以下、添付図面を参照しながら、本発明における湯沸かし器の好ましい実施例を説明する。
図1は湯沸かし器の全体縦断面図を示すもので、図中における本体1は、プラスチック製の外装ケース2で外郭が形成され、内部には有底筒状をなすステンレス製の容器3を備えている。液体である水を収容する容器3の外底面には、円環状のシーズヒータなどからなる加熱装置4がブレージング(ろう付け)などで設けてあり、この加熱装置4の加熱量は、交流100Vの入力電圧に対し900〜1400Wで、交流200V系の入力電圧よりも大きな電流を流すことができ、短時間で湯沸かしが可能な構成となっている。
本体1の上部開口には、蓋体5が着脱自在に設けられる一方で、本体1の前方側面上部には、嘴状に形成した液体の注ぎ口6が設けられる。この注ぎ口6とは反対側の本体1の後方側面には、外装ケース2と一体化したハンドル7が設けられる。ハンドル7の内部には、加熱装置4のオン/オフ制御を行うための制御装置8が内蔵される。図示しないが、制御装置8は制御処理部としてのマイコンや、そのマイコンからの制御信号を受けて加熱装置4のオン/オフを切り替えるリレーや、マイコンやリレーを含む各種電子部品を実装する基板などで構成される。
本実施例におけるハンドル7は、垂直方向に延びて、その上端部と下端部が本体1の後方側面につながっており、手で握って本体1を持ち運びやすいようななだらかな形状に形成される。ハンドルの下方底部には、加熱装置4や制御装置8に電力を供給する2本の電極ピン9がいずれも下向きに突出して設けられる。また、電極ピン9は、本体1の後方底面に形成した凹部10に設けられており、この凹部10が電極ピン9を保護するようになっている。ここでの電極ピン9は下端に至るまで垂直に突出させても、さもなければ垂直から途中で傾斜させてもよい。ライブとニュートラルの電極ピンの他に、アースの電極ピン(図示せず)を付加し、電極ピンを3本としても構わない。
11は、本体1と分離して設けられ、必要に応じて上面の載置面12に本体1を着脱自在に載置する給電台である。給電台11は電源コード(図示せず)を巻取るための巻取り手段として、その内部にコードリール(図示せず)を内蔵してもよい。こうすれば、コードリールにより電源コードの収納が容易な構造とし、電気湯沸かし器としてより実用性が向上する。給電台11の上面後方には、給電台11に本体1を載置したときに、電極ピン9に対向する位置に2本の対向電極13が設けられ、これらの対向電極13は、図示しない接点バネなどの弾性部材で常時上方向へ付勢される。また対向電極13は、給電台11の内部で電源コードの基端と電気的に接続する。電極ピン9の先端には、厚さが0.5mm以上の銀材料からなる接点が接合すると共に、対向電極13にも同様に、厚さが0.5mm以上の銀材料からなる対向接点が接合し、高電流での電気的接触性を良好にしており、本体1を給電台11に載置したときに、本体1の自重で電極ピン9を対向電極13に弾性的に当接させ、給電台11の電源コードから、何れも導電性の電極ピン9と対向電極13を介して本体1の各部へ給電を行なうようになっている。
前述したように、電極ピン9は凹部10に設けられているが、本体1の後方側面から視認できるように配置される。これにより、ハンドル7を持って本体1を持ち上げたときに、先端部の接点を含めて電極ピン9の状態を容易に視認できるようになる。
給電台11の上面は、対向電極13に電極ピン9が対向して、本体1が自然に載置面12に載置されるような形状を有している。具体的には、給電台11の上面外周囲に、上方へ隆起する立上壁17が形成される。また、立上壁17から給電台11の上面内方へ向けて傾斜面18が形成される。この傾斜面18は、本体1の外底面に沿った形状にするのが好ましい。こうすることで、給電台11に本体1を載せようとするときに本体1の底部外周が立上壁17にガイドされ、給電台11に対する本体1の位置決めがなされて、水平方向における給電台11と本体1との位置ずれが防止される。また、傾斜面18によって、本体1を給電台11に載せたときに、その傾斜面18に沿って本体1の外底面が給電台11の中央に案内され、給電台11と本体1との位置合わせの精度が向上し、位置ずれの防止効果がより有効なものとなる。
