JP3921155B2 - 偏光板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置、特に液晶表示装置に使用する偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
画像表示装置(特に液晶表示装置)に使用する偏光板は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、二色性を有するヨウ素または二色性染料で染色する染色工程、ホウ酸やホウ砂等で架橋する架橋工程、および一軸延伸する延伸工程(染色、架橋、延伸の各工程は、必ずしも別々に行う必要はなく、いくつかの工程を同時に行っても良いし、各工程の順番も特に規定するものではない。)の後に乾燥し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の透明保護フィルムからなる保護層と貼り合わせて製造されている。
【0003】
一般に製造されている偏光板は、偏光子の両側に物性、厚み等の特性が等しい保護フィルムを、接着剤を用いて貼り合わせているため、偏光子と保護フィルムを3枚同時に貼り合わせても外観、カール等の特性に問題なく製造できる。しかし、両側に貼り合わせる保護フィルムの物性や厚みが異なる場合、3枚同時に貼り合わせると、貼り合わせ時に外観に関する問題(剥がれやカール)が発生し、作業効率を低下させるのみならず、偏光性能の低下を招いている。そのため、従来では保護層の厚みを薄くするという方法が用いられていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−235625号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述のとおり、物性、厚み等の諸特性が異なる保護フィルムを偏光子の両側に貼り合わせることによって現れる外観、カール等の問題点を、保護層の厚みを薄くすることなく解決することができる偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を検討すべく、鋭意検討したところ、以下に示す偏光板の製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせる偏光板の製造方法において、
2枚の透明保護フィルムはそれぞれ異なる特性をもつものであり、
偏光子の片面に、1枚の透明保護フィルムを、偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせた後の状態がフラットになるように偏光子と保護フィルムの張力を制御して、貼りあわせた後に、
同一工程中で、
偏光子の残りの片面にもう1枚の透明保護フィルムを、偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせた後の状態がフラットになるように偏光子と保護フィルムの張力を制御して、貼りあわせることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせる偏光板の製造方法において、
2枚の透明保護フィルムはそれぞれ異なる特性をもつものであり、
偏光子の片面に、1枚の透明保護フィルムを貼りあわせる際に、当該透明保護フィルムを貼りあわせる偏光子の反対側の面に、同一物性か同一厚みの補強用フィルムを、接着剤なしで貼りあわせ、次に、前記補強用フィルムを剥離した後に、
同一工程中で、
偏光子の残りの片面にもう1枚の透明保護フィルムを、偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせた後の状態がフラットになるように偏光子と保護フィルムの張力を制御して、貼りあわせることを特徴とする。
【0009】
また、前記2枚の透明保護フィルムはそれぞれ異なる引張り弾性率を有し、それぞれの引張り弾性率をA,B(A>B)としたときに、(A−B)/Aの値が0.1以上1.0未満および/または2枚の透明保護フィルムが異なる厚みを有し、それぞれの厚みをa,b(a>b)としたときに、(a−b)/aの値が0.1以上1.0未満であることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明による偏光板の基本的な構成は、例えば、二色性物質含有のポリビニルアルコール系フィルム等からなる偏光子の片面または両面に、ビニルアルコール系ポリマー等からなる適宜な接着層を介して保護層となる透明保護フィルムを接着したものからなる。
【0013】
偏光子の製造方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬し、水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果のある膨潤工程、ヨウ素等の二色性物質や二色性染料等の染料の入った浴中にて染色する染色工程、ホウ酸やホウ砂等の架橋剤の入った浴中にて架橋する架橋工程および元長の3〜7倍に延伸する延伸工程等の工程を経て製造される。これらの工程の順番は特に限定されるものではなく、また、いくつかの工程を同時に行っても良い。例えば、延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよく、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0014】
偏光子としては、特に限定されることなく各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に限定されるものではないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0015】
偏光子は、必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよく、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。
【0016】
本発明では、偏光子の両面に貼りあわせる2枚の透明保護フィルムがそれぞれ異なる特性をもつものを用いる。その特性としては、これに限定されるものではないが、例えば、厚み、材質、光透過率、引張り弾性率あるいは光学層の有無等が挙げられる。
【0017】
特に本発明では、厚みや偏光子と貼りあわせる前に測定したときの引張り弾性率が異なる2枚の透明保護フィルムを、偏光子の両側に設けている。この両面に貼りあわせる2枚の透明保護フィルムにおける引張り弾性率をA、B(A>B)としたときの(A−B)/Aが0.10以上1.0未満、および/または厚みをa、b(a>b)としたとき、(a−b)/aが0.1以上1.0未満である場合に、本発明による製造方法が有効である。なかでも、これらの値が0.15以上0.80未満であることが好ましく、0.20以上0.65未満であることが特に好ましい。なお、引張り弾性率A,Bと厚みa,bは対応関係を有するものではなく、例えば、引張り弾性率がAである透明保護フィルムの厚みはa,bどちらでもよい。
【0018】
