JP7120814B2 - 偏光フィルムの製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば偏光板の構成部材として用いることのできる偏光フィルムの製造装置に関する。
偏光フィルムとして、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素のような二色性色素を吸着配向させたものが従来用いられている。一般に偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する染色処理、架橋剤で処理する架橋処理、及びフィルム乾燥処理を順次施すとともに、製造工程の間にポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して延伸処理を施すことによって製造される〔例えば、特開2001-141926号公報(特許文献1)〕。
特開2001-141926号公報
通常、偏光フィルムは、工業的には、長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、偏光フィルムの製造装置が有するフィルムの搬送経路に沿って連続的に搬送させながら、該搬送経路上にある上述の染色処理を行うための染色処理槽、及び架橋処理を行うための架橋処理槽に順次浸漬させる湿式処理工程を含んで製造される。
本発明の目的は、作業性良く、偏光フィルムを連続製造することのできる装置を提供することにある。
本発明は、以下に示す偏光フィルムの製造装置を提供する。
[1] ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造するための製造装置であって、
複数のロールによって構成されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送経路と、
前記搬送経路上に配置され、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが浸漬される処理液を収容するための2以上の処理槽と、
を含み、
前記2以上の処理槽は、前記搬送経路の上流側から順に、染色処理液を収容するための染色処理槽と、第1架橋処理液を収容するための第1架橋処理槽と、を含み、
第1架橋処理槽の深さが染色処理槽の深さよりも小さく、
第1架橋処理槽の底面が染色処理槽の底面よりも高い位置にあり、
前記製造装置は、第1架橋処理槽に隣接する床面をさらに含み、
前記床面は、第1架橋処理槽の底面と略同じ高さに配置されている、偏光フィルムの製造装置。
[2] 前記床面と第1架橋処理槽の底面との高さの差の絶対値が0mm~300mmである、[1]に記載の製造装置。
[3] 前記複数のロールは、第1架橋処理槽内に配置される1以上のガイドロールを含み、
前記1以上のガイドロールは、第1架橋処理槽内の搬送経路の最高位置と最低位置との差が500mm以下となるように配置される、[1]又は[2]に記載の製造装置。
[4] 前記複数のロールは、第1架橋処理槽内に配置される2以上のガイドロールを含み、
前記2以上のガイドロールは、隣り合う2つのガイドロールであって、いずれのガイドロールにおいてもポリビニルアルコール系樹脂フィルムの抱き角が30度以下となるように配置される2つのガイドロールを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造装置。
[5] 第1架橋処理槽は、第1架橋処理液中でポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して延伸処理が施される処理槽であり、
前記複数のロールは、前記延伸処理を施すための延伸手段としての第1ニップロール及び第2ニップロールをさらに含み、
第1ニップロールは、前記隣り合う2つのガイドロールよりも前記搬送経路の上流側に配置され、
第2ニップロールは、前記隣り合う2つのガイドロールよりも前記搬送経路の下流側に配置され、
第1ニップロール及び第2ニップロールはそれぞれ、上下に配置される2つのロールを含み、かつ、それらの下側のロールの上端が第1架橋処理槽の上端よりも低い位置にあり、前記下側のロールの下端が第1架橋処理槽の下端よりも高い位置にあるように配置される、[4]に記載の製造装置。
[6] 第1架橋処理槽よりも前記搬送経路の下流側に配置される処理槽であって第2架橋処理液を収容するための第2架橋処理槽をさらに含み、
第2架橋処理槽の深さが染色処理槽の深さよりも小さく、
第2架橋処理槽の底面が染色処理槽の底面よりも高い位置にある、[1]~[5]のいずれかに記載の製造装置。
[7] 第1架橋処理槽の搬送経路方向の長さが染色処理槽の搬送経路方向の長さよりも長い、[1]~[6]のいずれかに記載の製造装置。
作業性良く、偏光フィルムを連続製造することのできる装置を提供することができる。
偏光フィルム製造装置の一例を示す模式図である。 フィルムのロールへの抱き角を説明する模式図である。
以下、実施の形態を示しながら、偏光フィルムの製造装置について説明する。
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系樹脂フィルム」ともいう。)から偏光フィルムを製造するための製造装置に関する。偏光フィルムは、PVA系樹脂フィルムに対して、処理槽への浸漬処理(湿式処理)を施して製造することができる。
偏光フィルムは、延伸されたPVA系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものである。
偏光フィルム製造装置の一例を図1に示す。図1に示される偏光フィルム製造装置は、原料フィルムである長尺のPVA系樹脂フィルム10から連続的に長尺の偏光フィルム25を製造するための装置である。図1中の矢印は、フィルムの搬送方向を示す。
図1において、30は作業用床面の位置を示しており、各処理槽に収容される処理液の液面の一例を点線で示している。
