JP5539894B2 - 凹部を有する物品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも1つの凹部又は凸部を有する物品、及び該物品の製造方法に関する。
凹面又は凸面を備える構成要素を有する物品、又は多くの凹面若しくは凸面がその上に配列された物品は、様々な産業分野において使用され得る。いくつかの用途において、凹面又は凸面はレンズとして機能することができる。例えば、多くの凹面又は凸面がその上に配列されたシート状物品は、マイクロレンズのアレイ(即ち、マイクロレンズアレイ)などのレンズのアレイとして機能することが可能である。マイクロレンズアレイとして使用することができるこのようなシート状物品は、近年、大きな注目を集めている。マイクロレンズアレイは、例えば、ディスプレー、半導体レーザ、及び光ファイバなどの様々な光学用途に好適であり得る。
特開平11−142609は、圧痕法を用いたマイクロレンズアレイの製造方法を記載している。この製造方法によると、多くの圧痕がプレス機器を使用して成形型の表面に形成される。寸法の異なる球状ヘッドを有するプレス機器が、成形型の表面上に一定間隔で繰り返し押圧される。圧痕がその上に形成された成形型を使用して、アクリルポリマーのような光学等級のプラスチックを圧縮成形することにより、マイクロレンズアレイを製造することができる。しかしながら、この圧痕法を用いるマイクロレンズアレイの製造方法は、多くの圧痕を備えた成形型を形成するのに必要な仕事量が原因で、かなりの時間と費用を要する。
特開平05−134103は、電子ビームリソグラフィ法を用いたマイクロレンズアレイの製造方法を記載している。この製造方法では、電子ビームを使用して、多くのマイクロレンズを下地材の上に形成することができる。マイクロレンズアレイを製造するための圧痕法と同様に、この方法はかなりの時間と費用がかかる。例えば、各マイクロレンズが直径約100マイクロメートル(μm)を有する一万超〜数十万個のマイクロレンズを製造するのに、10日超〜数百日かかる。
特開昭62−260104は、レーザ化学蒸着(CVD)法を用いたマイクロレンズの製造方法を記載している。この製造方法では、混合ガス組成物を充填した容器の中に基材を設置し、基材をレーザビームで照射してガス組成物を分解し、基材の上にレンズ材料を蒸着させてマイクロレンズを形成する。レーザビームのエネルギー分布を変えて基材の上に蒸着する材料の量を変化させることで、所望の形状を得ることができる。しかしながら、レーザビームのエネルギー分布を微細に変化させて各マイクロレンズを個別に形成するので、この製造方法は遅くてコスト高である。
特開平05−134103は、格子フレームを調製し、格子フレーム内に樹脂を設置し、樹脂を溶解して、溶解した樹脂の表面張力を用いてマイクロレンズに好適な曲面を形成することを含む、マイクロレンズアレイの製造方法を記載している。上記電子ビームリソグラフィ法及びレーザ化学蒸着法と比べ、この製造方法を用いると、凸面を有する物品を比較的容易に製造することができるが、マイクロレンズを形成する前に、フォトレジストを用いて格子フレームを作製することが必要となる。格子フレームの作製方法は複雑であり得る。したがって、この方法を用いたマイクロレンズアレイの全製造工程は、時間がかかり、かつコスト高となり得る。また、この製造方法は、フォトレジスト材料又は樹脂材料を溶解する工程を含むので、使用できる好適な材料が限られる。好適な溶解特性に加えて好適な光学特性をも有する材料を見つけるのは困難であり得る。
C.Y.チャン(Chang)らは、Infrared Physics & Technology,48,pp.163〜173(2006)の中で、樹脂材料で作製されるマイクロレンズアレイの製造方法を報告している。この製造方法では、閉じたチャンバの中に配置された成形型の上に樹脂フィルムをセットし、次にこれを加熱する。高ガス圧を用いて樹脂フィルムを成形型の窪みの中に押し出し、それによって凸面を形成する。しかしながら、マイクロレンズを形成するために、硬化した樹脂フィルムを再加熱する必要があるので、形成することできる凸面の寸法及び形状は限られる。加えて、この方法には高温及び高ガス圧が伴うので、製造コストが高くなり得る。
少なくとも1つの凹部又は少なくとも1つの凸部をその表面に有する物品を製造するための、より簡単な方法が望まれている。より詳細には、少なくとも1つの微小凹部又は少なくとも1つの微小凸部をその表面に有する物品を製造するための、より簡単な方法が望まれている。
本発明は、少なくとも1つの凹部又は凸部を有する物品、及び該物品の製造方法に関する。より詳細には、少なくとも1つの凹部を有する物品は、少なくとも1個の気泡を含む成形面を使用して製造される。少なくとも1つの凹部を有するこの物品は、続いて、少なくとも1つの凸部を有する第2の物品を形成するための第2の成形型として使用される。
本発明の一態様は、少なくとも1つの凹部を含む表面を有する物品の製造方法である。本方法は、物品の表面に少なくとも1つの凹部を付与するために意図的に導入される少なくとも1つの気泡を使用することを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、パターンに配列された複数の気泡を使用して、物品の表面に凹部の配列パターンを付与する。
本発明の別の態様は、少なくとも1つの凸部を含む表面を有する第2の物品の製造方法である。本方法は、少なくとも1つの凹部を有する物品を第2の成形型として使用して、第2の物品の表面に少なくとも1つの凸部を付与することを含む。本方法のいくつかの実施形態では、第2の成形型として使用する第1の物品は凹部の配列パターンを有し、第2の物品は凸部の配列パターンを有する。
本発明の更に別の態様は、製造中に気泡が物品の表面に付与した凹部の配列パターンを含む表面を有する物品である。
本発明の更に別の態様は、凸部の配列パターンを含む表面を有する第2の物品である。凸部の配列パターンは、製造中に気泡が第2の成形型の表面に付与した凹部の配列パターンの反転である。
少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の一実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の一実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の一実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の一実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法の一実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法の一実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法の一実施形態を例示している概略断面図。 複数の窪みを有する成形型の一実施形態を例示している概略図。 複数の窪みを有する成形型の別の実施形態を例示している概略図。 少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 成形型の表面の窪みの中に存在する気体の泡(即ち、気泡は、成形型の表面と硬化性流体との間に位置している)の状態を示す概略断面図。 成形型の窪み内の気泡の位置を示す例示のダイアグラム。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法のその他の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法のその他の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法のその他の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法のその他の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凹部を有する第1の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 少なくとも1つの凸部を有する第2の物品の製造方法の別の実施形態を例示している概略断面図。 格子パターンに配列された複数の凹部を有する物品の一例を示す概略斜視図。 格子パターンに配列された複数の凸部を有する第2の物品の一例を示す走査電子顕微鏡写真。 格子パターンに配列された複数の窪みを有する成形型の例を示す概略平面図。 格子パターンに配列された複数の窪みを有する成形型の例を示す概略平面図。 格子パターンに配列された複数の凹部を有する物品の別の例を示す概略斜視図。 格子パターンに配列された複数の凸部を有する第2の物品の別の例を示す走査電子顕微鏡写真。 格子パターンに配列された複数の凹部を有する物品の更に別の例を示す概略斜視図。 格子パターンに配列された凸部を有する第2の物品の更に別の例を示す概略斜視図。
少なくとも1つの凹部又は少なくとも1つの凸部を有する物品が提供される。これら物品の製造方法もまた提供される。物品の少なくとも1つの凸部又は凹部は、例えば、レンズとして、又はレンズのアレイとしてとして使用することができる。いくつかの実施形態では、物品の少なくとも1つの凸部又は凹部は、マイクロレンズ又はマイクロレンズのアレイ(即ちマイクロレンズ(micrlens)アレイ)としてとして使用することができる。本明細書で使用するとき、用語「マイクロレンズ」は、直径などの寸法が約0.1マイクロメートル〜約1000マイクロメートルの範囲内であるレンズを指す。マイクロレンズは、物品の表面上の微小凸部又は微小凹部に相当する。本明細書で使用するとき、用語「微小凹部」及び「微小凸部」は、それぞれ、直径が約0.1マイクロメートル〜約1000マイクロメートルの範囲内である凹部又は凸部を指す。本明細書で使用するとき、用語「直径」は、凹部又は凸部に関するとき、最大断面寸法に相当する。
本発明の一態様に従って、少なくとも1つの凹部を含む表面を有する物品を製造することができる。製造中、物品の表面に少なくとも1つの凹部を付与するために、少なくとも1個の気泡が意図的に導入される。より詳細には、物品は、少なくとも1個の気泡を有する成形面を使用して製造される。即ち、物品は、(a)硬化性流体を提供することと、(b)気泡の外側表面の少なくとも一部分を含む成形面を使用して、硬化性流体から物品を成形することと、を含む方法により製造することができる。
凹部の配列パターンのような複数の凹部は、成形面の異なる位置に位置決めされた複数の気泡を含む成形面を使用して、物品の表面上に形成され得る。即ち、凹部の配列パターンを備える物品は、(a)硬化性流体を提供することと、(b)複数の気泡の外側表面の少なくとも一部分を含む成形面を使用して、硬化性流体から物品を成形することと、を含む方法を用いて製造することができ、この複数の気泡は、成形面のパターンに配列される。
気泡の滑らかな凸面の一部分の反転である滑らかな凹面を、物品に付与することができる。この比較的容易な製造方法とは対照的に、同様の表面は、従来、複雑な製造プロセスを用いて製造されてきた。
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換的に用いられ、記載された要素の1つ又はそれ以上を意味する。
用語「少なくとも1つの凹部」は、単一の凹面又は複数の凹面を指す。成形面上の単一位置において導入された単一の気泡を用いて、又は成形面上の複数の位置において導入された複数の気泡を用いて、単一又は複数の凹面を物品に付与することができる。無作為な位置又は任意の位置に複数の凹部を位置決め又は配列することができ、あるいは物品の表面上にパターンで配列することができる。
本明細書で使用するとき、「意図的な導入」とは、物品の製造プロセスにおける実質的なツールとして気泡を使用する目的でそれらを導入することを意味する。即ち、気泡は、物品表面に少なくとも1つの凹部を付与するのに使用される成形面の一部である。いくつかの実施形態では、意図的な導入とは、既に存在し得るいかなる気泡をも除去しない又は封入しないことを意味する。例えば、意図的な導入とは、硬化性流体を成形型の一部分に適用する間に、成形型の1つ以上の窪みの中に位置している可能性があるいかなる気泡をも除去しないことを意味し得る。即ち、意図的な導入とは、硬化性流体を成形型の一部分に適用している間より前に、気泡を成形型の窪みの中に封入することを意味し得る。封入された気泡は、硬化性流体と接触する成形面の一部である。
いくつかの実施形態では、凹部の配列パターンを含む表面を有する物品を製造することができる。製造中、物品の表面に凹部の配列パターンを付与するために、複数の位置で気泡が提供される。より詳細には、物品に付与された凹部のパターンに対応するパターンに配列された複数の気泡を含む成形面を使用して、物品が製造される。凹部の配列パターンを有する物品を、容易に製造することができる。
「凹部の配列パターン」は、所与の位置に配列された、ある程度の規則性を有して配列された、又は任意の所望の様式で配列された、複数の凹部のパターンである。例えば、凹部の配列パターンは、配列された列パターン、配列された正方格子パターンなど配列された格子パターン、配列されたジグザクパターン、又は配列された放射パターンを含むことができる。凹部の配列パターンは、物品全体の上に均等に形成される必要はなく、物品の一部分のみに形成されてよい。凹部のパターンは、物品の任意の部分にわたって変化してもよく、又は変化しなくてもよい。例えば、同一平面内に、同様の又は異なるパターンを使用することができる。パターン内の複数の凹部は、同一寸法及び形状であることができ、又は異なる寸法及び形状を有することができる。
任意の好適な気体を使用して、物品の表面に凹部を付与する気泡を形成することができる。例えば、気体は、空気、又は窒素及びアルゴン等の不活性気体であることができる。物品を形成するのに使用される成形面は、少なくとも1個の気泡の外側表面の一部分を含む。硬化性流体と接触している成形面に含まれる気泡の外形を、物品に反転写することができる。数ナノメートル〜数センチメートル以上の範囲の直径を有する様々な形状及び寸法の気泡を成形面に含めることができるので、広範囲な形状及び寸法の複数の凹部を形成することが可能である。更に、複数の凹部を物品に形成するとき、複数の凹部の寸法及び形状は同じであっても異なっていてもよい。即ち、成形面は、寸法及び形状が異なる、又は寸法及び形状が同じである複数の気泡を含むことが可能である。
