以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
本実施形態に係る車内警報装置は、車両乗員に音による警報を出力する場合に好適に採用されるものである。
最初に、本実施形態に係る車内警報装置を備える車両の構成について説明する。図1は、実施形態に係る車内警報装置を備える車両の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る車内警報装置1を備える車両3は、ECU(Electronic Control Unit)10及びスピーカ15を備えている。ECUは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random AccessMemory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。また、ECU10は、増音部(音環境制御手段)11及び警報提供部(警報出力手段)14を備えている。
警報提供部14は、車内に備わるスピーカ15に接続されており、車内へ警報音を出力する機能を有している。警報提供部14は、例えば、走行状態、走行環境、ドライバ状態等に基づいて警報する事象が発生しているか否かを判定する機能を有している。あるいは、警報の必要性の有無を判定する他システム(不図示)に接続され、他システムによる判定結果を取得する構成とされていてもよい。警報提供部14は、警報する事象が発生していると判定した場合には、予定警報タイミングt1を増音部11へ出力する機能を有している。また、警報提供部14は、後述する増音部11により車内の音環境が制御された後に警報を出力する機能を有している。
増音部11は、車内に備わるスピーカ15に接続されており、乗員への警報前の所定期間(ノイズ発生期間)、走行時の車内音に雑音(ノイズ)を重畳させる機能を有している。車内音は走行時に車内に入力される音や、車内で発生する音を含むものである。増音部11は、例えば、警報提供部14が出力した予定警報タイミングに基づいて、予定警報タイミングt1の所定時間前の時刻t2にノイズ発生期間が終了するようにノイズを重畳させる機能を有している。ノイズとして、例えば、走行音や、走行音を擬似した擬似走行音、周囲音を擬似した擬似周囲音が用いられる。走行音は、車両の走行時に検出される音であって、例えば、車両3が発する音(エンジン音、排気マフラー音、ロードノイズ、雨音、水はね音、風切音、エアコンやオーディオ等の車載機器音、エアコンの風音)が含まれる。周囲音は、例えば、周辺環境の音(踏切音、波音、電車や飛行機等の騒音、周辺車両の走行音等)が含まれる。
増音部11は、例えば、ECU10が備えるメモリに予め記録された所定の擬似音を参照してノイズを出力する機能を有している。あるいは、増音部11は、集音マイクにより車内音を集音し、車内音を擬似して生成された擬似音をノイズとしてもよい。あるいは、増音部11は、車両のアクチュエータに接続されており、車両の窓の開動作(指などが挟まれない程度)によって、車外音を車内に入力させてノイズとしてもよいし、オーディオやエアコンを実際に動作させて車載機器音やエアコンの風音をノイズとしてもよい。
増音部11は、例えば、ノイズ制御ゲインを用いてノイズの増音・減音を制御可能に構成されている。例えば、ノイズ制御ゲインを大きくするとノイズが増音され、反対にノイズ制御ゲインを小さくするとノイズが減音される。例えば、ノイズとして擬似走行音を出力する場合には、ノイズ制御ゲインによってスピーカから出力されるノイズの音圧レベルが制御される。また、ノイズとして窓から入力させた走行音を用いる場合には、ノイズ制御ゲインによって窓の開閉度合いが制御されて、入力させる走行音の音圧レベルが制御される。また、ノイズとして車載機器音やエアコンの風音を用いる場合には、ノイズ制御ゲインによって機器の動作が制御されて、車載機器音やエアコンの風音の音圧レベルが制御される。
また、増音部11は、車両3に複数のスピーカ15が備わる場合には、ノイズの出力先のスピーカ15を警報内容に応じて変更する機能を有してもよい。また、増音部11は、車両の窓の開閉動作によってノイズの入出力を制御する場合には、前後左右の窓のうちどの窓からノイズを入力させるかを警報内容に応じて決定する機能を有してもよい。例えば、増音部11は、危険のある方向の窓を開けてノイズを入力させる機能を有していてもよい。同様に、増音部11は、エアコンの送風音によってノイズを発生させる場合には、前後左右のエアコンの送風口のうち、何れの送風口から送風させるかを警報内容に応じて決定する機能を有してもよい。例えば、増音部11は、危険のある方向の送風口から送風させる機能を有していてもよい。さらに、例えば、増音部11は、車両内の故障を警報する場合にはエアコンを用いてノイズを発生させるとともに、車外に警報の要因がある場合には窓の開閉制御を実行して車外からノイズを入力させる機能を有してもよい。
