以下、本発明の縦型/トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
図1は、実施例1および実施例2にかかるDMOSFETの断面図を示す。図2は、実施例2において、JFET領域9の一部をp型に転換した状態を示す平面図である。図3は、実施例2において、ゲート電極12の一部を取り去った状態を示す平面図である。図4は、実施例3にかかる耐圧構造部の要部断面図を示す。図5は、実施例3において、ガードリング領域28aのためのイオン注入を終えた直後の要部断面図を示す。図6は、実施例3において、ガードリング領域28aならびに28bのためのイオン注入を終えた直後の要部断面図を示す。図7は、SiCウエハのエピタキシャル成長層における転位の伝播方向を示し、(a)は転位を表面に投影した状態にしてSiCウエハを上方からみた平面図、(b)は転位を断面に投影した状態のSiCウエハの断面図である。図8は、実施例4にかかるトレンチ型MOSFETの要部断面図を示す。図9は、実施例4にかかる、異なるトレンチ型MOSFETの要部断面図を示す。図10は、実施例4にかかる、さらに異なるトレンチ型MOSFETの要部断面図を示す。図11は、表面に熱酸化膜と多結晶シリコンが形成された、転位を有するSiCウエハのヒロック部分の拡大断面図である。
(実施例1)
実施例1にかかる図1はDMOSFETのユニットセル(以降、単にセルということもある)の断面図を示す。高ド−プn型である4H−SiCの概ね(0001)Si面を主面(おもて面という)とするバルク基板1上に、n型フィールドストッピング層2、低ド−プn型ドリフト層3が順次、たとえば、エピタキシャル成長により積層される。フィールドストッピング層2のドーピングは、たとえばドーピング密度で1×1018cm-3であり、膜厚はたとえば1μmである。
ドリフト層3のドーピングならびに膜厚は、所望の耐圧によって決定すべき設計事項であるが、一例を挙げると、設計耐圧1.2kVの場合、それぞれドーピング密度1×1016cm-3ならびに膜厚13μmである。ドリフト層3の表面層の一部にはp型ボディー領域5が形成されている。
p型ボディー領域5のドーピングプロファイルは、所望の性能、特性(耐圧・閾値電圧等)によって、適宜設計すべきものであるが、たとえば、最深部でドーピング密度1019cm-3台、最表面でドーピング密度2×1017cm-3程度となる傾斜プロファイルであり、合計の深さがたとえば1μmである。p型ボディー領域5の表面層の一部には高ド−プのn型ソースコンタクト領域6および高ド−プのp型ボディーコンタクト領域7が形成される。
ソースコンタクト領域6と、ドリフト層3のうち隣接するボディー領域5に挟まれた表面層領域(JFET領域9という)とに挟まれるボディー領域5の表面層部分はチャネルが形成されるチャネル形成部13となる。このチャネル形成部13の表面ならびにその近傍表面には、ゲート絶縁膜11を介して高ド−プにリンをドープされた導電性多結晶シリコンからなるゲート電極12が堆積によって載置されている。ゲート電極12は、さらにこのゲート電極12を覆う層間絶縁膜21によって、その上部を覆うソース電極23と絶縁されている。このソース電極23は前記ソースコンタクト領域6およびボディーコンタクト領域7の各表面に共通にオーム性接触している。
バルク基板1の反対側の主面(裏面という)には、ドレイン電極22がオーム性接触している。ドレイン電極22とソース電極23のうち、SiCウエハ表面と直接接触する金属膜界面は良好なオーム性接触を得るために、たとえば、ニッケルとチタンを順に積層した金属膜をSiCウエハ表面と熱処理により反応させ、所定の合金状態にすることが好ましい。ドレイン電極22とソース電極23のその他の膜部分(前記ニッケルとチタンの上層に形成される膜部分)は、たとえばアルミニウム膜で構成する。
前記図1は、前述のように、DMOSFETの中のユニットセルの断面図であるので、ゲート電極は1個のみ示してあるが、実際のDMOSFETにおいて、主電流の流れる活性領域には、ユニットセル(単位構造)が多数繰り返される。なお、前記図1においては、説明のため、図面上では細線となってしまうような個所を拡大して描いてあり、実際の寸法比とは異なっている。以降の図についても、同様である。また、同一の構成要素に対しては同一番号を付し、重複する要素については説明を省略する。
さらに、前記図1においては、チャネル形成部13はボディー領域の一部でもあるので、その導電型はp型であるが、この部分あるいはその一部にあらかじめn型領域が設けられたいわゆる蓄積型MOSFETであってもよい。また、前記図1において、n型とp型を入れ替えた構造も可能であるが、SiCウエハにあっては、電子のほうが、正孔よりも移動度が数倍高いので、通常は、主要なキャリアが電子であるほうが良好な特性となるため、前記図1のような導電型の積層構成にすることが好ましい。なお、実際のパワー半導体装置では、所望の耐圧を得るために、半導体装置(チップ)周辺部に何らかの電界緩和構造を必要とするが、これについては、後述の実施例3以降で説明する電界緩和構造が本実施例1にも適用できる。