少なくとも1つの凹部を含む表面を有する物品の一実施形態は、次のプロセスに従って製造することができる:(a)成形型表面を有する成形型を提供すること、(b)成形型表面の少なくとも一部分の上に硬化性流体を適用すること、(c)成形型表面と硬化性流体との間に少なくとも1個の気泡を意図的に導入すること、及び(d)表面に気泡によって付与された少なくとも1つの凹部を有する物品を形成するために、硬化性流体を硬化させること。物品は典型的には成形型から取り除かれる。
この方法を使用して、物品の表面上に単一の凹部を形成すること、又は物品の表面上に複数の凹部を形成することができる。複数の凹部が形成されると、これら複数の凹部を任意のやり方で物品の表面上に位置付けることができる。複数の凹部が形成されるいくつかの例では、複数の凹部はパターンに配列される。
凹部の配列パターンを含む表面を有する物品は、次のプロセスに従って製造することができる:(a)成形型表面を有する成形型を提供すること、(b)成形型表面の少なくとも一部分の上に硬化性流体を適用すること、(c)配列パターンに基づいて選択された成形型表面と硬化性流体との間の複数かつ別個の位置に気泡を提供すること、及び(d)表面に気泡によって付与された凹部の配列パターンを有する物品を形成するために、硬化性流体を硬化させること。物品は典型的には成形型から取り除かれる。
「成形型表面」は成形型の実表面である。成形型表面と硬化性流体との間に気泡が導入されると、硬化性流体は、少なくとも1つの位置において成形型の実表面と直接接触し、かつ少なくとも1つの他の位置において気泡と直接接触している。成形型の実表面と少なくとも気泡の表面との組合せが成形面を提供する。即ち、本明細書で使用するとき、用語「成形面」は、硬化性流体と直接接触している表面を指す。成形面の形状(具体的には、成形面の反転形状)を、硬化性流体が硬化されたときに形成される物品の表面に付与することができる。物品の表面上の凹部は、硬化プロセスの間に硬化性流体が気泡と接触している位置に対応している。したがって、硬化性流体と接触している気泡部分の形状及び寸法を硬化された物品に付与して、1つ以上の凹部を提供することができる。
任意の好適な有機材料、無機材料、又は有機無機複合材料を、成形型の材料として使用することができる。成形型のいくつかの代表的な材料には、樹脂(例えば、ポリマー樹脂)、金属、ガラス、セラミックス、又は粘土が挙げられる。成形型は1つ以上の片で構成され得る。例えば、複数の片を有する成形型は、少なくとも1つの開口部を有する第1の層と、第1の層に積層された第2の層と、で構成され得る。
成形型は典型的には窪みを有する。これらの窪みは、複数の片を有する成形型の第1の層の開口部又は開口部のパターンに対応することができ、あるいは、単一片である成形型の一部であることができる。窪みは、多くの場合、成形面の一部である少なくとも1個の気泡を提供するのに使用される。例えば、硬化性流体が成形型の表面の一部分に適用される際に、少なくとも1個の気泡を窪み内に封入することができる。
成形型の窪みを使用して少なくとも1個の気泡を封入する場合、少なくとも1つの凹部を含む表面を有する物品は、次のプロセスに従って製造することができる:(a)窪みを備える成形型表面を有する成形型を提供すること、(b)この成形型表面の少なくとも一部分の上に硬化性流体を提供すること、(c)この成形型表面と硬化性流体との間で窪みに気泡を封入すること、(d)表面に窪みの中の気泡によって付与された凹部を有する物品を形成するために、硬化性流体を硬化させること。物品は典型的には成形型から取り除かれる。
成形型が、気泡を封入するために使用することができる複数の窪みを有する場合、窪みをパターンに配列することができる。凹部の配列パターンを有する物品は、次のプロセスに従って製造することができる:(a)パターンに配列された複数の窪みを備える成形型表面を有する成形型を提供すること、(b)成形型表面の少なくとも一部分の上に硬化性流体を提供すること、(c)成形型表面と硬化性流体との間で複数の窪みに複数の気泡を封入すること、及び(d)表面に複数の窪みの中の気泡によって付与された凹部の配列パターンを有する物品を形成するために、硬化性流体を硬化させること。物品は典型的には成形型から取り除かれる。
「硬化性流体」は、成形型に適用するのに十分な流動性を有し、かつ硬化法を問わず硬化させることができる流体である。好適な硬化性流体には、例えば、ゲル状、ペースト状、又は液状の有機材料、無機材料、又は有機無機複合材料が挙げられる。その他の好適な硬化性流体には、有機材料、無機材料、又は有機無機複合材料を好適な溶媒で希釈して得る、溶液、分散液、懸濁液等が挙げられる(即ち、有機溶媒又は水性系溶媒)。本明細書において、「硬化させる」とは、硬化性流体を、成形面によって付与された形状を保持するのに十分なだけ硬くするプロセスを指す。より具体的には、硬化性流体は、成形面の一部である少なくとも1個の気泡によって付与された形状を保持するのに十分なだけ硬くなり、得られた「硬化層」は、少なくとも1つの凹部を有する。硬化層は、硬化性流体を硬化した際に形成される生成物である。
有機材料が硬化性流体に含まれる場合、樹脂材料又は樹脂材料の前駆体を使用することができる。硬化性流体には、例えば、硬化する際に重合、硬化、又は架橋されるモノマー又はポリマーを挙げることができる。「硬化法」として、重合性樹脂を重合すること、熱可塑性樹脂を少なくとも軟化温度まで冷却すること、又は溶媒を乾燥させることを含むが、これらに限定されない、任意の好適な方法を用いることができる。代表的な樹脂材料には、放射線(例えば、紫外線、可視光線、又は電子ビーム)で照射されると重合により硬化し得る光硬化性樹脂等の反応性樹脂、熱配向重合によって硬化する熱硬化性樹脂、酸化配向重合によって硬化し得る反応性樹脂、還元配向重合によって硬化し得る反応性樹脂、又は少なくとも軟化温度まで冷却されると硬化し得る熱可塑性樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の用途では、可溶性樹脂を硬化性流体として使用することができる。好適な可溶性樹脂には、水に溶解される水溶性樹脂、有機溶媒に溶解される有機溶媒可溶性樹脂等が挙げられる。第2の物品を形成するための成形型にこれら可溶性樹脂を使用する場合、多くの場合、該樹脂を第2の物品から溶解によって取り除くことができる。
無機材料を硬化性流体として使用する場合、ガラス、コンクリート、しっくい、セメント、モルタル、セラミックス、粘度、及び金属等の様々な無機材料を使用することができる。これら材料は、多くの場合、加熱又は水分除去により硬化され得る。上記有機材料及び無機材料のいずれかの複合材料であり得る有機無機複合材料を、硬化性流体として使用することも可能である。
成形型表面の少なくとも一部分の上に硬化性流体を提供する工程は、任意の既知の方法により達成することができる。硬化性流体の適用方法のいくつかでは、窪みを有する成形型を使用し、窪みが充填されないように、又は部分的にのみ充填されるように、硬化性流体を適用する。いくつかの好適な適用方法には、成形型表面の少なくとも一部分の上に硬化性流体をコーティングする、噴霧する、注入する、ブラッシングする、又は流し込むことが挙げられる。コーティングは、例えば、硬化性流体を表面に加え、その表面の少なくとも一部分に硬化性流体を広げることを含むことができる。多くの例において、適用方法はコーティングを含み、任意の好適なコーティング法を用いることができる。いくつかのコーティング法では、硬化性流体はナイフコーティング法を用いて適用される。硬化性流体の種類、物品の所望の形状、物品の所望の寸法などに基づいて、最適な適用方法を選択することができる。
硬化性流体は、気泡が提供される前に、又は気泡が提供されるのと同時に、成形型表面に適用され得る。多くの実施形態において、少なくとも1個の気泡は、成形型表面に硬化性流体が適用される間に存在している。例えば、気泡は、成形型の窪みの中に存在することができる。硬化性流体を成形型表面に適用している間に、気泡を窪み内に封入することができる。頻繁に提供される気泡の寸法、形状、及び位置を、選択しかつ変えることが可能である。例えば、成形型の窪みを使用して気泡を提供する場合、これら窪みの寸法、形状、及び位置を変えることができる。
硬化性流体は成形面と接触している。即ち、硬化性流体は、少なくとも1つの位置で少なくとも1個の気泡と接触し、かつ少なくとも1つの他の位置で成形型表面と接触している。硬化性流体を硬化させると、成形面の一部である少なくとも1個の気泡と接触していた硬化層の一部分に、少なくとも1つの凹部が形成される。硬化性流体を硬化させるとき、少なくとも1個の気泡の位置は、成形型表面と硬化性流体との間で所定の位置に位置するように制御され得る。例えば、成形型の窪み内に気泡を閉じ込めることができる。窪みの寸法及び形状は、気泡の寸法及び形状、並びに得られる硬化層の凹部の寸法及び形状に影響を与えることができる。窪みの寸法及び形状を変化させて、異なる寸法及び形状の複数の凹部を提供することができる。例えば、複数の窪みを含む成形型を使用することで、複数の気泡を提供することができる。複数の気泡が提供される場合、各気泡の寸法及び形状は同じであっても異なっていてもよい。
物品を製造する上記プロセスは、空気中で実施され得る。この実施形態では、少なくとも1つの凹部又は凹部の配列パターンを有する物品を、環境室のような特殊な装置を必要としない簡単な装置構成で製造することができる。例えば、成形型の少なくとも1つの窪み内への封入によって、少なくとも1個の気泡を提供することができる。
多くの場合、気泡は、その形状に影響を与え得る全ての力のバランスに基づいて球面を形成する傾向がある。これらの力は、気泡と硬化性流体との間の界面エネルギー、成形型表面と硬化性流体との間の界面エネルギー、及び成形型表面と気泡との間の界面エネルギーの総和を含む。これらの力に加え、気泡が硬化性流体に接触する領域付近における、例えば、硬化性流体の浮力、重力、及び粘度などのその他のプロセス変数が気泡の形状に影響を与える可能性がある。気泡表面にほぼ均一な力が加わる場合、又は気泡の上部にほぼ対称の力が加わる場合、気泡は変形せず、比較的均一で滑らかな凸面を有する。この形状は、多くの場合、レンズ等に適応できる実質的に球状の凸面である。実質的な球面を有する気泡の外形は、硬化性流体を硬化させて製造された物品に成形面から反転写され得る。したがって、気泡の硬化性流体に接触する部分によって付与された凹部は、少なくとも部分的に実質的な球面を有する凹部を含むことができる。
本明細書で使用するとき、用語「球面」は、表面が球体の一部分であると考慮され得ること、又は表面が球面曲率を有することを意味する。一部の球面は、ドーム形又は半球形であると考慮され得る。その他の球面は、半球よりも小さな又は大きな部分を包含することができる。本明細書で使用するとき、用語「実質的な球面」は、表面は概して球体の一部分であると考慮され得るが、完全な球面とはわずかに異なり得ることを意味する。実質的な球面の全ては、同じ又は異なる曲率を有することができ、かつ、曲率が位置に応じて連続的に変化する球面の混合を含むことができる。
一部の凹面は、対称の球面というよりもむしろ非対称表面である。非対称形状を有する凹面は、非対称形状を有する気泡の外側表面によって物品に付与され得る。非対称形状の気泡は、不均等な力を気泡の凸面に印加することにより、又は分布が非対称の力を気泡の凸面の上部に印加することにより形成することができる。
少なくとも1つの凹部を有する物品は、比較的簡単なプロセスで製造することができる。物品の表面上に単一の凹部を形成することができ、あるいは、無作為に又はパターンで配列され得る複数の凹部を形成することができる。少なくとも1つの凹部は球状又は実質的な球状であることができ、レンズとして使用することができる。微小凹部等の凹部の配列パターンを有する物品を、同様の物品を製造するための他の既知のプロセスと比べて時間がかからずかつコストのかからない簡単なプロセスで製造することができる。また、連続的なやり方で実施可能なように、及び任意の所望の寸法を有する物品を調製することができるように、製造プロセスを修正することが可能である。
本発明の一実施形態によると、成形型は少なくとも1つの窪みを含むことができ、硬化性流体を成形型表面に適用している間に、成形型の少なくとも1つの窪みに気泡を封入することにより、少なくとも1個の気泡が成形面に意図的に導入される。即ち、気泡は、成形型の窪みに封入され、かつ成形型表面と硬化性流体との間に位置付けられる。硬化性流体と接触している成形面は、成形型表面(即ち、成形型の実表面)と少なくとも1個の気泡との組合せを含む。
例えば、成形型は複数の窪みの配列パターンを含むことができ、硬化性流体を成形面に適用している間に、気泡を成形型の複数の窪みの配列パターンの中に封入することにより、複数の気泡を成形面に意図的に導入することができる。即ち、パターンに配列された成形型の複数の窪みの中に複数の気泡を封入することができる。複数の気泡のそれぞれは、成形型表面と硬化性流体との間で成形型の窪み内に封入され得る。硬化性流体と接触している成形面は、成形型表面(即ち、成形型の実表面)と、パターンに配列された複数の気泡と、の組合せを含む。
これらの実施形態では、少なくとも1つの窪み又は複数の窪みの配列パターンが事前に成形型に提供されるので、硬化性流体を成形面に適用している間に、成形型の少なくとも1つの窪みの中に気泡を封入することができる。少なくとも1つの窪みの位置は、成形面の一部である少なくとも1個の気泡の位置に対応する。少なくとも1個の気泡の位置は、成形面と接触している硬化性流体を硬化させて作製される物品に付与される複数の凹部の位置に対応する。したがって、少なくとも1つの凹部を物品上の所定の位置に、確実かつ容易に位置決めすることができる。加えて、窪みの位置が、物品で複数の凹部が形成される位置に対応するので、高い位置精度を有する複数の凹部を物品上に形成することができる。
成形型の窪みの容積は、硬化性流体と成形型表面との間で窪み内に封入することができる気体の量に影響を与える。複数の窪みがある場合、複数の窪みの容積は同様であることができ、又は複数の窪みの任意の部分が同様であることができる。任意の凹部の寸法は、その特定の凹部を生じさせるその気泡を封入する窪みの容積を変化させることによって変えることが可能である。例えば、複数の凹部の第1の群は、第2の寸法を有する複数の凹部の第2の群と異なる第1の寸法を有することができる。
