基板のアレイ検査を行うには、パネル上に形成された各ピクセルについて荷電ビーム走査によって検出信号を検出する必要がある。従来、各ピクセルにおいて、前記したように例えば4×4点あるいは4×3点等の複数のサンプリング点について検出信号を取得している。図13に示す例では、一ピクセル当たり16点のサンプリング点の検出信号を全ピクセルについて検出する。
このサンプリング点の個数は、検査対象であるパネルのサイズが大きくなるに応じて増加するため、一つの基板を検査に要する時間が長時間化する。一方、基板のアレイ検査では、検査に要する時間を短縮することが求められている。そのため、基板のアレイ検査において、欠陥検出の検出精度を下げることなく検査速度を高めることが求められている。
電子線走査で得られる電子線画像を用いて半導体ウエハの欠陥を検出する際に、走査線の本数を1/nで間引き走査することによって検査時間を短縮する技術が知られている(特許文献3)。
しかしながら、特許文献3では、間引き走査で得られた電子線画像によってウエハの欠陥分布を求め、この欠陥分布に基づいて検査すべきチップをサンプリングし、さらに、サンプリングしたチップについて詳細な検査を行っている。そのため、間引き走査に要する時間は短縮されるものの、検出精度を向上させるには詳細な検査が必要であるため、欠陥検出に用いる信号が取得されるまでの時間が長くなってトータルな検査時間の短縮は望めないという問題がある。
そこで、本発明は上記課題を解決して、欠陥の検出精度を下げることなく、欠陥検出に用いる信号を取得されるまでの時間を短縮することを目的とする。
本願発明は、一ピクセル当たりに照射する荷電ビームの点数を減少させることによってサンプリングに要する時間を短縮すると共にサンプリング点を補間し、サンプリング点と補間点から検出強度を算出することによって荷電ビームの照射点数の減少による欠陥の検出精度の低下を防ぐものである。
本願発明のTFTアレイ検査方法は、TFT基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、このパネル上に荷電ビームを照射して走査し、荷電ビーム走査で検出される検出信号に基づいてTFT基板のアレイを検査するものであり、パネルに照射して走査する荷電ビームは、例えば、電子ビームやイオンビームを用いることができる。
荷電ビームをピクセルに照射すると、ピクセルから微粒子が放出される。例えば、電子ビームを照射すると二次電子が放出される。放出される二次電子の信号強度はピクセルの電位に依存するため、ピクセルに検査信号を印加して所定電圧とすることによって、ピクセルに対応するアレイの欠陥を検出することができる。
本願発明は、検出工程、補間工程、抽出工程、および信号強度算出工程を含み、サンプリングによる検出工程の後に行う補間工程と抽出工程との順序を入れ替えた2つの態様とすることができる。
第1の態様は、検出工程の後に補間工程を行い、その後に抽出工程を行う態様である。第1の態様によれば、補間工程の後に得られるピクセル上のデータ数は、検出工程で検出したサンプリング点の点数と、補間工程で得られる補間点の点数とを合計した点数となる。この合計した点数が所定の検出精度を得るために要するデータ数に相当する点数である場合には、実際に荷電ビームを照射して得られるサンプリング点の点数は、全点数を荷電ビームの照射で取得するときよりも少なくすることができ、荷電ビームの走査に要する時間を短縮することができる。本願発明の走査は、サンプリング点の間引き走査に相当する。
引用文献3には、走査線について間引き走査を行う技術が開示されているが、本願発明の走査は走査線を間引くことなく、走査線上においてサンプリングを行う点数を間引くものである。走査線を間引いた場合には、間引いた走査線上のデータは全く取得されないが、本願発明のサンプリング点の間引き走査では、走査線上のデータを間引いた状態で取得することができる。
また、補間工程の後に得られるピクセル上のデータ数は、補間点の点数分だけ、検出工程で検出したサンプリング点の点数よりも増えるため、少ないサンプリング点数によって所望の欠陥検出精度を得るに必要なデータ点数を得られる態様と見なすこともできる。