図1に示される製造装置を用いた偏光フィルム25の製造においては、PVA系樹脂フィルム10を巻出ロール11から連続的に巻き出しつつ、膨潤処理槽13、染色処理槽15、第1架橋処理槽17、第2架橋処理槽18及び洗浄処理槽19に順次浸漬し、最後に乾燥炉21に通すことにより乾燥処理を行って偏光フィルム25を得る。長尺物として製造される偏光フィルム25は、巻取ロール27に順次巻き取ってもよいし、あるいは、巻き取ることなく、偏光フィルム25の片面又は両面に保護フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを接着する偏光板作製工程に供されてもよい。
偏光フィルム製造装置は、湿式処理部(フィルムが浸漬される処理液を収容する処理槽を用いて湿式処理を行うゾーン)を含み、好ましくは、乾燥炉21のような乾燥処理部(湿式処理後のフィルムに対して乾燥処理を実施するゾーン)をさらに含む。
湿式処理部は、染色処理槽及び架橋処理槽を少なくとも有し、好ましくは、膨潤処理槽、染色処理槽、架橋処理槽及び洗浄処理槽を含む。
偏光フィルム製造装置は、PVA系樹脂フィルム10を搬送させる搬送経路を有しており、この搬送経路上に湿式処理部、さらには乾燥処理部が配置される。
図1に示される例において偏光フィルム製造装置は、湿式処理部と乾燥処理部とを含むPVA系樹脂フィルム10の搬送経路を有している。この搬送経路に沿ってPVA系樹脂フィルム10を搬送させることにより、湿式処理及び乾燥処理を含む一連の処理が施されて偏光フィルム25が得られる。
搬送経路に沿って搬送されるPVA系樹脂フィルム10の搬送速度は、通常1~50m/分であり、生産効率の観点から、好ましくは5m/分以上である。
図1に示されるように上記搬送経路は、湿式処理部、及び好ましくはさらに乾燥処理部を通るように、走行中のフィルム(PVA系樹脂フィルム10及び偏光フィルム25)を支持・案内する複数のロールによって構築することができる。
複数のロールは、フィルムの片面を支持するフリーロールであるガイドロール、及び/又は、1対のロール(通常は駆動ロールを含む。)からなり、当該1対のロールは、例えば、フィルムを両面から挟み込む又は挟み込んで押圧するニップロールである。
図1に示される例において偏光フィルム製造装置は、ガイドロール1a~1bb及びニップロール2a~2iを含んでいる。搬送経路を規定する複数のロールは、駆動ロールの1種であるサクションロール(吸引ロール)を含んでいてもよい。通常、これらのロールはいずれも搬送経路内のフィルムの一方又は両方の表面(主面)に接して該フィルムを支持する。これらのロールは、各処理槽及び乾燥手段(乾燥炉)の前後や処理槽及び乾燥手段(乾燥炉)内等の適宜の位置に配置することができる。
駆動ロールとは、それに接触するフィルムに対してフィルム搬送のための駆動力を与えることができるロールをいい、モーター等のロール駆動源が直接又は間接的に接続されたロール等であることができる。フリーロールとは、走行するフィルムを支持する役割を担い、フィルムの搬送に応じて自由に回転可能なロールをいう。
得られる偏光フィルム25は、延伸処理(通常は一軸延伸処理)されたものである。このために偏光フィルムの製造装置は、PVA系樹脂フィルム10の延伸手段(湿式延伸手段)を含むことができる。
(1)PVA系樹脂フィルム
湿式処理に供される(湿式処理部に導入される)PVA系樹脂フィルム10は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」ともいう。)で構成されるフィルムである。PVA系樹脂とは、ビニルアルコール由来の構成単位を50重量%以上含む樹脂をいう。PVA系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。
酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。その他の「(メタ)」を付した用語においても同様である。
PVA系樹脂のケン化度は、80.0~100.0モル%の範囲であることができるが、好ましくは90.0~100.0モル%の範囲であり、より好ましくは94.0~100.0モル%の範囲であり、さらに好ましくは98.0~100.0モル%の範囲である。ケン化度が80.0モル%未満であると、得られる偏光フィルム25及びこれを含む偏光板の耐水性及び耐湿熱性が低下し得る。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:-OCOCH)がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)/(水酸基の数+酢酸基の数)
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。
PVA系樹脂の平均重合度は、好ましくは100~10000であり、より好ましくは1500~8000であり、さらに好ましくは2000~5000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度もJIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が100未満では、好ましい偏光性能を有する偏光フィルム25を得ることが困難であり、10000を超えると溶媒への溶解性が悪化し、PVA系樹脂フィルム10の形成(製膜)が困難となり得る。
PVA系樹脂フィルム10の一例は、上記PVA系樹脂を製膜してなる未延伸フィルムである。製膜方法は、特に限定されるものではなく、溶融押出法、溶剤キャスト法のような公知の方法を採用することができる。
PVA系樹脂フィルム10の他の一例は、上記未延伸フィルムを延伸してなる延伸フィルムである。この延伸は通常、一軸延伸、好ましくは縦一軸延伸である。縦延伸とは、フィルムの機械流れ方向(MD)、すなわちフィルムの長手方向への延伸をいう。
