JP5531367B2 - 標的配列の濃縮 - Google Patents

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Description

本出願は、米国仮出願第60/962,838号(2007年8月1日出願)の利益を主張するものである。上述の出願の全開示は、引用することにより本願に援用する。
遺伝分析でよく遭遇する状況として、大過剰な非変異配列(「参照配列」)の存在下で低い割合の変異DNA配列(「標的配列」)を同定する必要性が存在する。このような状況の例は、(a)大過剰な正常対立遺伝子の存在下における少数の変異対立遺伝子の同定及びシークエンシング、(b)エピジェネティックアッセイで、大過剰な非メチル化対立遺伝子の存在下における少数のメチル化対立遺伝子(逆もまた同様)の同定、(c)大過剰の母親DNA配列が同時に存在する母親の血液中に循環する少量の胎児DNA配列の同定及び遺伝子型決定、及び(d)大過剰な野生型対立遺伝子の存在下における癌患者(又は癌の疑いがある人々)の血中循環腫瘍DNAの同定を含む。
Thomas, R.K., et al. (2007) Nat Genet, 39, 347-351 Chou, L.S., et al. (2005) Am J Clin Pathol, 124; 330-338 Thomas, R.K., et al. (2006) Nat Med, 12; 852-855 Paez, J.G.,. et al. (2004) Science, 304; 1497-1500 Janne, P.A., et al. (2006) Clin Cancer Res, 12; 751-758 Diehl, F., et al. (2005) Proc Natl Acad Sci U S A, 102; 16368-16373 Kimura, T., et al. (2004) Ann N Y Acad Sci, 1022; 55-60
生殖細胞又は高普及率の体細胞変異に対して信頼性のあるハイスループットスクリーニング方法が最近開示されてきているが(非特許文献1、2及び3)、異質及び間質汚染を有する腫瘍又は体液中において、低普及率の体細胞変異を検出することにはまだ問題がある。とはいえ、これら変異を同定する臨床的意義は、様々な状況下で重要である。例えば、(a)肺腺癌において、標準のシークエンシングで同定不可能な低レベルのEGFR変異は、チロシンキナーゼインヒビター(非特許文献4)又は薬剤耐性(非特許文献5)に対して陽性反応をもたらす;(b)早期検出(非特許文献6)又は治療への腫瘍反応(非特許文献7)用のバイオマーカーとして有用な血漿内の変異は、従来の方法を用いてシークエンシングできない;及び(c)膵臓又は前立腺等の頻繁な間質汚染を含む腫瘍中の変異は、野生型対立遺伝子の存在により「マスク」されることが可能であるために、面倒な顕微解剖が必要となるか、又は変異を完全に見逃すことになる。
本発明は、サンプルから少量の対立遺伝子を濃縮するための方法、組成物、ソフトウェア、及び装置を対象とする。本方法は、部分的には、反応混合物を臨界変性温度又は「Tc」で培養する工程を含む修飾核酸増幅プロトコルに基づくものである。本発明を用いることにより、全てのPCRベース技術の現在の検出限界は、非常に改善されることになる。
「臨界温度」又は「Tc」は、参照配列の融解温度「Tm」よりも低い温度を示す。ある実施形態では、Tcは、参照及び標的配列の両方のTmよりも低い。臨界温度は、二重鎖標的配列又は標的−参照クロスハイブリダイゼーションされた二重鎖DNAの二本鎖が有する、より低いTmを上手く利用することにより、これら二本鎖を、参照/参照ホモ二本鎖よりも優先的に変性させる。標的配列及び参照配列がクロスハイブリダイズする時、短い(例えば<200bp)二重鎖DNA配列に沿った範囲における1以上の単一ヌクレオチドのミスマッチによる小規模な配列の差異は、配列の融解温度(Tm)において小さいけれども予測可能な変化を生じさせることになる(Lipsky, R.H., et al. (2001) Clin Chem, 47, 635-644; Liew, M., et al. (2004) Clin Chem, 50, 1156-1164)。ミスマッチの正確な配列内容と位置に応じて、0.1−20℃の融解温度の変化が考慮される。
臨界変性温度(Tc)は、それを下回ると、PCRの効率性が参照配列に対して急に減少するという温度である。例えば、167bpのp53配列は、PCR変性温度が87℃に設定された時によく増幅し、86.5℃の時に穏やかに増幅し、PCR変性が86℃以下に設定された場合には検出可能な産物が産生されない。したがって、本例では、Tc〜86.5℃である。


第1態様では、本発明は、標的及び参照配列を含むと考えられる核酸サンプル中の標的配列を濃縮する方法を対象とする。本方法は、増幅反応混合物を、参照配列の融解温度「Tm」よりも高い第1変性温度にする工程を含む。次に、増幅反応混合物の温度は、下げられ、一本鎖の標的配列と参照配列がハイブリダイズすることにより、二重鎖分子が形成される。したがって、反応物は、標的−標的、参照−参照のハイブリダイゼーションホモ二本鎖、及び標的−参照鎖のハイブリダイゼーションヘテロ二本鎖を含む。ヘテロ二本鎖は、定義によると、不十分にマッチした二本鎖であるにもかかわらず、鎖間の十分な相同性を有しており、反応混合物中で二本鎖形態を維持することができるものである。ホモ二本鎖は、定義によると、完全にマッチした二本鎖である。その後、反応混合物の温度をTcまで上げる。この結果、標的−参照配列ハイブリダイゼーション二本鎖の優先的な変性が生じる。Tc又は臨界温度は、参照配列のTmよりも低く、本明細書に記載される方法によって決定されることができる。Tcにおいて、標的−参照配列二本鎖(及び、参照配列よりも低いTmを有している場合においてのみ標的−標的配列二本鎖)は、実質的に変性され、この一方で、標的−標的二本鎖(参照配列のTmと同じ又はそれ以上のTmを有している場合)及び参照−参照配列二本鎖は実質的に変性されない。「実質的に」とは、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%が、既定の変性又は非変性形態であることを意味する。標的−参照二本鎖及び標的−標的二本鎖(参照配列よりも低いTmを有するもの)の優先的変性の後、反応混合物を低い温度にすることにより、プライマー対が標的配列にアニーリング可能となる。その後、アニーリングされたプライマーが伸長されることにより、サンプル内の参照配列と比較して標的配列が濃縮されることになる。
その他の態様では、本発明は、標的配列を濃縮するその他の方法を対象とする。本方法では、標的配列と参照配列を夫々含むと考えられる核酸サンプルが、参照配列のTmよりも高い第1変性温度にすることによって変性される。次に、標的及び参照鎖は、互いにアニーリングされることにより、二重鎖標的−参照配列の二本鎖を形成する。標的−参照配列二本鎖が、二重鎖標的−標的及び参照−参照配列の二本鎖とともに反応混合物中に生じて存在する。二重鎖標的−参照及び標的−参照配列の二本鎖は、サンプルをTcにすることにより優先的に変性される。Tcにおいて、標的−参照配列の二本鎖(及び参照配列よりも低いTmを有している場合のみ標的−標的配列二本鎖)が実質的に変性され、この一方で、標的−標的二本鎖(参照配列のTmと同じ又はそれ以上のTmを有している場合)及び参照−参照配列二本鎖は実質的に変性されない。「実質的に」とは、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%が、既定の変性又は非変性形態であることを意味する。その後、プライマー対が標的配列にアニーリングされ、伸長されることにより、サンプル内の参照配列と比較して標的配列の濃度を高めることになる。
さらにその他の態様では、本発明は、核酸増幅反応プロトコルを実施することにより標的配列を濃縮するための方法を対象とする。増幅反応プロトコルは、第1変性温度と第2変性温度を含む。第1変性温度は、参照配列のTmよりも高く、第2変性温度は、参照配列のTmよりも低い。
その他の態様では、本発明は、対応する参照配列よりも低いTmを有する標的配列を濃縮するための方法を対象とし、増幅反応混合物をTcとする工程と、反応混合物の温度を下げる工程と、プライマー対を伸長させる工程により実現される。増幅反応混合物は、標的配列及び参照配列の夫々を含むと考えられているものである。Tcは参照配列のTmよりも低く、これによって、より低いTmを有する標的配列の優先的な変性が可能となる。Tcでは、標的−参照配列の二本鎖及び標的−標的配列の二本鎖は、実質的に変性され、この一方で、参照−参照配列の二本鎖は実質的に変性されない。「実質的に」とは、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%が、既定の変性又は非変性形態であることを意味する。反応混合物の温度を下げる工程は、プライマー対が標的配列とアニーリングすることを可能とする。その後、これらアニーリングされたプライマーは、ポリメラーゼによって伸張され、参照配列と比較してサンプル内の標的配列の量を増加させる。
さらにその他の態様では、本発明は、標的配列を濃縮するための方法を対象とし、増幅反応混合物を、アニーリング条件とTcの複数サイクルにおくことによって実現される。増幅反応混合物は、標的及び参照配列の夫々を含むと考えられているものであり、まず、参照配列のTmよりも高い第1変性温度にする。次に、サンプルは、2つの異なる温度の培養工程間を循環(サイクル)される。第1培養工程では、温度を下げることにより、標的配列と参照配列とのハイブリダイゼーションが可能となり、二本鎖が形成される。第2培養工程では、温度は、参照配列のTmよりも低いTcまで上げられる。Tcにおいて、標的−参照配列の二本鎖(及び、参照配列よりも低いTmを有している場合においてのみ標的−標的配列の二本鎖)は、実質的に変性され、この一方で、標的−標的二本鎖(参照配列のTmと同じ又はそれ以上のTmを有している場合)及び参照−参照配列の二本鎖は実質的に変性されない。「実質的に」とは、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%が、既定の変性又は非変性形態であることを意味する。その後、これら第1及び第2工程は1回以上繰り返される。サイクルの培養工程が完了すると、反応混合物の温度を下げることにより、プライマー対が標的配列にアニーリングすることが可能となる。その後、これらプライマーは、ポリメラーゼによって伸長されることにより、サンプル内の参照配列に対して標的配列が濃縮されることになる。
第1変性温度及びTcを利用した、本発明の標的配列濃縮手順の一実施形態を図示する。 周期的なアニーリング/Tc工程を利用した、本発明の標的配列濃縮手順の一実施形態を図示する。 標的配列濃縮プロトコルを用いて濃縮について検査されたp53とKras変異を図示する。 標的配列濃縮プロトコルを用いたp53変異対立遺伝子の濃縮を図示する。 標的配列濃縮プロトコルを用いたKras変異対立遺伝子の濃縮を図示する。 肺及び結腸腫瘍からの臨床サンプルにおける変異対立遺伝子の濃縮を図示する。 ミスマッチ形成工程を含まない濃縮プロトコルの実施形態による変異対立遺伝子の濃縮を図示する。 図8A乃至8Dは、標準リアルタイムPCR、又はリアルタイム形式に適用された本発明の濃縮方法を用いて、野生型及び変異p53エクソン8に関する増幅プロットを図示する。(a)は、p53エクソン8変異において変異を有する連続希釈細胞株に関し、標準リアルタイムPCRによる増幅プロットを示す。(b)は、p53エクソン8変異において変異を有する連続希釈細胞株に関し、リアルタイムPCR形態に適用された本発明の濃縮手順による増幅プロットを示す。(c)は、4つの臨床腫瘍サンプル(この内の1つは、p53エクソン8変異を含むことが知られている(CT20))の標準リアルタイムPCRによる増幅プロットを示す。(d)は、4つの臨床腫瘍サンプルに関し、リアルタイムPCR形態に適用された本発明の濃縮手順による増幅プロットを示す。 図9A乃至9Dは、野生型及び変異p53のエクソン8に関する標準及び濃縮リアルタイムPCR増幅プロットであり、DNA検出染料(LCgreen)を使用した。(a)は、変異(SW480、TL6、CT20)及び野生型(R27、TL8、TL18、TL81、TL82)p53のエクソン8含有サンプルの標準リアルタイムPCRに関し、増幅プロットを示す。(b)は、変異(SW480、TL6、CT20)及び野生型(R27、TL8、TL18、TL81、TL82)p53のエクソン8含有サンプルに関し、リアルタイム形態に適用された本発明の濃縮手順による増幅プロットを示す。(c)は、変異(SW480、CT7、HCC、CT20)及び野生型p53のエクソン8含有サンプルに関し、標準リアルタイムPCRによる増幅プロットを示す。(d)は、変異(SW480、CT7、HCC、CT20)及び野生型p53のエクソン8含有サンプルに関し、リアルタイム形態に適用された本発明の濃縮手順による増幅プロットを示す。 図10A−Bは、標的濃縮への有機溶媒(例えば、3%DMSO)の影響を図示する。(a)は、野生型及び変異p53エクソン8に関するリアルタイムPCRにおける増幅プロットである。(b)は、変異及び野生型p53エクソン8に関し、リアルタイム形態に適用された本発明の濃縮手順の増幅プロットを示す。 AA761EGFR変異のTaqI消化後に本発明の濃縮手順を用い、向上した制限断片長多型(RFLP;Restriction Fragment Length Polymorphism)検出を図示する。(a)は、標準PCR又は濃縮手順を実施した後、1:10,000(変異:ゲノム)で希釈した時の、野生型及び変異(AA761)EGFRの検出を図示する。(b)は、標準PCRによって分析された野生型EGFRの検出を図示する。
本発明は、サンプルから少量の対立遺伝子(例えば、標的配列)を濃縮するための方法、組成物、ソフトウェア、及び装置を対象とする。本方法は、部分的には、反応混合物を臨界変性温度にすることによって標的配列を選択的に濃縮することを対象とする。臨界変性温度又はTcは、参照配列の融解温度Tmよりも低い温度である。臨界温度は、二重鎖標的配列又は標的−参照クロスハイブリダイゼーションされた二重鎖DNAの二本鎖が有する、より低いTmを上手く利用することにより、これら二本鎖を参照/参照ホモ二本鎖よりも優先的に変性させる。
多くの既知の変異検出方法は、標的配列を選択的に濃縮する増幅プロトコルを用いる本発明から利益を得ることになる。遺伝子検査の初期工程としてPCRを使用することは、大抵の変異及びシークエンシング反応において行われる。一般的に、核酸配列(例えば、ゲノムDNA/cDNA)は、第1工程として増幅された後、ジデオキシ・シークエンシング又は変異スクリーニング方法(例えば、SSCP、dHPLC、MALDI−TOF、ピロシークエンシング、高分解能融解曲線分析(High Resolution Melting))が続けられる。したがって、本質的に全ての変異検出法の限界は、変異含有配列(例えば、標的配列)の濃縮が、スクリーニングに先行するPCR工程中に実施される場合において、一様に利益を得ることになる。
<定義>
本明細書で用いられる際、用語「標的配列の濃縮」は、サンプルにおいて、標的配列の量を増やし、対応する参照配列と比べて標的配列の比率を高めることを意味する。例えば、サンプル内の標的配列と参照配列との比率が開始時に5%対95%である場合、標的配列が増幅反応中に優先的に増幅可能であるために、70%標的配列対30%参照配列という比率を産生することになる。したがって、参照配列に対して標的配列の濃縮は14倍である。標的配列の濃縮は、濃縮前と比較して参照配列に対する標的配列を2倍乃至200倍増加させるという結果をもたらす。標的の濃縮は、参照配列に対し、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、又はそれ以上の濃縮である。標的配列の濃縮により、参照配列と比較して標的配列を10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、95%、又はそれ以上を有するサンプルとなる(例えば、10%標的配列:90%参照配列乃至95%標的配列:5%参照配列)。
本明細書で用いられる際、用語「標的配列」は、対応する参照配列よりも核酸サンプル内により少なく見られる核酸を意味する。標的配列は、サンプル中の参照配列+標的配列の全量の50%未満を構成する。好ましくは、標的配列は、参照配列と比較して、RNA及び/又はDNAレベルで1:10、1:15、1:20、1:25倍、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:150、1:200倍又はそれ未満で発現する。一実施形態では、標的配列は、変異対立遺伝子である。例えば、サンプル(例えば、血液サンプル)は、多数の正常細胞とほんの少しの癌性細胞を含むことがある。正常細胞は非変異又は野生型の対立遺伝子を含む一方、少量の癌性細胞は体細胞変異を含む。この場合、変異が標的配列であって、野生型配列が参照配列である。その他の実施形態では、本発明は、胎児のDNAを、母親から入手した核酸サンプル内において検出することを対象とする。この実施形態では、標的配列は胎児のDNA内に存在する一方、より多く見られる母親のDNAは参照配列を含む。本明細書で用いられる際、標的配列は妊娠した母親から得られる胎児DNAを含むことを意味する。本明細書で用いられる際、「標的鎖」は、標的配列の一本の核酸鎖を意味する。
標的配列は、約17−2000ヌクレオチド長である。一実施形態では、標的配列は、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、又はそれ以上のヌクレオチド長である。標的配列は、対応する参照配列に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を共有するが、参照配列とは少なくとも1ヌクレオチドの違いを有する。本発明に係る標的配列は、参照配列に用いられるプライマー対と同じプライマー対を用いて、PCRによって増幅されることが可能である。
