以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。
《第1実施形態》
図1を用いて、本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる炊飯器の断面図である。
図1に示すように、本第1実施形態にかかる炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、米と水が入れられる鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能に蓋本体3が取り付けられている。蓋本体3の内側(鍋2の開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を塞ぐことが可能な略円盤状の内蓋4が着脱可能に取り付けられている。
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部分1baと、筒状部分1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとで構成されている。コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底円筒形状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部分1baの下端部に取り付けられている。
鍋収納部1aには、駆動部の一例として、鍋2を間欠回転若しくは正逆回転などの可変速回転させる鍋回転装置20が取り付けられている。鍋回転装置20は、鍋回転用ローラ21と、DCモータなどの回転駆動部22と、複数の鍋支持部材23とを有している。
鍋回転用ローラ21は、筒状部分1baの外周面に形成された軸受部に回転可能に軸支されている。鍋回転用ローラ21の外周部は、筒状部分1baの壁を貫通して、鍋2の側壁と当接可能に設けられている。鍋回転用ローラ21の外周部は、鍋2が円滑に回転できるように、ゴムなどの弾性体で構成されている。
回転駆動部22は、筒状部分1baの外周面に取り付けられている。回転駆動部22は、鍋回転用ローラ21を間欠回転若しくは正逆回転などの可変速回転させることができるように構成されている。鍋回転用ローラ21が可変速回転することにより、鍋2が可変速回転し、鍋2内の米と水の被調理物を動かし、特に、米に分散力が付与される。ここで「分散力」とは、米粒集合体が形成されることを阻害するように米を分散させる力、例えば、溶出した粘着性のある澱粉質により米粒同士が互いに付着しないようにする力をいう。
なお、鍋2を正転反転の往復動作(正逆回転)させる場合には、例えば、回転駆動部22の出力を0.5Hz、正転時及び反転時の回転速度を60rpmに設定すればよい。これにより、鍋2内の米に分散力を付与することができる。また、正転時と反転時の回転速度は同じである必要はなく、異なっていてもよい。例えば、正転時の回転速度を60rpm、反転時の回転速度を10rpmと設定してもよい。このように設定した場合であっても、鍋2が反転する際に、米には慣性力が残っているため、米に分散作用が生じる。また、例えば、回転駆動部22の出力を7Hz、正転時及び反転時の回転速度を30rpmに設定してもよい。この場合、鍋2が小さい振動を繰り返し、米粒は前記振動で小刻みに動いて、米に分散作用が生じることになる。
複数の鍋支持部材23はそれぞれ、コイルベース1cの内周面に形成された軸受部に回転可能に軸支されている。複数の鍋支持部材23はそれぞれ、外周部が鍋2の側壁と当接可能な位置に配置されている。鍋支持部材23は、米と水が入れられて重量物となる鍋2が回転するときに、鍋2の回転抵抗を低減し、回転開始負荷を低減するものである。鍋支持部材23は、例えば、ゴムローラの軸受にベアリングを組み込むことにより構成されている。
コイルベース1cの外周面には、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置の一例である鍋底加熱ユニット5が取り付けられている。鍋底加熱ユニット5は、底内加熱コイル5aと底外加熱コイル5bとで構成されている。底内加熱コイル5aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル5bは、コイルベース1を介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。なお、鍋2を加熱する鍋加熱装置に代えて、鍋2内の被調理物にマイクロ波を照射して誘電加熱する方式でもよく、要は、鍋2内の被調理物を加熱することができる加熱装置であればよい。