本願発明の第1の態様は、荷電ビームの照射によってパネル上のサンプリング点の信号強度を検出する検出工程と、検出工程で検出したサンプリング点の信号強度を用いて、サンプリング点の近傍の補間点の信号強度を補間演算により算出する補間工程と、パネルのピクセルに対してサンプリング点および補間点を対応付け、各ピクセルに対応付けられたサンプリング点および補間点の中から欠陥検出に用いるサンプリング点および補間点を抽出する抽出工程と、抽出工程で抽出したサンプリング点の信号強度および補間点の信号強度を用いて各ピクセルについて一つの信号強度を算出する信号強度算出工程とを備える。
信号強度算出工程で算出した各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、この欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出する。
検出工程は、荷電ビームの照射点から放出される検出信号を検出してその検出信号の信号強度を検出する工程である。荷電ビームとして電子線を用いる場合には、二次電子検出器によって二次電子の検出信号を検出し、信号強度を測定する。
本願発明の第1の態様の補間工程は、サンプリング点の近傍に補間点を設定し、この補間点の信号強度を検出工程で検出したサンプリング点の信号強度を用いて算出する工程である。補間点は、サンプリング点の近傍において任意の位置に任意の個数だけ定めることができる。例えば、隣接するサンプリング点間の中間位置に1点の補間点を設ける他、隣接するサンプリング点間に、等間隔で2点の補間点を設けることができる。
この補間工程において、サンプリング点の近傍に定めた補間点について、補間点の周囲に存在するサンプリング点の信号強度の平均値、又は中間値を算出することによって補間点の信号強度を算出する。例えば、サンプリング点が一点おきに配列されている場合には、4つのサンプリング点から等距離に共通の補間点が設定され、この補間点の周囲の4つのサンプリング点の信号強度を用いて、その平均値あるいは中間値(メディアン値)を算出し、算出した値を補間点の信号強度とする。
補間工程によって、パネル上のサンプリング点の信号強度に加えて補間点の信号強度が得られる。
検出工程において、検出されるサンプリング点は、検出パネル上に設定するピクセルとの位置関係が不明であり、サンプリング点の検出信号のみでは何れのピクセルに対応するかが不明である。また、一般に、ピクセル内で検出されるサンプリング点の検出信号は、隣接するピクセルに近いサンプリング点は隣接するピクセルの影響を受けやすく、検出信号の精度が低い傾向にある。
本願発明の第1の態様の抽出工程は、パネルのピクセルに対してサンプリング点および補間点を対応付けすることによって、各ピクセル内に含まれるサンプリング点および補間点を求める。この対応付けは、例えば、ピクセルに所定の電圧パターンを形成し、隣接する点間の信号強度を検出し、信号強度の差異によってピクセル間の境界を求め、この境界によってピクセルに対するサンプリングおよび補間点の対応関係を求める。
また、本願発明の第1の態様の抽出工程は、各ピクセルに対応付けられたサンプリング点および補間点の中から、隣接するピクセルからの影響が少ないサンプリング点および補間点を抽出する。第1の態様の抽出工程の一形態は、ピクセルに対応付けられたサンプリング点および補間点の内から、そのピクセル内の中心の近傍にあるサンプリング点および補間点を抽出する。また、第1の態様の抽出工程の他の形態は、ピクセル内のサンプリング点および補間点について、各点のピクセル内の位置と信号強度との積算平均値を求め、求めた積算平均値からそのピクセルの重心を算出し、ピクセルに対応付けられたサンプリング点および補間点の内から、ピクセル内の重心の近傍にあるサンプリング点および補間点を抽出する。
この第1の態様の抽出工程によって、ピクセルに対応するサンプリング点および補間点を求めることができ、さらに、各ピクセル内のサンプリング点および補間点から隣接するピクセルの影響が少ない点を抽出することができる。
第2の態様は、検出工程の後に抽出工程を行い、その後に補間工程を行う態様である。第2の態様によれば、検出工程の後、はじめに抽出工程によって検出工程で検出したサンプリング点について各ピクセルに対応するサンプリング点を求め、このサンプリング点の中から隣接するピクセルの影響が少ないサンプリング点を抽出する。その後、補間工程によって抽出したサンプリング点を用いて補間点を算出する。