湿式処理に供される(湿式処理部に導入される)PVA系樹脂フィルム10が延伸フィルムである場合において、この延伸は、好ましくは乾式延伸である。乾式延伸とは空中で行う延伸をいい、通常は縦一軸延伸となる。
乾式延伸としては、表面が加熱された熱ロールと、この熱ロールとは周速の異なるガイドロール(又は熱ロールであってもよい。)との間にフィルムを通し、熱ロールを利用した加熱下に縦延伸を行う熱ロール延伸;距離を置いて設置された2つのニップロール間にある加熱手段(オーブン等)を通過させながら、これら2つのニップロール間の周速差によって縦延伸を行うロール間延伸;テンター延伸;圧縮延伸等を挙げることができる。
延伸温度(熱ロールの表面温度や、オーブン内温度等)は、例えば80~150℃であり、好ましくは100~135℃である。
上記延伸の延伸倍率は、湿式処理中に湿式延伸を実施するか否か、及び当該湿式延伸での延伸倍率にもよるが、通常は1.1~8倍であり、好ましくは2.5~5倍である。
PVA系樹脂フィルム10は、可塑剤等の添加剤を含有することができる。可塑剤の好ましい例は多価アルコールであり、その具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。PVA系樹脂フィルム10は、1種又は2種以上の可塑剤を含有することができる。
可塑剤の含有量は、PVA系樹脂フィルム10を構成するPVA系樹脂100重量部に対して、通常5~20重量部であり、好ましくは7~15重量部である。
湿式処理に供される(湿式処理部に導入される)PVA系樹脂フィルム10の厚みは、PVA系樹脂フィルム10が延伸フィルムであるか否かにもよるが、通常10~150μmであり、得られる偏光フィルム25の薄膜化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは65μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは35μm以下(例えば30μm以下、さらには20μm以下)である。
(2)湿式処理部及び湿式処理
湿式処理が実施される湿式処理部は、PVA系樹脂フィルム10の搬送経路上に配置されるゾーンであり、PVA系樹脂フィルム10が浸漬される処理液を収容する2以上の処理槽を含む。この湿式処理部において、PVA系樹脂フィルム10を搬送させながら処理液にPVA系樹脂フィルム10を浸漬させる湿式処理が実施される。
湿式処理部において上記2以上の処理槽は、染色処理槽15及び第1架橋処理槽17を含んでおり、好ましくはさらに膨潤処理槽13及び洗浄処理槽19を含む。これらの処理槽は通常、搬送経路の上流側から順に、膨潤処理槽13、染色処理槽15、架橋処理槽17、洗浄処理槽19の順で配置される(図1参照)。
第1架橋処理槽17は、染色処理槽15に隣り合って配置される槽である。すなわち、湿式処理部が架橋処理槽を2槽以上含む場合、第1架橋処理槽17は、搬送経路の最も上流側(最も染色処理槽側)に配置される槽である。
図1には、膨潤処理槽13、染色処理槽15、及び洗浄処理槽19をそれぞれ1槽ずつ設け、架橋処理槽を2槽(第1架橋処理槽17及び第2架橋処理槽18)設けた例を示しているが、必要に応じて染色処理槽15を2槽以上を設けてもよく、架橋処理槽を3槽以上を設けてもよい。架橋処理槽は、第1架橋処理槽17の1槽のみであってもよい。
膨潤処理槽13、洗浄処理槽19についても同様であり、それぞれ2槽以上設けてもよい。
湿式処理部が染色処理槽を2槽以上含む場合、第1架橋処理槽17は、搬送経路の最も下流側に配置される染色処理槽に隣り合って配置される。
膨潤処理槽13、染色処理槽15、第1架橋処理槽17、第2架橋処理槽18、洗浄処理槽19はそれぞれ、内面が無機ガラス、繊維強化プラスチック(FRP)、ステンレス、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂(ETFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、三フッ化塩化エチレン・エチレン共重合樹脂(ECTFE)等のフッ素樹脂などで構成された槽であってよい。
(2-1)膨潤処理槽及び膨潤処理
膨潤処理は、PVA系樹脂フィルム10の異物除去、可塑剤除去、易染色性の付与、フィルムの可塑化等の目的で必要に応じて実施される処理である。
図1を参照して、膨潤処理は、PVA系樹脂フィルム10を巻出ロール11より連続的に巻き出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、PVA系樹脂フィルム10を、膨潤処理液を収容する膨潤処理槽13に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。
膨潤処理槽13に収容される処理液(膨潤処理液)は、例えば水(純水等)であることができるほか、アルコール類等の有機溶剤を含む水であってもよい。また、膨潤処理液は、ホウ酸、塩化物、無機酸、無機塩等を含有することもできる。
膨潤処理液の温度は、通常10~70℃、好ましくは15~50℃、より好ましくは15~35℃である。PVA系樹脂フィルム10の浸漬時間(膨潤処理液中での滞留時間)は、通常10~600秒、好ましくは15~300秒である。
膨潤処理中に、PVA系樹脂フィルム10に対して湿式延伸処理(通常は一軸延伸処理)を施してもよい。その場合の延伸倍率は、通常1.2~3倍、好ましくは1.3~2.5倍である。図1を参照して、例えば、ニップロール2aとニップロール2bとの周速差を利用して膨潤処理槽13中で一軸延伸処理を施すことができる。
図1に示される例において、膨潤処理槽13から引き出されたフィルムは、ガイドロール1c、ニップロール2bを順に通過して染色処理槽15へ導入される。
(2-2)染色処理槽及び染色処理
染色処理は、PVA系樹脂フィルム10に二色性色素を吸着、配向させる等の目的で実施される処理である。
