JP5553537B2 - インクジェット記録装置および記録ヘッドの温度調整方法 - Google Patents

インクジェット記録装置および記録ヘッドの温度調整方法 Download PDF

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本発明は、インクジェット記録ヘッドに設けられた複数のノズルからインクを吐出させて記録を行なうインクジェット記録装置に関し、特にノズル内に設けた加熱素子の駆動によりノズル内のインクを吐出させて記録を行なうインクジェット記録装置に関する。
ノズル内に設けた加熱素子の駆動によりノズル内のインクを吐出させるインクジェット記録ヘッドにおいて、インクの吐出安定性および吐出量の一定化を図るためには、インク温度及び記録ヘッドの温度などが非常に重要なパラメータとなる。すなわち、インクの粘度や表面張力は温度によって変化し、それによって吐出されるインク滴の量(吐出量)が変化する。特に、吐出量は温度に対してほぼリニアに変化するため、低温環境では吐出量が小さくなり、濃度低下や濃度ムラを生じる。また、カラー記録装置では色味の変化が生じる。
そこで、記録ヘッドの外部や、内部にヒータ等を設け、記録動作前あるいは記録動作中に、記録ヘッドの温度が所定の範囲内となるようにヒータによって記録ヘッド内のインクを加熱することが行われている。現在行なわれている主な加熱方法としては、以下の方法が挙げられる。一つの方法としては、インク滴を吐出させるための熱エネルギーを発生する加熱素子を、吐出が行われない程度の短いパルスで駆動する方法(以下、短パルス加熱方法と称す)がある。また、他の方法としては、ノズル内において加熱素子とは別の加熱素子を基板の同一面に保温用のサブヒータを設け、インクを直接的あるいは間接的に加熱する方法(以下、サブヒータ加熱方法と称す)がある。いずれの方法においても、一般的な温度調節(温調)では、目標温度に達するまで短パルス加熱方法あるいはサブヒータ加熱方法を実施し、目標温度を越えると加熱を終了する、というシーケンスが実施されている。
このような加熱方法のうち、サブヒータを用いてインクを加熱する方法にあっては、基板内に吐出ヒータとサブヒータとを設けるためのスペースが必要となって基板及び記録ヘッドが大型化すると共に、コストが増大するという問題がある。特に、サブヒータを用いて基板全体の温度制御を行い、間接的にインクの温度調整を行なう場合には、基板の面温度分布を安定化させるために複数のサブヒータを配置するスペースが必要となる。このため、基板がさらに大型化するという問題が生じる。また、サブヒータによって加熱制御を行なうためには、大きな電力が必要となり、その電力供給を可能とする大容量の電源も必要となり、さらなるコスト増大を招くこととなる。
これに対し、吐出用の加熱素子を用いた温調制御では、記録ヘッド内のインクの中でも吐出に供されるインクを直接加熱するため、その加熱が効果的になされ、所定の目標温度に到達するまでの時間が比較的短くて済むという利点もある。すなわち、温調において比較的小さな電力量で速やかなインク温度の上昇を達成することができる。特許文献1には、このような短パルス加熱によって記録ヘッドの温調を行なう技術が開示されている。
特開2003−089196号公報 特開2005−206615号公報
しかしながら、特許文献1に示すような従来の短パルス加熱方式では、記録動作開始初期に以下のような問題が発生することが本発明者らの検討によって明らかとなった。すなわち、従来の短パルス加熱方式により、顔料分散インク及び染料インクを用いて記録を行なった場合、記録動作初期において記録された画像の濃度のみが、記録動作中に形成される画像の濃度に比較して増大または低下することが判明した。さらに、吐出量変動や吐出不良を解消するために行う短パルス加熱による温調制御方法が、使用条件によっては新たな吐出不良の原因になることもあった。特に、吐出不良の発生は、顔料分散インクを用いた場合に生じやすいことが本発明者らの検討により明らかとなった。
すなわち、顔料分散インクには所望の機能を考慮したインク処方設計をするにあたり、種々の水溶性有機溶剤が添加される。この時、溶剤が貧溶媒であるか良溶媒であるかによって、短パルス加熱による温調制御を実行した際に各ノズル内の顔料色材濃度が正常な状態とは異なる状態になるという知見が得られた。
これは各ノズル内の加熱素子による短パルス加熱による温調制御を行うと、先ず大気に触れている吐出口より水分が急激に蒸発し、吐出口近傍のインクは色材である顔料分散体水溶性有機溶剤の濃度が高い状態になる。この時、水溶性有機溶剤が貧溶媒である場合、顔料分散体の親水性エネルギーによっては、顔料分散体が各ノズルの後方の液室側に移動してしまい、吐出口付近には水溶性有機溶剤のみが存在した状態となる。以下、この現象を後退現象と称す。この後退現象が発生した状態では、インクの物性値が本来の状態とは異なる状態となることから、正常なインク吐出ができない場合がある。その上、インクが吐出された場合でも記録された画像に本来の色濃度が得られないという不具合も生じる。この弊害は、記録ヘッドに求められる最低温度が高くなればなるほど、またノズル内のインクが排出されてから、記録を行なうためのインク吐出が行なわれるまでの時間間隔が長くなればなるほど顕著になる。
本発明は、インクの後退現象を発生を低減させつつ、吐出用の加熱素子によって効率的に記録ヘッドの温度調整を行うことができ、濃度ムラや色ムラの発生及び吐出不良の発生を低減することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
