JP5525334B2 - 系統安定化装置 - Google Patents

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Description

本発明は電力系統に設置される系統安定化装置に関する。
通常、電力系統は事故発生時に急激なじょう乱が生じた場合、再び安定状態を回復して送電できるように保護リレーシステムによって保護されている。
しかし、大規模複雑化する電力系統においては、主保護リレーや遮断器などの動作不良により事故除去が遅延する場合や、事故除去後に系統構成や潮流が大幅に変化する場合は、事故系統からの発電機脱落などの異常現象が発生することがあり、この異常現象が電力系統全体へ波及し、大停電に拡大することがある。このような異常現象の発生の未然防止や系統全体への波及防止を目的として、系統安定化システムが設置されている。
非特許文献1に示すように、系統安定化システムのうちの系統事故が生じた際の脱調現象を未然に防止する脱調未然防止リレーシステムには、事前演算型と事後演算型の2方式がある。
事前演算型は、事故及び系統現象を予め複数パターン想定し、事故前の系統情報から電力系統の事故波及を防止するための制御量を事前に演算、記憶しておき、実際に事故が発生した場合、予め演算した記録を参照し、即座に制御を実施する方式である。
また、この事前演算型には、オフライン事前演算型とオンライン事前演算型の2通りがある。オンライン事前演算型は、現時点のオンラインデータを用いた系統状態により、安定度計算を行った結果をもとに制御量を決定している点がオフライン事前演算型と異なる。
図7にオンライン事前演算型の制御フロー例を示す。事故前は、オンライン情報を元に事前選択演算を行う。事前選択演算では、オンライン情報を元に現時点の潮流状態を推定(状態推定、潮流計算)し、その潮流状態から想定される事故パターンごとに安定度計算を行う。安定度計算の結果は想定される事故パターンごとにテーブルに保管される。
事故発生時は、事故パターンを判別し、前記テーブルから事故パターンと合致する制御対象を選択し、制御対象及び制御量を決定する。それらの制御対象に制御指令を出すことで制御を行う。
なお、安定度計算の結果、電力系統が安定と判断される場合は、無制御となり、制御対象は選択されず、テーブルにも制御対象無しが入力され、実際に当該事故パターンが発生した場合は制御を行わない。
これに対して事後演算型は、事故中及び事故後の系統情報(主に電圧と電流)からオンラインで将来の現象を予測計算し、その結果に基づき制御対象の制御量を演算し、演算結果が出たら即座に制御を実施する方式である。
図8に事後演算型の制御フロー例を示す。事故前は、オンライン情報を元に状態推定、モデリング、初期相差角計算などを行う。事故発生後は、事故中及び事故除去後のオンライン系統情報(主に電圧と電流)を元に、電力系統の脱調が発生する可能性を予測演算し、脱調すると判断した場合は、電力系統の安定度を保てる制御量を算出する。
制御量が決定した際は、制御対象に対し、即座に制御指令を出力する。
なお、電力系統が安定になると判断された場合は、上記事前演算型と同様に、実際の制御は行われない。
電気学会技術報告 第801号「系統脱調・事故波及防止リレー技術」 (社)電気学会 2000年10月 P.5〜P.6 P.52〜P.56 P.61〜P.63
オンライン事前演算型では、事故発生前に現象を想定して演算・制御を実施する。事故発生前には様々な事故が発生しても対応できるよう、考えられる複数の事故を想定し安定度計算を行う。この複数の事故は図7に示す想定パターンを示しており、事故発生相の違いによるものである。
安定度計算では、想定した事故が発生した場合、確実に電力系統を安定化できるように各々の演算パターンの中では最も過酷な条件(事故箇所は発電機至近端、事故継続時間は主保護で考えられる最長の時間など)で演算を行う。このため、実際に発生する事故の必要制御量より大目に制御する可能性がある。
事後演算型では、事故中や事故除去後の電圧・電流値を測定し、それ以降の現象を予測して演算、制御を実施するため、実現象にあった条件で演算を行っており、制御量は少なくなる可能性がある。しかし、制御時間が事前演算型に比べると遅くなり、この点では制御量が多くなる可能性がある。
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、事故パターンに応じて事前演算型による制御か事後演算型による制御かを選択することで、制御量の少ない系統安定化装置を提供することを目的とする。
事故発生時に電力系統を安定化させるために必要な制御量を、事前に演算する事前演算
