JP5559516B2 - 電磁弁 - Google Patents

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本発明は、温水洗浄便座など流体制御部に用いられて流路を開閉する電磁弁であって、特に、固定鉄心と可動鉄心との衝突による衝撃音を低減したものに関する。
電磁弁として、例えば図4に示されるような構造のものが知られている。この電磁弁100は、導入ポート101a及び導出ポート101b及びその中途の弁孔101cを有するボディ101と、電磁コイル102の内周に固定的に配置された固定鉄心(センターポスト)103と、この固定鉄心103と同心的に配置され軸方向往復動可能な可動鉄心(プランジャ)104と、この可動鉄心104における固定鉄心103と反対側の端部に取り付けられたゴム状弾性材料からなる弁体105と、前記固定鉄心103と可動鉄心104の間に配置したばね106と、電磁コイル102の外側に配置されると共に固定鉄心103の外端に当接されたヨーク107とを備え、電磁コイル102への通電・断電によって可動鉄心104が往復動するのに伴い、弁体105が弁孔101cの周囲の弁座101dに離接してこの弁孔101cを開閉するものである。
この種の電磁弁100においては、電磁コイル102の通電によって固定鉄心103、可動鉄心104及びヨーク107を経由する磁気回路が形成され、可動鉄心104がばね106の付勢力に抗して固定鉄心103に磁気吸着される際に、その衝突による衝撃振動が発生する。そしてこの衝撃振動は固定鉄心103からヨーク107及びボディ101に伝達されるので、耳障りな騒音が外部に放射されてしまう問題があった。
そこで従来、このような騒音を抑制するため、固定鉄心103と可動鉄心104の間に、ゴム状弾性材料からなる緩衝体を介在させ、金属面同士が直接衝突するのを避けることにより衝撃音を防止することが知られている(例えば下記の特許文献1参照)。
特開2006−189140号公報
しかしながらこのような技術は、電磁コイル102に一定電圧を印加する通常の電磁弁には有効であるが、可動鉄心104が固定鉄心103へ磁気吸引された状態において、この可動鉄心104と固定鉄心103の間には緩衝体の介在による隙間が形成されるため、可動鉄心104に対する磁気吸引力の低下が避けられない。したがって、昨今の小型化や省電力化を目的とした可変制御、例えば一定周期で入力信号のレベルに応じてパルス幅を変調するPWM(Pulse Width Modulation)制御や、電流のデューティ比を制御するデューティ制御により消費電力を低減したものは、印加パルスのOFF時に、可動鉄心104がばね106の付勢力によって固定鉄心103から離脱して閉弁してしまうおそれがあり、あるいは離脱しなくても可動鉄心104がパルス状の磁界により振動してうなり音を発生しやすいといった問題があった。
したがって、上記特許文献のように、固定鉄心103と可動鉄心104の間に緩衝体を介在させる方法では、電磁弁の小型化が困難であると共に定電圧印加が必須であり、小型化や低消費電力化を求められる環境では採用が困難であった。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、電磁弁の小型化や低消費電力化を阻害することなく、可動鉄心が固定鉄心に磁気吸着される際に発生する耳障りな騒音を有効に低減することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る電磁弁は、電磁コイルと、この電磁コイルへの通電によって励磁される固定鉄心と、前記電磁コイルへの通電によって励磁され前記固定鉄心に磁気吸引される可動鉄心と、この可動鉄心と一体に動作して弁座と離接される弁体と、前記可動鉄心を前記固定鉄心から離間させる方向へ付勢するばねとを備える電磁弁において、前記固定鉄心が、前記電磁コイルの内周における軸方向内側に配置されて前記可動鉄心と接触可能な内側固定鉄心と、前記電磁コイルの内周における軸方向外側に配置されて前記内側固定鉄心と近接された外側固定鉄心からなり、前記内側固定鉄心と外側固定鉄心の間に緩衝体が介装され、前記内側固定鉄心は、その外周面に設けた環状凸部が、前記電磁コイルのボビンの内周面に設けた環状段差部または前記電磁コイルのボビンの内周に固定された円筒状の係止部材に設けた内向き鍔部と前記緩衝体との間に挟み込まることによって前記ボビンの内周に保持され、前記内側固定鉄心と前記外側固定鉄心との間には軸方向隙間が設定されているものである。