すなわち、本発明は、インクを吐出する吐出口を有する複数のノズルそれぞれに対応して設けられた加熱素子を有する記録ヘッドと、前記吐出口からインクを吐出させない熱エネルギーを前記加熱素子で発生させる駆動制御手段と、を備えたインクジェット記録装置であって、前記駆動制御手段は、インクを吐出しない状態で前記吐出口を一定時間大気に開放した際の、前記ノズルに供給されたインクの色材の前記吐出口からの後退が発生しやすい第1のノズルに設けられた前記加熱素子で発生させる前記熱エネルギーを、前記第1のノズルよりも前記後退が発生しにくい第2のノズルに設けられた前記加熱素子で発生させる前記熱エネルギーよりも小さくするように制御することを特徴とする。
また、本発明の第2の形態は、インクを吐出する吐出口を有する複数のノズルそれぞれに対応して設けられた加熱素子を有する記録ヘッドの温度を制御する記録ヘッドの温度調整方法であって、前記吐出口からインクを吐出させない熱エネルギーを発生させる工程を備え、前記熱エネルギーを発生させる工程は、インクを吐出しない状態で前記吐出口を一定時間大気に開放した際の、前記ノズルに供給されたインクの色材の前記吐出口からの後退が発生しやすい第1のノズルに設けられた前記加熱素子で発生させる前記熱エネルギーを、前記第1のノズルよりも前記後退が発生しにくい第2のノズルに設けられた前記加熱素子で発生させる前記熱エネルギーよりも小さくすることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録装置によれば、インクの後退現象などの弊害を発生を効率的に低減しつつ、吐出用の加熱素子によって良好な記録ヘッドの温度調整を行うことが可能になる。このため、濃度ムラや色ムラの発生及び吐出不良の発生を低減することが可能になると共に、消費電力の削減を図ることが可能となる。
本発明を適用可能なインクジェット記録装置の実施形態を示す外観斜視図である。 第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドとカートリッジを示す図であり、(a)は上方から観た外観斜視図であり、(b)は下方から見た外観斜視図である。 ヘッドチップの内部構造、特にノズル構造の一例を示す図であり、(a)は一部切欠斜視図、(b)は、(a)に示したもののb−b線断面図である。 第1の実施形態で用いる記録ヘッドのヘッドチップに形成されている各ノズル群の配置構成、及び各ノズル群におけるヒータの配置を示す図である。 第1の実施形態における制御系の概略構成を示すブロック図である。 図5に示すヘッドドライバの概略構成を示すブロック図である。 (a)は流路にインクを充填した初期状態を、(b)は流路に充填されるインクのうち吐出口近傍のインクの顔料色材濃度が薄くなった後退現象の発生状態をそれぞれ示している。本発明を適用可能なインクジェット記録装置の実施形態を示す外観斜視図である。 第1の実施形態において用いる短パルスを説明するためのタイミングチャートである。 第1の実施形態におけるノズル列の時分割駆動を示すタイミングチャートである。 第1の実施形態において実施する短パルス加熱の加熱条件の例を示す図である。 図11は、本実施形態のインクジェット記録装置における、短パルス加熱の温調シーケンスを示すフローチャートである。 第1の実施形態における第1のヒータ列1と、第2のヒータ列2の短パルス加熱条件を示したものである。 第2の実施形態における第1のヒータ列1と、第2のヒータ列2の短パルス加熱条件を示したものである。 第3の実施形態における第1のヒータ列1と、第2のヒータ列2の短パルス加熱条件を示したものである。 第4の実施形態における記録ヘッドの基板を示す説明拡大図である。 第5の実施形態における記録ヘッドの基板を示す説明平面図である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
[第1の実施形態]
(インクジェット記録装置全体)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の実施形態を示す外観斜視図である。本実施形態のインクジェット記録装置50はシリアルスキャン方式の記録装置であり、ガイド軸51,52によって、キャリッジ53が矢印Aの主走査方向に移動自在にガイドされている。キャリッジ53は、キャリッジモータおよびその駆動力を伝達するベルト等の駆動力伝達機構により、主走査方向に往復動される。キャリッジ53には、インクジェット記録ヘッド10(図1においては不図示)と、そのインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)10にインクを供給するインクタンク54が搭載される。本実施形態において、インクタンク54としては、図2に示すように、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクそれぞれを別個に貯留する4個のインクタンク54K,54C,54M,54Yがそれぞれ搭載されている。この記録ヘッド10とインクタンク54とにより、インククジェットカートリッジが構成されている。
記録媒体Pは、装置の前端部に設けられた挿入口55から挿入された後、その搬送方向が反転されてから、送りローラ56によって矢印Bの副走査方向に搬送される。インクジェット記録装置50は、記録ヘッド10を主走査方向に移動させつつ、プラテン57上の記録媒体Pの記録領域に向かってインクを吐出させる記録動作と、その記録幅に対応する距離だけ記録媒体Pを副走査方向に搬送する搬送動作と、を繰り返す。これによって、記録媒体P上に順次画像を記録する。なお、本実施形態の記録装置は、記録媒体の同一記録領域に対し記録ヘッドの複数回の記録走査によって画像を完成させるマルチパス記録方式と、同一記録領域に一回の記録走査で画像を完成させる1パス記録方式のいずれも実施可能なものとなっている。
キャリッジ53の移動領域における図2中の左端には、キャリッジ53に搭載された記録ヘッド10の吐出口15の形成面と対向する回復系ユニット(回復処理手段)58が設けられている。回復系ユニット58には、記録ヘッド10の吐出口8のキャッピングが可能なキャップと、そのキャップ内に負圧を導入可能な吸引ポンプなどが備えられている。この吸引ポンプによって、吐出口8を覆ったキャップ内に負圧を発生させることにより、吐出口8からインクを吸引排出させて、記録ヘッド10の良好なインク吐出性能を維持すべく回復処理(吸引回復処理ともいう)をする。また、キャップ内に向かって、記録ヘッドのノズルの吐出口から画像の寄与しないインクを吐出させることによって、記録ヘッド10の良好なインク吐出性能を維持すべく回復処理(吐出回復処理ともいう)をすることもできる。
