本発明の実施の形態について、図1、2を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にする為に拡大又は縮小等して図示した部分がある。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は湿式延伸工程を含み、その湿式延伸工程に於いて、延伸処理時の浴中でのガイドロール間の距離L1と延伸直前のフィルム幅Wの比(L1/W)を1.2以下で行う。更に、当該L1/Wは1以下であることがより好ましく、0.1以下が特に好ましい。また、L1/Wは透過率等の光学特性の点を考慮すると、0.01以上であることが好ましい。前記ガイドロール間の距離L1とは、ガイドロールの中心間距離からガイドロールの直径を差し引いた距離を表す。また、前記延伸直前のフィルム幅Wは、延伸直前の偏光フィルムのフィルム幅を表し、延伸処理工程投入前に於いてはその原反フィルムのフィルム幅を意味する。
従来のように湿式延伸処理を行うと、図1(a)に示すように、延伸後のフィルムは、その幅方向及び厚み方向で収縮する為、広幅化は困難であった。しかし、本願発明では、L1/Wを1.2以下にすることで、図1(b)に示すように、幅方向での収縮を抑制することができる。その結果、幅広の偏光フィルムの製造が可能になる。
また、本実施の形態に係る偏光フィルムの製造方法に於いては、搬送ロールとガイドロールの間の距離L2と、フィルムの幅Wの比(L2/W)が0.5以下であることが好ましい。これにより、幅方向でのフィルムの収縮を一層抑制することができる。その結果、更に幅広の偏光フィルムの製造が可能になる。前記L2/Wは0.23以下であることがより好ましい。但し、L2/Wは装置の設計・管理の容易さの点から、0.005以上であることが好ましい。搬送ロールとガイドロールの間の距離L2とは、搬送ロールとガイドロールの中心間距離から搬送ロールの半径及びガイドロールの半径を差し引いた距離を表す。
前記ガイドロール間の距離L1としては、1〜250mmの範囲内であることが好ましく、1.5〜30mmの範囲内であることがより好ましく、1.5〜2.5mmの範囲内であることが最も好ましい。L1が1mm未満であると、ガイドロール間距離が狭くなり過ぎて、通紙が困難となる場合がある。その一方、250mmを超えると、フィルムの十分な幅残存率が得られない場合がある。
フィルム11のフィルム幅Wは、例えば、未延伸状態のフィルムに対し総延伸倍率4.5〜6.5倍の範囲内で延伸をした場合、延伸直前のフィルム幅に対して、42%以上の幅残存率であることが好ましく、43%以上の幅残存率であることがより好ましい。幅残存率が42%未満であると、大型の偏光板の製造が困難となり歩留まりが低下する場合がある。尚、前記幅残存率は、湿式延伸工程直前のフィルム11のフィルム幅に対する、最終的な湿式延伸工程を終了した直後のフィルム幅で表される。
前記フィルムの幅残存率を考慮すると、本実施の形態で使用されるポリマーフィルムの(未延伸状態に於ける)フィルム幅としては、3000〜6000mmの範囲内であることが好ましく、4000〜5500mmの範囲内であることがより好ましい。前記フィルム幅が3000mm未満であると、フィルム11を一軸延伸する際にネックイン(neck-in)の影響をフィルム11の中央部付近にまで受けやすくなり、光学性能が均一で幅広の偏光フィルムを得ることができなくなる場合がある。その一方、6000mmを超えると、フィルム11を均一に一軸延伸するのが困難になる場合がある。
フィルム11の原反における厚みは30〜100μmが好ましく、50〜80μmがより好ましい。フィルム11の厚みが30μm未満であると、フィルム11の機械的強度が低すぎて、均一な延伸を行いにくく、偏光フィルムに色斑が発生しやすい。その一方、フィルム11の厚みが100μmを超えると、フィルム11を一軸延伸した際に、端部のネックインによりフィルム11の厚みに変動が生じ易くなり、偏光フィルムの色斑が強調されやすくなるので、好ましくない。
本発明の湿式延伸は、例えば図2に示すように、上下方向で交互に搬送方向が異なるパスラインが形成されるようにして行ってもよい。同図に示すフィルム11は、浴14中の所定位置に配置された各ガイドロール15〜19により、浴14内で各高さ位置毎に搬送方向を交互に変えながら、一対の搬送ロール12、13により矢印で示す方向に搬送される。図2に示すように、フィルム11の搬送方向が各高さ位置毎に複数回以上変更される場合、L1/W≦1.2は少なくとも何れかのガイドロール間で満たされていればよいが、全てのガイドロール間でこの条件を各々満たすことがより好ましい。全てのガイドロール間でL1/Wが1.2以下とすることにより、フィルム幅残存率の低下を一層抑制することができ、その結果、大型偏光フィルムとしてのフィルム幅を十分に備えたものが製造可能になる。また、各ガイドロール間に於けるL1/Wは同一の値でもよく、種々の条件に応じて異なった値でもよい。また、各ガイドロール間におけるL1/W≦1.2は連続的に満たした条件でもよく、間欠的に満たした条件でもよい。
搬送ロール12、13は、回転自在のロール形状をしている。また、それらの直径は特に限定されず、通常は50〜300mmの範囲内であることが好ましく、100〜200mmの範囲内であることがより好ましい。また、搬送ロール12、13の直径は同一でもよく、異なっていてもよい。
ガイドロール15〜19は、回転自在のロール形状をしている。但し、本発明においては、ガイドロール15〜19は、ロール状のものに限定されず、例えば非回転の固定式であってもよい。さらに、ガイドロール15〜19の形状は特に限定されるものではなく、フィルム11と接触する面が少なくとも曲面であればよい。従って、例えば、横断面半円形、楕円形、扇形等の形状とすることも可能である。これらの形状とすることにより、フィルム11とガイドロール15〜19との接触面での摩擦抵抗が過度に大きくなり過ぎるのを防止し、フィルム11の搬送を可能にする。
ガイドロール15〜19の直径は特に限定されず、通常は50〜300mmの範囲内であることが好ましく、70〜150mmの範囲内であることがより好ましい。また、各ガイドロール15〜19の直径は同一でもよく、異なっていてもよい。
また、ガイドロール15〜19としては、浴14内を上下方向に移動可能なものを用いてもよい。これによりフィルム11の浴14内でのパスラインの長さを調整することが可能になる。ガイドロール15〜19を上下方向に移動させる方法としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。具体的には、例えばジャッキアップ方式、油圧方式等が例示できる。
ガイドロール15〜19のロール面と、搬送されるフィルム11との間に生じる摩擦力は、浴中において0.001kgf/cm2以上であることが好ましく、0.01kgf/cm2以上であることがより好ましい。摩擦力が0.001kgf/cm2未満であると、フィルムがガイドロール表面で滑りネックインを防止する効果が得られない場合がある。