また、本体1の凹部10に対応するように、給電台11の上面後方には対向電極13を有する電極台19が、上方に突起させた状態で設けられる。この電極台19の周囲は、立上壁17を含む他の給電台11の上面部位よりも部分的に高く配置した立上壁20が形成され、給電台11の対向電極13周囲近傍をガードしている。
電極ピン9とは反対方向にあって、ハンドル7の上面部には、シート状の押動可能な加熱開始スイッチ21が操作部として設けられる。加熱開始スイッチ21の表面を、ハンドル7の上面と面一なシート状に形成するのは、水などがかかった場合に制御装置8を内蔵するハンドル7内への侵入を防止するためである。また、加熱開始スイッチ21の近傍に位置して、同じくハンドル7の上面部には、加熱装置4が容器3の加熱を開始すると表示を行う例えばLEDランプなどの表示部22が設けられる。ここでの表示部22は加熱表示LEDとして、制御装置8からの制御信号を受けて、加熱装置4による容器3の加熱中に点灯または点滅し、加熱装置4が容器3を加熱していないときに消灯するものであるが、その表示形態については特に限定しない。
25は、ハンドル8の上部における容器3への臨み箇所に設けられた第1検知体としての沸騰検知センサである。この沸騰検知センサ25は、本体1の上部開口に開口した横向き開口部26のやや奥側に装着され、バイメタルなどの機械的機構ではなく、温度に応じた電気的信号を出力する例えばサーミスタにより形成される。また、沸騰検知センサ25は制御装置8に接続され、その制御装置8が沸騰を検知するように構成されている。27は、沸騰検知センサ25を開口部26に水密に取り付けるためのセンサパッキンである。
容器3の底部には、容器3内の液体温度を検知する第2検知体としての容量判定センサ28が設けられる。容量判定センサ28は、容器3内の液体の容量を検知し得る信号として、その液体温度に応じた信号を制御装置8に出力するもので、制御装置8は、沸騰検知センサ25からの検知信号と、容量判定センサ28からの検知信号をそれぞれ取り込んで、容器3への加熱量すなわち加熱装置4への入力(通断電)を制御する構成となっている。
蓋体5は、図2にも示してあるように、何れも樹脂部材からなる有底状の外蓋31と、この外蓋31の上面開口部を覆うカバー32の他に、外蓋31の底面に装着され、容器3の開口上面に臨む例えばアルミニウムなどの金属製の内蓋33とを、主要な構成部品としている。蓋体5の前方には、注ぎ口5に沿って出湯通路34が形成され、この出湯通路34の一端は、本体1および蓋体5の上端に位置して開口する一方で、出湯通路34の他端は、内蓋33に形成した複数の孔35に連通して開口している。また、内蓋33には別な孔36が形成されると共に、カバー32の後方には蒸気排出孔37が形成され、これらの孔36と蒸気排出孔37とを連通する蒸気排気路38が蓋体5に内蔵している。蒸気排気路38の途中には、閉蓋時に蒸気の一部を沸騰検知センサ25に当てるようにするために、蒸気通路39が分岐して設けられる。また蒸気排気路38には、蒸気通路39と略反対の向きに別な連通路40が分岐して設けられる。連通路40の先端開口は、前記孔36に臨んで位置している。
41は、蒸気排気路38内に設けられた転倒流出防止弁であり、これは本体1の転倒時に容器3内の湯の圧力に押されて、蒸気排気路38の途中に設けた貫通孔42を閉塞し、容器3内の湯が蒸気排出孔37から流出するのを防止するためのものである。なお、図1における矢印Sは、容器3内から孔36を通過する蒸気の流れを示したものである。
