JP5530045B1 - ヘルスマネージメントシステム及びヘルスマネージメント方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】該機械設備の健康状態を把握し、保守作業時期の判断などに供することができる情報を提供する。
【解決手段】ヘルスマネージメントシステム1は、機械設備から多次元のセンサデータ及び環境データを取得する時系列データ取得部11と、正常データを学習データとして用いた統計的手法により機械設備の設備状態を定量化する第1識別部133aと、正常データを用いた統計的手法により機械設備の性能又は品質の状態を示す健康状態を定量化する第2識別部133bと、定量化した設備状態及び健康状態を、表示又は/及び外部に出力する出力部15とを備える。
【選択図】図17

Description

本発明は、機械設備の健康状態と性能・品質のレベルとの関係性を把握する機械設備のヘルスマネージメントシステム及びヘルスマネージメント方法に関する。
建設機械、医療機器、風力・太陽光や火力などの発電設備、水処理、プラント等の各種の機械設備において、機械設備の異常による稼働率低下や、性能や品質の劣化による最終仕様の未達、信頼性の不足など、顧客への悪影響を未然に防止するため、定期保守が行われている。しかしながら、定期保守を実施していても、故障による機械設備のダウンや性能の劣化は避けられず、機械設備に付加したセンサのデータに基づく異常の早期発見(異常予兆検知)、異常個所の早期特定(異常診断)は言うに及ばず、性能や品質のモニタ(監視)といった概念も重要になってきている。
しかし、多くのセンサデータや膨大な機械設備情報、保守履歴情報があるなかで、機械設備の健康状態を把握し、更に、性能や品質をモニタして、あとどれくらい故障しないで稼働可能なのか、どれくらい品質を維持できるのか(設備の稼働継続可能時間)を予測することは、設計及び現場の両知識と、多くのデータ解析を必要とし、難易度が高く困難を伴うものであった。
例えば、特許文献1には、プラント又は設備の異常を早期に検知する異常検知方法で あって、複数のセンサからデータを取得し、データ間の類似度に基づき、観測データの異常を検知する異常検知方法が記載されている。
また、特許文献2には、プラント又は設備の異常を早期に検知する異常検知方法であって、複数のセンサからデータを取得し、ほぼ正常データからなる学習データをモデル化し、モデル化した学習データを用いて取得データの異常測度を算出し、かつ、線形予測により前記した取得データの時系列的振舞いをモデル化し、モデルからの予測誤差を算出し、異常測度と予測誤差との双方を用いて、異常の有無を検知する異常検知方法が記載されている。
また、非特許文献1には、リチウムイオンバッテリを対象に、残存耐用年数(Remaining Useful Life:RUL)を評価する手法が提案されている。ここでは、非線形回帰手法であるガウシアンプロセス(例えば、非特許文献4参照)や、粒子(パーティクル)法(例えば、非特許文献5参照)が適用されているが、リチウムイオンバッテリでは、その劣化のメカニズムを比較的簡単な物理モデルで表現でき、そのパラメータはセンサデータから決められることから、そのRULを得ることに、大きな障害はない。
非特許文献2には、ハードディスクドライブの診断手法が提案されている。しかし、ハードディスクドライブは、リチウムイオンバッテリに比べ、多様な劣化のメカニズムが存在するため、上記のガウシアンプロセスの適用ではなく、マハラノビス距離のような古典的な手法が適用されている。
PHM(Prognostics and Health Management)では、RULの算出が重要と言われており、非特許文献3には、航空機などを対象に、RULと関連がある各種情報をリンクする形で、エージェントソフトを提供している。
特開2010−191556号公報 特開2011−145846号公報
K. Goebel: Prognostics in Battery Health Management, IEEE Instrumentation And Measurement Magazine,Vol.11,4,pp33-40(2008) Yu Wang, Qiang Miao, Pecht,M.; Health monitoring of hard disk drive based on Mahalanobis distance ,Prognostics and System Health Management Conference (PHM-Shenzhen), 2011 Camci, F. , Valentine, G.S., Navarra, K.: Methodologies for Integration of PHM Systems with Maintenance Data, Aerospace Conference, 2007IEEE 学会報告「尾崎 晋作, 和田 俊和, 前田 俊二, 渋谷 久恵,『異常検出 におけるSimilarity Based ModelingとGaussian Processesの関連に関して」,パターン認 識・メディア理解研究会(PRMU),画像工学(IE),133-138(2011.5)』 樋口知之:粒子フィルタ、電子情報通信学会誌 Vol.88, No.12,2005
前記したように、劣化のメカニズムを比較的簡単な物理モデルで表現できるリチウムイオンバッテリに対して、ハードディスクドライブでは、劣化のメカニズムが多様であるため、高度なガウシアンプロセスや粒子法を適用することは困難である。
また、非特許文献1から非特許文献3に記載された手法で定義されたRULは、何れも機械設備が故障するまでの時間を表しており、また、機械設備の健康状態は、徐々に、単調に減少していくモデルである。
一般に、建設機械、医療機器、風力・太陽光や火力などの発電設備、プラント等の機械設備は、大規模システムであること、購入部品の素性まで含めて計算機モデルを構築するには、膨大な費用や長い時間も必要とすることから、劣化のメカニズムを高精度に表現可能なものの方が稀である。そのため、異常検知自体が簡単な統計的モデリングに頼るケースが多く、このような事例では、機械設備の稼働継続可能時間(RUL)の算出は極めて困難な課題と言える。従って、次期保守作業時期を的確には指定できない。結局のところ、保守は、予め定めたスケジュール通りに保守作業を実施する時間計画保全になっているのが実情である。
また、特許文献1及び特許文献2に記載された異常検知の手法は、何れも機械設備が故障する前の段階で、異常の予兆を検知するものである。しかしながら、劣化のメカニズムが多様な機械設備について、性能や品質を推定したり、性能や品質の観点からRULを予測したりするものはなかった。
そこで、本発明は、正常データを用いて機械設備の統計的モデルを構築して当該機械設備の健康状態を把握し、保守作業時期の判断などに供することができる情報を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明のヘルスマネージメントシステムは、機械設備の健康状態を監視するヘルスマネージメントシステムであって、前記機械設備に設置された複数のセンサから取得したセンサデータ、又は前記センサデータ及び前記機械設備の設置環境を表す環境データを、時系列データとして取得する時系列データ取得部と、前記機械設備が正常な状態のときに取得した前記時系列データである正常データを学習データとして用いた統計的手法により前記機械設備の設備状態を定量化する設備状態定量化部と、前記正常データを学習データとして用いた統計的手法により前記機械設備の性能又は品質の状態を示す健康状態を定量化する健康状態定量化部と、前記定量化した設備状態及び前記定量化した健康状態を、表示又は/及び外部に出力する出力部と、前記時系列データ取得部が過去に取得した前記正常データについて前記設備状態定量化部が定量化した設備状態と、前記時系列データ取得部が過去に取得した前記正常データについて前記健康状態定量化部が定量化し、外部からレベルを教示された健康状態との間の関係性を示す類似度データを算出する類似度算出部と、前記時系列データ取得部が過去に取得した前記正常データを用いて前記設備状態定量化部が定量化した設備状態において正常状態を示すデータから、前記時系列データ取得部がある時刻に取得した前記時系列データである観測データに向かう多次元ベクトルによって示される設備状態と、前記類似度データとを用いて、前記観測データに対応する健康状態を推定する健康状態推定部と、を備えて構成する。
本発明によれば、機械設備の状態(設備状態)を定量化し、求めておいた類似度を参照して、健康状態を推定することができる。
なお、前記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
従来の異常測度の変化とRULとの関係を説明する図である。 本発明において、遠隔監視によるヘルスマネージメントの対象となる機械設備の例を示す図である。 本発明の第1実施形態に係るヘルスマネージメントシステムの構成を示すブロック図である。 本発明において、ヘルスマネージメントに用いられる多次元時系列センサデータ及びイベントデータの一例を示す図である。 本発明において、ヘルスマネージメントに用いられる多次元時系列センサデータの一例を示す図である。 本発明において、機械設備の稼働時間と性能指標とを重ねて表示した様子を示す図である。 本発明の第1実施形態における健康状態予測部で用いられる例(第1の予測手法)として、回帰手法を説明する図である。 本発明の第1実施形態における健康状態予測部で用いられる例(第2の予測手法)として、k−NN法を説明する図である。 本発明の実施形態における健康状態予測部で用いられる例(第3の予測手法)として、局所部分空間法を説明する図である。 局所部分空間法による設備状態のモデル化を説明する図である。 局所部分空間法による設備状態のモデル化を説明する図である。 局所部分空間法による設備状態のモデル化を説明する図である。 局所部分空間法により予測される設備状態が変動する様子を説明する図である。 設備状態と健康状態との関係を示す図である。 設備状態と健康状態との関係性を導く方法を説明する概念図である。 本発明の実施形態において、設備状態を健康状態との類似度を示す類似度マトリックスの例を示す図である。 本発明の第1実施形態に係るヘルスマネージメントシステムの要部の詳細な構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態における識別部(第1識別部、第2識別部)の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態における特徴変換部で用いられる特徴変換手法の例を示す図である。 センサ信号に独立成分分析を施した後の、残差ベクトルの始点の振舞の例を示す図である。 独立成分分析において、異なる周波数特性をもつ4つの独立成分の例を示す図である。 本発明の第1実施形態において、予測した機械設備の健康状態の変化の様子と、RULを推定する様子とを説明する図である。 本発明の第1実施形態に係るヘルスマネージメントシステムにおいて、RULを予測する処理の流れを示すフローチャートである。 図23に示したフローチャートにおいて、設備状態分布・健康状態分布の算出処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係るヘルスマネージメントシステムの要部の詳細な構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態の変形例に係るヘルスマネージメントシステムにおいて、健康状態を予測する処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の変形例に係るヘルスマネージメントシステムの要部を示すブロック図である。