(インクジェット記録ヘッド)
図2は、第1の実施形態のインクジェットカートリッジの具体的構成を示す図であり、(a)は上方から観た外観斜視図であり、(b)は下方から見た外観斜視図である。以下、これらの図2を参照して各構成要素の説明を行う。
本実施形態のインクジェットカートリッジ18は、記録ヘッド10と、記録ヘッド10に着脱自在に設けられたインクタンク54(54K,54C,54M,54Y)とから構成されている。記録ヘッド10は、インクタンク54から供給されるインクを、記録情報に応じて吐出する複数のノズルからなるノズル群を備えたヘッドチップ21,22と、これらヘッドチップ21,22を保持するホルダ11などから構成されている。ヘッドチップ20は、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラーインクそれぞれを吐出する3つのノズル群を備えたカラーインク吐出用のヘッドチップ(カラーのヘッドチップ)となっている。また、ヘッドチップ21は、ブラックインクを吐出するノズル群を備えたブラックインク吐出用のヘッドチップ(ブラックのヘッドチップ)であり、各ヘッドチップ20,21は、いずれも単一の基板を構成部材として備える。
また、インクジェットカートリッジ18は、インクジェット記録装置本体に載置されているキャリッジ53(図1参照)に対して、位置決め手段および電気的接点などによって固定可能であり、かつ必要に応じてキャリッジ53からの取り外しも可能となっている。インクタンク54K,54C,54M,54Yは、記録ヘッド10の一部を構成するタンクホルダに対して着脱自在に設けられるものであり、それぞれのインクタンクが独立して交換可能となっている。従って、貯留量が不足したインクタンクのみを交換することができ、記録のランニングコストを低減することができる。但し、本発明は、この形態に限定されるものではなく、インクジェット記録装置の本体に装着されたインクタンク(不図示)よりチューブを介して記録ヘッドへのインクの供給を行なう形態を構成するものにも適用可能である。
図3は、ヘッドチップの内部構造、特にノズル構造の一例を示す図であり、(a)は一部切欠斜視図、(b)は、(a)に示したもののb−b線断面図である。なお、カラーヘッドチップ20とブラックヘッドチップ21は、同一のノズル構造を有しているため、ここでは、ブラックヘッドチップ21のノズル構造を例に採り説明する。
図3に示すように、ヘッドチップ21は、主に、基板25と、この基板25上に設けられた流路形成部材26と、この流路形成部材26に設けられた吐出口形成部材27とを有する。基板25には、記録ヘッドのホルダ11に装着されたインクタンク54から供給されたインクをヘッドチップ21内に導くインク供給口29が形成されている。また、吐出口形成部材28にはインク供給口29の左右両側に複数の吐出口29a,29bが整列した状態で形成されている。本例では、インク供給口の左右両側に、それぞれ複数の吐出口からなる吐出口列が1列ずつ配置され、この2つのノズル列によってブラックインクを吐出するノズル群が構成されている。インク供給口28から吐出口29a,29bに亘って流路30a,30bが形成され、この流路30a,30bと吐出口29a,29bとによってインク滴を吐出するためのノズルが構成されている。なお、以下の説明において、吐出口29aと29bとを特に区別する必要がない場合には、吐出口29と記すこともある。同様に、流路30aと30b、ヒータ31a,31bについても流路30、ヒータ30として記す場合もある。
また、基板25の内面(図では、上面)には、各流路の吐出口と対向する位置に一つずつ電気熱変換体からなる加熱素子(以下、ヒータともいう)31a,31bが配列されている。従って、ヒータ31a,31bもインク供給口28の左右両側に列状に配列されており、以下、このヒータの列をヒータ列と称す。このヒータ31a,31bから発生させた熱エネルギー(第1の熱エネルギー)により流路内のインクが加熱されて気泡が発生し、その気泡の圧力によって吐出口29a,29bからインク滴が吐出される。
なお、カラーのヘッドチップ20におけるノズルも、ブラックのヘッドチップ21のノズルと同様の構造を有する。但し、カラーのヘッドチップ20には、図3に示した2つのノズル列からなるノズル群が、シアン、マゼンタ、イエローのインクそれぞれに対応した複数のノズル群が、主走査方向に沿って配列されている。
図4は、本実施形態で用いる記録ヘッド10のヘッドチップに形成されている各ノズル群の配置構成、及び各ノズル群におけるヒータの配置を示す図である。ここでは、本実施形態で用いた高密度記録を実現するためのカラーのヘッドチップ20を例に採り説明する。本例では1列当たり600dpi(ドット/インチ)のピッチ(約42μmピッチ)で吐出口29a,29bを配列した吐出口列を1色当たり2列設けられている。このインクを吐出する2列の吐出口列は、互いに副走査方向(搬送方向)に約21μmずらして設けてある。このため、各ノズル群では、副走査方向(B方向)において1200dpiの解像度での記録を行うことが可能になっている。さらに、図示の例では、記録ヘッド10の往方向への記録走査と、復方向への記録走査のいずれにおいても、3色に対応する吐出口列が、主走査方向における往方向と復方向のいずれにおいても同一の順序で並ぶように配置されている。すなわち、各吐出口列から吐出されるインクの色は、ヘッドチップの図中左側から、シアン、マゼンタ、イエロー、マゼンタ、イエローとなっており、合計5つのノズル群によって構成される。記録動作時には、往復両方向への走査において、いずれも各色毎に1つのノズル群を用いて記録動作を行う。