蓋体5の内部には、出湯通路34の他端開口と連通路40の先端開口を開放または閉塞する開閉弁44が、上下動可能に設けられている。開閉弁44の動作機構について、図3や図4をも参照しながらさらに説明すると、開閉弁44は外蓋31の内外を貫通する棒状の支持部46と、支持部46の下端に形成され、その周囲に弾性部材からなるパッキン47を装着した弁部48と、弁部48の反対側に位置する支持部38の上端に形成され、その上面全周に複数の歯49を設けた円板状の受部50とにより構成される。また、開閉弁44の上部には、カバー32の外面に露出する上下動可能な出湯ボタン51と、出湯ボタン51からの外力を開閉弁44に伝達する回転部材52がそれぞれ設けられる。
出湯操作体に相当する出湯ボタン51は、露出した上面を有し、カバー32の上面に形成した凹部53に沿う外形を有する平板状の操作部54と、操作部54より垂下する円筒状の軸部55とからなり、回転部材52を構成する回転表示板57の一部を直接目視できるように、操作部54には貫通した孔からなる表示用の窓58が形成される。ここでの凹部53は、出湯ボタン51ひいては窓58を有する操作部54が、軸部55を中心として回転部材52と共に回転するのを規制するような形状を有している。なお、窓58の形状は、図示したような円形に限定されない。また、異物の侵入を防止するために、開口した窓58を透明部材で塞いでもよい。
回転部材52は、前記受部50の歯49と歯合するように、その下面全周に複数の歯61を形成した円筒カップ状の回転部62と、回転部材52の回転を妨げないように前記軸部55に係合し、回転部62の上面中心部より出湯ボタン51の操作部54近傍にまで形状を延ばした軸受部63と、軸受部63の上部に取り付けられ、前記窓58に臨んで上面に出湯状態の有無を表示する表示部64を備えた回転表示板57とにより構成される。前記回転部62の側面外周には一乃至複数の凸部65が形成される一方で、凸部65に対向する凹部53の側壁部には、その全周にわたって凸部65を摺動可能に係合する溝状のガイド部66が形成される。
また、凹部53の内部には、出湯通路34および連通路40を塞ぐ方向に開閉弁44を付勢するスプリングなどの弾性体67が設けられる。この弾性体67の付勢力は、開閉弁44のみならず、開閉弁44に歯合する回転部材52と、回転部材52に係合する出湯ボタン51を押し上げる力として常時作用する。
図3に示すように、回転表示板57に形成された表示部64は、開閉弁44が出湯通路34を開放する出湯状態にあるときに、窓58に対向する第1の指示部64Aと、閉弁44が出湯通路34を閉塞する非出湯状態にあるときに、窓58に対向する第2の指示部64Bとにより構成される。ここでは、第1の指示部64Aとして「出」なる文字を用い、第2の指示部64Bとして「止」なる文字を用いて、直観的に出湯状態であるか否かを確認できるようにしてあるが、指示部64A,64Bが各々区別できるのであれば、異なる文字,記号,色彩などの表示形態を用いてもよい。本実施例では、出湯ボタン51の押動操作に伴い、回転表示板57が矢印Rの方向に一定角度で回転する毎に、指示部64A,64Bの何れか一方が窓58に対向するようになっている。
図5は、本実施例における湯沸かし器の電気的構成を示したものである。同図において、マイコンからなる制御装置8は、制御処理部として加熱装置4の制御を主に行なう加熱制御手段71と、加熱制御手段71の入力ポートに接続するA/D変換器72と、加熱制御手段71の出力ポートに接続するD/A変換器73と、加熱制御手段71が扱う各種データを一時的に記憶保存する例えばRAM(Random Access Memory)などの記憶装置としてのバッファ74とにより概ね構成される。
A/D変換器72は、加熱開始スイッチ21からのアナログ操作信号や、沸騰検知センサ25からのアナログ検知信号や、容量判定センサ28からのアナログ検知信号を、何れも加熱制御手段71が処理できるディジタル値(AD値)に変換するものである。またD/A変換器73は、加熱制御手段71から出力されるディジタル値を、加熱装置4への制御信号や、表示部22への表示信号や、報知手段たるブザー75への鳴動信号にそれぞれアナログ変換するものである。