図1を参照して、染色処理は、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、PVA系樹脂フィルム10を染色処理槽15に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。染色処理槽15は、それに収容される染色処理液にPVA系樹脂フィルム10を浸漬させるための槽である。染色処理液に浸漬されるPVA系樹脂フィルム10は、好ましくは膨潤処理(膨潤処理槽13に浸漬された)後のフィルムである。
染色処理槽15に収容される染色処理液は、二色性色素を含有する液(通常は水溶液)である。二色性色素は、ヨウ素又は二色性有機染料であることができ、好ましくはヨウ素である。二色性色素は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、上記染色処理液には、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理液と区別される。例えば、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を約0.003重量部以上含んでいるものであれば、染色処理液とみなすことができる。染色処理液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常0.003~1重量部である。染色処理液におけるヨウ化カリウム等のヨウ化物の含有量は、水100重量部あたり、通常0.1~20重量部である。
染色処理液の温度は、通常10~45℃であり、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは20~35℃である。PVA系樹脂フィルム10の浸漬時間(染色処理液中での滞留時間)は、通常20~600秒、好ましくは30~300秒である。
上述のように、偏光フィルム製造装置は、染色処理槽15を2槽以上含むことができる。この場合、各染色処理液の組成及び温度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
二色性色素の染色性を高めるために、染色処理に供されるPVA系樹脂フィルム10は、少なくともある程度の延伸処理(通常は一軸延伸処理)が施されていることが好ましい。染色処理前の延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の延伸処理に加えて、染色処理を行いながら延伸処理を施してもよい。染色処理までの積算の延伸倍率(染色処理までに延伸処理がない場合は染色処理での延伸倍率)は、通常1.6~4.5倍であり、好ましくは1.8~4倍である。図1を参照して、例えば、ニップロール2bとニップロール2cとの周速差を利用して染色処理槽15中で一軸延伸処理を施すことができる。
図1に示される例において、染色処理槽15から引き出されたフィルムは、ガイドロール1g、ニップロール2c、ガイドロール1hを順に通過して第1架橋処理槽17へ導入される。
(2-3)架橋処理槽及び架橋処理
架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整(補色)等の目的で実施される処理である。
図1を参照して、架橋処理は、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、染色処理(染色処理槽15に浸漬された)後のPVA系樹脂フィルム10を第1架橋処理槽17に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。第2架橋処理槽18のように架橋処理槽を2槽以上設ける場合も同様である。
架橋処理槽は、それに収容される架橋処理液にPVA系樹脂フィルム10を浸漬させるための槽である。以下、第1架橋処理槽17に収容される架橋処理液を「第1架橋処理液」、第2架橋処理槽18に収容される架橋処理液を「第2架橋処理液」ともいう。
架橋処理槽に収容される架橋処理液は、架橋剤を含有する液(通常は水溶液)である。この架橋処理液に染色処理後のPVA系樹脂フィルム10を浸漬することによって架橋処理を行う。
架橋処理液に含有される架橋剤としては、例えば、ホウ酸、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられ、好ましくはホウ酸である。2種以上の架橋剤を併用することもできる。
架橋処理液における架橋剤の含有量は概して、水100重量部あたり、通常0.1~15重量部であり、好ましくは1~12重量部である。
二色性色素がヨウ素の場合、架橋処理液は、架橋剤に加えてヨウ化物を含有することが好ましい。
ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。
架橋処理液におけるヨウ化物の含有量は概して、水100重量部あたり、通常0.1~20重量部であり、好ましくは5~15重量部である。
架橋処理液は、ヨウ化物以外の化合物を含有していてもよい。該化合物としては、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。
架橋処理液の温度は概して、通常20~85℃であり、好ましくは30~70℃である。PVA系樹脂フィルム10の浸漬時間(架橋処理液中での滞留時間)は概して、通常10~600秒、好ましくは20~300秒である。
上述のように、偏光フィルム製造装置は、架橋処理槽を2槽以上含むことができる。この場合、各架橋処理液の組成及び温度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。架橋処理液は、PVA系樹脂フィルム10を浸漬させる目的に応じた架橋剤及びヨウ化物等の濃度や、温度を有していてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整(補色)のための架橋処理を、それぞれ複数の工程(例えば複数の槽)で行ってもよい。
