液に浸漬する時間については、温度によっても最適時間は変化するが、一般には100時間以内が好ましく、24時間以内がより好ましく、12時間以内が最も好ましい。接触時間が長すぎると、作業性および生産性が悪くなるばかりでなく、酸素透過性の低下や機械物性の低下などの悪影響が出る場合がある。
塩基としてはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、各種炭酸塩、各種ホウ酸塩、各種リン酸塩、アンモニア、各種アンモニウム塩、各種アミン類およびポリエチレンイミン、ポリビニルアミン等の高分子量塩基などが使用可能である。これらの中では、低価格であることおよび処理効果が大きいことからアルカリ金属水酸化物が最も好ましい。
酸としては硫酸、リン酸、塩酸、硝酸等の各種無機酸、酢酸、ギ酸、安息香酸、フェノール等の各種有機酸、およびポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸などの各種高分子量酸が使用可能である。これらの中では、処理効果が大きく他の物性への悪影響が少ないことから高分子量酸が最も好ましい。
塩基性または酸性溶液の溶媒としては、無機、有機の各種溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、およびフロン系溶媒などである。中でも経済性、取り扱いの簡便さ、および化学的安定性などの点で水が最も好ましい。溶媒としては、2種類以上の物質の混合物も使用可能である。
本発明において使用される塩基性または酸性溶液は、塩基性または酸性物質および溶媒以外の成分を含んでいてもよい。
医療用材料は、塩基処理または酸処理の後、洗浄により塩基性または酸性物質を除くことができる。
洗浄溶媒としては、無機、有機の各種溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの各種アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチルなどの各種エステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどの各種エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシドなどの各種非プロトン性極性溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、およびフロン系溶媒などである。
洗浄溶媒としては、2種類以上の溶媒の混合物を使用することもできる。洗浄溶媒は、溶媒以外の成分、例えば無機塩類、界面活性剤、および洗浄剤を含有してもよい。
以上のような改質処理は、医療用材料全体に対して行ってもよく、例えば表面のみに行うなど医療用材料の一部のみに行ってもよい。表面のみに改質処理を行った場合には医療用材料全体の性質を大きく変えることなく表面の水濡れ性のみを向上させることができる。
本発明の医療用材料の酸素透過性は、酸素透過係数70×10−11(cm/sec)mLO/(mL・hPa)以上が好ましい。
本発明の医療用材料の透明性は、用途が眼用レンズの場合はその品位の点で、該眼用レンズの含水状態での全光線透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、82%以上が最も好ましい。全光線透過率の測定は以下のように行う。
該眼用レンズの全光線透過率は、SMカラーコンピューター(型式SM−7−CH、スガ試験機株式会社製)を用いて測定する。サンプルには、眼用レンズの中心部を5mm幅に切り取り、軽く水分を拭き取ったものを用いる。ABCデジマチックインジケータ(ID―C112、株式会社ミツトヨ製)を用いて厚みを測定し、厚みが0.14〜0.15 mmであるものを測定に用いる。
本発明の医療用材料はイミダゾリウム塩モノマーを共重合していることから抗菌性を発現することができる。本発明の医療用材料の抗菌性は、JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2 プラスチック製品などの試験方法によって評価することができる。抗菌性は緑膿菌で3サンプルの菌数を測定した場合、3回の対数菌濃度の平均値とイミダゾリウム塩構造を有するモノマーを含まないコントロールの3回の対数菌濃度の平均値との差が±0.4以内であれば増減なしとみなし、−0.4以下であれば抗菌効果があると判断する。より好ましくは−1以下であり、最も好ましくは−2以下である。