加熱制御手段71は、計時手段としてのタイマ76を内蔵すると共に、ソフトウェア上の機能的構成として容器判定手段77を備えており、容量判定センサ28からの検知信号と、タイマ76によりカウントされる時間のデータをそれぞれ取り込んで、容器判定手段77が容器3内の液体の容量を判定するようになっている。また、ここでの加熱制御手段71は、加熱開始スイッチ21からの操作信号を受けて起動し、前記容量判定手段77による判定結果に応じて、容量判定センサ28によって検知される容器3内の液体温度が所定の例えば80℃に達したら、液体の容量が多い程、容器3への加熱量が少なくなるような制御信号を、D/A変換器73から加熱装置4に出力する機能を有する。その他の加熱制御手段71に関する機能的な構成は、次の動作説明でより詳しく説明する。
上記構成を有する湯沸かし器について、図6〜図8のグラフを参照しながら、特に加熱制御手段71が行なう動作を説明する。
先ず、容量判定手段77に関する動作を説明すると、加熱開始スイッチ21を押すことにより、その操作信号がA/D変換器72を経て加熱制御手段71に出力されると、容量判定手段77が起動する。容量判定手段77は、容量判定センサ28からの検知信号を取り込み、容器3内の液体温度が第1所定温度である例えば60℃に達したならば、そこからタイマ76のカウントを開始させて、当該液体温度が第2所定温度である例えば80℃に上昇するまでの時間を計測する。
具体的には、図6のグラフに示すように、容器3内に定格容量の液体を収容した場合(図中「b」を参照)に、液体の温度が60℃〜80℃に上昇するのに想定される基準時間Toを予め容量判定手段77に記憶しておく。そして、この基準時間Toよりも短い時間T1に液体の温度が60℃〜80℃に上昇すれば、容器3内に入れた液体は定格容量よりも少ないと判定し(図中「a」を参照)、逆に基準時間Toよりも長い時間T2に液体の温度が60℃〜80℃に上昇すれば、容器3内に入れた液体は定格容量よりも多いと判定する。この判定は、定格容量を基準にして少ない容量であっても、また多い容量であっても、複数の容量に対して予め設定することができる。こうして、容量判定センサ28からの検知信号を利用して、容器3に投入した液体の容量を把握することで、加熱制御手段71は後述する液体の容量に応じた必要な制御を行なうことが可能となる。
容器判定手段77が容器3内の液体容量を判定すると、加熱制御手段71はその判定結果に基づいて、それ以降の加熱装置4への加熱制御を決定する。例えば図6の「c」に対応して、容器3内に入れた液体が定格容量よりも多いと判定した場合、図7に示すように、容量判定センサ28で検知される液体の温度が時間txの時点で80℃に達すると、加熱装置(ヒータ)4に対する入力制御を開始して、容器3内の液体に対する加熱量を少なくする。つまり、容量判定が終了する時間tx以前は、加熱装置4に対する制御を行なわずに、100%の通電率で加熱装置4に電力を供給する一方で、容量判定が終了する時間txになると、液体の容量が多いと判定されるにしたがって加熱装置4の通電率が低下するように、加熱装置4に対する制御を変更する。このように、定格容量よりも容器3内の液体容量が多いと判定した場合に、時間tx以降の加熱装置4への入力を少なくすることで、容器3内の液体が沸騰した時に、蒸気排出孔37から湯の飛び散りや吹きこぼれを確実に防ぐことができる。
なお、図7に示すような加熱量を少なくする低加熱制御は、容器3内に入れた液体が定格容量よりも多いと判定した場合にのみ行われる。図6の「a」や「b」のように、容器3内に入れた液体が定格容量以下である場合は、最初の100%の通電率で加熱装置4に電力を供給すると、定格容量を基準とした規定時間内で沸騰し、その時点で加熱装置4への通電を停止するので、その後の容器3内の液体温度は、100℃に安定した後徐々に低下するようになる。