本願発明の第2の態様の抽出工程で抽出したサンプリング点の点数と、補間工程で得られる補間点の点数とを合計した点数となる。この合計した点数が所定の検出精度を得るために要するデータ数に相当する点数である場合には、実際に荷電ビームを照射して得られるサンプリング点の点数は、全点数を荷電ビームの照射で取得するときよりも少なくすることができ、荷電ビームの走査に要する時間を短縮することができる。
本願発明の第2の態様の走査においても、サンプリング点の間引き走査に相当する。前記したと同様に、引用文献3には、走査線について間引き走査を行う技術が開示されているが、本願発明の走査は走査線を間引くことなく、走査線上においてサンプリングを行う点数を間引くものである。走査線を間引いた場合には、間引いた走査線上のデータは全く取得されないが、本願発明のサンプリング点の間引き走査では、走査線上のデータを間引いた状態で取得することができる。
また、本願発明の第2の態様の補間工程の後に得られるピクセル上のデータ数は、補間点の点数分だけ、検出工程で検出したサンプリング点の点数よりも増えるため、少ないサンプリング点数によって所望の欠陥検出精度を得るに必要なデータ点数を得られる態様と見なすこともできる。
本願発明の第2の態様は、荷電ビームの照射によってパネル上のサンプリング点の信号強度を検出する検出工程と、パネルのピクセルとサンプリング点とを対応付けし、各ピクセルに対応付けられたサンプリング点の中から欠陥検出に用いるサンプリング点を抽出する抽出工程と、抽出工程で抽出したサンプリング点の信号強度を用いて、抽出したサンプリング点の近傍の補間点の信号強度を補間演算により算出する補間工程と、抽出工程で抽出したサンプリング点の信号強度および補間工程で算出した補間点の信号強度を用いて各ピクセルについて一つの信号強度を算出する信号強度算出工程とを備える。
信号強度算出工程で算出した各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、この欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出する。
検出工程は、荷電ビームの照射点から放出される検出信号を検出してその検出信号の信号強度を検出する工程である。荷電ビームとして電子線を用いる場合には、二次電子検出器によって二次電子の検出信号を検出し、信号強度を測定する。
本願発明の第2の態様の抽出工程は、第1の態様と同様に、パネルのピクセルに対してサンプリング点を対応付けすることによって、各ピクセル内に含まれるサンプリング点を求める。この対応付けは、例えば、ピクセルに所定の電圧パターンを形成し、隣接する点間の信号強度を検出し、信号強度の差異によってピクセル間の境界を求め、この境界によってピクセルに対するサンプリングの対応関係を求める。
また、本願発明の第2の態様の抽出工程は、各ピクセルに対応付けられたサンプリング点の中から、隣接するピクセルからの影響が少ないサンプリング点を抽出する。抽出工程の一形態は、ピクセルに対応付けられたサンプリング点の内から、そのピクセル内の中心の近傍にあるサンプリング点を抽出する。また、抽出工程の他の形態は、ピクセル内のサンプリング点について、各点のピクセル内の位置と信号強度との積算平均値を求め、求めた積算平均値からそのピクセルの重心を算出し、ピクセルに対応付けられたサンプリング点の内から、ピクセル内の重心の近傍にあるサンプリング点を抽出する。
この抽出工程によって、ピクセルに対応するサンプリング点を求めることができ、さらに、各ピクセル内のサンプリング点から隣接するピクセルの影響が少ない点を抽出することができる。
本願発明の第2の態様の補間工程は、抽出工程で抽出したサンプリング点の近傍に補間点を設定し、この補間点の信号強度を抽出工程で抽出したサンプリング点の信号強度を用いて算出する工程である。補間点は、サンプリング点の近傍において任意の位置に任意の個数だけ定めることができる。
この第2の態様の補間工程において、サンプリング点の近傍に定めた補間点について、補間点の周囲に存在するサンプリング点の信号強度の平均値、又は中間値を算出することによって補間点の信号強度を算出する。例えば、サンプリング点が一点おきに配列されている場合には、4つのサンプリング点から等距離に共通の補間点が設定され、この補間点の周囲の4つのサンプリング点の信号強度を用いて、その平均値あるいは中間値(メディアン値)を算出し、算出した値を補間点の信号強度とする。
補間工程によって、パネル上のサンプリング点の信号強度に加えて補間点の信号強度が得られる。