コイルベース1cの底部の中央部分には開口が設けられている。当該開口部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部の一例である鍋温度センサ6が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に配置されている。鍋2の温度は鍋2内の被調理物の温度と略同じであるので、鍋温度センサ6が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の被調理物の温度を知ることができる。鍋温度センサ6の鍋当接面には、回転する鍋2との摩擦抵抗を抑えられるように、表面処理が施されている。なお、鍋温度検知部により鍋内の被調理物の温度を検知することに代え、鍋2の上方から直接、鍋2内の被調理物の温度を検知する赤外線センサを設けてもよく、要は、被調理物の温度を検知できる構成であればよい。赤外線センサは、蓋本体3に鍋2の上方から被調理物を臨むことができるように取り付け、被調理物から発生する赤外線を受光し、受光した赤外線量により被調理物の温度を検知するようにしている。
炊飯器本体1の内部には、炊飯制御部7が搭載されている。炊飯制御部7は、米を炊飯するための炊飯プログラム(炊飯シーケンスともいう)を複数記憶する記憶部を備えている。各炊飯プログラムは、米の種類などに応じた複数の炊飯メニューのいずれかにそれぞれ対応している。炊飯制御部7は、鍋温度センサ6及び後述する内蓋温度センサ10の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。より具体的には、炊飯制御部7は、蓋本体3に設けられた操作部(図示せず)を使用して行われた使用者の指示を受け取り、当該指示に対応する炊飯プログラムと鍋温度センサ6及び内蓋温度センサ10の検知温度とに基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯工程を実行する。鍋回転装置20の回転駆動部22は、昇温工程において駆動するように、炊飯制御部7に制御される。
炊飯器本体1の前壁上部(図1の左側上部)には、蓋本体3のフック3aに係合可能なフック1dが設けられている。フック1dと上枠1bの筒状部分1baとの間にはバネ1eが設けられている。フック1dは、バネ1eにより前方(図1の左側)に付勢されている。
蓋本体3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、蓋本体3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1cに両端部を回動自在に固定されている。ヒンジ軸3Aの周りには、ねじりコイルバネなどの回動バネ(図示せず)が装着されている。この回動バネは、ヒンジ軸3Aを回転中心として蓋本体3が炊飯器本体1から離れる方向に回転するように付勢している。従って、蓋本体3のフック3aと炊飯器本体1のフック1dとの係合が解除されたとき、蓋本体3が前記付勢力により自動的に回転して、炊飯器本体1の上部開口部が閉状態から開状態になる。
蓋本体3には、その中央部付近を蓋本体3の厚み方向に貫通するように貫通穴3cが設けられ、当該貫通穴3cに蒸気筒8が着脱可能に取り付けられている。蒸気筒8の天壁及び底壁には、鍋2内の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし孔8a,8bが設けられている。蓋本体2の内蓋4側の貫通穴3cの周囲には、ゴム等の弾性体で構成された環状の蒸気筒用パッキン9が取り付けられている。蒸気筒用パッキン9は、内蓋4が蓋本体3に取り付けられたときに内蓋4に密着するように設けられている。なお、蒸気筒用パッキン9は、内蓋4あるいは蒸気筒8に取り付けられていてもよい。内蓋4には、蒸気筒8の底壁と対向する位置に蒸気通過用孔4aが1ヶ所以上設けられている。
また、蓋本体3には、内蓋4の温度を検知する内蓋温度検知部の一例である内蓋温度センサ10が底壁3bを貫通するように取り付けられている。内蓋温度センサ10は、内蓋4が蓋本体3に取り付けられたときに、内蓋4に当接するように設けられている。
蓋本体3の底壁3bの内面(蓋本体内側)には、内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱コイル11が取り付けられている。内蓋加熱コイル11は、炊飯制御部7の制御により内蓋4を誘導加熱する。内蓋4は、誘導加熱が可能なステンレスなどの金属で構成されている。なお、蓋本体3の底壁3bの材質は、金属又は樹脂のどちらを用いてもよい。内蓋加熱コイル11が誘導加熱方式の加熱装置ではなくヒータ方式の加熱装置である場合は、蓋本体3の底壁3bの材質として金属を用いることが好ましい。
蓋本体3の底壁3bの外面(鍋2側)には、ゴムなどの弾性体で構成された環状のシール部の一例であるパッキン12が取り付けられている。パッキン12は、内蓋4が蓋本体3に取り付けられたときに内蓋4に密着するように設けられている。なお、パッキン12は内蓋4に取り付けられてもよい。