ガイドロール15〜19のロール幅は、少なくともフィルム11の幅と同一かそれ以上の大きさであれば、適宜必要に応じて設定すればよい。具体的には、3000〜7000mmの範囲内であることが好ましく、3500〜6000mmの範囲内であることがより好ましい。ロール幅が3000以上であると、フィルムがその幅方向に於いて全面がロール面と接するため、このロールとの接触により、フィルム幅の残存率の低減を抑制することができる。また、各ガイドロール15〜19のロール幅は、少なくとも何れか一つが前記数値範囲内に満たしていればよいが、全てのガイドロール15〜19が当該数値範囲内にあることが好ましい。
湿式延伸工程直前のフィルムに対する延伸倍率としては特に限定されないが、通常は1.1〜3.5倍であることが好ましい。延伸は、入口側の搬送ロール12と出口側の搬送ロール13との周速差によって行う。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、要求される偏光フィルムの光学特性に応じて適宜な方法を用いることができるが、例えば、初期原反フィルムとしてのポリマーフィルムを、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗及び乾燥処理工程からなる一連の製造工程によって製造する方法が一般的である。乾燥処理工程を除くこれら各処理工程では、各種溶液からなる浴中に浸漬しながら各処理を行う。このときの各処理工程に於ける膨潤、染色、架橋、延伸、水洗及び乾燥の各処理の順番、回数及び実施の有無は特に限定されるものではなく、いくつかの処理を一処理工程中で同時に行ってもよく、いくつかの処理を行わなくてもよい。例えば、延伸処理は染色処理後に行ってもよいし、膨潤や染色処理と同時に行ってもよく、また延伸処理してから染色処理してもよい。これらの各工程のうち、本発明は膨潤、染色、架橋、延伸、水洗工程等に好適に適用できる。更に、水洗処理は、全ての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。
延伸処理としては、限定されることなく適宜な方法を用いることができる。例えば、ロール延伸の場合、ロール間の周速差によって延伸を行う方法が用いられる。更に、各処理には適宜ホウ酸やホウ砂あるいはヨウ化カリウム等の添加剤を加えてもよい。従って、本発明による偏光フィルムは、必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化カリウム等を含んでいてもよい。更には、これらのいくつかの処理中で、適宜流れ方向もしくは幅方向に延伸してもよく、各処理ごとに水洗処理を行ってもよい。
前記膨潤工程としては、例えば、水で満たした膨潤浴に浸漬する。これによりポリマーフィルムが水洗され、ポリマーフィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるとともに、ポリマーフィルムを膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止する効果が期待できる。この膨潤浴中には、グリセリンやヨウ化カリウム等を適宜加えてもよく、添加する濃度は、グリセリンは5重量%以下、ヨウ化カリウムは10重量%以下であることが好ましい。膨潤浴の温度は、20〜45℃の範囲であることが好ましく、25〜40℃であることがより好ましい。膨潤浴への浸漬時間は、2〜180秒間であることが好ましく、10〜150秒間であることがより好ましく、60〜120秒間であることが特に好ましい。また、この膨潤浴中でポリマーフィルムを延伸してもよく、そのときの延伸倍率は膨潤による伸展も含めて、未延伸状態のフィルムに対し1.1〜3.5倍程度である。
前記染色工程としては、例えば、前記ポリマーフィルムをヨウ素等の二色性物質を含む染色浴に浸漬することによって、前記二色性物質をポリマーフィルムに吸着させる。
前記二色性物質としては、従来公知の物質が使用でき、例えば、ヨウ素や有機染料等が挙げられる。有機染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック、等が使用できる。
これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いてもよい。前記有機染料を用いる場合は、例えば、可視光領域のニュートラル化を図る点から、二種類以上を組み合わせることが好ましい。具体例としては、コンゴーレッドとスプラブルーG、スプラオレンジGLとダイレクトスカイブルー又は、ダイレクトスカイブルーとファーストブラックとの組み合わせが挙げられる。
前記染色浴の溶液としては、前記二色性物質を溶媒に溶解した溶液が使用できる。前記溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。二色性物質の濃度としては、0.010〜10重量%の範囲にあることが好ましく、0.020〜7重量%の範囲にあることがより好ましく、0.025〜5重量%であることが特に好ましい。
また、前記二色性物質としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、更にヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、前記染色浴に於いて、0.010〜10重量%であることが好ましく、0.10〜5重量%であることがより好ましい。これらのなかでも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましく、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合(重量比)は、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることが特に好ましい。
前記染色浴へのポリマーフィルムの浸漬時間は、これに特に限定されるものではないが、1〜20分の範囲であることが好ましく、2〜10分であることがより好ましい。また、染色浴の温度は、5〜42℃の範囲にあることが好ましく、10〜35℃の範囲にあることがより好ましい。また、この染色浴中でポリマーフィルムを延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1〜4.0倍程度である。
また、染色処理としては、前述のような染色浴に浸漬する方法以外に、例えば、二色性物質を含む水溶液を前記ポリマーフィルムに塗布又は噴霧する方法であってもよく、また、前記ポリマーフィルム製膜時に二色性物質をあらかじめ混ぜておいてもよい。
前記架橋工程としては、例えば、架橋剤を含む浴中にポリマーフィルムを浸漬して架橋する。前記架橋剤としては、従来公知の物質が使用できる。例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用してもよい。二種類以上を併用する場合には、例えば、ホウ酸とホウ砂の組み合わせが好ましく、また、その添加割合(モル比)は、4:6〜9:1の範囲にあることが好ましく、5.5:4.5〜7:3の範囲がより好ましく、6:4であることが最も好ましい。
前記架橋浴の溶液としては、前記架橋剤を溶媒に溶解した溶液が使用できる。前記溶媒としては、例えば水が使用できるが、更に、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。前記溶液に於ける架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1〜10重量%の範囲にあることが好ましく、2〜6重量%であることがより好ましい。