本発明は、工場、商業施設、工事現場などで使用される機械設備の稼働率を維持・向上するため、機械設備の健康状態を示す指標である性能・品質レベルを把握し、機械設備の稼働継続可能時間(RUL)を診断する方法などを提供するものである。そのために、センサデータ、稼働情報、イベント情報、設備負荷、作業報告書などに関する情報を用いて、機械設備の異常度の進展を推測し、機械設備の性能レベルを分類し、機械設備の稼働継続可能時間を評価する。すなわち、センサデータ、イベント情報はもちろんのこと、稼働情報、設備負荷といった時系列データも用いるものである。また、過去の故障事例からなる作業報告書に関する情報も扱う。
具体的には、(1)非線形回帰手法であるガウシアンプロセスを用いた機械設備の異常測度の予測 、設備状態の分類、(2)k−NN(k−Nearest Neighbor )法や局所部分空間法などの認識手法を時系列データに適用した機械設備の異常測度の予測、設備状態の分類、(3)機械設備の状態と、性能・品質レベルなどを指標とする健康状態との関係性を構築し、この関係性に基づくRULの予測、などからなり、高精度な異常度の予測や性能・品質の予測、及び機械設備のRULの予測方法を提供する。
以下に、本発明の実施形態について、適宜に図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明においてヘルスマネージメント及び/又は異常診断の対象とする機械設備についてのセンサデータから求めた異常測度101の時系列データ(上段)及びRUL104の時系列データ(下段)の例を示したものである。
なお、異常測度101及びRUL104の算出方法については後記する。
図1に示した例では、異常測度101は、時間の経過とともに徐々に増加している。図1に示した閾値102は、異常測度101に対して設定されたもので、機械設備が故障する限界を示す。すなわち、この閾値102を異常測度101が超えると、機械設備の状態は正常でない(異常である)と判断される。但し、後記するRULの定義の通り、実際の異常(故障)の発生の有無を問わない。
図1に示した異常測度101は異常の度合を示す指標であるが、代わりに機械設備の性能や品質の劣化の度合を示す指標として捉えることもできる。例えば、性能としては、ガスエンジンの燃費が悪くなることや、プレス機の対象加工品の精度が劣化することを指し、機械設備が有する機能以外の出力形態や、機械設備が製造する製品などの出来具合などに関連する量や質的な変数が対応する。
また、閾値102を超える故障発生や性能劣化の限界時期103までの残された時間を、RUL104と呼ぶ。ここで、「RUL」はRemaining Useful Lifeの頭文字である。図1に示すように、異常測度101の上昇とともに、RUL104が低下し、異常測度101が閾値102を超えた時点でRUL104が「0」となる。
図2は、本発明において、遠隔監視により、ヘルスマネージメント又は異常診断の対象となる機械設備の一例を示すものである。図2に示すように、監視対象となる機械設備は、病院に設置されるMRI(核磁気共鳴イメージング)やX線CT(コンピュータ断層装置)などの医療診断装置105a、工場や大規模商業施設などに設置されるガスエンジン・ガスタービンなどの発電設備105b、鉱山や工事現場などで稼働するショベルやダンプトラックなどの建設機械105c、屋外に設置される風力発電や太陽光発電などの発電設備105dなどがあり、多くの機械設備が遠隔監視の対象になる。図示していないが、鉄道、飛行機、船舶なども遠隔監視の対象になる。工場内のプレス機やドリル穴あけ装置などの加工設備、またロボットなどからなる組み立て設備も遠隔監視の対象となる。以下、医療診断装置105a、発電設備105bなどを総称して、適宜に機械設備105と呼ぶ。
これらの機械設備105は、複数のセンサを装備しており、機械設備105の各所において、各種のセンサデータを出力するように構成されている。監視センタに設置されたヘルスマネージメントシステム又は異常診断システムは、機械設備105から出力されるセンサデータ及び機械設備105に関する環境データを、インターネット網を介して収集し、分析することにより、24時間体制で、機械設備105に異常予兆が発生していないか、性能が劣化していないか、加工精度や組み立て精度などの品質が劣化していないかなどを監視している。
[ヘルスマネージメントシステムの構成]
次に、図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るヘルスマネージメントシステムの構成について説明する。
図3に示すように、ヘルスマネージメントシステム(異常診断システム)1は、時系列データ取得部11と、時系列データベース記憶部12と、健康状態予測部13と、RUL予測部14と、出力部15とを備えて構成されている。
時系列データ取得部11は、インターネット網などを介して、監視対象である機械設備105(例えば、図1に示した医療診断装置105a、発電設備105bなど)から出力される多次元のセンサデータと、機械設備105の設置環境を表す環境データとを取得する手段である。センサデータ及び環境データは、取得時刻(又は機械設備105から出力された時刻)と対応付けられた時系列データとして取り扱われる。時系列データ取得部11は、取得した最新の、すなわち現在の時系列データを、取得するごとに時系列データベース記憶部12に順次に記憶させることで蓄積するとともに、現在の時系列データを健康状態予測部13に出力する。
時系列データベース記憶部12は、時系列データ取得部11から入力した時系列データのデータベースである時系列データベースを記憶するものである。また、時系列データベース記憶部12に記憶される時系列データベースは、健康状態予測部13及びRUL予測部14によって過去の時系列データとして適宜に参照される。
なお、時系列データベース記憶部12に、新たに取得した時系列データを追加する場合は、不図示の評価手段によって、データとしての妥当性(異常ではないこと、既に時系列データベースに格納されているデータとの類似性から新規追加の是非)を評価した後に蓄積され、正常状態における過去の時系列データとして活用できる形態になっている。
また、監視対象が複数である場合は、時系列データは、監視対象の単位となる各機械設備105に対応付けて記憶される。
時系列データベース記憶部12に記憶される時系列データベースには、センサデータ12a、及び環境データとしてイベントデータ12b、稼働データ12c、負荷データ12d、保守履歴データ12eなどが含まれる。これらのデータは、何れもそれぞれが取得された時刻に対応付けられている。
ここで、イベントデータ12bとは、機械設備105の運転状態を示すものであり、例えば、機械設備105の起動や停止などの運転パターンの制御状態を示すものである。
稼働データ12cとは、機械設備105の運転時間や操作時間などの稼働時間やその累積時間を示すものである。例えば、ショベルなどでは、走行時間や旋回動作の時間などの動作の詳細時間が該当する。
負荷データ12dとは、機械設備105にかかる負荷状態を示すものであり、例えば、エンジンにかかる負荷の状況や燃費、医療設備における患者数、工作機械における被加工物の硬さなどが該当する。
保守履歴データ12eとは、機械設備105に関して過去の故障内容、部品交換などの作業履歴を示すものであり、保守作業として行われた作業項目のリストが含まれている。
健康状態予測部13は、時系列データ取得部11から入力される現在の時系列データと、時系列データベース記憶部12に記憶されている過去の時系列データとを用いて、性能や品質などを指標とする健康状態を推定(予測)するものである。また、健康状態予測部13は、推定した健康状態の指標である性能や品質をRUL予測部14に出力する。
また、健康状態予測部13は、健康状態を推定するために、過去の時系列データを用いて、機械設備の状態(設備状態)及び健康状態を定量化し、設備状態の分布と健康状態の分布との類似度を求めておく。そして、現在の時系列データを取得したときに、設備状態を定量化し、求めておいた類似度を参照して、健康状態を推定する。
なお、健康状態予測部13の詳細な構成については後記する。
また、本明細書において、「異常」とは、機械設備が安定稼働する条件をはずれたもの、「性能」とは、機械設備の機能を含めたパフォーマンスを示すもの、「品質」とは、エンドユーザに直接的な影響を与えるもの、と定義するが、一般には重なりをもって定義される。分かりやすい例としては、ダンプトラックなどの移動体の燃費は、機械設備の性能として評価されるものである。また、物(製品)を生産する機械設備の場合は、機械設備が生産する製品の品質レベルで当該機械設備の品質を評価することができる。
また、「設備状態」は、機械設備が正常、異常を問わずに、任意の状態について定量化される状態量であるのに対して、性能や品質を示す「健康状態」は、原則として、正常な状態(設備状態)の範囲で稼働している機械設備について定量化される状態量である。
なお、以降の説明では、特に断らない限り、健康状態を示す指標である「性能」や「品質」を代表して、単に「性能」と呼ぶ。
RUL予測部14は、健康状態予測部13から健康状態の時系列データを入力し、入力した健康状態の時系列データを用いて、RULの予測値を算出する。RUL予測部14は、算出したRULの予測結果を出力部15に出力する。
なお、RUL予測部14の詳細な構成については後記する。
出力部15は、RUL予測部14からRULの予測結果を入力するとともに、時系列データベース記憶部12から設備状態や健康状態、あるいは異常測度や性能測度に影響が大きなセンサデータ12aを入力し、入力した時系列センサデータ12aや健康状態などを示す時系列データの波形を表示するものである。また、出力部15は、これらのデータの表示に代えて、又は加えて、不図示の上位システムであるAHM(asset health management)やEAM(enterprise asset management)にこれらのデータを出力する。
次に、図4〜図6を参照して、データの一例について説明する。
まず、図4にセンサデータ及びイベントデータの例を示す。図4に示すように、監視対象の機械設備である発電設備105bや建設機械105cから出力される多次元のセンサデータ12a及びイベントデータ12bを、時系列データ取得部11によって取得する。ここでは図示を省略しているが、イベントデータ12b以外の環境データである稼働データ12c、負荷データ12d及び保守履歴データ12eも取得対象である。
センサデータ12aは、冷却水やオイルの温度、オイルの圧力、電圧などである。センサデータ12aは、2種以上であればよいが、数十から数万種に及ぶものであってもよい。センサデータ12aは、所定のサンプリング間隔で、時系列データ取得部11によって取得される。
イベントデータ12bは、機械設備の起動、停止、その他の操作を示すデータである。機械設備に備えられた固有の警報装置が発生する警報などが含まれる場合もある。
図5に、ガスエンジンのセンサデータ12aの例を示す。図5に示した例では、センサデータ12aは、信号1〜信号4(12a−1〜12a−4)からなる4次元時系列センサ信号(データ)を構成しており、運転ON,OFFの繰り返しをしている例である。
図6に、稼働データ12cの例を示す。図6の上側のグラフは、稼働データ12cである週単位の稼働時間を示したものである。また、図6の下側のグラフは、負荷データ12dや性能データの一種である燃費、又はそれらに相当する性能指標を示したものである。ここで、時系列の稼働時間データを累積したものは、機械設備の年齢に相当する。また、図6において、矢印で示した時点でメンテナンス(保守作業)を行っている。図6には、その結果として、メンテナンスの直後に性能指標が回復している様子が示されている。
[設備状態・健康状態の定量化方法]
次に、設備状態や健康状態を定量化する方法について説明する。
設備状態や健康状態の定量化には、回帰手法や認識手法などを用いることができる。以下に、いくつかの手法について順次に説明する。
なお、設備状態や健康状態の定量化は、図3に示した健康状態予測部13によって行われる処理である。
(第1の定量化手法)
まず、図7を参照(適宜図3参照)して、設備状態の第1の定量化手法として、回帰手法について説明する。