このDMOSFETの製造方法を簡略に説明する。まず、SiCエピタキシャル成長により、SiCバルク基板1の上にフィールドストッピング層2とドリフト層3を順にSiCエピタキシャル成長により積層したSiCウエハを形成する。その後、前記エピタキシャル成長層表面にマスク材料となるSiO2膜を形成し、適宜SiO2膜マスクパターンを形成する。SiCウエハを1μm程度エッチングして、マスク合わせ用マーカー(図1には図示せず)とする。
続いて、前記SiO2膜マスクパターンを用いて、SiCウエハをたとえば500℃に加熱した状態で、p型領域に対してはアルミニウム、n型領域に対してはリンを、所定のプロファイルとなるようにイオン注入する(室温でイオン注入することを排除するものではない)。次に、SiCウエハをたとえばArとSiH4の混合雰囲気中で、1700℃に加熱して、イオン注入したアルミニウムとリンを活性化させる(活性化アニールという)。この活性化アニールは、各p、n型領域および各プロファイル形成のためのイオン注入後にそれぞれ個別に行ってもよいし、最後にまとめて行ってもよいが、Siのウエハプロセスで行われているようにイオン注入の直前にスクリーン酸化を行う場合には、増速酸化によりイオン注入層がなくなってしまうので、この現象を避けるために、各イオン注入後に個別に行うのが好ましい。
次に、適切な雰囲気、たとえば1300℃のN2希釈のN2O雰囲気で、所定の時間、SiCウエハを熱酸化して、所定の膜厚のゲート絶縁膜11(この場合は、酸化膜であるので、ゲート酸化膜ともいう)を形成する。この膜厚は、ゲート駆動電圧と駆動電界強度に依存するが、たとえば50ナノメートルとすることができる。続いて、Siのウエハプロセスと同様に、減圧CVD法により、リンドープ多結晶シリコン12を膜厚約0.4μm堆積する。図11の拡大断面図に示すように、この際、SiCウエハ3表面に現れる転位64に起因して、ゲート酸化膜11の対応する表面に異常な凸部24が生じるので、転位64付近では多結晶シリコン表面にも異常成長によりヒロック(突起)20が形成される。その大きさは、多結晶シリコン膜12上で、たとえば直径0.5μm、高さ0.3μm程度である。このヒロック20は、転位64に対して、転位が走る傾斜角に付随するわずかな位置ズレはあるもののほぼ1対1に対応して多結晶シリコン表面に出現する。以下、SiCウエハ表面の転位64に対応して、多結晶シリコン12表面にヒロック20が出現する現象の根拠または理由について、推測を交えて以下説明する。
SiCウエハの表面を熱酸化する場合、平坦な正常SiCウエハ表面に対して、転位部分の表面では応力により酸化速度が速くなるので、酸化膜11表面では、転位64とその近傍に対応する位置で酸化膜11が厚くなって盛り上がりができる(Siと同様に、SiCもSiO2になると体積が膨張することも一因)。続いて、多結晶シリコン12をSiウエハプロセスと同様の堆積条件で形成する。多結晶シリコン12の堆積時には、通常、平坦な酸化膜11表面に沿って(111)面を配向させる。しかし、転位64の近傍では前述のように酸化膜11が局部的に厚くなっている(少し盛り上がっている)ので、(111)面以外の結晶面が出てしまう。Si結晶成長の一般的な理論によれば、(111)面が成長速度が最も遅いので、転位の近くだけ多結晶シリコンの成長速度が速くなり盛り上がる。したがって、多結晶シリコン12の表面で、転位64に対応する位置にヒロックができると考えられる。
その後、レーザー光の散乱光を検出する方式のパーティクル検査装置(市販のもの)により、ヒロックの位置を検出し記録しておく。必ずしも正確な位置を記録する必要はなく、どの半導体装置に存在するかが分かる程度でよいので、画像処理に適するように解像度を下げることができる。前述の大きさ程度のヒロックであれば、比較的容易に検出できる。画像処理により、所定の個数、たとえば1個以上のヒロックを有する半導体装置(チップ)を不良品とする。もし、ウエハ内で所望の良品率が得られない場合、この時点で処理を中止してもよい。
次に、Siのウエハプロセスと同様に、活性化アニールによってリンを活性化した後、多結晶シリコンをパターニングする。続いて、PSG(Phospho Silicate Glass以下同様)の堆積およびリフローを行い、PSGにソース電極用のコンタクトホールを設ける。その後、おもて面にニッケルとチタンを成膜し、パターニングする。続いて、おもて面をレジストで保護し、Siのウエハプロセスと同様に(順番は大幅に異なるが)、裏面の堆積物を除去した後、バッファードフッ酸に浸して裏面の酸化膜を除去する。ニッケルとチタンを成膜し、必要に応じてパターニングする。
おもて面のレジストを除去した後、たとえばAr雰囲気中でたとえば1000℃の熱処理を行って、SiCウエハとニッケル・チタンとの間でオーム性接触を得る。Siのウエハプロセスと同様に、PSGにゲートパッド(図1には図示せず)用のコンタクトホールを設け、おもて面にAlをスパッタ成膜した後パターニングする。必要に応じて、追加の熱処理を行って、SiCウエハ中に半導体装置を完成させる。
完成した半導体装置は、多少ヒロックを検出したものであっても、短時間であれば、動作するものが多数見られた。しかし、信頼性を見るための加速試験を行うと、ヒロックを検出した半導体装置の多くは、ヒロックを1つも検出しなかった半導体装置に比べて、明らかに短時間でゲート絶縁膜11が破壊する結果が得られた。この結果から、ヒロックを検出した位置の半導体装置は、その信頼性に問題のあることが判明した。
