JP5535172B2 - セラミック接合体の製造方法 - Google Patents
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Description
組成物調製工程では、少なくともセラミック粉末と有機バインダと水とが非水溶性有機溶剤中に分散されてなるセラミック多孔体形成用組成物を調製する。
使用するセラミック粉末としては、前述したセラミック多孔体10を構成する材料からなる粉末を特に制限なく用いることができる。使用するセラミック粉末の形状(外形)は特に限定されず、球形又はそれに近い形状のみならず、例えばロールミルがけやスタンプミルがけによって調製された不規則形状の粒子の集合物である粉末も好適に使用することができる。焼成時の緻密化(セラミック粒子の移動)を抑制する観点から、不規則形状(例えば針状または板状)のセラミック粉末を好ましく使用し得る。
上記有機バインダは、上記セラミック粉末を結合して形状を保持するためのものであり、該有機バインダを構成する材料自体は、従来公知のセラミック多孔体の製造に用いられるものと同様の材料であり得る。例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂や、メチルメタクリレート等のアクリル系樹脂が使用される。あるいは、ポリビニルブチラール系、ポリビニルアルコール系、アクリル‐スチレン系、ポリプロピレンカーボネート系、セルロース系等の単独重合体または共重合体を用いてもよい。中でも、焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、エチルセルロース等のセルロース系バインダの使用がより好ましい。これらのバインダは一種を用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記組成物中に占めるバインダの割合としては、概ね0.1質量%〜5質量%であり、好ましくは0.5質量%〜1.5質量%である。
上記非水溶性有機溶剤としては、水に不溶かあるいは難溶であればいずれの有機溶剤を用いても構わないが、上述したセラミック粉末と有機バインダとを良好に分散させて混合できるものであることが好ましい。また、有機溶剤と水との相溶を適切に抑制する観点からは、25℃における水への溶解度が15(g/100ml)以下のものであることが好ましく、10(g/100ml)以下のものであることが特に好ましい。そのような有機溶剤としては、イソブチルアルコール(IBA)、1‐ブタノール、2‐ブタノール、tert‐ブチルアルコール、1‐ペンタノール、2‐ペンタノール、3‐ペンタノール、等の炭素数が4以上(好ましくは4〜10)のアルコール系溶剤が挙げられる。中でもイソブチルアルコール(IBA)の使用が好ましい。あるいは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル系溶剤を使用することもできる。これらの有機溶剤は一種を単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上を組み合わせて用いる場合は、混合液が単一の連続する相を形成することが好ましい。上記組成物中に占める非水溶性有機溶剤の割合としては、概ね50質量%〜95質量%であり、好ましくは75質量%〜95質量%である。
本実施形態のセラミック多孔体形成用組成物は、上述したセラミック粉末、有機バインダ、及び非水溶性有機溶剤のほかに、さらに所定量の水を含有する。上記組成物中における水の含有量としては、セラミック粉末とバインダと非水溶性有機溶剤との合計質量に対し、概ね1質量%〜50質量%に相当する量が適当であり、好ましくは5質量%〜50質量%であり、特に好ましくは20質量%〜50質量%である。かかる水含有量の組成物によると、該組成物をセラミック基材に塗工した際、組成物がセラミック基材に馴染みやすくなるため、焼成後に得られたセラミック多孔体のセラミック基材への密着性(アンカー効果等が寄与する接合強度)を向上することができる。水の含有量が少なすぎると、セラミック多孔体とセラミック基材との密着性(アンカー効果等が寄与する接合強度)が不足し、該セラミック多孔体が部分的にセラミック基材から浮き上がったり剥落しやすくなったりすることがある。その一方、水の含有量が多すぎると、有機溶剤と水とが相分離するため、上述した効果が適切に発揮されない場合がある。有機溶剤と水との相分離を抑制する観点からは、水の含有量が概ね50質量%以下であり、好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。
上記セラミック多孔体形成用組成物には、本発明の効果を奏する限りにおいて、上述したセラミック粉末、有機バインダ、非水溶性有機溶剤、及び水の他に、一般的なセラミック多孔体の製造において使用され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。例えば、多孔質構造を安定化させたりする目的のために、種々の焼結助剤、可塑剤及び分散剤等、又は従来公知のいずれの添加剤を適宜添加することができる。
これらの各種成分の混合(混練)は、ボールミル、ホモディスパー、ジェットミル、超音波分散機、プラネタリーミキサー等の一般的な混練手段を用いて行うことができる。特に限定するものではないが、セラミック粉末と有機バインダと非水溶性有機溶剤と水とを混合する場合、水の添加に先立って、まず、セラミック粉末と有機バインダと非水溶性有機溶剤とを混合し、ボールミル等を用いてよく混練する。次いで、得られた混練物に水を加えて再度混練を行うとよい。このように水を後入れすることにより、セラミック粉末とバインダと水とが均一に分散したセラミック多孔体形成用組成物を調製することができる。好ましくは、上記混練物が白濁化(エマルション化)するように、上記混練条件(混練速度、混練時間など)を設定するとよい。