前記透明保護フィルムを偏光子と貼りあわせる際には、偏光子の片面ずつ別々に貼りあわせる。このときの貼りあわせ方法としては、例えば、貼りあわせ後の状態がフラットになるように偏光子と保護フィルムの張力を制御する方法や、保護フィルムを貼りあわせる反対側の面に同一物性か同一厚みのフィルムを、接着剤なしで次に剥離することを前提とした補強用フィルムとして用い、その後、もう一方の面への貼りあわせとして、弾性率や厚みが異なる保護フィルムを、接着剤を用いて貼りあわせた後の状態がフラットになるように張力を制御して貼りあわせる方法が挙げられる。このとき、1回目の貼りあわせ時に剥離を前提とした補強用フィルムを用いた場合はあらかじめ剥離しておく必要がある。また、この片面ごとの貼り合わせは、同一工程中で行う。光学特性の劣化を防ぐために、途中で巻き取ることなく同一工程中で行うことが好ましい。同一工程中で貼りあわせる場合には、連続で行ってもよいし、間に他の作業を挟んでもよい。上記のように貼り合わせを同一工程で行うことにより、製造装置の設置スペースが少なくて済むことに加え、巻き取り工程による時間のロスがないことから、生産効率を大幅に向上させることができる。なお、2枚の透明保護フィルムを偏光子に貼りあわせる順番としては、いずれを先に貼りあわせても良いが、作業効率や貼りあわせ後の偏光板の性能等を考慮して適宜決めることができる。
【0019】
貼りあわせ後の状態がフラットかどうかは、貼りあわせ工程後に100mm×100mmの大きさ(吸収軸45°)に切断してサンプルを取り、平坦な面に置いてカール量を測定(平坦面から持ち上がった空間距離P)することによって判断する。通常、空間距離Pが5mm以下であることをフラットとするが、フラットであると判断する空間距離Pは適宜決めることができる。
【0020】
偏光子と透明保護フィルムを貼りあわせる際の張力を制御する方法としては、例えば、フィルムを搬送するガイドロールの周速差を利用する方法があげられる。
【0021】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや方向族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。これらの中でもセルロース系ポリマーが好ましい。
【0022】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられ、具体例としてはイソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出し品などからなるフィルムを用いることができる。
【0023】
透明保護フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのがより好ましい。また、偏光特性や耐久性などの点より、保護フィルム表面をアルカリなどでケン化処理することが好ましい。
【0024】
また、透明保護フィルムはできるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚である)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである透明保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向の位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0025】
本発明による偏光板は、実用に際して各種光学層を積層して用いることができる。その光学層については特に限定されるものではないが、例えば、前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面(前記接着剤塗布層を設けない面)に対して、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした表面処理を施したり、視角補償等を目的とした配向液晶層を積層する方法があげられる。また、反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板(λ板)を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられる光学フィルムを1層または2層以上貼りあわせたものもあげられる。特に偏光板に、反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、視角補償層または視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。また、前記光学層あるいは前記光学フィルムを透明保護フィルムと積層するタイミングは、偏光子と貼りあわせた後でも良いし、偏光子と貼りあわせる前でも良い。
【0026】
ハードコート処理は偏光板表面の傷つき防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は変更板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0027】
また、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して、偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋または未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)をかねるものであってもよい。
【0028】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等の光学層は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0029】
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理は特に限定されるものではないが、例えば、ビニルポリマーからなる接着剤、あるいは、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤などを介して行うことができる。この接着層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。
【0030】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内臓を省略できて、液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0031】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じ、マット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また、前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光およびその反射光がそれを透過する際に拡散されて、明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で、金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0032】
反射板は、前記偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお、反射層は通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設回避の点などにより好ましい。
【0033】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内臓光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的明るい雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0034】
