<第1の実施形態>
<画像読取装置の構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る画像読取装置の構成例について説明する。図1に示すように、画像読取装置100は、自動原稿給送装置A及び読取装置本体Bを備える。自動原稿給送装置Aにおいて、原稿トレイ101は原稿102を積載する。原稿トレイ101には、原稿102の長さを判定する原稿長さ検知センサ135が設置されている。また、原稿トレイ101には、トレイボリュームセンサ136が設置されている。また、図示しない原稿幅規制板により原稿102の幅を規制し、その幅に応じたボリュームセンサの抵抗値から搬送される原稿102の幅が搬送前に確定される。
原稿トレイ101の上方には、給紙ローラ103が設けられている。給紙ローラ103は、分離搬送ローラ104と同一駆動源に接続され、その回転に応じて回転し、原稿102を給紙する。給紙ローラ103は、通常、ホームポジションである上方の位置に退避しており、原稿102のセット作業を阻害しないようになっている。給紙動作が開始されると、給紙ローラ103は、図1において点線で示すように、下降して原稿102の上面に当接する。給紙ローラ103は、図示しないアームに軸支されているため、アームが揺動することにより上下に移動する。
分離搬送従動ローラ105は、分離搬送ローラ104の対向に配置されており、分離搬送ローラ104に向けて押圧されている。分離搬送従動ローラ105は、分離搬送ローラ104より僅かに摩擦が少ないゴム材等から形成されており、分離搬送ローラ104と協働して、給紙ローラ103によって給紙される原稿102を1枚ずつ分離して給紙する。
引き抜きローラ106及びその対向に配置される引き抜き従動ローラ107は、分離搬送ローラ104及び分離搬送従動ローラ105により1枚ずつに分離された原稿102を引き抜き、搬送ローラ108へ向けて原稿を加減速させて搬送する。引き抜きローラ106から搬送ローラ108への搬送経路上には、搬送中の原稿幅を確定するための異系列幅検知センサ137が原稿幅方向に複数個設置されている。幅の異なる複数枚の原稿を原稿トレイ101にセットした場合、原稿トレイ101では最も幅の広い原稿の幅でサイズが確定される。そこで、トレイボリュームセンサ136の判定結果だけではなく、様々な原稿幅を搬送中に判定できるように、搬送経路中に異系列幅検知センサ137を設置する。
搬送ローラ108及びその対向に配置される搬送従動ローラ109は、引き抜きローラ106及び引き抜き従動ローラ107と同一の駆動源により回転し、レジストローラ110へ向けて原稿を搬送する。レジストローラ110及びレジスト従動ローラ111は、分離部で給紙、搬送された原稿102の先端を揃え、静止したレジストローラ対のニップ部に向けて分離した原稿102の先端を突き当て、原稿102にループ(撓み)を生じさせてその先端を揃える。そして、リードローラ112及びリード従動ローラ113は、原稿102を流し読みガラス126に向けて搬送する。流し読みガラス126の対向側には、プラテンローラ114が配置されている。
CCDラインセンサ134は、流し読みガラス126上(第1の画像読取部)を通過する原稿102の表面の画像情報を読み取る。CCDラインセンサ134での原稿102の表面画像の読み取りが終了すると、リードローラ115及びリード従動ローラ116は、原稿102をCIS(コンタクトイメージセンサ)123に向けて搬送する。
ジャンプ台125は、流し読みガラス126から原稿102をすくい上げるためのものである。CIS123の対向には、プラテンローラ122が配置されている。CIS123は、流し読みガラス124上(第2の画像読取部)を通過する原稿102の裏面の画像情報を読み取る。リードローラ117及びリード従動ローラ118は、原稿を排紙ローラ119に向けて搬送する。そして、排紙ローラ119は原稿を排紙トレイ121に排出する。このとき、排紙ローラ119と排紙従動ローラ120は加減速制御を行い、原稿を排紙トレイ121に整列した状態で排紙する。
読取装置本体Bは、読み取り原稿面に対して光を照射するキセノンランプ129、及び原稿102からの反射光をレンズ133及びCCDラインセンサ134に導くミラー130、131、132を有する。キセノンランプ129及びミラー130は、不図示の第1ミラー台に取り付けられている。また、ミラー131、132は、不図示の第2ミラー台に取り付けられている。第1及び第2ミラー台は、読取装置フレーム127に固定されるワイヤ支持台及びワイヤによって駆動モータと接続され、駆動モータの回転駆動により原稿台ガラス128と平行に移動する。原稿102からの反射光は、ミラー130、131、132を介してレンズ133に導かれ、レンズ133によってCCDラインセンサ134の受光部に結像される。CCDラインセンサ134は、結像した反射光を光電変換し、入射光量に応じた電気信号を出力する。CIS123も同様に原稿102からの反射光を受光素子で光電変換し、入射光量に応じた電気信号を出力する。
上記構成を有する読取装置本体Bは、原稿102を原稿台ガラス128上に載置し、第1ミラー台及び第2ミラー台を副走査方向(図中右方向)に移動させながら原稿102を読み取る原稿固定読取モードを有する。また、第1ミラー台及び第2ミラー台を停止させた状態で、自動原稿給送装置Aによって原稿102を搬送させながら、流し読みガラス126の位置で原稿を読み取る流し読みモードを有する。流し読みモードでは、流し読みガラス124を介してCIS123により原稿102の裏面の画像情報を読み取ることもできる。
<画像読取部>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る画像読取装置100における画像読取部300の構成例について説明する。ここでは、CCDラインセンサ134から出力される画像信号を処理する構成について説明するが、CIS123から出力される画像信号も同様の構成により処理される。画像読取部300は、CCD駆動回路302、A/D変換部303、画像処理ASIC304、及びDRAM305を備える。
CCD駆動回路302は、CCDラインセンサ134を駆動制御する。A/D変換部303は、CCDラインセンサ134から出力されるアナログデータをディジタルデータに変換する。CCDラインセンサ134は、原稿からの反射散乱光を赤(RED)、緑(GREEN)、青(BLUE)の各色に色分解して読み取り、A/D変換部303へR、G、Bの画像データをアナログ出力する。A/D変換部303では、CCDラインセンサ134からのアナログ画像データR、G、Bをディジタル画像データR’、G’、B’に変換して出力する。そのディジタル画像データR’、G’、B’に対して、画像処理ASIC304は、キセノンランプ129の照度ムラやCCDラインセンサ134の画素毎のノイズなどの読取特性差を補正する、いわゆるシェーディング補正などの画像処理を行う。画像処理ASIC304によって処理された画像データは、一次保存用のDRAM305に保存される。
画像処理ASIC304において、シェーディング補正を含む画像処理を行った画像データR1、G1、B1は、図示しない画像処理装置に送られる。また、CCDラインセンサ134及びCIS123は、約7500画素の受光画素が1ラインに並び、RGBそれぞれ計3ライン分で構成され、A3サイズの原稿の短手方向297mmを600dpi(dot/inch)で読み取ることが可能である。
<画像処理部>
次に、図4を参照して、画像処理ASIC304からの画像データの出力先である画像処理部400の構成例について説明する。画像読取部300によって読み取られた画像の3色分解成分R1,G1,B1の1つであるG1信号は、文字/画像判定部411に入力される。文字/画像判定部411は、G1信号から注目画素が文字や線画などの線画像か、または、写真や印刷画像などの階調画像であるかを判定し、その結果を文字/画像判断信号TIとして出力する。文字/画像判断信号TIは、空間フィルタ係数記憶部412及び黒文字/色文字/画像判定信号発生部419に出力される。空間フィルタ係数記憶部412は、例えばROM等で構成され、注目画素が文字や線画を示す場合は文字用の空間フィルタ係数が選択され、階調(中間調画像)を示す場合は階調画像用フィルタ係数がそれぞれ選択される。