窪みのいかなる所望のパターンも成形型に含めることができる。例えば、窪みの配列パターンには、配列された列パターン、正方格子パターン等の配列された格子パターン(即ち、格子パターンは複数の横列、複数の縦列、又はその両方を備えるパターンである)、配列されたジグザクパターン、又は配列された放射パターンを挙げることができる。パターン内の窪みは、同一寸法及び形状であることができ、又は異なることができる。
上記実施形態によると、成形型表面の少なくとも一部分に硬化性流体を適用している間に成形型の窪みの中に気泡を封入することによって、成形型表面と硬化性流体との間に気泡を提供することができる。例えば、コーティング又は注入によって硬化性流体を成形型に適用している間に、成形型の周囲に存在する全気体(例えば、空気)の一部分を、硬化性流体と成形型表面との間の空間内に封入することができる。封入された気泡は成形面の一部となることができ、硬化層に凹部を付与することができる。この場合、コーティングが適用されるなら、例えば、ナイフコーティング装置、バーコーティング装置、ブレードコーティング装置、及びロールコーティング装置等の様々なコーティング装置を使用することができる。
少なくとも1個の気泡の封入は、例えば、硬化性流体の粘度、コーティング速度、硬化性流体と気体と成形型との間の様々な界面張力の関係等などの要因を調整することで制御することができる。寸法、形状、及び位置等の封入された気体の気泡の状態もまた、上述した気体の気泡の封入に関する同様の要因、例えば、成形型の中の窪みの寸法、形状、及び位置などによって制御することができる。全プロセスは大気圧下で行うことができ、減圧する必要はない。
本発明の別の態様は、上記製造方法に従って製造される凹部の配列パターンなどの少なくとも1つの凹部を含む表面を有する物品である。製造中、1個以上の気泡は、物品の表面に、凹部の配列パターンなどの少なくとも1つの凹部を付与する。
物品の一実施形態では、少なくとも1個の気泡を含む成形面を使用して、少なくとも1つの滑らかな凹面を形成することができる。複数の凹部を形成する場合、これらの複数の凹部を無作為に又はパターンで配列することができる。凹部の配列パターンは、気泡の配列パターンを含む成形面を使用して形成することができる。この気泡の配列パターンは、多くの場合、成形型の窪みの配列パターンに対応する。生成された滑らかな凹面のそれぞれは、成形面の一部である気泡の外側表面の一部分の反転である。多くの例において、気泡は実質的な球面を有し、物品に付与された得られた凹部は実質的な球面を有する。
複数の凹部が物品の表面上にパターンに配列される場合、パターンは任意のデザインであることができる。例えば、配列パターンは、配列された列パターン、配列された格子パターン、配列されたジグザクパターン、又は配列された放射パターンであることができる。複数の凹部は全て同様の寸法及び形状であることができ、又は複数の凹部の任意の部分が同様の寸法及び形状であることができる。凹部の配列パターンを有する一部の物品において、複数の凹部の一部又は全ては実質的な球面を有する。
更には、従来の機械加工で形成するのが難しい張り出し形状(例えば、図3Aの32aを参照のこと)を有する凹部を、物品の表面上に形成することができる。
様々な分野及び用途で、本明細書に記載の物品を使用することができる。特に、物品の表面上の少なくとも1つの凹部が、可視光線に対して実質的に透明又は半透明であり、かつ実質的な球面を有する場合、様々な光学用途にこの物品を使用することができる。例えば、凹部は、マイクロレンズ等のレンズとして機能することができる。可視光線に対して透明又は半透明であり、かつ実質的な球面を有する複数の凹部の配列は、マイクロレンズアレイ等のレンズのアレイとして使用することが可能である。
凹部の配列パターンなどの少なくとも1つの凹部を含む表面を有する第1の物品は、凸部の配列パターンなどの少なくとも1つの凸部をその表面に有する第2の物品を製造するための成形型(即ち、第2の成形型)として使用することができる。第2の物品上の少なくとも1つの凸部は、第2の成形型として使用される第1の物品上に存在する少なくとも1つの凹部の反転である。即ち、第1の物品に存在する任意の凹部を、第2の物品に凸部として付与することができる。
用語「少なくとも1つの凸部」は、単一の凸面又は複数の凸面を指す。少なくとも1つの凹面を備える成形型を使用して、少なくとも1つの凸面を物品に付与することができる。「凸部の配列パターン」とは、所定の位置に配列された、ある程度の規則性を有して配列された、又は任意の所望の様式で配列された、複数の凸部のパターンである。例えば、凸部の配列パターンには、配列された列パターン、配列された正方格子パターンなどの配列された格子パターン、配列されたジグザクパターン、又は配列された放射パターンを挙げることができる。凸部の配列パターンは、全物品上に均等に形成される必要はなく、物品の一部分のみに形成されてもよい。凸部のパターンは、物品の任意の部分にわたって変化してもよく、又は変化しなくてもよい。例えば、同一平面内に、同様の又は異なるパターンを使用することができる。パターン内の複数の凸部は同一寸法及び形状のものであることができ、又は異なる寸法及び形状を有することができる。
第2の物品を形成するための第2の成形型として第1の物品を使用するという理由で、同様の物品を形成する他の従来の方法と比べて、比較的単純なプロセスかつ比較的短い製造時間で、凸部の配列パターンなどの少なくとも1つの凸部を有する第2の物品を形成することができる。より具体的には、凸面の配列パターンなどの少なくとも1つの実質的に球状の凸面を有する第2の物品は、少なくとも1つの実質的に球状の凹面を有する第1の物品を使用して形成することができる。第2の物品に形成される少なくとも1つの凸面は、例えば、微小凸部であり得る。
したがって、本発明の別の態様は、凸部の配列パターンなどの少なくとも1つの凸部を含む表面を有する第2の物品である。本方法は、凸部の配列パターンなどの少なくとも1つの凸部を第2の物品の表面に付与するために、上記製造方法で作製された第1の物品を第2の成形型として使用することを含む。
第2の物品は、コーティング又は注入などの適用方法を用いて、第2の硬化性流体を第1の物品に適用することにより製造することができる。第2の硬化性流体は、少なくとも1つの凹部を含む第1の物品の表面に適用される。好適な第2の硬化性流体は、多くの場合、少なくとも1つの凹部を備える第1の物品を作製するのに使用することができる上記硬化性流体と同じ種類である。第2の硬化性流体は、典型的には、第2の成形型として使用される第1の物品に適合するように選択される。より具体的には、多くの場合、第2の硬化性流体は、溶解しないように、又は第2の成形型の形状及び寸法を変化させないように選択される。第2の硬化性流体には、ゲル状、ペースト状、液状、分散液状、懸濁液状等である有機材料、無機材料、又は有機無機複合材料を挙げることができる。硬化性流体が第2の成形型に適用された後であるが硬化される前に、第2の成形型の表面と第2の硬化性流体との間に封入された気泡などの封入された気泡を除去するための脱気プロセスを加えることができる。一部の例では、封入された気泡の存在は、第2の物品に不具合を引き起こす可能性がある。
いくつかの例において、少なくとも1つの凸部は実質的な球面を有し、このプロセスは、実質的な球面を備える少なくとも1つの凹部を有する第2の成形型の使用を伴う。第2の成形型の少なくとも1つの凹部の直径は、多くの場合、1000マイクロメートル未満、100マイクロメートル未満、又は10マイクロメートル未満である。第2の物品に形成される少なくとも1つの凸部は、第2の成形型に存在する少なくとも1つの凹部の直径と同程度の直径を有する。第2の成形型の表面に凹部の配列パターンなどの少なくとも1つの凹部を付与する、成形面の中の気泡の配列パターンなどの少なくとも1つの気泡を使用して、第2の成形型を作製する。
いくつかの代表的な第2の物品において、少なくとも1つの凸部は実質的な球面である。この少なくとも1つの凸部が可視領域において実質的に透明又は半透明である場合、様々な光学分野で第2の物品を使用することが可能である。より具体的には、少なくとも1つの凸部をマイクロレンズなどのレンズとして使用することができ、凸部の配列パターンをマイクロレンズアレイなどのレンズのアレイとして使用することができる。
第2の物品の表面上に1つを超える凸部が存在する場合、複数の凸部の全て又は任意の部分は同様であることができる。例えば、実質的な類似性を有する複数の凸部の第1の群と、実質的な類似性を有するが複数の凸部の第1の群とは異なる複数の凸部の第2の群と、が存在し得る。
第2の物品の表面を、第2の成形型としての機能を果たす第1の物品で覆うことができる。この場合、製造プロセスの間、第2の物品は第1の物品から取り除かれない。第1の物品及び第2の物品の両方で構成されるこのような組み合わされた物品は、様々な分野において使用することができる。例えば、屈折率の異なる材料を使用して第1の物品及び第2の物品を作製する場合は、たとえ組み合わされた物品が平坦な表面を有しているとしても、組み合わされた物品はレンズとして機能することができる。
少なくとも1つの凹部を有する第1の物品、及び少なくとも1つの凸部を有する第2の物品を作製するための1つの例示のプロセスが、図1A〜図1Gに概略的に示されている。より具体的には、図1A〜図1Dは、凹部の配列パターンなどの複数の凹部を含む表面を有する物品を作製するための製造方法の一実施形態を概略的に示している。図1E〜図1Gは、凸部の配列パターンなどの複数の凸部を含む表面を有する第2の物品を作製するための製造方法の一実施形態を概略的に示している。
図1A〜図1Dは、複数の凹面32を有する物品31を製造するのに用いることができる1つの例示の製造プロセスを概略的に示す。図1Aは、複数の窪み11を有する成形型10を提供する工程を示す。図1Bは、成形型10に硬化性流体を適用し、かつ気泡50を提供する工程を示す。気泡50は窪み11に封入され、かつ成形型表面12、13と硬化性流体30との間に位置付けられる。図1Cは、表面に気泡50によって付与された複数の凹部32の配列パターンを有する物品31形成するために、硬化性流体30を硬化させるところを示す。図1Dは、成形型10から物品31を取り除くところを示す。物品31は3つの凹部32を備えて示されているが、任意の所望の数の凹部を形成することができる。凹面32は、成形型の窪み11に対応し、かつ封入された気泡50の位置に対応する位置に形成される。気泡50の外形が物品31に付与されて複数の凹部32となる。図1A〜図1Dの製造プロセスのそれぞれは、成形型10が周囲条件下にある状態で行うことができる。物品31を製造するのに用いられる成形プロセスは、特別な環境室の中に置かれる必要はない。
コーティング装置40で硬化性流体30を成形型表面に適用している間に、気泡50が封入される。多くの実施形態において、硬化性流体30は硬化性樹脂を含む。硬化性流体30は、複数の窪みが硬化性流体30で充填されないようなやり方で、成形型の窪みの上に適用されるのが好ましい。即ち、硬化性流体30は成形型表面13と接触しないのが好ましい。しかしながら、気泡50は、成形型表面12及び13、並びに窪み11の上に位置付けられた硬化性流体30と接触する。成形面は硬化性流体30と接触している表面であり、硬化性流体30と直接接触している気泡50の外側表面と、硬化性流体30と直接接触している成形型表面の任意の部分との両方を含む。例えば、成形型の窪み11の間の部分は硬化性流体30と直接接触している。硬化性流体30を適用し、気泡50を封入した後、硬化性流体30を硬化し成形型10から取り除く。得られた物品31は、気泡50の外形の一部分が付与された複数の凹面32を有する。
成形型が複数の窪み11を含む場合、これら複数の窪みは無作為に配列されることができ、又は任意の所望のパターンに配列されることができる。いくつかの実施形態では、複数の窪み11は、単一の列に、又は格子パターンに配列され得る。本明細書で使用するとき、窪みの格子パターンを有する成形型とは、成形型に少なくとも2つの横列、少なくとも2つの縦列、又は少なくとも2つの横列及び少なくとも2つの縦列の窪み11が存在することを意味する。例えば、いくつかの格子パターンは、横列の数が縦列の数と等しい正方格子パターンである。その他の実施形態において、窪みを、例えばジグザクパターン又は放射パターンなどのパターンに配列することができる。
図1Aに示すプロセスでは、複数の窪み11を有する成形型10が提供されている。複数の窪み11を無作為に配列することができ、又は得られる物品の用途に基づき任意の所望のパターンに配列することができる。窪み11の位置は、物品の表面に少なくとも1つの凹部を付与する封入された気泡50の位置を決定する。物品31の表面上の複数の凹部32の位置は、成形型10上の窪み11の配列によって選択することができる。
任意の好適な材料を使用して成形型10を作製することができる。いくつかの代表的な方法では、成形型10に、ポリプロピレン(polypropyrene)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリシクロオレフィン等の有機樹脂材料を使用することができる。他の代表的な方法では、その他の好適な有機材料、金属(例えば、ニッケル、銅、又は真ちゅう)、ガラス若しくはセラミックス材料等の無機材料、又は有機無機複合材料を使用することができる。成形型10は可撓性又は硬質であることができる。多くの場合、可撓性の成形型10の方がより容易に扱うことができる。しかしながら、金属又は結晶化ポリマーなどの硬質材料で作製された成形型10は、多くの場合、向上した寸法精度をもたらすことができる。成形型10は任意の好適な寸法であり得るが、寸法は、多くの場合、コーティング装置40の寸法に基づいて選択される。いくつかの例示の成形型10は、縦寸法が1〜数千ミリメートルの範囲内、横寸法が1〜数千ミリメートルの範囲内、厚さ寸法が10マイクロメートル〜10ミリメートル超の範囲内である。