また、ここでの加熱制御手段71は、容器3内の液体容量が定格容量よりもどの程度多いのかを、容器判定手段77からの判定結果として取り込み、それに応じて時間tx以降の変更後における加熱装置4への入力制御を可変設定してもよい。こうすれば、蒸気排出孔37からの湯の飛び散りや吹きこぼれを防止しつつ、どのような液体容量であっても最短の時間で容器3内を沸騰に導くことが可能になる。
次に、図8に示す別なグラフを参照しながら、沸騰検知センサ25からの検知信号を受けて、加熱制御手段71が加熱装置4に対する制御をどのようにして行なうのかを説明する。同図において、符号Fは沸騰検知センサ25で検知される温度に対応したA/D変換器72からのAD値で、ここでは横軸を時間にして、湯沸かし開始時(1)以降の推移を線で示している。また、その下の符号Gは加熱装置(ヒータ)4の通断電状態を示している。
容器3内に冷水を投入した状態で、時間(1)に冷水加熱開始スイッチ21を押して湯沸かしを開始すると、加熱制御手段71は沸騰検知センサ25の検知温度に対応したAD値を、例えば所定の0.1秒毎に取り込んでバッファ74に記録する。バッファ74は所定の例えば16個のAD値を記憶できるようになっており、湯沸かし開始時に加熱装置4をオフにしたまま1.5秒待ち、バッファ74にAD値がたまるのを待つ。バッファ74に15個のAD値が記憶されると、加熱装置4をオンにして通電を開始し、容器3内の冷水を加熱する。加熱制御手段71はその後も0.1秒毎にAD値を取り込み、最も古いAD値を更新してバッファ74に記録することで、現時点から1.5秒前までのAD値をバッファ74に記憶させる。バッファ74がどの程度の時間前までAD値を記憶できるのかは、AD値の取り込み間隔と、バッファ74の記憶容量に依存する(16個=10×1.5+1)。
さらにここでの加熱制御手段71は、バッファ74に所定個のAD値がたまったら、現在と1.5秒前における沸騰検知センサ25の各検知温度を比較し、その比較結果から、検知温度が上昇しているのか、安定しているのか、下降しているのかを判断する。検知温度が上昇または安定している場合、この後で加熱装置4をオンしたときに、当該加熱装置4をオフにする第1判定温度(現在と1.5秒前における検知温度の差)を、例えば4℃以上とする。検知温度が下降している場合、この後で加熱装置4をオンしたときに、当該加熱装置4をオフにする第2判定温度を、前記第1判定温度よりも低い例えば1℃以上とする。湯沸かし開始直後の1.5秒間は、AD値の変化がなく検知温度が安定しているので、加熱制御手段71は、その後に1.5秒間で検知温度が第1判定温度すなわち4℃以上上昇したら、加熱装置4をオフにさせることをこのとき記憶する。
加熱制御手段71は、A/D変換器72から現在のAD値を取込む毎に、バッファ74から1.5秒前のAD値を読み出して双方の値を比較する。すなわちこれは、現在と1.5秒前における沸騰検知センサ25の各検知温度を比較することを意味する。比較の結果、1.5秒前の検知温度に対して現在の検知温度が4℃以上上昇していれば、加熱装置4を所定の例えば2秒間オフにし、そこで再び現在と1.5秒前における双方の検知温度を比較する。このときにも、1.5秒前の検知温度に対して現在の検知温度が例えば所定の4℃以上上昇していれば、そこで容器3内の液体が沸騰していると判断して、加熱装置4のオフ状態を継続し、容器3への加熱を停止させる。逆に、1.5秒前の検知温度に対して現在の検知温度が4℃以上上昇していなければ、沸騰ではないと判断して、加熱装置4を再びオンにする。
これを図8で説明すると、容器3内の冷水を強加熱する途中で、時間(2)に双方の検知温度が4℃以上上昇したとする。加熱制御手段71は、この急激な温度上昇を検知して加熱装置4を一旦オフにするが、2秒後に双方の検知温度が4℃以上上昇していなかったので、沸騰はしていないと見なして加熱装置4を再度オンにし、湯沸かしを継続する。
