JP5548469B2 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents
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また、近年、偏光フィルムが使用されるLCDの高品位化に伴い、偏光フィルムに、より傷や皺を少なく、折れ込みの無い偏光フィルムを製造するために、ガイドロールとしてスポンジ製のロールを使用する方法も提案されている(特許文献2)。
(1)ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤処理、染色処理、ホウ酸処理、洗浄処理、乾燥処理の順に処理する工程の前または工程中に一軸延伸を行う偏光フィルムの製造方法において、ホウ酸処理工程で2つのニップロール間の周速差を利用して一軸延伸を行うにあたり、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向の上流側および下流側にそれぞれ配置された2つのニップロール間の上流側から前記ニップロール間距離の1/3を過ぎた以降に、スポンジゴム製のガイドロールを配置し、ホウ酸処理工程における最終的な積算延伸倍率が5.0〜6.5倍となるように一軸延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
(2)前記スポンジゴム製のガイドロールのスポンジの硬度がJISショアCスケールで20〜60度、密度が0.4〜0.6g/cm3および表面粗さが10〜30Sである(1)記載の偏光フィルムの製造方法。
(3)前記スポンジゴム製のガイドロールを、3本以上10本以下配置する(1)または(2)記載の偏光フィルムの製造方法。
(4)前記ホウ酸処理工程を複数有する(1)〜(3)のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
(5)前記複数のホウ酸処理工程のうち、少なくとも第一のホウ酸処理工程において、前記一軸延伸が行われる(4)記載の偏光フィルムの製造方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリビニルアルコール系フィルムを形成するポリビニルアルコール系樹脂は、通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものが使用される。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%〜100モル%である。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、約1000〜10000、好ましくは約1500〜5000程度である。
この未延伸フィルムを、膨潤処理、染色処理、ホウ酸処理(架橋処理)、水洗処理の順に処理し、最後に乾燥して得られるポリビニルアルコール系偏光フィルムの厚みは、例えば約5〜50μm程度である。
また、上記工程に記載の無い工程を別の目的で挿入することも自由であることは言うまでもない。この工程の例として、ホウ酸処理後に、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液による浸漬処理(ヨウ化物処理)またはホウ酸を含まない塩化亜鉛等を含有する水溶液による浸漬処理(亜鉛処理)工程等が挙げられる。
ヨウ化物としてはヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛などが挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウムなどを共存させてもよい。
このホウ酸処理は、架橋による耐水化や色相調整(青味がかるのを防止する等)等のために実施される。架橋による耐水化のための場合には、必要に応じて、ホウ酸以外に、またはホウ酸と共に、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどの架橋剤も使用することができる。
なお、耐水化のためのホウ酸処理を、耐水化処理、架橋処理、固定化処理などの名称で呼称する場合もある。また、色相調整のためのホウ酸処理を、補色処理、再染色処理などの名称で呼称する場合もある。
耐水化のためのホウ酸処理、色相調整のためのホウ酸処理は特に区別されるものではないが、下記の条件で実施される。
原反フィルムを膨潤、染色、ホウ酸処理をする場合で、ホウ酸処理が架橋による耐水化を目的としている時は、水100重量部に対してホウ酸を約3〜10重量部、ヨウ化物を約1〜20重量部含有するホウ酸処理浴を使用し、通常、約50℃〜70℃、好ましくは53℃〜65℃の温度で行われる。浸漬時間は、通常、10〜600秒程度、好ましくは20〜300秒、より好ましくは20〜200秒である。
なお、予め延伸したフィルムを染色、ホウ酸処理を行う場合、ホウ酸処理浴の温度は、通常、約50℃〜85℃、好ましくは約55℃〜80℃である。