本明細書で用いられる際、用語「参照配列」は、対応する標的配列よりも核酸サンプル内により多く見られる核酸を意味する(例えば、同じ遺伝子であるが、異なる核酸配列を有する)。参照配列は、サンプル中の参照配列+標的配列の全量の50%を超えて構成する。好ましくは、参照配列は、標的配列と比較して、RNA及び/又はDNAレベルで10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、200倍、又はそれ以上で発現する。一実施形態では、参照配列は、野生型対立遺伝子である。例えば、サンプル(例えば、血液サンプル)は、多数の正常細胞とほんの少しの癌性細胞を含むことがある。正常細胞は非変異又は野生型の対立遺伝子を含む一方、少量の癌性細胞は体細胞変異を含む。この場合、野生型配列が参照配列であって、変異配列が標的配列である(例えば、変異対立遺伝子)。本明細書で用いられる際、「参照鎖」は、参照配列の一本の核酸鎖を意味する。
参照配列は、約17−2000ヌクレオチド長である。一実施形態では、参照配列は、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、又はそれ以上のヌクレオチド長である。参照配列は、対応する標的配列に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を共有するが、標的配列とは少なくとも1ヌクレオチドの違いを有する。本発明に係る参照配列は、参照配列に用いられるプライマー対と同じプライマー対を用いて、PCRによって増幅されることが可能である。
用語「対立遺伝子」は、ヌクレオチド配列において少なくとも1つの差異を有する相同染色体上で同じ遺伝子座又は位置を占める遺伝子、遺伝子の一部、又はDNAの非コード領域の代替形態を意味する。用語「対立遺伝子」は、任意の有機体由来のDNAを示すのに用いられることができる。この有機体は、バクテリア、ウイルス、菌類、原虫類、かび、酵母、植物、ヒト、非ヒト、動物、及び古細菌を含むが、これらに限定されない。対立遺伝子は、単一細胞(例えば、2つの対立遺伝子で、1つは父親から受け継ぎ、1つは母親から受け継いだもの)、又は細胞集団(例えば、正常組織から得た野生型対立遺伝子、及び病変組織から得た体細胞変異対立遺伝子)において発見することができる。
対立遺伝子は、17−2000ヌクレオチド長であることができる。一実施形態では、対立遺伝子は、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、又はそれ以上のヌクレオチド長である。対立遺伝子は、一般的に、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を互いに共有する。本発明に係る対立遺伝子は、同じプライマー対を用いて、PCRによって増幅されることが可能である。
一実施形態では、本発明は、多型を濃縮するのに用いられる。いかなる遺伝子も、ひとつもない、1つの、又は多数の対立遺伝子型(多型)を有することができる。対立遺伝子に生じる一般的な変異変化は、自然の又は人工的な(例えば化学発癌物質)ヌクレオチドの欠失、付加、又は置換の結果によるものである可能性がある。これらの種類の変化の夫々は、単独で、又はその他と組み合わせて、任意配列において1回又はそれ以上生じる可能性がある。
幾つかの異なる種類の多型が、報告されている。制限断片長多型(RFLP:restriction fragment length polymorphism)は、制限断片の長さを変えるDNA配列のばらつきである (Botstein et al. , Am. J. Hum. Genet. 32:314-331 (1980))。制限断片長多型は、制限部位の作成又は削除が可能であるために、制限断片の長さを変えることになる。RFLPは、ヒト及び動物の遺伝分析に広く用いられてきた(WO第90/13668号; WO第90/11369号; Donis-Keller, Cell 51:319-337 (1987); Lander et al., Genetics 121:85-99 (1989)を参照)。遺伝形質が特定のRFLPにリンク付け可能である場合、個体におけるRFLPの存在は、その個体が形質も示すか否かの可能性を予測するのに用いられることができる。RFLPは、本明細書に記載される濃縮方法と組み合わせて用いられることができ、これにより、多型の検出を高めることができる。このような方法は、実施例9に記載される。
その他の多型は、短いタンデム反復(STRs:short tandem repeats)の形態であり、タンデムのジ−、トリ−、及びテトラ−ヌクレオチド反復モチーフを含む。また、これらのタンデム反復は、タンデム反復数(VNTR:variable number tandem repeat)多型とも称される。VNTRは、同定及び起源分析に用いられ(米国特許第5,075,217号; Armour et al., FEBS Lett. 307:113-115 (1992); Horn et al., WO第91/14003号; Jeffreys, EP第370,719号)、多数の遺伝子マッピング研究に用いられてきた。
その他の多型は、同種の個体間の単一ヌクレオチドの差異となって現れる。このような多型は、RFLPs、STRs(短いタンデム反復)、及びVNTRs(タンデム反復数)よりもはるかに頻繁である。ある単一ヌクレオチド多型は、タンパク質コード配列において生じる。この場合、多型形態のうちの1つは、欠陥のある又は他の変異タンパク質の発現、そして潜在的には遺伝病を生じさせる可能性がある。その他の単一ヌクレオチド多型は、非コード領域において生じる。これらの多型は、欠陥のあるタンパク質発現(例えば、不完全なスプライシングの結果によるもの)を引き起こすものもある。単一ヌクレオチド多型は、表現型の影響を有さないものもある。
その他の変異は、体細胞変異を含む。体細胞変異は、受胎後に生じるDNAの変化である。体細胞変異は、生体内の細胞のいずれにおいても生じうるが、生殖細胞(精子と卵子)を除くため、子供には受け継がれないものである。これらの変化は、(必ずしもというわけではないが)癌又はその他の病気を引き起こす可能性がある。
本明細書で用いられる際、用語「野生型」は、集団内の特定遺伝子に関して最も一般的なポリヌクレオチド配列又は対立遺伝子を意味する。一般的には、野生型の対立遺伝子は、正常細胞から得られる。
本明細書で用いられる際、用語「変異」は、核酸配列におけるヌクレオチドの変化(例えば、単一又は複数のヌクレオチド置換、欠失、又は挿入)を意味する。変異を伴う核酸は、対応する野生型のポリヌクレオチド配列の核酸配列とは配列が異なる核酸配列(変異対立遺伝子)を有する。本発明の方法は、特に、1乃至500の間のヌクレオチド配列の変化を含む変異対立遺伝子を選択的に濃縮するのに有用である。変異対立遺伝子は、対応する野生型対立遺伝子と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、又は500のヌクレオチド配列の変化を有することができる。好ましくは、変異対立遺伝子における変異は、1乃至10ヌクレオチド配列の変化を含み、より好ましくは、1乃至5ヌクレオチド配列の変化を含む。変異対立遺伝子は、野生型対立遺伝子に対し、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を有する。一般的には、変異対立遺伝子は、病変組織又は細胞から得られ、病状に関連するものである。
本明細書で用いられる際、用語「融解温度」又は「Tm」は、ポリヌクレオチドが、その相補配列から分離する温度を意味する。一般的には、Tmは、二本鎖の核酸分子におけるワトソン・クリック塩基対の半分が切断される又は分離する(即ち、「溶解する」)一方で、ワトソン・クリック塩基対の残りの半分が二重鎖構造のまま損傷を受けていない温度として定義されることができる。言い換えると、Tmは、2つの相補配列のヌクレオチドの50%がアニーリングされ(二重鎖)、ヌクレオチドの50%が変性される(一本鎖)温度として定義される。したがって、Tmは、二重鎖から一本鎖の核酸分子への推移における(又は、反対に、一本鎖から二重鎖の核酸分子への推移における)中間点を定義する。
Tmは、多数の方法、例えば、Wetmur1991による最近隣法の計算(Wetmur, J. G. 1991. DNA probes: applications of the principles of nucleic acid hybridization. Crit Rev Biochem Mol Biol 26: 227-259。引用することにより本願に援用する)によって、そして、オリゴ(商標)プライマーデザインを含む市販プログラム及びインターネット上利用可能なプログラムを使用することにより、推定可能である。あるいは、Tmは、実際の実験を通じて決定されることも可能である。例えば、二重鎖DNA結合又は挿入染料(例えばエチジウムブロマイド又はSYBR−グリーン(Molecular Probes)等)が融解曲線分析に使用されることにより、核酸の実際のTmを決定することができる。核酸のTmを決定する更なる方法は、技術的に公知であり、本明細書に記載される。
本明細書で用いられる際、用語「臨界温度」又は「Tc」は、参照配列のTmよりも低い温度を意味する。Tcは、二重鎖標的配列の二本鎖、又は標的配列/参照配列の二重鎖二本鎖を優先的に変性させるために適用され、これにより、増幅反応中の標的配列の選択的な濃縮が可能となる。臨界変性温度(Tc)は、それを下回ると、PCRの効率性が任意の核酸配列に対して急に減少する温度である。例えば、167bpのp53配列は、PCR変性温度が87℃に設定された時によく増幅し、86.5℃の時に穏やかに増幅し、PCR変性が86℃以下に設定された場合には、検出可能な産物が産生されない。したがって、本例では、Tc〜86.5℃である。Tcは、参照配列のTmより約0.1−20℃低い。より好ましくは、Tcは、参照配列のTmより約0.1−10℃、0.1−9℃、0.1−8℃、0.1−7℃、0.1−6℃、0.2−5℃、0.3−4.5℃、0.4−4℃、0.5−3.5℃、0.5−3℃、0.5−3℃、0.5−2.5℃、0.5−2℃、0.5−1.5℃、0.5−1℃低い。ある実施形態では、Tcは、参照及び標的配列両方のTmより低い。例えば、Tcは、標的配列のTmより約0.1−10℃、0.1−9℃、0.1−8℃、0.1−7℃、0.1−6℃、0.2−5℃、0.3−4.5℃、0.4−4℃、0.5−3.5℃、0.5−3℃、0.5−3℃、0.5−2.5℃、0.5−2℃、0.5−1.5℃、0.5−1℃低いことができる。
本明細書で用いられる際、用語「選択的変性」又は「優先的変性」は、標的配列又は標的/参照配列二本鎖の二重鎖核酸分子における塩基対間の水素結合を優先的に切断することを意味し、これにより、一本鎖標的配列が産生される。標的配列の選択的変性は、標的及び参照配列を含むサンプルを臨界温度にすることによって、実現される。
本明細書で用いられる際、「プライマー対」は、標的及び参照配列の逆鎖にアニールする2つのプライマーを意味し、これによりPCR反応中に増幅産物が形成される。プライマー対は、反応物のTcよりも低いTmを有するように設計される。
本明細書で用いられる際、「クロスハイブリダイゼーション」は、1つ以上のヌクレオチドが異なる2つの核酸配列間に形成された二重鎖の二本鎖を意味し、これは、相補的なGとC塩基との間、及び相補的なAとT又はAとU塩基との間の水素結合の形成に基づくものである。2つの相補的な核酸配列は、逆平行構造において水素結合を有する。好適な実施形態では、2つの核酸配列は、標的配列と参照配列である。クロスハイブリダイズしたDNAは、参照及び標的配列間の差異の位置においてミスマッチを含むことになる。このミスマッチは、多型、変異、挿入、欠失、及びこのような差異を引き起こすその他の変化を含み、例えば、メチル化である。例えば、1以上のヌクレオチドのループ及び/又は一本鎖領域は、欠失/挿入部位において生じる。
クロスハイブリダイゼーションは、典型的には、標的及び参照配列の変性に関与し、例えば、加熱後、ハイブリダイゼーション及び二本鎖形成が可能な条件下(例えば、温度等)における再変性を行うことによって実現される。
本明細書で用いられる際、「反応混合物」は、標的配列二本鎖を含むと考えられる混合物であり、標的配列の変性を可能にする好適なバッファーを含む。
本明細書で用いられる際、「同一性」「相同性」は、2つの高分子(例えば、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド)間のサブユニット配列の類似性を意味する。2分子両方における1つのサブユニットの位置が、同じ単量体サブユニットで占有されている場合(例えば、2つのペプチドの夫々における1つの位置がセリンによって占有されている)には、それら2分子は、その位置において同一である。2つの配列間の同一性は、合致する(マッチする)又は同一である位置の数の直接的関数である。例えば、2つのペプチド又は化合物配列における位置の半分(例えば、ポリマー10ユニット長において5つの位置)が同一である場合には、2つの配列は50%同一であるといえる。その位置が90%であれば(例えば、10のうち9がマッチしていれば)、2つの配列は90%の配列同一性を有する。
パーセントヌクレオチド同一性は、BLASTの初期設定パラメータによって決定される。配列の比較において、典型的には、1つの配列は参照配列として作用し、これと試験配列とが比較される。配列比較アルゴリズムを用いる時、試験及び参照配列がコンピュータ内に入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムのパラメータが指定される。初期設定プログラムパラメータが使用可能であり、また代替パラメータも指定可能である。配列比較アルゴリズムはその後、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
比較ウィンドウは、20乃至600、通常は約50乃至約200、より一般的には約100−約150からなる群から選択される連続位置数の任意の領域を意味し、配列は、2つの配列が最適にアラインメントされた後に、同じ連続位置数の参照配列と比較されることが可能である。比較のための配列アラインメントの方法は、技術的に公知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv. Appl. Math. 2: 482, (1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J. Mol. Biol. 48: 443, (1970) の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85: 2444, (1988) の類似法の調査によって、これらアルゴリズムのコンピューター化実装 (GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)によって、又は、手動アラインメントと目視検査 (例えば Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)参照)によって実施可能である。
パーセント配列同一性と配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの一例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402, (1977)、及び Altschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410, (1990)に、それぞれ記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通じて好適に利用可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、まず、データベース配列内の同じ長さのワード(word)とアラインメントした時に、ある正の値の閾値スコアTに一致する又は満たすW長の短いワードをクエリー配列内に同定することによって、ハイスコアリング配列ペア(HSPs;high scoring sequence pairs)を同定することに関与する。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighbourhood word score threshold)(Altschul et al. supra)を意味する。これらの初期隣接ワードヒット(wordhit)は、これらを含むより長いHSPsを検索するための検査を開始する際に種となるものである。ワードヒットは、累計的なアラインメントスコアが増加する限り、各配列に沿って両側に伸ばされる。累計スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチング残基ペアへのリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチング残基のペナルティースコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列については、スコア化マトリックスを用いて、累計スコアを計算する。ワードヒットの両側への伸長は、累計アラインメントスコアが得られている最大値からX分だけ低下した時;累計スコアが、一つ以上の負のスコア化残基アライメントの蓄積によってゼロ以下になった時;又は、どちらかの配列端部に到達した時、に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列対象)は、初期設定値として、ワード長(W)11、期待値(E)又は10、M=5、N=−4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、初期設定値としてワード長3、及び期待値(E)10を使用し、BLOSUM62スコア化マトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915, (1989) 参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を使用する。