内蓋4の外周部の鍋2側の面には、ゴムなどの弾性体で構成された環状の内蓋用パッキン13が取り付けられている。内蓋用パッキン13は、蓋本体3が閉状態にあるときに鍋2のフランジ部に密着するように設けられている。なお、内蓋用パッキン13の材料としては、回転する鍋2との摩擦抵抗を抑えて、シール性を確保するために、フッ素系材料を用いることが好ましい。
次に、前記のように構成された本第1実施形態にかかる炊飯器の動作及び作用について説明する。
図2は、本第1実施形態にかかる炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの鍋内の温度推移と、鍋内の米に分散力を付与するタイミングを示す図である。図3Aは、鍋内に米と水を入れた初期状態を示す模式説明図である。図3Bは、本第1実施形態にかかる炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの、昇温工程における鍋内の米の第1の状態を示す模式説明図である。図3Cは、本第1実施形態にかかる炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの、昇温工程における鍋内の米の第2の状態を示す模式説明図である。図3Dは、本第1実施形態にかかる炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの、昇温工程の終期から沸騰維持工程の初期における鍋内の米の状態を示す模式説明図である。
まず、使用者により、図3Aに示すように鍋2内に米(多数の米粒R1)と水W1が入れられ、蓋本体3に設けられた操作部(図示せず)にて炊飯メニューが選択された後、炊飯開始が指示されると、炊飯制御部7の制御により予熱工程が開始される。
予熱工程は、以降の工程において、米の中心部まで十分に糊化できるように、糊化開始温度(約60℃)よりも低温の水に米をひたして、予め米に吸水させる工程である。この予熱工程において、炊飯制御部7は、鍋2内の水の温度を米の糊化が始まる温度近く(例えば55℃)まで昇温させた後、当該昇温後の温度を維持するように、鍋温度センサ6の検知温度に基づいて鍋底加熱ユニット5の鍋加熱動作を制御する。
予熱工程の開始から前記選択された炊飯メニューに応じて予め設定された時間経過すると、昇温工程に移行する。なお、本第1実施形態においては、後述するように、昇温工程において米の吸水を大幅に促進させることができるので、予熱工程の時間を短く(例えば、7分)することができる。
昇温工程は、鍋2を強火で一気に加熱して、鍋2内の水を沸騰状態(約100℃)まで温度上昇させる工程である。この昇温工程において、炊飯制御部7は、鍋2を急速に加熱して鍋2内の水を沸騰状態にするように鍋底加熱ユニット5を制御する。
また、昇温工程において、炊飯制御部7は、回転駆動部22を駆動して鍋2を可変速回転させる。具体的には、炊飯制御部7は、図3Bに示す第1の状態と図3Cに示す第2の状態とを交互に繰り返すように、鍋2を可変速回転させる。これにより、鍋2内の米に分散力が付与されて米粒集合体の形成が阻害され、米粒R1,R1同士が互いに付着せずにバラバラの状態となる。従って、鍋2内の水W1は、図4の点線矢印で示すように、互いに隣接する米粒R1,R1間を移動し、1つの米粒R1当たりの水W1の接触面積が大きくなる。すなわち、図3Dに示すように、鍋2の側壁近傍A1の米及び中央部B1の米は、どちらも水蒸気泡W1aに直接加熱されることになる。その結果、昇温工程終盤の米の温度は、鍋2の側壁近傍A1では約99.5℃となるのに対し、中央部B1では約99.3℃となる。すなわち、鍋2の側壁近傍A1と中央部B1との温度差は、約0.2℃程度となり、従来に比べて大幅に改善される。
なお、図5に示すように、複数の米粒R1が互いに付着して米粒群RG1が形成されているとき、水W1は、図5の点線矢印で示すように、米粒群RG1の外側を移動する。このため、1つの米粒R1当たりの水W1の接触面積が小さくなり、米R1の吸水が悪くなる。
昇温工程の実施により、鍋温度センサ6の検知温度が約100℃になると、沸騰維持工程に移行する。この昇温工程にかかる時間は、炊飯量(鍋2に入れられた被調理物の量)等により異なるが、例えば3分である。なお、昇温工程にかかる時間から、炊飯量を自動的に判定することができる。例えば、鍋温度センサ6の検知温度が80℃になったときから内蓋温度センサ10の検知温度が80℃になるまでの時間差を調べることにより、炊飯量を自動的に判定することができる。