前記架橋浴中には、偏光フィルムの面内の均一な特性が得られる点から、ヨウ化物を添加してもよい。このヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられ、この含有量は0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜8重量%である。なかでも、ホウ酸とヨウ化カリウムの組み合わせが好ましく、ホウ酸とヨウ化カリウムの割合(重量比)は、1:0.1〜1:3.5の範囲にあることが好ましく、1:0.5〜1:2.5の範囲にあることがより好ましい。
前記架橋浴の温度は、通常20〜70℃の範囲であり、ポリマーフィルムの浸漬時間は通常1秒〜15分の範囲であり、好ましくは、5秒〜10分である。更に、架橋処理も染色処理と同様に、架橋剤含有溶液を塗布又は噴霧する方法を用いても良く、この架橋浴中でポリマーフィルムを延伸してもよく、このときの累積した総延伸倍率は、1.1〜4.0倍程度である。
前記延伸工程としては、例えば、湿式延伸法では、浴中に浸漬した状態で、累積した総延伸倍率が2〜7倍程度になるように延伸する。
延伸浴の溶液としては、これに特に限定されるわけではないが、例えば、各種金属塩や、ヨウ素、ホウ素又は亜鉛の化合物を添加した溶液を用いることができる。この溶液の溶媒としては、水、エタノールあるいは各種有機溶媒が適宜用いられる。なかでも、ホウ酸及び/又はヨウ化カリウムをそれぞれ2〜18重量%程度添加した溶液を用いることが好ましい。このホウ酸とヨウ化カリウムを同時に用いる場合には、その含有割合(重量比)は、1:0.1〜1:4程度、より好ましくは、1:0.5〜1:3程度の割合で用いることが好ましい。
前記延伸浴の温度は、例えば、40〜67℃の範囲であることが好ましく、50〜62℃であることがより好ましい。
前記水洗工程としては、例えば、水洗浴の水溶液中にポリマーフィルムを浸漬することにより、これより前の処理で付着したホウ酸等の不要残存物を洗い流すことができる。前記水溶液には、ヨウ化物を添加してもよく、例えば、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムが好ましく用いられる。水洗浴にヨウ化カリウムを添加した場合、その濃度は通常0.1〜10重量%であり、3〜8重量%であることが好ましい。更に、水洗浴の温度は、10〜60℃であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。また、水洗処理の回数は特に限定されることなく複数回実施してもよく、各水洗浴中の添加物の種類や濃度を変えてもよい。
尚、ポリマーフィルムを各処理浴から引き上げる際には、液だれの発生を防止するために、従来公知であるピンチロール等の液切れロールを用いてもよいし、エアーナイフによって液を削ぎ落とす等の方法により、余分な水分を取り除いてもよい。
前記乾燥工程としては、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等、適宜な方法を用いることができるが、通常、加熱乾燥が好ましく用いられる。加熱乾燥では、例えば、加熱温度が20〜80℃程度であり、乾燥時間は1〜10分間程度であることが好ましい。更には、乾燥温度は前記方法に関わらず偏光フィルムの劣化を防ぐ目的としてできるだけ低温にすることが好ましい。より好ましくは60℃以下であり、45℃以下であることが特に好ましい。
前記の各工程を経て作製された偏光フィルムの最終的な総延伸倍率は、前記処理前のポリマーフィルムに対して、3.0〜7.0倍であることが好ましく、5.5〜6.2倍の範囲にあることがより好ましい。最終的な総延伸倍率が3.0倍未満では、高偏光度の偏光フィルムを得ることが難しく、7.0倍を超えると、フィルムは破断しやすくなる。
前記偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム等のポリマーフィルムからなる原反フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色して一軸延伸したものが一般的である。
この様な偏光フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、一般的に、5〜80μm程度である。この偏光フィルムの片面又は両面に透明保護層を積層することにより偏光板となる。
前記原反フィルムを形成するポリマーフィルムとしては、特に限定されることなく各種のものを使用できる。例えば、PVA系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルムや、これらの部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルムに、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、偏光フィルムとしてのヨウ素による染色性に優れるとともに、本発明による面内均一性を向上させる効果が高いことから、PVA系フィルムを用いることが好ましい。
前記ポリマーフィルムの材料であるポリマーの重合度は、一般に500〜10,000であり、1000〜6000の範囲であることが好ましく、1400〜4000の範囲にあることがより好ましい。更に、ケン化フィルムの場合、そのケン化度は、例えば、水への溶解性の点から、75モル%以上が好ましく、より好ましくは98モル%以上であり、98.3〜99.8モル%の範囲にあることがより好ましい。
前記ポリマーフィルムとしてPVA系フィルムを用いる場合、PVA系フィルムの製法としては、水又は有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等任意の方法で成膜されたものを適宜使用することができる。このときの位相差値は、5nm〜100nmのものが好ましく用いられる。また、面内均一な偏光フィルムを得るために、PVA系フィルム面内の位相差バラツキはできるだけ小さい方が好ましく、原反フィルムとしてのPVA系フィルムの面内位相差バラツキは、測定波長1000nmに於いて10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。
本発明による偏光フィルムは、偏光フィルム単体で測定したときの単体透過率が40%以上であることが好ましく、42.0〜45.0%の範囲にあることがより好ましい。また、前記偏光フィルムを2枚用意し、2枚の偏光フィルムの吸収軸が互いに平行になるように重ね合わせて測定する平行透過率は、実用上30%〜45%が好ましく、33%〜40%であることがより好ましい。尚、この透過率は、後述の実施例に示す方法等によって測定できる。