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析も実施する(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 90:58735787 (1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの測定は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の表示を提供する最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))である。例えば、参照核酸に対する試験核酸の比較における最少合計確率が、約0.2未満、より好ましくは0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合には、核酸配列は、参照配列と類似しているとみなされる。
第一態様では、本発明は、標的及び参照配列を含むと考えられる核酸サンプルにおいて標的配列を濃縮する方法を対象とする。参照及び標的配列は、本方法で使用される前に増幅されることができる。即ち、関心のある参照及び標的配列は、本方法で使用される前にPCR反応においてゲノム鋳型から増幅されることができる。このPCR反応からのアリコート(分割量)は、その後、選択的濃縮方法で使用するために移動される。あるいは、参照及び標的配列は、選択的濃縮方法において、第1のPCR反応を受ける必要はなく、それらの天然型(例えば、ゲノムDNA)で使用可能である。標的及び参照配列は、任意の核酸配列から得ることができる。この核酸配列は、ゲノムDNA、cDNA、ウイルスDNA、哺乳類DNA、胎児DNA、又はバクテリアDNAを含む。参照配列は一般的に野生型対立遺伝子であり且つ標的配列は変異対立遺伝子であり、一方で、この逆もまた可能である。変異対立遺伝子は、任意の1以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は変化を含むことができる。ある実施形態では、変異対立遺伝子は、体細胞変異である。その他の実施形態では、標的配列がメチル化DNAである一方、参照配列が非メチル化DNAである。あるいは、標的配列が非メチル化DNAである一方、参照配列がメチル化DNAである。本方法で使用されるプライマーは、一般的には、約17乃至1000塩基、より好ましくは、約20乃至500塩基、最も好ましくは、約50乃至100塩基の大きさの参照及び標的配列増幅産物を産生するように設計されている。
本方法は、増幅反応混合物を、参照配列の融解温度「Tm」よりも高い第1変性温度にする工程を含む。核酸のTmは、実験によって決定される又は計算によって推定されることができる。当業者であれば、核酸のTmを決定するためには多数の公知の方法があることを十分理解でき、それらのうち幾つかを本明細書中に記載する。第1変性温度は、PCRで使用される標準手順に基づき設定される。したがって、第1変性温度は、標的及び参照配列の完全な変性が可能となる程、十分に高い(例えば96℃)べきである。一実施形態では、第1変性温度は、参照配列のTmよりも約1℃乃至30℃高く、より好ましくは、参照配列のTmは、参照配列のTmよりも約5℃乃至20℃高い。
次に、増幅反応混合物の温度を下げることにより、標的配列及び参照配列をハイブリダイズすることが可能となる。好適な実施形態では、このハイブリダイゼーションの温度又は中間温度(第1変性温度とTcよりも低いが、プライマーアニーリング/伸長温度よりは高い温度(例えば、約60℃乃至80℃))は、プライマー対のTmよりも高い。これにより、標的及び参照配列がハイブリダイズすることが可能となる一方、プライマー対が標的及び/又は参照配列に結合することを防ぐことも可能となる。このアニーリング工程は、二重鎖標的−標的、参照−参照、及び標的−参照配列のハイブリダイゼーション二本鎖の形成を引き起こす。標的−参照ハイブリダイゼーション二本鎖は、その後、反応混合物の温度をTcまで上げることによって、優先的に変性される。Tc又は臨界温度は、参照配列のTmよりも低く、本明細書に記載の方法によって決定可能である。一実施形態では、Tcは、参照配列のTmよりも約0.3℃−5℃低く、より好ましくは、約0.5℃−1.5℃低い。一般的には、Tcは、約70−90℃である。標的−標的ハイブリダイゼーション二本鎖もまた、標的配列が参照配列と比較してより低いTmとなるヌクレオチド配列を有している場合には、優先的に変性される可能性がある。Tcにおいて、標的−参照配列二本鎖(及び、参照配列よりも低いTmを有している場合においてのみ標的−標的配列二本鎖)は、実質的に変性され、この一方で、標的−標的二本鎖(参照配列のTmと同じ又はそれ以上のTmを有している場合のみ)及び参照−参照配列二本鎖は、実質的に変性されない。「実質的に」とは、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%が、既定の変性又は非変性形態であることを意味する。Tcは、一般的には、約1秒乃至5分間、より好ましくは2秒乃至1分間、最も好ましくは5秒乃至30秒間適応される。
標的−参照二本鎖及び/又は標的−標的配列ハイブリダイゼーション二本鎖の優先的な変性の後、反応混合物の温度を下げることにより、プライマー対が標的配列にアニールすることが可能となる。アニールされたプライマーは、その後、核酸ポリメラーゼで伸長されることにより、サンプル内の参照配列と比較して標的配列が濃縮される。
本方法の工程は、一般的には、複数サイクル繰り返されることにより、標的及び参照配列を十分に増幅させる。一実施形態では、本方法の工程は、5−40サイクル、より好ましくは10−30サイクル繰り返される。サイクルの最適数は、当業者によって決定可能である。好ましくは、本方法は、PCR装置において使用され、より好ましくは、リアルタイム検出PCR装置においてリアルタイム反応条件下で使用される。リアルタイム検出PCR装置とは、例えば、SMARTCYCLERリアルタイムPCR装置(Cepheid、サニーベール、カリフォルニア州)及び Mx3005PリアルタイムPCR装置(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)等である。本実施形態では、反応混合物は、核酸検出剤(例えば、SYBRグリーン染料又はLC−グリーン染料等の核酸検出染料、又は蛍光染料に操作的に結合可能なプローブ)を含むことができ、これにより、反応の増幅産物を定量化及び/又は監視することが可能となる。標的配列の濃縮が完了すると、サンプルは、さらに処理される(例えば、本方法によって濃縮された任意の遺伝的変化を同定するための処理(例えば、シークエンシング反応を受ける))。濃縮された参照配列は、MALDI−TOF、HR−メルティング、ジデオキシ・シークエンシング、単一分子シークエンシング、ピロシークエンシング、RFLP、デジタルPCR、及び定量PCRを含む各種の手順によって、さらに処理されることが可能である。
さらにその他の態様では、本発明は、核酸増幅反応プロトコルを実施することによって、標的配列を濃縮するための方法を対象とする。増幅反応プロトコルは、第1変性温度と第2変性温度を含む。第1変性温度は、参照配列のTmよりも高く、第2変性温度は、参照配列のTmよりも低い。本方法は、増幅反応混合物を、参照配列の融解温度「Tm」よりも高い第1変性温度にする工程を含む。核酸のTmは、実験によって決定される又は計算によって推定されることができる。当業者であれば、核酸のTmを決定するためには多数の公知の方法があることを十分理解できる。第1変性温度は、一般的には、PCR反応の変性温度を通常選択するように選択され、標的及び参照配列の変性を可能とする程度まで十分高くあるべきである。一実施形態では、第1変性温度は、参照配列のTmよりも約1℃乃至30℃高く、より好ましくは、参照配列のTmは、参照配列のTmよりも5℃乃至20℃高い。
第2変性温度は、参照配列のTmよりも低く、本明細書に記載の方法によって決定されることができる。一実施形態では、Tcは、参照配列のTmよりも約0.3℃−5℃低く、より好ましくは、参照配列のTmよりも約0.5℃−1.5℃低い。一般的には、Tcは、約70−90℃である。第2変性温度は、一般的には、約1秒乃至5分間、より好ましくは2秒乃至1分間、最も好ましくは5秒乃至30秒間が適用される。
その他の態様において、本発明は、増幅反応混合物をTcにする工程と、反応混合物の温度を下げる工程と、プライマー対を伸長させる工程とを含む標的配列を濃縮する方法を対象とする。増幅反応混合物は、標的及び参照配列を含むと考えられているものである。本態様では、標的配列は、参照配列のTmよりも低いTmを有する。Tcは、参照配列のTmより低く、これにより、そのヌクレオチド組成(例えば欠失)の結果として参照配列よりも低いTmを有する標的配列の優先的な変性が可能となる。本発明のその他の態様によると、参照及び標的配列は、本方法で使用される前に増幅されることが可能である。即ち、関心のある参照及び標的配列は、本発明の使用前にPCR反応におけるゲノム鋳型から増幅されることができる。このPCR反応からのアリコート(分割量)は、その後、選択的濃縮方法で使用するために移動される。あるいは、参照及び標的配列は、選択的濃縮方法において、第1のPCR反応を受ける必要はなく、それらの天然型(例えば、ゲノムDNA)で使用可能である。標的及び参照配列は、任意の核酸配列から得ることができる。この核酸配列は、ゲノムDNA、cDNA、ウイルスDNA、哺乳類DNA、胎児DNA、又はバクテリアDNAを含む。参照配列は一般的に野生型対立遺伝子であり且つ標的配列は変異対立遺伝子であり、一方で、この逆もまた可能である。変異対立遺伝子は、任意の1以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は変化を含むことができる。ある実施形態では、変異対立遺伝子は、体細胞変異である。本方法で使用されるプライマーは、一般的には、約15乃至1000塩基、より好ましくは、約25乃至500塩基、最も好ましくは、約50乃至100塩基の大きさの参照及び標的配列の増幅産物を産生するように設計されている。
標的−標的ハイブリダイゼーション二本鎖は、反応混合物の温度をTcまで上げることによって、優先的に変性される。Tc又は臨界温度は、参照配列のTmよりも低く、本明細書に記載の方法によって決定可能である。一実施形態では、Tcは、参照配列のTmより約0.3℃−5℃低く、より好ましくは、参照配列のTmより約0.5℃乃至1.5℃低い。一般的には、Tcは、約70−90である。Tcは、一般的には、約1秒乃至5分間、より好ましくは2秒乃至1分間、最も好ましくは5秒乃至30秒間が適用される。Tcにおいて、標的−参照配列二本鎖及び標的−標的配列二本鎖は、実質的に変性され、この一方で、参照−参照配列二本鎖は、実質的に変性されない。「実質的に」とは、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%が、既定の変性又は非変性形態であることを意味する。
反応混合物の温度を下げる工程は、プライマー対が標的配列にアニールすることを可能にする。これらのアニールされたプライマーは、その後、ポリメラーゼによって伸長され、サンプル内の標的配列の量を増加させる。本方法の工程は、一般的には、複数サイクル繰り返されることにより、標的及び参照配列を十分に増幅させる。一実施形態では、本方法の工程は、5−40サイクル、より好ましくは10−30サイクル繰り返される。サイクルの最適数は、当業者によって決定可能である。好ましくは、本方法は、PCR装置において使用され、より好ましくは、リアルタイム検出PCR装置においてリアルタイム反応条件下で使用される。リアルタイム検出PCR装置とは、例えば、SMARTCYCLERリアルタイムPCR装置(Cepheid、サニーベール、カリフォルニア州)及びMx3005PリアルタイムPCR装置(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)等である。本実施形態では、反応混合物は、核酸検出剤(例えば、SYBRグリーン染料又はLC−グリーン染料等の核酸検出染料、又は蛍光染料に操作的に結合可能なプローブ)を含むことができ、これにより、反応の増幅産物を定量化及び/又は監視することが可能となる。標的配列の濃縮が完了すると、サンプルは、追加的な処理、例えばシークエンシング反応を受ける。濃縮された対立遺伝子は、MALDI−TOF、HR−メルティング、ジデオキシ・シークエンシング、単一分子シークエンシング、ピロシークエンシング、RFLP、デジタルPCR、及び定量PCRを含む各種の手順によって、さらに処理されることが可能である。
さらにその他の態様において、本発明は、増幅反応混合物を、Tcの適用によってアニーリング条件と変性条件の交互の工程下におくことによって、標的配列を濃縮する方法を対象とする。標的及び参照配列を有する増幅反応混合物は、まず、参照配列のTmよりも高い第1変性温度にする。その他の態様と同様に、参照及び標的配列は、本発明の使用前に増幅されることができる。即ち、関心のある参照及び標的配列は、本発明の使用前にPCR反応におけるゲノム鋳型から増幅されることができる。このPCR反応からのアリコート(分割量)は、その後、選択的濃縮方法で使用するために移動される。あるいは、参照及び標的配列は、選択的濃縮方法において、第1のPCR反応を受ける必要はなく、それらの天然型(例えば、ゲノムDNA)で使用可能である。標的及び参照配列は、任意の核酸配列から得ることができる。この核酸配列は、ゲノムDNA、cDNA、ウイルスDNA、哺乳類DNA、胎児DNA、又はバクテリアDNAを含む。参照配列は一般的に対立遺伝子であり且つ標的配列は変異対立遺伝子であり、一方で、この逆もまた可能である。変異対立遺伝子は、任意の1以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は変化を含むことができる。ある実施形態では、変異対立遺伝子は、体細胞変異である。その他の実施形態では、標的配列がメチル化DNAである一方、参照配列が非メチル化DNAである。あるいは、標的配列が非メチル化DNAである一方、参照配列がメチル化DNAである。本方法で使用されるプライマーは、一般的には、約15乃至1000塩基、より好ましくは、約25乃至500塩基、最も好ましくは、約50乃至100塩基の大きさの参照及び標的配列増幅産物を産生するように設計されている。
核酸のTmは、実験を通じて決定される又は計算によって推定されることができる。当業者であれば、核酸のTmを決定するためには多数の公知の方法があることを十分理解できる。第1変性温度は、一般的には、PCR反応の変性温度として通常選択するように選択され、標的及び参照配列の変性を可能とするのに十分高いべきである。一実施形態では、第1変性温度は、参照配列のTmより約1℃乃至30℃高く、より好ましくは、参照配列のTmは、参照配列のTmより約5℃乃至20℃高い。
次に、サンプルは、2つの異なる温度の培養工程間で循環(サイクル)される。第1培養工程では、温度が下げられることにより、標的配列と参照配列のハイブリダイゼーションが可能となる。第2培養工程では、温度は、参照配列のTmより低いTcまで上げられる。その後、これらの第1及び第2工程は1回以上、より好ましくは3−20回、最も好ましくは5−10回繰り返される。
第1培養工程は、標的−標的、参照−参照、及び標的−参照配列のハイブリダイゼーション二本鎖を形成させる。好適な実施形態では、このハイブリダイゼーションの温度又は中間温度(第1変性温度とTcより低いが、プライマーアニーリング/伸長温度よりは高い温度(例えば、約60℃乃至80℃))は、プライマー対のTmよりも高い。これにより、標的及び参照配列がハイブリダイズすることが可能となる一方、プライマー対が標的及び/又は参照配列に結合することを防ぐことも可能となる。標的−参照及び参照−標的(標的が参照配列よりも低いTmを有している限り)ハイブリダイゼーション二本鎖は、その後、第2培養工程において反応混合物の温度をTcまで上げることによって、優先的に変性される。Tc又は臨界温度は、参照配列のTmよりも低く、本明細書に記載の方法によって決定可能である。一実施形態では、Tcは、参照配列のTmより約0.3℃−5℃低く、より好ましくは、参照配列のTmより約0.5℃乃至1.5℃低い。一般的には、Tcは、約70−90℃である。標的−標的ハイブリダイゼーション二本鎖もまた、標的配列が参照配列と比較してより低いTmとなるヌクレオチド配列を有している場合には、優先的に変性される。Tcは、一般的には、約1秒乃至5分間、より好ましくは2秒乃至1分間、最も好ましくは5秒乃至30秒間適応される。サイクルの培養工程が完了すると、反応混合物の温度は下げられ、これにより1以上のプライマーが標的配列にアニールすることが可能となる。その後、これらのプライマーはポリメラーゼによって伸長されることにより、標的配列が濃縮される。