ホウ酸処理工程における偏光フィルムの延伸の最終的な積算延伸倍率は、通常4.5〜7.0倍であるが、本発明では約5.0〜6.5倍とする。
その後、ポリビニルアルコール系フィルムを水洗し、乾燥炉中で約40〜100℃の温度で約60〜600秒乾燥させることにより、偏光フィルムを得ることができる。
本発明における延伸方法では、フィルムは、フィルムを送り出す2つのニップロール間で一軸延伸される。すなわち、フィルムの搬送方向における下流側のニップロールの周速度を上流側のニップロールの周速度よりも大きくして、フィルムに張力を与えて延伸する。
本発明では、フィルムを所定の溶液中に浸漬しながら延伸する、いわゆる湿式延伸法で行うのが好ましい。この湿式延伸法はフィルムが破断しにくく充分に延伸できるので、必要な光学特性が得やすく、乾式延伸法に比べて偏光度が高くなる。
上流側と下流側に配置された2つのニップロール30、30'間の距離をLとすると、上流側のニップロール30からL/3を過ぎた以降の位置に第一のガイドロールとしてスポンジゴム製のガイドロール20が設けられており、第一のガイドロール20以降にもスポンジゴム製のガイドロール2が、複数配置されている。なお、上記距離Lは各ニップロール30、30'の中心を結ぶ線分の長さをいう。
その他は、図1に示す実施形態と同様である。このように、上流側のニップロール30からL/3以内に、スポンジロール以外の他のガイドロール21を配置しても、ポリビニルアルコール系フィルム10の偏光度の低下や幅方向の収縮を抑制することができる。
ホウ酸処理工程が複数のホウ酸処理工程からなる場合には、最初または最初から2段目までのホウ酸処理工程で前記フィルムを延伸し、延伸処理を行ったホウ酸処理工程の次のホウ酸処理工程から水洗工程までのそれぞれの工程において張力制御を行うか、最初から3段目までのホウ酸処理工程で前記フィルムを延伸し、延伸処理を行ったホウ酸処理工程の次のホウ酸処理工程から水洗工程までのそれぞれの工程において張力制御を行うことが好ましい。
ホウ酸処理後に、上記したヨウ化物処理または亜鉛処理を行う場合には、これらの工程についても張力制御を行う。
張力制御におけるフィルムへの張力は、特に限定されるものではなく、単位幅当たり、約150N/m〜2000N/m、好ましくは約600N/m〜1500N/mの範囲内で適宜設定される。張力が約150N/mを下回ると、フィルムにシワなどができやすくなる。一方、張力が約2000N/mを超えると、フィルムの破断やベアリングの磨耗による低寿命化などの問題が生じる。また、この単位幅当たりの張力は、その工程の入口付近のフィルム幅と張力検出器の張力値から算出する。
なお、張力制御を行った場合に、不可避的に若干延伸・収縮される場合があるが、本発明においては、これは延伸処理に含めない。
保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルム、シクロオレフィン系樹脂からなるフィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。
(1)フィルムのネックイン率(%)は、以下の式から求められる。
{(延伸前のフィルム幅−延伸後のフィルム幅)/延伸前のフィルム幅}×100
(2)フィルムの光学性能は、(株)日本分光製の紫外可視分光光度計V7100に偏光板をセットし、透過方向と吸収方向の偏光板の紫外可視スペクトルを測定し、単体透過率および偏光度(視感度補正偏光度)をJIS−Z8729に準拠して計算にて求めた。
厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルム(日本合成化学工業(株)社製、OPLフィルム、M−7500、重合度2,600)を30℃の純水に、弛まないように緊張状態を保ったまま浸漬してポリビニルアルコールフィルムを十分に膨潤させた。次に、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水からなる水溶液に浸漬しつつ、積算延伸倍率が2.25倍になるまで一軸延伸を行った。
続いて図1に示すように、第一のホウ酸処理工程として、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で12/4.2/100 の55℃水溶液4が入ったホウ酸処理槽1にポリビニルアルコールフィルム10を浸漬しつつ原反からの積算延伸倍率が4.5倍になるまで一軸延伸を行った。該工程には、ガイドロールとしてスポンジゴムロール2、20(スポンジの硬度がJISショアCスケールで25度、密度が0.42g/cm3、および表面粗さが20S)を5本設置し、第一のガイドロール20は2つのニップロール30、30’間距離Lのフィルムの搬送方向の上流側から1/2の位置に設置した。