第1の定量化手法は、過去の時系列データを学習データとして、回帰モデルを作成し、作成した回帰モデルを用いて、現在の時系列データの設備状態や健康状態を定量化するものである。
なお、定量化する指標が、設備状態又は健康状態の何れであっても同様に適用することができるため、設備状態(本明細書において、「機械設備の状態」又は、単に「状態」ということもある)を例にして説明する。
図7は、ガウシアンプロセス等の非線形回帰手法を用いた定量化方法を説明するための図である。図7には、学習データxと、当該学習データxにフィッティングする回帰関数Fとが描かれている。ここで、黒丸「●」で示した学習データxは、現在の時系列センサデータと類似するデータとしてモデル作成のために選択された過去の時系列センサデータである。
次に、回帰手法としてガウシアンプロセスを用いた場合について説明する。ガウシアンプロセスの解説記事は多いが、ここでは、非特許文献4に記載された手法を基にして説明する。ガウシアンプロセスの特徴は、現在の時系列センサデータ(以下、「現在の時系列データ」を、適宜に「観測データ」という)に対する設備状態の予測値(推定値)として、学習データと類似したデータを出力し、かつ、その予測の信頼性も分散値として出力可能なことである。
学習データである過去の時系列センサデータを示す入力ベクトルx,…,xと対応する設備状態が出力t=(t,…,tとして与えられているとする。このとき、現在の時系列センサデータとして入力される新しい入力ベクトルxn+1に対する出力tn+1を予測する場合について考える。この出力tn+1の予測値testは、式(1.1)によって得ることができる。
式(1.1)において、右辺の関数N(*,*)は正規分布関数を表し、第1変数に対応する値である平均が、予測値である出力testであり、第2変数に対応する値である分散が出力testの信頼度を示す。
また、式(1.1)において、βはノイズの変動幅を表すハイパーパラメータであり、ベクトルk及び行列Kは、それぞれ式(1.2)及び式(1.3)のように表される。
ここで、関数k(*,*)は、カーネル関数を表し、例えば、式(1.4)に示すRBF(Radial Basis Function)カーネルを用いることができる。なお、式(1.4)において、σは分散パラメータである。
なお、ガウシアンプロセスでは、予測値の算出に際して、観測データに類似した過去の時系列センサデータ(以下、「過去の時系列データ」を、適宜に「過去データ」という)の重みが大きくなる。言い換えれば、どの過去データを参照しているか(重みの大きな過去データがどれか)が容易に分かるため、参照した過去データが属する設備状態が、観測データが取得された現在の設備状態に対応する。これは、後記する局所部分空間法で算出される残差ベクトルの始点に対応するものである。
すなわち、ガウシンアンプロセスにおいて、参照した過去データの位置を始点とし、観測データの位置を終点とする多次元ベクトルを考えた場合に、当該多次元ベクトルは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして定義することができる。この多次元ベクトルは、前記したように、局所部分空間法における残差ベクトルに相当するものである。
従って、当該多次元ベクトルの始点位置によって設備状態を定量化できる。また、多次元ベクトルの長さは、正常状態からの乖離度を示す異常測度として用いることができる。
なお、前記した非特許文献5には、リチウムイオン蓄電池を対象に、ガウシアンプロセスを用いた蓄電池のRULを推定する技術が紹介されている。本発明の実施形態と非特許文献5に記載の手法との技術的な相違点のひとつは、非特許文献5に記載の手法では、故障までの期間を「RUL」と定義している点にあり、更なる相違点は、リチウムイオン蓄電池では、抵抗やキャパシタンスからなる回路物理モデルを仮定でき、それに基づきRULを求めている点である。本発明の実施形態では、RUL104を、所定レベルの健康状態(性能や品質)を維持しつつ運転可能な時間と定義している。また、本発明では、保守作業を行うことにより、劣化した健康状態が回復することを前提としており、次の保守作業が必要となるまでの時間という意味で短周期のRUL104を定義し、これを時刻ごとに、又は保守作業を行うごとに予測するようにした。
また、多くの機械設備では、物理モデルを仮定して構築することはコストがかかり、また精度を確保しようとすると、多くのセンサデータの蓄積と、その蓄積したセンサデータの処理が必要となるため、ますます膨大なコストがかかるというデメリットがある。これを考慮して、本発明は、精度の高い物理モデルを必ずしも準備できなくても、対応可能とするものである。
(第2の定量化手法)
次に、図8を参照(適宜図3参照)して、設備状態の第2の定量化手法として、認識手法の一つであるk−NN(k-Nearest Neighbor;k−近傍)法について説明する。
第2の定量化手法においても、設備状態の定量化を行うために、多次元のセンサデータ及び環境データをからなる過去データを学習データとして用いる。
図8は、k−NN法により、観測データqの近傍のk個の学習データを選択する様子を示したものである。図8は、観測データq(黒三角「▲」で示す)の近傍に2つのクラスタA及びクラスタBがある場合を示している。図8において、クラスタAの属するメンバである学習データxを黒丸「●」で示し、クラスタBの属するメンバである学習データxを黒四角「■」で示している。
k−NN法によれば、まず、観測データqの最近傍のk個の学習データを選択する。図8に示した例では、k=5とし、破線で示した円内の5個の学習データx,xが選択されている。ここで、選択された5個の学習データx,xについて、選択されたメンバの多数決によって観測データqが所属するクラスタを選択する。この例では、クラスタAに属する学習データx(2個)よりも、クラスタBに属する学習データx(3個)の方が多いので、観測データqは、クラスタBに属すると分類される。
なお、kの個数は適宜に定めることができる。
k−NN法において、観測データqが分類されたクラスタBの重心(代表値)を始点とし、観測データqの位置を終点とする多次元ベクトルを考えた場合に、当該多次元ベクトルは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして定義することができる。この多次元ベクトルは、局所部分空間法における残差ベクトルに相当するものである。
従って、当該多次元ベクトルの始点位置によって設備状態を定量化することができる。また、多次元ベクトルの長さは、正常状態からの乖離度を示す異常測度として用いることができる。
また、k−NN法において、選択した学習データx(x,x)を観測データqが属するクラスタを選択するために用いるのではなく、選択した学習データの重心を算出するために用いるようにしてもよい。そして、算出した重心を、設備状態を示すものとして用いるようにすることができる。
例えば、図8において示した学習データx,xが、A,B2つのクラスタではなく、1つのクラスタに属するものとする。そして、選択した学習データ(図8の場合は、5個の学習データx(x,x))の重心を始点とし、観測データqの位置を終点とする多次元ベクトルを、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルと定義して用いることができる。
なお、k−NN法を時系列データに適用するという意味で、所定の期間についての複数の過去の時系列データをベクトル化して1つのベクトルデータとして取り扱い、時間軌跡を予測の対象にするようにしてもよい。
すなわち、現時点までの所定の期間に取得された複数の時系列データをベクトル化したベクトルデータを観測データqとして用いる。また、同様に、前記した所定の期間ごとに取得された過去の時系列データのベクトルデータを学習データxとして用いる。そして、学習データxと観測データqとの距離を求め、この距離の大小により、観測データqに近い学習データのベクトルを複数(k個)選ぶものである。
(第3の定量化手法)
次に、図9を参照(適宜図3参照)して、設備状態の第3の定量化手法として、認識手法の1つである局所部分空間(LSC:Local Subspace Classifier)法について説明する。
この手法は、例えば、前記した特許文献1にも説明がなされている。
LSC法は、時系列データ間の類似度に着目し、正常データからなるコンパクトなモデルを生成するものである。以下、図9を参照して説明する。
本定量化手法では、まず、未知データである観測データqを用いて、前記したk−NN法と同様の手順により、学習データxの中から観測データqのk−近傍データx〜xを選択する。次に、k−近傍データによって張られるk−1次元の局所部分空間(線形多様体)SSを作成する。なお、kは、観測データq及び学習データxの次元数以下であればよい。そして、観測データqから局所部分空間SSへ降ろした垂線の足Xbを始点とし、観測データqを終点とする残差ベクトルVを求める。図9に示した例は、k=3の場合であり、局所部分空間SSは、(k−1)=2次元空間(平面)である。
LSC法で求めた残差ベクトルは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして用いることができる。すなわち、残差ベクトルの始点が設備状態を示すとともに、残差ベクトルの長さが正常状態からの乖離度を示し、異常測度として用いることができる。
残差ベクトルVの始点Xbの求め方について数学的に説明する。
始点Xbを求めるには、観測データqと、k−近傍データとして選択されたk個の学習データx(i=1,2,…,k)とから、学習データxの線形結合の係数ベクトルbを算出する。このために、観測データqをk個並べた行列Qと、学習データxをk個並べた行列Xとを用いて、式(2.1)により相関行列Cを求める。また、この相関行列Cを用いて、式(2.2)により係数ベクトルbを求める。
ここで、1は要素がすべて1であるk次元ベクトルである。この式(2.2)は、観測データqとの二乗誤差が最小となるx(i=1,2,…,k)の線形結合の係数ベクトルをbとすることを意味するものである。
なお、残差ベクトルV(=q−Xb)のL2ノルムは、異常測度として用いることができる。
次に、図10及び図11を参照して、LSC法により残差ベクトルを求める手順について更に具体的に説明する。
まず、図10に示すように、観測データqに近いk個の学習データx(図10において、白丸「○」で示す)を選択する。ここではk=5とした。そして、k個の学習データxから、1つだけ次元が低い局所部分空間SSを生成する。図10においては便宜的に直線で示しているが、この局所部分空間SSは4次元空間である。次に、観測データqから局所部分空間SSへの垂線を求め、残差ベクトルVを求める。垂線の足が、残差ベクトルの始点Xbになる。残差ベクトルVの向かう先が、観測データqになる。
図11は、別の観測データqの場合について示す。観測データqの場合と同様にして、観測データqのk−近傍の学習データxを選択して局所部分空間SSを生成し、残差ベクトルVの始点Xbを求めることができる。
ここで、残差ベクトルの始点Xb,Xbは、機械設備の置かれた状態(設備状態)をそれぞれ表している。残差ベクトルの始点Xb,Xbが近い場合は、互いに設備状態も近いと判断できる。従って、残差ベクトルの始点Xb,Xbを分類すれば、設備状態をカテゴリ分けできることになる。
図12に、設備状態をカテゴリ分けした結果である状態A及び状態Bを示す。図12は、設備状態が状態Aと状態Bという2種類の場合について示すものである。設備状態が状態A又は状態Bといっても、それぞれの状態の内部では設備状態は変動していることになる。カテゴリ分けは、例えばk平均法などの教師なしクラスタリングによって実現することができる。
なお、イベントデータ12b、稼働データ12c、負荷データ12d(図3参照)などの環境データも活用して、学習データxを更に多次元化し、これを分類してもよい。
これによって、よりきめ細かく設備状態を分類することができる。すなわち、観測データqに対する残差ベクトルの始点Xbを求めて、設備状態をきめ細かく予測することができる。