なお、本例では、各走査毎に合計6列のノズル列を用いて1200dpiの解像度で画像の記録を行う単一構造のヘッドチップを例に採り説明したが、ヘッドチップの構成はこれに限定されない。
(制御系)
次に、上述したインクジェット記録装置の各部の記録制御を実行するための制御系の概略構成について、図5に示すブロック図を参照して説明する。
インクジェット記録装置50に設けられた制御装置200は、インターフェース22を介してホストコンピュータなどの外部装置が接続されている。制御装置200には、MPU223と、ROM224、DRAM225、及びゲートアレイ(G.A)などが設けられている。MPU223は、ROM224などに格納された制御プログラムに従って後述の記録動作を含む各部の動作の制御を司る。DRAM225には、各種データ(上記画像データや記録ヘッド21に供給される記録データ等)を一時的に保存するが設けられ、ここには、吐出口単位の記録実行ドット数や記録領域等の情報が記憶される。ゲートアレイ(G.A.)26は、記録ヘッド21に対する記録データの供給制御を行うものであり、インターフェース22、MPU23、およびRAM25間のデータ転送の制御も行う。また、制御装置200には、モータドライバ229を介して記録媒体を搬送する搬送モータ228が接続されると共に、キャリアモータ231を介してキャリアモータ230が接続され、さらに、ヘッドドライバ240を介して記録ヘッド21が接続されている。
上記制御系において外部装置からインターフェース222を介して画像データが制御装置200へと送られると、ゲートアレイ226とMPU223との間で、画像データが記録データに変換される。そして、この記録データに従ってモータドライバ29が駆動されると共に、ヘッドドライバ227に送られた記録データ及び制御信号に従って記録ヘッド10の各ノズルに設けられたヒータが駆動され、記録動作が行われる。本実施形態では、各ヒータ列は、複数のブロックに分割されており、各ブロックに属するヒータが図6に示すブロック駆動時分割で駆動される。
図6は、ヘッドドライバ240の概略構成を示すブロック図であり、ブロック選択回路241、記録データ供給回路242及び駆動回路243を備える。ブロック選択回路241には、MPU23から出力されたブロック制御信号に基づいて、駆動すべきブロックに属するヒータを選択する選択信号S1を出力する。
ブロック選択回路241は、シリアルに供給されるブロック制御信号が転送されるシフトレジスタと、シフトレジスタから転送されたブロック制御信号をラッチするラッチ回路と、ラッチ回路からの制御信号に対応する選択信号を出力するデコーダとを備える。
また、記録データ供給回路24は、MPU23からシリアル転送された記録データを、選択信号に同期した所定のタイミングでパラレルの信号として駆動回路に出力する。具体的には、MPU23から転送されたシリアルの記録データをパラレルに出力するシフトレジスタと、シフトレジスタから出力された記録データをラッチするラッチ回路を有する。さらに記録データ供給回路24は、ラッチ回路から出力されたラッチデータを、MPU23から出力されたヒートイネーブル信号(HE)との論理積を出力するアンド回路を備える。
駆動回路243は、ブロック選択回路241から出力された選択信号及び記録データ供給回路242から出力された記録データに基づき、ノズル列の中で駆動すべきブロックに属するノズルに対応するヒータに駆動電流を供給する。具体的には、駆動回路243は、選択信号と記録データとの論理積を出力するアンド回路と、アンド回路からの出力によってヒータに対し駆動電流の供給、遮断を切り換えるスイッチング素子などを備える。
このように構成されたヘッドドライバ240において、記録開始時には、まず、最初の1列に記録される記録データがシリアルで記録データ駆動回路242に入力される。記録データ駆動回路242では、前述のように転送されてきたシリアルの記録データがシフトレジスタにおいてパラレル信号に変換されてラッチ回路にラッチされ、このラッチ信号とのヒートイネーブル信号との論理積がアンド回路から出力される。一方、ブロック選択回路241では、MPU223からの選択データがシフトレジスタ及びラッチ回路を経てデコーダに入力され、ここから、駆動すべきブロックに属するノズル選択信号が出力される。このブロック選択信号と記録データとの論理積が駆動回路243からヒータ駆動信号といして出力され、このヒータ駆動信号に基いてヒータへの電流の供給、遮断が行われる。このヒータへの電流の供給、遮断によってインクの吐出、非吐出が制御され、画像の記録が行われる。なお、この記録動作において、ヒータに電流が供給された場合には、ノズルヒータに大きな熱エネルギー(第1の熱エネルギー)が発生し、この熱エネルギーによってノズル内のインクに気泡が発生し、インクが吐出される。なお、ヘッドドライバ240と、制御装置200とにより、記録ヘッドの加熱素子の駆動を制御する駆動制御手段が構成されている。
ところで、低温環境下において記録動作時のノズルにおけるインク吐出動作を適正に行うに行うためには、記録ヘッド10内のインクを適正な温度に保つべく、記録ヘッドを加熱することが必要となる。このため、従来よりインク吐出に使用する加熱素子を用いて、記録ヘッドを加熱する予備加熱が行なわれている。この予備加熱では、ノズルからインクが吐出されない程度の熱エネルギー(第2の熱エネルギー)を発生させ、この熱エネルギーによって基板、インクなどの加熱を行うようになっている。しかしながら、貧溶媒を有するインクを用いて記録動作を行う場合、記録ヘッドを加熱すると、以下に説明するように、ノズルの吐出口近傍のインク中の顔料色材濃度が薄くなる現象(以下、後退現象と称す)が発生することがある。
(インク)
本実施形態において効果を発揮するインク、すなわち上記の後退現象が発生し易いインクとしては次のようなものが挙げられる。