上述した増音部11、警報提供部14及びスピーカ15を備えて車内警報装置1が構成される。
次に、本実施形態に係る車内警報装置1の動作について説明する。図2は、本実施形態に係る車内警報装置1の動作を示すフローチャートである。図2に示す制御処理は、例えばイグニッションONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
最初に、車内警報装置1は、警報判定処理から処理を開始する(S10)。S10の処理は、警報提供部14が実行し、乗員に対して警報すべき事象が発生しているか否かを判定する処理である。警報提供部14は、例えば、車両状態を監視するシステム、車両3の周囲を監視するシステム、又は居眠り運転を監視するシステムと協調して、乗員に対して警報すべき事象が発生しているか否かを判定する。S10の処理において、警報すべき事象が発生していないと判定した場合には、図2に示す制御処理を終了する。一方、S10の処理において、警報すべき事象が発生していると判定した場合には、警報提供部14は、警報タイミングt1を算出して増音部11へ出力するとともに、増音制御処理へ移行する(S12)。
S12の処理は、増音部11が実行し、車内へ出力するノイズを増音させる処理である。増音部11は、例えば、ノイズの増音・減音を制御するためのノイズ制御ゲインを大きく設定する。これにより車内音にノイズが重畳される。例えば、増音部11は、音源を変更したり、追加したりして特定の周波数帯のノイズを重畳する。この処理について、図3を用いて詳細に説明する。図3(a)、(b)は、音レベルの時間依存性を示すグラフである。図3(b)は、ノイズを重畳させた場合における車内の音レベルの時間依存性を示すグラフであり、図3(a)は、ノイズを重畳しない場合における車内の音レベルの時間依存性を示すグラフであって、ノイズを重畳させた場合との対比のために示している。図3(a)、(b)に示すように、車内には車内音P2が定常的に出力されているものとする。図3(b)に示すように、警報タイミングt1で警報音P1を出力する場合には、警報タイミングt1から所定時間前の時刻t2にノイズN1の出力が終了するように、ノイズ発生期間T2を設定する。そして、増音部11は、設定したノイズ発生期間T2において、ノイズN1の音レベルを除々に大きく制御する。すなわち、増音部11は、ノイズ発生期間T2において、車内音P2に音レベルを除々に大きくしたノイズN1を重畳させる。S12の処理が終了すると、減音制御処理へ移行する(S14)。
S14の処理は、増音部11が実行し、車内へ出力するノイズを減音させる処理である。増音部11は、例えば、ノイズの増音・減音を制御するためのノイズ制御ゲインを小さく設定する。これにより、S12の処理で車内への車内音P2に重畳されたノイズN1が減音される。例えば、図3(b)に示すように、ノイズ発生期間T2の後であって警報タイミングt1より前の期間T3ではノイズN1の出力が終了し、車内では車内音P2のみが出力された状態となる。S14の処理が終了すると、警報処理へ移行する(S16)。
S16の処理は、警報提供部14が実行し、車内へ警報音P1を出力する処理である。警報提供部14は、例えば図3(b)に示すように、期間T3経過後の警報タイミングt1で警報音P1を出力する。そして、警報提供部14は、例えば音圧感度の高い周波数帯の警報音P1を出力する。例えば、図4のMで示すように、フレッチャー&マンソンの等ラウドネス曲線等から導くことができる2〜3kHzの警報音P1を出力する。警報提供部14は、例えば音源を変更したり、追加したりすることにより周波数を変更する。S16の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
以上で図2に示す制御処理を終了する。図2に示す制御処理を実行することにより、警報音P1の警報タイミングt1前に、車内音P2にノイズN1が重畳され、その後ノイズN1が減音される。図3(b)に示すように、ノイズ発生期間T2において一旦増音することにより、続く期間T3において減音した際に、音の変化(音圧レベルの差H2)を乗員に感じさせることができる。このため、期間T3において強い静寂感を乗員に与えることができる。このように、音の変化を警報直前に設けることで、図3(a)に示す場合に比べて、乗員が擬似的に静寂感を感じるため、警報音を聞き取りやすくすることができる。また、音の変化を警報直前に設けることで、ノイズN1により乗員に注意を促し、さらにノイズN1が減音されることにより奏する静寂感で乗員に注意を促すことができる。このため、乗員に対して、事前に何らかの警報があることを間接的に気づかせることができるとともに、警報音を聞く準備をさせることが可能となる。