次に、第二のホウ酸処理工程として、第一のホウ酸処理工程と同一組成の溶液に浸漬しつつ原反からの積算延伸倍率が5.6倍になるまで延伸を行った。該工程には、スポンジゴム製のガイドロール2(スポンジの硬度がJISショアCスケールで25度、密度が0.42g/cm3、および表面粗さが20S)を3本設置し、第一のガイドロール20は2つのニップロール30、30’間距離Lのフィルムの搬送方向の上流側から3/4の位置に設置した。その後ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で9/2.6/100の40℃水溶液にポリビニルアルコールフィルム10を浸漬しつつ、最終的に5.9倍になるまで一軸延伸を行い、続いて6℃の純水で洗浄した後70℃で3分乾燥して、偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの単体透過率は41.73%、偏光度は99.9990%であり、総ネックイン率は54.1%であった。
第一のホウ酸処理工程におけるガイドロール2の本数を3本とし、第一のガイドロール20を2つのニップロール30、30’間距離Lのフィルムの搬送方向の上流側から3/4の位置に設置した以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの単体透過率は41.80%、偏光度は99.9990%であり、総ネックイン率は54.5%であった。
第一のホウ酸処理工程におけるガイドロール2の本数を7本とし、第一のガイドロール20を2つのニップロール30、30’間距離Lのフィルムの搬送方向の上流側から1/3の位置に設置した以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの単体透過率は41.75%、偏光度は99.9988%であり、総ネックイン率は53.0%であった。
第一のホウ酸処理工程におけるガイドロール2、20として、スポンジゴムロールに代えて、ゴム硬度がJISショアCスケールで80度、密度が1.3g/cm3、および表面粗さが0.6SであるNBRゴム製のガイドロールを用いた以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの単体透過率は41.81%、偏光度は99.9990%であったが、総ネックイン率は55.5%と十分な幅を確保することができなかった。
第一のホウ酸処理工程における第一のガイドロール20を2つのニップロール30、30’間距離Lのフィルムの搬送方向の上流側から1/10の位置に設置し、第五のガイドロールを2つのニップロール30、30’間距離Lのフィルムの搬送方向の上流側から1/2の位置となるように配置した以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの単体透過率は41.80%、偏光度は99.9977%であり、総ネックイン率は52.5%であった。
10:ポリビニルアルコールフィルム、
20:第一のガイドロール、30、30’:ニップロール、
Claims (7)
- ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤処理、染色処理、ホウ酸処理、洗浄処理、乾燥処理の順に処理する工程の前または工程中に一軸延伸を行う偏光フィルムの製造方法において、
前記ホウ酸処理工程で2つのニップロール間の周速差を利用して一軸延伸を行うにあたり、前記ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向の上流側および下流側にそれぞれ配置された2つのニップロール間の上流側から前記ニップロール間距離の1/3を過ぎた以降に、スポンジゴム製のガイドロールを配置し、ホウ酸処理工程における最終的な積算延伸倍率が5.0〜6.5倍となるように一軸延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。 - 前記2つのニップロールはいずれも、前記ホウ酸処理が行われるホウ酸水溶液中に前記ポリビニルアルコール系フィルムが浸漬された状態で、該フィルムを挟むように配置されている請求項1記載の偏光フィルムの製造方法。
- 前記ホウ酸処理が行われるホウ酸処理槽に複数のガイドロールを配置し、それらのうち前記スポンジゴム製のガイドロールは、上流側から前記ニップロール間距離の1/3を過ぎた以降に配置する請求項1または2記載の偏光フィルムの製造方法。
- 前記スポンジゴム製のガイドロールのスポンジの硬度がJISショアCスケールで20〜60度、密度が0.4〜0.6g/cm3および表面粗さが10〜30Sである請求項1〜3のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
- 前記スポンジゴム製のガイドロールを、3本以上10本以下配置する請求項1〜4のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
- 前記ホウ酸処理工程を複数有する請求項1〜5のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法。
- 前記複数のホウ酸処理工程のうち、少なくとも第一のホウ酸処理工程において、前記一軸延伸が行われる請求項6記載の偏光フィルムの製造方法。
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