窪み11は任意の好適な形状を有することができる。窪み11の上方から見た平面形状は、例えば、円形、三角形、正方形、矩形、楕円体、台形、五角形、六角形、又は十字形であることができる。例えば、窪み11は、図1Aに示されるような正方形又は矩形の断面を有することができる。この場合、窪みの側面12及び底面13は、直線形状で構成されても、曲線形状で構成されてもよい。窪み11の形状と気泡50の形状との関係は、より詳細に後述される。
図2Aは上方から見た概略図であり、矩形平面形状の側部を備えた複数の四角錐の窪み11を有する別の例示の成形型10を示している。図2Aの角錐のそれぞれは尖底を有している。図2Bは上方から見た概略図であり、三角平面形状の側部を備えた複数の四角錐の窪み11を有する更に別の例示の成形型10を示している。図2Bの角錐のそれぞれは底部に縁線を有している。
他の例では、窪み11は三角形の断面を有することができ、この断面の形状は、上部側から底部側に向かって狭くなる。側面は、直線形状で構成されても、曲線形状で構成されてもよい。成形型表面の一部である窪み11の底部分は、例えば、図1Aに示されるような平面形状、尖形形状、直線形状、又は円形形状で構成されてもよい。更に他の例では、窪み11は台形の断面形状を有することができ、断面の幅は、上部から底部に向かって狭くなってもよく、又は上部から底部に向かって広くなってもよい。側面及び底面は、直線形状で構成されても、曲線形状で構成されてもよい。窪み11に任意の他の好適な形状を使用することができる。
窪み11は任意の好適な寸法を有することができる。窪み11の寸法の例としては、深さは0.1μm以上、1μm以上、又は10μm以上であることができる。多くの場合、深さは、100mm以下、10mm以下、又は1mm以下であり得る。窪みの開口部の断面積は、0.01μm以上、0.1μm以上、又は1μm以上であることができる。断面積は、多くの場合、1000mm以下、100mm以下、又は10mm以下であることができる。しかしながら、寸法はこれらの値に限定されない。
図1Bに示されるプロセスでは、コーティング装置40は成形型10に隣接して設定される。コーティング装置40によって成形型10の少なくとも一部分の上にコーティング組成物がコーティングされて、硬化性流体層30を形成する。硬化性流体層30は窪み11を充填しない。即ち、硬化性流体30は成形型表面13と接触しない。同時に、成形型10の窪み11の中に気泡50が提供される。コーティングプロセスは、標準大気条件下で空気中で行うことができる。
図1Bに示されるコーティングプロセスのいくつかの実施形態において、硬化性流体は硬化性ポリマー樹脂を含む。任意の好適なポリマー樹脂を、単独で、又は他のポリマー樹脂と組み合わせて使用することができる。例えば、硬化性流体は、光硬化性樹脂(例えば、紫外線硬化性樹脂)又は可溶性樹脂(例えば、水溶性又は有機溶媒可溶性樹脂)等のポリマー樹脂の溶液であることができる。成形型10が十分な耐熱性を有する場合、ポリマー樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることができる。いかなるポリマー樹脂も、様々な添加剤、例えば、増粘剤、硬化剤、架橋剤、反応開始剤、酸化防止剤、帯電防止剤、希釈剤、洗剤、顔料、又は染料を含有することができる。
代表的な光硬化性樹脂には、光重合性モノマー、オリゴマー、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。光重合性モノマーには、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、及びエポキシ系モノマーが挙げられる。光重合性オリゴマーには、アクリレート系オリゴマー、メタクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、及びエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。通常、光硬化性樹脂には光開始剤が添加される。紫外線硬化性樹脂を使用する場合、成形型等を高温に暴露することなく、紫外線を使用して樹脂を迅速に硬化させることができる。
硬化性流体に含めることができる代表的な熱硬化性樹脂には、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、不飽和エステル系樹脂、アルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、又は硬質ゴム系樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、熱硬化性樹脂には重合開始剤が添加される。得られる硬化ポリマー材料は、良好な耐熱性及び耐溶剤性を有することができる。更に、充填剤が添加されると、得られる硬化ポリマー材料は非常に強くなり得る。
硬化性流体に含めることができる代表的な熱可塑性樹脂には、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリエステル樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
硬化性流体に含めることができる代表的な可溶性樹脂には、水溶性樹脂及び有機溶媒可溶性樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。好適な水溶性樹脂には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、及びポリエチレンオキシドが挙げられる。
任意の好適な硬化法を用いることができる。硬化法は、典型的には、硬化性流体の組成に基づいて選択される。いくつかの硬化法は、水又は有機溶媒を除去するための乾燥プロセスを含む。他の硬化法は、硬化性流体を紫外線などの化学線に暴露すること含む。更に他の硬化法は、硬化性流体を熱に暴露すること、又は硬化性流体を冷却することを含む。
任意の好適なコーティング装置40を使用して、硬化性流体層30を成形型10の少なくとも一部分に適用することができる。いくつかの実施形態では、コーティング装置40はナイフコーティング装置である。例えば、硬化性流体樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂が十分な流動性を有する温度まで加熱された加熱ナイフコーティング装置を使用することができる。その他の実施形態では、コーティング装置40は、バーコーティング装置、ブレードコーティング装置、又はロールコーティング装置であることができる。
硬化性流体層30を成形型10の少なくとも一部分に適用するために、コーティング装置40又は成形型のいずれかを移動させることができる。いくつかの例では、成形型は固定され、コーティング装置を成形型10に隣接して移動させる。他の例では、コーティング装置40は固定されていることができ、コーティング装置40のそばを通るロールから成形型10を提供することができる。これらの例では、少なくとも1つの凹部を有する物品を形成するための連続した製造ラインを設計することができる。
図1Bを参照すると、コーティング装置40が矢印Aの方向(左から右へ)に移動すると、硬化性流体層30は成形型10の上にコーティングされる。図1Bは、硬化性流体層30のコーティングによる成形型10への適用を示しているが、他の適用方法が気泡50を封入することができるのであれば、例えば、注入などの他の適用方法を用いることができる。
硬化性流体層30の平均厚さは任意の所望の厚さであることができ、所望の物品に応じて変化させることができる。いくつかの例では、硬化性流体層30の平均厚さは、約10μm〜100mm、又は10μm〜10mmである。硬化性流体層30が成形型10に適用されるとき、矢印Bで示されるように、成形型10の周囲に存在する空気の一部を成形型10の周囲の空間から押し出すことができ、空気の別の一部を窪み11の中に封入することができる。窪み11の中に封入された空気は、気泡50として、窪み11の成形型表面12及び13と接触することができる。
窪み11内への気泡50の封入は、例えば、硬化性流体30の粘度、コーティング速度、及び硬化性流体30と気泡50と成形型10との間の界面張力の関係などの要因を調整することによって制御することが可能である。例えば、成形型の窪みの表面上の硬化性流体の自然流速よりもコーティング速度が速い場合は、気体の気泡を成形型の各窪みの中に封入することが可能である。自然流速とは、成形型の上に設置された硬化性流体の流速を意味し、例えば、硬化性流体の粘度、及び硬化性流体と気体と成形型との間の界面張力の関係の影響を受ける場合がある。硬化性流体の粘度が低い場合、コーティング速度を速くすることで、又は成形型の材料を変更することで、気泡50を封入することができる。
このプロセスは、成形型10の中に封入される気体(空気)の制御された変位であり、成形型の窪み11の中に封入されて成形面の一部として使用することができる気泡50を有利にもたらす。気泡50の寸法及び位置は、コーティング装置40の移動速度を含むプロセス変数を調整することにより制御することができる。
図1B及び図1Cでは、気泡50は窪み11の中に位置付けられているが、これらに限定されない。即ち、気泡50の外側表面は窪み11の外側であることができる。例えば、図4の断面図に示されるように、気泡50の上部(即ち、上面)は、成形型10の上面を超えて延在してもよい。図1B及び図1Cに示されるように、単一の気泡50が単一の窪み11の中に存在することができるが、1個を超える気泡が単一の窪み11の中に存在してもよい。
図1Cに示されるプロセスでは、硬化性流体層30を硬化して硬化層31を形成する。流体30を硬化するのに適合した任意の好適な硬化法を用いることができる。例えば、硬化性流体が紫外線硬化性樹脂である場合は、紫外線光源を用いて硬化性流体層30を照射して樹脂を重合することにより硬化層31を形成することができる。硬化性流体層が可溶性樹脂を含有している場合は、乾燥させて溶媒を除去することにより硬化層31を形成することができる。硬化性流体が熱可塑性樹脂である場合は、熱可塑性樹脂を少なくとも軟化温度まで冷却することにより硬化層31を形成することができる。硬化性流体が熱硬化性樹脂である場合は、熱硬化性樹脂を少なくとも硬化温度まで加熱することにより、硬化したコーティング31を形成することができる。
図1Cに示されるような硬化層31は、硬化中に気泡50の外側表面に接触した結果生じた複数の凹面32を有している。即ち、実質的な球面を有することができる気泡50の外形が、硬化層31に反転写される。即ち、気泡50の外形は、硬化性流体30と接触する成形面の一部である。硬化層31は成形面の逆形状を有する。
気泡50は、硬化性流体30と接触する操作表面である成形面の一部である。気泡50は成形面の一部であり、かつ気泡50は多くの場合実質的に球状の凸状外側表面を有するので、硬化層31は、多くの場合、実質的に球状の凹面を有する。硬化層31に形成される複数の凹部は複数の微小凹部であることができる。
図1Dに示されるプロセスでは、複数の微小凹部などの複数の凹面32を有する物品(即ち、硬化層)31は、成形型10から硬化層31を取り除く又は分離することにより得ることができる。いくつかの実施形態では、成形型10を使用してその他の硬化層31を形成することができる。少なくとも1つの凹部を有する物品31を、レンズ又はレンズのアレイなどの光学物品として使用することができ、あるいは、少なくとも1つの凸部を有する第2の物品を作製するために使用することができる。
物品31のいくつかの実施形態では、物品の第1の表面は複数の凹部を有し、第1の表面の反対側の第2の表面は平坦である。平坦な表面は、つや消し仕上げ又は光沢仕上げであることができる。どちらの面の表面粗さも、例えば、100ナノメートル未満、50ナノメートル未満、10ナノメートル未満、又は5ナノメートル未満であることができる。表面粗さは、表面形状測定システムP−16(KLA−テンコール社(KLA-Tencor Corporation)製)などの表面計を用いて測定することができる。
凹部の配列パターンなどの少なくとも1つの凹部を有する物品31を提供するために、図1A〜図1Dに示されるプロセスを連続的に行うことができる。硬化性流体30と接触する成形面から、凹部のいかなるパターンを物品に付与することも可能である。成形面は、少なくとも1個の気泡50の少なくとも一部分を含む。結果として生じる硬化層の凹部は、少なくとも1個の気泡50の外側表面が硬化性流体30と接触する場所に形成される。
図1A〜図1Dの工程のプロセスを通じて製造される物品31は、物品形成に使用される成形面の反転である表面を有する。より詳細には、物品31は、気泡50の外側表面の部分によって付与された複数の凹部を有する。多くの場合、凹部32の形状は、気泡50の寸法により決定される曲率を有する実質的な球面の反転である。物品31の用途に応じて、複数の凹部は任意の好適な寸法を有することができる。いくつかの例示の複数の凹部の底部分の断面積は、約0.01μm以上、0.1μm以上、又は1μm以上である。この断面積は、多くの場合、100mm以下、10mm以下、又は1mm以下である。凹部32の高さは、多くの場合、0.1μm以上、10μm以上、又は10μm以上である。この高さは、例えば、100mm以下、10mm以下、又は1mm以下であることができる。
図3Aは、図1Dに示されるプロセスに対応する別の製造プロセスを示している。図3Aは、張り出し部分32Aを備えた凹面32を有する物品31を得るために使用することができるプロセスを示す。張り出し部分は、多くの場合、三角錐、四角錐、円錐等の錐状形状を備える窪み(即ち、先端に向かって先細になる形状を有する窪み)を有する成形型を使用して形成され得る。更に、張り出し部分は、鋭い又は先のとがった縁部を有することができる。張り出し部分を含む凹面を備える物品を容易に製造することができる。これらのタイプの構造体は、機械加工等などの方法を用いて形成するのは非常に困難であり得る。
図3A及び図1Dは、物品の表面に形成される少なくとも1つの凹部の形状を変化させるために、窪みの形状をどのように選択することができるかを示している。窪み11の形状に加え、その他の変数を使用して、硬化性流体30が物品31へと硬化される際に形成される複数の凹部の形状を変えることが可能である。即ち、硬化性流体30と接触する成形面は、窪みの寸法及び形状、並びにプロセス変数を変えることによって変化させることができる。