本発明の医療用材料のタンパク質付着に対する防汚性は、BCAプロテインアッセイ法によって評価することができる。防汚性は、0.1%濃度のリゾチーム水溶液に中心部を5mm幅に切り取ったサンプルを20時間37℃の条件で浸漬させたサンプルをMicro BCA反応試薬と150分間反応させた時の562nmの吸収スペクトルを測定することによって評価することができる。吸収スペクトルの測定値とリゾチーム水溶液の検量線及びサンプルサイズ(表面積1.56cm)から、リゾチーム付着量(μg/cm)を算出した。3サンプルの吸収スペクトルを測定した場合、3回のリゾチーム付着量の平均値が、イミダゾリウム塩構造を有するモノマーを含まないコントロールの3回のリゾチーム付着量の平均値よりも小さければ防汚性があると判断する。
本発明の医療用材料の脂質付着に対する防汚性は、以下のように評価することができる。医療用材料の用途が眼用レンズの場合を記す。500mLビーカーに0.3%濃度のパルミチン酸メチル水溶液500mLを調製し、テフロン(登録商標)製回転子とプラスチック製の眼用レンズ用のバスケットにレンズを入れ、ビーカーを37℃の恒温水槽に浸漬し、4時間撹拌する。4時間後レンズを取り出し、中性洗剤でレンズ表面に付着しているパルミチン酸メチルを除き、レンズを冷水に浸漬する。脂質が固化して白化するので付着の程度を目視観察する。脂質の付着面積がレンズ全体の5%以下ならば防汚性があると判断する。
本発明の医療用材料は、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バック、血液回路、創傷被覆材および各種の薬剤担体などの医療用具、中でもコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例1
下記式(c)
Figure 0005560637
で表されるイミダゾリウム塩モノマー(34重量部、共重合比率34重量%)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(65重量部、共重合比率65重量%)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1.0重量部、共重合比率1.0重量%)、光開始剤イルガキュウア1850(1.0重量部)を混合し撹拌した。均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。窒素雰囲気下のグローブボックス中で、レンズ形状を有する透明樹脂(ゼオノア)製モールドの空隙にモノマー混合物を充填し、光照射(東芝FL6D、8.4キロルクス、20分間)して硬化させることによりレンズを得た。得られたレンズを、60重量%2−プロパノール(IPA)水溶液に60℃で30分間浸漬しモールドから剥離後、さらに80重量%IPA水溶液に60℃、2時間浸漬して残存モノマーなどの不純物を抽出し、50重量%IPA水溶液、25重量%IPA水溶液、水と段階的にIPA濃度を下げた液におよそ30分ずつ浸漬して水和した。5mLバイヤル瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬し、該バイヤル瓶をオートクレーブに入れ、120℃で30分間煮沸処理を行った。得られたレンズの含水率は30.0%、全光線透過率は90.0%であり透明で濁りがなく、コンタクトレンズとして好適であった。また、リゾチーム付着量はイミダゾリウム塩構造を有するモノマーを含まない2−ヒドロキシエチルメタクリレート(99重量部、共重合比率99重量%)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1.0重量部、共重合比率1.0重量%)、光開始剤イルガキュウア1850(1.0重量部)の組成で上記と同様の実験法で作製したコントロールレンズの付着量が1.5μg/cmであったのに対し、0.51μg/cm、目視観察によるパルミチン酸メチル付着はなく優れた防汚性を示した。
実施例2〜4
上記実施例1のイミダゾリウム塩モノマーと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの使用量を表1に示した値とした以外は実施例1と同様の実験を行った。得られたサンプルの各種物性値を表1に示した。得られたサンプルは透明で濁りがなく、優れた防汚性を示した。
比較例1〜3
上記実施例1のイミダゾリウム塩モノマーと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの使用量を表1に示した値とした以外は実施例1と同様の実験を行った。得られたサンプルの各種物性値を表1に示した。比較例1においては全光線透過率が90.0%で透明であったが、含水率は51%と高く好ましくなかった。比較例2においては、全光線透過率が89%で透明であったが、含水率52.3%、リゾチーム付着量は1.75μg/cmであり共に高い値を示し好ましくなかった。比較例3においては、全光線透過率が90%で透明であったが、含水率は51%、リゾチーム付着量は2.09μg/cmであり共に高い値を示し好ましくなかった。
実施例5
上記実施例1のイミダゾリウム塩モノマーの代わりに、下記式(d)
Figure 0005560637