以上説明した実施例1にかかるウエハプロセス工程について、従来のDMOSFET製造工程に追加される転位検出工程の内、実質的に増加する作業分は、多結晶シリコンを堆積した後の、パーティクル検査装置を使ってヒロックの位置を検出する作業分のみである。すなわち、本実施例1によれば、SiCウエハ中の転位を、ウエハプロセス中において、簡便に(ヒロックという形で)検出することができるとともに、前記パーティクル検査装置に記録された検出データおよび位置データに基づいて不良品を除去するスクリーニング工程をウエハへのマーキングなどにより、容易にウエハプロセスに取り入れ易くすることに役立てることができる。
(実施例2)
前述の実施例1のようなスクリーニングは、半導体装置(チップ)サイズが小さい場合には有効であるが、半導体装置(チップ)サイズが大きくなると、現在の通常の転位密度レベルがそれなりに高いので、全く歩留まりが得られないことが多く見られる。たとえば、活性領域が約100μm角のSiC製DMOSFETの場合、前記実施例1のように転位を検出して不良とされた半導体装置をスクリーニングした際の歩留まりは、ウエハにより個体差もあるが、たとえば30〜40%程度である。これに対して、活性領域が約300μm角のSiC製DMOSFETの場合、前述と同程度の転位密度レベル品質のSiCウエハであっても、歩留まりはほぼ0%である。
そこで、本実施例2では、前記実施例1のようにヒロックという形で転位が検出された半導体装置(チップ)を不良としてスクリーニングするだけでなく、さらに、転位が検出された半導体装置(チップ)を良品とするための救済的なプロセスを行なう。この救済プロセスを適用する具体例について以下説明する。この実施例2にかかるSiC製DMOSFETの要部断面図は、実施例1と同じ図1である。実施例2の特徴は、転位が存在する付近のユニットセルのゲート絶縁膜11には本来、他の場所と同等に印加されるはずの電界が、そもそも印加されないようにセルのゲート電極12を加工することである。具体的には、転位が存在する付近のセルのゲート電極のみを部分的に除去する加工である。単純にゲート電極12を除去すると、オフ状態のときに印加される高電圧のために、チャネル形成部13が反転してしまい、低い印加電圧で導通してしまう問題を生ずる。そこで、六つのユニットセルの平面図である図2に示すように、ヒロック19を検出して転位が存在する付近のセルでは、n型JFET領域9をp型のJFET領域5−1に転換して、チャネル形成部13に高電圧が及ばないようにする必要がある。しかし、このようなp型への転換を行うと、その分、電流に寄与する有効なセルが少なくなり電流容量が減少するというデメリットが付随する。そこで、いくつかのセルに転位が検出された場合でも、あらかじめ所定の電流容量が所望の歩留まりで得られるように、半導体装置の設計段階では、大きい目の電流容量となるように設計しておくことが好ましい。
このように、転位検出セルのゲート電極の除去とセルのJFET領域のp型化とにより、半導体装置(チップ)としては、転位を含んでいても、その部分のセルのみを殺して非機能化しておけば、その分電流容量は少なくなるが、特性への悪影響を回避して良品の半導体装置(チップ)とすることができる。また、前述のようなp型への転換を行う検出ヒロックの個数をあらかじめ定めておくのであれば、その数よりもヒロックの個数が少ない場合には、ヒロックを検出しなかった正常セルの一部に、同様の処置を行うことにより、製造される半導体装置内の実際に動作するセルの数を揃えることができ、特性ばらつきの低減につながる。
この実施例2の方法は電流容量が大きく、半導体装置面積の大きい半導体装置の場合に特に有効性が高い。ところで、ゲート電極12の一部を取り去ると、ゲート電極12が半導体装置内で寸断される可能性がある。したがって、セルの配置としては、ゲート電極12が網目状となるような配置が好ましい。たとえば、格子状のゲート電極12とする。
本実施例2におけるDMOSFETの製造工程は、途中までは実施例1と同じであるが、多結晶シリコンを堆積し、パーティクル検査装置によりヒロックを検出する前後の工程が異なる。実施例2では、多結晶シリコンの膜厚を、予め1μm程度に増加しておく。この膜厚は、後でたとえば熱酸化してイオン注入マスクに転用する際に必要な膜厚の、たとえば半分程度となるようにするのがよい。ヒロックの検出位置精度は、救済工程を施す領域を決定するのに必要な程度であり、たとえば2〜5μm程度でよい。実際には、画像処理のために、測定精度はもう少し必要であろう。ヒロックを検出したウエハについては、多結晶シリコンを熱酸化(または、酸窒化、窒化でもよい)して、SiO2(または、SiON、SiN)膜に転換する。その後、ヒロックが検出された付近のJFET領域9にp型化のためのイオン注入ができるように前記転換したSiO2膜をパターニングし、ボディー領域5と同様にイオン注入する。マスクとして、多結晶シリコンのまま用いることを排除するものではないが、SiO2膜に転換することで、注入イオンに対するマスク効果を増加させることができるので、多結晶シリコンの膜厚を少なくすることができる利点がある。こうすることで、ヒロックを検出した付近のJFET領域9はp型であるボディー領域5の一部となり、チャネル形成部13には高電圧が及ばない。この後SiO2膜を除去した状態における平面図が前記図2である。図2では、○印で示すヒロック検出位置19は、ボディー領域5のうち、将来ゲート電極12と対向させる予定であった部分(チャネル形成部13)である。ヒロック検出位置19に、隣接するJFET領域9をp型に転換して、ボディー領域の一部(図中5−1)とする。SiO2膜を除去した後、活性化アニールを行い、ゲート酸化膜11と多結晶シリコンを形成し直して救済工程を完了する。