カラー画像の3色分解信号R1,G1,B1は、それぞれ第1の色空間変換部401に入力され、明るさを表す明度信号L1及び色味を表す色度信号Ca1、Cb1に変換される。
その後、第1の色空間変換部401によって変換された明度信号L1、色度信号CA1,Cb1は、それぞれ遅延部402に入力される。
遅延部402では、明度信号L1がNライン分(Nは1以上の整数)、色度信号Ca1,Cb1がN/2ライン分それぞれ記憶される。また、遅延部402は、5×5画素の空間フィルタ処理を行うとき、過去4ライン分の明度信号L1と、現在の1ライン分の明度信号L1との、計5ライン分のデータをエッジ強調量抽出部413へ出力する。さらに、遅延部402は、色度信号Ca1,Cb1について、過去の4/2=2ライン分及び現在の1ライン分の計3ライン分のデータを彩度量抽出部414に出力する。遅延部402から出力されたNライン分の明度信号L1については、エッジ強調量抽出部413においてエッジ強調補正量εが求められる。このエッジ強調補正量εは、エッジ強調量分配部416へ供給される。
遅延部402から出力されたN/2ライン分色度信号(Ca1、Cb1)については、彩度量抽出部414において色の鮮やかさを表す彩度信号Sが求められる。
ここで、彩度信号Sが所定値(後述する閾値ρ)より小さい場合はその画素が無彩色(モノクロ)であることを示し、彩度信号Sが所定値より大きい場合は有彩色(カラー)であることを示す。彩度量抽出部414によって求められた彩度信号Sは、無彩色/有彩色判定部415及びエッジ強調量分配部416に出力される。
無彩色/有彩色判定部415は、彩度量抽出部414から出力される彩度信号Sによって、その画素が無彩色(モノクロ)であるか、有彩色(カラー)であるかを判定し、判定信号KCを出力する。判定信号KCは、予め定められた閾値ρを用いて、以下の式(1)で求められる。
S<ρのとき、 KC=0(無彩色)
S>=ρのとき、KC=1(有彩色) 式(1)
この判定信号KCの判定閾値ρは、後述するように、色判定領域の切り替えに従って切り替えられる。
上述した3つの係数、即ち、エッジ強調量ε、彩度信号S、判定信号KCに基づき、エッジ強調量分配部416は、明度信号L1のエッジ強調補正量ε1と、色度信号(Ca1,Cb1)のエッジ強調補正量εcとを生成する。さらに、エッジ強調量分配部416は、生成したエッジ強調補正量ε1及びエッジ強調補正量εcを、エッジ強調部403へ出力する。
エッジ強調量分配部416で生成されたエッジ強調補正量ε1、εcは、遅延部402からのL1,Ca1,Cb1信号とともに、エッジ強調部403に供給される。エッジ強調部403は、遅延部402からの明度信号L1に対しては、エッジ強調補正量ε1を加算し、色度信号Ca1、Cb1に対しては、エッジ強調補正量εcを乗算する処理を行い、L2,Ca2,Cb2を生成する。
エッジ強調処理がなされると、その信号L2,Ca2,Cb2は第2色空間変換部404に供給され、ここでR,G,Bの値(R2,G2,B2信号)に逆変換される。R2,G2,B2信号は、輝度濃度変換部405に入力され、濃度信号C1,M1,Y1に変換される。
濃度信号C1、M1、Y1に対しては、色補正部406で下色除去(UCR:Under Color Removal)やグレー置換(GCR:Gray Component Replacement)が行われる。さらに、色補正部406は、黒成分信号Kを生成し、色補正などの色処理を行い、濃度信号C2,M2,Y2,K2を出力する。色補正部406は、黒文字/色処理/画像判定信号発生部419からのTC信号に従ってこの処理を行う。
黒文字/色処理/画像判定信号発生部419は、無彩色/有彩色判定部415の判定結果である色判定信号KC、及び文字/画像判定部411の判定結果であるTI信号を入力とし、上記TC信号を求める。例えば、画像信号に対しては、ハイライトの色再現性を重視した色補正を行い、色文字や黒文字信号に対しては、下地色を飛ばしたハイライト再現を除去した色補正を行う。
2値化部407では、誤差拡散処理を用いて多値画像を2値化したC3,M3,Y3,K3信号を送出する。誤差拡散処理とは、表示できる色の階調が限られていて、それより細かい階調(色数)を表現したいときに、画像を細かい点の集まりとして表現し、色が濃い部分は色の濃い点を密集させ、色の薄い部分は点の密度を下げる処理をいう。誤差拡散処理が行われた画像は、実際の色数よりも多い色数で表現したように見える。
平滑化/解像度変換部408では、文字/画像判定部411の判定結果であるTI信号を参照しながら、TI=1(文字部分)である場合には、主走査方向、又は副走査方向に高解像度に変換し、ノッチフィルタ処理に代表されるエッジ補正処理を行う。ノッチフィルタとは、帯域阻止フィルタ (Band−elimination filter:BEF) とも呼ばれ、画像信号の特定の周波数成分を減衰させるフィルタのことを意味する。この平滑化/解像度変換部408の出力C4,M4,Y4,K4信号は、プリンタ部420に出力され、カラー画像で印刷が行われる。
<ACS判定>
原稿種別判定部418は、上述の無彩色/有彩色判定部415の判定信号KCが有彩色として出力された画像信号を主走査方向、副走査方向に認識して色判定に関する最終的な判断を行う。以下では、この原稿種別判定部418の動作及び領域制限係数記憶部417の役割について詳細に述べる。
まず、図5を参照して、本実施形態に係る原稿種別判定部418の構成例について説明する。原稿種別判定部418は、無彩色/有彩色判定部415が出力する色判定信号KCを順次計算して、原稿がモノクロかカラーかを判定する。まず、無彩色/有彩色判定部415から順次送られてくる無彩色/有彩色判定信号KCは、原稿領域判定部1001に入力される。原稿領域判定部1001は、原稿に関連するパラメータに基づき、原稿種別判定(ACS判定)を実施する有効領域か否か、或いは、有効領域内であっても複数領域に分割し、各領域については個別の判定閾値によって判定するか否かを判定する。本実施形態では、原稿に関連するパラメータとは、原稿のサイズ及び坪量を示す。
図6A及び図6Bを参照して、ACSの有効領域(以下では、切替領域とも称する。)及び制限領域について説明する。原稿領域判定部1001は、原稿全読取領域に対し、CCDラインセンサ134の主走査方向に対応する原稿上の主走査方向と、CCDラインセンサ134の副走査方向に対応する原稿上の副走査方向とにおいて、ACSの判定処理を制限する。また、原稿領域判定部1001は、原稿の主走査方向、副走査方向において、有効範囲内で複数領域に分割して、各領域に判定閾値の個別設定を行ってもよい。
図6Aは、主走査方向の判定処理に制限、又は、有効領域の範囲内で複数領域に分割して各領域に判定閾値を個別に設定する例を示す。図6Aでは、3つの主走査マスク領域1、2、3において主走査方向に制限を加え、有効領域の1つの領域(主走査切替領域2)で有効範囲内において複数領域(主走査切替領域1、2、3)に分割し、当該分割領域に判定閾値の個別設定を行うものとする。本実施形態では、3つの制限(マスク)領域と有効領域内での分割を3領域にしているが、制限する或いは分割する領域の数はこの数に限定されるものではない。なお、図6A及び図6Bは、判定処理における有効領域と制限領域とを模式的に示したものであり、以下で説明する各領域の開始位置及び終了位置を示す画素値を正確に示したものではない。つまり、以下で説明する画素値は、本発明の一例であり、他の設定値が使用されてもよい。
制限を与える領域及び有効領域内での分割(主走査切替領域2)は、領域制限係数記憶部417に設けられたレジスタ値(1101〜1107)を設定することにより行われる。このレジスタ設定値は、ROMなどに予め設定しておいてもよいし、画像読取装置100の操作部から入力してもよい。
図6Aに示すように、原稿種別判定で利用する主走査方向領域は、Reg_width1107で決定される。ここでは例として、Reg_width=7500画素としておく。また、主走査方向の左右端部100画素を制限領域とする場合、Reg_main0_mask1101及びReg_main2_mask1106は、それぞれ主走査方向の開始位置及び主走査方向の終了位置から100画素ずつ有効領域を制限する(マスクする)ため、それぞれの開始位置は、