一般に、架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整(補色)のための架橋処理の双方を実施する場合、色相調整(補色)のための架橋処理を実施する槽(補色槽)が後段に配置される。補色槽に収容される処理液の温度は、例えば10~55℃であり、好ましくは20~50℃である。補色槽に収容される処理液における架橋剤の含有量は、水100重量部あたり、例えば1~5重量部である。補色槽に収容される処理液におけるヨウ化物の含有量は、水100重量部あたり、例えば3~30重量部である。
第1架橋処理槽17では、架橋処理とともに延伸処理(通常は一軸延伸処理)を施すことが好ましい。図1を参照して、例えば、ニップロール2dとニップロール2eとの周速差を利用して第1架橋処理槽17中で一軸延伸処理を施すことができる。
第1架橋処理槽17中で行う延伸の延伸倍率は、通常1.05~2.5倍であり、好ましくは1.1~2.2倍である。
湿式処理部が架橋処理槽を2槽以上含む場合、第1架橋処理槽17以外の架橋処理槽でも延伸処理を行ってもよい。
図1に示される例において、第2架橋処理槽18から引き出されたフィルムは、ガイドロール1s、ニップロール2gを順に通過して洗浄処理槽19へ導入される。
(2-4)洗浄処理槽及び洗浄処理
偏光フィルム製造装置は、架橋処理槽の下流側に配置される洗浄処理槽19をさらに含むことができる。洗浄処理は、架橋処理後のPVA系樹脂フィルム10に付着した余分な薬剤を除去する等の目的で実施される処理である。
図1を参照して、洗浄処理は、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、架橋処理(架橋処理槽に浸漬された)後のPVA系樹脂フィルム10を洗浄処理槽19に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。あるいは、洗浄処理は、架橋処理後のPVA系樹脂フィルム10に対して洗浄液を例えばシャワーとして噴霧する処理であってもよく、洗浄処理槽19への浸漬と洗浄液の噴霧とを組み合わせてもよい。図1には、PVA系樹脂フィルム10を洗浄処理槽19に浸漬して洗浄処理を施す場合の例を示している。
洗浄処理槽19に収容される洗浄処理液や噴霧される洗浄液は、例えば水(純水等)であることができるほか、アルコール類等の水溶性有機溶媒を添加した水溶液であってもよい。洗浄浴の温度は、例えば2~40℃である。
洗浄処理を行いながら延伸処理(通常は一軸延伸処理)を施してもよい。図1を参照して、例えば、ニップロール2gとニップロール2hとの周速差を利用して洗浄処理槽19中で一軸延伸処理を施すことができる。
(2-5)延伸手段及び延伸処理
湿式処理においてPVA系樹脂フィルム10に対して湿式延伸を実施してもよい。湿式延伸は通常、一軸延伸であり、膨潤処理、染色処理、架橋処理、洗浄処理のいずれかの処理を行いながら、又はこれらから選択される2以上の処理中に行うことができる。上述のように、少なくとも第1架橋処理槽17において延伸処理を行うことが好ましい。
湿式延伸の延伸倍率は、得られる偏光フィルム25の偏光特性の観点から、好ましくは、偏光フィルム25の最終的な累積延伸倍率(湿式処理に供されるPVA系樹脂フィルム10が延伸フィルムである場合には、この延伸も含めた累積延伸倍率)が3~8倍となるように調整される。
湿式延伸処理を実施する場合、偏光フィルム製造装置は、PVA系樹脂フィルム10の湿式延伸手段を含む。湿式延伸手段は、好ましくはロール間延伸を行う延伸手段である。第1架橋処理槽17にて湿式でロール間延伸を行う場合を例に挙げると、ロール間延伸を行う延伸手段は、第1架橋処理槽17の上流側及び下流側にそれぞれ配置される2つのニップロール2d,2eである。他の湿式処理中に延伸を行う場合についても同様に、離間して配置された2つのニップロールを湿式延伸手段とすることができる。
(3)乾燥処理部及び乾燥処理
乾燥処理が実施される乾燥処理部は、PVA系樹脂フィルム10の搬送経路上であって湿式処理部の下流側に配置される、湿式処理後のPVA系樹脂フィルム10を乾燥させるためのゾーンである。湿式処理後のPVA系樹脂フィルム10を引き続き搬送させながら、乾燥処理部に当該フィルムを導入することによって乾燥処理を施すことができ、これにより偏光フィルム25が得られる(図1参照)。
乾燥処理部は、フィルムの乾燥手段(加熱手段)を含む。乾燥手段の好適な一例は、図1に示される乾燥炉21のような乾燥炉である。乾燥炉は、好ましくは炉内温度を制御可能なものである。乾燥炉は、例えば、熱風の供給等により炉内温度を高めることができる熱風オーブンである。また乾燥手段による乾燥処理は、凸曲面を有する1又は2以上の加熱体に湿式処理後のPVA系樹脂フィルム10を密着させる処理や、ヒーターを用いて該フィルムを加熱する処理であってもよい。
上記加熱体としては、熱源(例えば、温水等の熱媒や赤外線ヒーター)を内部に備え、表面温度を高めることができるロール(例えば熱ロールを兼ねたガイドロール)を挙げることができる。上記ヒーターとしては、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等を挙げることができる。図1には、乾燥炉21内に湿式処理後のPVA系樹脂フィルム10を導入して乾燥処理する例を示している。
乾燥処理の温度(例えば、乾燥炉21の炉内温度、熱ロールの表面温度等)は、通常30~100℃であり、好ましくは50~90℃である。
偏光フィルム25は、延伸(通常は一軸延伸)されたPVA系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されているものである。偏光フィルム25の厚みは、通常2~40μmである。偏光フィルム25を含む偏光板の薄膜化の観点から、偏光フィルム25の厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