前記救済工程中に、イオン注入と活性化アニールによって再び転位を生ずる可能性があるので、ヒロックの検査は再度行い、ヒロックが再度発生した場合は、実施例1のようにスクリーニングするか、再度本実施例2のように救済工程を施すのが好ましい。以後の工程は、多結晶シリコンをパターニングする際に、最初にヒロックが検出された付近では、ゲート電極12となるべき部分の多結晶シリコンを除去すること以外は、実施例1と同様である。ゲート電極12をパターニングした後の状態における、前記図2と同じ位置の平面図を図3に示す。ゲート電極12の下層にはゲート酸化膜11が存在するので、それよりも下に位置する構成要素は、破線で外形を示してある。図3に示すように、本来、左右両端のセルのように、ゲート電極12は図3の図面の上下のセルにまたがるように形成されるが、ヒロック検出位置19に対応する中央部分では、上下のセルにまたがる部分のゲート電極12が除去されている。
ところで、前述の救済工程においては、各ウエハプロセスに対して、それぞれ対応するフォトリソグラフィーを2回(JFET領域9へのイオン注入用とゲート電極12用との各パターニング)行う必要がある。ステッパー露光においては、前述のようなウエハ毎にマスクパターンが変わって確定されないマスクパターンを必要とするフォトリソグラフィーは非現実的と思われるが、たとえば電子線直接露光やレーザー光直接露光を用いれば、ウエハごとにパターンを変更することができるので、比較的容易に実現できる。なお、ステッパー露光であっても、レチクル上にいくつかのパターンのフィールドを用意できる場合には、ウエハまたはショットごとに使い分けることも可能である。この場合、救済効率が落ちるのと、電流容量の割にソース・ドレイン間静電容量が高くなるという欠点があるが、電子線直接露光ほど設備が高価ではなく、スループットも電子線直接露光よりは高いという利点もある。活性領域が約300μm角の半導体装置(チップ)において、1半導体装置(チップ)あたり5個までのヒロック検出部について、前述のような救済工程を行った場合、歩留まりは約10%に向上した。同様にして、1半導体装置(チップ)あたり10個までのヒロック検出部について上記のような救済工程を行った場合、歩留まりは約70%に向上した。1半導体装置あたり10箇所というと、すこぶる多数に思われるかもしれないが、セルピッチが12μmである場合、1つの半導体装置(チップ)には625個のセルがあるため、現実に救済工程を施されているセルは、全体の1.6%程度に過ぎない。
以上、説明したように、本実施例2によれば、ヒロックという形で検出した転位付近に存在するセルに救済工程を施すので、転位密度が高い場合でも、大面積の半導体装置(チップ)を高い歩留まりで得ることができる。また、救済工程の最中に転位を新たに発生させる可能性がある場合に、新たに発生した転位を検出し、さらに前述の救済工程を加えるようにすることができる。
(実施例3)
実施例3は、パワー半導体装置の中央部にあって主電流の流れる活性領域の周囲を取り囲む周辺部に位置する耐圧構造部を形成するために、ヒロックの検出工程を終えた多結晶シリコンを用いる製造方法を特徴とする。一般に、パワー半導体装置にあっては、所望の耐圧を得るために、適切な耐圧構造部を形成する必要がある。この耐圧構造部の断面図を図4に示す。前記実施例1および2と同様の構成要素については、同じ番号を付して重複する説明を省略する。図4は図面に向かって左側は半導体装置(チップ)の端部であり、右側はセルの集合体である活性領域のある中央方向である。n型ドリフト層3の表面の一部に、ド−ピング量が異なる複数のp型ガードリング領域28a、28bが設けられている。
本実施例3においては、セル側から順にド−ピング量が低くなる2段のp型ガードリング領域28a、28bが設けられている。これらの領域の各ド−ピング量(ドーズ量)および領域の幅(半導体装置の平面において、セル側から半導体装置端部に向かう方向の幅)は、所望の耐圧および許容される製造余裕に基づいて変えられるべき、いわゆる設計事項である。一例を挙げると、たとえば、1.2kV耐圧の場合、ガードリング領域28aは、たとえば、幅25μm、ドーズ量4.8×1013cm-2、ガードリング領域28bは、たとえば、幅25μm、ドーズ量1.6×1013cm-2とする。ガードリング領域は2段に限られるものではなく、さらに多段としてもよい。
ガードリング領域28a、28bの外側(チップの端部側)には、空乏層が延びすぎて半導体装置端部に達して耐圧劣化することを防止するためのn型チャネルカット領域27が設けられる。耐圧構造部の表面は保護絶縁膜29で覆われている。セル部の構造は、どのようなものであってもよいが、簡単のため、実施例1および2に示したDMOSFETを例にとって説明を続ける。
この耐圧構造部の製造方法を説明する。まず、バルク基板1にn型フィールドストッピング層2、低ド−プn型ドリフト層3などを、たとえば、エピタキシャル成長により積層してSiCウエハを形成する。このウエハにマスクパターン合わせ用のマーカー(図4には図示せず)と各セル部を構成するボディー領域5、ソースコンタクト領域6、ボディーコンタクト領域7などを形成するためのイオン注入領域ならびにチャネルカット領域27を形成する。