このため、乗員に警報を理解させ易くすることができるとともに、聞き漏らしを防ぐことが可能となる。また、図3(a)に示すように、定常的な音が連続すると、定常的な音環境に耳が慣れてしまい、聴覚感度(音変化を感じる感度や音変化へ対応する感度)が低下するため、車内音P2と警報音P1との音圧レベルの差H1では警報音P1を聞き取ることが困難な場合がある。また、車内音P2に警報音P1が埋もれてしまい、警報音P1を聞き取ることが困難な場合がある。これに対して、図3(b)に示すように、警報前に定常的な音が連続することを防止することにより、聴覚感度の低下を回避して、車内音P2と警報音P1との音圧レベルの差H1を聞き取りやすくすることができる。よって、警報音P1の音量を大きくすることなく乗員へ報知することが可能となる。
また、図2に示す制御処理において、ECUのメモリに予め記録された走行音等の音をノイズN1として採用したり、窓の開閉制御によってノイズN1を増加させたり、エアコンや車載機器の動作音によってノイズN1を増加させたりすることにより、乗員にとって特異で不自然な音とならないため、乗員に煩わしさを感じさせることを回避できるとともに、乗員が警報へ不信感を抱くことを回避できる。また、新たに警報音の種類が増えないため、警報音の種類の多さによって乗員が即座に何を警報しているのか理解できずに即座に適切な対処ができないような事態や、警報音に対する注意の感度が低下する事態を回避することができる。
また、ECUのメモリに予め記録された走行音等の音をノイズN1として採用したり、窓の開閉制御によってノイズN1を増加させたりすることで、乗員が直感的に意味を理解することができ、乗員の注意や対処行動を適切に誘導することが可能となる。例えば、車両の周囲音を用いることで他車両の接近や存在を報知することができる。さらに、窓の開閉制御によってノイズN1を増加させる場合には、注意を向けさせたい方向にあわせて窓の開閉を制御することにより、乗員に対して注意を向けなければならない方向を報知することができる。例えば、左の後ろ方向から他車両が接近している場合には、後部座席の左窓を制御することにより、他車両の接近を直感的かつ迅速に理解させることができる。
また、エアコンや車載機器の動作音によってノイズN1を増加させることにより、乗員が直感的に意味を理解することができ、乗員の注意や対処行動を適切に誘導することが可能となる。例えば、車内の機器が動作することで、車両不具合や整備等に対する警告であることを直感的、潜在的に知らせることができる。さらに、注意を向けさせたい方向にあわせて送風の噴出し位置を制御することにより、乗員に対して注意を向けなければならない方向を報知することができる。例えば、左後タイヤの空気圧が低下している場合には、後部座席の左窓を制御することにより、左後方の車両整備の必要性を直感的かつ迅速に理解させることができる。
さらに、図2に示す制御処理を実行することにより、従来のように警報音が聞こえ易くするために静寂した音場を継続的に提供する必要が無いので、走行中の異音や緊急車両のサイレン等、周囲へ注意を払うべき音情報を全て減音することを回避することができる。
以上、第1実施形態に係る車内警報装置1によれば、増音部11により、走行時に車内へ入力される入力にノイズN1が重畳されるとともに、警報提供部14により警報音P1を出力する前に重畳したノイズN1が減音される。このように、ノイズN1が警報前に一度増音されたのち減音されるので、警報前に乗員に対して音の変化を顕著に感じさせることができる。このため、定常的な音に慣れることで低下した聴覚感度を向上させることが可能となるとともに、警報前に乗員に対して減音時の静寂感を効果的に与えることができる。このように、警報前に音環境を制御することにより、乗員にとって聞き取りやすい警報を出力することが可能となる。
また、第1実施形態に係る車内警報装置1によれば、音環境制御手段は、ノイズN1として走行音や周囲音を擬似して生成された擬似音を用いることができるので、乗員にわずらわしさを感じさせたり、違和感を与えたりすることなく、車内の音環境を制御することが可能となる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る車内警報装置1は、第1実施形態に係る車内警報装置1とほぼ同様に構成されるものであって、第1実施形態に係る車内警報装置1と比べて、制御音を出力して車内音を減音するノイズキャンセラ機能を有する点が相違する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