各工程が完了すると、標的及び参照配列の十分な増幅を得るために、反応を複数サイクル繰り返すことができる。一実施形態では、本方法の工程は、5−40サイクル、より好ましくは10−30サイクル繰り返される。サイクルの最適数は、当業者によって決定可能である。好ましくは、本方法は、PCR装置において使用され、より好ましくは、リアルタイム検出PCR装置においてリアルタイム反応条件下で使用される。リアルタイム検出PCR装置とは、例えば、SMARTCYCLERリアルタイムPCR装置(Cepheid、サニーベール、カリフォルニア州)及び Mx3005PリアルタイムPCR装置(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)等である。本実施形態では、反応混合物は、核酸検出剤(例えば、SYBRグリーン染料又はLC−グリーン染料等の核酸検出染料、又は蛍光染料に操作的に結合可能なプローブ)を含むことができ、これにより、反応の増幅産物を定量化及び/又は監視することが可能となる。標的配列の濃縮が完了すると、サンプルは、さらに処理される。この更なる処理は、MALDI−TOF、HR−メルティング、ジデオキシ・シークエンシング、単一分子シークエンシング、ピロシークエンシング、RFLP、デジタルPCR、及び定量PCRを含む。
その他の実施形態では、本発明の方法は、標的配列又は参照配列にメチル化が生じたか否かを検出するのに使用されることができる。更なる実施形態では、本方法は、メチル化を分析するためにゲノムDNAを利用する。
メチル化検出方法は、DNAのメチル化感度処理に関する化学的又は酵素的研究を含む。化学的処理は、DNAを亜硫酸水素ナトリウムで培養することを含み、非メチル化シトシンをウラシルに選択的に変換する。まず、DNAは熱変性され、その後、5MのpH5−7の亜硫酸水素塩で処理されることができる。既に存在するウラシルを除去するためのゲノムDNAの前処理は、亜硫酸水素塩処理の前になされる。この前処理は、pH7の5mMヒドロキシルアミンの存在下におけるウラシルグリコシラーゼ処理から構成される。修飾DNAは、本発明の方法に使用可能である。
参照又は標的配列のメチル化シトシンは、ウラシルに変換されるので、反応のクロスハイブリダイゼーション工程中、メチル化されていない逆鎖(標的又は参照)と二本鎖を作る際にミスマッチを形成することになる。
その他の態様では、本発明の任意の方法は、多重反応において複数の異なる標的配列を濃縮するのに用いられる。本実施形態において、本方法は、追加的な標的配列に対する追加的な一連のプライマー対を含む。
その他の態様では、本発明は、本発明の任意の方法を実施するためのプログラム命令を有するコンピュータ可読媒体を対象とする。更なる態様では、本発明は、標的配列を濃縮するためのPCRシステムを対象とする。システムは、コンピュータ可読媒体のプログラム命令を実装するためのメモリを含む。
図1及び2は、本発明の2つの異なる態様を図示する。図1は、第1変性温度及び臨界変性温度又はTcを有する増幅反応を利用する方法における本発明の一態様を図示する。図2は、第1変性温度及びTcを有する増幅反応を図示するが、さらに、反応のプライマー・アニーリングと伸長段階の前に、アニーリング及び臨界変性温度工程を複数回周期的に変動させること又は繰り返すことを含む。
図1は、標的及び参照配列を含む核酸サンプル内で標的配列を濃縮するための手順を示す。標的及び参照配列は、任意の核酸配列から得ることができる。この核酸配列は、ゲノムDNA、cDNA、ウイルスDNA、哺乳類DNA、胎児DNA、又はバクテリアDNAを含む。参照配列は一般的に対立遺伝子であり且つ標的配列は変異対立遺伝子であり、この逆もまた可能である。変異対立遺伝子は、任意の1以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は変化を含むことができる。ある実施形態では、変異対立遺伝子は、体細胞変異である。その他の実施形態では、標的配列はメチル化DNAである一方、参照配列は非メチル化DNAである。あるいは、標的配列は非メチル化DNAである一方、参照配列はメチル化DNAである。
本方法は、増幅反応混合物を、参照配列の融解温度「Tm」よりも高い第1変性温度にする工程を含む(図1A)。核酸のTmは、実験を通じて決定される又は計算によって推定されることができる。当業者であれば、核酸のTmを決定するためには多数の公知の方法があることを十分理解でき、それらのうち幾つかを本明細書中に記載する。第1変性温度は、一般的には、PCR反応の変性温度として通常選択するように選択され、標的及び参照配列の完全な変性を可能とするのに十分高いべきである(例えば94℃)。一実施形態では、第1変性温度は、参照配列のTmより約1℃乃至30℃高く、より好ましくは、参照配列のTmは、参照配列のTmより約5℃乃至20℃高い。
次に、増幅反応混合物の温度を下げることにより、標的配列と参照配列がハイブリダイズすることが可能となる(図1B)。このアニーリング工程は、標的−標的、参照−参照、及び標的−参照配列のハイブリダイゼーション二本鎖の形成をもたらす。アニーリングの温度を決定することは、当業者にとってよく知られている。本方法で用いられるPCRプライマーは、この中間温度においてPCRプライマーが標的及び参照配列に結合しないように設計されている。これにより、PCRプライマーは、変異(標的)及び野生型(参照)配列のクロスハイブリダイゼーションを干渉しない。標的配列内の変異のために、大抵の標的配列は、結局、参照配列に対してミスマッチ構造となるため、参照配列とヘテロ二本鎖となった時、完全にマッチした参照/参照ホモ二本鎖よりも低い融解温度を有する。
その後、標的−参照ハイブリダイゼーション二本鎖は、反応混合物の温度をTcに上げることによって、優先的に変性される(図1C)。Tc又は臨界温度は、参照配列のTmよりも低く、本明細書に記載される方法によって決定されることができる。一実施形態では、Tcは、参照配列のTmよりも約3℃−5℃低く、より好ましくは、参照配列のTmよりも約0.5℃−1.5℃低い。一般的には、Tcは、約70−90℃である。標的−標的ハイブリダイゼーション二本鎖は、標的配列が参照配列と比較してより低いTmとなるヌクレオチド配列を有する場合には、優先的に変性されることができる。Tcは、一般的に、約1秒乃至5分間、より好ましくは2秒乃至1分間、最も好ましくは5秒乃至30秒間が適用される。
標的−参照及び/又は標的−標的配列ハイブリダイゼーション二本鎖の優先的な変性後、反応混合物の温度は下げられることにより、1以上のプライマーが標的配列にアニールすることが可能となる(図1D)。その後、アニールされたプライマーは、核酸ポリメラーゼによって伸長され、これにより、サンプル内に含まれる核酸集団内の標的配列を濃縮することになる。
本方法の工程は、一般的には、複数サイクル繰り返すことにより、標的及び参照配列を十分に増幅させる。一実施形態では、本方法の工程は、5−40サイクル、より好ましくは10−30サイクル繰り返される。サイクルの最適数は、当業者によって決定可能である。好ましくは、本方法は、PCR装置において使用され、より好ましくは、リアルタイム検出PCR装置においてリアルタイム反応条件下で使用される。リアルタイム検出PCR装置とは、例えば、SMARTCYCLERリアルタイムPCR装置(Cepheid、サニーベール、カリフォルニア州)及びMx3005PリアルタイムPCR装置(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)等である。本実施形態では、反応混合物は、核酸検出剤(例えば、SYBRグリーン染料又はLC−グリーン染料等の核酸検出染料、又は蛍光染料に操作的に結合可能なプローブ)を含むことができ、これにより、反応の増幅産物を定量化及び/又は監視することが可能となる。標的配列の濃縮が完了すると、サンプルは、さらに処理される(例えば、シークエンシング反応を受ける)ことができる。濃縮された対立遺伝子は、MALDI−TOF、HR−メルティング、ジデオキシ・シークエンシング、単一分子シークエンシング、ピロシークエンシング、RFLP、デジタルPCR、及び定量PCRを含む各種の手順によって、さらに処理されることが可能である。
各PCRサイクルにおいて濃縮方法を実施することにより、変異配列(標的配列)の量は配列(参照配列)に対して徐々に濃縮されることになる。ホモ接合変異及びヘテロ接合変異のどちらもが、この方法によって濃縮される。通例として、標準PCRを変性温度94℃で実施する場合と比較して、変異含有配列が10−60倍濃縮される。既定の臨界変性温度(Tc)において、変異濃縮は、PCRアンプリコンの配列内容及び全体的なサイズに依存して異なる効率性になるが、全ての配列位置において同時に生じる。任意位置における臨界変性温度Tc及び予測される濃縮はいずれも、好適なDNA融解(メルティング)ソフトウェアを用いて推定可能であり、実験的に実証可能である。このようにして、変異の位置に応じて若干異なる濃縮が予測されるが、全ての事例において実質的な濃縮が実現される。これにより、下流分析の検出限度、例えばシークエンシング反応の改善が可能となる。
図2は、増幅反応混合物を、アニーリング及び臨界変性温度の交互の工程下に複数回おくことによって、標的配列を濃縮するための方法の実施形態を図示する。この実施形態は、臨界温度における優先的変性と、ハイブリダイゼーション温度における優先的クロスハイブリダイゼーションの両方の利点を有する。
増幅反応混合物は、標的及び参照配列を有しており、まず、参照配列のTmより高い第1変性温度にする(図2A)。
次に、サンプルは2つの異なる温度の培養工程間で循環(サイクル)される。第1培養工程では、温度が下げられることにより、標的配列と参照配列との優先的なハイブリダイゼーションが可能となる(図2B)。第2培養工程では、温度は、Tcに上げられる(図2C)。その後、これらの第1及び第2工程は、1回以上、より好ましくは3−20回、最も好ましくは5−10回繰り返される。
任意の配列に対する優先的なハイブリダイゼーション温度は、野生型対立遺伝子が、変異含有対立遺伝子とハイブリダイズするよりも速い速度で野生型対立遺伝子自身にハイブリダイズして戻る温度である。変異対立遺伝子は、野生型対立遺伝子よりも非常に少ない率で存在するために、野生型対立遺伝子とそれ自身とのクロスハイブリダイゼーションは、変異対立遺伝子と変異対立遺伝子、又は変異対立遺伝子と対立遺伝子(後者はミスマッチを形成する)のハイブリダイゼーションよりも早く進むことになる。結果として、PCR温度をクロスハイブリダイゼーション温度まで下げた時に、変異対立遺伝子は、野生型対立遺伝子がクロスハイブリダイゼーションをするのと同程度までクロスハイブリダイゼーションしない。好適な実施形態では、このハイブリダイゼーション温度又は中間温度(第1変性温度とTcよりも低いが、プライマーアニーリング/伸長温度よりは高い温度(例えば、約60℃乃至80℃))は、プライマー対のTmより高い。これにより、標的及び参照配列がハイブリダイズすることが可能となる一方、プライマー対が標的及び/又は参照配列に結合することを防ぐことも可能となる。
次に、反応温度をTcまで上げることにより、標的−参照及び標的−標的ハイブリダイゼーション二本鎖を優先的に変性させる(図2C)。Tc又は臨界温度は、参照配列のTmよりも低く、本明細書に記載の方法によって決定されることができる。一実施形態では、Tcは、参照配列のTmより約0.3℃−5℃低く、より好ましくは、参照配列のTmより約0.5℃乃至1.5℃低い。一般的には、Tcは、約70−90℃である。標的−標的ハイブリダイゼーション二本鎖もまた、標的配列が参照配列と比較してより低いTmとなるヌクレオチド配列を有している場合には、優先的に変性される可能性がある。Tcは、一般的には、約1秒乃至5分間、より好ましくは2秒乃至1分間、最も好ましくは5秒乃至30秒間適応される。本工程は、数回繰り返され、アニーリング温度(図2B)及び臨界温度(図2C)との間を周期的に変動する。各回において、一本鎖形態における配列よりも一本鎖形態における変異配列を選択的に生じさせる。
サイクル形態の培養工程が完了すると、反応混合物の温度を下げることにより、1以上のプライマーが標的配列にアニールすることが可能となる(図2D)。その後、これらのプライマーはポリメラーゼによって伸長され、標的配列を濃縮することになる。本方法の工程は、標的及び参照配列の十分な増幅を得るために、一般的には複数サイクル繰り返される。一実施形態では、本方法の工程は、5−40サイクル、より好ましくは10−30サイクル繰り返される。サイクルの最適数は、当業者によって決定可能である。好ましくは、本方法は、PCR装置において使用され、より好ましくは、リアルタイム検出PCR装置においてリアルタイム反応条件下で使用される。
標的配列の濃縮が完了すると、サンプルは、追加的な処理を受けることも可能である。追加的な処理は、MALDI−TOF、HR−メルティング、ジデオキシ・シークエンシング、単一分子シークエンシング、ピロシークエンシング、RFLP、デジタルPCR、及び定量PCRを含む。
デジタルPCRは、濃縮手順と組み合わせて用いて、極微量の変異を検出するのに用いられることができる。デジタルPCRでは、DNAサンプルは単一分子まで希釈されるために、各PCR反応において出発物質は野生型又は変異のいずれかである。同じ出発物質からの多数のPCR反応を実施した後、変異分子が単離及び検出される。Fluidigm(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州)は、本発明とともに使用可能な各種デジタルPCRベースのシステムを販売している。したがって、リアルタイム濃縮は、単一分子から実施され、何千もの平行濃縮反応を同時に行うことにより、変異DNAを生じるPCR反応物の同定が可能となる。このようなシステムは、癌ゲノムにおける極微量の変異を検出するのに特に有用である。デジタルPCRを濃縮手順と組み合わせることにより、単一分子のシークエンシング応用の利益を同様に得ることができる。
<核酸増幅反応>
一実施形態では、本発明の方法で使用される核酸サンプルは、標的及び参照配列を有するゲノムDNAを含む。その他の実施形態では、本発明の方法の核酸サンプルは、核酸増幅反応において既に増幅された標的及び参照配列を含む。当業者であれば、核酸を増幅するのに利用される様々な方法が存在することは理解できることである。おそらく、最も良く知られている方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction;例えば、米国特許第4,683,195号、及び第4,683,202号、そして、Saiki et al., Science 230:1350-1354 (1985) 及び Gyllensten et al., PNAS (USA) 85:7652-7656 (1985))を参照)である。PCR法が好適に変化したものは、非対称PCR法(例えば、Mao et al., Biotechniques 27(4):674-678 (1999); Lehbein et al., Electrophoresis 19(8-9):1381-1384 (1998); Lazaro et al., Molec. Cell. Probes 6(5):357-359 (1992); 及び米国特許第6,197,499号を参照)である。その他の増幅方法は、鎖置換増幅法(SDA:strand displacement amplification)(Walker et al., Nuc. Acids Res. 20(7):1691-1696 (1992), 及び 米国特許第5,744,311号, 第5,648,211号 及び第5,631,147号)、ローリング・サークル増幅法(RCA:rolling circle amplification)(PCT公報WO第97/19193号を参照)、核酸配列ベース増幅法(NASBA:nucleic acid sequence-based amplification)(Compton, Nature 350:91-92 (1991); 及び米国特許第5,409,818号及び第5,554,527号を参照)、転写媒介性増幅法(TMA:transcript mediated amplification)(Kwoh et al., PNAS (USA) 86:1173-1177 (1989), 及び米国特許第5,399,491号を参照)、自家持続配列複製法(3SR:self sustained sequence replication)(Guatelli et al., PNAS (USA) 87:1874-1879 (1990) を参照)、及びリガーゼ連鎖反応法(LCA:ligase chain reaction)(米国特許第5,427,930号 及び第5,792,607号を参照)を含むが、これらに限定されない。
本方法は、改良型PCRを用いる。PCRは、Mullis及びFaloonaによる, 1987, Methods Enzymol., 155: 335に記載される如く実施され、これを引用することにより本願に援用する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術は、米国特許第4,683,202号、第4,683,195号、及び第4,800,159号に開示されている。最も単純な形態において、PCRは特定のDNA配列を酵素的に合成するためのインビトロ方法であって、逆鎖にハイブリダイズするとともに標的DNA内の関心領域に隣接する2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いる。反復的な一連の反応工程は、鋳型変性、プライマーのアニーリング、及びアニールされたプライマーのDNAポリメラーゼによる伸長を含み、これにより、終端がプライマーの5’端によって定義される特異的断片が指数関数的に蓄積されることになる。PCRは、特異的DNA配列の選択的濃縮を10倍産生することが可能であるとして報告されている。PCR法は、Saiki et al., 1985, Science 230:1350にも記載されている。