偏光板にさらに位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変えたりする位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板ともいう)が用いられる。1/2波長板(λ/2板ともいう)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0035】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青または黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。さらに、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0036】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。延伸処理は、例えばロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法などにより行うことができる。延伸倍率は、一軸延伸の場合には1.1〜3倍程度が一般的である。位相差板の厚さも特に制限されないが、一般的には10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0037】
前記高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0038】
前記液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0039】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
【0040】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板または反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記のごとくあらかじめ楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて、液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0041】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され、厚さ方向にも延伸された、厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理または/および収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0042】
また、良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0043】
偏光板と輝度向上フィルムを貼りあわせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得るとともに、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光をさらにその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部または全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図るとともに、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して、液晶画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに、輝度向上フィルムでいったん反射させ、さらにその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光市を通過しうるような偏光方向になった偏光のみを透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0044】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態とする。すなわち元の自然光状態にもどす。この非偏光状態すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射して、拡散板を再び通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのムラを少なくし、均一の明るい画面を提供することができる。元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能とあいまって均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0045】
前記輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0046】
したがって、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸をそろえて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ、効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0047】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの単色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。したがって、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層または2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0048】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層または3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0049】
また、本発明の偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層または3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。したがって、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0050】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、あらかじめ積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0051】
本発明による偏光板や、前記の積層光学部材には、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。その粘着層は、特に限定されるものではないが、アクリル系等の従来に準じた適宜な粘着剤にて形成することができる。吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる画像表示装置の形成性等の点により、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層であることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などとすることもできる。粘着層は必要に応じて必要な面に設ければよく、例えば、本発明のような偏光子と保護フィルムからなる偏光板について言及するならば、必要に応じて、保護層の片面または両面に粘着層を設ければよい。
【0052】