次に、前記SiCウエハを適切な条件、たとえば1200℃のウェット雰囲気で2時間、熱酸化して、厚さ50nm程度の熱酸化膜29−1をウエハのおもて面全面に形成する。形成された熱酸化膜上に、実施例1あるいは2と同様に、多結晶シリコン18を堆積した後、ヒロックの検出を行い、ヒロックが検出された箇所に対して前述のスクリーニングあるいは救済工程を施す。
ただし、実施例1のようにスクリーニングする場合は、多結晶シリコン18の膜厚を、たとえば1μm程度に厚くしておく。この厚さは、次のイオン注入において、十分なマスク効果を有するものとする必要がある。ガードリング領域28a形成のための開口マスクを用いて、多結晶シリコン18を選択的エッチングする。残った多結晶シリコン18をマスクとして、ガードリング領域28a形成のためのイオン注入を行う。このときのドーズ量は、ガードリング領域28aに必要なドーズ量から、ガードリング領域28bに必要なドーズ量を差し引いたドーズ量とする。たとえば、前記の例では、ドーズ量を(ガードリング領域28aのドーズ量4.8×1013cm-2)−(ガードリング領域28bのドーズ量1.6×1013cm-2)=3.2×1013cm-2とする。この工程が終了した状態を、図5の耐圧構造部の断面図に示す。
同様に、ガードリング領域28bの形成のための開口用マスクを用いて、多結晶シリコン18をさらに選択的エッチングする。残った多結晶シリコン18をマスクとして、ガードリング領域28aとガードリング領域28bの形成のためのイオン注入を行う。この工程が終了した状態を図6の耐圧構造部の断面図に示す。もし、ガードリングの段数がさらに多い場合は、同様の工程を繰り返せばよい。
ガードリング領域形成のためのイオン注入が終了したら、多結晶シリコン18と熱酸化膜29−1を除去し、前記イオン注入領域に対する活性化アニールを行う。この活性化アニールには、1500〜1800℃もの高温が必要であるので、SiO2膜や多結晶シリコンは、あらかじめ除去しなければならない。その後、実施例1および2と同様に、ゲート絶縁膜、ゲート電極、その他MOSFETに必要な構造を形成する。
以上、説明したように、本実施例3によれば、各ガードリング領域形成のためのマスク材料である多結晶シリコンの堆積および除去の工程と、ウエハプロセスにおいてヒロックという形で転位を検出するための多結晶シリコンの堆積および除去の工程とを共通にすることにより、従来の通常のウエハプロセスに転位検出工程を追加する場合にも、実質的な作業増加分を少なくすることができる。
(実施例4)
実施例4にかかるトレンチ型SiC製MOSFETを図8の要部断面図に示す、トレンチ型MOSFETは、DMOSFETにおけるJFET領域がないので、その分、導通損失、すなわちオン抵抗を低減できる利点がある。図8のトレンチ型SiC製MOSFETは、高ド−プのn型4H−SiC(0001)Si面を主表面(おもて面)とするバルク基板1上に、エピタキシャル成長によりそれぞれ形成される高ド−プのn型であるフィールドストッピング層2、低ド−プのn型であるドリフト層3、n型である電流広がり層4、p型であるボディー領域5などを備えている。
ボディー領域5の表面の一部には、高ド−プのn型であるソース拡張領域6−1と、さらに高ド−プのn型であるソースコンタクト領域6を有している。ソースコンタクト領域6の表面から前記ソース拡張領域6−1、前記ボディー領域5、前記電流広がり層4を貫いてドリフト層3に達するトレンチ10を備えている。このトレンチ10の壁面のうち、ボディー領域5およびボディー領域5に近接するソース拡張領域6−1部分ならびに電流広がり層4に接する部分には、ゲート酸化膜11を介して、ゲート電極12が設けられている。
トレンチ10のうち、ゲート電極12より上方ならびにソース拡張領域6−1、ソースコンタクト領域6の表面の一部にそれぞれ接する層間絶縁膜21が形成されている。ソースコンタクト領域6の主表面側にはソース電極23がオーム性接触しており、さらに、このソース電極23は層間絶縁膜21の上を覆って、隣接するセルのソースコンタクト領域6の主表面とオーム性接触している。前記ソース電極23のうち一部は、ボディー領域5の表面に形成される高ド−プのp型であるボディーコンタクト領域7とオーム性接触している。バルク基板1の裏面には、ドレイン電極22が設けられている。
図8では、ボディーコンタクト領域7の厚さはソースコンタクト領域6の厚さと同程度に描いてあるが、ソース拡張領域6−1をイオン注入で形成する際に、隣接するソース拡張領域6−1にはさまれたボディー領域5の抵抗が増加し、ボディー領域5の電位が不安定になる場合がある。そこで、可能であれば、ボディーコンタクト領域7の下に、ソース拡張領域6−1と同程度の深さまで、アルミニウムかホウ素をイオン注入して、抵抗を低減しておくのが好ましい(図示せず)。
各領域の厚さおよびドーピングは、所望の性能に応じて、適宜決定すべき設計事項である。一例を挙げると、耐圧1.2kVの場合、たとえば、フィールドストッピング層2はドナー密度0.5〜10×1017cm-3で膜厚約2μm、ドリフト層3はドナー密度1×1016cm-3で膜厚約13μm、電流広がり層4はドナー密度1×1017cm-3で膜厚約0.4μm、p型ボディー領域5はアクセプタ密度2×1017cm-3で膜厚約2.3μm(表面からボディー領域5の下端までの深さ)とする。