本願発明の走査において、第1の走査形態は、荷電ビームをパネル上の各サンプリング点に順に照射する荷電ビーム走査において、各走査線のサンプリング点を、走査方向に所定ピッチで配列し、走査方向と直交する方向に一走査線おきに縦列配置し、各走査線に沿って順次走査する形態であり、第2の走査形態は、荷電ビームをパネル上の各サンプリング点に順に照射する荷電ビーム走査において、各走査線のサンプリング点を、走査方向に所定ピッチで配列し、走査方向と直交する方向に一走査線おきに縦列配置し、隣接する走査線間を順次交互に走査する形態である。
サンプリング点の配置密度が同じである場合には、第2の走査形態は第1の走査態様と比較して、次点のサンプリング点までの移動距離を短縮することができるため、走査時間を短縮することができ、また、走査速度が増すことによる照射点の形状の歪みを低減させることができる。
本発明によれば、欠陥の検出精度を下げることなく、欠陥検出に用いる信号を取得されるまでの時間を短縮することができる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。以下では、図1〜3を用いて本発明のTFTアレイ検査の第1の態様を説明し、図4,5を用いて本発明のTFTアレイ検査の第2の態様を説明し、図6を用いて本発明による走査画像例を示し、図7を用いて本発明の走査画像の信号強度例を説明し、図8を用いて本発明のTFTアレイ検査による装置構成例を説明し、図9〜11を基づいて本願発明のサンプリング例を説明し、図12を用いて本願発明の走査例を説明する。
はじめに、図1の本発明の第1の態様の工程を説明するフローチャート、図2の本発明の第1の態様の工程を説明する説明図、および図3の信号強度の算出を説明する図を用いて本発明のTFTアレイ検査の第1の態様について説明する。
本願発明の第1の態様は、検出工程の後に補間工程を行い、その後に抽出工程を行う態様である。
TFT基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、このパネル上に荷電ビームを照射して走査し、荷電ビームの照射点から放出される検出信号を検出し、検出信号の信号強度を検出する。荷電ビームとして電子線を用いた場合には、二次電子の検出信号が検出される。ここで、荷電ビームの照射点は、検出信号を検出するサンプリング点に対応することになる。
荷電ビームの走査において、荷電ビームを所定間隔でパネル上の照射点に照射する。図2(a)は荷電ビームの走査例を示し、丸印は荷電ビームを照射する照射点を表し、×印は荷電ビームを照射しない非照射点を表している。x方向(図の横方向)の走査を走査線とすると、隣接する走査線の各照射点の位置は、走査方向と直交するy方向(図の縦方向)で互いにずれた位置としている。この走査により、パネル上において、照射点(丸印で表した位置)および非照射点(×印で表した位置)の配置ピッチに対して2倍の配置ピッチで照射点を配置することになる。この走査は間引き走査に相当するとも云え、照射点と非照射点の全点について荷電ビームを照射する場合と比較して1/2の照射回数で済むため、検出信号を取得するためのサンプリング時間を約1/2に短縮することができる(S1)。
サンプリング点の検出信号の信号強度をサンプリング点の位置情報と共に記録する(S2)。この時点で得られている信号強度はサンプリング点のみの信号強度であり、図2(a)中の非照射点で表された位置の信号強度は含まれていない。そこで、サンプリング点の信号強度を用いて補間処理を行って、補間点の信号強度を算出する。補間点はサンプリング点近傍に定める点であり、位置および個数は任意に定めることができる。例えば、図2(a)において、走査方向あるいは走査方向と直交する方向で隣接する2つのサンプリング点の中間位置とすることができる。図2(b)は、隣接する2つのサンプリング点の中間位置を補間点とした例を示し、補間点は破線で示している。
補間点の信号強度は、補間点の近傍にあるサンプリング点の信号強度から求めることができる。例えば、補間点の近傍にある4つのサンプリング点の信号強度の平均値、あるいは中間値(メディアン値)によって算出することができる。図2(a),(b)の例では、補間点の近傍にある4つのサンプリング点は、補間点の左右および上下にあるサンプリング点を採用することができる(S3)。