沸騰維持工程は、鍋2内の水の沸騰状態を維持して、米の澱粉を糊化させ、糊化度を50%〜80%程度まで引き上げる工程である。この沸騰維持工程において、炊飯制御部7は、鍋2内の水の沸騰状態を維持するように鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11を制御する。より具体的には、炊飯制御部7は、鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11の駆動(ON)、駆動停止(OFF)を一定時間間隔で繰り返すデューティー制御を行い、鍋2を間欠加熱する。
沸騰維持工程においては、連続的に水を沸騰させるため、約100℃の蒸気が大量に発生する。これにより、鍋2内のほとんどの水がなくなると、鍋2の底面の温度が水の沸点以上に上昇する。鍋温度センサ6が鍋2の底面の温度が沸点以上(例えば130℃)に到達したことを検知すると、蒸らし工程に移行する。なお、沸騰維持工程にかかる時間は、炊飯量等により異なるが、例えば8分である。
蒸らし工程は、予熱を利用して余分な水分を蒸発させ、米の糊化度を100%近くまで引き上げる工程である。この蒸らし工程において、炊飯制御部7は、鍋2の温度が一定温度以下に下がる毎に、鍋2を加熱するように鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11を制御する。より具体的には、炊飯制御部7は、沸騰維持工程と同様に、鍋底加熱ユニット5及び内蓋加熱コイル11の駆動(ON)、駆動停止(OFF)を一定時間間隔で繰り返すデューティー制御を行い、鍋2を間欠加熱する。蒸らし工程の開始から、炊飯量に応じて予め設定された時間(例えば7分)経過すると、蒸らし工程を終了(すなわち、炊飯工程を終了)する。
次に、前記のようにして本第1実施形態にかかる炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの、鍋内の米の吸水率の変化について説明する。ここでは、昇温工程だけでなく、その他の工程においても、米に分散力を付与して、米の吸水率の変化を調べた。
図6は、本第1実施形態にかかる炊飯器を用いて炊飯工程を行ったときの、各工程終了時における鍋内の米の吸水率を示す図である。図6において、各工程の左側の棒グラフは、米に全く分散力を付与しないで炊飯工程を行ったとき(以下、静置時という)の鍋内の米の吸水率を示している。また、図6において、各工程の右側の棒グラフは、各工程において米に分散力を付与して炊飯工程を行ったとき(以下、分散力付与時という)の鍋内の米の吸水率を示している。
図6に示すように、予熱工程終了時においては、静置時と分散力付与時の両方共、米の吸水率は23%であった。この結果より、予熱工程においては、米に分散力を付与しても、米の吸水は促進されないことが分かる。これは、予熱工程では、水温が低く、かつ、米の糊化が始まっていないためと考えられる。
また、図6に示すように、昇温工程においては、静置時の米の吸水率は43%であるのに対し、分散力付与時の米の吸水率は48%であった。この結果より、昇温工程において米に分散力を付与することで、米の吸水率を大幅に促進させることができることが分かる。これは、米の糊化により米の組織が緩んで吸水しやすい状態になり、かつ、水温が糊化開始温度以上に高いためと考えられる。
また、図6に示すように、沸騰維持工程においては、静置時の米の吸水率は58%であるのに対し、分散力付与時の米の吸水率は60%であった。この結果より、沸騰維持工程においても、米に分散力を付与することで、米の吸水率を促進させる効果があることが分かる。これは、沸騰維持工程においては、おねば(米の澱粉が鍋内の水に溶出した粘性液体)が多く発生し米粒同士の付着力が強くなるものの、特に沸騰維持工程前半においては、未だ鍋2内には多くの水分が残っているため、米に分散力を付与することで、米の吸水が促進されたと考えられる。
また、図6に示すように、蒸らし工程においては、静置時の米の吸水率は61%であるのに対し、分散力付与時の米の吸水率は63%であった。蒸らし工程においては、自由水がない状態で米粒間が固着するため、分散力の付与の作用は受けないが、一方で、沸騰工程までに、分散力を付与した条件は、静置に対して多く吸水できているため、蒸らし工程での高温維持における米粒内の熱伝導がよくなり、より糊化が進展し、火通りのよい、ふっくらしたご飯にすることができる。
以上のように、本第1実施形態にかかる炊飯器によれば、昇温工程で米に分散力を付与して米粒集合体が形成されるのを阻害するようにしているので、米の吸水を一層促進させて、ご飯の食味を良好に保ちつつ、より一層の炊飯時間の短縮を図ることができる。
また、本第1実施形態にかかる炊飯器によれば、昇温工程において米の吸水を促進させるため、予熱工程では米の吸水は不足した状態でもよいので、予熱工程の時間を大幅に短縮することができる。その結果、例えば、従来40〜60分要していた炊飯時間を、本第1実施形態では20分〜30分まで短縮することが可能となる。