すなわち、水、分散剤なしに水に分散可能な顔料と水とを含有する自己分散型顔料または樹脂を介して水に分散可能とされた顔料で構成される分散色材、及び複数の水溶性有機溶剤(水溶性色材)、を有する水性インクが一例として挙げられる。特に複数の水溶性有機溶剤が分散色材に対する貧溶媒を有する水性インクである場合、特に有効となる。
ここで、貧溶媒を有するインクにおいて、吐出口近傍のインク中の顔料色材濃度が薄くなる現象(以下、後退現象と称す)が発生について説明する。図7(a)は流路30にインク9を充填した初期状態を、図7(b)は流路30に充填されるインク9のうち吐出口29近傍のインクの顔料色材濃度が薄くなった状態(後退現象発生状態)をそれぞれ示している。
この後退現象は水溶性に処理した顔料分散体の表面エネルギーや、親水性の強弱とインク溶剤として使用する貧溶媒の水溶性有機溶剤によって変化する。顔料分散体の表面エネルギーや、親水性の強弱は、例えば、自己分散としてカーボンブラックに対する官能基の処理量、または樹脂分散顔料の樹脂モノマー種、樹脂添加量によって変化する。これらの顔料分散体に所望の機能を考慮したインク処方設計をするにあたり、種々の水溶性有機溶剤が添加される。
顔料の後退現象は、次のような状態において発生する。すなわち、記録ヘッドからインクが吐出されない状態で一定時間大気に開放され、吐出口部近傍のインク成分から水分が多く放出されると、顔料分散体と水溶性有機溶剤の濃度が高まる。この際、親水性を有する顔料分散体は、水溶性有機溶剤の種類によって、水分の多く分布されるノズルの後方(吐出口とは反対方向)に移動し、吐出口近傍から色材成分が引いて薄くなる。これが後退現象である。
但し、この後退現象の発生のし易さは、インクの組成によって異なる。例えば、顔料分散体、水溶性有機溶媒としてのグリセリン、及び水で構成された顔料インクは、グリセリンに良溶媒の性質が強いことから、顔料分散体の親水性エネルギーによっては良溶媒を有するインクの性質が強く見られる。良溶媒を有するインクは、貧溶媒を有する顔料インクに比べ、後退現象が発生するまでの時間はかなり長くなる。
このように、インクには、顔料分散体の種類(インク色の差)、及びインク処方差によって、後退現象が発生するまでの時間に差が生じる。
本実施形態は、この後退現象の起こりやすさ(起こりにくさ)の差に着目したものである。
後退の起こり易さは特許文献2に示されているように、インク中に含有される複数の水溶性有機溶剤各々のブリストウ法によって求められる。しかし、色材が異なるインク間で後退現象を比較する際は、記録ヘッド内に充填したインクのある一定時間内でどの程度後退するかを顕微鏡等で観察する方法が簡便である。
本実施形態に用いられる貧溶媒の代表的なインク組成としては、色材 5%、グリセリン5%、PEG600 10%等 が含まれるインク組成があった。一方、良溶媒系のインク組成としては色材5%、グリセリン10%、エチレングリコール 10%等が含まれるインク組成があった。
(記録ヘッドの温度調節)
上記のような後退現象の発生を抑えるため、この第1の実施形態では、低温環境下における記録動作の前に記録ヘッドに対して以下のような予備加熱を行うことにより、記録ヘッドの温度調節を行う。
この第1の実施形態では記録ヘッドに対する温度調節(温調)として、通常吐出のために駆動されるヒータに発泡が生じない程度のパルス幅を印加することで周囲のヘッド基板及びインクを直接的に加熱する短パルス加熱を行う。
図8(a)ないし(c)は、この第1の実施形態において用いる短パルスを説明するための図である。(a)に示す内部生成パルスP1は、予め設定された駆動周期(PTTT01)および駆動デューティー(PTTT00)に従って発生される周期的なパルスであり、これが、記録動作時における記録データと同様に記録データ供給回路242に入力される。また、(b)の内部生成パルスP2は、駆動すべき各ブロックに対する駆動期間(PTTT02)の設定に従って発生され、ブロック制御信号としてブロック選択回路に入力される。そして、内部生成パルスP1及び内部生成パルスP2の2つのパルスの論理積をとることによって合成した(c)に示すパルスP3が、ヒートイネーブル信号としてヘッドドライバ240の記録データ供給回路242に供給される。
なお、本実施形態における記録ヘッド10は、図9に示すように、各ヒータ列における全てのヒータを24のブロックに分割して各ブロックに属するヒータ毎に時分割で駆動される。従って、駆動周波数を設定することにより各ヒータを駆動する周期が決定される。
図10は、この第1の実施形態において実施する短パルス加熱の加熱条件の例(短パルス加熱条件1及び短パルス加熱条件2)を示す図である。ここでは、短パルス加熱条件として、駆動周波数(Fop)と各ブロックに対する駆動期間PTTT02と、各ブロックに対して印加されるヒートイネーブル信号HEのPTTT00及びPTTT01との関係を表している。
(短パルス加熱における温調シーケンス)
図11は、本実施形態のインクジェット記録装置における、短パルス加熱の温調シーケンスを示すフローチャートに示したものである。まず、ステップS600でホスト装置から記録データを受信するとステップS601でタイマ割り込み処理が起動され、ステップS602で記録ヘッドの温度を測定部で測定する。その後、ステップS603にてステップS602での測定結果と目標温度Tmを比較して、測定結果が目標温度Tmよりも低ければ(NO)、ステップS604へ移行し、測定結果が目標温度よりも高ければ(YES)、ステップS606へと移行する。ステップS606では、記録データに基づいて短パルス加熱のために使用吐出口群の予備吐出を行うべく各ヒータが駆動され、その後、ステップS607で記録を開始する。
一方、ステップS604では、所定の短パルス加熱を実施(ON)した後、ステップS605で、短パルス加熱を終了(OFF)する。そしてステップS606に移行して予備吐出を行い、ステップS607で記録を開始する。