Reg_main0_mask_start=0
Reg_main2_mask_start=7400
またそれぞれの終了位置は、
Reg_main0_mask_end=99
Reg_main2_mask_end=7499
と設定する。
また、主走査切替領域2の制限領域(主走査マスク領域2)については、制限領域のイネーブル信号の方を優先するため、主走査切替領域2は、主走査マスク領域2で分断される。主走査マスク領域2、つまり、Reg_main1_mask1104は、例えば、以下のように設定する。
Reg_main1_mask_start=2100
Reg_main1_mask_end=2299
主走査切替領域1〜3については、Reg_main0_enable1102、Reg_main1_enable1103、Reg_main2_enable1105でそれぞれ設定する。例えば、以下のように設定する。
Reg_main0_enable_start=100
Reg_main0_enable_end=2099
Reg_main1_enable_start=2100
Reg_main1_enable_end=4199
Reg_main2_enable_start=4200
Reg_main2_enable_end=7399
上記のように各レジスタを設定することで、主走査方向で制限を与える領域及び有効領域内での分割を柔軟にできる。
さらに、主走査切替領域1と主走査切替領域3が同じ判定閾値でもよい場合(主走査切替領域2のみ判定閾値を厳格、あるいは、緩和する場合を想定)や、イネーブル信号の大きい番号のものが優先されると決められている場合を想定する。このような場合、Reg_main0_enable1102、及び、Reg_main1_enable1103の設定だけでよく、Reg_main2_enable1105は使用しなくてもよい。つまり、以下のように設定をする。
Reg_main0_enable_start=100
Reg_main0_enable_end=7399
Reg_main1_enable_start=2100
Reg_main1_enable_end=4199
このような設定を許すASIC構成とすることで、少ないレジスタ設定で柔軟な領域分割が可能となる。この考え方は、以下で説明する副走査方向の領域設定についても適応できる。
同様に、図6Bでは、原稿種別判定で利用する副走査方向領域は、Reg_height1117で決定される。ここでは例として、Reg_height=10000ラインとしておく。また、副走査方向の上下端部200画素を判定制限とする場合、Reg_sub0_mask1111及びReg_sub2_mask1116は、それぞれ副走査方向の開始位置及び副走査方向の終了位置から200画素ずつ有効領域を制限する(マスクする)ため、それぞれの開始位置は、
Reg_sub0_mask_start=0
Reg_sub2_mask_start=9800
またそれぞれの終了位置は、
Reg_sub0_mask_end=199
Reg_sub2_mask_end=9999
と設定する。
また、副走査切替領域3内の制限領域(副走査マスク領域2)については、制限領域のイネーブル信号の方を優先するため、副走査切替領域3は、副走査マスク領域2で分断される。副走査マスク領域2、つまり、Reg_sub1_mask1115は、例えば、以下のように設定する。
Reg_sub1_mask_start=7500
Reg_sub1_mask_end=7599
副走査切替領域1〜3については、Reg_sub0_enable1112、Reg_sub1_enable1113、Reg_sub2_enable1114でそれぞれ設定する。例えば、以下のように設定する。
Reg_sub0_enable_start=200
Reg_sub0_enable_end=2499
Reg_sub1_enable_start=2500
Reg_sub1_enable_end=2799
Reg_sub2_enable_start=2800
Reg_sub2_enable_end=9799
上述した主走査方向又は副走査方向の制限を与える領域及び有効領域内での分割は、各方向で独立に設定できる。また、主走査方向のみ、副走査方向のみ、又は、主走査・副走査両方向にレジスタ設定を有効/無効を制御できる構成としてもよい。
次に、主走査方向、副走査方向で独立に設定された制限領域及び有効領域内での分割が、重なる領域について図7A、図7Bを用いて説明する。図7Aは、主走査/副走査の制限領域が重なっている様子を表すものである。図7Aでは説明を容易にするため、主走査方向の制限領域1201と副走査方向の制限領域1202とが1つずつ設定された場合を想定し、その重なる領域1203が1つ存在する。複数の制限領域を設定する場合には、重なる領域が複数存在することになる。主走査方向の制限領域1201は、主走査方向の指定領域の判定を制限することを表す。副走査方向の制限領域1202は、副走査方向の指定領域の判定を制限することを表す。主走査方向及び副走査方向の制限領域が重なる領域1203は、主走査・副走査の両方向の判定を制限することを表す。
図7Bは、主走査方向の制限領域を切替領域に切り替え、その切り替え部分と副走査の制限領域が重なっている様子を表すものである。図7Bでは説明を容易にするため、主走査方向の切替領域(有効領域)1211と副走査方向の制限領域1212とが1つずつ設定された場合を想定し、その重なる領域1213が1つ存在する。複数の切替領域又は複数の制限領域を設定する場合には、重なる領域が複数存在することになる。主走査方向の切替領域1211は、主走査方向の指定領域の判定閾値を変更することを表す。副走査方向の制限領域1212は、副走査方向の指定領域の判定を制限することを表す。切替領域1211及び制限領域1212が重なる領域1203は、主走査・副走査の両方向の判定を制限することを表する。つまり、制限領域の方が切替領域よりも優先されることを意味する。ここでの例では、重なる部分は、主走査方向、副走査方向に関わらず判定を制限する領域を優先する方式を採用したが、主走査方向(一方の方向)の制限のみ有効にしたり、副走査方向(他方の方向)の制限のみ有効にしたり、主走査・副走査両方向の制限を有効にしたりしてもよい。つまり、制限領域は、主走査方向及び副走査方向のうち、一方向のみを有効にしてもよいし、両方向を有効にしてもよい。また、これらの3パターンから何れかの方式を選択するようにしてもよいし、レジスタなどで設定を切り替えられるようにしてもよい。
次に、図8を参照して、第1主走査色群認識部1002及び主走査カウント部1003の処理フローについて説明する。第1主走査色群認識部1002は、主走査方向に有彩色が存在するか否かを判定する。具体的には、原稿領域判定部1001で制限あるいは領域分割を受けた上で判定される無彩色/有彩色判定信号KCは、ACS_MAIN信号、又は、ACS_SUB信号として出力される。第1主走査色群認識部1002は、主走査方向に連続した有彩色画素の固まりが所定数以上あるか否かを判定する。ここで、原稿領域判定部1001で制限又は領域分割を受けた上で判定される無彩色/有彩色判定信号KCは、制限領域範囲では、一律にKC=0(無彩色)として判定する。一方、分割した各領域においては、各領域で判定したい閾値ρへと変更した上で判定する。なお、以下で説明するSに続く番号は、各フローチャートのステップ番号を示す。
図8に示すS1301において、原稿種別判定部418は、原稿領域判定部1001からの出力信号を設定する。具体的には、図6A乃至図7Bで示したように、主走査方向や副走査方向の制限領域及び分割領域(有効領域)が設定される。設定された制限領域については、以下で説明する処理フローが行われない。また、分割領域については、以下で説明する処理フローにおいて、上記判定閾値ρ、後述する有彩色判定画素の所定数X、そのブロック数Y、又は有彩色ライン数Zが各領域で変更される。