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、「分散力」は、図3B及び図3Cに示すように、米粒同士が互いに付着しないようにする力であるとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、「分散力」は、図7Aに示すように米粒集合体RM1が形成されたときに、図7Bに示すように当該米粒集合体RM1を複数の米粒群RG1に分割するような力であってもよい。
すなわち、「分散力」は、仮に米粒集合体RM1が形成されたとしても、当該米粒集合体RG1を複数に分割することができる力であってもよい。このような場合でも、図7Cに示すように、互いに隣接する米粒群RG1間を水蒸気泡W1aが通ることができるので、米の吸水を従来よりも促進させることができる。
また、「分散力」は、米粒群RG1を複数に分割するような力、例えば、6つの米粒からなる米粒群を2つの米粒群(3つの米粒からなる米粒群が2つ)に分割する、あるいは1つ1つの米粒に分割する力であってもよい。また、米粒集合体RM1は、昇温工程の進行に従って米の澱粉質が溶出して粘着力が増し、これにより、米粒R1,R1同士が互いに付着する数が増大していくことで形成される。このため、「分散力」は、所定の大きさまで拡大した米粒群RG1が互いに付着しないようにする(それ以上拡大しないように維持する)力であってもよい。このような場合でも、図7Cに示すように、互いに隣接する米粒群RG1間を水蒸気泡W1aが通ることができるので、米の吸水を従来よりも促進させることができる。
また、前記では、図2に示すように、昇温工程の間中、炊飯制御部7の制御により回転駆動部22を駆動して鍋2内の米に分散力を付与するようにしたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、組織が柔らかい米(例えばコシヒカリ)の場合、分散力を付与し過ぎると、米粒が崩れて舌触りが悪くなる、すなわちご飯の食味が悪くなるおそれがある。このため、例えば、図8に示すように、鍋2内の温度が、完全に米の糊化が開始されている温度、例えば70℃以上のときに、米に分散力を付与するようにしてもよい。これにより、ご飯の食味を一層良好に保ちつつ、炊飯時間の短縮を図ることができる。
また、鍋2内の水が沸騰状態にあるときには、噴きこぼれが発生しやすい。このとき、米に分散力を付与していると、当該分散力により水蒸気泡が一層発生して、噴きこぼれが促進され得る。このため、図9に示すように、鍋2内の温度が沸騰状態になる前(例えば95℃のとき)に、米への分散力の付与を停止するようにしてもよい。これにより、噴きこぼれを抑えて米の吸水と熱伝達を促進し、ご飯の食味を良好に保ちつつ、炊飯時間の短縮を図ることができる。
また、例えば、組織が柔らかい米(例えばコシヒカリ)の場合、80℃〜90℃の温度のとき、米の吸水効率が高い。このため、図10に示すように、鍋2内の温度が80℃(第1温度)〜90℃(第2温度)のときのみ、米に分散力を付与するようにしてもよい。
これにより、米への分散力付与による米のダメージを最小限に抑えつつ、米の吸水を効率良く促進させることができる。従って、ご飯の食味を良好に保ちつつ、炊飯時間の短縮を図ることができる。なお、吸水効率が良い温度帯は、米の種類によって異なる。このため、米への分散力付与を開始する温度(第1温度)及び停止する温度(第2温度)は、炊飯する米に応じて適宜設定すればよい。
また、前記では、米への分散力付与を連続的に行うようにしたが、図11に示すように、米への分散力付与を間欠的に行うようにしてもよい。これにより、米への分散力付与と、米粒の崩れ及び成分溶出防止とを、より高いレベルで両立することができるので、組織が硬めの米(例えば日本晴等)であっても、ご飯の食味を一層良好に保ちつつ、炊飯時間の短縮を図ることができる。
また、鍋2内の検知温度に応じて、米に付与する分散力の大きさを変化させるようにしてもよい。例えば、図12に示すように、米粒の崩れあるいは成分溶出が少ない鍋2内の温度が70℃以上80℃未満のときは、米に付与する分散力を大きくして米の吸水及び熱伝達を促進し、80℃以上のとき、米に付与する分散力を小さくして米粒の崩れを防止するようにしてもよい。これにより、米の種類による組織の硬さに関係なく、米の吸水と熱伝達を促進させることができ、ご飯の食味を一層良好に保ちつつ、炊飯時間の短縮を図ることができる。
《第2実施形態》
図13は、本発明の第2実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第2実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、駆動部の一例として、鍋回転装置20に代えて鍋回転装置30を備えている点である。鍋回転装置30は、鍋2の側壁からではなく底部から鍋2を可変速回転させるように構成されている点で鍋回転装置20と異なる。それ以外の点については同様であるので、以下には主に相違点について述べる。