凹面32は、成形型10に配列されたそれぞれの窪み11の中に気泡50を封入することにより形成されるので、窪みが実質的に同一形状を有する場合は、複数の凹面32は実質的に同一形状を有することができる。即ち、凹面形成プロセスの繰り返し性は、封入された気泡の制御により制御され得る。より詳細には、封入された気泡50の寸法、形状、及び位置を制御することにより、凹面32の寸法、曲率、及び位置を制御することができる。
気泡50の寸法(例えば、容積、直径、又は断面積)は、例えば、(a)成形型10の窪み11の寸法及び形状を調整すること、(b)成形型10に適用される硬化性流体30の粘度を調整すること、(c)硬化性流体30を成形型10に適用する速度を調整すること、(d)硬化性流体30と成形型10と気泡50との間の界面張力を調整すること、(e)硬化性流体30のコーティングからその硬化までの時間を調整すること、(f)気泡50の温度を調整すること、及び(h)気泡50に加えられる圧力を調整すること、により制御されてもよい。上記のやり方で調整可能な気泡50の具体的な寸法は、例えば、0.1μm〜100mmの範囲の直径を有することができる。それぞれの調整に関しては下記に更に記載される。
窪み11の寸法及び形状を使用して、気泡50の寸法を調整することができる。窪み11内の気泡50は、気泡50が硬化性流体30に接触する領域内の、気泡50と硬化性流体30との間の界面張力の影響を有意に受ける。気泡50が硬化性流体30に接触する領域付近では、気泡50は更に、気泡50と窪み11の成形型表面との間の界面張力、及び硬化性流体と窪み11の成形型表面との間の界面張力の影響を受ける。気泡50が硬化性流体30に接触する領域内では、気泡50は、多くの場合、滑らかな実質的に球状の凸面を形成するが、凸面の曲率及び形状は窪み11の寸法及び形状の影響を受ける。
窪み11の寸法及び外形は、気泡50の曲率及び形状に影響を及ぼし、気泡50の曲率及び形状は、次に、成形型された物品に付与される。窪み11は様々な平面形状をとることができるが、得られた複数の凹部をレンズとして使用する場合、窪み11の平面形状は、対称形状(点対称又は線対称)、あるいは対称形状と似た形状であるのが好ましい場合が多い。即ち、気泡50の凸面の頂点がほぼ対称な平面形状の中心に来るように窪み11が配列されると、気泡50は、変形が少ししかない滑らかな凸面を有することができる。成形型10は水平に設置されるので、気泡50が実質的に球状の凸面を有することができるように凸面に均一に浮力及び重力を加えることができる。
硬化性流体の粘度を調整して、気泡50の寸法を制御することができる。例えば、図1Bに概略的に示されるプロセスでは、封入された気泡50の寸法は、成形型10に適用される硬化性流体30の粘度を調整することにより制御することができる。具体的には、硬化性流体の粘度を高くすることにより気泡50の寸法を大きくすることができ、硬化性流体の粘度を低くすることにより気泡50の寸法を小さくすることができる。硬化性流体の粘度は特に制限されないが、多くの場合、1mPa−sec以上、10mPa−sec以上、又は100mPa−sec以上である。硬化性流体の粘度は、100000mPa−sec以下、10000mPa−sec以下、又は1000mPas以下であることができる。粘度の調整は、硬化性流体の濃度を調節することにより(溶媒を加える又は除去することができる)、又は増粘剤を加えることにより行うことができる。
コーティング速度を調整して、気泡50の寸法を制御することができる。図1Bに概略的に示されるプロセスでは、閉じ込められた気泡50の寸法は、硬化性流体30を成形型10にコーティングする速度を調整することにより制御することができる。成形型が固定されている場合は、コーティング装置40の移動速度を調整することができる。あるいは、コーティング装置40が固定されている場合は、成形型の移動速度を調整することができる。図1Bに例示されているように、コーティング装置40の移動は矢印Aで示される。コーティング装置40としてナイフコーティング装置を使用する場合、コーティング速度はナイフの刃の移動速度によって決められ得る。具体的には、コーティング速度を速くすることにより気泡50の寸法を大きくすることができ、コーティング速度を遅くすることにより気泡50の寸法を小さくすることができる。任意の好適なコーティング速度を用いることができるが、いくつかの代表的なコーティング速度は、0.01〜1000センチメートル/秒の範囲内、0.5〜100センチメートル/秒の範囲内、1〜50センチメートル/秒の範囲内、又は1〜25センチメートル/秒の範囲内である。
図1Bに示されるプロセスでは、硬化性流体30と成形型10の成形面との間の界面張力、硬化性流体30と気泡50との間の界面張力、及び気泡50と成形型10の表面との間の界面張力を調整することによっても、封入された気泡50の寸法を制御することができる。具体的には、例えば、硬化性流体30と成形型10の表面との間の接触角を増大させることにより(湿潤性を低くする)気泡50の寸法を大きくすることができ、一方で、硬化性流体30と成形型10の表面との間の接触角を減少させることにより(湿潤性を高める)気泡50の寸法を小さくすることができる。
図1B及び図1Cに示されるプロセスでは、封入された気泡50の寸法は、硬化性流体30のコーティングからその硬化までの時間を調整することにより制御することができる。具体的には、硬化性流体30のコーティングからその硬化までの時間を短くすることにより、気泡50の寸法を大きくすることができる一方、硬化性流体30のコーティングからその硬化までの時間を長くすることにより、気泡50の寸法を小さくすることができる。
図1B及び図1Cに示されるプロセスでは、封入された気泡50の寸法はまた、硬化性流体30をコーティングした後で硬化性流体30を硬化させる前又は硬化中に気泡の温度を調整することにより制御することができる。具体的には、気泡50の温度を上げることにより気泡50の寸法を大きくすることができ、気泡50の温度を下げることにより気泡50の寸法を小さくすることができる。気泡50の温度の調整は、気泡50が封入された後で気泡50の寸法を変えることができる制御方法の1つである。
閉じ込められた気泡50の寸法は、硬化性流体30をコーティングした後で硬化性流体30を硬化させる前又は硬化中に気泡50に加えられる圧力を調整することにより制御することができる。具体的には、気泡50に加えられる圧力を大きくすることにより気泡50の寸法を大きくすることができ、気泡50に加えられる圧力を小さくすることにより気泡50の寸法を小さくすることができる。気泡50の圧力の調整は、気泡50が閉じ込められた後で気泡50の寸法を変えることができるもう1つの制御方法である。
気泡50の位置は、例えば、液体樹脂と成形型10の成形面との間の界面張力を調整することにより、制御し得る。この位置はまた、液体樹脂の粘度、及び硬化性流体のコーティングからその硬化までの時間の長さを調整することにより制御することができる。
図1Bに示されるプロセスでは、気泡50が封入された後に液体樹脂が硬化されるまで、気泡50は、気泡50が窪み11の表面12及び13と接触する位置にとどまらなければならない。図4に示すように、気泡50が、窪みの中の成形型表面と接触したままとどまるかどうかは、硬化性流体30と成形型10の成形型表面12との間の界面張力f1、硬化性流体30と気泡50との間の界面張力f2、及び気泡50と成形型10の成形型表面12との間の界面張力f3の影響を受け得る。窪み内の気泡の位置は、重力及び浮力の影響も受け得る。
これらプロセス変数の中で、気泡50の位置及び形状は、特に硬化性流体と成形型10の成形型表面12との間の界面張力f1を調整することにより制御することができる。硬化性流体30と成形型との間の接触角が比較的大きい場合でも、硬化性流体30の粘度が有意に高い場合には、気泡50は窪み11の中にとどまることができる。同様に、硬化性流体30と成形型との間の接触角が比較的大きい場合でも、硬化性流体30を迅速に硬化させる(例えば、コーティング直後に紫外線硬化性樹脂を強力紫外線で照射することができる)と、気泡50は、成形面の一部として機能するのに十分な長さだけ位置にとどまることができ、得られる硬化層に気泡の形状を付与することができる。
気泡の形状を制御するための任意のその他の当該技術分野において既知の手段を用いることができる。例えば、重力、電磁気力、又は振動(超音波振動を含む)等の手段を用いて、気泡の形状を制御することが可能である。
別の態様において、少なくとも1つの凹部を有する物品から少なくとも1つの凸部を有する第2の物品を作製するための方法が提供される。少なくとも1つの凹部を有する物品を成形型(第2の成形型)として使用して、第2の物品を形成する。図1E〜図1Gは、第2の物品の製造方法の一実施形態を示している。この実施形態では、図1A〜図1Dに示されるように製造された物品31を、第2の成形型として使用することができる。第2の硬化性流体60を第2の成形型31に適用し、硬化させて、複数の凸面62を有する第2の物品61を形成する。図1E〜図1Gは、複数の凸面62を有する第2の物品61を製造するための個々の製造プロセスを示す概略断面図である。
図1A〜図1Dに概略的に示される製造プロセスと同様に、図1E〜図1Gに示される製造プロセスもまた、空気中で行うことができる。図1Eにおいて、複数の凹面32を有する第2の成形型31が提供される。図1Fにおいて、第2の硬化性流体60が第2の成形型31に適用される。第2の硬化性流体60が硬化して第2の硬化層61となる。図1Gにおいて、第2の成形型31から第2の硬化層61が取り除かれて、複数の凸面62を有する第2の物品を得る。複数の凸部62の形状は、第2の成形型31に複数の凹部を付与するのに使用される気泡50の形状に対応している。
図1Eでは、図1A〜図1Dに概略的に示されているプロセスを用いて製造することができる第2の成形型(第1の物品)31が提供される。いくつかの実施形態では、第2の成形型31は、例えば、紫外線硬化性樹脂、可溶性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等から選択される硬化性流体30から作製される。上述の硬化性流体のいずれかを硬化させて、第2の成形型31を形成することができる。
図1Fにおいて、第2の硬化性流体60が第2の成形型31に適用される。任意の好適な適用方法を用いることができるが、多くの場合、硬化性流体60はコーティングプロセスを用いて第2の成形型31に適用される。しかしながら、図1Bに概略的に示されているプロセスとは対照的に、図1Fに示されるプロセスの間、気泡は典型的には意図的に封入されない。図1Bのプロセスにおいて使用するのが困難であり得る方法を、図1Fのプロセスにおいて使用することができる。例えば、第2の硬化性流体60を第2の成形型31に適用するために、注入、加熱加圧、又は電鋳法などのプロセスを用いることができる。
第2の硬化性流体60は、硬化性流体30としての使用に関して上述した任意の材料であることができる。いくつかの例では、第2の硬化性流体60は、紫外線硬化性樹脂又は可溶性樹脂となるように選択され得る。第2の成形型31が十分な耐熱性を有する場合は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を第2の硬化性流体60に使用することもできる。第2の硬化性流体60は、例えば、増粘剤、硬化剤、架橋剤、反応開始剤、酸化防止剤、帯電防止剤、希釈剤、洗剤、顔料、又は染料などの添加剤を含有することができる。
少なくとも1つの凸部をレンズとして使用するもののようないくつかの用途では、第2の硬化性流体60は、良好な光学特性を有する硬化層の形成をもたらすポリマー樹脂である。例えば、ポリマー樹脂は、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、又はシリコーン(ポリ尿素シリコーンなどの修飾シリコーン)を含むポリマー樹脂、あるいは同様の材料であり得る。
多くの場合、硬化性流体60はコーティング法を用いて第2の成形型31に適用されるが、その他の好適な適用方法を用いることができる。好適なコーティング装置には、ナイフコーティング装置、バーコーティング装置、ブレードコーティング装置、及びロールコーティング装置が挙げられるが、これらに限定されない。コーティング法を用いる場合は、第2の物品に不具合を引き起こす可能性があるいかなる気泡又は空気をも除去するために、第2の硬化性流体60のコーティング前後に脱気プロセスを追加することができる。好適な脱気(dearation)プロセスは、多くの場合、減圧工程を含む。脱気(deareation)プロセスは、多くの場合、第2の硬化性流体60の中の、又は第2の硬化性流体60と第2の成形型31との間にある気泡又は空気を除去することができる。
第2の硬化性流体60を硬化させて第2の硬化層61を形成する。第2の硬化性流体が紫外線硬化性樹脂の場合は、紫外線で照射して第2の硬化層61を形成することができる。第2の硬化性流体60が可溶性樹脂溶液の場合は、乾燥するなどして溶媒を除去して第2の硬化層61を形成することができる。第2の硬化性流体60が熱可塑性樹脂の場合は、少なくとも軟化温度まで樹脂を冷却して第2の硬化層61を形成することができる。第2の硬化性流体60が熱硬化性樹脂の場合は、少なくとも硬化温度まで樹脂を加熱して第2の硬化層61を形成することができる。
図1Fに示されるプロセスによって、複数の凸面62を有する第2の硬化層61を形成することができる。凸面62は、第2の成形型31の凹面32の外形の反転である。具体的には、第2の硬化層61に形成された凸面62は、第2の成形型31に複数の凹部を付与するのに使用される気泡50の外形と類似している、実質的に球状の凸面であり得る。こうして、実質的に球状の凸面の配列パターンなどの少なくとも1つの実質的に球状の凸面を有する第2の物品を作製することができる。
物品61のいくつかの実施形態では、物品の第1の表面は複数の凸部を有し、第1の表面の反対側の第2の表面は平坦である。平坦な表面は、つや消し仕上げ又は光沢仕上げであることができる。どちらの面の表面粗さも、例えば、100ナノメートル未満、50ナノメートル未満、10ナノメートル未満、又は5ナノメートル未満であることができる。
図1Gに示されるプロセスでは、図1Fに示されるプロセスで形成された硬化層61を第2の成形型31から取り除くことにより、複数の凸面62を有する第2の物品61を得ることができる。製造された第2の物品61の凸面62上に、別の樹脂材料等をコーティングすることも可能である。