セルピッチおよびトレンチの幅は、ウエハプロセス中の各種プロセスの精度にも依存するが、たとえば、セルピッチが8μm、トレンチ幅が1μmである。フィールドストッピング層2および電流広がり層4は、必ずしも存在しなくてもよい。SiCバルク基板1の品質は必ずしも十分ではないので、フィールドストッピング層2が存在すれば、逆方向電圧印加時に空乏層がドリフト層3全体に広がっても、その端部での高電界がバルク基板1に印加されないので、バルク基板品質の低さに起因して絶縁破壊するのを抑制できて、好ましい。
なお、フィールドストッピング層2が存在しない場合は、以下の説明でフィールドストッピング層2とあるのは、バルク基板1の上端部分と読み替えればよい。ドリフト層3は比較的高抵抗であるので、オン状態において、トレンチ10の側壁面である、ボディー領域5とゲート絶縁膜11の界面を流れる電流が、ドリフト層3のうちトレンチ10の付近のみを流れることで、電流集中によるオン抵抗の増大を招く可能性がある。しかし、電流広がり層4が存在すれば、電流はドリフト層3の広い領域に広がって流れるので、電流集中によるオン抵抗の増大を抑制できて、好ましい。なお、電流広がり層4が存在しない場合は、以下の説明で電流広がり層4とあるのは、ドリフト層3の上端部分と読み替えればよい。
図8においては、ゲート電極は1個のみ示してあるが、実用的な半導体装置の活性領域においては、多くのユニットセルが繰り返されるのは、実施例1と同様である。また、以下説明するトレンチ型MOSFETでは、本発明を説明する上で、耐圧構造部は特に関係しないので、説明を省略する。もちろん、実施例3に例示したように、耐圧構造部を形成する前後で本発明を適用することにしてもよい。
ところで、SiCウエハで、バルク基板1上に形成されるエピタキシャル成長層においては、図7に示すように、転位の伝播方向に、一定の傾向のあることが知られている。SiCエピタキシャル成長層61中で、貫通螺旋転位、貫通刃状転位62と基底面転位63とは、オフ方向に平行に伝播しやすく、かつ互いに逆向きに伝播しやすい。したがって、トレンチ10は、その平面形状を直線状とした場合、長手方向を前記オフ方向に平行に向ける(図8では、オフ方向が紙面垂直方向となる)ように配置すると、ゲート絶縁膜11に転位が接触する可能性が最低限にとどめられる。ちなみに、SiCエピタキシャル成長層61の表面と基底面転位63とのなす角θは、オフ角に等しい。
以上の説明によれば、トレンチ型MOSFETにおいては、転位による絶縁膜信頼性劣化の問題はないように思われる。しかし実際には、ゲート絶縁膜11以外の場所で、問題を生じる可能性がある。たとえば、図8のままでは、トレンチ10の底部の絶縁膜に過大な電界が印加されて、破壊する問題が知られている。
そこで、トレンチ10の底部を適切に保護する必要がある。よく知られているのは、図9に示すように、トレンチ10の底部に、埋め込みp型領域8を設けるものであるが、この場合、埋め込みp型領域8の周りに、DMOSFETのJFET領域と同様の部分が生ずるので、セルピッチを縮小してセル密度を高くするほど、導通損失(オン抵抗)が増大する問題がある。
その対策として、図10に示すように、トレンチ10を少なくともフィールドストッピング層2に達する深さとして、ゲート電極12より下方には埋め込み絶縁膜15を埋め込む構造が知られている。この構造であれば、JFET領域は生じず、なおかつ、電磁気学的法則によって、埋め込み絶縁膜15にはドリフト層3と同程度の電界しか印加されないので、過大な電界によって埋め込み絶縁膜15が破壊する心配はない。
しかし、前記図9および前記図10のいずれのトレンチゲート構造でも、トレンチ10の底部のゲート電極12直下の絶縁膜(図10の場合は、埋め込み絶縁膜15に相当)11には、ドリフト層3とほぼ同程度の電界が印加されることは避けられない。SiCを用いた場合、その電界は2.5MV/cm程度であり、オン状態でゲート絶縁膜11に印加される電界とほぼ同等である。したがって、ゲート電極12直下の絶縁膜11または15に転位が接触すると、ゲート絶縁膜11と同様に、信頼性が問題となる。したがって、トレンチ型MOSFETの場合でも、本発明を適用する意味があり、本発明の効果が得られる。
このトレンチ型MOSFETの製造方法を図8を中心に図9と図10とを合わせて参照して、以下詳細に説明する。まず、図8に示すように、エピタキシャル成長により、バルク基板1の上にフィールドストッピング層2、ドリフト層3、電流広がり層4、ボディー領域5を順に形成する。その後、適宜パターニングされたマスク材料、たとえばSiO2膜をマスクに用いて、SiCウエハを1μm程度エッチングして、マスク合わせ用マーカー(図8〜図10には図示せず)とする。
続いて、SiCウエハを適切な条件、たとえば1200℃のウェット雰囲気で2時間、熱酸化して、厚さ50nm程度の熱酸化膜をSiCウエハのおもて面全面に形成する。形成された熱酸化膜上に、前記実施例1〜3と同様に、多結晶シリコンを堆積した後、ヒロックの検出を行う。なお、この際の多結晶シリコンの厚さは、後でたとえば熱酸化してイオン注入マスクに転用する際に必要な膜厚の、たとえば半分程度となるようにするのがよい。この時点でヒロックを検出しておく必要のある理由は、トレンチ10はソースコンタクト領域6を貫いて形成されるが、ソースコンタクト領域6を形成するために高ドーズのイオン注入と活性化アニールを行うと、それによって、新たに高密度の転位が発生することが多いため、トレンチ10の底面(および長手方向の両端)に接触する転位を正常に検出できなくなる惧れがあるためである。