その後の時間(3)において、双方の検知温度が再度4℃以上上昇したとする。加熱制御手段71は、急激な温度上昇を検知して加熱装置4を一旦オフにするが、この場合は2秒後にも双方の検知温度が4℃以上上昇していたので、今度は容器3内の液体が沸騰したと判定して、加熱装置4のオフ状態を継続すると共に、利用者に湯沸かし完了を知らせるために、ブザー75をオンにする鳴動信号を出力する。なお、図8では湯沸かし開始直後と、検知温度が4℃以上上昇した直後の一時的なオフ期間を除いて、加熱装置4が終始100%の通電率でオンしているが、好ましくは前記図6や図7で示したように、容量判定センサ28の検知温度が80℃に達した後は、容量判定手段77で判定した容器3の液体容量に応じて、加熱装置4の通電率を減らすようにしてもよい。
このように、図8に示す例では、沸騰検知センサ25の検知温度が急激に上昇したら、直ちに加熱装置4をオフにする制御を行なっており、加熱装置4をオフするのが遅れることによる吹きこぼれを防止できる。また、急激な温度上昇を検知した後、加熱装置4を一旦停止して、所定時間経過後も再び急激な温度上昇が続いていなければ、加熱装置4を再び動作させることにより、ノイズなどを沸騰と誤検知することによる早切れ(湯が沸騰していない状態で湯沸かしが完了する)も防止できる。さらにここでは、蒸気の発生に伴い沸騰検知センサ25の検知温度が変化するのを利用して沸騰を検知するので、容器3内の液体の初期温度が変動したり、気圧変化による沸騰温度の変動があったりしても、確実に且つ所定の時間(2秒間)で沸騰を安定的に検知することが可能になる。
その後の時間(4)において、再度加熱開始スイッチ21を押すことにより、加熱制御手段71は湯沸かし(熱い湯のままの再沸騰)を開始する。ここでも加熱制御手段71は1.5秒間待って、A/D変換器72から取込んだAD値をバッファ74に15個記憶してから、加熱装置4をオンにする。この1.5秒間において、AD値に対応する検知温度は上昇中であるので、加熱制御手段71は、その後に1.5秒間で検知温度が第1判定温度すなわち4℃以上上昇したら、加熱装置4をオフにさせることをこのとき記憶する。
時間(5)になると、1.5秒前の検知温度に対して現在の検知温度が4℃以上上昇したので、加熱制御手段71は加熱装置4を一旦オフにする。ここでは2秒後においても、1.5秒前の検知温度に対して現在の検知温度が4℃以上上昇しているので、容器3内の液体が沸騰したと判定して、加熱装置4のオフ状態を継続すると共に、湯沸かし完了を知らせるために、ブザー75をオンにする鳴動信号を出力する。
その後の時間(6)において、再度加熱開始スイッチ21を押すことにより、加熱制御手段71は湯沸かし(熱い湯のままの再沸騰)を開始する。ここでも加熱制御手段71は1.5秒間待って、A/D変換器72から取込んだAD値をバッファ74に15個記憶してから、加熱装置4をオンにする。この1.5秒間において、AD値に対応する検知温度は下降中なので、加熱制御手段71は、その後に1.5秒間で検知温度が第2判定温度すなわち1℃以上上昇したら、加熱装置4をオフにさせることをこのとき記憶する。
時間(7)になると、1.5秒前の検知温度に対して現在の検知温度が1℃以上上昇したので、加熱制御手段71は加熱装置4を一旦オフにする。ここでは2秒後においても、1.5秒前の検知温度に対して現在の検知温度が1℃以上上昇しているので、容器3内の液体が沸騰したと判定して、加熱装置4のオフ状態を継続し、湯沸かしを完了する。
このように加熱制御手段71は、容器3内の湯沸かしが完了した状態で、液体の温度が低下しているときに、湯沸かしを再開して再沸騰させた場合でも、所定の温度勾配である判定温度を、湯沸かし開始時における加熱装置4をオンにする前の検知温度差に基ずいて、それまでの第1判定温度(1.5秒で4℃)から温度勾配の緩やかな第2判定温度(1.5秒で1℃)に切り替えることで、その後の沸騰検知を遅れなく行うことができ、吹きこぼれを確実に防止することができる。