図13において、鍋回転装置30は、鍋回転台31と、駆動力伝達ベルト32と、DCモータなどの回転駆動部33とを有している。また、鍋回転装置30は、前述した複数の鍋支持部材23も有している。
鍋回転台31は、コイルベース1cの底部の中央開口部分に回転可能に支持されている。鍋回転台31上には、鍋温度センサ6が鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に載置されている。鍋回転台31の鍋当接部31aは、ゴムシートなどの弾性体で構成され、鍋2に回転駆動力を伝達可能に構成されている。鍋回転台31の回転軸は、駆動力伝達ベルト32を介して、回転駆動部33の駆動軸と接続されている。駆動力伝達ベルト32は、エラストマー樹脂などの弾性体で構成されている。
回転駆動部33は、炊飯制御部7などが搭載された回路基板に取り付けられている。回転駆動部33は、駆動力伝達ベルト32を介して、鍋回転台31を間欠回転若しくは正逆回転などの可変速回転させることができるように構成されている。回転駆動部33の動作は、炊飯制御部7より制御される。回転駆動部33の駆動力が駆動力伝達ベルト32を介して鍋回転台31に伝達され、鍋回転台31が可変速回転することにより、鍋2が可変速回転し、鍋2内の米に分散力が付与される。
本第2実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋温度センサ6を鍋回転台31上に載置し、鍋2と鍋温度センサ6とが一体的に回転するようにしているので、鍋温度センサ6と鍋2とが摩擦力によりダメージを受けることを抑えることができる。
《第3実施形態》
図14は、本発明の第3実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第3実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、駆動部の一例として、鍋回転装置20に代えて鍋揺動装置40を備え、内蓋用パッキン13Aが蛇腹状など伸縮自在に形成されている点である。鍋揺動装置40は、鍋2を可変速回転させるのではなく、鍋2を揺動させるように構成されている点で鍋回転装置20と異なる。それ以外の点については同様であるので、以下には主に相違点について述べる。
図14において、鍋揺動装置40は、鍋揺動台41と、駆動力伝達ベルト42と、DCモータなどの回転駆動部43とを有している。
鍋揺動台41は、コイルベース1cの底部の中央開口部分に、炊飯器の鉛直方向Yに対して所定の角度θ1傾斜した偏心軸41aを回転軸として偏心回転可能に支持されている。また、鍋揺動台41の鍋当接部41bは、水平方向Xに対して所定の角度θ1傾斜している。
鍋揺動台41上には、鍋温度センサ6が鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に載置されている。鍋温度センサ6は、図示していないが、バネなどの弾性体により支持され、鍋2の底部の傾きの変化に追従して当接状態を維持することができるように構成されている。鍋揺動台41の回転軸は、駆動力伝達ベルト42を介して、回転駆動部43の駆動軸と接続されている。駆動力伝達ベルト42は、エラストマー樹脂などの弾性体で構成されている。
回転駆動部43は、炊飯制御部7などが搭載された回路基板に取り付けられている。回転駆動部43は、駆動力伝達ベルト42を介して、鍋揺動台41を偏心回転させる駆動力を伝達可能に構成されている。回転駆動部43の動作は、炊飯制御部7より制御される。回転駆動部43の駆動力が駆動力伝達ベルト42を介して鍋揺動台41に伝達され、鍋揺動台41が偏心回転することにより、鍋2は、互いに対向する側壁が交互に上下動するように揺動される。これにより、鍋2内の米に分散力が付与される。なお、内蓋用パッキン13Aは、鍋2の揺動に追従して伸縮するように構成されている。
本第3実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋揺動台41を偏心回転させることにより、鍋2を揺動させて鍋2内の米に分散力を付与するようにしているので、鍋2を回転させる必要がなく、内蓋用パッキン13Aと鍋2との間に摩擦力が生じない。このため、内蓋用パッキン13Aに与えるダメージを抑えることができる。
また、本第3実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋温度センサ6を鍋揺動台41上に載置し、鍋2と鍋温度センサ6とが一体的に移動するようにしているので、鍋温度センサ6と鍋2とが摩擦によりダメージを受けることを抑えることができる。