前記偏光フィルムの少なくとも片面には、透明保護フィルムを設けてもよい。この透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。この様な熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。尚、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。透明保護フィルム中の前記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、更に好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の前記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換及び/又は非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品等からなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラ等の不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性等の点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
尚、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピルセルロース、ジプロピルセルロース等が挙げられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士写真フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等が挙げられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
尚、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、前記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレス等の基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等をシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法等が挙げられる。
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7、より好ましくはプロピオン置換度を0.1〜1に制御することによってRthを小さくすることができる。前記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは1〜15重量部である。
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及び、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物等が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品律「APEL」が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。前記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性当の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロものフィルムを得ることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂等)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としてば、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報等に記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは下記一般式(化1)で表される環擬構造を有する。
式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜20の有機残基を示す。尚、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になるおそれがある。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%より多いと、成形加工性に乏しくなるおそれがある。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することも有る)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、更に好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。質量平均分子量が前記範囲から外れると、成型加工性の点から好ましくない。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tgが好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることから、例えば、透明保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなる。前記ラクトン環構造を有ずる(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は透明性の目安であり、全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下するおそれがある。
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。尚、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、更に好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
一方、前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上及び/又は、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
位相差板としては、高分子素材を一軸又は二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したもの等が挙げられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、又はこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物等が挙げられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のもの等を挙げられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマー等が挙げられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するもの等が挙げられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したもの等の配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたもの等の使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したもの等であってもよい。