連続製造プロセスを用いて第2の物品を作製することができる。コーティング装置に追加の第2の成形型31を繰り返し供給することにより、追加の第2の成形型31それぞれに第2の硬化性流体60を繰り返し適用することが可能である。各追加の硬化性流体60を硬化させて、少なくとも1つの凸部を有する第2の物品61を形成することができる。図1A〜図1Dに示されるプロセス、及び図1E〜図1Gに示されるプロセスを繰り返すことにより、それぞれが複数の凹面32を有する物品31、及びそれぞれが複数の凸面62を有する第2の物品61を連続して製造することができる。
図1A〜図1Gに示されるものと同様のプロセスを用いて、第1の表面上に、並びに第1の表面の反対側の第2の表面上に少なくとも1つの凸部を有する物品を提供することができる。このようなプロセスの1つでは、少なくとも1つの凸部を有する第2の物品を作製することができる。次に、第2の物品を硬化性流体層と接触させることにより、第3の物品を作製することができる。例えば、第2の最終物品を、図1Fに示される硬化性流体層60に積層することができる。即ち、第2の最終物品と第2の成形型との間に硬化性流体層60を位置付けることができる。硬化性流体層60が硬化されると第2の物品が接着し、得られた第3の物品は、2つの対向面に複数の凸部を有することができる。次に、第2の成形型が取り除かれて第3の物品を提供することができる。別のプロセスでは、2つの第2の最終物品は、2つの第2の物品の間に位置付けられた硬化した流体層60を使用して積層され得る。硬化した流体層は、2つの第2の物品の平坦な表面に面する。
あるいは、硬化性流体層を、2つの第2の成形型31の間に位置付けることができる。硬化性流体層は、2つの第2の成形型の平坦な表面に面する。硬化性流体層を硬化させると、得られた第3の物品は、2つの対向面に複数の凹部を有する。
接着層を、第1の物品と第2の物品との間、第1の物品と別の第1の物品との間、又は第2の物品と別の第2の物品との間に位置付けて、複数の表面に複数の凹部又は凸部を有する物品を提供することができる。これらの実施形態では、接着層は、第1の物品の平坦な表面、及び第2の物品の平坦な表面に面する。
図1F及び図1Gに示されるプロセスに関しては、その他の従来の成形プロセスを用いることができる。例えば、米国特許第6,761,607号又は同第6,758,992号に記載の成形プロセスを使用することができる。
図3Bは、図1Gのプロセスに類似するプロセスを示している。図3Bは、図1Gに示す対応する複数の凹部と比べてより鋭く縁取りされた張り出し部分32aを備えた複数の凹部32を有する第2の成形型31から、第2の硬化層61を取り除くことにより、凸面62を有する第2の物品61を得るために用いることができる、例示のプロセスを示している。図3Bに例示されたプロセスにおいて、第2の成形型31及び第2の硬化層61の両方が硬い場合には、硬化層61を破損させずに第2の成形型31を分離するのは困難であり得る。
硬化層61を破損する除去プロセスが、図6A及び図6Bの断面図においてケース1として描かれている。図6Aの第2の成形型は、水又は有機溶媒に容易に溶解しない材料で作製されている。硬化層61を第2の成形型31から取り除く場合、硬化層61は第2の成形型31の張り出し部分32aに干渉する。硬化層61及び第2の成形型31の両方が硬質で可撓性でない場合に、破損が起こり得る。図6Bは、硬化層61及び第2の成形型31の両方が破損し得るのを示している。張り出し部分32bは、第2の成形型31から破断している。
硬化層61を破損せずに第2の成形型31から硬化層61を取り除く1つの方法が、ケース2に関する図6C及び図6Dの断面図にケース2として描かれている。図6Cにおいて、第2の成形型は、水溶性樹脂などの可溶性材料で形成されている。図6Dでは、第2の成形型は溶解によって取り除かれる。第2の成形型31は水で溶解するので、硬化したコーティング層61は破損せずに第2の成形型31から取り除かれる。図6Cの第2の成形型31は水溶性樹脂であるが、同様のプロセスを、有機溶媒又は酸若しくは塩基を含有する溶液などの、別の種類の溶媒で溶解され得る任意の他の成形型材料で使用することができる。
他の例において、硬化層61に熱硬化性樹脂が使用され、第2の成形型31に熱可塑性樹脂が使用されている場合は、第2の成形型31を硬化層61から容易に分離することができる。硬化層61を破損せずに硬化層61から容易に取り除くために、第2の成形型を少なくとも軟化温度まで加熱することができる。
製造された第2の物品61は、少なくとも1つの凸面62を有する物品である。いくつかの第2の物品は、格子パターン等の凸部の配列パターンを有する。多くの場合、凸面62は、第2の成形型31に複数の凹部を形成するために使用される気泡50の外側表面に対応している、実質的に球状の凸面である。基材の断面積で測定した場合、凸面62の寸法は、多くの場合、0.01μm〜1000mmの範囲内である。多くの場合、凸面62の高さは、0.1μm〜100mmの範囲内である。この範囲外の複数の凸部もまた作製することが可能であり、その寸法は、物品に関して選択された特定用途によって決定される。
いくつかの第2の物品61では、パターンに配列された複数の凸部が存在する。いくつかの配列パターンは、配列された正方格子パターンなどの格子パターンに配列される。更に、一部の物品は、実質的に全く同一の凸面62を有する。凸面62が球状で、かつ実質的に透明又は半透明である場合、それらはレンズ又はレンズのアレイとして使用することができる。凸部62の一部を、マイクロレンズ又はマイクロレンズアレイとして使用することができる。
更に、第2の物品61は、凸面62の上にコーティングされた材料の別の層を有することができる。その際、凸面62をレンズとして使用する場合は、コーティング層を保護層として使用することができ、又は屈折率を調整するために使用することができる。様々な屈折率を有する材料をレンズの最も外側の層としてコーティングすることにより、広範囲の屈折率を有するレンズを得ることができる。
第1の物品31を成形型として使用して第2の物品61を形成する場合、第1の物品31を第2の物品61から取り除く必要はない。即ち、第1の物品31は第2の物品61に隣接してとどまることができる。例えば、第2の物品61を第1の物品31に積層することができる。第2の物品61の上に、別の単一コーティング層又は複数のコーティング層を形成することができる。この場合、第2の物品61上にとどまる第1の物品31、又は任意の追加のコーティング層は、第2の物品61の保護層として、又は第2の物品61の光学特性を調整するための層として使用され得る。
図1Gに示されるように、第2の成形型31が、各凹面32が溝状部分33で囲まれた形状を有しているので、製造された第2の物品61は、各凸面62が水平壁部63で囲まれた形状を有することができる。第2の物品61の形状は物品31の反転であるので、第2の物品61は、第2の成形型31の溝状部分33に対応した水平壁部63を有する。例示の三次元物品131を概略的に示す図8、及び例示の三次元物品161を示す図9を参照のこと。各凸面62が水平壁部63で囲まれた形状を有する第2の物品61を取り扱う1つの方法は、水平壁部63をプリズム等の光学構成要素として積極的に利用することである。
その他の実施形態では、第2の物品61は複数の凸部62の間に水平壁部63を有さない。水平壁部63は、製造された第2の物品61から後処理によって除去され得る。水平壁部63が形成されるが望ましくない場合は、任意の好適な機械的、物理的、又は化学的手段でそれらを除去することができる。凸面62を有する第2の物品61をレンズ部材に適応させるときは、例えば、第2の物品61の隣接する凸面62の間に形成された水平壁部63を除去することにより、球面を有するレンズ部分がシート上に配列されているマイクロレンズを提供することが可能である。更に、凸面62の曲面部分を更に処理することで、曲率を変化させることもできる。複数の凸面62それぞれの所定の部分を切除することにより、部分的に切り取った凸面が形成された物品を製造することができる。
あるいは、水平壁部63が形成されない成形型を使用して、第2の物品を作製することができる。より詳細には、第2の成形型の隣接する凹面の間の溝状部分を排除することができる。そのような第2の成形型31の1つは、例えば、図7A〜図7Dに概略的に示されるように製造することができる。各凸面162が壁部に囲まれていない形状を有する第2の物品161を、図7E〜図7Gに示されるように製造する。図11は物品131’Aに対応する三次元の例を示し、図12は第2の成形型161に対応する三次元を示す。
図7A〜図7Dに示される製造プロセスは、図1A〜図1Dに示されるプロセスと類似している。しかしながら、一片の成形型ではなく二片から成る成形型を使用する。成形型の第1の片は、開口部のパターンなどの少なくとも1つの開口部を有する第1の層である。成形型の第2の片は、第1の層に積層される。得られた二片から成る成形型は、第1の層の開口部と第2の層の表面とで構成される窪みを有することができる。
図7Aの二片から成る成形型110は、上述の第1の層に対応する側壁部分110aと、上述の第2の層に対応する底部分110bとを有する。第1の層及び第2の層は互いに分離されており、その結果、図7Dに示されるように、側壁部分110を硬化層131と共に底部分110bから取り除くことができる。
二片から成る成形型110は、成形型10に関して上述した任意の材料で作製され得る。例えば、ポリイミド、ポリプロピレン(polypropyrene)、ポリエチレン、ポリスチレン、又はポリシクロオレフィン等の有機樹脂材料を使用することができる。あるいは、その他の有機材料、金属(例えば、ニッケル、銅、又は真ちゅう)、ガラス若しくはセラミックス等の無機材料、又は有機無機複合材料を使用することができる。好ましくは、側壁部分110a(第1の層)用に選択された材料は、底部分110b(第2の層)用に選択された材料と異なる。例えば、有機樹脂材料を側壁部分110aに使用することができ、金属、ガラス、又はセラミックス等の無機材料を底部分110bに使用することができる。
二片から成る成形型は、以下のプロセスにより作製することができる。まず、第1の層と、第1の層に積層された第2の層とを有する層状シートを作製することができる。任意の好適な方法を用いて、第1の層に開口部を形成することができる。開口部を形成するいくつかの方法において、レーザ切断等のドライエッチング法、又はマスクを使用するウェットエッチング法を用いることができる。第1の層の材料が第2の層の材料と異なる場合は、開口部のパターンは第1の層のみに形成され得る。
好適な層状シートは市販されているが、次のプロセスで製造することも可能である。第1の層を作製することができ、次に、第2の層を第1の層と接触するように提供することができる。例えば、コーティング、蒸着、電鋳法等の任意の方法で、第2の層を第1の層の上に形成することができる。例えば、ポリマー樹脂シートを第1の層として作製することができる。第2の層は、金属を化学蒸着、物理的蒸着、又は電鋳することで、第1の層の上に形成され得る。
図7Dに示されるプロセスでは、図7Cに示されるプロセスで形成された硬化層131、及び側壁部分110aを、成形型110の底部分110bから取り除く。成形型の底部分110bから取り除いた際、硬化層131と側壁部分110aとを結合して物品131’を得る。物品131’は、各凹面132が側壁部分110aで囲まれるように構成される。換言すれば、隣接する凹面132の間に溝状部分(grove-like portion)は存在しない。
図7Dに示される除去プロセスは、成形型110の底部分110bの選択的エッチングにより実施することができる。例えば、底部分110bが銅又はニッケル等の金属で作られ、側壁部分110aがポリイミド等のポリマー樹脂で作られている場合は、このような選択的エッチングで底部分110bを取り除くことができる。例えば、酸性溶液で金属を溶解することができる。
図7E〜図7Gに示される製造プロセスは、図1E〜図1Gに示されるプロセスと類似している。しかしながら、第2の物品161は、隣接する凹面132の間に溝状部分が存在しない形状を有する第2の成形型131’を使用して製造される。その結果、図7Gに示されるように、各凸面162が水平壁部に囲まれていない形状を有する第2の物品161が製造される。他の点では、図7E〜図7Gに示されるプロセスは図1E〜図1Gに示されるプロセスと同様である。
各凸面162が水平壁部で囲まれていない第2の物品161は、隣接する凹面132の間に溝状部分が存在しない第2の成形型131’を使用して得ることができる。水平壁部に囲まれていない凸面162を有する第2の物品161をレンズ部材に適応させる場合は、例えば、第2の物品は、プリズム又はリブ部分を備えない構成体を有する。第2の物品161の隣接する凸面162(レンズ部分に相当する)の間に水平壁部がないので、このような物品はマイクロレンズなどのレンズによく適している。第2の成形型131’Bの三次元描示に関する図13、及び第2の物品161Bの三次元描示に関する図14を参照のこと。
第1の物品又は第2の物品をレンズ又はレンズのアレイとして使用することに加えて、第1の物品又は第2の物品は成形型として使用することができる。例えば、第1の物品又は第2の物品を使用して金属スタンパを作製することができる。1つの例示のプロセスでは、クロム又は銅などの第1の金属層を、第1の物品の表面上、又は第2の物品の表面上に蒸着することができる。次に、ニッケル金属層などの第2の金属層を第1の金属層の上に蒸着することができる。続いて、第2の金属層を取り除くと、第1の物品又は第2の物品と同じ形状を有するニッケル金属スタンパなどの第2の金属スタンパを得ることができる。
少なくとも1つの凹部又は凹部の配列パターンを含む表面を有する第1の物品の製造方法の実施形態、第1の物品を第2の成形型として使用して第2の物品を製造する方法、第1の物品、及び第2の物品は、上述されたものに限定されず、様々なその他の実施形態は本発明の範囲内である。
これらの実施例は例証目的であり、添付された請求項の範囲を制限することを意図しない。第1及び第2の物品の実施例を製造し、試験した。添付図面を参照して、これら実施例を説明する。
(実施例1−1〜1−9)