PCRは、鋳型DNA(標的及び参照配列)(少なくとも1fg;より有用には1−1000ng)、及び少なくとも25pmolのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施される。典型的な反応混合物は、2μlのDNA、25pmolのオリゴヌクレオチドプライマー、2.5μlの好適なバッファー、0.4μlの1.25μM dNTP、2.5ユニットのTaqDNAポリメラーゼ(Stratagene)、及び脱イオン水を全量25μlとなるように含む。PCRは、プログラム可能なサーマル・サイクラーを用いて実施される。
PCRサイクルの各工程の長さと温度、そしてサイクル数は、実際にはストリンジェンシーの要件に基づき調節される。アニーリング温度及びタイミングは、プライマーが鋳型にアニールすると予測される効率性、及び許容されるミスマッチの程度の両方によって決定される。プライマーのアニーリング条件のストリンジェンシーを最適化する能力は、当業者の技量のうちの1つの知識に含まれる。30℃と72℃の間のアニーリング温度が使用される。鋳型分子の初期変性は、通常92℃と99℃の間で4分間の間に生じ、その後、変性(94−99℃、15秒乃至1分)、アニーリング(上述の如く決定される温度;1−2分)、及び伸長(72℃で1分)からなるサイクルが20−40サイクル行われる。最後の伸長工程は、一般的には4分間72℃で実施され、その後、4℃で不確定(0−24時間)な工程を続けることができる。
PCRは、核酸ポリメラーゼ、又はヌクレオシド三リン酸の重合を触媒する酵素を利用する。一般的には、酵素は、標的配列にアニールしたプライマーの3’端において合成を開始し、鋳型に沿って5’方向に進めることになる。既知のDNAポリメラーゼは、例えば、大腸菌DNAポリメラーゼI、T7DNAポリメラーゼ、サーマス・サーモフィラス(Tth)DNAポリメラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルスDNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリスDNAポリメラーゼ、サーマス・アクアチクス(Taq)DNAポリメラーゼ、及びパイロコッカス・フリオサス(Pfu)DNAポリメラーゼを含む。用語「核酸ポリメラーゼ」は、RNAポリメラーゼも包含する。核酸鋳型がRNAである場合には、「核酸ポリメラーゼ」は、RNA依存性重合活性を意味し、例えば、逆転写酵素である。
本発明の方法では、PCRプロトコルは、さらに臨界変性工程を含む。これらのプロトコルは、本明細書に完全に記載され、図1及び2に図示される。
好ましくは、濃縮手順は、PCR装置において、より好ましくは、リアルタイムPCR装置においてリアルタイム反応条件下で実施される。リアルタイム反応条件は、さらに核酸検出剤(例えば、染料又はプローブ)を利用することにより、PCR産物が作り出された際にPCR産物を測定/検出可能となる。
一実施形態では、濃縮方法は多重形態で実施される。多重PCRは、1以上の標的配列を検出するために1対以上のプライマーをPCR反応に用いる際に、実施される。多重PCRの目的は、1以上の標的配列を同時に増幅することによって、時間を節約し且つ費用を最小限にすることである。これにより、複数の標的配列の増幅を1度に実施することが可能となる。一般的には、全ての同時に増幅された配列内における微量の対立遺伝子を濃縮することを目的として多重PCRを本発明と併用して用いるには、結果として得られるPCRアンプリコンが全て略同じTc(臨界変性温度)を共有するようにプライマーが設計される。
<Tm及びTcの決定>
Tmは、二本鎖核酸分子におけるワトソン・クリック塩基対の半分が切断又は分離する(即ち、「溶解する」)一方で、ワトソン・クリック塩基対の残りの半分が二重鎖構造のまま損傷を受けていない温度として定義されることができる。この一方、「臨界温度」「臨界変性温度」又は「Tc」は、参照配列のTmよりも低い温度を意味する。Tcは、核酸サンプルにおいて二重鎖標的配列又は標的配列/参照配列二重鎖の二本鎖を選択的に変性させるために適用され、これにより増幅反応中の標的配列の選択的濃縮が可能となる。
核酸鎖の任意対のTmは、鎖と鎖の結合安定性を示し、鎖の相補性、配列長さ、GC含有量、二重鎖領域内のミスマッチの有無、及びその他のそれ程重要ではない要因、例えば、サンプルの塩濃度に依存する(Lewin, Genes V, Chapter 5, Oxford University Press and Cell Press: New York, (1994) pp. 109-126; SantaLucia, 1998)。
融点温度は、通常、サンプルの温度を本質的に高め、ハイブリダイゼーション二本鎖から一本鎖への解離を継続的に測定することによって実験的に決定される。解離は、各種の異なる方法、例えば、UV吸光度の変化や二重鎖DNA結合染料の蛍光性によって、また、表面プラズモン共鳴法、又は好ましくは蛍光手段によって、検出可能である。後者の事例では、ハイブリダイゼーションのプローブは、通常、蛍光実体(fluorescent entity)で標識付けられ、蛍光シグナルの発生は、ハイブリダイゼーション二本鎖の形成に何らかの方法で依存する。
Tmは、実験的に決定される又は当業者に公知の確定した方法に基づき推測される。核酸変性の推移を観察及び分析する方法は、変性に伴うサンプル内のエンタルピー変化を示差走査熱量計(DSC:differential scanning calorimetry)によって測定する方法(Kulinski et al., Nucleic Acids Res. 19(9):2449-2455 (1991); Paner et al., Biopolymers 29:1715-1734 (1990); Volker et al., Biopolymers 50:303-318 (1999))と、フルオロフォアの共有結合対の蛍光性を測定する方法(Vamosi and Clegg, Biochemistry 37:14300-14316 (1998))と、核酸のハイパークロミシティの変化を監視する方法(Haugland, 「In Vitro Applications for Nucleic Acid Stains and Probes」, in Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 第6版, Molecular Probes Inc, Eugene OR (1996) pp. 161-174)とを含む。
二重鎖核酸のTm値は、核酸に結合する二重鎖DNA特異的染料を監視することによって観察可能である(Wittwer et al., 1996)。二重鎖特異的染料は、核酸結合フルオロフォアである。典型的には、これら染料の蛍光性は、二本鎖核酸と結合した時に増加する(Wittwer et al., BioTechniques 22:176-181 (1997))。Ririe et al. (1997)は、ポストPCR産物が、二重鎖核酸結合染料であるSYBR(登録商標)グリーンIを用いた融解曲線分析によって識別可能であることを示した。SYBR(登録商標)グリーンIは、二重鎖核酸に優先的に結合する(Haugland, 1996)。二重鎖核酸のTmを決定するその他の好適な染料は、SYBR(登録商標)ゴールド、エチジウム・ブロマイド、アクリジン・オレンジ、プロピジウム・ブロマイド、ピコグリーン(登録商標)、Hoechst33258、Hoechst33342、Hoechst34580、YO−PRO(登録商標)-1及びYOYO(登録商標)-1を含む。これら染料の夫々は、市販されている。例えば、Molecular Probes(Eugene, Oreg.) catalog Handbook of Fluorescent Probes and Research Products第8版の8章(CD-ROM上,2001年5月; 引用することにより本願に援用する)は、本発明で使用可能な多数の染料を一覧にしている。
当業者であれば理解できることであるが、任意の二重鎖核酸構造の融解は、一般的には限られた温度範囲にわたって類似核酸集団のかなりの割合において生じ、典型的には、その核酸のTm前後において溶解のピーク(最も推移が速い)を有する。したがって、蛍光放射におけるこのような変化のピークは、二重鎖核酸用のTmを計算するのに用いられることが可能である。
融解温度プロファイルは、Tに対するdF/dTをプロットすることによって、図式的に示すことができる。ここで、dFは測定された蛍光放射における変化であり、dTは、核酸の温度における変化であり、Tは核酸の温度である。このような図式的な描写は、蛍光性が最速に変化する温度においてピークを示し、これは融解温度である。
二重鎖核酸のTmを決定するためのその他の方法は、従来から公知であり、米国特許第7,226,736号及び第6,030,115号に開示されている。これら夫々は、引用することによりその全体を本願に援用する。
Tmは、経験式から推測可能である。Tmは、サンプル溶液中における、相補的塩基対を形成する核酸配列の長さ(n)、配列中のG及びCの含有量、塩濃度(μ)、及び変性剤(%FA)に依存することが知られている。そして、一般的には、経験式Tm=81.5+16.6log(μ)+0.41(%GC)−500/n−0.61(%FA)となる。Tmは、多数の方法、例えば、Wetmur 1991による最近隣法の計算(Wetmur, J. G. 1991. DNA probes: applications of the principles of nucleic acid hybridization. Crit Rev Biochem Mol Biol 26: 227-259, 引用することにより本願に援用する)によって、そして、オリゴ(商標)プライマーデザインを含む市販のプログラム及びインターネット上で利用可能なプログラムを使用することにより、推定可能である。
「臨界温度」又は「Tc」は、参照配列のTmよりも低い温度を意味する。Tcは、参照/参照配列二本鎖よりも、二重鎖標的配列二本鎖又は標的配列/参照配列二重鎖二本鎖を優先的に変性させるために適用され、これにより、増幅反応中の標的配列の選択的濃縮が可能となる。臨界変性温度は、二重鎖標的配列又は標的−参照クロスハイブリダイズされた二重鎖DNAの二本鎖のより低いTmを上手く利用する。標的配列及び参照配列がクロスハイブリダイズする時、短い(例えば<200bp)二重鎖DNA配列に沿った任意の場所の1以上の単一ヌクレオチドのミスマッチの小さい配列の差異により、その配列の融解温度(Tm)において、小さいけれども予測可能な変化が生まれることになる(Lipsky, R.H., et al. (2001) Clin Chem, 47, 635-644; Liew, M., et al. (2004) Clin Chem, 50, 1156-1164)。このミスマッチの完全な配列内容と位置に応じて、0.5−1.5℃の融解温度の変化が、200bpまでの配列ではよく見られる。このようにして、標的−参照配列のアニーリングは、ミスマッチのために、既知の対立遺伝子(例えば、参照配列)よりも低いTmを本質的に有することになる。少なくとも部分的に、本発明は、完全にマッチした及びミスマッチした配列間の小さなTmの差異を有効に利用する。臨界的変性は各PCRサイクルで実施されるために、変異含有対立遺伝子の差異を有する濃縮は指数関数的に度合いが増加し、サイクル終了時には、変異と野生型対立遺伝子間の全体的な増幅効率において大きな差異をもたらすことになる。Tcは、参照配列のTmよりも約0.1−20℃低い。より好ましくは、Tcは、参照配列のTmよりも約0.1−15℃、0.1−10℃、0.1−9℃、0.1−8℃、0.1−7℃、0.1−6℃、0.2−5℃、0.3−4.5℃、0.4−4℃、0.5−3.5℃、0.5−3℃、0.5−3℃、0.5−2.5℃、0.5−2℃、0.5−1.5℃、0.5−1℃低い。
ある実施形態では、Tcは、参照配列及び標的配列の両方のTmよりも低いことができる。例えば、一例では、野生型配列のTmは84℃であり、変異配列のTmは83.8℃であった。濃縮手順が最速となる時に使用された最適Tcは83.5℃であった。
ある好ましい実施形態では、Tcは、参照配列と全ての可能な標的配列の両方のTmよりも低くなるように選択される。例えば、一例では、野生型配列のTmは84℃であり、異なる位置で変異した配列(単一点突然変異)のTmは83.8℃、83.7℃、83.9℃、83.6℃、83.75℃であった。濃縮手順が最速となる時に使用された最適Tcは83.5℃であった。
臨界変性温度(Tc)は、それを下回ると、PCRの効率性が任意の核酸配列に対して急に減少するという温度である。例えば、167bp p53の配列は、PCR変性温度が87℃に設定された時によく増幅し、86.5℃の時に穏やかに増幅し、PCR変性が86℃以下に設定された場合には、検出可能な産物が産生されない。
Tmと同様に、任意の核酸配列のTcは、実験的又は計算のいずれかによって同定可能である。任意のPCR産物に対して実験的にTcを同定するためには、挿入染料(LC−グリーン又はSYBR−グリーン)の存在下でリアルタイム融解曲線を実施することによって、配列の平均融解温度Tmを得る(Tmの決定については上記参照)。Tmよりも約0.5−1.5℃低い温度は、通常、標的配列の濃縮を導くための適切な臨界変性温度Tcである。
塩基対のミスマッチに起因するDNA配列のΔTmを決定することによって、Tcを推定することも可能であり、これは、塩基対のミスマッチが、クロスハイブリダイズされた標的−参照二本鎖において存在すると考えられるためである。この差異は、完全な参照/参照配列のマッチングと比較して、約0.1℃乃至約12.5℃である。したがって、一実施形態では、Tcは、方程式Tc=Tm−ΔTmによって示すことができる。ここで、Tmは参照/参照配列二本鎖の融解温度であり、ΔTmは、標的/参照配列のクロスハイブリダイゼーション中に形成される可能性のある1以上の塩基対ミスマッチに起因する参照配列のTmの変化である。ΔTmは、標的/参照配列二本鎖の長さ、グアニン−シトシン含有パーセント(%GC)、及び二本鎖における点突然変異又は塩基対ミスマッチの位置に依存することが発見されてきた。例えば、ミスマッチが二本鎖のどちらかの端部に向かって位置する場合、ΔTmは、一般的にはより低くなり、典型的には、約0.1℃乃至約8℃の範囲で低くなる。ミスマッチが二本鎖の中心に向かって存在する場合、ΔTmは比較的高くなり、典型的には、約0.2℃乃至約11℃の範囲で高くなる。ΔTmは、一般的に、標的−参照クロスハイブリダイズされた二本鎖における塩基ミスマッチのパーセントあたり、一般的には約0.5℃乃至約1.5℃に相当する。ΔTmは、二本鎖の長さ及び変異位置に応じて変動するのみではなく、配列の特異的順序に応じて変動することが高く評価される点である。その結果、全てのこのような変化形態は、本開示の範囲内である。
<本発明の核酸>
本発明において有用な核酸配列
本発明は、核酸サンプル内の標的配列を濃縮するための方法を提供し、また、鋳型核酸配列を増幅させるためのプライマーを利用する。
本明細書で記載される際、用語「核酸」「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、検出されるべきプライマー、プローブ、及びオリゴマー断片を意味し、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボース含有)、ポリリボヌクレオチド(D−リボース含有)、プリンもしくはピリミジン塩基又は修飾プリンもしくはピリミジン塩基(脱塩基部位含有)のN−グリコシドである任意のその他の種類のポリヌクレオチドを総称する。用語「核酸」「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」の間で、長さにおいて意図された区別はなく、これら用語は交換可能に用いられる。これら用語は、分子の一次構造のみを意味する。したがって、これら用語は、二重鎖及び一本鎖DNA、そして二重鎖及び一本鎖RNAを含む。
オリゴヌクレオチドは、必ずしも既存又は天然配列から物理的に由来するものである必要はなく、任意の方法によって作り出されることができる。この方法とは、化学的合成、DNA複製、逆転写、又はこれらの組み合わせを含む。用語「オリゴヌクレオチド」又は「核酸」は、ゲノムDNA又はRNA、cDNA、半合成、又は合成由来物のポリヌクレオチドを意味し、これは、その合成由来又は操作のおかげで、(1)天然において関連するポリヌクレオチドの全て又は一部分とは関連せず、;及び/又は(2)天然において連結する以外のポリヌクレオチドに連結される。
一実施形態では、本明細書で使用される核酸は、修飾ヌクレオチドを含むことにより、参照/参照配列ホモ二本鎖及び標的/参照配列へテロ二本鎖との間の変性温度の差異を増大させる。このような修飾は、標的配列の濃縮を高めることになる。修飾された又は非天然のヌクレオチドは、濃縮手順の前又は中に組み込まれることができる。本発明の方法の使用において考慮される修飾ヌクレオチドは、ジアミノ−プリン類似体(例えば、2’−O−メチル−2,6−ジアミノプリン)、ウラシル、ペプチド核酸類似体、上述物のビオチン修飾類似体、上述物のフルオロフォア修飾類似体、イノシン、7−デアザグアニン、2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノ核酸(2’F−ANA)ヌクレオチド、ロックド核酸(LNAs)、ENAs:2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸等を含む。修飾ヌクレオチドは、鋳型、プライマー、プローブ核酸を含む本発明の任意の核酸に組み込まれることができる。