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。尚、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0超え〜0.7を満足するものを用いるのが好ましい。また、前記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、又はnz>nx=ny、を満足するものを用いることができる。
透明保護フィルムは、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(VerticalAlignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(ポジティブAプレート,二軸,ネガティブC−プレート)の場合が望ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、又は上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
例えば、IPS(In−Plane Switing,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にnx>nz>nyの関係を満たす二軸フィルム、下側に位相差なしの場合や、上側にポジティブA−プレート、下側にポジティブC−プレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(ポジティブA−プレート、二軸、ポジティブC−プレート)が望ましい。
尚、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて前記機能を付与することができる。
前記透明保護フィルムは、接着剤をと塗工する前に、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としてば、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等が挙げられる。
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止等を目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系等の適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式等にて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜等の形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式等の適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子等の透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角等を拡大するための拡散層(視角拡大機能等)を兼ねるものであってもよい。
尚、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
本発明の偏光板は、透明保護フィルムと偏光子を、前記接着剤を用いて貼り合わせることにより製造する。当該製造方法は、前記接着剤を、偏光子の前記接着剤層を形成する面及び/又は透明保護フィルムの前記接着剤層を形成する面に、塗工する工程;偏光子と透明保護フィルムとを、前記偏光板用接着剤を介して貼り合わせる工程を有する。
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式等の方式を適宜に使用することができる。
前記のように塗工した接着剤を介して、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる。偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行う事ができる。
前記製造方法により形成される接着剤層の厚みは、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは、0.2〜10μm、更に好ましくは0.3〜8μmである。厚みが薄い場合は、接着力自体の凝集力が得られず、接着強度が得られないおそれがある。接着剤層の厚みが20μmを超えると、コストアップと接着剤自体の硬化収縮の影響が出て、偏光板の光学特性へ悪影響が発生するおそれがある。
前記製造方法を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/min、より好ましくは5〜300m/min、更に好ましくは10〜100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、又は透明保護フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験等に耐えうる偏光板が作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、接着剤の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層又は2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板又は半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板又は半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板又は円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置等を形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすい等の利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式等の適宜な方式にて行うことができる。
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したもの等が挙げられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するもの等も挙げられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点等を有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点等も有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等の適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法等により行うことができる。
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シート等として用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点等より好ましい。