最初に、本実施形態に係る車内警報装置1の構成について図5を用いて説明する。図5は、第2実施形態に係る車内警報装置1を備える車両の構成概要を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態に係る車内警報装置1は、第1実施形態に係る車内警報装置1とほぼ同様に構成されており、第1実施形態に係る車内警報装置1と比較すると、増音部11に替えて減音部(音環境制御手段)13を備える点が相違する。
減音部13は、車内に備わるスピーカ15に接続されており、制御音を出力して車内音を減音するノイズキャンセラ機能を有している。例えば、車内音を検出するマイクの出力結果から車内音の特性を取得し、車内音が出力されると同時に車内音と逆位相となる制御音を車内へ出力することにより、車内音をキャンセルする機能を有している。
また、減音部13は、例えば、制御ゲインを用いて車内音のキャンセル量を制御可能に構成されている。例えば、制御ゲインを大きくすると車内音のキャンセル量が小さく制御されて、結果として車内音が増音される。反対に制御ゲインを小さくすると車内音のキャンセル量が大きく制御されて、結果として車内音が減音される。
第2実施形態に係る車内警報装置1のその他の構成は、第1実施形態に係る車内警報装置1の構成と同様である。
次に、本実施形態に係る車内警報装置1の動作について説明する。図6は、本実施形態に係る車内警報装置1の動作を示すフローチャートである。図6に示す制御処理は、例えばイグニッションONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
最初に、車内警報装置1は、車内音制御処理から開始する(S18)。S18の処理は、減音部13が実行し、車内音を減音する処理である。減音部13は、例えば、スピーカ15から車内音の逆位相となる制御音を出力して車内音を打ち消すことにより、車内の音環境を整備する(ノイズキャンセル制御ON状態)。例えば、車内音P2が出力されていたとすると、S18の処理によって車内音は車内音P3(P3<P2)へ減音される。S18の処理が終了すると、警報判定処理へ移行する(S20)。
S20の処理は、図2のS10の処理と同様であり、乗員に対して警報すべき事象が発生しているか否かを判定する処理である。S20の処理において、警報すべき事象が発生していないと判定した場合には、図6に示す制御処理を終了する。一方、S20の処理において、警報すべき事象が発生していると判定した場合には、警報提供部14は、警報タイミングt1を算出して増音部11へ出力するとともに、増音制御処理へ移行する(S22)。
S22の処理は、減音部13が実行し、車内音を増音させる処理である。減音部13は、例えば、車内音を制御するための制御ゲインを大きく設定する。これにより車内音のキャンセル量が減少されて、結果として車内音が増音される。この処理について、図8(a)、(b)を用いて詳細に説明する。図8(a)、(b)は、音レベルの時間依存性を示すグラフである。図8(b)は、一時的にノイズキャンセルを中止した場合における車内の音レベルの時間依存性を示すグラフであり、図8(a)は、ノイズキャンセルを継続した場合における車内の音レベルの時間依存性を示すグラフであって、一時的にノイズキャンセルを中止した場合との対比のために示している。図8(a)、(b)に示すように、車内には車内音P2が定常的に出力され、S18の処理によって車内音P3へ減音されている。図8(b)に示すように、警報タイミングt1で警報音P1を出力する場合には、警報タイミングt1から所定時間前の時刻t2にノイズキャンセルを再度実行するように、ノイズ発生期間T2を設定する。そして、増音部11は、設定したノイズ発生期間T2において、車内への走行音の音レベルを除々に大きく制御する。すなわち、増音部11は、ノイズ発生期間T2において、減音制御を弱めて車内音P2へ近づくように音レベルを除々に大きくする。S22の処理が終了すると、減音制御処理へ移行する(S24)。
S24の処理は、減音部13が実行し、車内音を減音させる処理である。減音部13は、例えば、車内音を制御するためのノイズ制御ゲインを小さく設定する。これにより、これにより、再度ノイズキャンセル制御がON状態となり、車内音のキャンセル量が増加されて、結果として車内音が減少される。例えば、図8(b)に示すように、ノイズ発生期間T2の後であって警報タイミングt1より前の期間T3ではノイズキャンセル制御が実行され、車内では車内音P3のみが出力された状態となる。S24の処理が終了すると、警報処理へ移行する(S26)。
S26の処理は、警報提供部14が実行し、車内へ警報音P1を出力する処理である。警報提供部14は、例えば図8(b)に示すように、期間T3経過後の警報タイミングt1で警報音P1を出力する。この処理は、図2のS16の処理と同様である。S26の処理が終了すると、図6に示す制御処理を終了する。