次に、出湯時における開閉弁44の動作について説明する。弾性体67の付勢力に抗して操作部54の上面から出湯ボタン51を押し込むと、その外力が出湯ボタン51の軸部55から回転部材52の軸受部63に伝わり、さらには回転部材52の歯61から開閉弁44の歯49にも伝わって、開閉弁44と回転部材52が出湯ボタン51と共に押し込まれる。それにより、回転部材52の凸部65がガイド部66に沿って摺動し、回転部材52は凹部53内で軸受部63を中心として、図3に示す矢印Rの方向に回転する。
出湯ボタン51を押し込むにしたがって、回転部材52が一定の角度に回転すると、回転部材52の凸部65がガイド部66に形成した段部(図示せず)に突き当たってその位置で係止し、出湯ボタン51,回転部材52および開閉弁44を押し込んだ状態に保持する。このとき、出湯ボタン51の窓58を通して視認される表示部64は、「止」なる文字の第2の指示部64Bから、「出」なる文字の第1の指示部64Aに切り替わっている。したがって使用者は、従来のように出湯ボタン51の側面に対向する凹部53の壁面を覗き込まなくても、窓58を通してどの方向からも目視できる第1の指示部64Aを確認するだけで、開閉弁44が出湯通路34を開放した出湯状態であることを直感的に理解できる。
そして、この状態からハンドル7を握って注ぎ口6を傾けると、容器3内の湯が内蓋33の孔35から出湯通路34を通って、本体1の外部に排出される。注ぎ口6を下方に向けることで、転倒流出防止弁41が貫通孔42を閉塞するが、出湯状態では開閉弁44が出湯通路34のみならず、蒸気排気路38に繋がる連通路40をも開放するので、容器3内は大気圧に保たれ、湯は引き続き円滑に排出される。
一方、注ぎ口6から不意に出湯しないようにする場合は、前記押し込んだ状態に保持された出湯ボタン51をさらに若干押し込んで、ガイド部66に形成した段部と回転部材52の凸部65との係止を解除する。ここで、出湯ボタン51に加わる押し込み力を弱めると、弾性体67の付勢力が作用して、回転部材52の凸部65がガイド部66に沿って摺動し、出湯ボタン51,回転部材52および開閉弁44は何れも凹部53に沿って上方に移動して、最終的には出湯ボタン51の上面がカバー32の上面と面一になる位置に復帰する。開閉弁44は出湯通路34と連通路40を共に閉塞するので、注ぎ口6のみならず蒸気排出孔37から湯が不意に流れ出すのを防止することができる。
またこのとき、出湯ボタン51の窓58を通して視認される表示部64は、「出」なる文字の第1の指示部64Aから、「止」なる文字の第2の指示部64Bに切り替わっている。したがって使用者は、ここでも窓58を通して第2の指示部64Bを確認するだけで、開閉弁44が出湯通路34を閉塞した非出湯状態であることを直感的に理解できる。
以上のように本実施例では、前方に注ぎ口6、後方にハンドル7、上方に蓋5をそれぞれ備えた本体1と、出湯通路34を開閉する開閉弁44と、蓋5の注ぎ口6側に設けられ、開閉弁44と連動する出湯操作体としての出湯ボタン51と、出湯ボタン51に設けられた窓58と、出湯ボタン51の下方に設けられ、この出湯ボタン51の押動操作に伴い回転する表示体としての回転表示板57と、回転表示板57に設けられ、出湯状態の有無を表示し、窓58を通して視認可能な表示部64と、により湯沸かし器を構成している。
この場合、蓋5の注ぎ口6側に設けられた出湯ボタン51を押動操作する毎に、回転表示板57と共に表示部64がその都度回転し、窓58を通して出湯状態であるか否かを表示部64に表示させる。これにより、出湯ボタン51の側面に対向する凹部53の壁面を覗き込むことなく、どの方向からも窓58を通して表示部64の表示状態を視認することで、出湯状態の有無を判断できる。
また、特にここでの回転表示板57は、出湯状態にあるときに窓58に対向する例えば「出」なる文字の第1の指示部64Aと、非出湯状態にあるときに窓58に対向する例えば「止」なる文字の第2の指示部を備えている。
こうすることで、出湯状態になると窓58を通して第1の指示部64Aが表示され、非出湯状態になると同じ窓58を通して今度は別な第2の指示部64Bが表示される。どちらの指示部64A,64Bが窓58を通して表示されるのかによって、出湯状態であるか否かを即座に判断できる。