次に、S1302において、第1主走査色群認識部1002は、主走査方向に有彩色と判定された画素が連続しているか否かを判定する。続いて、S1303において、第1主走査色群認識部1002は、主走査方向への有彩色判定画素の所定数Xの連続を1つのブロックとして検出する。さらに、S1304において、第1主走査色群認識部1002は、S1303で検出されたブロックが主走査方向に所定数Y(Yは自然数)連続するブロックを検出する。
上述したように、S1302では、主走査方向の有彩色画素の連続性を観測している。その理由について、図10を参照して、以下に詳細に説明する。図10に示す1501は、副走査方向の縦線1511〜1514のエッジを示す。また、ここでは、領域1502、1503を無彩色領域とし、領域1504を有彩色領域とする。縦線1511〜1514のエッジ1501において、レンズの色収差やミラー台の振動などが原因で、主走査方向に色ずれが発生した場合に、本来無彩色領域にも関わらず、領域1502、1503に偽色が発生してしまう。これにより、有彩色画素が副走査方向に縦線の長さ分だけ存在することになる。その結果生じる偽色部分をカウントしてしまうと、カラー原稿かモノクロ原稿かの原稿種別判定を誤ってしまう。そこで、S1302の処理のように、想定される偽色幅未満の有彩色画素が連続する場合には、その連続性を有彩色の1つのブロックと判定しないように、主走査方向での有彩色の連続性の認識処理を組み込んで、誤判定を回避している。
次に、図11を参照して、S1302の詳細な制御について説明する。図11では、例えば、M−4の1主走査ライン上にある13画素の判定信号に注目して説明を行う。図11中のマスは、1画素における無彩色/有彩色判定信号KCの結果を示す(厳密には、領域制限、又は、領域分割を受けたACS_MAIN信号を示す)。白いマスは有彩色と判定された画素、網掛けのマスは無彩色と判定された画素を表す。図11において、N−4は古い時刻の判定結果、N+8は新しい時刻での判定結果を示す。
図11において、N−4からNまでの5画素については連続してカウントアップされるが、N+1の画素で無彩色と判定されるため、カウンタはリセットされる。続いて、N+2の画素は有彩色であるため再びカウントアップされ、N+3画素までカウントすると、N+4が無彩色と判定されている画素のため、再びカウンタがリセットされる。N+5は有彩色画素と判定されているため、再びカウントアップを開始し、次の無彩色画素が出現するか、又は、カウント値が所定値X画素とカウントアップされるまでカウントアップが継続される。
カウント値が所定値Xに達すると、上記S1303でコンパレータによる比較が行われる。この比較により、X画素連続した有彩色画素の有無を判定し、検出する。また、S1303では、所定値X画素の有彩色画素の連続が所定値Yブロック発生したかをコンパレータによって比較する。この比較により、色群ブロックが所定数Y以上発生したラインを有彩色ライン候補として判定する。ここで、図11のM−4ラインについて上記判定を当てはめると、有彩色連続度の判定閾値X=5とし、色群ブロックカウントの判定閾値をY=2とすると、有彩色連続度の判定閾値X=5を超える色群ブロックは、1つしかない。したがって、M−4の主走査方向の13画素の範囲では、有彩色が5画素以上の色群ブロックは1つしか認識されず、色群ブロックカウントの判定閾値Y=2を超えないため、有彩色ラインとは判定されない。しかし、実際の制御では、M−4の主走査方向の13画素に限定されず、主走査方向の全画素について、上記の判定を順次行うことになるため、有彩色ラインと判定されるラインも出てくることになる。
図8の説明に戻る。以下で説明する処理は、主に主走査カウント部1003によって制御される。S1305において、主走査カウント部1003は、S1302乃至S1304で検出された有彩色ラインをカウントする。続いて、S1306において、主走査カウント部1003は、コンパレータにより所定のライン数の閾値Z(閾値ZはROM等に予め設定されている。)と、S1305でカウントされた有彩色ラインのカウント値とを比較する。この比較結果、カウント値が閾値Zを超えている場合、S1309に進み、主走査カウント部1003は、主走査方向の色判定結果として、「COL_MAIN=1」を出力する。
一方、カウント値が閾値Zを超えていない場合、S1307に進み、主走査カウント部1003は、全ラインについての判定が終了したか否かを判定する。ここで、全ラインが終了していない場合には、次のラインの判定を行うためS1302に戻る。一方、全ラインが終了している場合には、S1308に進み、主走査カウント部1003は、主走査方向の色判定結果として、「COL_MAIN=0」を出力する。
上述したCOL_MAIN=1の場合は、所定値X画素の有彩色画素の連続が所定値Yブロック発生し、主走査方向に有彩色ラインとしてカウントされ、その有彩色ラインが所定ライン数Z以上発生したため、主走査方向についてはカラー原稿と判定される。また、COL_MAIN=0の場合は、所定値X画素の有彩色画素の連続が所定値Yブロック発生せず、主走査方向に有彩色ラインとしてカウントされず、その有彩色ラインが所定ライン数Z以上発生していないため、主走査方向についてはモノクロ原稿と判定される。或いは、所定値X画素の有彩色画素の連続が所定値Yブロック発生し、主走査方向に有彩色ラインとしてカウントされたが、その有彩色ラインが所定ライン数Z以上発生していないため、主走査方向についてはモノクロ原稿と判定されることもある。
次に、図9を参照して、第2主走査色群認識部1004及び副走査カウント部1005の処理フローについて説明する。副走査方向の判定処理は、注目するラインに色画素の固まりを認識すると、副走査方向にその連続性を観測することにより、副走査方向の色の存在を認識することが特徴である。なお、S1401、S1407、S1408及びS1409の処理は、図8に示すS1301、S1307、S1308及びS1309の処理と同様であるため説明を省略する。
S1402において、第2主走査色群認識部1004は、主走査方向に有彩色と判定された画素が連続しているか否かを判定する。続いて、S1403において、第2主走査色群認識部1004は、主走査方向への有彩色判定画素の所定数X’の連続を1つのブロックとして検出する。さらに、S1404において、第2主走査色群認識部1004は、S1403で検出されたブロックが主走査方向に所定数Y’(Y’は自然数)連続するブロックを検出する。
上記S1402乃至S1404は、図8のS1302乃至S1304と比較して、検出する際の設定値X’、Y’は異なるが、制御については同様であるため同一構成のコンパレータを用いて処理を行うことができる。このように、主走査、副走査の判定処理に、同一構成の回路で処理を行っているのは、主走査、副走査の各処理判定において、処理に用いるパラメータを独立して設定可能とすることで、主走査と副走査で異なる判定精度を持たせるためである。
上述したように、ADF(Auto Documet Feeder)による流し読みを行った場合、副走査方向に色ずれが多く発生する場合がある。その場合に、主走査方向の判定閾値をそのまま副走査の判定閾値に用いると、主走査方向にはほとんど問題のないレベルの色ずれであっても、副走査方向に発生する色ずれのためにACSにおいて「カラー原稿」と誤判定する可能性がある。こうした誤判定を回避するために、主走査方向の判定閾値を副走査方向の判定閾値に合わせて有彩色と判定しにくくするように、判定閾値を緩和する方法も考えられる。しかし、本来は必要のない主走査方向についても、その領域自体の判定感度(有彩色の有無を判別する精度)そのものを落とすことになってしまう。そこで、本実施形態では、主走査方向、副走査方向で判定感度を独立して設定できる構成を採用し、柔軟な設計を可能としている。
図9の説明に戻る。S1405において、副走査カウント部1005は、S1402乃至S1404で検出された複数の有彩色ラインに限定して、副走査方向に連続する有彩色ラインをカウントする。続いて、S1406において、副走査カウント部1005は、コンパレータにより所定の副走査方向へ連続する有彩色ライン数を示す閾値Z’(閾値Z’はROM等に予め設定されている。)と、S1405でカウントされた副走査方向に連続する有彩色ラインのカウント値とを比較する。この比較結果、カウント値が閾値Z’を超えている場合、S1409に進み、超えていない場合はS1407に進む。