図12は、図4(b)に示すように、複数のヒータ列を第1の短パルスによって駆動される第1のヒータ列1と、第2の短パルスによって駆動される第2のヒータ列2とに分けた場合の、各ヒータ列の短パルス加熱条件を示したものである。ここで、(a)が第1のヒータ列(第1の加熱素子列)の短パルス加熱条件を示し、(b)が第2のヒータ列(第2の加熱素子列)の短パルス加熱条件を示している。
この第1の実施形態では、短パルス加熱のために各ヒータを駆動する場合、第1のヒータ列と第2のヒータ列の間で駆動パルス幅を変えている。これは、前述のように、第1、第2のヒータ列それぞれに対応するインクの処方の差異によって、色材の後退現象が発生するまでの時間に差が生じるためである。
この第1の実施形態では、この後退現象の起こり易さの差によって、予め第1のヒータ列の短パルス加熱条件を使用するか、第2のヒータ列の短パルス加熱条件を用いるかを予め決定しておく。例えば、マゼンタインクが、シアンインク及びイエローインクと比較して水溶性有機溶媒として貧溶媒のものを用いており、ヒータの短パルス加熱により後退現象が顕著に起こる場合、このマゼンタに対応するヒータ列を第1のヒータ列とする。そして、マゼンタに隣接して配置されるシアンおよびイエローのヒータ列を第2のヒータ列とする。つまり、第1のヒータ列の加熱条件と、第2のヒータ列の加熱条件とを比較した場合、第のヒータ列の各ヒータに供給する主パルス幅は0.12μsであるのに対して第のヒータ列の各ヒータに供給する主パルス幅は、0.06μsと半分になっている。これは、第1のヒータ列の各ヒータに供給される単位時間当たりの電気的エネルギーを、第2ヒータ列の各ヒータに供給する単位時間当たりの電気的エネルギーよりヒータにおける熱の発生量を積極的に少なくしていることを意味する。
この結果、後退現象の起こりやすいマゼンタインクに対応するヒータ自体は極力短パルス加熱を少なくし、後退現象を加速しないよう留意しながら、隣接する第2のヒータ列から発生させた、より高い加熱条件で基板25の温度を上げる。つまり、シアンのヒータ列及びイエローのヒータ列は第2のヒータ列2の加熱条件によって記録前の温調を積極的に行う。これにより、第2のヒータ列から基板25を介して伝播した熱によって隣接するマゼンタのヒータ列近傍の基板温度も上げるようにする。
この際、短パルス加熱を実行したヒータ16近傍は、温度上昇に伴いノズル内のインク温度も上昇している。これにより、インク種によってはインク溶媒分が吐出口から蒸発することにより、インク色材成分が吐出口29から後退し、色濃度が薄くなる変化が起こる。よって各ノズル内のインクを正常な状態にするために、記録ヘッド21が記録媒体上面以外の位置でのインク予備吐出を実行する必要が生じる。
但し、予備吐出を頻繁に実施することは記録開始前に要する時間の増大に繋がると共に、インク温度の低下を来たし、温調を実施することによる効果が薄れる可能性がある。従って、1つの画像記録途中にこの動作が必要となると、記録媒体上のインク浸透時間のばらつきにより画像ムラ等の弊害を起こし、記録装置の性能低下に繋がる。よって予備吐出を少なくすることは重要であり、本実施形態では短パルスヒータ加熱によって顔料色材が後退しやすいヒータ列はなるべく低い熱を発する加熱条件で短パルスヒータ加熱するため、予備吐出を比較的少なくすることができる。
従来の方式で短パルス加熱を実施した場合、正常状態のインク吐出に回復するため通常の記録開始前は10〜1000発程度の予備吐出が必要であった。これに対し、本実施形態によれば、通常の記録開始前は0〜10発程度に抑えることが可能となり、インク消費量の削減、記録動作前の予備吐出時間の削減、予備吐出によるインク温度の低下の軽減が可能となった。
図4(a)は、この第1の実施形態における記録ヘッド21のノズルにおいて、短パルス加熱の条件をヒータ列によって変更した状態を説明する図である。
図4(a)に示すように、第1の実施形態において短パルス加熱を行う各ヒータ31は、対応するインク成分による後退現象の起こり易さによって第1のヒータ列1と第2のヒータ列2に分類されている。
ここで、まず、前述した後退の起こりやすいインクは、ヘッドチップ21内の第1のヒータ列1に対応したノズルに供給される。これに対し、比較的後退の起こりにくいインクは第2のヒータ列2に対応したノズルに供給される。この際、インクジェット記録装置に搭載されるインクの中で特に後退現象が起こりやすいインクを予め調査しておく。そして、記録ヘッド21の複数のインク供給口28に対するインクの配置順を決定する際、後退現象が起こり易いインクは複数の供給口28のうち最端部以外の位置を選択して配置する必要がある。そして、そのインクの隣接した位置には後退を起こしにくいインクを配置する。
このように、インクの組成により短パルス加熱温調時に発生する後退現象の差を利用して、後退が起こりやすいインクが供給されるノズル列に隣接するノズル列には、後退現象の起こりにくいインクを供給する。そして予備加熱の際は後退現象の起こりにくいインクが供給されるノズル列に対応する第2のヒータ列2を積極的に利用してインク供給口間領域の基板温度調整を行う。一方、後退現象が起こり易いインクが供給されるノズル列に対応する第1のヒータ列1は弱いエネルギーで温調し、温調に必要な熱エネルギーは第2のヒータ列2から基板を伝播してくる熱エネルギーを利用する。つまり、吐出口からの溶媒分の蒸発を抑えた上で、第1のヒータ列1近傍の基板温度調整も完了できる。
上述の方法によって、本発明のインクジェット記録装置は、インク組成比の変化がおこりにくく、記録画像に濃淡ムラ等が無く、かつ記録において不吐出等の発生がない、最適な吐出状態を得ることができる。また、本実施形態のインクジェット記録装置では、基板温度調整用の加熱部を別個に設ける必要がないため、高密度化、高詳細化及び低コストを実現することができた。
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態においても図1ないし図8に示す基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