図13に、LSC法による設備状態の予測についての前記した説明をまとめる。
図13において、観測データqに対応する残差ベクトルVの始点Xbは機械設備が状態Aにあることを示している。また、観測データqに対応する残差ベクトルVの始点Xbは機械設備が状態Bにあることを示している。このように、本定量化手法によれば、観測データq,qなどに対応する残差ベクトルの始点Xb,Xbなどが、どの状態(例えば、状態A、状態Bなど)に近いかによって、設備状態を把握して、その変動をモニタできることがわかる。
なお、設備状態のモニタは、LSC法による残差ベクトルの始点に限らず、前記した他の定量化手法で定義される多次元ベクトルの始点を用いても同様に行うことができる。
すなわち、前記したk−NN法で求めた所属クラスタの重心やk個の学習データの重心、ベクトル量子化のコードブックに相当するリストの代表値、非階層クラスタリングの一種であるk平均法の重心、更には、最短距離法や最長距離法、群平均法やウォード法などの階層クラスタリングの重心(セントロイド)など、他の代表値でも構わない。正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルは、何れの手法においても定義することが可能である。
(健康状態への拡張)
LSC法による残差ベクトルを含め、前記した定量化手法において、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルの始点で設備状態をモニタする手法を、設備の性能や品質などの健康状態にまで発展させることができる。
図14を参照して、健康状態を定量化するための手法について説明する。図14は、健康状態として、例えば、性能の1つである燃費を指標とし、学習データxを分類した様子を示している。性能のレベルとして、図14では8レベル(性能I〜性能VIII)に分けている。性能をどのように見るかによって、この結果は異なるものとなるが、これらは外部から教示するものとする。そうすると、性能のモニタは、過去の時系列データである学習データxを活用した分類の問題になる。
8レベル、すなわち8つのカテゴリに分類するマルチクラス分類と考えれば、交差検証などによって、事前に性能などのモニタの精度評価も可能であり、学習データxの良否も判断できる。ここで、交差検証とは、学習データxを、本例では8つに分割し、8つの内の1つのデータを用いて分類のパラメータを決め、そのパラメータを用いて、残る7つのデータで分類の評価を行い、分類の妥当性の検証及び確認に当てる手法である。
[健康状態の推定方法]
次に、機械設備の健康状態を、観測データに対応する設備状態を示す残差ベクトルの始点を用いて推定する方法について説明する。
前記したように、設備状態は、正常データからなる過去データを用いて、観測データに対応する残差ベクトルの始点により定量化することができる。なお、本推定方法の説明では、LSC法における残差ベクトルを用いる場合について説明するが、これに限定されるものではなく、他の手法による正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを用いることもできる。
また、機械設備の異常又は異常予兆は、例えば、残差ベクトルの長さを異常測度とし、この異常測度の大きさによって判定することができる。
一方、健康状態は、健康状態を示す性能や品質などを外部から教示した学習データをクラスタリングすることにより健康状態を分類しておき、観測データに対応する残差ベクトルの始点が、健康状態を分類した何れのクラスタに属するかによって、推定することができる。
ここで、健康状態を示す性能や品質は多種多様である。このため、多次元の時系列データから、推定しようとする性能や品質ごとに、大きな影響を与えるデータを選択して用いることが、推定のための処理負荷を低減し、また推定精度を向上するために有用である。しかしながら、多種多様な性能や品質に応じた種々の残差ベクトルを算出するのは推定の処理負荷の増大となる。
そこで、本実施形態では、過去データを用いて、予め設備状態をクラスタリングするとともに、健康状態についてもクラスタリングしておく。また、これらのクラスタリングによって生成した設備状態を示す各クラスタと、健康状態を示す各クラスタとの間の類似度を求めておく。そして、観測データを取得したときに、当該観測データに対応する設備状態を示す残差ベクトルの始点を算出することで設備状態を推定し、更に、設備状態と健康状態との間の類似度データを用いて、健康状態を推定する。
図15を参照して、設備状態と健康状態(性能・品質)との関係性を導く方法について説明する。
本実施形態では、機械設備から取得した正常データを学習データに用いる。
まず、ほぼすべてのセンサデータを対象としたデータに、LSC法により残差ベクトルの始点を求め、残差ベクトルの始点により形成される設備状態分布を得る。並行して、設備の健康状態を左右するセンサデータを対象としたデータに、LSC法により残差ベクトルの始点を求め、残差ベクトルの始点により形成される健康状態分布を得る。
次に、設備状態分布と健康状態分布とをそれぞれ、メンバの重複を許して、クラスタリングする。なお、健康状態分布をクラスタリングする際は、健康状態のレベル(性能や品質レベル)を外部から教示するものとする。これによって、設備状態クラスタS,S,…と、健康状態クラスタP,P,…とを生成することができる。
次に、設備状態クラスタS,S,…から1つを選び、各健康状態クラスタP,P,…との類似度を算出する。類似度は、分布同士の類似度であり、相互部分空間法などを用いて算出することができる。選択した設備状態クラスタS,S,…と健康状態クラスタP,P,…との対応付けを行う。これを、残りの設備状態クラスタについても行う。これによって、図16に示したように、設備状態クラスタS,S,…と健康状態クラスタP,P,…との関係性を示す類似度マトリックスを得ることができる。また、図16に示した類似度マトリックスの要素は、類似度の大きさで並べ替えを行ってもよい。
このようにして、設備状態と健康状態との関係性(相関の度合など)を導くことができる。
[健康状態予測部及びRUL予測部の構成]
次に、図17を参照(適宜図3参照)して、第1実施形態における健康状態予測部13及びRUL予測部14の詳細な構成について説明する。
健康状態予測部13は、類似時系列データ選択部131と、第1識別部133aと、第2識別部133bと、第1始点データ記憶部134aと、第2始点データ記憶部134bと、第1クラスタ生成部135aと、第2クラスタ生成部135bと、類似度算出部136と、類似度データ記憶部137と、健康状態推定部138と、健康状態記憶部139とを備えている。
また、本実施形態におけるヘルスマネージメントシステム1は、異常予兆検知部16を備えている。
類似時系列データ選択部131は、時系列データ取得部11から現在の時系列データである観測データを入力し、時系列データベース記憶部12に記憶されている過去データから、観測データと類似するデータを選択する。具体的には、観測データである入力ベクトルと、時系列データベース記憶部12に蓄積されている過去データである入力ベクトルとの間の距離を算出し、距離が近いものから所定数の過去データを選択する。更に具体的には、前記したカーネル関数(例えば、式(1.4))を用いて、カーネル関数の値が「1」に近いデータから順に選択することができる。
類似時系列データ選択部131は、選択した過去データを、第1識別部133a及び第2識別部133bに出力する。
第1識別部133a及び第2識別部133bは、それぞれ類似時系列データ選択部131から観測データ又は/及び過去データを入力し、それぞれ設備状態及び健康状態を定量化するものである。具体的には、前記したガウシアンプロセスなどの回帰手法や、k−NN法やLSC法などの認識手法を用いて、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出し、その始点データによって設備状態及び健康状態を定量化する。
第1識別部133aは、過去データについて算出した多次元ベクトルの始点データを第1始点データ記憶部134aに記憶させる。また、第1識別部133aは、観測データについて算出した多次元ベクトルの始点データを健康状態推定部138に出力するとともに、その長さを異常測度として異常予兆検知部16に出力する。
第2識別部133bは、過去データについて算出した始点データを第2始点データ記憶部134bに記憶させる。また、第2識別部133bは、観測データについては、多次元ベクトルの算出は行わない。
第1始点データ記憶部134a及び第2始点データ記憶部134bは、それぞれ第1識別部133a及び第2識別部133bから入力した多次元ベクトルの始点データを記憶するものである。第1始点データ記憶部134a及び第2始点データ記憶部134bに記憶された多次元ベクトルの始点データは、それぞれ第1クラスタ生成部135a及び第2クラスタ生成部135bによって読み出される。
第1クラスタ生成部135a及び第2クラスタ生成部135bは、それぞれ第1始点データ記憶部134a及び第2始点データ記憶部134bに記憶されている多次元ベクトルの始点データについてクラスタリングを行うことにより、それぞれ設備状態及び健康状態を分類するものである。なお、第2クラスタ生成部135bは、クラスタリングを行う際に、各始点データに対応する健康状態のレベルを、外部から教師データとして入力するものとする。
第1クラスタ生成部135a及び第2クラスタ生成部135bは、クラスタリングにより生成したクラスタデータを、類似度算出部136に出力する。
類似度算出部136は、第1クラスタ生成部135a及び第2クラスタ生成部135bから、それぞれ設備状態についてのクラスタデータ及び健康状態についてのクラスタデータを入力し、各設備状態クラスタと各健康状態クラスタとの関係性を示す類似度を算出する。類似度算出部136は、算出した類似度を、類似度マトリックス(図16参照)として類似度データ記憶部137に記憶させる。
類似度データ記憶部137は、類似度算出部136が算出した類似度を、類似度マトリックスとして記憶するものである。類似度データ記憶部137に記憶される類似度データは、健康状態推定部138によって読み出される。
健康状態推定部138は、第1識別部133aから観測データについての設備状態を示す始点データを入力し、類似度データ記憶部137に記憶されている類似度マトリックスを参照して、健康状態を推定するものである。健康状態推定部138は、推定した健康状態を、健康状態記憶部139に、観測データが取得された時刻に対応付けた時系列データとして記憶させる。
健康状態記憶部139は、健康状態推定部138から、健康状態の推定値を入力し、観測データの取得時刻に対応付けた時系列データとして記憶するものである。健康状態記憶部139に記憶された健康状態の推定値は、健康状態の時系列データとしてRUL予測部14のRUL算出部141及び保守効果算出部142、並びに出力部15に出力される。
ここで、図18を参照(適宜図17参照)して、第1識別部133a及び第2識別部133bの詳細な構成について説明する。
第1識別部133a及び第2識別部133bは、何れも同様の構成をしており、図18に示すように、特徴変換部1331と、トレンド抽出部1332と、学習データ選択部1333と、識別器1334とを備えている。
第1識別部133a及び第2識別部133b(以下、これらを総称して、適宜に識別部133と呼ぶ)は、前記したように観測データ又は過去データについて、LSC法による残差ベクトル又は他の手法により残差ベクトルに相当する多次元ベクトルを算出するものである。
センサデータ12a、イベントデータ12b、稼働データ12c、負荷データ12d、保守履歴データ12eなどの時系列データは、残差ベクトルなどの多次元ベクトルの始点データの分布として表わされる設備状態分布や健康状態分布の基礎データになる。ショベルを例にとると、冷却水温度やその蓄積値は、機械設備の状態に相当する。しかし、蓄積冷却水温度は、性能劣化に結び付いている可能性がある。しかしながら、機械設備の生まれ(部品の違い、組立ての違い)、機械設備の育ち(稼働環境、人為的要素)が違う訳で、そのような機械設備に対し、その性能(健康状態)をうまく表現することは難しい。そこで、性能の劣化の要因を検討するのではなく、結果としての性能という外的評価を教師として与え、学習させていく。性能グロスから入り、学習の結果、要因も出力する。