電磁弁の作動音は、可動鉄心と固定鉄心の直接衝突により発生し、その衝撃が固定鉄心から電磁弁の外部構成部品に伝播されることによって増幅されつつ放射されるが、請求項1の発明に係る電磁弁によれば、固定鉄心が内側固定鉄心と外側固定鉄心に分割されており、その間に緩衝体が介在しているので、電磁コイルへの通電時に可動鉄心がばねの付勢力に抗して内側固定鉄心に磁気吸着することにより内側固定鉄心に生じる衝撃は緩衝体により吸収され、外側固定鉄心への伝播が有効に低減される。しかも、緩衝体は固定鉄心と可動鉄心の間に介在させたものではないため、電磁コイルへの通電時には可動鉄心が内側固定鉄心と密接状態となり、このため両者は強い磁力による吸着状態が保持される。したがって、印加電圧をPWM制御あるいはデューティ制御した場合でも、可動鉄心がばねの付勢力によって固定鉄心から離脱したり、うなり音を発生したりすることがない。
また、請求項2の発明に係る電磁弁は、請求項1に記載された構成において、緩衝体が内側固定鉄心及び外側固定鉄心のうち一方に形成された溝又は凹部に保持されたものである。
また、請求項3の発明に係る電磁弁は、請求項1に記載された構成において、内側固定鉄心と外側固定鉄心の互いの対向端部のうち一方に筒状部が形成され、他方に前記筒状部の内周面と微小隙間を介して遊嵌される凸部が形成されたものである。
請求項2又は請求項3による構成とすれば、内側固定鉄心と外側固定鉄心との間の隙間を可及的に小さくして良好な磁気特性を維持することができる。
本発明に係る電磁弁によれば、可動鉄心が内側固定鉄心に磁気吸着することにより内側固定鉄心で発生して外側固定鉄心へ伝達される衝撃が、緩衝体により吸収され、しかもこの緩衝体は固定鉄心と可動鉄心間の磁気特性に影響しないため、電磁弁の小型化や低消費電力化を阻害することなく、耳障りな騒音を有効に低減することができる。
本発明に係る電磁弁の第一の形態を示す断面図である。 本発明に係る電磁弁の第一の形態における固定鉄心の構成を示す断面斜視図である。 本発明に係る電磁弁の第二の形態を示す断面図である。 従来技術に係る電磁弁の一例を示す断面図である。
以下、本発明に係る電磁弁の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明に係る電磁弁の第一の形態を示す断面図、図2は、この形態における固定鉄心の構成を示す断面斜視図である。
図1に示される電磁弁は、ボディ1と、電磁コイル2と、この電磁コイル2の内周に固定的に配置された固定鉄心3と、電磁コイル2の内周に固定鉄心3と同心的に配置され軸方向往復動可能であって弁体41が取り付けられた可動鉄心4と、前記固定鉄心3と可動鉄心4の間に配置したばね5と、電磁コイル2の外側に配置されて固定鉄心3及び可動鉄心4と共に磁気回路を形成するヨーク6とを備える。
ボディ1は、弁室11と、この弁室11へ流体を導入する導入ポート12と、前記弁室11から流体を外部へ導出する導出ポート13と、前記弁室11と導入ポート12の間に開設された弁孔14と、この弁孔14における弁室11側の開口に沿って形成された先細りの円筒状の弁座15と、弁室11を取り囲む環状の取付部16を有するものである。
電磁コイル2は、一端21aがボディ1における環状の取付部16の内周にOリング23を介して挿入された状態でこのボディ1に弁座15と同心的に取り付けられたボビン21に導線からなるコイル本体22が巻回されたものであって、外周をモールド24で覆われており、コイル本体22の両端は端子25,26に接続されている。
固定鉄心3は、電磁コイル2(コイル本体22)への通電によって励磁されるもので、電磁コイル2のボビン21の内周における軸方向内側に配置された内側固定鉄心31と、前記ボビン21の内周における軸方向外側に配置されて内側固定鉄心31と近接対向された外側固定鉄心32からなる。図2にも示されるように、外側固定鉄心32と対向する内側固定鉄心31の外端部には筒状部31aが形成され、内側固定鉄心31と対向する外側固定鉄心32の内端部には円柱状の凸部32aが形成され、この筒状部31aの内周面と凸部32aは、0.01〜0.3mm程度の微小な径方向隙間Gを介して互いに遊嵌されている。