得られる偏光フィルム25の視感度補正単体透過率Tyは、視感度補正偏光度Pyとのバランスを考慮して、40~47%であることが好ましく、41~45%であることがより好ましい。視感度補正偏光度Pyは、99.9%以上であることが好ましく、99.95%以上であることがより好ましい。
Ty及びPyは、積分球付き吸光光度計を用い、得られた透過率、偏光度に対してJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことによって測定することができる。
得られた偏光フィルム25は、巻取ロール27に順次巻き取ってロール形態としてもよいし、巻き取ることなくそのまま偏光板作製工程(偏光フィルム25の片面又は両面に熱可塑性樹脂フィルム(保護フィルム等)を積層する工程)に供することもできる。
(4)偏光フィルム製造装置の構成
(4-1)架橋処理槽の深さ及び底面の位置
偏光フィルム製造装置が備える第1架橋処理槽17の深さは、その搬送経路上流側に隣り合って配置される染色処理槽15(上述のように、湿式処理部が染色処理槽を2槽以上含む場合、搬送経路の最も下流側に配置される染色処理槽)の深さよりも小さい(図1参照)。
上記深さ関係を充足する第1架橋処理槽17によれば、第1架橋処理槽17に収容される第1架橋処理液の液量を少なくすることができるとともに、第1架橋処理液の液高さ(深さ)を小さくすることができる。第1架橋処理液の液高さ(深さ)を小さくできることは、作業性の向上にも寄与し、例えば、通紙(フィルムを搬送経路上にセットする作業)が容易になったり、第1架橋処理液中に混入した異物(フィルムが破断した場合のフィルム片等)の回収作業が容易になったりする。第1架橋処理液の液量の低減は、試剤(架橋剤やヨウ化物等)の使用量の低減に寄与する。上記深さ関係を充足する第1架橋処理槽17を用いることは、偏光フィルム製造装置のコンパクト化の点でも有利である。
架橋処理が行われる第1架橋処理槽17においては、連続的に架橋処理液に浸漬されるPVA系樹脂フィルム10に対する架橋処理がフィルム長手方向にわたって均一になされることが求められる。また、第1架橋処理槽17において延伸処理を行う場合には、その延伸処理がフィルム長手方向にわたって均一になされることが求められる。架橋処理の均一性が高くない場合には、得られる偏光フィルム25の光学特性(偏光度、透過率等)の均一性が低下し得る。延伸処理の均一性が高くない場合には、延伸処理中にフィルムを破断を生じるおそれがあり、また得られる偏光フィルム25の光学特性の均一性が低下し得る。
上記深さ関係を充足する第1架橋処理槽17によれば、第1架橋処理槽17に収容される第1架橋処理液の液量を少なくすることができるとともに、第1架橋処理液の液高さ(深さ)を小さくすることができる結果、第1架橋処理槽17での架橋処理(さらには延伸処理)中における第1架橋処理液の液温及び濃度の変動を小さくすることができる。これにより、第1架橋処理槽17での架橋処理、さらには延伸処理を実施する場合の該延伸処理のフィルム長手方向にわたっての均一性を向上させることができる。
第1架橋処理槽17の深さをD17、染色処理槽15の深さをD15とするとき、D15に対するD17の比(D17/D15)は、例えば0.9以下であり、上記効果の観点から、好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.7以下である。D17/D15は、例えば0.2以上であり、第1架橋処理槽17の第1架橋処理液中に搬送用のガイドロールや延伸処理用のニップロールをより容易に収容させる観点から、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.35以上である。第1架橋処理槽17において延伸処理を施す場合、大きな張力をフィルムに付与する必要があるため、通常は300~500mmの径を有する大径ニップロールを第1架橋処理槽17の第1架橋処理液中に配置し、フィルムを延伸、搬送させる。
D17は例えば300~1500mmであってよく、D15は例えば400~2000mmであってよい。
湿式処理部が第1架橋処理槽17以外の他の架橋処理槽を第1架橋処理槽17の下流側に備える場合(例えば、図1に示される第2架橋処理槽18)、他の架橋処理槽の深さは特に制限されない。ただし、第2架橋処理槽18に収容される第2架橋処理液の液量を少なくすることができるとともに、第2架橋処理液の液高さ(深さ)を小さくすることができる結果、上記と同様の効果が得られ得ることから、第2架橋処理槽18の深さは、染色処理槽15(上述のように、湿式処理部が染色処理槽を2槽以上含む場合、搬送経路の最も下流側に配置される染色処理槽)の深さよりも小さいことが好ましい。必要に応じて設置される3槽目以降の架橋処理槽についても同様である。
また、偏光フィルム製造装置が備える第1架橋処理槽17の底面は、染色処理槽15の底面よりも高い位置にある。この構成によっても、作業性を向上させることができる。例えば、通紙(フィルムを搬送経路上にセットする作業)が容易になったり、第1架橋処理液中に混入した異物(フィルムが破断した場合のフィルム片等)の回収作業が容易になったりする。
同様の理由で、必要に応じて設置される2槽目以降の架橋処理槽も上記底面の位置関係を充足することが好ましい。
偏光フィルム製造装置は、第1架橋処理槽17に隣接する床面を含む。この床面は、典型的には、作業者が作業を行う作業用床面である。この作業用床面は通常、第1架橋処理槽17だけでなく、他の処理槽等にも隣接している。
図1を参照して、作業用床面の位置30は、第1架橋処理槽17の底面と略同じ高さに配置されている。略同じ高さとは、高さの差の絶対値が0~300mm程度であることをいう。高さの差の絶対値は、好ましくは0~200mm、より好ましくは0~100mmである。
作業用床面の位置30が第1架橋処理槽17の底面と略同じ高さに配置されていると、上述の作業性をより高めることができる。
作業用床面の位置30は、偏光フィルム製造装置全体にわたって略同じ高さになっていることが好ましい。