図13は、図4に示すように、複数のヒータ列を第1の短パルスによって駆動される第1のヒータ列1と、第2の短パルスよって駆動される第2のヒータ列2とに分けた場合の、各ヒータ列の短パルス加熱条件を示したものである。ここで、(a)が第1のヒータ列(第1の加熱素子列)の短パルス加熱条件を示し、(b)が第2のヒータ列(第2の加熱素子列)の短パルス加熱条件を示している。
図13に示すように、第2の実施形態では、短パルス加熱のために各ヒータを駆動する場合、第1のヒータ列1における各ヒータの駆動周波数と、第2のヒータ列2における各ヒータの駆動周波数とを異なる周波数に設定している。これによれば、第1のヒータ列1にて発生される熱エネルギーよりも、第2のヒータから発生される熱エネルギーを高めることが可能となり、後退現象の発生を抑えつつ、基板25及びインクの加熱を実現することができる。
但し、この場合には、記録ヘッドや記録装置の電源電圧条件等に合わせて第2のヒータの加熱による発泡が生じないような周波数の設定を行うことが好ましい。
[第3の実施形態]
次に本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態においても、図1ないし図8に示す基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
図14は、図4に示すように、複数のヒータ列を第1の短パルスによって駆動される第1のヒータ列1と、第2の短パルスよって駆動される第2のヒータ列2とに分けた場合の、各ヒータ列の短パルス加熱条件を示したものである。ここで、(a)が第1のヒータ列(第1の加熱素子列)の短パルス加熱条件を示し、(b)が第2のヒータ列(第2の加熱素子列)の短パルス加熱条件を示している。
本実施形態では、短パルス加熱のために各ヒータを駆動する場合、第1のヒータ列1はパルスを印加せず、第2のヒータ列2の各ヒータにのみパルスを印加している。従って、本実施形態においては、記録ヘッドの基板25及びインクに対する予備加熱は、第2のヒータ列2の各ヒータによってのみ実施されることとなり、第1のノズル列におけるインクの後退現象を抑えつつ、調温を実施することができる。
[第4の実施形態]
次に本発明の第5の実施形態を説明する。なお、本実施形態においても、図5及び図6に示す基本的な構成は第1の実施形態と同様である。但し、本実施形態においては、記録ヘッドに図15に示すような構成を有するものとなっている。図15に示す記録ヘッドの基板25には、同色のインクを供給する複数のインク供給口28が形成され、各インク供給口28に間には、同色のインクを吐出する複数の吐出口からなる吐出口列が複数(図ではL1,L2,L3の3列)配置されている。ノズル列L1,L2を構成する複数のノズル29A,29Cの開口面積は同一であり、吐出口列L2を構成する複数の吐出口29Bの開口面積は、ノズル29A,29Cより小さくなっている。このように、開口面積の異なる吐出口が形成された記録ヘッド(ヘッドチップ)の場合、より吐出口面積の大きいノズル29A,29Cに対しては、第1のヒータ列1の短パルス加熱条件を適用する。そして、より吐出口面積の小さいノズル29Bに対しては第2のヒータ列の短パルス加熱条件を適用する。
これは、短パルス加熱時にインク吐出口からインク溶媒分が蒸発することが、色材の後退現象を促進していることに着目した制御方法である。すなわち、開口面積が大きな吐出口のノズルと、開口面積が小さい吐出口のノズルにおいて、両ノズルに供給されるインクがいずれも後退現象を生じやすい同一のインクであるとすると、開口面積の大きな吐出口を有するノズルの方が後退現象が生じ易い。例えば、図15に示す吐出口29A,29B,29Cにおいて、これらから吐出されるインクがいずれも後退現象の発生し易い同一のインクであったとすれば、吐出口29A,29Bそれぞれに連通するノズルの方が、インクの後退現象が生じ易い。このため、開口面積の小さい吐出口を有するノズルに対応するヒータには、比較的大きな電気的エネルギーを供給して短パルス加熱を行い、開口面積の大きな吐出口を有するノズルに対応するヒータには、比較的小さな電気的エネルギーを供給する。これにより、後退現象の発生を抑えつつ、記録ヘッドの基板25及びインクの予備加熱を行なうことが可能となる。
この制御方法は、同色インク間だけでなく、上記実施形態のように異なる種類のインクを吐出するノズルにも応用することができる。すなわち、開口面積が異なり、かつ吐出するインクの種類も異なる複数種のノズルが存在する場合、開口面積の大小と、インクの後退現象の発生のし易さとを考慮して、短パルス加熱の加熱条件を設定するようにしても良い。
以上の第1ないし第4の実施形態においては、記録時に吐出されるインクの組成比の変化や、記録画像に発生する濃淡ムラを抑えることが可能になると共に、記録ヘッドの記録時における吐出不良の発生を軽減することが可能になる。このため、良好な吐出性能を維持することができ、高品位な画像の形成が可能になる。また、以上の第本発明のインクジェット記録装置は、基板温度調整用の加熱部を別個に設ける必要がいため、高密度化、高詳細化及び低コストを実現することができる。さらに、吸引回復、予備吐出などを行なう回数を低減できるため、インクの消費量を削減することができ、ランニングコストの低減を図ることが可能になると共に、インクの排出に伴う記録ヘッドの温度低下を軽減でき、良好な温調が可能になる。
[第5の実施形態]
次に本発明の第5の実施形態を図13に基づき説明する。なお、本実施形態においても、図5及び図6に示す基本的な構成は第1の実施形態と同様であるためこれらの説明は省略する。