これらの修飾は、マッチ及びミスマッチした塩基間のTmの差異を増大させることが可能であり、本方法で得られる濃縮を高める。例えば、ロックド核酸は、立体構造的に制限されたヌクレオチド類似体のクラスを意味し(例えば、WO99/14226号に記載され、引用することにより本願に援用する)、核酸の融解温度を高める。ロックド核酸を含むオリゴヌクレオチドは、Koshkin, A.A., et al., Tetrahedron (1998), 54: 3607-3630 及びObika, S. et al., Tetrahedron Lett. (1998), 39: 5401-5404に記載され、これら両方を引用することにより援用する。ロックド核酸をオリゴヌクレオチドに導入することは、相補配列の親和性を向上させ、融解温度を何段階か増加させる(Braasch, D.A. and D.R. Corey, Chem. Biol. (2001), 8:1-7)。本発明は、公知の任意のLNAを用いて実施することが可能であり、例えば、WO第99/14226号 及び Latorra D, et al., 2003. Hum. Mutat. 22: 79-85に記載されており、これら両方を引用することにより本願に援用する。
相補性は、完全である必要はない。安定した二本鎖は、ミスマッチ(mismatched)塩基対又はアンマッチ(unmatched)塩基対を含むことができる。核酸技術における当業者であれば、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成及び配列、イオン強度、及びミスマッチ塩基対の発生率を含む多数の変数を考慮して、二本鎖安定性を経験的に決定することができる。核酸二本鎖の安定性は、融解温度又は「Tm」によって測定される。
本発明は、鋳型核酸配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを提供する。
用語「プライマー」は、1以上のプライマーを意味することができ、また、精製された制限酵素の消化により自然に発生するか又は合成的に生成されるかのいずれかであるオリゴヌクレオチドを意味することができ、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下に置かれた時に、相補鎖に沿って合成を開始する点として作用することが可能なものである。このような条件は、4つの異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸、及びDNAポリメラーゼ又は逆転写酵素等の重合誘発剤が、好適なバッファー(「バッファー」とは、補因子である置換基を含み、又はpHやイオン強度等に影響を及ぼすものである)において、好適な温度で存在することを含む。プライマーは、増幅に最大限の効率性を付与するために一本鎖であることが好ましい。
本発明に基づく有用なオリゴヌクレオチドプライマーは、一本鎖DNA又はRNA分子であって、これらは、鋳型核酸配列とハイブリダイズ可能であり、核酸鎖の酵素的合成に刺激を与える。プライマーは、核酸分子のプール中に存在する標的分子の一部に相補的である。本発明に基づくオリゴヌクレオチドプライマーは、化学的又は酵素的いずれかの合成方法によって調製されることが検討される。あるいは、このような分子又はその断片は、天然に生じるものであり、その天然源から単離されるか、市販の供給業者から購入される。オリゴヌクレオチドプライマーは5乃至100のヌクレオチド長であり、理想的には17乃至40のヌクレオチドであるが、異なる長さのプライマーも使用される。増幅のためのプライマーは好ましくは17−25ヌクレオチドである。本発明に基づく有用なプライマーは、融解温度推定の方法を用いることにより、特定の融解温度(Tm)を有するようにも設計されている。オリゴ□、プライマーデザイン(Primer Design)を含む市販プログラム、及びプライマー3、及びオリゴカリキュレーターを含むインターネット上利用可能なプログラムは、本発明に基づき有用な核酸配列のTmを計算するのに用いることができる。好ましくは、本発明に基づき有用な増幅プライマーのTmは、例えばオリゴカリキュレーターで計算された場合、好ましくは約45乃至65℃の間であり、より好ましくは、約50乃至60℃の間である。
典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が実質的に相補的である場合(少なくとも14乃至25ヌクレオチドの範囲にわたって少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%相補性)に生じる。Kanehisa, M., 1984, Nucleic Acids Res. 12: 203を参照し、引用することにより本願に援用する。結果として、プライミング部位においてある程度のミスマッチが許容されることが予測される。このようなミスマッチは、小さいものであり、例えば、モノ−、ジ−、又はトリ−ヌクレオチドである可能性がある。あるいは、ミスマッチの領域は、ループを含有し、連続した一連の4以上のヌクレオチドにおいてミスマッチが存在する領域として定義されることもできる。
一実施形態では、濃縮手順は、ペプチド核酸(PNA:Peptide nucleic acid)プライマーと併用して使用可能であることにより、変異濃縮の感度を増大させる。PNAsは、野生型(参照)配列のみの増幅を抑制するために使用される。本実施形態では、プライマーは、標的(変異)配列及び参照配列との間を識別できるように合成されることが可能である。PNAベースのプライマーは、相補的な野生型配列を認識して結合し、変異配列と結合するプライマーよりも高い熱安定性及び特異性を有する。このことは、単にPNAプライマー−参照核酸と標準プライマー−標的核酸との間のTmの差異を増大させるだけではなく、PNAベースのプライマーがDNAポリメラーゼによって伸長されることを防ぎ、これにより、標的配列がさらに濃縮されることになる。このようなアッセイは、技術的に公知であり、Orum et al. Nucleic Acids Research, 21(23): 5332-5336 (1993)に記載されている。
オリゴヌクレオチドプライマーは、これらの考慮事項を念頭において設計され、以下の方法に基づき合成されることが可能である。
<オリゴヌクレオチドプライマー設計の戦略>
シークエンシング又はPCRを目的とした特定のオリゴヌクレオチドプライマーの設計は、標的配列を認識可能な配列を選択することを含むが、最小限の予測される二次構造を有する。オリゴヌクレオチド配列は、標的核酸の単一部位(single site)のみに結合する又は結合しないことができる。さらに、オリゴヌクレオチドのTmは、オリゴヌクレオチドの長さとGC含有量の分析によって最適化される。さらに、ゲノムDNAの増幅に有用なPCRプライマーを設計する際、選択されたプライマー配列は、GenBankデータベース(又はその他の利用可能なデータベース)における配列と有意な一致を示さない。
本発明に基づく有用なプライマーの設計は、容易に利用可能なコンピュータープログラムを使用することによって促進される。これらプログラムは、上述された幾つかのパラメータの評価及びプライマー配列の最適化に役立てるために開発されたものである。このようなプログラムの例は、DNAStar(商標)ソフトウェアパッケージの「PrimerSelect」(DNAStar, Inc.; マディソン、ウィスコンシン州)、オリゴ4.0 (National Biosciences, Inc.)、プライマー、オリゴヌクレオチド・セレクション・プログラム、PGEN及びAmplify(Ausubel et al., 1995, Short Protocols in Molecular Biology, 第3版, John Wiley & Sonsに記載)である。
好適な実施形態では、本発明のプライマーは、標的/参照配列クロスハイブリダイゼーション工程中に適用される温度より低いTmを有するように設計される。したがって、本実施形態において、プライマーは、このハイブリダイゼーション工程中、標的又は参照配列にアニールしない(図1を参照)。一実施形態では、プライマーのTmは、クロスハイブリダイゼーションのアニーリング工程の温度よりも5−10℃低い。
<合成>
プライマー自体は、技術的に公知である技術を用いて合成される。特定配列のオリゴヌクレオチドを調製する方法は、技術的に公知であり、例えば、好適な配列のクローニング及び制限酵素消化分析、及び直接的な化学的合成を含む。一旦設計がなされると、オリゴヌクレオチドは、好適な化学的合成方法によって調製され、例えば、Narang et al., 1979, Methods in Enzymology, 68:90によって記載されるホスホトリエステル法、Brown et al., 1979, Methods in Enzymology, 68:109によって記載されるホスホジエステル法、Beaucage et al., 1981, Tetrahedron Letters, 22:1859によって記載されるホスホロアミド酸ジエチル法、及び、米国特許第4,458,066号に記載される固体担体法、又は商業用自動化オリゴヌクレオチドシンセサイザー(市販のもの)又はVLSIPS(商標)技術のどちらかを用いたその他の化学的方法が挙げられる。プライマーは、技術的に公知である方法を用いて、修飾核酸で合成されることもできる。
<サンプル>
本明細書で使用される際、「サンプル」は、関心のある核酸(標的及び参照配列)を含む又は含むと推定される任意物質、又は関心のある標的核酸を含む又は含むと推定される核酸自体を意味する。したがって、用語「サンプル」は、核酸(ゲノムDNA、cDNA、RNA)サンプル、細胞、有機体、組織、液体、又は物質を含み、この物質とは、例えば、血漿、血清、髄液、リンパ液、滑液、尿、涙液、排せつ物、皮膚の外分泌物、気道、腸管、尿生殖路、唾液、血液細胞、腫瘍、器官、組織、インビトロ細胞培養構成成分のサンプル、自然分離物(例えば、飲料水、海水、固形物等)、微生物試料、及び核酸トレーサー分子で「マーク」された物体又は試料を含むが、これらに限定されない。
本発明の核酸配列は、ゲノムDNAから増幅されることが可能である。ゲノムDNAは、以下の方法に基づき、組織又は細胞から単離されることができる。あるいは、本発明の核酸配列は、技術的に公知である方法によって血液から単離されることができる。
特定組織から遺伝子の異型を検出することを促進するために、組織が単離される。哺乳類組織からゲノムDNAを単離するために、組織が液体窒素内で細分化及び冷凍される。冷凍された組織は、予め冷却された乳鉢と乳棒で挽いて微粉末にされ、消化バッファー(100mMのNaCl、10mMのTris−HCl、pH8.0、25mMのEDTA、pH8.0、0.5%(w/v)SDS、0.1mg/mlプロテイナーゼK)内に、100mg組織あたり1.2mlの消化バッファーとなるように、懸濁される。ゲノムDNAを哺乳類組織培養細胞から単離するためには、細胞は、遠心分離により5分間500xgでペレット状にされ、1−10mlの氷冷PBSに再懸濁され、5分間500xgで再度ペレット状にされ、1容量の消化バッファーに再懸濁される。
消化バッファー内のサンプルは、12−18時間50℃で(振動とともに)培養される。その後、同等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出される。相が、遠心分離工程(1700xgで10分)後に溶解されない場合には、加えてもう1容量の消化バッファー(プロテイナーゼKを含まず)が添加され、遠心分離工程が繰り返される。厚みのある白い物質が2相の界面にはっきりと現れる場合には、有機物抽出工程が繰り返される。抽出後、上の水層は新しいチューブに移され、このチューブには、1/2容量の7.5Mの酢酸アンモニウムと2容量の100%エタノールが加えられる。核酸は、遠心分離によって1700xgで2分間ペレット状にされ、70%エタノールで洗浄され、風乾され、TEバッファー(10mMのTris−HCl、pH8.0、1mMのEDTA、pH8.0)内で1mg/mlで再懸濁される。残留RNAは、サンプルを、0.1%SDSと1μg/mlのデオキシリボヌクレアーゼ非含有リボヌクレアーゼの存在下、37℃で1時間培養し、抽出とエタノール沈殿工程を繰り返すことによって除去される。本方法によれば、ゲノムDNA収率は、約2mgDNA/1g細胞又は組織であることが期待される(Ausubel et al., supra)。本方法によって単離されたゲノムDNAは、本発明に基づき使用されることができる。
標的DNAは、全血から抽出することもできる。例えば、血液は、標準的な方法によって採血管(好ましくは、シリコン処理ガラスを含む)に採血されることができ、また、血清調製用の抗凝血剤を含まないか、EDTA、クエン酸ナトリウム、ヘパリン、又は類似の抗凝血剤を含むかのいずれかであり、最も好ましくは、血漿調製用にEDTAを含む。好適な方法は、必ずしも必要とされるわけではないが、全血から分画された血漿又は血清である。血漿又は血清は、好ましくは緩やかな遠心分離である300乃至800xgで5 10分間の遠心分離によって全血から分画される、又はその他の標準的な方法によって分画されることができる。ヘパリンはPCRを干渉する可能性があるため、ヘパリン化血液を使用する際は、へパリナーゼによる前処理が必要である可能性がある。したがって、EDTAは、血液試料に対する好適な抗凝血剤である。新たに採取された血液の血漿もしくは血清、又は凍結(保存)されたものを解凍した血漿もしくは血清が、本発明の方法に使用可能である。保存された血漿又は血清は、−20℃乃至−70℃で維持されるべきであり、新たに採取された血漿又は血清は、使用まで冷蔵庫に置かれるか氷上に維持される。その後、DNAは、当業者によって公知の方法、及び本明細書に記載される方法によって抽出される。
<診断検査>
本発明は、病気の診断、検出、監視、評価、又は治療を対象とし、患者サンプルから標的配列を濃縮する方法に関し、これら病気とは、特に、動物又はヒトにおける腫瘍性又は増殖性の病気である。好適な実施形態において、核酸は、癌遺伝子又はその他の腫瘍関連DNAをコードする核酸由来である。
標的配列の優先的な濃縮により、DNAの更なる分析又は操作が可能となる。例えば、濃縮された対立遺伝子は、分析により、そのDNAが由来する細胞の特性が定義可能となる。任意の幾つかの方法が、核酸配列シークエンシング、RFLP、デジタルPCR、プロトン核磁気共鳴分光法(NMR spectroscopy)を含む分光法、生化学的分析、及び免疫学的分析を含む所望の情報に応じて、使用可能である。一実施形態では、増幅されたDNAは、アガロースゲルから変異DNAバンドを取り出すことによって単離され、再増幅され、プラスミドベクター、例えば、pGEM−Tベクタープラスミド(Promega)内にクローンされ、Sequenase 2.0 (USB)等の市販キットを用いることによって配列が決定される。標的DNA、ひいては例えば腫瘍の特性を定義するための分析は、細胞(例えば腫瘍)の記述説明、特性、又は分類を含む幅広い臨床的有用性を提供する(周知又は潜在のどちらか)。これは、例えば、器官の組織によって、タイプ(例えば前癌状態又は悪性等)、表現型、及び遺伝子型によって、並びに腫瘍動態、生理学及び生化学の記述説明又は特性によって得られる。これにより、腫瘍の侵襲性、転移傾向、及び様々な治療に対する感度又は耐性の理解が得られることになる。したがって、進行中又は計画中の治療への応答の予測が可能となり、さらに、予後の評価が可能となる。標的DNAの特性を前回の生検又は外科的試料と比較することにより、その試料と比較した腫瘍の非均一性又は類似性、及び腫瘍の再発の更なる評価が可能となる。
また、標的配列の選択的濃縮後、相補リボ核酸(RNA)がDNAから転写又は製造されることができる。好適な実施形態では、RNAの転写は、増幅反応(工程3)において関心のあるDNA用の標準プライマー配列に結合されるRNAポリメラーゼプロモーター領域を備えるプライマーを使用することにより、実施される。そして、DNAに相補的なRNAは、取り付けられたプロモーター領域から転写される。代替方法では、増幅された対立遺伝子DNAが発現ベクターにクローンされ、DNAに相補的なRNAが転写される。さらに、選択的な好適な実施形態として、相補RNAは、インビトロの翻訳反応内で用いられることにより、腫瘍関連又は腫瘍特異的タンパク質を製造する。
対立遺伝子の特性、腫瘍由来又は腫瘍関連DNAの増幅、及び相補RNAの特性と転写、及び腫瘍関連又は腫瘍特異的タンパク質への翻訳は、治療の割当及び腫瘍特異的治療の開発の両方において、有意な有用性を提供する。細胞外DNAのシークエンシング又は相補RNAの転写は、アンチセンス化合物の割当又は開発を可能とする。このアンチセンス化合物とは、合成オリゴヌクレオチド、及び細胞外DNAに好適に特異的なその他のアンチセンスコンストラクト(例えば、Aoki et al. (1995, Cancer Res. 55: 3810 3816)の方法を用いた発現プラスミドの構築によるもの)を含む。同様に、腫瘍特性を定義することにより、増幅されたDNAに好適に特異的である特異的モノクローナル抗体又はワクチン治療の割当が可能となる。対応する免疫性タンパク質の産生は、腫瘍特異的モノクローナル抗体の開発に用いられることができる。同様に、翻訳されたタンパク質は、腫瘍特異的ワクチンの開発に用いられることができる。
特に価値が高いこととして、本発明は、これら腫瘍特異的治療又は診断の開発及び応用が、前癌状態の腫瘍又は潜伏癌のみ存在する場合であっても可能である。したがって、本発明は、腫瘍組織量が低い場合であっても治療的介入が可能であり、免疫学的機能が比較的損傷を受けず、患者が危険にさらされることがなく、治療の潜在性を全て高めるものである。
<濃縮配列の更なる処理>