走査によって得られるサンプリング点および補間点の各位置は、パネル上に形成されたピクセルとの位置関係が不明であり、このままではピクセルに対応するサンプリング点および補間点を特定することができず、アレイの欠陥検出を行うことができない。
そこで、パネルのピクセルに対してサンプリング点および補間点を対応付けることによって、各ピクセル内に含まれるサンプリング点および補間点を求める。この対応付けは、例えば、ピクセルに所定の電圧パターンを形成し、隣接する点間の信号強度を検出し、信号強度の差異によってピクセル間の境界を求め、この境界によってピクセルに対するサンプリング点および補間点の対応関係を求める。
図2(c)はピクセルに対するサンプリング点および補間点の対応付けを説明する図である。図2(c)において、例えば、ピクセルに対して格子状に異なる電圧が発生するような検査信号パターンを印加すると、横方向、縦方向で互いに隣接するピクセルの電圧は異なる。そこで、横方向で隣接するサンプリング点および補間点の信号強度を比較し、この信号強度の差異があらかじめ定めておいたしきい値よりも大きい場合には、その隣接するサンプリング点および補間点の間をピクセルの横方向の境界として定めることができる。また、縦方向で隣接するサンプリング点および補間点の信号強度を比較し、この信号強度の差異があらかじめ定めておいたしきい値よりも大きい場合には、その隣接するサンプリング点および補間点の間をピクセルの縦方向の境界として定めることができる。この境界によってピクセルを識別し(S4)、各ピクセルに対するサンプリング点および補間点を抽出する(S5)。
一般に、ピクセル内で検出されるサンプリング点の検出信号は、隣接するピクセルに近いサンプリング点は隣接するピクセルの影響を受けやすく、検出信号の精度が低くい傾向にある。そこで、本発明では、ピクセル内にあるサンプリング点および補間点について、隣接するピクセルからの影響が少ないサンプリング点および補間点を抽出のすることによって、隣接するピクセルの影響を低減する。
図2(e)はピクセル内から抽出したサンプリング点および補間点の例を示し、ピクセル内において矩形は抽出範囲を示し、この矩形内のサンプリング点および補間点は抽出された抽出点を示している。図2(d)は抽出範囲を定める位置(後述する中心あるいは重心)を示している。
ピクセル内から欠陥検出に用いるサンプリング点および補間点を抽出する一形態は、ピクセルに対応付けられたサンプリング点および補間点の内から、そのピクセル内の中心の近傍にあるサンプリング点および補間点を抽出する。ピクセルの中心は、ピクセル内におけるサンプリング点および補間点の配置状態から求めることができる。
図3(a)は、ピクセルの中心の近傍にあるサンプリング点および補間点を抽出する例を示している。ここでは、ピクセル内にある全16点の信号点から中心(十字の印)の近傍にある4点の信号点を抽出し、この4点の信号点の信号強度を用いて欠陥検出を行うための信号強度を算出する。
ピクセル内から欠陥検出に用いるサンプリング点および補間点を抽出する他の形態は、ピクセルに対応付けられたサンプリング点および補間点の内から、そのピクセル内の重心の近傍にあるサンプリング点および補間点を抽出する。ピクセルの重心は、ピクセル内のサンプリング点および補間点について、各点のピクセル内の位置と信号強度との積算平均値を求め、求めた積算平均値から算出することができる。
図3(b)は、ピクセルの重心の近傍にあるサンプリング点および補間点を抽出する例を示している。ここでは、ピクセル内にある全16点の信号点から重心(十字の印)の近傍にある4点の信号点を抽出し、この4点の信号点の信号強度を用いて欠陥検出を行うための信号強度を算出する。抽出工程によって、ピクセルに対応するサンプリング点および補間点を求めることができ、各ピクセル内のサンプリング点および補間点から隣接するピクセルの影響が少ない点を抽出することができる(S6,S7)。
次に、抽出工程で抽出したサンプリング点の信号強度および補間点の信号強度を用いて各ピクセルについて一つの信号強度(図2(f))を算出し (S8)、算出した各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、この欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出する(S9)。なお、上記したS3は補間工程に対応し、S4〜S7は抽出工程に対応している。