尚、半透過型偏光板は、前記に於いて反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気に於いては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等を形成できる。即ち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下に於いても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板又は円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光又は円偏光に変えたり、楕円偏光又は円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板等が用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合等に有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合等に有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。前記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したもの等が挙げられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたもの等の使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したもの等であってもよい。
また前記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置等の製造効率を向上させうる利点がある。
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。この様な視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したもの等からなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルム等が用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたもの等が挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大等を目的とした適宜なものを用いうる。
また良視認の広い視野角を達成する点等より、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すもの等の適宜なものを用いうる。
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すもの等の適宜なものを用いうる。
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。尚、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置等の製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性等に応じて適宜な配置角度とすることができる。
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性等に優れるものが好ましく用いうる。
また前記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤等の粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等であってもよい。
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマー又はその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上又は光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上又は光学フィルム上に移着する方式等が挙げられる。
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏に於いて異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力等に応じて適宜に決定でき、一般には1〜40μmであり、5〜30μmが好ましく、特に10〜25μmが好ましい。1μmより薄いと耐久性が悪くなり、また40μmより厚いと発泡等による浮きや剥がれが生じやすく外観不良となる、
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、前記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したもの等の、従来に準じた適宜なものを用いうる。
なお本発明に於いて、前記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層等の各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式等の方式により紫外線吸収能をもたせたもの等であってもよい。
本発明の偏光板又は光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成等に好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。即ち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板又は光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むこと等により形成されるが、本発明に於いては本発明による偏光板又は光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型、等の任意なタイプのものを用いうる。
液晶セルの片側又は両側に偏光板又は光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたもの等の適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板又は光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板又は光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。更に、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライト等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこの様な発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、及び電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
位相差板及び偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有する為、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。