また、本第3実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋揺動台41を偏心回転させることによって鍋2を一定の周期で揺動させることで、スロッシング現象を発生させることができる。これにより、米と水とを共振させ、鍋揺動台41の回転数を高くすることなく、米への分散力を強くすることができる。すなわち、省エネルギー化を図ることができる。また、鍋揺動台41の回転数を高くする必要がないので、鍋2を偏心回転させる機構に必要なスペースを小さくすることが可能となり、炊飯器の大型化を抑えることができる。
また、水と水より密度の高い固体である米とが鍋2内に入れられた状態で揺動などの振動を鍋2に連続的に与えると、いわゆる液状化現象が生じる。すなわち、水が蒸発して鍋2内の水量が減った場合でも、水が浮力により上昇して、米と水とが均一に接触し易くなる。また、このとき水は高温であるので、加熱効率が高まる。従って、本第3実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋2を連続的に揺動させることで、米の吸水と米の糊化とを一層促進させることができる。
なお、鍋揺動台41の回転数は、50rpm〜80rpmに設定することが好ましい。鍋揺動台41の回転数が50rpm未満である場合、鍋2内の米の動きが小さすぎて、米に分散力を十分に付与することができないおそれがある。また、鍋揺動台41の回転数が80rpmより大きい場合、鍋2と米と水とが共振せずに、米に分散力が十分に付与することができないおそれがある。
また、角度θ1は、大きすぎると炊飯器が大型化することになるため、例えば、2〜4度程度に設定することが好ましい。また、鍋揺動台41の鍋当接部41aは、鍋2の底部との摩擦力を小さくすると共に耐熱性を向上させるため、フッ素系のシートなどで構成されることが好ましい。
《第4実施形態》
図15は、本発明の第4実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第4実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、駆動部の一例として、鍋回転装置20に代えて米・水撹拌装置50を備えている点である。米・水撹拌装置50は、鍋2を可変速回転させるのではなく、鍋2内の米と水を直接撹拌させるように構成されている点で鍋回転装置20と異なる。それ以外の点については同様であるので、以下には主に相違点について述べる。
図15において、米・水撹拌装置50は、米・水撹拌子53と、回転シャフト52と、DCモータなどの回転駆動部51とを有している。
米・水撹拌子53は、フッ素樹脂などの食品衛生に害の無い材料で構成され、鍋2内の米と水を撹拌することができる形状及び大きさに形成されている。米・水撹拌子53の形状は、米と水を撹拌するときに米にダメージを与えない形状であればよく、例えば、円盤状であってもよい。米・水撹拌子53は、例えばステンレス等の金属で構成された回転シャフト52の先端部に固定されている。
回転シャフト52の他端部は、内蓋4及び蓋本体3の底壁3bを貫通して、蓋本体3内に回転可能に軸支されている。また、回転シャフト52の他端部には、駆動ギヤ52aが設けられている。駆動ギヤ52aは、蓋本体3内に設けられた回転駆動部51の出力ギヤ51aと噛み合っている。
回転駆動部51の動作は、炊飯制御部7より制御される。回転駆動部51の駆動力が出力ギヤ51a及び駆動ギヤ52aに伝達され、回転シャフト52が軸回りに可変速回転することにより、鍋2内の米と水が撹拌される。これにより、鍋2内の米に分散力が付与される。
本第4実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋2内の米と水を直接撹拌することにより、鍋2内の米に分散力を付与するようにしているので、鍋2を回転させる必要がない。従って、内蓋用パッキン13と鍋2との間、及び鍋温度センサ6と鍋2との間に摩擦力が生じないので、内蓋用パッキン13及び鍋温度センサ6に与えるダメージを無くすことができる。
《第5実施形態》
図16は、本発明の第5実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第5実施形態の炊飯器が前記第4実施形態の炊飯器と異なる点は、駆動部の一例として、米・水撹拌装置50に代えて米・水撹拌装置60を備え、鍋温度センサ6Aをコイルベース1cの底部の中央部分から側方にずらして設けると共に、鍋2Aの底部の中央部分に内側に突出する凸部2Aaを設けている点である。米・水撹拌装置60は、鍋2の上方から撹拌動力を伝達するのではなく、鍋2の下方から撹拌動力を伝達するように構成されている点で米・水撹拌装置50と異なる。それ以外の点については同様であるので、以下には主に相違点について述べる。