以上で図6に示す制御処理を終了する。図6に示す制御処理を実行することにより、ノイズキャンセル制御をON状態として車内音P2が車内音P3へ減音され、警報音P1の警報タイミングt1前に、ノイズキャンセル制御をOFF状態として、車内音P3が車内音P2へ増音され、その後ノイズキャンセル制御をON状態として、車内音P2が車内音P3へ減音される。ノイズ発生期間T2において一旦増音することにより、続く期間T3において減音した際に、音の変化(音圧レベルの差H4)を乗員に感じさせることができる。このため、期間T3において強い静寂感を乗員に与えることができる。このように、音の変化を警報直前に設けることで、図8(a)に示す場合に比べて、乗員が擬似的に静寂感を感じるため、警報音を聞き取りやすくすることができる。また、音の変化を警報直前に設けることで、増音により乗員に注意を促し、さらに車内音P2が減音されることにより奏する静寂感で乗員に注意を促すことができる。このため、乗員に対して、事前に何らかの警報があることを間接的に気づかせることができるとともに、警報音を聞く準備をさせることが可能となる。このため、乗員に警報を理解させ易くすることができるとともに、聞き漏らしを防ぐことが可能となる。また、図8(a)に示すように、定常的な音が連続すると、定常的な音環境に耳が慣れてしまい、ノイズキャンセル制御ON状態による車内音P3と警報音P1との音圧レベルの差H3に乗員が驚いて適切な対応が困難な場合がある。これに対して、図8(b)に示すように、警報前に定常的な音が連続することを防止することにより、聴覚感度の低下を回避して、車内音P2と警報音P1との音圧レベルの差H3を自然に聞かせることができる。
また、一旦増音して減音することによって静寂感を奏することが可能となるので、従来のノイズキャンセル機能のように精度良くリアルタイムに減音する必要がないので、簡易な構成で減音制御を実現することが可能となる。
さらに、図6に示す制御処理を実行することにより、従来のように警報音が聞こえ易くするために静寂した音場を継続的に提供する必要が無いので、走行中の異音や緊急車両のサイレン等、周囲へ注意を払うべき音情報を全て減音することを回避することができる。
以上、第2実施形態に係る車内警報装置1によれば、減音部13により、車内音P2が制御音によって減音されるとともに、警報提供部14により警報を出力する前に、制御音の出力が中止され、その後制御音が再度出力される。このため、車内音P3が警報前に一度増音されたのち減音されるので、警報前に乗員に対して音の変化を顕著に感じさせることができる。このため、定常的な音に慣れることで低下した聴覚感度を向上させることが可能となるとともに、警報前に乗員に対して減音時の静寂感を効果的に与えることができる。このように、警報前に音環境を制御することにより、乗員にとって聞き取りやすい警報を出力することが可能となる。さらに、雑音を発生する音源が不要となるため、一層簡易な制御及び構成で乗員にとって聞き取りやすい警報を出力することが可能となる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る車内警報装置1は、第1、2実施形態に係る車内警報装置1とほぼ同様に構成されるものであって、第1、2実施形態に係る車内警報装置1と比べて、増音部11及び減音部13の両方を備える点が相違する。なお、第3実施形態においては、第1、2実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
最初に、本実施形態に係る車内警報装置1の構成について図7を用いて説明する。図7は、第3実施形態に係る車内警報装置1を備える車両の構成概要を示すブロック図である。図7に示すように、本実施形態に係る車内警報装置1は、第1、2実施形態に係る車内警報装置1とほぼ同様に構成されており、第1、2実施形態に係る車内警報装置1と比べて、増音部(音環境制御手段)11及び減音部(音環境制御手段)13を備える点が相違する。増音部11及び減音部13の構成は、第1、2実施形態に係る車内警報装置1が備えるものと同様である。
次に、本実施形態に係る車内警報装置1の動作について説明する。第3実施形態に係る車内警報装置1は、第1実施形態に係る車内警報装置1とほぼ同様の動作をするため、図2に示す制御処理のうち異なる点を中心に説明する。