硬化性流体と成形型表面との間の界面張力の影響について調べた。平坦な表面を有する9種類の試験用プレートを用意して、試験用プレートの平坦な表面上の硬化性流体(例えば、液体樹脂)の接触角を測定した。また、図1A〜図1Dの製造プロセスに従って試験用成形型と同じ材料でそれぞれ作製された9種類の試験用成形型を使用して、試験用物品を製造した。
液体樹脂:硬化性流体として紫外線硬化性樹脂を使用した。紫外線硬化性樹脂組成物は、90重量部(pbw)のポリエステル系ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社(DAICEL-CYTEC Co., Ltd)から商標表記エベクリル(EBECRYL)8402で市販されている)である紫外線硬化性アクリレートと、10pbwの不飽和脂肪族酸ヒドロキシアルキルエステル変性剤ε−カプロラクトン(ダイセル化学工業(Daicel Chemical Industries, Ltd.)から商標表記プラセル(PLACEL)FA2Dで市販されている)と、1pbwの光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商標表記イルガキュア(Irgacure)2959で市販されている)とを含有していた。
試験用プレート:9個の試験用プレートのそれぞれは平坦な表面を有していた。試験用プレートに使用した材料を以下に記載する。
試験用成形型:全ての試験用成形型は、深さ50μm、頂角90度、及び正方形の底部形状を有する四角錐形状の窪みを有していた。正方形底部の各辺は100μmであった。窪みは、ピッチ100μmの正方格子パターンに配列された。試験用成形型に使用した材料を以下に記載する。
試験用プレート及び試験用成形型の材料:
試験用プレート1及び試験用成形型1を、旭化成ワッカーシリコーン株式会社から商標表記ELASTOSIL RT 601で市販されている室温加硫性2成分型(RTV)シリコンゴムで作製した。
試験用プレート2及び試験用成形型2を、旭化成ワッカーシリコーン株式会社から商標表記ELASTOSIL M4470で市販されている室温加硫性2成分型(RTV)シリコンゴムで作製した。
試験用プレート3及び試験用成形型3を、日本ポリプロピレン株式会社から商標表記NOVATEC MA−3で市販されているポリプロピレンで作製した。
試験用プレート4及び試験用成形型4を、日本ポリスチレン株式会社から商標表記GPPS G9401で市販されているポリスチレンで作製した。
試験用プレート5及び試験用成形型5を、日本ポリエチレン株式会社から商標表記HY−430で市販されているポリエチレンで作製した。
試験用プレート6及び試験用成形型6を、三菱エンジニアリング・プラスチックス株式会社から商標表記IUPILON H−3000Rで市販されているポリカーボネートで作製した。
試験用プレート7及び試験用成形型7を、エクソン・モービル社(Exxon Mobil Co.)から商標表記POLYPRO3445で市販されているポリプロピレンで作製した。
試験用プレート8及び試験用成形型8を、住友化学株式会社から商標表記LG35で市販されているポリメチルメタクリレートで作製した。
試験用プレート9及び試験用成形型9を、電鋳法を用いて製造されたニッケル板で作製した。
紫外線硬化性樹脂である硬化性流体を、ナイフコーティング装置を使用して各試験用成形型の表面にコーティングして、コーティング層を形成した。コーティング装置は、幅150mmのナイフコーティング装置であった。紫外線硬化性樹脂が試験用プレートとPETフィルムとの間になるように、PETフィルムを紫外線硬化性樹脂の上に位置付けた。紫外線硬化性樹脂のコーティング厚さは150μmであった。コーティングした後、ウシオ電機株式会社から入手したUVランプからの3450mJ/cmの紫外線でコーティング層を硬化した。次に、硬化した樹脂を試験用成形型から取り除いた。
Figure 0005539894
上記試験条件下で、UV樹脂と成形型との間の接触角を、試験用プレートの材料を変えることによって変えた。接触角(UV樹脂と試験用プレートとの間)と、試験用成形型の窪みに封入された気泡50の位置及び形状との関係を検討した。表1は、液体樹脂(紫外線硬化性樹脂)と試験用プレートとの間の接触角の測定値の平均値を示している。10回測定の平均値を表1に示す。
共和界面科学社から商標表記DROPMASTER 700で市販されている機器を使用して静的接触角を測定し、静的接触角を室温で液滴法で測定した。
図5は、接触角と、成形型の窪み内の気泡の位置及び形状との関係を例示しているダイアグラムである。より詳細には、図5は、試験用成形型を使用した製造プロセスで作製された、複数の凹部の3つの代表的なタイプA〜Cを示している。図5は、製造された物品の斜視図(左)、側面断面図(中央)、及び平面図(右)である。
60度超の接触角に対応する試験用成形型1及び2を使用して作製された物品は、気泡が窪みの中に保たれていないタイプAであった。即ち、気泡は窪みの中にとどまらなかった。試験用成形型3及び7を使用して作製された物品はタイプBであった。気泡は四角錐の窪みの上部部分にとどまり、気泡の凸面の曲率は比較的小さかった(直径は比較的大きかった)。気泡の外形は、四角錐の上部側又は下部側からわかるようにほぼ球状(sherical)であった。試験用成形型4〜6、8及び9を使用して作製された物品はタイプCであった。気泡は四角錐の窪みの上部部分にとどまり、気泡の凸面の曲率はタイプBより大きかった(直径はタイプBより小さい)。気泡の外形は、四角錐の上部側又は下部側からわかるようにほぼ四つ葉形状となった。
試験結果によると、気泡の位置及び形状は、UV樹脂と成形型表面との間の界面張力(接触角)を調整することで、少なくとも部分的に制御することができる。UV樹脂の粘度、及びUV樹脂のコーティングから硬化までの時間などの様々なその他の変数もまた、気泡の位置及び形状に影響を与えることができる。例えば、UV樹脂と成形型との間の接触角が60度を超えたとしても、UV樹脂の粘度が十分に高ければ、気泡は窪みの中にとどまることができる。同様に、液体樹脂と成形型との間の接触角が60度を超えたとしても、コーティング後に強力紫外線照射によりUV樹脂を短時間で硬化すれば、UV樹脂が硬化するのに十分な時間だけ気泡がどまることができる。
(実施例2−1)
実施例2−1では、ポリプロピレン成形型を作製した。最初に、裁断機を使用して、銅板の表面に窪みを形成した。次に、銅板を酸化剤の中に浸漬して銅板の表面を酸化させた。銅板の酸化した表面上に電気メッキによってニッケル層を形成した。電気メッキの後、ニッケル層を銅板から取り除いた。クソン・モービル社(Exxon Mobil Co.)から商標表記POLYPRO3445で市販されているポリプロピレンを、200〜250℃でニッケル成形型の中に溶融し、次いで室温(20〜25℃)まで冷却した。硬化したポリプロピレン成形型をニッケル成形型から取り除いた。得られた成形型(シート)は正方格子パターンの窪みを有した。窪みは、深さ50μm、頂角90度、及び正方形の底部形状を有する複数の四角錐凹部であった。正方形底部の各辺は100μmであり、角錐はピッチ100μmで配列された。四角錐の窪みの形状は図2Aの平面図に例示されている。
ポリプロピレン成形型(シート)を切断して、厚さ50μm(幅15cm、長さ30cm)のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に貼り合わせた断片(幅8cm、長さ10cm)を作り、シート成形型を作製した。PETフィルムは、帝人デュポンフィルム株式会社(Teijin Dupon Films Japan Limited)から商標表記「帝人テトロンフィルム(TEIJIN TETRON FILM)A31」で市販されている。3Mから商標表記3Mスコッチテープ(3M SCOTCH TAPE)で市販されている両面接着テープを使用して、ポリプロピレン成形型(シート)をPETフィルムに貼り合わせた。
厚さ数十μm(幅15cm、長さ30cm)の別のPETフィルムを、透明なカバーシートとして作製した。PETフィルムは上記と同じであった。
シート成形型の表面に約10ccの紫外線硬化性樹脂を滴下した。このとき紫外線硬化性樹脂は、窪みを有する領域の一側面に沿って提供された。この実施例で使用した紫外線硬化性樹脂は、実施例1で使用したUV樹脂と同じであり、その粘度は約10,000mPas(B型粘度計で測定)であった。
カバーシートの一側面をシート成形型上に置いたが、カバーシートの残りの部分はシート成形型から離しておいた。次に、シート成形型とカバーシートとの組(「シート一組」)の一側面を、幅150mmのナイフの刃を有するナイフコーティング装置の上に設置した。続いて、一組のシートを速度16cm/秒(「コーティング速度」)でナイフの刃の下を移動させ、シートの間に紫外線硬化性樹脂を厚さ200μmで広げ、各窪みの中に成形型の周囲の空気を封入しながら、紫外線硬化性樹脂をシート成形型の窪みの上にコーティングした。コーティングプロセスは空気中で室温(約20〜25℃)で行われた。
次に、紫外線(ウシオ電機)を使用して、透明なPETカバーシートを介して3450mJ/cmの紫外線を使用して、成形型シート上の紫外線硬化性樹脂を照射した。紫外線計測器(株式会社オーク製作所のUV−350)を使用して、UV樹脂層の表面の照射強度を測定した。紫外線硬化性樹脂を重合し硬化層を形成した。重合の後、成形型シートから透明なPETカバーシートを取り外した。硬化層をポリプロピレン成形型から手で取り除いた。このやり方で、凹面を有する物品(複数の凹部の配列された格子パターンを有する物品)を紫外線硬化性樹脂から得た。
(実施例2−2)
硬化性流体は、水溶性樹脂(株式会社クラレから商標表記クラレポバール(KURARY POVAL)PVA−217で市販されている)として20重量パーセントのポリビニルアルコールと、80重量パーセントの蒸留水とを含有した。即ち、硬化性流体は、水性混合物中に20重量パーセントのPVA−217を含有していた。実施例2−1で製造した凹面を有する物品を第2の成形型として使用して、硬化性流体を複数の凹部を覆うように第2の成形型上に滴下し、次に脱気プロセスを用いて気泡欠陥の形成を防いだ。大気圧を15分間1000Pa未満に低下させた。脱気(deareation)後、硬化性流体を広げ、ナイフコーティング装置を使用して厚さ200マイクロメートルで設置した。次に、コーティング層を60℃のオーブンで2時間乾燥させて硬化層を得、その後室温で一晩置いた。乾燥後、硬化層を第2の成形型から取り除いた。ポリビニルアルコール樹脂で製造された得られた物品は凸面を有していた(物品は配列された複数の凸部の格子パターンを有していた)。
(実施例2−3)
実施例2−1で用いたのと同様の製造方法を用いて、紫外線硬化性樹脂のコーティングからその硬化までの時間を変化させて、凹面を有する物品を得た。コーティングから硬化までの時間の長さである硬化の開始時間は、0分、30分、又は60分であった。コーティングから硬化までの間の任意の時間の間、試料を周辺光下で保管した。
走査電子顕微鏡(SEM)(VE−7800、株式会社キーエンス(Keyence Co., Ltd))を使用して、凹面を有する得られた物品を撮像した。得られた画像は以下「SEM画像」と呼ばれる。実質的に垂直方向上方から観察した凹面部分のSEM画像において、凹面部分の最大直径を5ヶ所で測定した。測定値の平均値は、凹面の平均直径であると判断された。
次の表2は、この実施例に関する、コーティングから硬化までの時間と、凹面の平均直径との間の関係を示している。
Figure 0005539894
(実施例2−4)
成形型を変えたこと以外は実施例2−1に記載された通りに物品を作製した。より詳細には、ニッケル成形型を使用し、成形型に設けられた窪みの形状を四角錐から正方形柱に変更した。正方形柱はそれぞれ、正方形の各辺が115μmである正方形の底部形状を有していた。窪みは、ピッチ140μmの正方格子パターンに配列された。このニッケル成形型は銅板から作製された。裁断機を使用して銅板の表面に窪みを形成した。次に、銅板を酸化剤の中に浸漬して銅板の表面を酸化させた。次に、銅板の酸化した表面上に電気メッキによってニッケル層を形成した。電気メッキの後、ニッケル層を銅板から取り除いた。
図8は、凹面32Aを有する得られた物品31Aの斜視図を示している。物品31Aは凹部の配列パターンを有していた。各凹面は実質的に同一形状を有し、溝状部分で囲まれていた。
凹面を有する得られた物品31Aを第2の成形型として使用して、実施例2−2のものと同じ条件下で、凸面を有する物品を得た。図9は、凸面62Aを有する得られた物品61A(凸部の配列パターンを有する物品)の斜視図を示している。各凸面は実質的に同一形状を有し、壁部63Aで囲まれている。
(実施例2−5)
異なる成形型を用いたことを除いては、実施例2−1を作製するのに用いたのと同様のプロセスで、凹面を有する物品を作製した。成形型の窪みは、四角錐から四角錐台に変更された。成形型の材料は、旭化成ワッカーシリコーン株式会社のELASTSIL M4470で作製されたシリコーン樹脂シートであった。四角錐台窪みはそれぞれ、正方形底部の各辺が25μmである正方形底部形状と、正方形の上部の各辺が50μmである正方形上部形状とを有していた。窪みは、ピッチ50μmの正方格子パターンに配列された。凹面を有する物品(複数の凹部の配列された格子パターンを有する物品)が製造された。
次に、第2の硬化性樹脂が異なることを除いては、実施例2−2で用いたのと同様の条件下で、この物品を第2の成形型として使用した。この実施例では、水溶性樹脂(クラレポバール(KURARY POVAL)(商標)PVA−205、株式会社クラレ)としての15重量パーセントのポリビニルアルコールと、85重量パーセントの蒸留水とを混合した。この15重量パーセントのPVA−205水性混合物を第2の成形型にコーティングした。凸面を有するポリビニルアルコール樹脂で作製された物品(凸部の配列パターンを有する物品)を調製した。
比較例1
紫外線硬化性樹脂をコーティングした後、紫外線硬化性樹脂を真空下に15分間置いて、コーティングの際に封入された気泡を除去したことを除いては、実施例2−1のものと同様のプロセスを実施して物品を得た。気泡の外形は、得られた物品に付与されなかった。むしろ、成形型表面の形状(窪みを含む)が物品に付与された。
(実施例3−1)