次に、図4の本発明の第2の態様の工程を説明するフローチャート、図5の本発明の第2の態様の工程を説明する説明図を用いて本発明のTFTアレイ検査の第2の態様について説明する。
本願発明の第2の態様は、検出工程の後に抽出工程を行い、その後に補間工程を行う態様であり、図1のフローチャートにおいて、S2の補間工程とS3〜S7の抽出工程の順序が入れ替わって行われる。図4のフローチャートにおいてS17で補間工程を行い、S13〜S16で抽出工程を行う。
TFT基板のパネルに所定電圧の検査信号を印加してアレイを駆動し、このパネル上に荷電ビームを照射して走査し、荷電ビームの照射点から放出される検出信号を検出し、検出信号の信号強度を検出する。荷電ビームとして電子線を用いた場合には、二次電子の検出信号が検出される。荷電ビームの照射点はサンプリング点に対応している。
荷電ビームの走査において、荷電ビームを所定間隔でパネル上の照射点に照射する。図5(a)は荷電ビームの走査例を示し、丸印は荷電ビームを照射する照射点を表し、×印は荷電ビームを照射しない非照射点を表している。x方向(図の横方向)の走査を走査線とすると、隣接する走査線の各照射点の位置は、走査方向と直交するy方向(図の縦方向)で互いにずれた位置としている。この走査により、パネル上において、照射点(丸印で表した位置)および非照射点(×印で表した位置)の配置ピッチに対して2倍の配置ピッチで照射点を配置することになる。この走査は間引き走査に相当するとも云え、照射点と非照射点の全点について荷電ビームを照射する場合と比較して1/2の照射回数で済むため、検出信号を取得するためのサンプリング時間を約1/2に短縮することができる(S11)。
サンプリング点の検出信号の信号強度をサンプリング点の位置情報と共に記録する(S12)。
走査によって得られるサンプリングの各位置は、パネル上に形成されたピクセルとの位置関係が不明であり、このままではピクセルに対応するサンプリング点を特定することができず、アレイの欠陥検出を行うことができない。
そこで、パネルのピクセルに対してサンプリング点を対応付けることによって、各ピクセル内に含まれるサンプリング点を求める。この対応付けは、例えば、ピクセルに所定の電圧パターンを形成し、隣接する点間の信号強度を検出し、信号強度の差異によってピクセル間の境界を求め、この境界によってピクセルに対するサンプリング点の対応関係を求める。
図5(c)はピクセルに対するサンプリング点の対応付けを説明する図である。図5(c)において、例えば、ピクセルに対して格子状に異なる電圧が発生するような検査信号パターンを印加すると、隣接するピクセルの電圧は異なる。そこで、サンプリング点および近傍のサンプリング点の信号強度を比較し、この信号強度の差異があらかじめ定めておいたしきい値よりも大きい近傍のサンプリング点がある場合には、その信号強度が異なるサンプリング点間をピクセルの境界として定めることができる。この境界によってピクセルを識別し(S13)、各ピクセルに対するサンプリング点を抽出する(S14)。
一般に、ピクセル内で検出されるサンプリング点の検出信号は、隣接するピクセルに近いサンプリング点は隣接するピクセルの影響を受けやすく、検出信号の精度が低くい傾向にある。そこで、本発明では、ピクセル内にあるサンプリング点について、隣接するピクセルからの影響が少ないサンプリング点を抽出することによって、隣接するピクセルの影響を低減する。
図5(e)はピクセル内から抽出したサンプリング点の例を示し、ピクセル内において矩形は抽出範囲を示し、この矩形内のサンプリング点は抽出された抽出点を示している。図5(d)は抽出範囲を定める位置(後述する中心あるいは重心)を示している。
ピクセル内から欠陥検出に用いるサンプリング点を抽出する形態として、前記したと同様に、ピクセルに対応付けられたサンプリング点の内から、そのピクセル内の中心又は重心の近傍にあるサンプリング点を抽出する。ピクセルの中心は、ピクセル内におけるサンプリング点の配置状態から求めることができる。ピクセル内の中心又は重心は、図3を用いて説明した方法と同様に行うことができる。
抽出工程によって、ピクセルに対応するサンプリング点を求めることができ、各ピクセル内のサンプリング点から隣接するピクセルの影響が少ない点を抽出することができる(S15,S16)。
この時点で得られている信号強度はサンプリング点のみの信号強度であり、図5(e)中の非照射点で表された位置の信号強度は含まれていない。そこで、サンプリング点の信号強度を用いて補間処理を行って、補間点の信号強度を算出する。補間点は抽出範囲内に設定し、その個数および位置は任意に定めることができる。