次に、図11を参照して、S1405の副走査方向に連続する有彩色ラインのカウントについて詳細に説明する。図11において、N−4からN+8は主走査方向の画素位置を表す。M−4からM+3は、副走査方向の画素位置を表す。白いマスは有彩色と判定された画素を示し、網掛けのマスは無彩色と判定された画素を表す。判定閾値は、X’=4画素、Y’=2ブロック、Z’=6ラインとする。
まず、(主走査,副走査)=(N−4,M−4)の画素位置から(N+8、M−4)の画素位置までの主走査方向1ラインを見ると、N−4からNまで5画素有彩色が連続し、N+5からN+8まで4画素有彩色が連続している。したがって、判定閾値X’=4画素とY’=2ブロックを超えるため、副走査カウント部1005へ送出される。これを(主走査,副走査)=(N−4,M−4)の画素位置から(N+8、M+3)の画素位置まで、主走査方向1ライン判定を副走査方向の全ラインに渡って行っていく。すると、M−4のライン、M−3のライン、Mのラインが有彩色ラインとなり、その情報は副走査カウント部1005に送出される。
しかし、各有彩色ラインでの主走査方向の色群ブロックのその副走査方向へ連続するライン数を見ると、N−3や、N+6、N+7等の画素位置において有彩色ラインの連続性は2ラインとなり、副走査方向の有彩色ライン数の閾値Z’=6を超える画素がない。したがって、図11の例では、副走査方向について有彩色でないと判定される。ここで、有彩色ラインでの主走査方向の色群ブロックとは、図11において、M−4ライン、M−3ライン、及びMライン等の点線矢印で示すブロックを示す。
同様に、図12について説明する。判定閾値は、上述の例と同じでX’=4画素、Y’=2ブロック、Z’=6ラインとする。まず、(主走査,副走査)=(N−4,M−4)の画素位置から(N+8、M−4)の画素位置までの主走査方向1ラインについて説明する。当該ラインでは、N−4からNまで5画素有彩色が連続し、N+5からN+8まで4画素連続し、判定閾値X’=4画素とY’=2ブロックを超えるため、副走査カウント部1005へ送出される。これを(主走査,副走査)=(N−4,M−4)の画素位置から(N+8、M+3)の画素位置まで、主走査方向1ライン判定を副走査方向の全ラインに渡って行う。すると、M−4乃至M+3のラインの全ラインが有彩色ラインとなり、その情報が副走査カウント部1005に送出される。
さらに、検出された有彩色ラインでの主走査方向の色群ブロックのその副走査方向の有彩色ライン数の連続性を見ると、N−3乃至N−1の位置や、N+5の位置等で副走査方向に6ライン以上の有彩色ラインの連続が存在する。したがって、副走査方向の有彩色ライン連続数の閾値Z’=6を超えるため、図12の例では、副走査方向についても、有彩色であると判定される。
図5のカラーモノクロ識別部1006は、主走査カウント部1003の出力値COL_MAIN及び副走査カウント部1005の出力値COL_SUBから、所定の判断条件に従って原稿がカラーかモノクロかを判定する。その判定条件は、任意に設定可能であるが、例えば、主走査、副走査のカウント結果COL_MAIN、COL_SUBの何れかの値が“1”になっていれば、原稿中に色が存在するとして、カラー処理専用の画像処理を実施してもよい。或いは、主走査のカウント結果COL_MAINと副走査のカウント結果COL_SUBの両方が“1”である場合のみにカラー原稿と判断してもよい。
カラーモノクロ識別部1006での判定結果は、第2色空間変換部404へ送られる。原稿がカラーと判定されれば、カラートナーを用いる等の画像に適した画像処理を行う。また、原稿がモノクロと判定されれば、第2色空間変換部404での処理をモノクロ処理に変更する。具体的には、第2色空間変換部404の出力R2、G2、B2を以下の式(2)でモノクロ信号NDに変換する。
ND=(48R+64G+16B)/128 式(2)
さらに、色補正部406で黒色トナーのみを用いる処理に変更する等、モノクロ処理に最適な画像処理がなされる。プリンタ部420では、カラー又はモノクロの画像形成処理が行われる。
<色ずれの推定>
ここまでで、ACSの判定動作からプリンタ出力までの画像処理の説明を詳細に行った。続いて、このACSの判定動作の精度を上げるための方法について説明する。上述したADFによる流し読みを行った際には、ここまで述べた内容を実行するだけでは、ACSの誤判定は避けられない場合がある。具体的には、モノクロ原稿をADFで流し読みした場合、流し読み時に数十ライン単位で発生する「突発的な」色ずれに対しては、副走査方向の判定閾値を超えるような箇所が多数出てくる場合がある。
ここで、レンズなどに起因する色収差は原稿の読取で変化することはないため、静的な色ずれと表現する。しかし、ADFによる搬送における色ずれは、その発生箇所が特定できても、搬送する紙サイズの違いや原稿の坪量(重さ)により、その色ずれ量が変化するような場合がある。そこで、予測が困難な意味として「突発」と表現する。
なお、この突発的な色ずれは、ACSの判定精度を副走査方向では大きく緩和する、つまり、副走査方向の判定をカラーと判定しにくい設定にすることで、ACSの誤判定を回避できる場合もある。しかし、判定精度を下げることは、カラー原稿もモノクロ原稿と判定されてしまう可能性も高くなり、判定精度を低下させることは望ましくない。そこで、ADFによる流し読み時に発生しやすい「突発的な」色ずれに耐性を持つACS判定処理方法について、以下で詳細に説明する。
まず、流し読み時の突発的な色ずれが発生するポイント(原稿の先端から何mmの位置か)及びその色ずれ量を正確に把握する必要がある。これにより、その突発的な色ずれの発生する箇所を特定し、その突発的な色ずれ発生箇所のACS判定閾値を突発的な色ずれの発生しない箇所とで変更することで、ACSの誤判定を回避することができる。突発的な色ずれが発生する箇所は、他の箇所よりも色ずれ量が大きいため、その箇所のACS判定閾値を他の箇所よりもカラーと判定しにくいように変更する。これにより、全体としてACS判定閾値を下げるのはなく、突発的な色ずれが発生するポイントのみ、ACS判定閾値を下げられる。その他の箇所は、通常のACS判定閾値を用いることで、結果として全体のACS判定精度を大きく低下させることなく、ACS判定を行うことができる。ADFの流し読みは、図1の流し読みガラス126の位置にキセノンランプ129やミラー130を固定して原稿を搬送しながら、順次画像を読み取る方式である。したがって、突発的な色ずれは、読み取った原稿画像の副走査方向の色ずれを把握することで、その発生ポイントと色ずれ量を把握することができる。
図13は、副走査方向の色ずれを把握するために使用する色ずれ測定チャートの例である。図13の色ずれ測定チャートは、副走査方向に、所定間隔で所定幅の黒線をチャート一面に印刷したものである。上述したように、色ずれは、レンズの色収差やミラー台の振動、ADFでの原稿搬送中の振動などの理由で、黒線のエッジ部が色付いて見えるため、このような黒線を副走査方向に所定間隔で配置することで、各箇所での色ずれ量を把握できる。一般的に、色ずれは、黒線の間隔(ラインピッチ)と読取装置の読取解像度に大きく依存する。読取の解像度が600dpi(dot per inch)の場合、読み取った画像の1画素(1dot)は、
25.4mm/600dot=42.3μm
である。ナイキスト周波数を考慮すると、原稿画像をサンプリングする周波数(この場合、読取解像度のこと)の1/2の周波数を超える周波数成分は、標本化時にエイリアシングが発生してしまうため、測定すべき最低のラインピッチは、
42.3μm×2=84.6μm
となる。つまり、黒線の幅は、最低でも2画素分以上にしなければ、色ずれが発生しているかどうかを判断できないことになる。
本実施形態では、色ずれ測定チャートの黒線を100dpiで作成し、色ずれの測定を実施した。100dpiでの印刷では、1本の黒線が0.254mmとなり、黒線の間隔が0.508mm(=0.254mm×2)となる。つまり、図14に示すように、600dpi読み取りでは、黒線を6画素、黒線の間隔を12画素、黒線と黒線の間には、印刷しない6画素分の領域があるものとして読み取る。これ以上高い周波数では、エッジの判定が困難となり、エッジのずれが判別しにくいため、この100dpiのチャートを採用することが望ましい。