また本実施例では、本体1と、この本体1と分離可能に設けられ、前記本体1に給電する給電台11とを備え、本体1は液体を収容する容器3と、液体の蒸気温度に応じた信号を出力する第1検知体としての沸騰検知センサ25と、液体の容量を検知し得る信号として、その液体から発生する蒸気温度に対応した信号を出力する第2検知体としての容量判定センサ28と、沸騰検知センサ25からの信号出力により沸騰を検知して、容器3への加熱通電を停止させると共に、容量判定センサ28からの信号出力により液体の容量を確認する制御部としての制御装置8を備えている。
この場合、沸騰検知センサ25の他に容量判定センサ28を備え、沸騰検知センサ25からの信号出力を利用して沸騰を検知すると、容器3への加熱通電を停止させる一方で、容量判定センサ28からの信号出力を利用して、容器3に投入した液体の容量を把握することができる。そのため制御装置8は、液体の容量に応じて必要な制御を行なうことが可能となる。
また、制御装置8は図6や図7で示したように、容器3に収容する液体の容量に応じて、所定温度(例えば80℃)になると、容器3への加熱制御の変更を開始するように構成している。
こうすると、例えば液体の容量が定格よりも多い場合には、所定温度になると容器3への加熱制御を変更開始して、それまでよりも加熱量を少なくすることで、液体の容量が多い場合に発生しやすい沸騰前後における容器内からの吹きこぼれを確実に防止することができる。また、液体の容量が定格よりもどの程度多いかで、容器3への変更後の加熱制御を複数設定すれば、加熱量を少なくした後の湯沸かし時間をできるだけ遅くしないように調整することもできる。
さらに、容量判定センサ28を容器3の底部に設けることで、容量判定の基となる容器3内の液体温度が検知しやすくなり、容量判定センサ28がこれを容量に応じた信号として正しく出力できるようになる。
また、制御装置8は図8で示したように、沸騰検知センサ25からの信号出力に応じた検知温度が所定の温度勾配である第1判定温度若しくは第2判定温度以上に上昇したら、容器3への加熱通電を一時的に停止し、所定時間後にも同様に温度上昇を検知したら、沸騰と判断して容器3への加熱通電を停止させる構成を備えている。
この場合、沸騰検知センサ25によって急激な温度上昇を検知したら、直ぐに容器3への加熱通電を停止することにより、容器3への加熱通電が遅れて停止することによる容器3内からの吹きこぼれを防止できる。また、その後に再度温度上昇の有無を検知するので、ノイズなどの誤検知による早切れを防止できる。さらに、沸騰検知センサ25による検知温度の変化で沸騰の有無を判断するので、容器3に収容する液体の初期温度が変動したり、気圧変化により沸騰温度の変動があったりしても、確実に且つ所定の時間で沸騰を安定的に検知できる。
さらに制御装置8は、湯沸かし開始時に、容器3への加熱通電を行なう前の検知温度の変化に基づいて、例えば現在の検知温度が1.5秒前の検知温度よりも下降していた場合は、それまでの温度勾配の条件である第1判定温度(1.5秒で4℃)を第2判定温度(1.5秒で1℃)に切り替えるなどして、所定の温度勾配を変える構成を備えている。
こうすると、容器3内の湯沸かしが完了した状態で、液体の温度が低下しているときに、湯沸かしを再開して再沸騰させた場合でも、所定の温度勾配を適切に変えることで、その後の沸騰検知を遅れなく行うことができ、吹きこぼれを確実に防止することができる。
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、実施例で示した所定温度や所定時間のみならず、AD値の取り込み間隔や、比較する検知温度の時間差(バッファ74の記憶数)や、第1判定温度および第2判定温度や、加熱装置4を一旦オフにする時間の値は、あくまでも一例に過ぎず、他の値に設定してもよい。