補間点の信号強度は、補間点の近傍にあるサンプリング点の信号強度から求めることができる。例えば、補間点の近傍にある4つのサンプリング点の信号強度の平均値、あるいは中間値(メディアン値)によって算出することができる。図5(e),(f)の例では、補間点の近傍にある4つのサンプリング点は、補間点の左右および上下にあるサンプリング点を採用することができる(S17)。
次に、抽出工程で抽出したサンプリング点の信号強度および補間点の信号強度を用いて各ピクセルについて一つの信号強度(図5(g))を算出し (S18)、算出した各ピクセルの信号強度に基づいてピクセルの欠陥検出を行い、この欠陥検出で検出された欠陥ピクセルに対応するアレイを欠陥アレイとして検出する(S19)。
図6は走査によって得られる検出信号に基づいて形成される画像例である。この画像は、パネルに印加される検査信号パターンに対応した画像を示している。
図6(b)は、図2(a)あるいは図5(a)に示したように、一走査線上の照射点と隣接する走査線上の照射点とが千鳥状配置となるように走査したときに得られる画像例(ここでは低密度サンプリング画像という)である。一方、図6(a)は、図6(b)の千鳥状配置において、照射を行っていない非照射点についても照射を行って走査したときに得られる画像例(ここでは高密度走査画像という)である。
図6(a)の高密度走査画像例は図6(b)の低密度走査画像例と比較して、照射点を2倍に増やした走査による画像であるということができ、逆に、図6(b)の低密度走査画像例は図6(a)の高密度走査画像例と比較して、照射点を1/2に間引いた走査による画像であるということができる。図6(c)の画像例は、図6(b)の低密度走査画像例における検出信号を補間処理および抽出処理を行って得られる検出信号に基づいて形成した画像例である。図6(c)の画像は、図6(a)の高密度走査画像と比較するとサンプリングの点数は1/2であっても、欠陥検出に十分なデータであると云える。
また、図7は検出信号の信号強度分布を示す図であり、横軸に検出信号の信号強度を示し、縦軸の個数を示している。また、以下の表1は、平均強度および標準偏差を示している。
信号強度が低い画像部分(画像中の黒部分に相当)では、高密度走査画像と低密度走査画像の平均強度および標準偏差共にほぼ同じである。また、信号強度が高い画像部分(画像中の白部分に相当)では、高密度走査画像と低密度走査画像の平均強度はほぼ同じであり、低密度走査画像の標準偏差に高密度走査画像の標準偏差よりも低いことを示している。
図7および表1の比較から、本発明において、サンプリング点数を1/2とし、補間によって信号点数を増加させる処理を行っても、欠陥検出の検出精度に対する影響は無視できるものと云える。
なお、図6,7中の低密度走査画像は、高密度走査画像のデータからソフトウエア上で選択したデータに基づくものである。
図8は、本発明のTFTアレイ検査を行う検査装置に一構成例を説明するための図である。図8に示す構成例では、液晶基板等のTFT基板に電子線を照射し、TFT基板から放出される二次電子を検出し、二次電子の検出信号から信号画像を形成し、この信号画像に基づいて欠陥検出を行う構成例を示している。本発明は、検査対象の基板は液晶基板に限らず、また、基板走査は電子線に限らずイオンビーム等の荷電ビームとすることができる。また、検出信号は照射する荷電ビームに依存し、二次電子に限られるものではない。
図8において、TFTアレイ検査装置1は、液晶基板等のTFT基板100を載置しXY方向に搬送自在とするステージ2と、ステージ2の上方位置にステージ2から離して配置された電子銃3と、TFT基板100のパネル101のピクセル(図示していない)から放出される二次電子を検出する検出器4とを備える。電子銃3および検出器4は複数の組み設けることができる。
ステージ駆動制御部6はステージ2の駆動を制御し、電子線走査制御部5は電子銃3が照射する電子線の照射方向を制御して、TFT基板100上の電子線の走査を制御する。信号処理部10は、検出器4で検出して二次電子の検出信号を信号処理して信号画像を形成し、得られた信号画像の信号強度や検出位置を欠陥検出部11に送る。欠陥検出部11は、信号処理部10から送られた信号画像の信号強度に基づいてピクセルの欠陥を検出し、検出位置によって欠陥ピクセルおよび対応する欠陥アレイを検出する。