図13に示す色ずれ測定チャートを読み取ると、色ずれがない場合は、図14に示すように、RGB3色のラインセンサに黒線エッジ部の読取時の位相が揃ったものとなる。図14では、R読取輝度のみに実際のサンプリングポイントを示している。白線と黒線の変化は実際の読取り輝度値としては、図16に示すように、ステップ状になることはないが、単位のためステップ状に示した。また、RGB各色の読取は縦方向を読取輝度、横方向は副走査方向を表している。しかし、色ずれがある場合、図15に示すように、ラインセンサで読み取った黒線のエッジ部の読取位相はずれたものとなる。
なお、各色ラインセンサの配置による読取位相ずれについては、例えば、2ライン間隔で配置されるセンサの場合、RとG、GとBでそれぞれ2ライン分の読取位相ずれが起こる。しかし、図14及び図15では、説明の理解を容易にするため、そのライン間隔で修正し、各色ラインセンサにおける読取の位相ずれがない状態で表している。
ここでは、G読取を基準として、R読取及びB読取の黒線エッジを測定し、黒線エッジの間隔を測定することで、色ずれ量を測定している。ここで、G読取を基準としたのは、RGB3色のラインセンサの場合、RGBという順序でラインセンサを配置することが多く、つまり、3ラインセンサの中心にはGセンサが配置されるためである。Gセンサの読取とRセンサ、Bセンサの読取をそれぞれ比較することで、色間の読取ずれが把握できる。例えば、G読取は黒線の立ち下がりエッジを0.508mm(約12画素)毎に検知していて、R読取は0.486mm(約11.5画素)で検知した場合、R読取は0.5画素分の色ずれを含んで読まれていることになる。また、B読取は黒線の立ち下がりエッジを0.495mm(約11.7画素)で検知した場合、B読取は0.3画素分色ずれしていることになる。
この色ずれ量の測定の際には、図16に示すように、N番目の画素とN+1番目の画素の読み取った出力値(輝度値)から線形補間を行い、所定の閾値で区切られる箇所を黒線のエッジとして予測している。これは、黒線のエッジが読取画素のどの位置であるかを把握できないためである。この予測により、0.5画素などの1画素以内の色ずれ量の把握が可能となる。
図17の2201に、図13の色ずれ測定チャートをA3サイズ(縦420mm×横297mm)で坪量64g/m2として作成した場合の色ずれ量を測定した例を示す。副走査方向に100dpiで印刷した色ずれ測定チャートを600dpiの読取解像度で走査した際に、図16に示す手法で白黒の各境界部での色ずれ量を算出してプロットしたものである。図17において、横軸は副走査方向の読取位置、縦軸は色ずれ量を表している。図17中の「G−R」とは、Gラインを基準にした場合におけるRラインの読取時の位相差(色ずれ画素量)をプロットしたものである。同様に、「G−B」とは、Gラインを基準にした場合におけるBラインの読取時の位相差(色ずれ画素量)をプロットしたものである。2201では、読取画像後端の400mm付近の位置で0.4画素以上の色ずれが発生している。
また、図17の2202は、図13の色ずれ測定チャートをA3サイズで坪量を209g/m2として作成した場合の色ずれ量を測定した例である。2202では、読取画像先端の20mm付近、30mm付近、130mm付近の3つの位置で0.4画素以上の色ずれが発生している。さらに、図17の2203は、図13のチャートをA5サイズ(縦210mm×横148mm)で坪量を209g/m2として作成した場合の色ずれ量を測定した例である。2203では、読取画像先端の20mm付近、30mm付近、40mm付近、80mm付近の4つの位置で0.4画素以上の色ずれが発生している。
2201と2202との比較から、原稿のサイズが同じであっても、その坪量が異なると色ずれの発生するポイントが異なることが分かる。また、2202と2203の比較から、同じ坪量でも原稿のサイズが異なると、色ずれの発生ポイントが異なることなる異が分かる。このように、原稿のサイズ及び坪量によって、色ずれ発生ポイントが異なる現象について、以下で説明する。
まず、ADFの流し読み時の突発的な色ずれは、ADFの搬送経路上のローラやコロ、ガイド、ジャンプ台、分離機構に対して、原稿が突入、脱出する時の機械的な振動が読取位置で読み取っている原稿の画像に伝播することで、画像上に色ずれが発生する。つまり、搬送経路内でのローラなどの機械的な構成による位置と、原稿の搬送している位置との相対的な位置関係により、色ずれの発生するポイントは決定される。
図18は、図1の自動原稿給送装置Aの構成をローラや読取位置、図1では図示しなかったセンサなどの配置を模式的に平面上に図示したものである。図18において、原稿は原稿搬送方向を示す矢印の方向に搬送される。また、表面の原稿読取位置2301を基準として各構成部材までの距離をそれぞれ、給紙ローラ103までをLR1、分離搬送ローラ104までをLR2、引き抜きローラ106までをLR3、搬送ローラ108までをLR4、レジストローラ110までをLR5、リードローラ112までをLR6、ジャンプ台125までをLR7、リードローラ115までをLR8、プラテンローラ122(裏面の読取位置2302)までをLR9、リードローラ117までをLR10、排紙ローラ119までをLR11とする。
このように、読取位置と各ローラやジャンプ台などまでの距離を把握することで、原稿サイズと読取位置とローラとの相関距離を把握すれば、色ずれ発生ポイントはある程度特定できる。例えば、搬送する原稿がA4サイズ(210mm×297mm)で、原稿を主走査方向の読み取りが297mm、副走査方向の読み取りが210mmとなるように、搬送速度210mm/secで搬送した場合を想定する。ここでは、さらに、表面の読取位置からジャンプ台125までの距離LR7=16mm、リードローラ115までの距離LR8=40mmとする。すると、ジャンプ台125への突入及びリードローラへの突入時のショックが、原稿の先端から、それぞれ16mm、40mmの位置に色ずれとして発生する可能性がある。同様に、表面の読取位置からリードローラ112までの距離LR6=41mm、レジストローラ110までの距離LR5=65mmとする。すると、リードローラ112からの脱出及びレジストローラ110からの脱出時のショックが、原稿の後端から、それぞれ41mm、65mmの位置に色ずれとして発生する可能性がある。
これらローラなどの位置構成を記憶しておくことに加え、色ずれ発生ポイントを精度良く把握するためには、さらに原稿の挙動を把握するセンサを搬送経路上に配置する必要がある。本実施形態においては、原稿の挙動を把握するためのセンサとして4つのセンサを設けている。図18において、表面の原稿読取位置2301を基準として各センサまでの距離をそれぞれ、リードセンサ2313までをLS1、レジストセンサ2312までをLS2、リードセンサ2314までをLS3とする。また、分離後センサ2311は、色ずれ発生ポイントを認識するためには使用しないが、後述する原稿のサイズ測定に使用する。
以下では、これらセンサの情報とローラなどの位置構成から、色ずれ発生ポイントを精度良く求める方法について説明する。まず、(1)原稿先端突入時のショックによる色ずれについて説明する。例えば、原稿の先端が、リードセンサ2313を通過後、表面読取位置2301を通過する時点を起点として、ジャンプ台125までの距離LR7からジャンプ台125へ突入するまでの時間T_LR7を、搬送速度から以下の式により算出する。
T_LR7=LR7/搬送速度
この搬送速度は、レジストセンサ2312とリードセンサ2313の2つのセンサを原稿の先端が通過する時間(T_LS2−T_LS1)を測定し、その距離(LS2−LS1)との関係でも以下の式を用いて求められる。
搬送速度=(LS2−LS1)/(T_LS2−T_LS1)
この表面読取位置からローラなどへ突入する時間と、実際の搬送速度から、原稿先端の突入時の色ずれ位置を確認することができる。また、他のローラなどへの原稿先端突入時のショックによる色ずれの場合でも同様の計算で求めることができる。