(4-2)架橋処理槽内のフィルム搬送経路
光学特性が安定した偏光フィルム25を連続製造する観点から、第1架橋処理槽17内のフィルム搬送経路は、下記〔a〕及び〔b〕の少なくともいずれか一方を充足することが好ましい。
〔a〕第1架橋処理槽17内に1以上のガイドロールが配置されており、該1以上のガイドロールは、第1架橋処理槽17内の搬送経路の最高位置と最低位置との差が500mm以下となるように配置されている。
〔b〕第1架橋処理槽17内に配置される2以上のガイドロールを含み、該2以上のガイドロールは、互いに隣り合う2つのガイドロールであって、いずれのガイドロールにおいてもPVA系樹脂フィルム10の抱き角が30度以下となるように配置される2つのガイドロールを含む。
上記〔a〕を充足するように第1架橋処理槽17内にガイドロールを配置することにより、第1架橋処理槽17内を走行するPVA系樹脂フィルム10の深さ方向に関する位置変動を小さくすることができる。これにより、第1架橋処理液が深さ方向に関して温度分布や濃度分布を有している場合であっても、これらの分布が偏光フィルム25の光学特性に与える悪影響を抑制することができる。
上記最高位置と最低位置との差は、好ましくは400mm以下であり、より好ましくは350mm以下である。当該差は0mmであってもよく、0mmを超えていてもよい。
なお、ガイドロールは、第1架橋処理槽17内に2以上、さらには3以上配置することができる(図1参照)。
必要に応じて配置される2槽目以降の架橋処理槽も上記〔a〕を充足することが好ましい。
上記〔b〕を充足するように第1架橋処理槽17内にガイドロールを配置することによっても、第1架橋処理槽17内を走行するPVA系樹脂フィルム10の深さ方向に関する位置変動を小さくすることができる。これにより、第1架橋処理液が深さ方向に関して温度分布や濃度分布を有している場合であっても、これらの分布が偏光フィルム25の光学特性に与える悪影響を抑制することができる。
上記抱き角は、20度以下、さらには10度以下であってもよい。上記抱き角は0度である場合もあり得る。
図2を参照して、フィルムAのロールBへの抱き角とは、フィルムAがロールBに初めて接触する瞬間のフィルムAとロールBとの接点と、ロールBの中心とを結ぶ直線をX、フィルムAがロールBから離れる瞬間のフィルムAとロールBとの接点と、ロールBの中心とを結ぶ直線をYとするとき、直線Xと直線Yとがなす角αをいう。
第1架橋処理槽17内に3以上のガイドロールを配置する場合、これら3以上のガイドロールのうち、できるだけ多くのガイドロールにおいてPVA系樹脂フィルム10の抱き角が30度以下となるようにガイドロールを配置することが好ましい。できるだけ多くとは、例えば2以上、さらには3以上、なおさらには4以上である。また、抱き角が30度以下となるガイドロールをできるだけ多く連続して並べることが好ましい。できるだけ多くとは、例えば2以上、さらには3以上、なおさらには4以上である。
必要に応じて配置される2槽目以降の架橋処理槽も上記〔b〕を充足することが好ましい。
湿式処理部は、PVA系樹脂フィルム10に対して第1架橋処理槽17中で延伸処理を施すための延伸手段を有することができる。この延伸手段の一例は、図1に示される例を参照すると、搬送経路の上流側に配置されるニップロール2d(第1ニップロール)と、下流側に配置されるニップロール2e(第2ニップロール)との組み合わせである。
上記〔b〕を充足する場合において、偏光フィルム製造装置は、さらに下記〔c-1〕及び〔c-2〕を充足することが好ましい。
〔c-1〕第1ニップロールは、上記〔b〕に記載の隣り合う2つのガイドロールよりも搬送経路の上流側に配置され、第2ニップロールは、上記〔b〕に記載の隣り合う2つのガイドロールよりも搬送経路の下流側に配置される。
〔c-2〕第1ニップロール及び第2ニップロールはそれぞれ、上下に配置される2つのロールを含み、かつ、それらの下側のロールの上端が第1架橋処理槽17の上端よりも低い位置にあり、下側のロールの下端が第1架橋処理槽17の下端よりも高い位置にあるように配置される。
上記〔c-2〕は、第1及び第2ニップロールの下側のロールの全体が第1架橋処理液に浸漬できる程度の高さ位置に配置されることを意味している。上記〔b〕を充足することに加えて、上記〔c-1〕及び〔c-2〕を充足することにより、第1架橋処理槽17内の搬送経路全体に占める、第1架橋処理槽17内を走行するPVA系樹脂フィルム10の深さ方向に関する位置変動を小さくすることができる搬送経路部分の割合をより大きくすることができる。このことは、光学特性が安定した偏光フィルム25を連続製造するうえで有利である。上記〔b〕を充足することに加えて、上記〔c-1〕及び〔c-2〕を充足することは、第1架橋処理液中での延伸の均一性を高めるうえでも有利である。
第1ニップロールと第2ニップロールとの間に配置されるガイドロールは3以上であってもよい。これら3以上のガイドロールのうち、できるだけ多くのガイドロールにおいてPVA系樹脂フィルム10の抱き角が30度以下となるようにガイドロールを配置することが好ましい。できるだけ多くとは、例えば2以上、さらには3以上、なおさらには4以上である。また、第1ニップロールと第2ニップロールとの間に、抱き角が30度以下となるガイドロールをできるだけ多く連続して並べることが好ましい。できるだけ多くとは、例えば2以上、さらには3以上、なおさらには4以上である。
以上のとおり、偏光フィルム製造装置が上記〔a〕、〔b〕、〔c-1〕及び〔c-2〕を充足することにより、第1架橋処理槽17内を走行するPVA系樹脂フィルム10の深さ方向に関する位置変動を小さくすることができ、あるいはさらに、第1架橋処理槽17内の搬送経路全体に占める、第1架橋処理槽17内を走行するPVA系樹脂フィルム10の深さ方向に関する位置変動を小さくすることができる搬送経路部分の割合をより大きくすることができる。偏光フィルム製造装置が上記〔a〕、〔b〕、〔c-1〕及び〔c-2〕を充足し、第1架橋処理槽17内を走行するPVA系樹脂フィルム10の深さ方向に関する位置変動が小さくなることは、第1架橋処理槽71のガイドロールやニップロールがより限定された特定の深さ領域に配置されることを意味する。この場合、フィルム搬送やフィルム搬送時の各ロールの回転によって第1架橋処理槽17中の第1架橋処理液が攪拌され、対流することによるフィルムの搬送経路部分における第1架橋処理液の温度、濃度の均一化が促進される効果が期待できる。