内側固定鉄心31と外側固定鉄心32の間には、緩衝体33が介装されている。詳しくはこの緩衝体33は、ゴム状弾性材料又は緩衝性を有する合成樹脂材料で環状に形成されたものであって、軸方向に細長い断面形状をなし、外側固定鉄心32における凸部32aの根元から径方向へ立ち上がった肩部32bの外周面に形成された環状溝32cに保持されると共に、軸方向一端が内側固定鉄心31の筒状部31aの先端面と当接している。そしてこの緩衝体33によって、内側固定鉄心31と外側固定鉄心32の間(内側固定鉄心31の筒状部31aの先端面とこれに対向する外側固定鉄心32の肩部32bの間、及び外側固定鉄心32の凸部32aと内側固定鉄心31の筒状部31aによる相対的な凹部の底面との間)に僅かな軸方向隙間が存在している。なお環状溝32cは請求項2に記載の溝又は凹部に相当する。
外側固定鉄心32はOリング34を介してボビン21の内周に挿入されると共に外端部32dがヨーク6に当接されることによって抜け止めされ、内側固定鉄心31の筒状部31aの外周面に形成された環状凸部31bが、ボビン21の内周面に形成された環状段差部21bと、上述した緩衝体33との間に挟み込まれ、これによって外側固定鉄心32及び内側固定鉄心31がボビン21の内周に固定的に保持されている。
可動鉄心4は電磁コイル2(コイル本体22)への通電によって励磁され、固定鉄心3に磁気吸引されるものであって、電磁コイル2のボビン21の内周に軸方向往復動可能に遊挿されている。そして外周部が可動鉄心4における固定鉄心3と反対側の端部にカシメ固定された弁体41はゴム状弾性材料からなるものであって、ボディ1における弁座15に離接可能に対向されている。
ばね5は金属製のコイルスプリングであって、可動鉄心4における弁体41と反対側の端部に形成された有底穴内に保持されると共に、この有底穴の底部と固定鉄心3における内側固定鉄心31の内端部との間に適宜圧縮された状態に配置されることによって、可動鉄心4を内側固定鉄心31から引き離す方向、言い換えれば弁体41を弁座15に押し付ける方向へ常時付勢している。
ヨーク6は電磁コイル2(コイル本体22)への通電によって、固定鉄心3(内側固定鉄心31及び外側固定鉄心32)と可動鉄心4と共に磁気回路を形成するものであって、一端6aが電磁コイル2のボビン21とボディ1の取付部16との間に位置して固定されると共に、他端6bが前記ボビン21におけるボディ1と反対側の端部へ延びて、固定鉄心3における外側固定鉄心32の外端部32dに当接している。
以上の構成を備える第一の形態の電磁弁は、例えば温水洗浄便座の水噴射装置に用いられるものであって、電磁コイル2の非通電状態では、可動鉄心4がばね5の付勢力によって固定鉄心3の内側固定鉄心31から離れる方向へ向けて、言い換えれば弁座15側へ向けて押し出され、可動鉄心4に保持された弁体41が前記弁座15に密接されている。このため図1に示されるように、通常は弁孔14が閉塞された閉弁状態にある。
このとき、導入ポート12から弁室11内に導入されている洗浄水の圧力は、弁座15の外周側では可動鉄心4及び弁体41に対して開弁方向へ作用するが、この圧力は可動鉄心4における弁体41と反対側の面に対しては閉弁方向へ作用しており、その受圧面積のほうが大きいため、洗浄水の圧力によって不用意に開弁してしまうことはない。
また、電磁コイル2(コイル本体22)に通電されると、この電磁コイル2に発生する磁界によって固定鉄心3(内側固定鉄心31及び外側固定鉄心32)及び可動鉄心4が磁化され、ヨーク6を経由する磁気回路が形成されるので、固定鉄心3と可動鉄心4の間に作用する磁力によって、可動鉄心4がばね5の付勢力及び弁室11内の洗浄水の圧力による閉弁力に打ち勝って固定鉄心3側へ向けて変位し、内側固定鉄心31に吸着される。このため、可動鉄心4に保持された弁体41が弁座15から離間し、弁孔14が開放されて開弁状態となり、洗浄水が、導入ポート12から弁室11、弁体41と弁座15の間、及び弁孔14を経由して導出ポート13へ送られることになる。
そしてこの開弁動作に際しては、可動鉄心4が内側固定鉄心31に吸着され衝突することによって衝撃が発生するが、この衝撃による振動は、外側固定鉄心32との間に介在する緩衝体33によって吸収されるので、外側固定鉄心32への伝播が有効に低減される。したがって、衝撃振動が外側固定鉄心32から更にヨーク6へ伝播されることによりヨーク6から外部へ放射される耳障りな衝撃音を著しく低減することができる。
しかも、緩衝体33は固定鉄心3と可動鉄心4の間に介在させたものではないため、可動鉄心4が内側固定鉄心31と密接状態となり、このため可動鉄心4と内側固定鉄心31は強い磁力による吸着状態が保持される。したがって、印加電圧をPWM制御あるいはデューティ制御した場合でも、可動鉄心4がばね5の付勢力によって内側固定鉄心31から離脱して不用意に閉弁してしまったり、うなり音を発生したりするのを防止することができる。