前記粘着層が表面に露出する場合には、その粘着層を実用に供するまでの間の汚染防止等を目的としてセパレータにて仮着カバーをすることが好ましい。セパレータは、上記の透明保護フィルム等に準じた適宜な薄葉体に、必要に応じてシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤による剥離コートを設ける方式などにより形成することができる。
【0053】
なお、上記の偏光板や光学部材を形成する偏光子や透明保護フィルム、光学層や粘着層などの各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの適宜な方式により紫外線吸収能を持たせたものであってもよい。
【0054】
本発明による偏光板は液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置の形成に好ましく用いることができる。
【0055】
本発明の偏光板は、液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができ、例えば、偏光板を液晶セルの片側あるいは両側に配置してなる反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。液晶セル基板は、プラスチック基板、ガラス基板のいずれでも良い。液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど適宜なタイプの液晶セルを用いたものであって良い。
【0056】
また、液晶セルの両側に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0057】
次いで、有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせを持った構成が知られている。
【0058】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性に伴う強い非線形性を示す。
【0059】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0060】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0061】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差フィルムを設けることができる。
【0062】
位相差フィルムおよび偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差フィルムを1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0063】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差フィルムにより一般に楕円偏光となるが、特に位相差フィルムが1/4波長板でしかも偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0064】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムで再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0065】
本発明による偏光板は、液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置は、本発明による偏光板を液晶セルの片側または両側に配置してなる透過型や反射型、あるいは透過・反射両用型等の従来に準じた適宜な構造を有するものとして形成することができる。したがって、液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであっても良い。
【0066】
また液晶セルの両側に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0067】
上記のように本発明では、偏光板の製造方法において、偏光子の両面に貼りあわせる2枚の透明保護フィルムのうち、1枚の透明保護フィルムを貼りあわせた後に、他面にもう一枚の透明保護フィルムを貼りあわせることを特徴とする偏光板の製造方法であって、この2枚の透明保護フィルムが異なる引張り弾性率を有し、それぞれの引張り弾性率をA、B(A>B)としたときに、(A−B)/Aの値が0.1以上1.0未満であり、および/またはこの2枚の透明保護フィルムが異なる厚みを有し、それぞれの厚みをa、b(a>b)としたときに、(a−b)/aの値が0.1以上1.0未満であるものを用いた場合の外観およびカール等の問題を解決したものである。このときの2枚の透明保護フィルムは同一工程中で順次貼りあわせることが好ましい。また、この製造方法を用いて作成された偏光板は、ハードコート層や位相差板等の前記光学層と組み合わせて用いることもできる。さらに、これらは一般に、前記画像表示装置の一部として用いられる。
【0068】
【実施例】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0069】
実施例1
ポリビニルアルコール(PVA)フィルム((株)クラレ製「9X75RS」)を用いて、第1浴(ヨウ素、KI水溶液−30℃)で3倍延伸後、第2浴(ホウ酸、KI水溶液−55℃)中でトータル延伸倍率を6倍まで延伸して偏光子を得た。その後、PVA系接着剤を用いて、厚さ80μm、引張り弾性率が4100MPaのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる透明保護フィルムと偏光子を、貼りあわせ後にフラットになるように張力を制御して貼りあわせ、50℃で5分間乾燥処理をした後、同一工程において、PVA系接着剤を用いて、厚さ80μm、引張り弾性率が2400MPaのポリカーボネート(PC)フィルムからなる透明保護フィルムを1枚目と同様に張力を制御して貼りあわせて、50℃で5分間乾燥処理をして偏光板を作製した。
【0070】
実施例2
実施例1において、透明保護フィルムとして厚さ80μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムと厚さ40μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムを用いた以外は実施例1と同様な方法で偏光板を作製した。
【0071】
実施例3
実施例1において、透明保護フィルムとして厚さ80μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムと厚さ40μm、引張り弾性率が2400MPaのPCフィルムを用いた以外は実施例1と同様な方法で偏光板を作製した。
【0072】
実施例4
実施例1記載の偏光子を得た後、PVA系接着剤を用いて、厚さ80μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムからなる透明保護フィルムと偏光子を貼りあわせる際に、偏光子の保護フィルムを貼りあわせる反対側の面に、同じTACフィルム(厚さ80μm、引張り弾性率4100MPa)を補強用フィルムとして接着剤なしで同時に貼りあわせ、50℃で5分間乾燥処理をした後、補強用フィルムを剥離し、その剥離した面にPVA系接着剤を用いて、厚さ40μm、引張り弾性率が2400MPaのPCフィルムからなる透明保護フィルムの張力を制御して貼りあわせて、50℃で5分間乾燥処理をして偏光板を作製した。
【0073】
参考(比較)例1