本実施例4においては、直線状のトレンチ10を形成する予定の部分およびその延長部で転位が伝播するおそれのある範囲にヒロックを検出した場合に、スクリーニングするか、後で説明するように救済工程の対象とする。なお、SiCウエハのエピタキシャル成長層における転位の伝播方向を示す前記図7から明らかなように、市販されている4〜8度オフ基板をバルク基板1として用いる場合、バルク基板1上に形成されるSiCエピタキシャル層においては、基底面転位のほうが、貫通螺旋転位および貫通刃状転位よりも伝播範囲が広い。目安として、トレンチ10の長手方向の両側に、トレンチ10の深さ÷tanθ(ただし、θはオフ角)の範囲を検出対象とすればよい。
次に、前記多結晶シリコンを熱酸化して、SiO2(実施例2の救済工程と同様、酸窒化によるSiON、窒化によるSiNでもよいし、多結晶シリコンのまま用いることを排除するものではない)膜に転換する。このSiO2膜を適宜パターニングして、ボディーコンタクト領域7を形成するためのマスクとして用いる。この注入および活性化アニール条件は、前記実施例1と同様である。続いて、適宜パターニングされたマスク材料、たとえばSiO2膜をマスクに用いて、イオン注入することにより、ソースコンタクト領域6とソース拡張領域6−1を形成する。この際、ソースコンタクト領域6は、良好なオーム性接触を得るために、リンを高ド−プ(たとえば1020cm-3台)となるようにイオン注入する。
一方、ソース拡張領域6−1は、機能的には低抵抗のn型でありさえすればよいが、前述のようにイオン注入によって新たに転位を生じないようにという観点からはドーピングを制御しなければならない。このために、質量が小さく注入損傷の小さい窒素を用いるのが好ましいが、リンを用いても差し支えない。すなわち、転位を生じさせないようなドーズ量範囲で、できる限りドーズ量を高くするという観点とともに、注入速度を下げ、可能ならばウエハを加熱した状態(たとえば500℃)で注入することが好ましい。後でゲート電極12の上端がソースコンタクト領域6の下端よりも上にならないように、ソース拡張領域6−1は厚めにすることが望ましい。たとえば、窒素を最大700keV(一般的な400keV注入装置では、2価イオンを用いればよい)で注入した場合、注入深さは0.8μm強とすることができる。実質的に転位を生じない無難なドーズ量は、注入速度と加熱温度にもよるが、たとえば2.5×1014cm-2程度(ドーピング密度にして5×1018cm-3程度)である。
その後、マスクを除去し、活性化アニールを行う。次に、ウエハのおもて面にSiO2膜を堆積する。その後、フォトリソグラフィーにより、トレンチ10を形成するためのSiO2膜マスクパターンを形成するためのレジストマスクを形成する。もし、ヒロックが検出され、救済の対象とするのであれば、単にその場所にトレンチを設けないようにすればよい。その方法として、たとえば電子線直接露光やレーザー光直接露光の場合は、単に該当するパターンを描画しなければよいということになる。
ところで、トレンチ10はSiCウエハ面における平面形状を直線状としているので、その直線状領域の1箇所でもヒロックが検出されると、そのトレンチ全部が形成されないことになる。したがって、同じ面積の半導体装置であれば、トレンチの長さは短目として、その分トレンチを多数設けるほうが、救済処置として形成されないこととなるトレンチの割合を減らすことができるので好ましい。さらに、トレンチ10は、SiCウエハのオフ方向に沿っているから、この設計指針によれば、半導体装置の外形は、SiCウエハのオフ方向に平行な方向よりも垂直な方向に長い半導体装置が好ましいということになる。
本実施例4においては、1本のトレンチ10を形成する予定の領域の付近に1つでもヒロックを検出すると、そのトレンチは形成されないことになるので、ヒロック位置検出の際の解像度は、それなりに高くする必要がある。たとえば、解像度を2μmとする。この際、トレンチは隣接するピクセルにまたがる可能性があるので、実際には{(2×ピクセル幅)×(トレンチ長さ+2×トレンチ深さ÷tanθ)}程度の面積の領域が、各トレンチに対するヒロック検出対象となる。なお、単にトレンチを設けないことに代えて、ゲートパッド(図8〜図10には図示せず)から最初のヒロック検出位置の近く(前記と同様に、トレンチ深さ÷tanθ手前まで)までは、トレンチ10を設けることにしてもよい。
トレンチ10を形成するにあたり、図9のような場合には、所望の耐圧を得るために、トレンチ10の深さを適切に制御しなければならない。図10のような場合は、トレンチ10はフィールドストッピング層2に届いていれば、理論上は耐圧が得られるが、バルク基板1に達してしまうと、バルク基板1内では基底面転位がランダムな方向に伝播しているため、本実施例4の方法によっては、スクリーニングすることも救済することもできないので、避けなければならない。したがって、フィールドストッピング層2を厚めにして、作製余裕を確保するのが好ましいが、同時に、トレンチ10の深さの制御性も高いほうが好ましい。