したがって、上記構成によれば、電磁弁の小型化や低消費電力化のための印加電圧のPWM制御あるいはデューティ制御が可能であることから、電磁弁の小型化や低消費電力化を阻害することなく、耳障りな騒音を有効に低減することができる。
また、上記構成によれば、固定鉄心3は緩衝体33を介して内側固定鉄心31と外側固定鉄心32に分割されているが、この緩衝体33は外側固定鉄心32に形成された環状溝32cに保持されていて、軸方向一端のみがこの環状溝32cから突出して内側固定鉄心31の筒状部31aの先端面と当接しているため、内側固定鉄心31と外側固定鉄心32の間に形成される軸方向隙間は小さなものであり、しかも内側固定鉄心31の筒状部31aと外側固定鉄心32の凸部32aが互いに遊嵌された構造となっているので、この筒状部31aと凸部32aの間の径方向隙間Gも微小(0.01〜0.3mm)にすることができる。したがって、内側固定鉄心31と外側固定鉄心32の間で漏れ磁束が発生しにくく、前記筒状部31aと凸部32aを通る良好な磁気回路が形成されるので、固定鉄心3は緩衝体33を介して内側固定鉄心31と外側固定鉄心32に分割したことによる磁力の低下を有効に防止することができる。
図3は、本発明に係る電磁弁の第二の形態を示す断面図である。この形態において、上述した第一の形態と異なるところは、電磁コイル2のボビン21の内周面に図1のような環状段差部21bを形成する代わりに、ボビン21の内周に円筒状の係止部材35を設けた点にある。
詳しくは、係止部材35は、その外端に、Oリング34を保持するボビン21の内周の段差部に掛合される外向き鍔部35aが形成され、内端に、内側固定鉄心31の外周面に形成された環状凸部31bに掛合される内向き鍔部35bが形成されたものである。したがってこの構成によれば、内側固定鉄心31の外周面に形成された環状凸部31bは、外向き鍔部35aがボビン21の段差部とOリング34の間に挟持されることによってボビン21の内周に固定された係止部材35の内向き鍔部35bと、緩衝体33との間に挟み込まれることになり、これによって内側固定鉄心31が軸方向に保持されている。
なお、上述の各形態では、内側固定鉄心31の外端部に筒状部31aを形成し、外側固定鉄心32の内端部に凸部32aを形成したが、これとは逆に、内側固定鉄心31の外端部に凸部を形成し、外側固定鉄心32の内端部に筒状部を形成して、両者を微小な隙間を介して互いに遊嵌した構成としても良い。
1 ボディ
14 弁孔
15 弁座
2 電磁コイル
21 ボビン
3 固定鉄心
31 内側固定鉄心
31a 筒状部
32 外側固定鉄心
32a 凸部
33 緩衝体
4 可動鉄心
41 弁体
5 ばね
6 ヨーク
G 径方向隙間

Claims (3)

  1. 電磁コイルと、この電磁コイルへの通電によって励磁される固定鉄心と、前記電磁コイルへの通電によって励磁され前記固定鉄心に磁気吸引される可動鉄心と、この可動鉄心と一体に動作して弁座と離接される弁体と、前記可動鉄心を前記固定鉄心から離間させる方向へ付勢するばねとを備える電磁弁において、
    前記固定鉄心が、前記電磁コイルの内周における軸方向内側に配置されて前記可動鉄心と接触可能な内側固定鉄心と、前記電磁コイルの内周における軸方向外側に配置されて前記内側固定鉄心と近接された外側固定鉄心からなり、前記内側固定鉄心と外側固定鉄心の間に緩衝体が介装され、
    前記内側固定鉄心は、その外周面に設けた環状凸部が、前記電磁コイルのボビンの内周面に設けた環状段差部または前記電磁コイルのボビンの内周に固定された円筒状の係止部材に設けた内向き鍔部と前記緩衝体との間に挟み込まることによって前記ボビンの内周に保持され、
    前記内側固定鉄心と前記外側固定鉄心との間には軸方向隙間が設定されていることを特徴とする電磁弁。
  2. 緩衝体が内側固定鉄心及び外側固定鉄心のうち一方に形成された溝又は凹部に保持されたことを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
  3. 内側固定鉄心と外側固定鉄心の互いの対向端部のうち一方に筒状部が形成され、他方に前記筒状部の内周面と微小隙間を介して遊嵌される凸部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
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