第3実施形態に係る車内警報装置1は、図2のS14の処理において、増音部11がノイズN1の出力を中止するとともに、減音部13が車内音を減音するように制御音を出力する。これにより、例えば、図8(c)に示すように、ノイズ発生期間T2の後であって警報タイミングt1より前の期間T3では、ノイズN1の出力が終了されるとともにノイズキャンセル制御が実行され、車内では車内音P3のみが出力された状態となる。このように、ノイズ発生期間T2においてノイズN1により一旦増音することにより、続く期間T3において減音した際に、音の変化(音圧レベルの差H5)を乗員に強く感じさせることができる。このため、図8(c)に示すように、音の変化を警報直前に設けることで、図8(a)、(b)に示す場合に比べて、乗員が擬似的に静寂感を感じるため、警報音を聞き取りやすくすることができる。また、音の変化を警報直前に設けることで、ノイズN1により乗員に注意を促し、さらにノイズN1及び車内音P2が減音されることにより奏する静寂感で乗員に注意を促すことができる。このため、乗員に対して、事前に何らかの警報があることを間接的に気づかせることができるとともに、警報音を聞く準備をさせることが可能となる。このため、乗員に警報を理解させ易くすることができるとともに、聞き漏らしを防ぐことが可能となる。また、図3(a)や図8(a)に示すように、定常的な音が連続すると、定常的な音環境に耳が慣れてしまい、音圧レベルの差が小さくて聞き漏らしたり、逆に強すぎて驚いたりする場合がある。これに対して、図8(c)に示すように、警報前に定常的な音が連続することを防止することにより、聴覚感度の低下を回避して、警報音P1を自然に聞かせることができる。
また、ECUのメモリに予め記録された走行音等の音をノイズN1として採用したり、窓の開閉制御によってノイズN1を増加させたり、エアコンや車載機器の動作音によってノイズN1を増加させたりすることにより、乗員にとって特異で不自然な音とならないため、乗員に煩わしさを感じさせることを回避できるとともに、乗員が警報へ不信感を抱くことを回避できる。また、新たに警報音の種類が増えないため、警報音の種類の多さによって乗員が即座に何を警報しているのか理解できずに即座に適切な対処ができないような事態や、警報音に対する注意の感度が低下する事態を回避することができる。
また、ECUのメモリに予め記録された走行音等の音をノイズN1として採用したり、窓の開閉制御によってノイズN1を増加させたりすることで、乗員が直感的に意味を理解することができ、乗員の注意や対処行動を適切に誘導することが可能となる。例えば、車両の周囲音を用いることで他車両の接近や存在を報知することができる。さらに、窓の開閉制御によってノイズN1を増加させる場合には、注意を向けさせたい方向にあわせて窓の開閉を制御することにより、乗員に対して注意を向けなければならない方向を報知することができる。例えば、左の後ろ方向から他車両が接近している場合には、後部座席の左窓を制御することにより、他車両の接近を直感的かつ迅速に理解させることができる。
また、エアコンや車載機器の動作音によってノイズN1を増加させることにより、乗員が直感的に意味を理解することができ、乗員の注意や対処行動を適切に誘導することが可能となる。例えば、車内の機器が動作することで、車両不具合や整備等に対する警告であることを直感的、潜在的に知らせることができる。さらに、注意を向けさせたい方向にあわせて送風の噴出し位置を制御することにより、乗員に対して注意を向けなければならない方向を報知することができる。例えば、左後タイヤの空気圧が低下している場合には、後部座席の左窓を制御することにより、左後方の車両整備の必要性を直感的かつ迅速に理解させることができる。
さらに、従来のように警報音が聞こえ易くするために静寂した音場を継続的に提供する必要が無いので、走行中の異音や緊急車両のサイレン等、周囲へ注意を払うべき音情報を全て減音することを回避することができる。
以上、第3実施形態に係る車内警報装置1によれば、増音部11によるノイズN1の出力が終了するタイミングで、減音部13により車内音P2を減音するための制御音が出力される。このため、ノイズN1により警報前に一度増音された後、車内音P2とともに減音される。このため、警報前に乗員に対して音の変化を一層顕著に感じさせることができるので、消音時の静寂感が一層効果的に与えることが可能となる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係る車内警報装置1は、第3実施形態に係る車内警報装置1とほぼ同様に構成されるものであって、第3実施形態に係る車内警報装置1と比べて、走行状態や走行環境等に応じて車内音が記録されたデータベース、及び、補正用の車内マイクを備える点が相違する。なお、第4実施形態においては、第1〜3実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
最初に、本実施形態に係る車内警報装置1の構成について図9を用いて説明する。図9は、第4実施形態に係る車内警報装置1を備える車両の構成概要を示すブロック図である。図9に示すように、本実施形態に係る車内警報装置1は、第3実施形態に係る車内警報装置1とほぼ同様に構成されており、第3実施形態に係る車内警報装置1と比べて、集音マイク20及び騒音マップDB(記録部)12を備える点が相違する。