硬化性流体は、20重量パーセントのポリビニルアルコール(株式会社クラレから商標表記クラレポバール(KURARY POVAL)PVA−205で市販されている)と、80重量パーセントの蒸留水とを含有した。この硬化性流体は水溶性樹脂であった。実施例2−1で使用したのと同一であるポリプロピレンシートを成形型として使用した。
液体樹脂を除いては、実施例2−1に記載の通りにコーティングプロセスを実施した。より具体的には、ナイフコーティング装置を使用して成形型に水溶性樹脂をコーティングして、厚さ200μmのコーティング層を形成した。コーティング速度は16cm/秒であり、空気は成形型の周りに封入された。
続いて、コーティング層を60℃のオーブンで2時間乾燥した。コーティング層を更に一晩室温で乾燥させて硬化層を形成した。硬化層をポリプロピレン成形型から取り除いて、水溶性樹脂で作製された凹面を有する物品を得た(物品は凹部の配列パターンを有していた)。凹面の曲率は実施例2−1の凹面の曲率より小さかった。
(実施例3−2)
実施例3−1で製造された凹面を有する物品を第2の成形型として使用して、実施例2−1で使用したのと同一である紫外線硬化性樹脂を、第2の成形型の上に厚さ200μmにコーティングした。紫外線硬化性樹脂層を50μmのPETフィルムと接触させて設置した。実施例2−2と同じやり方で大気圧を減圧することにより、脱気プロセスを実施した。次に、実施例2−1で使用したのと同じ紫外線ランプを使用して、紫外線硬化性樹脂をPETフィルム側から3450mJ/cmの紫外線で照射して、硬化層を形成した。重合の後、硬化層を第2の成形型から取り除いて、紫外線硬化性樹脂で作製した凸面を有する物品を得た(物品は凸部の配列パターンを有していた)。
(実施例3−3)
実施例3−1に記載のプロセスと同様のプロセスで物品を作製したが、硬化性流体中のポリビニルアルコール濃度が異なっていた。ポリビニルアルコールは、株式会社クラレから商標表記クラレポバール(KURARY POVAL)PVA−205で市販されている。蒸留水をポリビニルアルコールと混合して、それぞれ、5重量%のPVA−205、10重量%のPVA−205、15重量%のPVA−205、25重量%のPVA−205、及び30重量%のPVA−205を有する水性混合物を調製した。硬化性流体組成物の調製後、図2Aに示されるポリプロピレン成形型の上に各試料を厚さ200μm、コーティング速度16cm/秒でコーティングした。
各コーティング層を60℃のオーブンで2時間乾燥し、更に室温(約25℃)で一晩乾燥させて、硬化層を形成した。その後、各硬化層をポリプロピレン成形型から取り除いて、ポリビニルアルコールで作製された凹面を備える物品を得た。
凹面の実質的に垂直方向上方から観察したSEM画像において、凹面部分の最大直径を5ヶ所で測定した。測定値の平均値は、凹面の平均直径であると判断された。
表3は、この実施形態に関する、水溶性樹脂の粘度(濃度)と、凹面の平均直径との間の関係を示している。
Figure 0005539894
(実施例3−4)
実施例3−1に関して記載されたのと同様の製造プロセスを用いた。ポリビニルアルコール水溶性樹脂(株式会社クラレのクラレポバール(KURARY POVAL)PVA−205)の20重量パーセントの水性混合物を調製した。実施例2−1で記載したようなポリプロピレン成形型を使用して、成形型に水溶性樹脂を、厚さ200μm、コーティング速度16cm/秒でコーティングして、6つの試料を作製した。
第1の試料を25℃のオーブンで2時間乾燥させ、第2の試料を60℃のオーブンで2時間乾燥させ、第3の試料を80℃のオーブンで2時間乾燥させ、第4の試料を100℃のオーブンで2時間乾燥させ、第5の試料を120℃のオーブンで2時間乾燥させ、第6の試料を140℃のオーブンで2時間乾燥させた。続いて、これら6つの試料を室温で一晩乾燥させて、硬化層を形成した。その後、硬化層をポリプロピレン成形型から取り除いて、水溶性樹脂で作製された凹面を有する6つの物品を得た。
実質的に垂直方向上方から観察した凹面部分のSEM画像において、凹面部分の最大直径(温度120℃以上で乾燥した試料の場合は対角長さ)を5ヶ所で測定した。測定値の平均値は、凹面の平均直径であると判断された。
表4は、乾燥温度と、本発明の一実施形態における凹面の平均直径との間の関係を示している。
Figure 0005539894
(実施例3−5)
実施例3−1と同様に、水溶性樹脂(株式会社クラレのクラレポバール(KURARY POVAL)PVA−205)としてポリビニルアルコールの20重量パーセントの水性混合物を調製した。次に、成形型の周りの空気を封入しながら、コーティング速度1.44cm/秒、4.03cm/秒、及び23.36cm/秒で、溶液を成形型にコーティングした。
その後、3つのコーティング層を60℃のオーブンで2時間乾燥させ、更に室温で一晩乾燥させて、硬化層を形成した。その後、全ての硬化層をポリプロピレン成形型から取り除いて、水溶性樹脂で作製された凹面を有する物品を得た(凹部の配列パターンを有する物品)。
実質的に垂直方向上方から観察した凹面部分のSEM画像において、凹面部分の最大直径を5ヶ所で測定した。測定値の平均値は、凹面の平均直径であると判断された。
表5は、水溶性樹脂混合物のコーティング速度と、本発明の一実施形態における凹面の平均直径との間の関係を示している。
Figure 0005539894
(実施例4−1)
熱可塑性樹脂をこの実施例の硬化性流体として使用した。より具体的には、熱可塑性樹脂は、イーストマン・ケミカル・ジャパン株式会社(Eastman Chemical Japan Co., Ltd.)から商標表記LDPEC13で市販されているポリエチレンであった。四角錐の窪みの正方格子パターンを有するニッケルシートを成形型として使用した。これら四角錐の窪みの深さは25μmであり、頂角90度、及び正方形の底部形状を有した。正方形底部の各辺は50μmであり、複数の凸部はピッチ50μmで配列された。実施例2−4に記載の通りにニッケルシートを作製した。
加熱したナイフコーティング装置を使用して熱可塑性樹脂を成形型にコーティングして、コーティング層を形成した。より具体的には、樹脂が十分な流動性を有する温度(140℃)まで熱可塑性樹脂を加熱し、成形型の周りの空気を封入しながら、コーティング速度16cm/秒、厚さ200μmで成形型に熱可塑性樹脂をコーティングした。
続いて、コーティング層を室温まで冷却して硬化層を形成した。その後、硬化層をニッケル成形型から取り除いて、熱可塑性樹脂で作製された凹面を有する物品を得た(物品は凹部の配列パターンを有していた)。
(実施例4−2)
実施例4−1で製造された凹面を有する物品を第2の成形型として使用して、実施例2−1で使用したものと同じ紫外線硬化性樹脂を第2の成形型に厚さ200μmまでコーティングした。50μmのPETフィルムを紫外線硬化性樹脂と接触させて設置して、ローラーで押圧した。実施例2−2と同じ方法で大気圧を減圧して脱気プロセスを実施した。次に、実施例2−1で使用したのと同じ紫外線ランプを使用して、UV樹脂をPETフィルム側から3450mJ/cmの紫外線で照射した。紫外線硬化性樹脂を重合して硬化層を形成した。重合の後、硬化層を第2の成形型から取り除いて、凸面を有する紫外線硬化性樹脂で作製された物品を得た(凸部の配列パターンを有する物品)。
(実施例5−1)
厚さ75μmのポリイミドシートの上に厚さ5μmの銅層を有する多層フィルムを提供した。フィルムは、日本インターコネクション・システムズ株式会社から商標表記TWO LAYER COPPER CLAD SUBSTRATEで市販されている。得られた多層フィルムのポリイミド側にレーザビームを照射して窪みを形成して、成形型を製造した。ポリイミド層は、図7Aの側壁部分(第1の層110a)に対応し、銅層は底部分(第2の層110b)に対応する。
より具体的には、ビーム社(Beam, Inc.)(日本、東京)がポリイミド層に開口部を作製した。マスクを使用してエキシマレーザビームをポリイミド層側に照射して、ポリイミド層のみに開口部アレイパターンを形成し、銅層の表面を各開口部の底部に露出させて、正方格子パターンに配列された窪みを有する成形型を製造した。各窪みは複数の円筒形凹部を有していた。この場合、表6に示されるような異なる配列パターンを有する成形型#1及び成形型#2を、2種類のマスクで作製した。
Figure 0005539894
成形型#1は、ピッチ250μmで形成された複数の円筒形凹部の形状の100個の窪み(10×10格子)を有し、各円筒形凹部は、上面側の直径151.63μm、及び底面側(銅(cupper)層側)の直径137.01μmを有する断面形状を有する。成形型#2は、ピッチ80μmで形成された複数の円筒形凹部の形状の100個の窪み(10×10格子)を有し、各円筒形凹部は、上面側の直径50.54μm、及び底面側(銅(cupper)層側)の直径36.34μmを有する断面形状を有する。
図10Aは、開口部115Aを有する成形型#1(110A)を上部から見た平面図であり、図10Bは、開口部115Bを有する成形型#2(110B)を上部から見た平面図である。
(実施例5−2)
凹面を有する物品を上述の成形型#1を使用して製造した。この実施例の硬化性流体として、紫外線硬化性オリゴマーであるポリエステル系ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック株式会社(DAICEL-CYTEC Co., Ltd.)から商標表記エベクリル(EBECRYL)8402で市販されている)90重量部と、不飽和脂肪族酸ヒドロキシアルキルエステル変性剤ε−カプロラクトン(ダイセル化学工業(Daicel Chemical Industries, Ltd.)から商標表記プラセル(PLACEL)FA2Dで市販されている)10重量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から商標表記イルガキュア(Irgacure)2959で市販されている)1重量部と、を混合して、紫外線硬化性樹脂を調製した。
硬化したコーティング層の形成後に銅(cupper)層を除去するためのエッチング液を、6.4重量部の過酸化水素と、18重量部の濃縮硫酸と、33重量部の硫酸銅と、42.6重量部の蒸留水とを混合して調製した。
ナイフコーティング装置を使用して紫外線硬化性樹脂を成形型にコーティングして、コーティング層を形成した。より具体的には、実施例2−1と同じやり方で、紫外線硬化性樹脂を成形型の上に、成形型の周りの空気を封入しながら、コーティング速度16cm/秒、厚さ200μmでコーティングした。次に、実施例2−1の紫外線ランプを使用して、3450mJ/cmの紫外線で紫外線硬化性樹脂を照射した。紫外線硬化性樹脂を硬化させた(例えば、重合及び硬化)。
硬化後、45℃に加熱されたエッチング液を使用して銅層(底部分)を除去した。得られた物品を蒸留水ですすいだ。物品は凹面を有していた(物品は凹部の配列パターンを有していた)。図11は、凹面132Aを有する得られた物品131’Aの斜視図を示している。正方格子パターンで物品に配列された隣接する凹面の間にポリイミド部分が存在しないので、隣接する凹面の間に溝状部分が存在しない、凹面を有する物品を得ることができた。
凸面を有する物品を、凹面を備えて製造された物品を使用して製造した。硬化性樹脂は、水溶性樹脂(株式会社クラレから商標表記クラレポバール(KURARY POVAL)PVA−217で市販されている)としての20重量パーセントのポリビニルアルコールと、80重量パーセントの蒸留水と、を含有する混合物であった。実施例5−1で製造された凹面を有する物品を第2の成形型として使用して、20重量パーセントのPVA−217水性混合物を第2の成形型の上に厚さ200μmまでナイフコーティング装置を使用してコーティングした。実施例2−2と同じ方法で大気圧を減圧して脱気プロセスを実施した。
コーティング層を60℃のオーブンで2時間、及び室温(約25℃)で一晩乾燥させて、硬化層を得た。乾燥後、硬化層を第2の成形型から取り除いて、ポリビニルアルコール樹脂から作製された凸面を有する物品を得た(物品は凸部の配列パターンを有していた)。図12は、凸面162Aを有する得られた物品161Aの斜視図を示している。
物品の各凸面は溝状部分で囲まれていない。即ち、水平壁部で囲まれていない凸面を有する第2の物品を得た。
(実施例5−3)
成形型#1の代わりに成形型#2を使用して、凹面を有する物品を製造した。その際、成形型を除いては実施例5−2と同じ条件で物品を製造した。
図13は、凹面132Bを有する得られた物品131’Bの斜視図を示している。実施例5−2で作製した物品と同様に、隣接する凹面の間に溝状部分のない凹面を有する物品を得た。上記のように製造した物品を第2の成形型として使用して、凸面を有する物品を製造した。その際、第2の成形型を除いては上記実施例5−2と同じ条件で第2の物品を製造した。
図14は、凸面162Bを有する得られた物品161Bの斜視図を示している。第2の成形型の各凹面は溝状部分で囲まれていないので、第2の物品は、水平壁部に囲まれていない凸面を有している。

Claims (4)

  1. 少なくとも1個の凹部を含む表面を有する物品の製造方法であって、
    成形型の表面の少なくとも一部と、前記成形型の表面の少なくとも一部の上に配置された硬化性流体との間に、少なくとも1個の気泡を導入すること、および、
    前記気泡を成形面の少なくとも一部として用いて、前記硬化性流体に少なくとも1個の凹部を付与すること、を備える、方法。
  2. 前記方法は、前記硬化性流体を、前記成形型の表面の少なくとも一部の上に適用するとをさらに備える、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法は、前記硬化性流体に前記少なくとも1個の凹部を付与した後に、前記硬化性流体を硬化させることをさらに備える、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記成形型は、パターンに配列された複数の窪みを表面に有し、
    前記少なくとも1個の気泡を導入することは、前記成形型表面と前記複数の窪みの中の前記硬化性流体との間に複数の気泡を封入することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
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