(4-3)架橋処理槽の長さ
第1架橋処理槽17の搬送方向の長さは、染色処理槽15の搬送方向の長さよりも長いことが好ましい。この長さ関係は、とりわけ上記〔a〕又は〔b〕を充足する場合において充足されることが好ましい。
上記〔a〕又は〔b〕を充足する場合においては、第1架橋処理槽17内でのPVA系樹脂フィルム10の滞留時間(搬送経路の長さ)は、当該槽の深さ方向よりはむしろ搬送方向への搬送経路によって確保される。
第1架橋処理槽17の搬送方向の長さを染色処理槽15の搬送方向の長さよりも長くすることにより、必要な架橋処理時間を確保しつつ、光学特性が安定した偏光フィルム25を連続製造することができる。
第1架橋処理槽17の搬送方向の長さをL17、染色処理槽15の搬送方向の長さをL15とするとき、L15に対するL17の比(L17/L15)は、例えば1.1以上であり、上記効果の観点から、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上である。L17/L15は、例えば2.5以下であり、偏光フィルム製造装置の占有面積の観点から、好ましくは2以下であり、1.8以下である。
L17は例えば3~10mであってよく、L15は例えば1~8mであってよい。
湿式処理部が第1架橋処理槽17以外の他の架橋処理槽を第1架橋処理槽17の下流側に備える場合、他の架橋処理槽の搬送方向の長さは特に制限されない。ただし、上記と同様の観点から、必要に応じて設置される2槽目以降の架橋処理槽についても第1架橋処理槽17と同様の長さ関係を充足することが好ましい。
1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j,1k,1l,1m,1n,1o,1p,1q,1r,1s,1t,1u,1v,1w,1x,1y,1z,1aa,1bb ガイドロール、2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2h,2i ニップロール、10 ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(PVA系樹脂フィルム)、11 巻出ロール、13 膨潤処理槽、15 染色処理槽、17 第1架橋処理槽、18 第2架橋処理槽、19 洗浄処理槽、21 乾燥炉、25 偏光フィルム、27 巻取ロール、30 作業用床面の位置。

Claims (4)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造するための製造装置であって、
    複数のロールによって構成されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送経路と、
    前記搬送経路上に配置され、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが浸漬される処理液を収容するための2以上の処理槽と、
    を含み、
    前記2以上の処理槽は、前記搬送経路の上流側から順に、染色処理液を収容するための染色処理槽と、第1架橋処理液を収容するための第1架橋処理槽と、を含み、
    第1架橋処理槽の深さが染色処理槽の深さよりも小さく、
    第1架橋処理槽の底面が染色処理槽の底面よりも高い位置にあり、
    前記製造装置は、第1架橋処理槽に隣接する床面をさらに含み、
    前記床面は、第1架橋処理槽の底面と略同じ高さに配置されており、
    前記複数のロールは、第1架橋処理槽内に配置される以上のガイドロールを含み、
    前記以上のガイドロールは、いずれのガイドロールにおいてもポリビニルアルコール系樹脂フィルムの抱き角が30度以下となるように配置されており
    前記3以上のガイドロールは、第1架橋処理槽内の搬送経路の最高位置と最低位置との差が500mm以下となるように配置され、
    第1架橋処理槽は、第1架橋処理液中でポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して延伸処理が施される処理槽であり、
    前記複数のロールは、前記延伸処理を施すための延伸手段としての第1ニップロール及び第2ニップロールをさらに含み、
    第1ニップロールは、前記3以上のガイドロールよりも前記搬送経路の上流側に配置され、
    第2ニップロールは、前記3以上のガイドロールよりも前記搬送経路の下流側に配置され、
    第1ニップロール及び第2ニップロールはそれぞれ、上下に配置される2つのロールを含み、かつ、それらの下側のロールの上端が第1架橋処理槽の上端よりも低い位置にあり、前記下側のロールの下端が第1架橋処理槽の下端よりも高い位置にあるように配置される、偏光フィルムの製造装置。
  2. 前記床面と第1架橋処理槽の底面との高さの差の絶対値が0mm~300mmである、請求項1に記載の製造装置。
  3. 第1架橋処理槽よりも前記搬送経路の下流側に配置される処理槽であって第2架橋処理液を収容するための第2架橋処理槽をさらに含み、
    第2架橋処理槽の深さが染色処理槽の深さよりも小さく、
    第2架橋処理槽の底面が染色処理槽の底面よりも高い位置にある、請求項1又は2に記載の製造装置。
  4. 第1架橋処理槽の搬送方向の長さが染色処理槽の搬送方向の長さよりも長い、請求項1~のいずれか1項に記載の製造装置。
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