トレンチ10は、一般にドライエッチングにより形成されるが、その際の深さの制御性を高めるためには、シリコンにおけるトレンチ形成工程と同様に、トレンチ10の幅の制御性を高める必要がある。市販のSiCバルク基板は、基板に大きく不均一な反りがあり、基板面内での凹凸は最大10〜30μm以上にも達する。ステッパーの1ショット内に限っても、数μmの凹凸が存在する。したがって、ステッパーのように焦点深度の浅い露光方法では、あまり微細な幅、たとえば1μm以下、を制御性よく形成することができない。この観点からは、焦点深度の深い電子線直接露光がトレンチ形成用レジストパターンを形成するための露光装置として適している。形成したレジストマスクを用いてSiO2膜をパターニングし、次に、パターニングしたSiO2膜をマスクにしてSiCウエハをドライエッチングしてトレンチ10を形成する。
もし、図9のように埋め込みp型領域8を設けるのであれば、トレンチ側壁を適切に保護した後、イオン注入と活性化アニールを行う。このとき、トレンチ内表面性状を改善するための熱処理を行うと、トレンチ内面に尖角形状部がなくなると同時に、活性化アニールも行われるので、好ましい。この処理に代えて、図10のようにフィールドストッピング層2に届くトレンチ10を形成する場合は、たとえば、埋め込み絶縁膜15を形成する。この場合も、埋め込み絶縁膜15を形成する前に、主としてフォトリソグラフィー工程に起因して生じるトレンチ10側壁の凹凸を除去する意味で、前記トレンチ内表面性状の改善熱処理を行っておくのが好ましい。
続いて、シリコンプロセスと同様に、図8に示すように、ゲート絶縁膜11、ゲート電極12を形成する。ここで、前述のように、イオン注入によって新たな転位の発生を避けるためには、図8に示すように、ゲート電極12の上端は、ソースコンタクト領域6の下端よりも上にならないようにすべきである。以後は、前記実施例1および実施例2と同様に、層間絶縁膜21、ソース電極23、ドレイン電極22および図示しないゲートパッドを形成して、半導体装置を完成させる。
図9または図10のいずれのトレンチゲート構造の場合でも、完成した半導体装置は、短時間であれば、多少ヒロックを検出して救済せずにそのままとした場合であっても、動作するものが多数見られた。しかし、信頼性を見るための加速試験を行うと、ヒロックを検出した非救済の半導体装置の多くは、ヒロックを1つも検出しなかった半導体装置に比べて、明らかに短時間でトレンチ10底部の絶縁膜(図10の場合は埋め込み絶縁膜15)が破壊してしまい、実用にならなかった。
図10の構造の場合において、救済工程を施した半導体装置の歩留まりについて説明する。活性領域の有効面積1mm2のトレンチ型MOSFET半導体装置においては、たとえば、トレンチの長さ(すなわち、オフ方向の半導体装置のサイズ)を1000μm、これに垂直方向の長さを1000μmとすることができる。しかし、このような半導体装置外形のデザインでは、1半導体装置中の全トレンチの最大20%を救済することにしても、現状のSiCウエハの品質(転位密度品質)レベルでは、ヒロックの検出頻度という意味での歩留まり(良品率)は、ほぼ0%であった。これに対して、トレンチの長さを400μm、これに垂直方向の長さを2500μmとすると、歩留まりは約15%に向上した。さらに、トレンチの長さを250μm、これに垂直方向の長さを4000μmとすると、歩留まりは約90%に向上した。このように、トレンチの長さ、すなわち、オフ方向の半導体装置サイズよりも、これに垂直な長さが大きい半導体装置設計のほうが、歩留まりの点で有利である。
以上の工程のうち、従来のトレンチ型MOSFET製造工程と異なるのは、ボディーコンタクト7のためのイオン注入用SiO2膜マスクを形成する工程が、単にSiO2膜を堆積するのではなく、多結晶シリコンを堆積した後にパーティクル検査装置を用いて検査し、ヒロックの位置を検出してから、熱酸化するという工程に置き換わったのみである。すなわち、本実施例4によれば、SiCウエハ中の転位を、ウエハプロセス中において、簡便に(ヒロックという形で)検出することができるとともに、スクリーニングに役立てることができる。また、トレンチ形成時のフォトリソグラフィーをステッパーではなく電子線露光等で行うことにすれば、スクリーニングに代えて、著しく工程数を増大させることなく、救済工程を施すことができるので、転位密度が高い場合でも、大面積の半導体装置を高い歩留まりで得ることができる。
以上、説明した実施例は、あくまで例示であり、本発明の適用範囲は、以上説明した実施例に限定されない。とりわけ、前述の各実施例1〜4では主として転位によってゲート絶縁膜の信頼性が問題となるような半導体装置を取り上げているが、転位のために、pn接合やショットキー接合のリーク電流が増加することが明確となった場合、本発明を適用することによって、耐圧不良品をスクリーニングすることができるのは、当業者にとって明らかである。pnダイオードやショットキーダイオードは、多結晶シリコンを構成要素として有しないが、前述の実施例3および4で述べたように、ヒロック検査の済んだ多結晶シリコンをそのまま、もしくはたとえば酸化することにより、たとえばマスク材料として用いることができるので、やはり、工程数を著しく増加させることなく、本発明の利点を享受できる。