本方法を、MALDI−TOF、高分解能融解曲線分析(HR-メルティング:High Resolution Melting)又は単一分子シークエンシング(SMS:Single Molecule Sequencing)と併用して用いることによって、変異検出における3つの明確な必要性に取り組むこととする:臨床転帰に関連すると知られている又は疑いがある体細胞変異の高速検出(MALDI−TOF);未知の体細胞変異のための個別の患者サンプルの高速スキャニング(HR−メルティング)、続いて、わずかなエクソンの選択的シークエンシング;「困難なサンプル」内の複数遺伝子の大量な並列シークエンシング。ここで、「困難なサンプル」とは、即ち、臨床的に関連する変異が0.5−5%のレベルで存在可能な異質間質の汚染又は体液を含む腫瘍からのサンプルのことである(単一分子シークエンシング、SMS)。
<質量分析法>
一実施形態では、濃縮された標的配列は、MALDI−TOFによってシークエンシングされる。質量分析(MS:Mass spectrometry)は、DNAシーケンシングにおいて強力なツールとして現れたものである。質量分析計は、直接的な質量測定を、フェムトモルからピコモルの範囲で数秒又は数分で得ることができる。マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)飛行時間型(TOF)MSは、高速DNAシークエンシング及びDNA分子の効率的な大きさ決定のために成功して用いられてきた。MALDI−TOF MSの出現は、損傷を受けていない巨大なDNA分子をイオン化すること及びそれらの質量対電荷比を測定することを容易にした。一本鎖及び二重鎖ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(登録商標))の500ヌクレオチド(nt)長の産物が、MALDI−TOF MSによって検出されている。DNA断片化を減少させる最適化マトリックス−レーザーを組み合わせて用いると、合成DNAの赤外線MALDI質量スペクトル、プラスミドDNAの制限酵素断片、及び2180nt長までのRNA転写産物が、±0.5−1%の精度で報告された。大きいオリゴマーは、MALDI−TOF MSによって検出されてきたが、一般的に100マー(mer)までのオリゴマーが許容されるのが現在では通例である。
幾つかの遺伝子において、臨床的に重要な変異は、ゲノム中にランダムには生じない(例えば、最も良く知られている癌遺伝子において発生する機能獲得型変異)。代わりに、比較的少ない数のコドンに影響を及ぼす変化は、大抵、体細胞変異の大部分を占める。その結果、原則的には、限られた数の良好に設計された遺伝学的分析は、臨床的関連変異の大部分を効果的に調べられるはずである。例えば、Garrawayとその同僚(Thomas, R.K., et al. (2007) Nat Genet, 39, 347-351)は、RAS、EGFR、及びBRAFの遺伝子につき16−44のMALDI−TOFアッセイが、これまでにヒト悪性腫瘍においてこれらの遺伝子が観察されてきた変異発生の90%−99%を占めることを示した。したがって、ハイスループットの遺伝子型決定は、臨床試料において大規模に、臨界的及び/又は「標的可能な」癌変異を検出する効果的な手段を提供する可能性があることが提示されている。MALDI−TOFは、非異種腫瘍サンプル内で既に同定された変異の検出に理想的である。ここで、生殖細胞又はSNP同定のためのMALDI−TOFの信頼性には疑問の余地はないが、体細胞変異を検出する実験は比較的最近のものである。したがって、MALDI−TOFの信頼性は、<10%の変異細胞を含む異種サンプルを用いた時(例えば、膵臓、肺、前立腺癌)、又は体液からのDNAがスクリーニングされた時に、実質的に下がる。感度を向上させることにより、本濃縮方法は、MALDI−TOFが低レベルの体細胞変異を検出することを可能とし、また、主流な外科的腫瘍サンプルスクリーニングに必要である要求信頼性を提供する。
<高分解能融解曲線分析(High Resolution Melting)>
その他の実施形態では、濃縮された標的配列は、高分解能融解曲線分析される。エクソンに沿った多くの位置において臨床的関連変異を含む遺伝子、例えばp53は、個別の変異遺伝子型決定よりも変異スキャンによって容易にスクリーニングされる。HR−メルティングは、ハイスループット変異スキャン技術であり、ここ数年に導入され、SNPs又は生殖細胞変異を発見するための優れた能力を備えるものである(Chou, L.S., et al. (2005); Am J Clin Pathol, 124, 330-338; Wittwer, C.T., et al. (2003); Clin Chem, 49, 853-860; Reed, G.H. and Wittwer, C.T. (2004); Clin Chem, 50, 1748-1754)。
挿入蛍光染料(LCグリーン又はSybr−グリーン)の存在下、関心のあるゲノム領域をPCR増幅した直後、変異の存在は、融解曲線分析及び野生型との入念な比較によって、いかなる増幅後処理も必要とせずリアルタイムに同定される。さらに、高分解能融解曲線分析は、チューブを閉じた状態を維持しつつ、従来の方法を用いた時に必要とされる時間の何分の1かで、遺伝子スキャン及び変異遺伝子型決定(即ち、SNP同定)を同時に達成する。PCRは、<30分(毛細血管)又は1.5時間(96又は384ウェルプレート)を必要とし、融解には毛細血管ごとに1−2分又はプレートごとに5分が必要である。
しかしながら、MALDI−TOFとともに用いると、HR−メルティングを用いる利点は、約〜20%変異−野生型比以下の体細胞変異に有利に利用されることができない。したがって、臨床サンプルの様々なクラスは、HR−メルティングを用いて確実にスクリーニングされることができない。検出限界を上げることによって、本発明は、HR−メルティングの利便性とスループットを、主流な外科的腫瘍サンプルスクリーニングに適用可能であり、また、間質汚染又は体液からのDNAを含む「困難な」臨床サンプルにおける低レベルの体細胞変異を検出するためにも適用可能である。
<単一分子シークエンシング>
その他の実施形態では、濃縮された標的配列は、単一分子シークエンシングを受ける(Thomas, R.K., et al. (2006); Nat Med, 12, 852-855)。単一分子シークエンシングの能力もまた、本発明を組み込むことによって利益を受けることになる。例えば、患者サンプルに関する変異スクリーニングにおいて、ゲノムDNAからの標準PCR機器内の選択エクソンをPCRすることは、第2世代シークエンシングの開始前に未だ必要である。さらに、臨床サンプルにおける1−5%変異−野生型比のレベルの変異検出は、許容可能な統計値を得るために多くの「個別事例」の反復シークエンシングを必要とする。これは、最終的にはスループット能力を減少させ、1%レベルの変異において10−20配列のみが同時にスクリーニング可能であり、対照的に、変異が広まった場合には〜4,000配列が同時にスクリーニング可能である(per 454 Life Sciences, Technical Service)。単一分子シークエンシングの前に本発明を実施することにより、変異の普及率は、総数又は対立遺伝子の割合に応じて1−2桁増えることになり、これにより単一分子シークエンシングのスループットが同程度まで増加する。
一実施形態では、選択的濃縮の方法は、単一分子シークエンシング反応のエマルション段階の間に適用される。この実施形態では、濃縮された標的配列は、その後、ピロシークエンシングを受ける。
<プライマー伸長>
その他の実施形態では、濃縮された標的配列は、プライマー伸長シークエンシング反応を受ける。プライマー伸長において、配列が既知である核酸と比較して、配列内の変動をその所定位置において評価するためにオリゴヌクレオチドが用いられる。サンプルのオリゴヌクレオチドは、一本鎖分子として提供され、誘発剤、標識ヌクレオチド、及びプライマーと混合される。このプライマーは、混合物を形成するために所定位置に隣接する範囲と同一の配列を有する。この混合物において、標識ヌクレオチドが構成された塩基以外の塩基で構成されたヌクレオチドは、本質的に欠如している。その後、混合物は、プライマーを一本鎖分子にアニーリングすること、及び標識ヌクレオチドを組み込んだプライマー伸長産物を形成することを促進させる条件下におかれる。そして、混合物は、標識ヌクレオチドを含むプライマー伸長産物の存在に関して分析される(米国特許第5,846,710号)。
<バッファー>
本発明の増幅方法においてミスマッチ及びマッチした二本鎖の間のTmの差異を増加させるために、有機溶媒を含有することが検討される。特定の有機溶媒を含むことにより、標的配列の濃縮が改善される。例えば、有機溶媒を含有することは、参照及び標的DNA配列間の変性温度差異を増大させることが可能であるために、標的配列の優先的な増幅に役立つ。有機溶媒、例えばDMSO、ホルムアミド、ベタイン、又はグリセロール(Pomp, D. and Medrano, J.F.,Biotechniques, 10, 58-59 (1991))は、マッチした(参照/参照)及びミスマッチした(標的/参照)配列間のTmの差異を増大させることができる。したがって、本発明の中間ハイブリダイゼーション工程(クロスハイブリダイゼーション)は、ミスマッチを含む標的−参照配列を形成するために、ポリメラーゼの作用を阻害しない程度の有機溶媒を含むことが有利である。したがって、ある実施形態では、反応混合物は、DMSO、ホルムアミド、ベタイン、グリセロール、又はそれらの混合物が、1−10%v/v(volume to volume)、好ましくは3−8%v/v、最も好ましくは5−6%v/vで補充される。実施例8は、濃縮方法におけるDMSOの使用を図示する。
有機溶媒を用いるその他の実用面での利点は、任意の配列に適切なTcが、反応中に有機溶媒を用いることによって変動することである。これにより、DMSOが存在する場合、配列のTcは83.5℃であり、3%DMSOが存在する場合、Tcは80.5℃である。結果として、異なる量のDMSO又はその他の溶媒を異なる配列に加えることにより、全ての配列に対してTcが同じであることを確実にすることができる。これは、変性温度が全てに対して同じになるので、1つのPCR機器の稼働の際、各種配列に対して多くの濃縮反応を実施するのに有用である。
<実施例>
(実施例1)標的配列を濃縮するための材料及び方法
<COLD−PCRの検証に用いられる配列>:本発明を検証するために、p53エクソン8及びKrasエクソン2(コドン12−13)の異なる位置で変異を含む一連のゲノムDNA及び細胞株が使用された(図3)。p53エクソン8変異は、肺癌における予後不良と関連があり、癌患者の血漿内では低普及率の変異である。同様に、Kras変異は、肺腺癌において予後的意義を有する。
<濃縮プロトコル及びプライマー>:PCRは、0.1×LC−グリーン挿入染料の存在下で、続いてCepheid機器でリアルタイムに実施された。PCRのリアルタイムフォローアップは、必ずしも必要ではないが、利便性が高いために、全ての実験に適用された。
167bp p53配列の標準PCRは、濃縮プロトコルにおいて使用するのに十分な産物を得るために、まず10サイクル実施された。Cepheid機器は、以下のサイクルパラメーターを用いてプログラムされた:95℃、120秒;(95℃、15秒/55℃ 蛍光読み出しON、30秒/72℃、1分伸長)×10サイクル。
得られたPCR産物は、その後、1:1000に希釈され、以下の濃縮プロトコル(図1に図示されている)を受けた:95℃、15秒;70℃で120秒;Tc=86.5℃で3秒間の変性;55℃の蛍光読み出しONで30秒間;その後、72℃で1分間の伸長で30サイクル。
サンガー・ジデオキシ・シークエンシングのためのPCR産物を準備するために、産物はエキソヌクレアーゼIとエビアルカリホスファターゼを用いて処理された。以下のプライマーがシークエンシング方法において使用された:
167bp断片:: 5’ - GCT TCT CTT TTC CTA TCC TG - 3’フォワード(SEQ ID NO:1);
5’ - CTT ACC TCG CTT AGT GCT - 3’リバース(SEQ ID NO:2)
87bp及び210bpのp53断片及び135bpのKras断片の濃縮プロトコルは、上述されたものを用いたが、臨界変性温度はTc=83.5、87.5、80℃に夫々設定された。シークエンシング反応に用いられたプライマーは:
5’ - TGG TAA TCT ACT GGG ACG-3’ フォーワード(SEQ ID NO:3);
5’ CGG AGA TTC TCT TCC TCT - 3’ リバース(SEQ ID NO:4)(87 bp p53 エクソン8断片)
5’ - GCT TCT CTT TTC CTA TCC TG - 3’ フォーワード(SEQ ID NO:1);
5’ - TAA CTG CAC CCT TGG TC - 3’ リバース(SEQ ID NO:5)(210 bp p53 エクソン8断片)
5’-AACTTGTGGTAGTTGGACCT-3’ フォーワード(SEQ ID NO:6);
5’-CTCTATTGTTGGATCATATT-3’ リバース(SEQ ID NO:7)(Kras エクソン2断片)
であった。全ての濃縮プロトコルの再現性は、3−6の独立した実験で試験された。
<結果>
p53エクソン8変異:臨界変性温度Tc=86.5℃を利用した濃縮プロトコルが、167bpエクソン8断片に適用される時、濃縮は、検査された全ての変異に対して明らかであった。図4は、代表的な結果を示す。例えば、HCC細胞からのDNAは、初めに野生型細胞内で5%変異−野生型比となるまで希釈され、濃縮プロトコル後に〜70%の変異−野生型比となる。これは、シークエンシング・クロマトグラムを観察することによって推定されたものである(即ち、〜14倍の濃縮)。同様に、SW480細胞からのDNA(コドン273におけるホモ接合G>A変異)は、野生型に10倍希釈され、濃縮手順後に〜7倍濃縮された。CT7サンプルに対する〜12倍の濃縮(ヘテロ接合C>A変異)、及びMDA−MB231サンプルに対する6倍の濃縮(ヘテロ接合C>T変異)もまた、観察された。野生型p53サンプルは、濃縮方法を用いて増幅され、変異を示さなかった(図4)。167pb断片が検査された全p53変異は、図2に一覧となっており、濃縮は5−14倍変動した。このようにして、濃縮手順は、変異が存在する位置に関わりなく、全ての変異含有配列の普及率を増大させた。
Krasコドン12/13変異:図5は、Krasからの135bp断片の結果を図示する。結果は、94℃の変性温度で実施された標準ネステッドPCRを受けた後にサンガー・シークエンシングされたものと比較された。図5は、33%変異−野生型比まで下がった変異は、サンガーシークエンシングを用いて明らかに検出可能であることを図示する。
<実施例2> 臨床サンプルのサンガーシークエンシング
本発明を臨床サンプルの分析に適用するために、標準PCR後に予めシークエンシングされた20の結腸腫瘍及び肺腺癌の臨床サンプルが、実施例1に記載される如く濃縮プロトコル及びサンガーシークエンシングに使用された。結果は、標準PCRサンガーシークエンシングを用いて同定された全ての変異もまた、濃縮手順、続いてシークエンシングを用いて同定された。しかしながら、濃縮手順は、標準シークエンシングが見逃した変異も同定した。図6は、2つの臨床サンプル、TL64及びCT20を示す。ここで、低普及率のG>A変異が、p53エクソン8、コドン273の濃縮プロトコル−サンガーシークエンシングを用いて検出されたが、標準PCR後のシークエンシングによっては検出されなかった。変異の存在の独立検証は、RFLPベースのシークエンシングを用いて実施された。
さらに、p53エクソン8(G>A)変異は、5人の結腸癌患者から、血漿循環DNAにおいて、濃縮手順−サンガーシークエンシングを用いて検出されたが、標準PCR−サンガーシークエンシングを用いては検出されなかった。次に、標準シーケンシングが見逃したp53(C>T)変異もまた、非小細胞肺癌(NSCLC:non-small-cell lung cancer)患者から得られたホルマリン固定(FFPE)検体からのDNAを用いて明らかになった(図6)。図6の底部のクロマトグラフは、NSCLC患者から得られた別のFFPEサンプルにおけるKrasコドン12変異の検出を示す。濃縮手順を用いて同定された変異は、続いてゲノムDNAからRFLP法によって独立検証された。したがって、標準PCR−シークエンシングが見逃した関連変異は、COLD−PCR−シークエンシングを用いることにより容易に検出可能となった。
<実施例3>Tmを下げる変異は、ミスマッチアニーリング工程なしで濃縮されることが可能である
PCRのヌクレオチド配列への依存度は、変性温度が、PCR中にミスマッチさえ形成しない臨界温度(Tc)に設定され、Tmを下げるこれら変異の濃縮が存在するときには、非常に顕著である。したがって、G及びAの対立遺伝子が存在する場合、A−対立遺伝子は、対立遺伝子のTmを下げるためにCOLD−PCR中に濃縮されることになる。この点を示すため、そして、検査された配列のサイズへの濃縮の依存度を検査するために、p53エクソン8からの167bp断片と同じ変異を含む87bp断片と210bp断片が試験された(図3)。167bp断片と同様に、これら2つの断片は、初期p53エクソン8アンプリコンから、ネステッドPCRを用い、続いて濃縮プロトコルによって、増幅された。しかしながら、この事例では、実施例の増幅プロトコルの短縮バージョンが使用され、70℃におけるミスマッチ形成工程及び94℃工程が両方省略された(87bp断片に対し臨界変性温度Tc=83.5℃、及び210bp断片に対しTc=87.5℃)。したがって、濃縮プロトコルの本バージョンでは、PCRサイクルは、臨界変性温度(Tc)、プライマー結合工程(例えば、55℃)、及びプライマー合成工程(例えば、72℃)のみの間を循環する。