図16において、米・水撹拌装置60は、米・水撹拌子61と、撹拌子回転手段62と、駆動力伝達ベルト63と、DCモータなどの回転駆動部64とを有している。
米・水撹拌子61は、鍋2内の米と水を撹拌することができる形状及び大きさに形成され、鍋2の凸部2Aaの周囲に配置できるように中央部分に開口部61aを有している。米・水撹拌子61の形状は、米と水を撹拌するときに米にダメージを与えない形状であればよい。米・水撹拌子61の開口部61aの周辺部61bは磁石で構成され、米・水撹拌子61aのその他の部分は、フッ素樹脂などの食品衛生に害の無い材料で構成されている。
撹拌回転手段62は、米・水撹拌子61の周辺部61bとは逆磁性を有する磁石62aと、先端部に磁石62aが取り付けられ、他端部を炊飯器本体1に回転可能に軸支された回転シャフト62bとを有している。
磁石62aは、鍋2の凸部2Aaの内側に形成される凹部内に配置され、鍋2の凸部2Aaの壁を介して、鍋2の凸部2Aaの周囲に配置された米・水撹拌子61の周辺部61bと磁気結合可能に構成されている。回転シャフト62bは、駆動力伝達ベルト63を介して回転駆動部64の駆動軸と接続されている。駆動力伝達ベルト63は、エラストマー樹脂などの弾性体で構成されている。
回転駆動部64は、炊飯制御部7などが搭載された回路基板に取り付けられている。回転駆動部64は、駆動力伝達ベルト63を介して、回転シャフト62bを回転させる駆動力を伝達可能に構成されている。回転駆動部64の動作は、炊飯制御部7より制御される。回転駆動部64の駆動力が駆動力伝達ベルト63を介して回転シャフト62bに伝達され、磁石62aが可変速回転することにより、磁石62aと磁気結合する米・水撹拌子61が可変速回転する。これにより、鍋2内の米に分散力が付与される。
本第5実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋2内の米と水を直接撹拌することにより、鍋2内の米に分散力を付与するようにしているので、鍋2を回転させる必要がない。従って、内蓋用パッキン13と鍋2との間、及び鍋温度センサ6と鍋2との間に摩擦力が生じないので、内蓋用パッキン13及び鍋温度センサ6に与えるダメージを無くすことができる。
《第6実施形態》
図17は、本発明の第6実施形態にかかる炊飯器の断面図である。本第6実施形態の炊飯器が前記第1実施形態の炊飯器と異なる点は、駆動部の一例として、鍋回転装置20に代えて鍋振動装置70を備えている点である。鍋振動装置70は、鍋2を可変速回転させるのではなく、鍋2に振動を与えるように構成されている点で鍋回転装置20と異なる。それ以外の点については同様であるので、以下には主に相違点について述べる。
図17において、鍋振動装置70は、鍋収納部1aの筒状部分1baを貫通するように設けられたソレノイド71と、当該ソレノイド71を貫通し、鍋2の側壁と当接可能に設けられた金属製のシャフト72とを有している。シャフト72の鍋当接部は、エラストマー樹脂などの弾性体で構成されている。これにより、鍋2の振動時に発生する音が低減されている。
鍋振動装置70の動作は、炊飯制御部7より制御される。炊飯制御部7の制御により、ソレノイド71に電流が加えられることで、シャフト72が鍋2の側壁に向けて進退移動し、鍋2が振動する。これにより、鍋2内の米に分散力が付与される。
本第6実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋2を振動させて鍋2内の米に分散力を付与するようにしているので、鍋2を回転させる必要がない。従って、内蓋用パッキン13と鍋2との間、及び鍋温度センサ6と鍋2との間に摩擦力が生じないので、内蓋用パッキン13及び鍋温度センサ6に与えるダメージを無くすことができる。
また、本第6実施形態にかかる炊飯器によれば、鍋2を連続的に振動させることにより、いわゆる液状化現象を生じさせることができる。これにより、米の吸水と米の糊化とを一層促進させることができる。
なお、本第6実施形態にかかる炊飯器には、図18に示すように、炊飯器本体1の下面にバネなどの複数の弾性体73が取り付けられることが好ましい。これにより、鍋2の振動時に発生する音を更に低減することができる。
また、前記では、鍋振動装置70を、鍋2を介して互いに対向する位置に2つ設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図19に示すように、鍋振動装置70を一箇所のみに設けるようにしてもよい。なお、この場合、鍋振動装置70と鍋2を介して対向する位置に、エラストマー樹脂などの弾性体74を配置することが好ましい。これにより、鍋2の振動時に発生する音を更に低減することができる。
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。