特徴変換部1331は、多次元のセンサデータを含む観測データ及び過去データに特徴変換を前処理として施すものである。特徴変換部1331は、特徴変換した観測データ及び過去データを、トレンド抽出部1332に出力する。
特徴変換の手法の例を、図19に示す。主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、ウェーブレット(Wavelet)変換などが代表的なものである。
主成分分析を通して時系列データの次元数を削減し、3次元以下にすることで、高次の残差ベクトルの始点の振舞を、視覚的に画像表示することが可能となる。また、独立成分分析やウェーブレット変換を通して、残差ベクトルの始点の分布を観察すると、状態変化をより分かりやすく顕在化できる場合がある。
図20は、独立成分分析を施した後の観測データについて算出した残差ベクトルの始点の軌跡を示したものである。独立成分分析によっても、主成分分析と同様に、時系列データの次元を削減することができる。図20に示した例は、次元を3次元に削減して表示したものである。独立成分の尖度などを用いて、次元数を制御することができる。
図20において、プロットした始点の濃淡は4カ月刻みで変えて表示している。図20において、現在に近いデータである直近の4カ月の期間のデータを黒いプロットで表わしている。黒以外のプロットで示した20〜4カ月前までの残差ベクトルの始点の振舞いに対して、この直近4カ月の期間において、残差ベクトルの始点が大きく変動していることが分かる。すなわち、直近の4カ月で、状態変動があったことが分かる。
更に、独立成分分析をセンサデータに施す際に、独立成分分析の手法により得られた混合係数行列Aから重みを算出し、これにより独立成分の信号の大きさを制御することもできる。
ここで、n次元の観測データをx(t)、未知の独立成分のm次元独立成分をs(t)とすると、n×m次元の混合行列Aを用いて、両者の関係は式(3.1)のように表わされる。また、混合行列Aの逆行列Wを用いて、式(3.2)のように表わすこともできる。なお、ここでは、tは時間を示す。
独立成分分析では、観測データx(t)を用いて、独立成分s(t)と混合行列Aとを求めるものである。そして、j番目の独立成分のセンサ出力に対する寄与率を、式(3.3)によって算出することができる。更に、性能や状態を教示できれば、前記の重みを、教示した性能や状態が付加された学習データを用いて修正することもできる。どの独立成分を重視すべきかなど、有用な知見が、過去データを用いて学習することにより得ることができる。
図18に戻って、識別部133の構成について説明を続ける。
トレンド抽出部1332は、特徴変換部1331から特徴変換された観測データ及び過去データを入力し、特徴変換された観測データ及び過去データから、更にトレンド成分を抽出して、識別器1334で多次元ベクトルを算出するための観測データ及び過去データであるベクトルデータの成分として付加するものである。トレンド抽出部1332は、トレンド成分を付加した、観測データについては識別器1334に出力し、過去データについては学習データ選択部1333に記憶させる。
トレンド抽出部1332は、独立成分分析で得られた独立成分について、トレンド成分を抽出して、その傾向を用いることにより、異常予兆を検知し易くするためのものである。このトレンド成分は、性能との関係性が確認できれば、性能の監視にも有用である。
例えば、図21は、周波数が異なる4つの独立成分を表したものである。図21において、成分1及び成分4として示した独立成分は固有の周波数が見てとれる。これらを周波数分析し、その周波数によって分類すれば、機械設備のもつ繰り返し性、長期的なトレンド、短期の突発性の現象、不規則なノイズ成分などを分離することができる。また、これらの周波数特性と、機械設備の設置環境、例えば室温、外気温、負荷変動、又は保守作業の周期などがもつ周波数特性との関係性などが分かる。これによって、種々の現象を説明することができる。トレンドを定量化することは、設備状態の予測、健康状態の予測にもつながるものである。また、保守作業の緊急性を要するかどうかも判断することができる。
なお、独立成分分析については、例えば、参考文献1に詳しく説明されている。
(参考文献1)「詳解 独立成分分析―信号解析の新しい世界。東京電機大学出版局 (2005/02)」
図18に戻って、識別部133の構成について説明を続ける。
学習データ選択部1333は、トレンド抽出部1332から、トレンド成分を付加された過去データを入力し、学習データとして記憶するとともに、識別器1334による識別処理を行う際に、観測データに類似するデータを選択して識別器1334に出力するものである。
識別器1334は、トレンド抽出部1332から観測データを入力するとともに、学習データ選択部1333から学習データを入力し、前記した回帰手法や認識手法などにより、観測データに対応する残差ベクトルなどの、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出するものである。
識別器1334は、第1識別部133a又は第2識別部133bの出力として、過去データについての多次元ベクトルの始点データを、対応する第1始点データ記憶部134a又は第2始点データ記憶部134bに出力する。更に、識別器1334が第1識別部133aの構成である場合は、観測データについての、多次元ベクトルの始点データを健康状態推定部138に出力し、多次元ベクトルの長さを異常測度として異常予兆部検知部16に出力する。
RUL予測部14は、健康状態記憶部139に記憶されている健康状態の時系列データを参照して、RULの算出、保守作業による健康状態の回復効果の算出、及び次回の保守作業の時期を決定するものである。そのために、RUL予測部14は、RUL算出部141と、保守効果算出部142と、保守時期決定部143とを備えている。
[RULの予測方法]
ここで、RULの予測方法について説明する。
設備状態や健康状態は、機械設備のもつ不具合のみならず、保守作業によっても変化する。保守作業は、部品交換、調整、注油、ソフトウェアのバージョンアップなどである。定期保守もあれば、稼働時間ごとの点検調整もある。保守作業と同期をとり、残差ベクトルの始点(又は前記した他の手法による多次元ベクトルの始点)がどのように変位するかを評価すれば、正常状態から劣化し、保守によって若干若返り、また劣化が進むというサイクルを繰り返すことが観察できる。
図22を参照(適宜図3及び図17参照)して、次の保守作業を行う時期までの機械設備のRUL(稼働継続可能時間)について説明する。図22では、機械設備の健康状態及び負荷率・稼働率を縦軸に、時間を横軸にとっている。健康状態は、前記したように性能や品質を指標とするものである。図22では、時間の経過とともに、機械設備の健康状態は、勾配207で示したように低下している。途中で、保守作業211が行われ、健康状態はやや回復し、現在に至る。三角「△」は、途中でアラーム210が発生したことを示している。また、参考のため、下側に機械設備の負荷率・稼働率205を示している。また、保守作業211が行われる直前に健康状態が極小となり、保守作業により健康状態が上昇して極大となる。そして、その後、勾配208で健康状態が徐々に低下している。この保守作業の前後の健康状態の極小(谷)から極大(山)までの健康状態の差が、保守作業による健康状態の回復効果209を示すものである。
図22において、勾配207は、保守前の健康状態の減衰度合いを示す傾きであり、勾配208は、保守後の健康状態の減衰度合いを示す傾きである。このように表示すると、機械設備の健康状態と保守作業との関係、稼働時間や機械設備に加わる負荷の状況などが、分かり易くなる。
また、健康状態が所定の閾値202を下回り、健康状態の限界(例えば、性能限界)に低下する限界時期203までの残された時間が、健康状態の観点から定められる機械設備のRUL204を表わす。
ここで、健康状態の時間推移を示すグラフから、RUL204を予測しようとする現在の時点における勾配208を健康状態の変化のトレンド成分として算出し、健康状態が所定の閾値202に低下する限界時期203を外挿して求めることができる。限界時期203の予測には、健康状態の勾配208(すなわち1次微分)だけでなく、2次微分などの高次の微分係数を加えた、健康状態の変化のトレンドを分析して用いることもできる。
なお、回帰手法などの統計モデルを用いて限界時期203を予測することにより、限界時期203を確率分布206として算出することもできる。
そして、現在の時点から予測した限界時期203までの時間をRUL204の予測値として算出することができる。
なお、この限界時期203までは、稼働継続性が確保されているという意味である。従って、保守スケジューリングは、この機械設備のRUL204に基づいて行うことができる。すなわち、現在の時点から予測したRUL204を超えない期間内に、次の保守作業時期を定めることができる。従って、定期的な保守作業の時期が予め定められている場合であっても、その所定の時期までの時間が、RUL204より長い場合は、RUL204内に保守作業を行う時期を早めることができる。また、所定の時期までの時間がRUL204よりも短い場合は、RUL204を超えない範囲で保守作業時期を遅くすることもできる。
ちなみに、リチウムイオン電池やハードディスクドライブなどでは、多くの場合、保守作業が入らないため、このように健康状態が増減することはなく、単調に減少することを基本とする。従って、保守作業により、健康状態に増減を伴う機械設備において、本発明は特に有用性が高いものである。
なお、保守作業211の後の健康状態の減衰度合いを示す勾配208は、保守作業211の前の勾配207と比べることにより 、保守作業211の前に算出したRUL204が今度はどうなるかを把握することもできる。
注意すべきは、保守作業211の後の健康状態の回復効果209が最大に得られた時点を始点として、RUL204を計測している点である。保守作業を行うべき、次の健康状態の限界時期203が、このグラフから判断できる。
保守作業による健康状態の回復効果209は、保守作業のたびに完全には元に復元できず、徐々に健康状態の回復が困難になることが予想される。このため、保守作業のたびに、その前後の健康状態を計測し、回復効果209を見積もることにより、回復できない度合いを評価していけば、健康状態の劣化の傾向が分かり易いものとなる。
従って、設備状態を示す残差ベクトルの始点が、例えば、図14に示した多次元空間において、どこに位置しているか、調整や部品交換によって、どのように変位するのかを定量化し、健康状態や始点位置を示す日時を表示することが、傾向を分かり易くするために重要となる。
そこで、保守作業データを入力し、残差ベクトルの始点がどのように変位するかを評価する。保守作業211のたびに、残差ベクトルの始点が動き、その点列が得られることになる。そして、この点列は、正常状態から劣化し、保守作業211によって若干若返り、また劣化が進むというサイクルを繰り返す。単位時間あたりの移動量も考慮すれば、健康状態の変化の速度、すなわち保守作業211の後の健康状態の減衰度合いを示す勾配(傾向)208を知ることもできる。
更には、保守作業の項目の有効性を判断することもできる。残差ベクトルの始点の変動と保守作業の項目との関連性を調べれば、どの項目が残差ベクトルの始点の位置をシフトさせ得るのかなどが分かる。逆に、項目によっては、残差ベクトルの始点の動きから、その項目が有効でないことも分かる。そこで、このような保守作業の項目と残差ベクトルの始点の変化との関係を蓄積しておき、次の保守作業の際に、作業すべき項目を取捨選択するために利用し、保守作業を効率的に行うことができる。