で表されるモノマーを用いて実施例1と同様の実験を行った。イミダゾリウム塩モノマー
と2−ヒドロキシエチルメタクリレートの使用量および得られたサンプルの各種物性値は表1の通りであった。得られたサンプルは透明で濁りがなく、優れた防汚性を示した。
比較例4
上記実施例1のイミダゾリウム塩モノマーの代わりに、下記式(e)
Figure 0005560637
で表されるモノマーを用いて実施例1と同様の実験を行った。イミダゾリウム塩モノマー
と2−ヒドロキシエチルメタクリレートの使用量および得られたサンプルの各種物性値は表1の通りであった。全光線透過率は88%と透明であり、リゾチーム付着量も低く優れた防汚性を示したが、含水率が14.2%と低く好ましくなかった。
比較例5
上記実施例1のイミダゾリウム塩モノマーの代わりに、下記式(f)
Figure 0005560637
で表されるモノマーを用いて実施例1と同様の実験を行った。イミダゾリウム塩モノマー
と2−ヒドロキシエチルメタクリレートの使用量および得られたサンプルの各種物性値は表1の通りであった。全光線透過率が88%で透明であったが、含水率87.1%、リゾチーム付着量は4.97μg/cmであり共に高い値を示し好ましくなかった。
比較例6
上記実施例1のイミダゾリウム塩モノマーの代わりに、下記式(g)
Figure 0005560637
で表されるモノマーを用いて実施例1と同様の実験を行った。イミダゾリウム塩モノマー
と2−ヒドロキシエチルメタクリレートの使用量および得られたサンプルの各種物性値は表1の通りであった。全光線透過率が70%と低く濁りがあり、また含水率は77.7%、リゾチーム付着量は5.81μg/cmであり共に高い値を示し好ましくなかった。
Figure 0005560637
実施例6〜10、比較例7 抗菌評価
実施例1〜5および比較例3のモールドの代わりに、10cm角、厚さ3mmのガラス板2枚(うち1枚には剥離しやすいようにアルミシールを貼付)の間に、厚さ100μmのパラフィルムの中央部を切り抜いたものを2枚スペーサーとして挟み込んだものを使用し実施例1〜5および比較例3のレンズと同じ組成で実施例1と同様の手順でフィルムを作製した。実施例1〜5のレンズと同じ組成のフィルムをそれぞれ実施例6〜10、比較例3のレンズと同じ組成のフィルムを比較例7とした。イミダゾリウム塩構造を有するモノマーを含まないコントロールフィルムとしては実施例1中に示したコントロールレンズと同じ組成のフィルムを実施例1と同様の手順で作製した。得られたフィルムを3cm角に切り出したものを3枚用意し、JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2 プラスチック製品などの試験方法に基づき、コンタクトレンズ使用時にみられる代表的な細菌の一つである緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC 13275)に対する抗菌評価を行った。結果は表2の通りであった。イミダゾリウム塩構造を有するモノマーを含まないコントロールフィルムに対する対数菌濃度差は実施例1〜5と同様の組成で作製したフィルムでは−2以下であり優れた抗菌性を示した。一方、比較例3と同様の組成で作製したフィルムでは抗菌性を示さなかった。
Figure 0005560637
本発明は医療用材料に関するもので、該医療用材料はコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適に用いられる。

Claims (6)

  1. イミダゾリウム塩構造を有するモノマー2〜38重量%、および水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー62〜98重量%を共重合して得られるポリマーを含み、含水率が20〜50重量%である医療用材料。
  2. 前記ポリマーがさらに重合性基を2つ以上有するモノマーを0.1〜10重量%共重合して得られたものである請求項1に記載の医療用材料。
  3. 前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーが、ヒドロキシアルキルメタクリレートである請求項1または2に記載の医療用材料。
  4. 前記ヒドロキシアルキルメタクリレートが、2−ヒドロキシエチルメタクリレートである請求項1〜3のいずれかに記載の医療用材料。
  5. 該医療用材料の用途が眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バック、血液回路、創傷被覆材および薬剤担体から選ばれた1種である請求項1〜4のいずれかに記載の医療用材料。
  6. 該医療用材料の用途が眼用レンズである請求項1〜5のいずれかに記載の医療用材料。
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