なお、ピクセルおよびアレイはTFT基板のパネルに形成され、各ピクセルはアレイに対して電圧を印加することによって駆動されるため、ピクセルの欠陥検出は、そのピクセルに対するアレイ検査に対応している。
電子線走査制御部5,ステージ駆動制御部6,信号処理部10、欠陥検出部11の各部の駆動動作は制御部7によって制御される。また、制御部7は、TFTアレイ検査装置1の全体の動作を含む制御を行う機能を有し、これらの制御を行うCPUおよびCPUを制御するプログラム記憶するメモリ等によって構成することができる。
ステージ2は、TFT基板100を載置するとともに、ステージ駆動制御部6によってX軸方向およびY軸方向に移動自在であり、また、電子銃Gから照射される電子線は電子線走査制御部5によってX軸方向あるいはY軸方向に振らせることができる。ステージ駆動制御部6および電子線走査制御部5は単独あるいは協働動作によって、電子線をTFT基板100上で走査させ、TFT基板100のパネル101の各ピクセルに照射させることができる。
次に、図9〜11を基づいて本願発明のサンプリング例を説明する。なお、各図において、丸印は荷電ビームを照射する照射点であってサンプリング点を対応し、×印は荷電ビームを照射しない非照射点である。
図9(a)、(b)に示す例では、走査方向(図中の横方向)に対して、所定ピッチで2回の照射と1回の非照射とを繰り替えすと共に、隣接する走査線間において照射点の位置をずらして、走査方向と直交する方向で非照射点が連続しないようにした例である。なお、図9(a),(b)は、ピクセルに対するサンプリング点に位置関係が異なる場合を示している。この例によれば、一ピクセル内の16点に対してサンプリング点を11点とし、5点分の照射を省くことができる。
図9(a),(b)において、補間点(図中の×印で示す位置)の補間は、図中の破線で囲まれた周囲の4点のサンプリング点の信号強度を用いて算出することができる。
図10(a),(b),(c)に示す例では、走査方向(図中の横方向)に対して、所定ピッチで2回の照射と2回の非照射とを繰り替えすと共に、隣接する走査線間において照射点の位置をずらして、走査方向と直交する方向で非照射点が連続しないようにした例である。なお、図10(a),(b),(c)は、ピクセルに対するサンプリング点に位置関係が異なる場合を示している。
図10(a),(b),(c)において、補間点(図中の×印で示す位置)の補間は、図中の破線で囲まれた上下の2点のサンプリング点の信号強度を用いて算出することができる。この例によれば、一ピクセル内の16点に対してサンプリング点を8点とし、8点分の照射を省くことができる。
図11(a),(b),(c)に示す例では、走査方向(図中の横方向)に対して、所定ピッチで2回の照射と2回の非照射とを繰り替えした別の例である。なお、図11(a),(b),(c)は、ピクセルに対するサンプリング点に位置関係が異なる場合を示している。
図11(a),(b),(c)において、補間点(図中の×印で示す位置)の補間は、図中の破線で囲まれた斜め方向の2点のサンプリング点の信号強度を用いて算出することができる。この例によれば、一ピクセル内の16点に対してサンプリング点を8点とし、8点分の照射を省くことができる。
次に、図12を用いて本願発明の走査例を説明する。なお、各図において、丸印は荷電ビームを照射する照射点であってサンプリング点を対応し、×印は荷電ビームを照射しない非照射点である。
図12(a)に示す走査例は、荷電ビームの照射をx軸方向(図中の横方向)に移動して行う走査例を示している。一走査線の走査が完了した後は、基板を載置するステージをy方向に移動するか、あるいは荷電ビームをy方向に偏向させることによって次の走査線の走査を行う。
また、図12(b)に示す走査例は、荷電ビームの照射をx軸方向(図中の横方向)と共にy軸方向(図中の縦方向)に移動してジグザグ状に走査する例を示している。
二本の走査線の走査が完了した後は、基板を載置するステージをy方向に移動するか、あるいは荷電ビームをy方向に偏向させることによって、次の二本に走査線の走査を行う。
この走査例によれば、隣接する二本の走査線を一回のx方向の移動で走査することができる。また、照射点間の距離は、図12(a)の走査例と比較して短くすることができる。そのため、図12(a)の走査例よりも、走査速度を高めることができる。