実施例1において、透明保護フィルムとして厚さ80μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムを貼りあわせた後に50℃で5分間乾燥処理をして巻き取り、その後、厚さ40μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムを偏光子の透明保護フィルムを貼りあわせていない面に貼りあわせ、50℃で5分間の乾燥処理を施した以外は実施例1と同様な方法で偏光板を作製した。
【0074】
参考(比較)例2
実施例1記載の偏光子を得た後、PVA系接着剤を用いて、厚さ80μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムからなる透明保護フィルムと偏光子を貼りあわせる際に、偏光子の保護フィルムを貼りあわせる反対側の面に、同じTACフィルム(厚さ80μm、引張り弾性率4100MPa)を補強用フィルムとして接着剤なしで同時に貼りあわせ、50℃で5分間乾燥処理をした後、一旦巻き取り、その後補強用フィルムを剥離し、その剥離した面にPVA系接着剤を用いて、厚さ40μm、引張り弾性率が2400MPaのPCフィルムからなる透明保護フィルムの張力を制御して貼りあわせて、50℃で5分間乾燥処理をして偏光板を作製した。
【0075】
実施例5
実施例1において、透明保護フィルムとして厚さ80μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムと厚さ110μm、引張り弾性率が5600MPaの視角補償層を積層した透明保護フィルム(富士写真フィルム(株)製:WVフィルム)を用いた以外は実施例1と同様な方法で偏光板を作製した。
【0076】
参考(比較)例3
実施例1において、透明保護フィルムとして厚さ80μm、引張り弾性率が4100MPaのTACフィルムを貼りあわせた後に一旦巻き取り、その後厚さ110μm、引張り弾性率が5600MPaの視角補償層を積層した透明保護フィルム(富士写真フィルム(株)製:WVフィルム)を実施例1と同様な方法で偏光板を作製した。
【0077】
比較例1
実施例1記載の偏光板作製方法において、実施例1と同様のTACフィルムおよびPCフィルムを貼りあわせる際に、偏光子の両面に同時に貼りあわせて偏光板を作製した。
【0078】
比較例2
実施例1記載の偏光板作製方法において、実施例2と同様のTACフィルムを貼りあわせる際に、偏光子の両面に同時に貼りあわせて偏光板を作製した。
【0079】
比較例3
実施例1記載の偏光板作製方法において、実施例3と同様のTACフィルムおよびPCフィルムを貼りあわせる際に、偏光子の両面に同時に貼りあわせて偏光板を作製した。
【0080】
(引張り弾性率)
引張り弾性率の測定方法としては、それぞれの透明保護フィルムを100mm×30mmの大きさに切り出しサンプルとした。このサンプルを引張試験機(ミネベア(株)製,TCM−IKNB)にてチャック間距離10mm、引張り速度300mm/minで、23℃/65%R.H.の雰囲気下で引張り強度を測定した。このとき、引張り弾性率の数値はS−S曲線の初期の立ち上がりに接線を引き、その傾きから算出した。
【0081】
(評価方法)
作製した偏光板の評価は、偏光板を100mm×100mmの大きさ(吸収軸45°)に切断し、外観を目視で確認し、偏光板を平坦な面に置いてカール量を測定した。
【0082】
【表1】
外観評価:○=良好、△=わずかにキズあり、×=端部に剥がれあり
【0083】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜5の製造方法で貼りあわせた偏光板は、外観、カールともに良好であり、本発明の製造方法により、外観およびカールの問題点を解決できることがわかる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように、本発明による偏光板の製造方法は、引張り弾性率や厚みが異なる2枚の透明保護フィルムを用いたときに、この透明保護フィルムのうち、1枚の透明保護フィルムを貼りあわせた後に、他面にもう1枚の透明保護フィルムを貼りあわせることによって、外観およびカール等の問題点を解決した。したがって、偏光板の外観、カールの問題のない偏光板の製造方法およびその偏光板を用いた画像表示装置を提供している。
Claims (8)
- 偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせる偏光板の製造方法において、
2枚の透明保護フィルムはそれぞれ異なる特性をもつものであり、
偏光子の片面に、1枚の透明保護フィルムを、偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせた後の状態がフラットになるように偏光子と保護フィルムの張力を制御して、貼りあわせた後に、
同一工程中で、
偏光子の残りの片面にもう1枚の透明保護フィルムを、偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせた後の状態がフラットになるように偏光子と保護フィルムの張力を制御して、貼りあわせることを特徴とする偏光板の製造方法。 - 偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせる偏光板の製造方法において、
2枚の透明保護フィルムはそれぞれ異なる特性をもつものであり、
偏光子の片面に、1枚の透明保護フィルムを貼りあわせる際に、当該透明保護フィルムを貼りあわせる偏光子の反対側の面に、同一物性か同一厚みの補強用フィルムを、接着剤なしで貼りあわせ、次に、前記補強用フィルムを剥離した後に、
同一工程中で、
偏光子の残りの片面にもう1枚の透明保護フィルムを、偏光子の両面に2枚の透明保護フィルムを貼りあわせた後の状態がフラットになるように偏光子と保護フィルムの張力を制御して、貼りあわせることを特徴とする偏光板の製造方法。 - 前記の2枚の透明保護フィルムが異なる引張り弾性率を有し、それぞれの引張り弾性率をA,B(A>B)としたときに、(A−B)/Aの値が0.1以上1.0未満であることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板の製造方法。
- 前記の2枚の透明保護フィルムは、1枚の透明保護フィルムはトリアセチルセルロースフィルムであり、もう1枚の透明保護フィルムはポリカーボネートフィルムであることを特徴とする請求項3記載の偏光板の製造方法。
- 前記の2枚の透明保護フィルムが異なる厚みを有し、それぞれの厚みをa,b(a>b)としたときに、(a−b)/aの値が0.1以上1.0未満であることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板の製造方法。
- 前記の2枚の透明保護フィルムは、いずれもトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項5記載の偏光板の製造方法。
- 前記の2枚の透明保護フィルムが異なる引張り弾性率および厚みを有し、それぞれの引張り弾性率をA,B(A>B)としたときに、(A−B)/Aの値が0.1以上1.0未満であるとともに、それぞれの厚みをa,b(a>b)としたときに、(a−b)/aの値が0.1以上1.0未満であることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板の製造方法。
- 前記の2枚の透明保護フィルムは、1枚の透明保護フィルムはトリアセチルセルロースフィルムであり、もう1枚の透明保護フィルムは視角補償層を積層した透明保護フィルムであることを特徴とする請求項7記載の偏光板の製造方法。
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