あるいは、設備状態や健康状態を示す残差ベクトルの始点が大きく変動するとき、残差ベクトルの始点の変動に大きく寄与するセンサデータを抽出し、抽出したセンサデータにより設備状態や健康状態を表すための注目すべきセンサデータとして扱うようにしてもよい。すなわち、保守作業の前後で、機械設備の状態や健康状態を示す残差ベクトルの始点の位置が所定の値以上に変化するとき、この残差ベクトルの始点位置の変化と連動して変化するセンサデータを性能指標(Performance Indicator Index)として用い、更には出力部15によって表示又は/及び外部へ出力することができる。また、性能などを表す外部指標と同じ振舞をもつセンサデータを選ぶことも、もちろん可能である。
図17に戻って、RUL予測部14の各部の構成について説明する。
RUL算出部141は、健康状態記憶部139に記憶されている健康状態の時系列データを参照して、健康状態の変化のトレンド(例えば、図22に示した勾配208)を分析して、健康状態が所定の閾値(図22に示した閾値202)を超える時期(図22に示した限界時期203)を推定し、現在から当該推定時期までの時間をRUL(図22に示したRUL204)として算出するものである。RUL算出部141は、RUL算出値を、RULの予測結果として出力部15及び保守時期決定部143に出力する。
保守効果算出部142は、健康状態記憶部139に記憶されている健康状態の時系列データを参照して、保守作業を行った前後の健康状態の推移を分析して、保守作業による健康状態が回復した効果(図22に示した回復効果209)を算出するものである。保守効果算出部142は、算出した健康状態の回復効果を保守時期決定部143に出力する。
保守時期決定部143は、RUL算出部141からRULの予測結果を入力するとともに、保守効果算出部142から健康状態の回復効果を入力し、次回の保守作業の時期を決定するものである。例えば、RULを予測した時点から、予測したRULまでの時間を超えない範囲で保守作業の時期を決定することができる。
また、異常予兆検知部16は、第1識別部133aから異常測度を入力し、異常測度が所定の閾値を超えた場合に異常予兆ありと判定し、閾値以下の場合に異常予兆なしと判定することにより、異常予兆の有無を検知するものである。異常予兆検知部16は、異常予兆の判定結果を出力部15に出力する。
[RULの予測処理]
次に、図23を参照(適宜図3及び図17参照)して、本発明の実施形態に係るヘルスマネージメントシステム1によるRULの予測処理について説明する。
図23に示すように、ヘルスマネージメントシステム1は、健康状態予測部13によって、時系列データベース記憶部12に蓄積されている正常な状態を示す過去データを用いて、設備状態分布及び健康状態分布を算出する(ステップS11)。ステップS11における処理の詳細は後記するが、ステップS11において、ヘルスマネージメントシステム1は、健康状態予測部13によって、設備状態分布と健康状態分布との関連性を示す類似度の算出までを行うものである。なお、算出された類似度データ(図16に示した類似度マトリックス)は、類似度データ記憶部137に記憶される。
次に、ヘルスマネージメントシステム1は、時系列データ取得部11によって、機械設備から観測データを取得する(ステップS12)。
次に、ヘルスマネージメントシステム1は、健康状態予測部13の第1識別部133aによって、ステップS12で取得した観測データについて、ほぼ全てのセンサデータを対象とした残差ベクトル(又は、LSC法以外の手法による正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトル)を算出する(ステップS13)。
なお、残差ベクトルの算出に際して、ヘルスマネージメントシステム1は、類似時系列データ選択部131によって、観測データに類似した所定数の過去データを時系列データベース記憶部12から選択する。選択した過去データは、第1識別部133aによって、残差ベクトルを算出するための学習データとして用いられる。
次に、ヘルスマネージメントシステム1は、健康状態推定部138によって、ステップS13で算出した残差ベクトルの始点データと、ステップS11で算出された類似度データとを用いて、機械設備の健康状態を推定する(ステップS14)。なお、健康状態の推定値は、健康状態記憶部139に、時系列データとして記憶される。
また、ヘルスマネージメントシステム1は、ステップS11と並行して、異常予兆検知部16によって、ステップS13で算出した残差ベクトルの長さを異常測度として、異常測度が所定の閾値を超えたかどうかを判定することで、異常予兆を検知する。ヘルスマネージメントシステム1は、出力部15によって、異常予兆の検知結果を表示又は/及び外部に出力する。
次に、ヘルスマネージメントシステム1は、RUL算出部141によって、健康状態記憶部139に記憶されている健康状態推定値の時系列データについて変化のトレンドを分析することで、RULの予測値を算出する(ステップS15)。また、ヘルスマネージメントシステム1は、RULの算出と並行して、保守効果算出部142によって、健康状態記憶部139に記憶されている健康状態推定値の時系列データの推移を分析し、直近に行われた保守作業による健康状態の回復効果を算出する。
なお、RULの予測処理は、保守作業を行うごとに、回復効果を確認して行うことが好ましい。すなわち、健康状態が保守作業後に回復して極大(ピーク)を形成することを確認することが好ましい。これによって、ヘルスマネージメントシステム1は、より精度よくRULを予測することができる。
次に、ヘルスマネージメントシステム1は、保守時期決定部143によって、ステップS15で算出したRUL予測値に基づいて、次回の保守作業を行う時期を決定する(ステップS16)。なお、予め保守作業時期が定められている場合は、ヘルスマネージメントシステム1は、保守時期決定部143によって、RUL予測値までの期間内で、適切な時期に変更する。また、RULが過去の時点で予測されて、不図示の記憶手段に登録されている場合は、その登録値を最新のRUL予測値で更新する。
なお、保守作業時期の決定際して、前回の保守作業による回復効果の算出値は必須ではないが、保守作業ごとの回復効果の履歴として参照することで、次回の保守作業を行ったときの回復効果を予測することができる。このため、健康状態の推移と合わせて参照することで、より適切に次回の保守作業時期を決定することができる。
[設備状態分布及び健康状態分布の算出処理]
次に、図24を参照(適宜図3、図17及び図23参照)して、図23に示した設備状態分布及び健康状態分布の算出処理ステップS11の詳細な処理について説明する。
図24に示すように、まず、ヘルスマネージメントシステム1は、時系列データ取得部11によって、機械設備から多次元センサデータを含む時系列データを取得し、正常状態を示すデータを時系列データベース記憶部12に、一定量を蓄積させる(ステップS21)。時系列データベース記憶部12に蓄積された正常データが、過去データとして用いられる。
次に、ヘルスマネージメントシステム1は、第1識別部133a及び第2識別部133bによって、ステップS21で蓄積した過去データを用いて、それぞれ残差ベクトルを算出し、算出した残差ベクトルの始点データをそれぞれ設備状態分及び健康状態分布を示すデータとして第1始点データ記憶部134a及び第2始点データ記憶部134bに蓄積させる(ステップS22)。
ここで、第1識別部133aは、過去データにおけるほぼ全てのセンサデータを対象として残差ベクトルを算出する。また、第2識別部133bは、過去データにおいて、健康状態として評価しようとする具体的な性能や品質の変動に対する寄与が高い2以上のセンサデータを予め選択しておき、当該選択センサデータを対象として残差ベクトルを算出する。
なお、第1識別部133a及び第2識別部133bで用いられるセンサデータは、特徴変換部1331(図18参照)で変換された独立成分やトレンド抽出部1332(図18参照)で抽出されたトレンド成分などであってもよい。
次に、ヘルスマネージメントシステム1は、第1クラスタ生成部135a及び第2クラスタ生成部135bによって、ステップS22で蓄積した残差ベクトルの始点データについて、それぞれクラスタリングを行い、クラスタを生成する(ステップS23)。
なお、生成したクラスタについてのデータは、不図示の記憶手段に記憶するようにしてもよい。
次に、ヘルスマネージメントシステム1は、類似度算出部136によって、ステップS23で生成した設備状態分布についての各クラスタと、健康状態分布についての各クラスタとの関係性を示す類似度データ(例えば、図16に示した類似度マトリックス)を算出する(ステップS24)。
なお、算出した類似度データは、類似度データ記憶部137に記憶される。
<第2実施形態>
[ヘルスマネージメントシステムの構成]
次に、図25を参照(適宜図3参照)して、本発明の第2実施形態に係るヘルスマネージメントシステム1Aの構成ついて説明する。
図25に示すように、第2実施形態に係るヘルスマネージメントシステム1Aは、図17に示した第1実施形態に係るヘルスマネージメントシステム1に対して、健康状態予測部13に代えて、健康状態予測部13Aを備えることが異なる。第1実施形態と同様の構成については、同じ符号又は同じ名称を付して、説明は適宜省略する。
本実施形態における健康状態予測部13Aは、健康状態を、当該健康状態に大きな影響を与えるセンサデータを選択してなる時系列データを用いて算出した残差ベクトル(又は他の正常状態から異常状態に向かる多次元ベクトル)の始点の軌跡を分析することで、現在又は将来の健康状態を予測するものである。また、健康状態予測部13Aは、保守作業を行った前後の期間において、健康状態を示す始点位置が、所定値以上変化した場合に、その始点変化に大きな影響を与えるセンサデータを抽出し、そのセンサデータを用いて健康状態を予測するものである。これによって、健康状態をより精度よく予測することができる。
更にまた、健康状態予測部13Aは、保守作業を行った前後の期間における健康状態を示す始点位置の変化量と保守作業で行った作業項目とを関連付け、作業項目の当該健康状態の回復に対する有効性を評価し、その評価結果を蓄積する。そして、評価結果の蓄積データを、次回以降の保守作業を行う際に、健康状態の回復に有効な作業項目を選択するために供するものである。
このために、健康状態予測部13Aは、類似時系列データ選択部131と、第1識別部133aと、第2識別部133bと、第1始点データ記憶部134aと、第2始点データ記憶部134bと、センサデータ抽出部21と、トレンド成分抽出部22と、状態予測部23と、始点変化検知部31と、保守作業項目評価部32と、保守作業項目評価結果記憶部33と、保守作業項目選択部34と、を備えている。また、状態予測部23は、健康状態推定部24と、異常予兆検知部25とを備えている。
類似時系列データ選択部131と、第1識別部133aと、第2識別部133bと、第1始点データ記憶部134aと、第2始点データ記憶部134bとは、それぞれ、図7に示した第1実施形態における健康状態予測部13と同様であるから、説明は省略する。
センサデータ抽出部21は、始点変化検知部31から健康状態を示す始点の変化量が所定値以上のかどうかを示す検知結果を入力するとともに、第2始点データ記憶部134bから健康状態を示す始点の時系列データを入力し、時系列データベース記憶部12から時系列センサデータを入力する。そして、センサデータ抽出部21は、入力した検知結果が、健康状態を示す始点の変化量が所定値以上であることを示す場合に、健康状態を示す始点の時系列データと、時系列センサデータとを対比分析して、変化量が所定値以上となった期間において、当該始点の挙動を支配するセンサデータを特定する。
センサデータ抽出部21は、特定したセンサデータの時系列データを、トレンド成分抽出部22及び状態予測部23に出力する。
また、センサデータ抽出部21は、特定したセンサデータを、状態予測部23を介して、RUL予測部14Aに出力する。更に、センサデータ抽出部21は、特定したセンサデータを出力部15に出力し、健康状態の推移を示すデータとしてグラフ表示するようにしてもよい。