上記第1ないし第4の実施形態では、記録ヘッドの予備加熱を行なう加熱素子は、記録動作のインク吐出に使用する加熱素子のみを用いて行うものとした。これに対し、この第5の実施形態においては、インク吐出に使用する加熱素子を上記実施形態と同様に行うとともに、記録ヘッド21の各インク供給口間に温調専用のサブヒータ40を配置したものとなっている。これにより前述の実施形態では実現できなかった記録ヘッド21の記録中でも温調を行うことが可能になる。但し、このサブヒータを用いるためには、基板面温度分布安定化のために複数のサブヒータを配置するスペースが必要である。また、サブヒータだけに頼るとなると大きな電力が必要なため、大容量の電源が必要となり、これが製造コストを増大させる要因にもなる。このため、本実施形態では、加熱素子を用いた短パルス加熱と、サブヒータ40との併用を行う。これによれば、記録ヘッドの予備加熱にサブヒータのみを使用する場合に比べ電源の容量を抑えることが可能になり、コスト低減を図ることも可能になる。
[その他の実施形態]
本実施形態はシリアルスキャンを行うインクジェット記録装置を例に採り説明したが、本発明は、複数のヘッドチップを繋いだ長尺なライン型のインクジェット記録ヘッドを用いたライン型のインクジェット記録装置にも適用可能である。
1 第1のヒータ列
2 第2のヒータ列
10 記録ヘッド
25 基板
28 インク供給口
29,29a,29b 吐出口
30,30a,30b 流路(ノズル)
31 ヒータ
40 サブヒータ
200 制御装置
223 MPU
240 ヘッドドライバ
PTTT00 駆動デューティー
PTTT01 駆動周期
Fop 駆動周波数
29A,29C 開口面積の大きい吐出口
29B 開口面積の小さい吐出口

Claims (14)

  1. インクを吐出する吐出口を有する複数のノズルそれぞれに対応して設けられた加熱素子を有する記録ヘッドと、
    前記吐出口からインクを吐出させない熱エネルギーを前記加熱素子で発生させる駆動制御手段と、
    を備えたインクジェット記録装置であって、
    前記駆動制御手段は、インクを吐出しない状態で前記吐出口を一定時間大気に開放した際の、前記ノズルに供給されたインクの色材の前記吐出口からの後退が発生しやすい第1のノズルに設けられた前記加熱素子で発生させる前記熱エネルギーを、前記第1のノズルよりも前記後退が発生しにくい第2のノズルに設けられた前記加熱素子で発生させる前記熱エネルギーよりも小さくするように制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記第1のノズルには、前記第2のノズルよりも貧溶媒の性質が強いインクが供給されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記駆動制御手段は、前記熱エネルギーの発生において、前記加熱素子における単位時間当たりの熱の発生量を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記駆動制御手段は、前記加熱素子より周期的に熱を発生させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記駆動制御手段は、前記熱エネルギーの発生において、前記加熱素子の熱の発生の周期を制御することによって前記加熱素子における単位時間当たりの熱の発生量を制御することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記駆動制御手段は、前記熱エネルギーの発生において、前記加熱素子の駆動周波数を制御することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記後退の発生のしやすさは、前記吐出口の開口面積の大小に対応することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記記録ヘッドは、当該記録ヘッドの内部にインクを供給する少なくとも2つのインク供給口を有し、
    前記2つのインク供給口の間には、複数の前記第1のノズルからなるノズル列と、複数の前記第2のノズルからなるノズル列と、が配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記インクは、水と、種類の異なる複数の水溶性有機溶剤と、色材とを含有する水性インクであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記駆動制御手段は、記録が行われる前に測定した前記記録ヘッドの温度が、予め設定した温度よりも低い場合に熱エネルギーを前記加熱素子に発生させることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記記録ヘッドのうち基板には、インク吐出には寄与しないサブヒータが配置されている請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  12. インクを吐出する吐出口を有する複数のノズルそれぞれに対応して設けられた加熱素子を有する記録ヘッドの温度を制御する記録ヘッドの温度調整方法であって、
    前記吐出口からインクを吐出させない熱エネルギーを発生させる工程を備え、
    前記熱エネルギーを発生させる工程は、インクを吐出しない状態で前記吐出口を一定時間大気に開放した際の、前記ノズルに供給されたインクの色材の前記吐出口からの後退が発生しやすい第1のノズルに設けられた前記加熱素子で発生させる前記熱エネルギーを、前記第1のノズルよりも前記後退が発生しにくい第2のノズルに設けられた前記加熱素子で発生させる前記熱エネルギーよりも小さくすることを特徴とする記録ヘッドの温度調整方法。
  13. 前記第1のノズルには、前記第2のノズルよりも貧溶媒の性質が強いインクが供給されることを特徴とする請求項12に記載の記録ヘッドの温度調整方法。
  14. 前記後退の発生のしやすさは、前記吐出口の開口面積の大小に対応することを特徴とする請求項12に記載の記録ヘッドの温度調整方法。
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