図7Aは、87bp断片のシークエンシング・クロマトグラムを示す(87bp配列のどの位置に変異が存在しているかに応じて、フォワード又はリバース・シークエンシングのいずれかが実施された)。データは、改良された濃縮プロトコルの本バージョンを用いると、87bp断片を20−50倍に濃縮することを示す。例えば、SW480DNAの変異−野生型DNA比の1%初期希釈は、濃縮後に50%変異−野生型比を導く結果となる(即ち、〜50倍濃縮)。次に続くサンガーシークエンシングは、「ヘテロ接合」配列を明らかに示した。短縮濃縮プロトコルを用いた濃縮へのサイズの影響は、図7Bに示される。データは、濃縮が、<100bpの断片に対して最も高いが、210bpまでの断片に対しても非常に明らかである(〜8−10倍)ことを示す。
<図4>Tmを上げる又は下げる変異は、完全な濃縮方法を用いて濃縮可能である。
多様な癌サンプルに見られる大抵の(〜70%)変異は、Tmを下げる。〜15%の変異はTmを上げる(例えばA>G)一方で、〜15%はTmを保つ(例えば、G>C)。G>A及びA>G変異及び欠失の両方を含む全ての可能な変異を濃縮することを可能にするためには、完全な濃縮プログラムが好ましい(図1)。Tmを上げる又は下げる変異を有する標的配列を濃縮するための能力を示すために、C又はTヌクレオチドのいずれかを備える167bpのp53エクソン8断片(野生型対HCC細胞株)は、図1の濃縮プロトコルを用いて増幅された。
2つの混合物が形成され、1つは少数派としてC対立遺伝子を含み(C:T=1:10)、もう1つは少数派としてT対立遺伝子を含む(T:C=1:10)。濃縮工程後、又は代替的な標準PCR後、産物はシークエンシングされた。両方の事例において、微量の対立遺伝子(即ち、増幅前にC又はTのどちらがより希釈されたかに応じたC又はTのいずれか)が濃縮された。推定上、ミスマッチした配列は、C又はT対立遺伝子のいずれかよりも低い融解温度を有するため、図1のプロトコルを実施することによって、ミスマッチした配列は、必ず優先的に変性される。したがって、濃縮プロトコル中に中間温度(〜70℃)でミスマッチを形成することによって、特異的なヌクレオチド変化が局所的Tmを増大させる傾向がある場合であっても、微量の対立遺伝子の濃縮は必ず存在することになる。
<実施例5>MALDI−TOFシークエンシング
本発明は、殆どのその他のPCRベース技術を向上させることも期待される。それら技術は、体細胞変異検出のためのMALDI−TOFを含む。この点を示すために、図1に適応されたものと同じモデル、即ち、変異含有細胞株の野生型サンプルへの連続希釈を用いて特定のp53エクソン8変異を同定するためのサンガーシークエンシング用のモデルが、濃縮プロトコル対標準PCR、続いてMALDI−TOFを行ったものを比較するのに用いられた。
濃縮プロトコル又は標準PCR後、0.3Uエビアルカリホスファターゼ(USB)を用いて37℃で20分間培養した後、85℃で5分間培養することにより酵素を非活性化させることによって、過剰なdNTPが反応物から除去された。SNP又は挿入/欠失に及ぶ単一プライマー伸長法が、最終濃度:600nM各伸長プライマー、50μMのd/ddNTP及び0.126Uのサーモシーケナーゼ(Solis Biodyne)で実施され、94℃で2分間、続いて94℃で5秒間、52℃で5秒間、及び72℃で5秒間の45サイクルで培養された。使用された伸長プライマーは、検査される各p53変異に対して、MALDI−TOFのハーバードコア施設によって、マスアレイ・アッセイ・デザイン・ソフトウェア・バージョン3.1.2.2を用いて、設計されたものである。各変異に対して使用されたプライマーは、
p53_sw480: CAGGACAGGCACAAACA(SEQ ID NO:8);
p53_CT7: AGGACAGGCACAAACAC(SEQ ID NO:9);
p53_DU145: ACAGCTTTGAGGTGCGT(SEQ ID NO:10);
KRAS_SW480: TGTGGTAGTTGGACCTG(SEQ ID NO:11);
KRAS_A549: ACTCTTGCCTACGCCAC(SEQ ID NO:12)
であった。
その後、陽イオン交換樹脂の追加によって反応物を脱塩させた後、混合及び遠心分離によってチューブの内容物を沈殿させた。伸長産物は、MALDI−TOF質量分析計(Sequenom)を稼働する前に、384ウェルspectroCHIP上に見られた。
結果は、表1に示されている。変異濃縮倍数は、表1の第3欄に記載されている。濃縮は、標準PCRのMALDI−TOFが適応された時に得られた値と比較して計算された。濃縮倍数10−60は、検査した変異の大部分において得られた。変異−野生型比の減少に応じた濃縮の増加は、変異の初期濃度の濃縮倍数の非線形依存性を示している。
Figure 0005531367
<実施例6>TAQMANベースの標準リアルタイムPCRと濃縮ベースリアルタイムPCRの比較
標準リアルタイム及び濃縮ベースのリアルタイムPCRにおけるTAQMANプローブアッセイを比較するために、核酸増幅反応が実施された。2つのリアルタイム検出法を比較するためには、p53エクソン8にG>A変異を有するゲノムDNA及び臨床腫瘍サンプルの両方が、野生型配列の様々な希釈において分析された。SW480からのゲノムDNAの野生型DNAへの連続希釈(1:3、1:10、1:30、1:100、及び1:300)が調製された。特に、0.2μMのTaqmanプローブ5’-6-Fam-TTT GAG GTG CAT GTT TGT GCC-BHQ_1-3’(SEQ ID NO:13)の存在下で、20ngのゲノムDNAから直接的にリアルタイムPCR反応が実施された。このTaqmanプローブは、SW480細胞からのDNAにおけるp53変異含有配列に完全一致するものである。その他試薬の最終濃度は、:1×GoTaq Flexi バッファー(Promega)、1×GoTaqポリメラーゼ(Promega)0.2mMの各dNTP、0.2μMのフォワードプライマー、5’-TGG TAA TCT ACT GGG ACG-3’(SEQ ID NO:3)、0.2μMのリバースプライマー、5’-CGG AGA TTC TCT TCC TCT-3’(SEQ ID NO:4)、MgCL3mM、そしてDNAであった。PCRアンプリコンのサイズは、87bpであり、Tc=83.5℃であった。高速COLD−PCRサイクルは、95℃、120秒;(95℃、15秒;58℃蛍光リーディングON、60秒)×25サイクル;(83.5℃で15秒:58℃蛍光リーディングON、60秒)×25サイクルであった。標準PCRサイクルには、同じプログラムが使用されたが、PCR中の変性温度は、95℃であった。実験は、独立した実験において少なくとも5回繰り返された。
結腸癌細胞株SW480からのゲノムDNAに適用された標準及び濃縮のリアルタイムPCRの感度を示す増幅プロットは、図8A及び図8Bに示されている。図8Bは、濃縮リアルタイムPCRが、1:300の変異−野生型対立遺伝子比において変異を検出可能であることを示す。対照的に、Tc工程を除いて同一条件下で行われた標準リアルタイムPCRは、最大希釈1:10における変異のみを検出可能である(図8A)。したがって、分析感度は、濃縮手順を用いることにより30倍良くなる。
p53エクソン8変異(そのうちの1つは、p53エクソン8において低レベルの変異(野生型に対して5%の変異、CT20)を含むことが分かっている)を有する臨床的腫瘍サンプルにおいて標準及び濃縮リアルタイムPCRの感度を比較した増幅プロットは、図8C及び8Dに記載される。濃縮リアルタイムPCRは変異を容易に検出可能である(図8D)一方で、標準PCRは変異を容易に検出不可能であった(図8C)。残りのサンプル(TL6、TL8、及びTL18)は、野生型サンプルとして知られており、同じ条件下で増幅しなかった(図8C)。
<実施例7>濃縮リアルタイムPCRを用いた変異スキャニング
核酸増幅反応混合物は、標準及び濃縮リアルタイムPCRの能力を比較するために調製された。この比較は、p53のエクソン8に沿った範囲にある変異を含むサンプルを検出するためのDNA検出染料を用いて実施された。本方法は、未知の変異又はヘテロ接合SNPを同定するための高速且つ便利な方法を提供する。したがって、本方法は、各種多様な用途のために生殖細胞又は体細胞変異に関して多数の遺伝子をスキャンする(例えば、胸部/卵巣CAを発現する高い危険性を有するBRCA1/2変異集団をスキャニングする、変異を同定するための全遺伝経路をスキャニングする等)ために、当業者によって採択されることができる。
図9A及び図9Bは、LC−グリーン染料を、p53のエクソン8に変異を含むことが知られている各種細胞株及び臨床的サンプルにおいて使用することにより、標準及び濃縮リアルタイムPCRの両方を比較した増幅プロットを示す。データは、リアルタイム標準PCR(図9A)が、変異(SW480、TL6、及びCT20)及び野生型(R27、TL8、TL18、TL81、及びTL82)サンプルとの間を識別することができず、その一方で、濃縮リアルタイムPCRはそれを識別可能であることを示す(図9B)。濃縮方法は、野生型サンプルよりも変異含有サンプルに早期閾値検出を提供する。
図9C及び図9Dは、増幅反応による結果を図示し、図9A及び9Bに記載された反応条件と同一の条件下におけるものであるが、ここでは、サンプルは全て肺腫瘍である。データは、リアルタイム標準PCR(図9C)が変異及び野生型サンプルの間を識別できないが、リアルタイム濃縮PCR(図9D)は識別することを示す。濃縮方法は、野生型サンプルよりも変異含有サンプルに早期閾値検出を提供する。
さらに、濃縮検出方法は、サンプルTL6において今まで知られていなかったC>T変異を識別することができた。
<実施例8>有機溶媒は、標準及び改良型リアルタイムPCR中に変異の濃縮を増大させる。
核酸増幅反応混合物は、標準及び濃縮リアルタイムPCRに対する有機溶媒の影響を評価するために調製された。反応は、有機溶媒(3%DMSO)の存在下又は非存在下のいずれかで実施された。使用された手順は、実施例7で記載されたもの及び図9C及び図9Dに描かれたものと、3%DMSOを添加したことを除いて同じであった。
有機溶媒の存在は、変異配列を含むサンプルと野生型配列を含むサンプルの増幅プロット間の識別を向上させた(図10)。例えば、野生型サンプルと変異サンプルの間の閾値の差は、〜5サイクル(DMSOなしのリアルタイム濃縮、図9Aを参照)から10サイクル以上(DMSOありのリアルタイム濃縮、図10Aを参照)へと増加した。
<実施例9>濃縮PCRと併用してRFLPを用いた超低レベル変異の検出
RFLP−PCRと併用して用いた濃縮PCRは、超低レベルの変異の同定を向上させるために、例えば、非常に早期の段階(即ち、治療前)において癌サンプル内の癌ゲノム又は耐性変異におけるランダムな変異を同定するために、使用されることができる。
例えば、野生型EGFRエクソン19を含むサンプルは、TaqI酵素を用いて選択的に消化された。1:10,000の変異−ゲノムDNA比までの希釈物は、その後濃縮型(Tc=81.5又は81℃)又は標準PCR型(95℃)のいずれかのPCRを受けた。変異の濃縮は、TaqI消化、その後、dHPLCによって定量化された(図11)。存在する変異の量は、約7分の保持時間における別個の変異ピークの存在によって定量化された。濃縮手順後、変異ピークは、標準PCR後と比較して非常に明らかであった。結論として、濃縮手順は、RFLP−PCRによって同定される超微量の変異の検出を実質的に向上させた。
本明細書に引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物は、引用することによりその全体を本願に援用する。本発明は、その好適な実施形態を参照して記載されてきたが、当業者であれば、添付の請求の範囲に含まれる本発明の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細事項を各種変更可能であることが理解できることである。

Claims (19)

  1. 反応混合物内において標的配列の二本鎖を濃縮する方法であって、
    a.前記標的配列の二本鎖及び参照配列の二本鎖を含むと考えられる反応混合物を、標的配列の一本鎖と参照配列の一本鎖を形成するために前記標的配列の二本鎖及び前記参照配列の二本鎖の変性が可能となるように、前記標的配列の二本鎖と前記参照配列の二本鎖の融解温度(Tm)よりも高い第1変性温度にする工程を含み、
    前記標的配列の二本鎖は、参照配列の二本鎖に対して1以上の挿入、欠失、または、置換を含み、前記参照配列の二本鎖とは少なくとも1つのヌクレオチドが異なるとともに、前記参照配列の二本鎖と同じプライマー対によって増幅され、
    前記方法はさらに、
    b.標的配列の一本鎖/参照配列の一本鎖の二本鎖の形成が可能となるように、前記反応混合物の温度を下げる工程と、
    c.工程(b)の前記二本鎖優先的に変性され、変性された標的及び参照配列の一本鎖を形成するように、前記反応混合物を前記参照配列の二本鎖のTmよりも低い臨界温度(Tc)にする工程と、
    d.前記プライマー対が前記標的及び参照配列の一本鎖にアニーリング可能となるように、前記反応混合物の前記温度を下げる工程と、
    e.前記参照配列の二本鎖と比較して前記標的配列の二本鎖を濃縮するために、前記プライマー対を伸長させる工程とを備えることを特徴とする方法。
  2. 前記標的及び参照配列の二本鎖が、反応混合物をPCRにかけること、および、その後、反応混合物の少なくとも一部を請求項1の濃縮方法にかけることによってまず増幅されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記標的配列の二本鎖が、参照配列の二本鎖に対して1以上の欠失、挿入、または変化を含む変異対立遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. (i)前記標的及び参照配列の二本鎖が、少なくとも25の塩基を含み、および/又は
    (ii)前記Tcが、前記参照配列の二本鎖のTmよりも0.3℃−5℃低く、および/又は
    (iii)前記Tcが、前記標的配列の二本鎖のTmよりも低く、
    (iv)前記方法が、5−40回の間のサイクル繰り返され、および/又は
    (v)前記方法が、10−30回の間のサイクル繰り返される、
    ことを特徴とする請求項1または3のいずれか1項に記載の方法。
  5. (i)前記標的及び参照配列の二本鎖が、少なくとも25の塩基を含み、および/又は
    (ii)前記Tcが、前記参照配列の二本鎖のTmよりも0.3℃−5℃低く、および/又は
    (iii)前記Tcが、前記標的配列の二本鎖のTmよりも低い、
    ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  6. MALDI−TOF、HR−メルティング、ジデオキシ・シークエンシング、単一分子シークエンシング、ピロシークエンシング、SSCP、RFLP、dHPLC、CCM、デジタルPCRおよび定量PCRからなる群から選択される1以上の方法を使用して、濃縮された標的配列の二本鎖を有する前記反応混合物を分析する工程をさらに含む請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記Tcが1秒−5分間適用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 前記標的配列の二本鎖が前記参照配列の二本鎖から特異的にメチル化され、前記反応混合物に請求項1の方法を実施する前に、前記反応混合物を亜硫酸水素ナトリウムで任意に処理することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記反応混合物が核酸検出染料を含み、リアルタイムPCRにおいて任意に実施されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
  10. 標識プローブを利用してリアルタイム反応条件下で実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  11. 前記方法は、2以上の異なる標的配列の二本鎖を濃縮するために使用されるとともに、前記標的配列の二本鎖に特異的な1以上の追加的なプライマー対をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. 前記プライマー対が工程(b)において適用される温度よりも低い融解温度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  13. 前記プライマー対が工程(b)において適用される温度よりも少なくとも5℃低い融解温度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  14. 前記反応混合物が、修飾核酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  15. 前記工程b)及びc)が、工程d)を実施する前に1回以上繰り返す工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  16. 前記工程a)乃至e)が、2サイクル以上繰り返されることを特徴とする請求項に記載の方法。
  17. 前記標的配列の二本鎖は前記参照配列の二本鎖と少なくとも70%相同することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  18. 前記標的配列の二本鎖は前記参照配列の二本鎖と少なくとも80%相同することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  19. 前記標的配列の二本鎖と前記参照配列の二本鎖は、1乃至9のヌクレオチドによって異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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