なお、センサデータ抽出部21は、このようなセンサデータとして、例えば、始点の時系列データの変化と連動するセンサデータ(又は独立成分やトレンド成分であってもよい)を、時系列データ間の相関を算出することにより抽出することができる。
また、センサデータ抽出部21は、健康状態を示す始点の時系列データに代えて、第1始点データ記憶部134aに記憶されている設備状態を示す始点の時系列データを参照するようにしてもよい。
トレンド成分抽出部22は、センサデータ抽出部21から健康状態の挙動を支配するセンサデータについての時系列データを入力し、当該時系列データを分析して変化のトレンド成分を抽出する。
なお、トレンド成分抽出部22は、センサデータに代えて、このセンサデータに挙動が支配される始点の時系列データを分析してトレンド成分を抽出するようにしてもよい。
ここで、トレンド成分とは、図23に示した健康状態の時系列データにおける勾配207,208と同様のものである。また、トレンド成分は、1次微分に限定されず、高次の微分係数を含むものや、その他の変化を示すパラメータであってもよい。
状態予測部23は、機械設備の健康状態を予測するとともに、機械設備の異常予兆を検知するものである。そのために、状態予測部23は、健康状態推定部24と、異常予兆検知部25とを備えている。
健康状態推定部24は、センサデータ抽出部21から健康状態を示す始点の挙動を支配するセンサデータについての時系列データを入力するとともに、トレンド成分抽出部22から当該センサデータについてのトレンド成分を入力し、健康状態を予測するものである。
ここで、トレンド成分を用いた健康状態の予測は、図22を参照して説明した限界時期203の算出方法と同様に行うことができる。例えば、トレンド成分である勾配208を用いて、現在の時点から予測しようとする時期まで外挿することにより、当該時期における健康状態を算出することができる。
このようにして、任意の時期における健康状態を予測することができる。
異常予兆検知部25は、第1始点データ記憶部134aから設備状態を示す始点の時系列データを入力し、異常予兆の有無を検知するものである。
具体的には、異常予兆検知部25は、第1始点データ記憶部134aに蓄積されている設備状態を示す始点の時系列データを参照して、当該始点が所定の閾値レベルに達する時期を予測し、予測日までの時間が所定時間より短い場合に異常予兆ありと判定し、予測日までの時間が所定時間以上の場合は、異常予兆なしと判定する。そして、異常予兆検知部25は、この判定結果を異常予兆の検知結果として出力部15に出力する。
なお、異常予兆検知部25は、始点の時系列データを参照して異常予兆を検知することに限定されない。例えば、異常予兆検知部25は、第1識別部133aによって算出される残差ベクトルの長さが、所定の閾値より長い場合に異常予兆がありと判定し、残差ベクトルの長さが所定の閾値以下の場合に異常予兆なし判定するようにしてもよい。
始点変化検知部31は、第2始点データ記憶部134bから健康状態を示す始点の時系列データを入力し、保守作業を行った前後の所定の期間を通して、当該始点位置の振れ幅である変化量を算出するとともに、その変化量が所定位置以上かどうかを検知するものである。始点変化検知部31は、検知結果をセンサデータ抽出部21に出力するとともに、検知結果及び算出した変化量を保守作業項目評価部32に出力する。
なお、始点変化検知部31は、時系列データベース12に記憶されている保守履歴データ12eを参照して、保守作業を行った日時を取得することができる。
保守作業項目評価部32は、始点変化検知部31から健康状態を示す始点の変化量と、当該変化量が所定値以上かどうかを示す検知結果とを入力し、保守作業で行われた作業項目と、始点変化検知部31が検知した始点位置の変化量とを関連付けることで、作業項目の有効性を評価するものである。始点変化検知部31は、作業項目の有効性の評価結果を、保守作業項目評価結果記憶部33に蓄積する。
なお、保守作業項目評価部32は、時系列データベース12に記憶されている保守履歴データ12eを参照して、保守作業で行われた作業項目を取得することができる。
保守作業項目評価結果記憶部33は、保守作業項目評価部32が評価した作業項目の評価結果を蓄積するものである。保守作業項目評価結果記憶部33が蓄積する作業項目評価結果は、作業項目選択部34によって参照される。
保守作業項目選択部34は、第2始点データ記憶部134bから健康状態を示す始点の時系列データを入力するとともに、保守作業項目評価結果記憶部33に蓄積されている保守作業項目の有効性を示す評価結果を参照して、これから保守作業を行う場合に、現在の健康状態において有効な作業項目を選択するものである。
保守作業項目選択部34は、選択した作業項目を出力部15に出力する。
なお、本実施形態における始点変化検知部31、保守作業項目評価部32、保守作業項目評価結果記憶部33及び保守作業項目選択部34を、図17に示した第1実施形態に係るヘルスマネージメントシステム1に搭載し、保守作業時の作業項目選択に供するように構成してもよい。
また、本実施形態におけるRUL算出部14Aは、健康状態推定部24を介して、センサデータ抽出部21が抽出したセンサデータの時系列データを入力し、当該時系列センサデータの軌跡を分析することにより、RUL及び保守効果を算出し、更に保守時期を決定するものである。そのための詳細な構成は、第1実施形態におけるRUL予測部14と同様であるから、詳細な説明は省略する。
なお、RULの算出に際して、センサデータに代えて、又は加えて、第2始点データ記憶部134bに記憶されている健康状態を示す始点の時系列データを用いるようにしてもよい。
[健康状態の予測処理]
次に、図26を参照(適宜図3及び図25参照)して、本発明の第2実施形態に係るヘルスマネージメントシステム1Aによる健康状態(例えば、性能)の予測処理について説明する。
図26に示すように、ヘルスマネージメントシステム1Aは、健康状態予測部13Aによって、時系列データベース記憶部12に蓄積されている正常な状態を示す過去データを用いて、設備状態分布及び健康状態分布を算出する(ステップS31)。この処理は、図24に示したステップS21からステップS23までの処理に相当する。なお、類似度の算出(ステップS24)は行わなくともよい。
次に、ヘルスマネージメントシステム1Aは、時系列データ取得部11によって、機械設備から観測データを取得する(ステップS32)。
次に、ヘルスマネージメントシステム1Aは、健康状態予測部13Aの第1識別部133a及び第2識別部133bによって、ステップS32で取得した観測データについて、残差ベクトル(又は、LSC法以外の手法による正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトル)を算出する(ステップS33)。また、第1識別部133a及び第2識別部133bで算出される残差ベクトルの始点データは、それぞれ第1始点データ記憶部134a及び第2始点データ記憶部134bに、始点の時系列データとして記憶される。
ここで、第1識別部133aは、観測データにおけるほぼ全てのセンサデータを対象として残差ベクトルを算出する。また、第2識別部133bは、観測データにおいて、健康状態として評価しようとする具体的な性能や品質の変動に対する寄与が高い2以上のセンサデータを予め選択しておき、当該選択センサデータを対象として残差ベクトルを算出する。
なお、第1識別部133a及び第2識別部133bで用いられるセンサデータは、特徴変換部1331(図18参照)で変換された独立成分やトレンド抽出部1332(図18参照)で抽出されたトレンド成分などであってもよい。
次に、ヘルスマネージメントシステム1Aは、出力部15によって、第1始点データ記憶部134b又は/及び第2始点データ記憶部134bに記憶されている始点の時系列データを、その挙動である変化の推移が分かるように(例えば、図20参照)表示する(ステップS34)。このとき、各始点位置に、当該始点に対応する観測データの取得時刻を表示したり、取得時刻に応じて濃淡表示や色分け表示をしたりして、時系列で変換の推移が分かるようにすることが好ましい。
また、ヘルスマネージメントシステム1Aは、始点変化検知部31によって、保守作業を行った前後の期間を通して、始点位置の変化量を算出するとともに、その変化量が所定値以上かどうかを検知する。更にまた、ヘルスマネージメントシステム1A、保守作業項目評価部32によって、保守作業で行われた作業項目と、始点変化検知部31が検知した始点位置の変化量とを関連付けることで、作業項目の有効性を評価する。そして、ヘルスマネージメントシステム1Aは、始点変化検知部31によって、作業項目の有効性の評価結果を、保守作業項目評価結果記憶部33に蓄積する。
また、ヘルスマネージメントシステム1Aは、保守作業を行おうとする際に、保守作業項目選択部34によって、現在の健康状態と、保守作業項目評価結果記憶部33に蓄積されている作業の作業項目ごとの評価結果とを参照して、健康状態の回復に有効な作業項目を選択する。そして、ヘルスマネージメントシステム1Aは、出力15によって、選択された作業項目を表示する。
次に、ヘルスマネージメントシステム1Aは、始点変化検知部31により始点位置の変化量が所定値以上の場合は、センサデータ抽出部21によって、第1始点データ記憶部134b又は/及び第2始点データ記憶部134bに記憶されている始点の時系列データと、時系列データベース記憶部12に記憶されている時系列センサデータとを対比分析して、始点の挙動を支配するセンサデータを特定する(ステップS35)。
次に、ヘルスマネージメントシステム1Aは、トレンド成分抽出部22によって、ステップS35で特定したセンサデータの時系列データを分析することで、変化のトレンド成分を抽出する(ステップS36)。
次に、ヘルスマネージメントシステム1Aは、健康状態推定部24によって、ステップS36で抽出したトレンド成分を用いて、将来の健康状態を予測する(ステップS37)。
また、ヘルスマネージメントシステム1Aは、異常予兆検知部25によって、ステップS33で算出され、第1始点データ記憶部134aに蓄積されている設備状態を示す始点の時系列データを分析して、異常予兆を検知する。そして、ヘルスマネージメントシステム1Aは、出力部15によって、異常予兆の検知結果を表示する。
<変形例>
[ヘルスマネージメントシステムの構成]
次に、図27を参照(適宜図3及び図17参照)して、本発明の第1実施形態の変形例に係るヘルスマネージメントシステム1Bの構成について説明する。
図27に示すように、本変形例に係るヘルスマネージメントシステム1Bは、図17に示したヘルスマネージメントシステム1に対して、運転モード判定部17と、監視データ選択部18とを、更に備えることが異なる。他の構成は、ヘルスマネージメントシステム1と同様であるが、図27では、追加された運転モード判定部17及び監視データ選択部18と関連する構成を記載し、他の構成は記載を省略している。
本変形例におけるヘルスマネージメントシステム1Bは、監視対象である機械設備の運転モードに応じて、出力部15に表示する時系列データとして、設備状態を示す時系列データと健康状態を示す時系列データとを切り替えるものである。これによって、機械設備の挙動をより適切に監視することができる。
運転モード判定部17は、監視対象である機械設備の運転モードを判定するものである。運転モード判定部17は、判定した運転モードを示す情報を、監視データ選択部18に出力する。
ここで、運転モードの判定は、例えば、時系列データ取得部11によって取得される環境データとして含まれるイベントデータ12b(図4参照)して判定することができる。また、時系列センサデータ12aの挙動を分析することで運転モードを判定することもできる。
監視データ選択部18は、運転モード判定部17から機械設備の運転モードを示す情報を入力し、当該情報が示す運転モードに応じて、第1始点データ記憶部134aに蓄積され、設備状態を示す始点の時系列データと、健康状態記憶部139に蓄積され、健康状態(性能・品質)の推定値の時系列データとを、選択的に出力部15に出力するものである。