このようにしてセラミック多孔体形成用組成物を調製したら、該組成物をセラミック基材の表面に塗工する。上記組成物をセラミック基材の表面に塗工する操作は、従来の一般的な塗工手段やセラミック材の成形手段を特に限定することなく使用することができる。例えば、適当な塗工手段(例えば凹版印刷法)を適用して、上記セラミック基材の一方の面に所定量の上記組成物を均一な厚さにコーティングすることにより塗工され得る。その際、非水溶性有機溶剤と水とを含有させたセラミック多孔体形成用組成物を用いることにより、該組成物をセラミック基材に塗工した際に該組成物がセラミック基材に馴染みやすくなる。そのため、該組成物がセラミック基材の表面上で弾かれることなく、均一な厚さに安定して塗工することができる。他に公知の塗布手段として、メタルマスク印刷法、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、ドクターブレード法、などがあり、これらにも適用することができる。
このようにして上記組成物をセラミック基材の表面に塗工したら、その塗工物を大気中で焼成して、セラミック基材の表面にセラミック多孔体が接合(一体焼結)されたセラミック接合体を得る(ステップS30)。ここに開示されるセラミック接合体の製造方法では、上記塗工物の焼成は、最高焼成温度が600℃〜900℃となるように行われる。このことによって、セラミック多孔体とセラミック基材とが強固に一体焼結(接合)されたセラミック接合体を得ることができる。したがって、セラミック接合体に所要の耐久性が確保され、セラミック接合体の性能が安定する。
[サンプル1]
バインダとしてのエチルセルロース(EC)と、非水溶性有機溶剤としてのイソブチルアルコール(IBA)とを9:91の質量比で混合したビヒクルに、平均粒径55μmのシリカ粉末(セラミック粉末)を、シリカ粉末とビヒクルとの質量比が15:5となるように添加して混練した。この混練物に、所定量の水添加し、再度混練することによりセラミック多孔体形成用組成物を調製した。該組成物中における水の含有量は、ECとIBAとシリカ粉末との合計質量に対して(すなわち外添加で)5質量%とした。得られたセラミック多孔体形成用組成物を、セラミック基材(平均細孔径0.1μm、厚み約0.5mmの多孔質アルミナ基材を使用した。)の表面上に凹版印刷して、厚み約100μmの塗工物(薄膜)を形成した。その塗工物を大気中、約600℃で焼成することにより、セラミック基材上にセラミック多孔体が一体焼結(接合)されたセラミック接合体を得た。
上記組成物中における水の含有量を、外添加で25質量%(サンプル2)、50質量%(サンプル3)、75質量%(サンプル4)、0質量%(サンプル5;水の添加なし)としたこと以外はサンプル1と同様にしてセラミック接合体を作製した。
上記組成物において、水の代わりにテルピネオールを添加したこと以外はサンプル1と同様にしてセラミック接合体を作製した。
上記組成物において、水の代わりにエチルカルビトールを添加したこと以外はサンプル1と同様にしてセラミック接合体を作製した。
20 セラミック基材
30 セラミック接合体
Claims (12)
- セラミック基材の表面に塗工して用いられるセラミック多孔体形成用組成物であって、
少なくともセラミック粉末と有機バインダと非水溶性有機溶剤と水とを含有しており、
前記水の含有量が、前記セラミック粉末と前記バインダと前記非水溶性有機溶剤との合計質量に対して1質量%〜25質量%に相当する量である、セラミック多孔体形成用組成物。 - 前記水の含有量が、前記セラミック粒子と前記バインダと前記非水溶性有機溶剤との合計質量に対して5質量%〜25質量%に相当する量である、請求項1に記載の組成物。
- 前記非水溶性有機溶剤と前記水との混合比率は、質量比で有機溶剤:水=95:5〜30:70である、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記セラミック粉末のレーザ散乱法に基づく平均粒径が、50μm〜200μmである、請求項1〜3の何れか一つに記載の組成物。
- 前記非水溶性有機溶剤が、アルコール系溶剤である、請求項1〜4の何れか一つに記載の組成物。
- 前記セラミック粉末が、アルミナまたはシリカを主体として構成されている、請求項1〜5の何れか一つに記載の組成物。
- セラミック基材の表面にセラミック多孔体が接合されたセラミック接合体を製造する方法であって、
少なくともセラミック粉末と有機バインダと非水溶性有機溶剤と水とを含有しているセラミック多孔体形成用組成物を調製すること、ここで、該組成物中における水の含有量は前記セラミック粉末と前記バインダと前記非水溶性有機溶剤との合計質量に対して1質量%〜25質量%に相当する量である;
該組成物をセラミック基材の表面に塗工すること;及び、
その塗工物を焼成して前記セラミック基材の表面にセラミック多孔体が接合されたセラミック接合体を得ること;
を包含する、セラミック接合体の製造方法。 - 前記セラミック多孔体の水銀圧入法に基づく平均細孔径が、50μm〜200μmである、請求項7に記載の製造方法。
- 前記セラミック基材は、緻密質または前記セラミック多孔体より平均細孔径が相対的に小さい多孔質セラミック基材である、請求項7または8に記載の製造方法。
- 前記セラミック多孔体の厚さが、100μm以上である、請求項7〜9の何れか一つに記載の製造方法。
- 前記組成物の塗工は、凹版印刷により行われる、請求項7〜10の何れか一つに記載の製造方法。
- 前記塗工物の焼成は、最高焼成温度が600℃〜900℃となるように行われる、請求項7〜11の何れか一つに記載の製造方法。
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