次に、(2)原稿後端脱出時のショックによる色ずれについて説明する。例えば、原稿の後端が、リードセンサ2313を通過後、リードローラ112を脱出するとき、原稿後端がリードローラ112を通過するまでの距離LR6と搬送速度との関係から、リードセンサ2313を通過する時点を起点として、原稿後端がリードローラ112を脱出して表面読取位置2301まで到達するのに要する時間T_LR6は、
T_LR6=LR6/搬送速度
と求めることができる。この表面読取位置からローラなどからの脱出時間と、実際の搬送速度から、原稿後端の脱出時の色ずれ位置を確認することができる。
この演算は、不定形サイズを搬送する場合を想定している。しかし、検知している原稿サイズが定形と判定された場合、原稿の先端が読取位置を通過するタイミングを起点とすると、実際の色ずれの発生ポイントとローラなどの位置情報から想定される色ずれ発生ポイントがずれしまう可能性がある。そこで、原稿の先端の通過を起点とするのではなく、原稿の後端の通過を起点として、色ずれ発生位置を原稿後端から逆算して求める。また、他のローラなどからの原稿先端脱出時のショックによる色ずれの場合でも同様の計算で求めることができる。ただし、次に述べる(3)の場合を除く。
次に、(3)原稿後端脱出時のショックによる(2)と異なる色ずれについて説明する。例えば、原稿の後端がレジストセンサ2312を通過前に、搬送ローラ108を脱出する場合、(2)の方法では、後端の脱出ポイントが把握できない。そこで、この場合は、原稿搬送中、又は、原稿設置時に判定した原稿長L_SIZEを用いる。原稿の先端が読取位置2301を通過する時点を起点として、原稿後端が搬送ローラ108を通過する時間T_LR4を、原稿長との関係から以下の式により求めることができる。
T_LR4=(L_SIZE‐LR4)/搬送速度
この表面読取位置からローラなどからの脱出時間と、実際の搬送速度から、原稿後端の脱出時の色ずれ位置を確認することができる。また、他のローラなどからの原稿先端脱出時のショックによる色ずれの場合でも同様の計算で求めることができる。
上記(1)〜(3)で述べた方法で把握した色ずれが発生する可能性のある位置を、図6A及び図6Bで示した判定制限領域、又は、判定閾値変更領域に設定することで、ACSの判定を局所的に制限したり、その精度を変更したりすることができる。ところで、上記(1)〜(3)で述べた方法で把握する色ずれが発生する可能性のある位置で、必ず色ずれが発生するというわけではなく、搬送する原稿のサイズや坪量によって、色ずれの発生しやすい箇所とそうでない箇所がある。
次に、原稿のサイズによって色ずれの発生ポイントにおける色ずれ発生/不発生に差が出ることについて説明する。原稿サイズが大きくなればなるほど、原稿先端(又は、後端)の突入(又は、脱出)時に原稿を拘束するローラやコロの数は増加する。つまり、原稿の先端がローラに突入しても、他のローラが原稿を拘束する数が多ければ、その突入ショックは読取位置まで伝わる間に減衰しやすい。
次に、坪量についてだが、一般的に、坪量が大きいと、原稿の厚みも増し、その原稿の硬度も増大する傾向にある。したがって、搬送ローラ108からレジストローラ110、リードローラ112からプラテンローラ114などの間の経路を原稿が搬送される場合、ローラが原稿の後端から抜けた際に、原稿の硬度が大きい程、抜けた時の振動が大きくなる傾向にある。したがって、原稿のサイズと坪量は、流し読み時の色ずれの発生位置と色ずれ量に大きく関わるパラメータであり、この情報を考慮した上で、色ずれの発生する可能性のある位置を精査することが、ACSの判定精度向上のためには必要となる。
<原稿の坪量判定>
原稿の坪量については、次に述べる2つの方法を組み合わせて判断することで、より正確な坪量を測定できるが、それぞれ独立に用いてもよい。1つ目の原稿の坪量測定方法について説明する。図19は、原稿の坪量検知のために、透過型の光センサを使用した例を示す。透過型のセンサは、発光側のLEDと受光側センサ(フォトダイオードなど)の組み合わせで使用され、発光側と受光側のセンサ間を原稿などが遮ることで、受光側の受光量が減少する。受光側のセンサは、その受光量を電圧量に変換し、その電圧量に対して所定の閾値を設定することで、スイッチとしての役割を果たす。
一般的に、印刷などに使用される用紙は、坪量が大きくなると、紙厚も大きくなる。特に坪量の小さい薄紙の場合、LEDなどを発光させると、用紙を通して光が透過する。また、坪量の大きい厚紙の場合、LEDの透過光はほとんどない。そこで、この透過型のセンサと原稿の坪量の関係に注目して、LEDの発光量を一定にした状態で、センサの間を通過する原稿の先端、又は、後端の部分でのLED受光量を観測することで、搬送される原稿の坪量を予測する。この観測位置は、原稿の先端や後端には印刷されることが少ないことから、この部分を利用することで判定精度を上げる狙いがある。
図20の2501は、図19の方法における原稿の坪量と光センサの発光量との関係を表している。2501において、横軸は原稿の坪量であり、縦軸は発光量に対する受光量の割合を示している。2501に示す値は、原稿などLEDとセンサとの間を遮る物体がない状態を“1”として正規化している。2501から分かるように、坪量の小さい原稿の場合と比べ、坪量の大きい原稿は、その受光量が極端に低いため、厚紙と薄紙の差を見分けることができる。
次に、2つ目の原稿の坪量測定方法について説明する。原稿の坪量検知のために、図19に示す複数のセンサ出力を利用することもできる。上述のように、用紙は、坪量が小さくなると、厚みは薄くなり、坪量が大きくなると、厚みは増し、その硬度も増す。図19に示すような屈曲を有する搬送経路で原稿を搬送する場合、坪量の小さい薄紙(点線)は、搬送中の空気抵抗を受けやすく、センサに到達するタイミングが厚紙(実線)と比較して遅れる傾向にある。例えば、図19に示す分離後センサ2311からレジストセンサ2312までの到達時間を、原稿の先端又は後端で測定すると、搬送中に受ける空気抵抗の影響で、搬送時間に若干の差異が生じる。
そこで、この原稿の坪量と搬送中の空気抵抗の関係に注目して、所定坪量の搬送時間に対して、所定のセンサに早く到達する、或いは、遅く到達することで、搬送している原稿の坪量を予測する。図20の2502は、複数のセンサを用いて測定した原稿の坪量と複数センサの出力タイミングとの関係を示している。2502において、横軸は原稿の坪量であり、縦軸は所定距離の到達時間を示しており、坪量128g/m2の場合の到達時間を基準とした場合の、坪量による到達時間の変化を示している。2502に示すように、坪量の小さい原稿の場合は、坪量128g/m2の場合よりも到達時間が遅れ、坪量の大きい原稿では、坪量128g/m2の場合よりも到達時間が早まっていることが分かる。原稿のサイズ測定については、原稿トレイ101に設置した原稿長さ検知センサ135、異系列幅検知センサ137、分離後センサ2311、レジストセンサ2312などの搬送経路上に設置した複数のセンサ出力結果を組み合わせて判定してもよい。
本実施形態によれば、異系列幅検知センサ137は、図2に示すように、原稿幅方向に5箇所設置されている。各センサは、搬送方向の右側の位置を基準にして、それぞれLT1、LT2、LT3、LT4、LT5の間隔で並んでいる。また、各センサは、フォトインタラプタと、フォトインラプタの発光素子と受光素子との間を通過する樹脂のフラグで構成されており、原稿102がフラグ上を搬送するとフラグが倒れ、そのフラグの倒れる位置と倒れない位置を検出する。すると、搬送される原稿の幅に応じて、倒れるフラグと倒れないフラグが出てくることになり、このフラグ状態の組合せから原稿の幅を測定する。
さらに、原稿長さ検知センサ135、分離後センサ2311の、それぞれのセンサがON(原稿がある状態)かOFF(原稿がない状態)かを判断して、その組合せから原稿の長さを測定する。ここで、LT1=138.5mm、LT1+LT2=172mm、LT1+LT2+LT3=200mm、LT1+LT2+LT3+LT4=247mm、LT1+LT2+LT3+LT4+LT5=289mmとすると、上記の各センサの判定結果の組合せから、次の表1に示すように、原稿サイズを決定できる。