集音マイク20は、車内の車内音を取得する機能を有している。また、集音マイク20は、増音部11及び減音部13に接続されており、取得した車内音を増音部11及び減音部13へ出力する機能を有している。
騒音マップDB12は、走行状態や周囲環境に応じた車内音、周囲音が記録されたデータベースである。例えば、自車両の速度、エンジン回転数、走行路、トンネル、天気等により区別されて、走行音の音圧の周波数依存性等が記録されている。走行音として、例えば、エンジン音、排気マフラー音、ロードノイズ、雨音、水はね音等が用いられる。また、自車両の走行位置、時間帯、周囲環境、周囲車両の交通量、路面状況、渋滞状況、防音壁の状態等により区別されて、周囲音の音圧の周波数依存性等が記録されている。周囲音として、例えば、踏切音、波音、電車、飛行機騒音、周囲車両の走行音等が用いられる。なお、騒音マップDB12は、格納している走行音又は周囲音を、走行の度に学習する学習部(不図示)に接続されていても良い。例えば、学習部により、普段良く利用する道(通勤路等)については、走行音や周囲音のデータの正確性が向上される。
増音部11は、例えば車両3に備わるセンサやナビゲーションシステムと接続されており、車両の走行状態や周囲環境を取得可能に構成されている。そして、増音部11は、取得した車両状態や走行環境に基づいて騒音マップDB12を参照し、自車両の車両状態や走行環境に最も近い騒音マップを選択し、選択した騒音マップに基づいてノイズ(擬似音)を出力可能に構成されている。また、増音部11は、集音マイク20から出力された車内音の特性(音圧又は周波数)と、騒音マップDB12を参照して出力するノイズの特性とを比較して、車内音により近くなるようにノイズの特性を補正する機能を有していてもよい。
減音部13は、例えば車両3に備わるセンサやナビゲーションシステムと接続されており、車両の走行状態や周囲環境を取得可能に構成されている。そして、減音部13は、取得した車両状態や走行環境に基づいて騒音マップDB12を参照し、自車両の車両状態や走行環境に最も近い騒音マップを選択し、選択した騒音マップに基づいて、車両内の車内音を打ち消すための制御音を出力する機能を有している。また、増音部11は、集音マイク20から出力された車内音と、騒音マップDB12を参照して出力する制御音とを比較して、車内音の逆位相の音により近くなるようにノイズの特性(音圧又は周波数)を補正する機能を有していてもよい。また、減音部13は、騒音マップの逆位相の音を予め算出して記録する機能を有している。
次に、本実施形態に係る車内警報装置1の動作について説明する。図10は、本実施形態に係る車内警報装置1の動作を示すフローチャートである。図10に示す制御処理は、例えばイグニッションONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。
最初に、車内警報装置1は、警報判定処理から開始する(S30)。S30の処理は、図2のS10の処理と同様であり、乗員に対して警報すべき事象が発生しているか否かを判定する処理である。S30の処理において、警報すべき事象が発生していないと判定した場合には、図10に示す制御処理を終了する。一方、S30の処理において、警報すべき事象が発生していると判定した場合には、警報提供部14は、警報タイミングt1を算出して増音部11へ出力するとともに、状態取得処理へ移行する(S32)。
S32の処理は、増音部11及び減音部13が実行し、例えば車両3に備わるセンサやナビゲーションシステム等から車両状態、周囲状態、乗員状態等を取得する処理である。S32の処理が終了すると、音特性決定処理へ移行する(S34)。
S34の処理は、増音部11及び減音部13が実行し、音特性を決定する処理である。例えば、増音部11は、S32の処理で取得した走行状態、周囲状態、運転状態等により騒音マップDB12を参照して最適な騒音マップを選択し、増音するノイズ(擬似音)の特性とする。また、減音部13は、S32の処理で取得した走行状態、周囲状態、運転状態等により騒音マップDB12を参照して最適な騒音マップを選択し、減音するために必要な制御音の特性とする。S34の処理が終了すると、補正処理へ移行する(S36)。
S36の処理は、増音部11及び減音部13が実行し、S34の処理で決定した音特性を補正する処理である。例えば、増音部11は、集音マイク20により取得した車内音に基づいて、S34の処理で決定したノイズの特性を補正する。また、例えば、減音部13は、集音マイク20により取得した車内音に基づいて、S34の処理で決定したノイズの特性を補正する。例えば、減音部13は、予め用意してある逆位相の音との周波数や音圧の差分を算出して、制御音の特性を補正する。S36の処理が終了すると、増音制御処理へ移行する(S38)。
S38の処理は、増音部11及び減音部13が実行し、車内音を増音させる処理である。この処理は、第1〜3実施形態の処理と同様である。S38の処理が終了すると、減音制御処理へ移行する(S40)。