なお、出力部15は、監視データ選択部18から入力した時系列データを、例えば、図20や図22に示したように、始点データの軌跡や健康状態の推移が視認しやすいように表示する。
なお、図27に示した例は、第1実施形態の変形例であるが、第2実施形態に係るヘルスマネージメントシステム1Aに対しても適用することができる。
鉱山機械であるショベルの例について説明すると、表示する時系列データとして設備状態と健康状態である性能とを組み合わせることで、より効果を発揮するものである。以下に示すように、機械設備の運転のモード(パターン)によって、機械設備の状態監視と性能監視とを使い分ける例である。
(1)暖機運転時には状態監視
(2)通常走行時には性能監視
(設定されている変速機情報とエンジン回転数と速度)
(3)通常走行時に時々設定される一時停止には状態監視
(暖機運転終了後の通常運転におけるアクセルペダル全閉)
ここでは、ショベルの運転モードである「暖機運転」、「通常走行」、「一時停止」によって、状態監視と性能監視と選択するようにしている。暖機運転時には回転数のばらつき監視などに比重を置いて「状態監視」を行い、通常走行時には、速機情報とエンジン回転数と速度などの関係に比重を置いて、「性能監視」を行う。これらの使い分けにより、機械設備を目的別、モード別に効果的にモニタするものである。
以上、本発明のヘルスマネージメントシステムについて、実施形態及びその変形例を説明した。これらの実施形態等により、設備状態の変化や健康状態の変化を、視覚的に表現することができる。そのため、システムを運用して機械設備を監視する操作者は、その変化の仕方を、変化が加速しているのか、減速しているのかといった時間間隔を加味して観察することで、緊急性を要するかどうかを判断することを補助することができるものである。従って、あとどれくらい持ちこたえることができそうかと言ったRULを推定でき、時間計画保全で決まっている、なかば固定化されている時期を、機械設備にとって、より適切な時期に、この稼働継続可能時間に基づいて前後調整することができるようになる。また、RULの推定は、操作者に視認される表示データを分析することにより、システムが自動的に行うようにすることもできる。しかも、これらの時期は事前に推定できるものであり、保守作業のための部品の準備、作業者の確保、治具の準備など、スケジューリングも容易にするものである。更に、機械設備の運転中に行われる監視によって、健康状態を把握することができるため、保守作業時の作業項目を事前に取捨選択でき、時間計画保全で決まっている作業時間を短縮することができる。その結果、機械設備のダウンタイムを削減することができる。
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1,1A,1B ヘルスマネージメントシステム(異常診断システム)
11 時系列データ取得部
12 時系列データベース記憶部
12a センサデータ
12b イベントデータ(環境データ)
12c 稼働データ(環境データ)
12d 負荷データ(環境データ)
12e 保守履歴データ(環境データ)
13,13A 健康状態予測部
131 類似時系列データ選択部
133a 第1識別部(状態定量化部)
133b 第2識別部(状態定量化部)
1331 特徴変換部
1332 トレンド抽出部
1333 学習データ選択部
1334 識別器
134a 第1始点データ記憶部
134b 第2始点データ記憶部
135a 第1クラスタ生成部
135b 第2クラスタ生成部
136 類似度算出部
137 類似度データ記憶部
138 健康状態推定部
139 健康状態記憶部
14 RUL予測部(稼働継続可能時間推定部)
141 RUL算出部
142 保守効果算出部
143 保守時期決定部
15 出力部
16 異常予兆検知部
17 運転モード判定部
18 監視データ選択部
21 センサデータ抽出部
22 トレンド成分抽出部
23 状態予測部
24 健康状態推定部
25 健康状態記憶部
26 異常予兆検知部
31 始点変化検知部
32 保守作業項目評価部
33 保守作業項目評価結果記憶部
34 保守作業項目選択部
101 異常測度
102 閾値
103 限界時期
104 RUL
105a〜105d 機械設備
201 健康状態
202 閾値
203 限界時期
204 RUL
205 負荷率・稼働率
207,208 勾配
206 確率密度
209 回復効果(回復量)
210 アラーム
211 保守作業

Claims (13)

  1. 機械設備の健康状態を監視するヘルスマネージメントシステムであって、
    前記機械設備に設置された複数のセンサから取得したセンサデータ、又は前記センサデータ及び前記機械設備の設置環境を表す環境データを、時系列データとして取得する時系列データ取得部と、
    前記機械設備が正常な状態のときに取得した前記時系列データである正常データを学習データとして用いた統計的手法により前記機械設備の設備状態を定量化する設備状態定量化部と、
    前記正常データを学習データとして用いた統計的手法により前記機械設備の性能又は品質の状態を示す健康状態を定量化する健康状態定量化部と、
    前記時系列データ取得部が過去に取得した前記正常データについて前記設備状態定量化部が定量化した設備状態と、前記時系列データ取得部が過去に取得した前記正常データについて前記健康状態定量化部が定量化し、外部からレベルを教示された健康状態との間の関係性を示す類似度データを算出する類似度算出部と、
    前記時系列データ取得部が過去に取得した前記正常データを用いて前記設備状態定量化部が定量化した設備状態において正常状態を示すデータから、前記時系列データ取得部がある時刻に取得した前記時系列データである観測データに向かう多次元ベクトルによって示される設備状態と、前記類似度データとを用いて、前記観測データに対応する健康状態を推定する健康状態推定部と、
    を備えることを特徴とするヘルスマネージメントシステム。
  2. 前記健康状態推定部は、前記多次元ベクトルの始点によって示される設備状態と、前記類似度データとを用いて、前記観測データに対応する健康状態を推定することを特徴とする請求項1に記載のヘルスマネージメントシステム。
  3. 前記時系列データに前記環境データが含まれない場合においては、
    前記設備状態定量化部が扱うセンサデータと、前記健康状態定量化部が扱うセンサデータとは、前記複数のセンサについてのセンサデータの中からセンサデータがそれぞれ選択され、
    前記時系列データに前記環境データが含まれる場合においては、
    前記設備状態定量化部が扱うセンサデータ及び環境データと、前記健康状態定量化部が扱うセンサデータ及び環境データとは、
    前記複数のセンサについてのセンサデータ及び前記環境データの中からセンサデータ及び環境データがそれぞれ選択されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘルスマネージメントシステム。
  4. 前記定量化した設備状態及び前記定量化した健康状態を、表示又は/及び外部に出力する出力部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  5. 前記時系列データに前記環境データが含まれる場合において、
    前記環境データは、前記機械設備の運転状態を示すイベントデータ、前記機械設備の稼働時間を示す稼働データ、前記機械設備の負荷状態を示す負荷データ及び前記機械設備の保守作業の履歴を示す保守履歴データの内の、少なくとも1種のデータを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  6. 前記機械設備の設備状態又は健康状態から、前記機械設備に関して、前記機械設備が稼働可能な時間を示す稼働継続可能時間を推定する稼働継続可能時間推定部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  7. 前記設備状態定量化部及び前記健康状態定量化部は、それぞれ前記機械設備に設置された前記複数のセンサから取得したセンサデータを学習データとした統計的手法により、前記機械設備が正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出し、それぞれが算出した多次元ベクトルを、それぞれ前記機械設備の設備状態の定量化及び健康状態の定量化に用いることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか一項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  8. 前記多次元ベクトルを算出する統計的手法は、ガウシアンプロセス若しくは他の回帰手法、又はk−NN(k-Nearest Neighbor)法、局所部分空間法若しくは他の認識手法であることを特徴とする請求項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  9. 前記稼働継続可能時間推定部は、前記機械設備の保守作業が行われたタイミングに同期して、前記稼働継続可能時間の推定を行うことを特徴とする請求項又は請求項を引用する請求項若しくは請求項の何れか一項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  10. 前記稼働継続可能時間を用いて、前記機械設備の次期の保守作業時期を決定する保守作業時期決定部を更に備えることを特徴とする請求項、請求項を引用する請求項若しくは請求項又は請求項の何れか一項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  11. 前記多次元ベクトルを用いて、前記機械設備に保守作業を実施したことによる効果として前記健康状態の回復量、又は/及び前記機械設備に保守作業を行うことにより見込まれる前記健康状態の回復量を算出する保守効果算出部を更に備えることを特徴とする請求項7又は請求項7を引用する請求項乃至請求項10の何れか一項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  12. 前記稼働継続可能時間推定部は、前記多次元ベクトルを用いて、前記稼働継続可能時間を推定することを特徴とする請求項7を引用する請求項又は請求項7及び請求項を引用する請求項10若しくは請求項11の何れか一項に記載のヘルスマネージメントシステム。
  13. 機械設備の健康状態を監視する装置によるヘルスマネージメント方法であって、
    前記機械設備に設置された複数のセンサから取得したセンサデータ、又は前記センサデータ及び前記機械設備の設置環境を表す環境データを、時系列データとして取得する時系列データ取得ステップと、
    前記機械設備が正常な状態のときに取得した前記時系列データである正常データを学習データとして用いた統計的手法により前記機械設備の設備状態を定量化する設備状態定量化ステップと、
    前記正常データを学習データとして用いた統計的手法により前記機械設備の性能又は品質の状態を示す健康状態を定量化する健康状態定量化ステップと、
    前記時系列データ取得ステップで過去に取得した前記正常データについて前記設備状態定量化ステップで定量化した設備状態と、前記時系列データ取得ステップで過去に取得した前記正常データについて前記健康状態定量化ステップで定量化し、外部からレベルを教示された健康状態との間の関係性を示す類似度データを算出する類似度算出ステップと、
    前記時系列データ取得ステップで過去に取得した前記正常データを用いて前記設備状態定量化ステップで定量化した設備状態において正常状態を示すデータから、前記時系列データ取得ステップである時刻に取得した前記時系列データである観測データに向かう多次元ベクトルによって示される設備状態と、前記類似度データとを用いて、前記観測データに対応する健康状態を推定する健康状態推定ステップと、
    を含むことを特徴とするヘルスマネージメント方法。
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