表1において、「A4−R」のように、「−R」と表記されているものは、A4サイズ(297mm×210mm)の原稿を、横方向(210mm)を幅方向と平行にして搬送する場合を示している。例えば、A4サイズと判定されるには、まず、幅が289mm以上であること、つまり、異系列幅検知センサ137が全てON(フラグが倒れている状態)である必要がある。それに加えて、分離後センサ2311と原稿長さ検知センサ135がOFFである場合、つまり、原稿の長さがA3サイズ(297mm×420mm)よりも長さ方向で短い場合に、A4サイズと確定される。ここで、分離後センサ2311から原稿長さ検知センサ135までは、210mmよりも長く、420mmよりも短い配置となっている。
図17で示したように、原稿のサイズと坪量によって、発生する色ずれポイントと色ずれ量は異なっている。そこで、本実施形態では、原稿のサイズと坪量を上述した方法により、原稿の搬送中に把握し、原稿サイズ各種とその坪量により予め測定した色ずれ発生ポイントと色ずれ量をテーブルとして保持しておく。
ここで、色ずれ発生ポイントと色ずれ量のテーブルとについて説明する。上述のように、2201は、A3サイズで坪量64g/m2の場合の、副走査方向の色ずれの測定結果を示している。副走査方向で400mmの位置で、色ずれ0.4画素以上が発生している。そのため、色ずれ発生ポイントと色ずれ量のテーブルには、400mm±5mmの位置での色ずれ判定閾値を0.4画素以上に変更する旨の定義が設定される。この色ずれ判定閾値は、閾値ρに該当する。
ここで、色ずれ発生ポイントに対して色判定領域は、色ずれ発生位置±5mmの範囲に拡大して領域を切り替えている。図17に示すように、色ずれは色ずれ発生ポイントで局所的に発生するものではなく、副走査方向の複数ラインにかけて徐々に大きくなり、最大値となった後に、複数ラインで徐々に小さく、収束していくものである。また、上記のように、色ずれ発生ポイントは、搬送経路によりおおよその位置は特定されるが、搬送中の原稿の挙動により多少前後する場合もあるため、色判定領域の切り替えのための領域を拡大して行う。
この±5mmの絶対値幅はこの値に限定されるものではなく、適宜小さな領域幅、又は、大きな領域幅に変更してもよい。具体的には、図6Bの副走査切替領域1〜3の設定を下記のように設定する。
領域1(判定閾値=0.4画素以下)
Reg_sub0_enable_start=200
Reg_sub0_enable_end=9337
領域2(判定閾値=0.4画素以上0.8画素以下)
Reg_sub1_enable_start=9338
Reg_sub1_enable_end=9573
領域3(判定閾値=0.4画素以下)
Reg_sub2_enable_start=9574
Reg_sub2_enable_end=9799
ここで、副走査ライン数と副走査位置との単位を変換すると、画素600dpi読取時には、1画素幅は、42.3μmであるため、400mmの位置は、400mm/42.3μm=9456画素(ライン)となる。これに、±5mm/42.3μm=±118画素(ライン)を考慮して、上記の設定値を求める。
図6Bの副走査切替領域1〜3において、領域1及び領域3は、0.4画素以下が彩色と判定する判定閾値である。そして、領域2は、上記のように、0.4画素以上0.8画素以下が同判定閾値となる。この閾値ρを各領域で切り替える。つまり、色ずれの発生しやすい領域2においては、閾値ρを彩度Sが大きくても誤判定しない閾値に設定する。ここで、彩度Sは、その値が小さいほど無彩色に近くなり、大きくなるに従い、有彩色と判定される。そうすることで、本来はモノクロ画像であるものが色ずれを起こしてカラーと誤判定される可能性を低減することができる。
具体的には、原稿の下地が、RGBともに輝度245、線が輝度30で読まれていた場合に、色ずれが線の端部で発生し、線が青くにじんで見えた場合、色ずれ量とその輝度値、Lab値、彩度Sは以下の表2のようになる。
表2に示すように、色ずれ量が0.4画素以下の場合、彩度S=43.0となるため、閾値ρ1=45と若干のマージンを持たせて設定することもできる。また、0.4画素以上0.8画素以下の場合、彩度S=86.0となるため、閾値ρ2=85と若干厳しく設定することもできる。この判定閾値ρを各領域で変更してKCの値を判定する。
また、図8や図9で示した有彩色の色群と認識する有彩色のX(X’)画素の連続性、そのブロック数Y(Y’)、有彩色ライン数Z(あるいは、ラインの連続数Z’)を各領域で変更する。つまり、色ずれの発生しやすい領域においては、有彩色ラインと認識する有彩色画素の連続性Xやブロック数Yを大きく、かつ、有彩色ライン数の閾値Zの値を大きく設定することで、0.4画素以上の大きな色ずれ発生箇所のみに判定基準を緩和する。有彩色判定閾値ρを領域ごとに変更する方法と、有彩色原稿と判定するための有彩色画素連続性X、そのブロック数Y、有彩色ライン数Zを領域ごとに変更する方法とは、組み合わせて使用してもよいし、どちらか一方のみを色判定に使用してもよい。
同様に、図17の2202は、A3サイズで坪量209g/m2の場合の、副走査方向の色ずれの測定結果を示している。副走査方向で400mmの位置で、色ずれ0.4画素以上が発生している。副走査方向で20mm付近、30mm付近、130mm付近の3つの位置で0.4画素以上の色ずれが発生している。この場合、副走査方向に切り替える領域を5箇所に増やした上で、上記と同様の計算を行い、下記のように色ずれ発生ポイントと色ずれ量のテーブルを設定する。つまり、当該テーブルには、原稿のサイズ及び坪量と、ACSの判定領域(制限領域と切替領域とを含む。)及び切替領域の閾値とを紐付けて定義されている。また、このテーブルは、ROM等のメモリに予め記憶されている。
領域1(判定閾値=0.4画素以下)
Reg_sub0_enable_start=200
Reg_sub0_enable_end=344
領域2(判定閾値=0.4画素以上0.8画素以下)
Reg_sub1_enable_start=345
Reg_sub1_enable_end=826
領域3(判定閾値=0.4画素以下)
Reg_sub2_enable_start=827
Reg_sub2_enable_end=2954
領域4(判定閾値=0.4画素以上0.8画素以下)
Reg_sub3_enable_start=2955
Reg_sub3_enable_end=3190
領域5(判定閾値=0.4画素以下)
Reg_sub4_enable_start=3191
Reg_sub4_enable_end=9800
上記例の場合、設定が煩雑になるため、20mmと30mmの色ずれ発生ポイントを1つの領域としてもよい。原稿の搬送中に確定するサイズと坪量から上述したような色ずれ発生ポイントと色ずれ量のテーブル値を選択し、図5に示すACS判定回路の原稿領域判定部1001に設定することで、リアルタイムでACSの判定領域及び判定閾値を変更できる。
本実施形態によれば、従来は全原稿サイズ及び坪量に対応するため、判定精度を犠牲にしていた状況を打破し、どのような原稿が搬送されても、ACSの判定精度を低減させることなく、精度の高いACS判定を実現できる。また、以上説明した方法は、ADFの流し読みを想定しているが、本発明は流し読みに限定して使用される必要はなく、圧板ガラス上に原稿を設置して原稿を読み取る、所謂、圧板読みの場合にも同様の手順により適用できる。
また、上記実施形態では、主に副走査方向に発生する突発的な色ずれについて述べたが、色ずれ測定チャートを主走査方向に万線が並ぶように載置し、搬送することで、主走査方向の色ずれ発生ポイントと色ずれ量とを把握できる。ここで把握した色ずれ発生ポイントと色ずれ量を図6Aに示すように、副走査方向と同様の設定を行うことで、主走査方向の色ずれの判定についても、突発的な色ずれについて判定精度を向上させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る画像読取装置は、原稿がカラーかモノクロかを自動的に判定するACS判定において、原稿のサイズ及び原稿の坪量を判定し、そのサイズと坪量の組み合わせから発生しうる色ずれの位置及び大きさを予測する。さらに、本画像読取装置は、その結果をACS判定に反映する。具体的には、カラーかモノクロかの判定を行う有効領域を可変とし、その有効領域において、カラーかモノクロかを判定するための閾値を変更可能にすることにより、ACS判定の精度を向上させている。