S40の処理は、増音部11及び減音部13が実行し、車内音を減音させる処理である。この処理は、第1〜3実施形態の処理と同様である。S40の処理が終了すると、警報処理へ移行する(S42)。
S42の処理は、警報提供部14が実行し、車内へ警報音P1を出力する処理である。この処理は、第1〜3実施形態の処理と同様である。S42の処理が終了すると、図10に示す制御処理を終了する。
以上で図10に示す制御処理を終了する。自車両の走行音やロードノイズ、雨天時の騒音等が予め騒音マップDB12に格納されているため、図10に示す制御処理を実行することにより、自車両の擬似走行音や擬似周囲音を比較的容易に生成することができる。また、集音マイクで集音した車内音を用いて補正することで、予め想定される増音、減音を精度良く補正することが可能となるので、演算処理の遅延時間を減少させることができるとともに、ノイズキャンセル機能の精度を向上させることが可能となる。
上述したように、第4実施形態に係る車内警報装置1によれば、走行環境又は走行状態ごとに走行音又は周囲音を予め取得し走行環境又は走行状態ごとに生成した擬似音を記録する騒音マップDB12を備え、増音部11は車両3の走行環境又は走行状態に基づいて、騒音マップDB12に記録された擬似音をノイズとして出力することができるので、車両3の走行環境や走行状態に応じた擬似音がノイズとして採用することが可能となる。よって、走行環境や走行状態に関わらず、乗員にとってわずらわしさを感じさせたり、違和感を与えたりすることなく、車内の音環境を制御することができる。
また、第4実施形態に係る車内警報装置1によれば、減音部13により集音マイク20で検出された車内音の特性を用いて、制御音の特性を補正することができるので、フィードバック制御により高精度な減衰制御を行うことが可能となる。
さらに、第4実施形態に係る車内警報装置1によれば、増音部11により集音マイク20により検出された車内音の特性を用いて、擬似音の特性を補正することができるので、実際の走行音の特性がフィードバック制御により雑音の特性に反映することが可能となる。よって、一層自然な雑音を用いて車内の音環境を制御することができる。
なお、上述した各実施形態は本発明に係る車内警報装置の一例を示すものである。本発明に係る車内警報装置は、各実施形態に係る車内警報装置1に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る車内警報装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上述した第2実施形態では、減音部13によるノイズキャンセル制御のON、OFFによって、警報前に音圧の変化を設ける例を説明したが、例えば、減音部13により車内音P2を減音するための制御音を出力した状態でノイズN1を車内音に重畳させるとともに、警報提供部14により警報を出力する前にノイズN1を減音する構成としてもよい。このように構成することで、車内へ入力される走行音等の減衰制御が行われた状態で、ノイズN1が警報前に一度増音されたのち減音される。このため、走行音の減衰制御を行いつつ、定常的な音に慣れることで低下した聴覚感度を向上させることが可能となるとともに、警報前に乗員に対して静寂感を効果的に与えることができる。
また、上述した第4実施形態では、図10のS36において補正処理を行う例を説明したが、補正処理は必ずしも実行しなくてもよい。この場合であっても、走行音や周囲音を予め保有することで必要な制御音を生成することができる。このため、集音マイク20を備える必要がないので、一層簡易な構成でノイズキャンセル機能を実現することが可能となる。また、増音部11、減音部13の何れか一方のみが補正処理を行っても良い。さらに、制御音の補正処理は動的に実行してもよい。
また、上述した第4実施形態では、図10のS36において補正処理を行う例を説明したが、補正処理は必ずしも実行しなくてもよい。この場合であっても、走行音又は周囲音を予め保有することで必要な制御音を生成することができる。このため、集音マイク20を備える必要がないので、一層簡易な構成でノイズキャンセル機能を実現することが可能となる。
また、上述した実施形態では、出力音の音圧を直接制御することにより増音したり減音したりする例や、制御音を用いて増音したり減音したりする例を説明したが、減音や増音を他の方法を用いて行ってもよい。例えば、音の伝送方式を変更することで振幅変調、周波数変調、位相変調(デジタル変調)を利用して増音や減音を行ってもよい。また、使用するスピーカ等の数を変更することで、振幅変調、周波数変調、位相変調して増音や減音を行ってもよい。さらに、制御でなく機械的要素によって音量や音圧を増加したり減少させたりしてもよい。