部と、事故発生前後の系統状態から電力系統を安定化させるために必要な制御量を演算す
る事後演算部とを備える系統安定化装置において、事故発生の一定時間後に制御を行う場
合の安定度と制御量を計算する第1安定度計算部と、事故除去後の一定時間後に制御を行
う場合の安定度と制御量を計算する第2安定度計算部と、前記第1及び第2の安定度計算
部の計算結果に基づいて、事故パターンの制御方式及び制御対象を決定した結果を記録す
るテーブル作成部と、前記テーブル作成部に記録された結果に基づいて、前記事前演算部
による制御か前記事後演算部による制御かを切り替える演算型切替部と、前記第1の安定
度計算部による計算結果で制御対象が複数台選択された場合、任意の対象を事故発生後の
一定時間後に制御を行い、残りの対象を事故除去後の一定時間後に制御を行う場合の制御
量と安定度を計算する第3安定度計算部とを有し、前記テーブル作成部は、前記第1乃至
第3安定度計算部の計算結果に基づいて、事故パターンの制御方式及び制御対象を決定し
た結果を記録することを特徴とする。
本発明によれば、事故パターンに応じて事前演算型による制御か事後演算型による制御かを選択することで、制御量の少ない系統安定化装置を提供することができる。
第1の実施形態における、安定化装置を示す構成図。 第1の実施形態における、テーブル処理を示すフロー図。 第1の実施形態における、テーブルの一例を示すフロー図。 第2の実施形態における、安定化装置を示す構成図。 第2の実施形態における、テーブル処理を示すフロー図。 第2の実施形態における、テーブルの一例を示すフロー図。 オンライン事前演算型安定化装置の制御の一例を示すフロー図。 事後演算型安定化装置の制御の一例を示すフロー図。
以下に、本発明に係る系統安定化装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態を示す構成図である。系統化安定化装置は、オンライン事前演算部1、事後演算部2、演算型切替部3、及び制御出力部4から構成されている。
オンライン事前演算部1の事前選択演算部は、状態推定部11、潮流計算部12、安定度計算部、想定パターン部15、及びテーブル作成部16から構成されることは従来のオンライン事前演算型と同様であるが、安定度計算部が第1安定度計算部13と第2安定度計算部14に分かれており、この両者の計算結果を踏まえテーブル作成部16にてテーブルを作成する点が異なっている。
状態推定部11及び潮流計算部12では、オンライン情報を元に現在の潮流状態を求める。第1安定度計算部13では、事故発生後の一定時間(一般的な値は150ms)後に制御を行う場合の制御量と安定度を計算する。第2安定度計算部14では、第1安定度計算部13で電力系統が不安定と判断された場合に行い、演算内容は第1安定度計算部とほぼ同様であるが、事故除去後の一定時間(一般的な値は250ms)後に制御を行う場合の制御量と安定度を計算する。
想定パターン部15では、安定度演算を行う際のパラメータである事故相を変更する部分であり、想定される全ての事故に対し、第1の安定度計算及び第2の安定度計算を行う。
テーブル作成部16は、詳細を後述する図2に示すフローチャート図のように、第1安定度計算部13及び第2安定度計算部14での計算結果をテーブルに保存記録する。「
事後演算部2は、事故前演算部21、及び制御量演算部22から構成され、これらは図8で説明した従来の事後演算型と同等の機能を持つため、説明は省略する。
演算型切替部3は、パターン判定部31、照合処理部32、及び切替部33から構成され、事故種別検出情報からパターン判定部31により発生した事故のパターンを判定し、照合処理部32によって、パターン判定部31によって判定された発生した事故のパターンとテーブル作成部16によって作成されたテーブルとを照合し、この照合結果に基づいて切替部33にて演算方式を切り替える。
制御出力部4では、演算型切替部3の指示に応じて制御量決定部41で制御量を決定し、制御実施部42にて制御を実施する。
ここで、先に述べた第1、第2の安定度計算部13,14でのテーブル処理について図2に示すフローチャート図を参照して説明する。
第1安定度計算部13の結果が安定か否かを判断し(S161)、安定であると判断された場合(S161のY)はパターンと安定をテーブルに記録する(S166)。安定でないと判断された場合(S161のN)は、第1安定度計算部13と第2安定度計算部14の制御量が同じまたは第2安定度計算部14の制御量の方が少ないかを判断する(S162)。
その結果、同じまたは第2安定度計算部14の制御量の方が少ないと判断された場合(S162のY)は、パターンと事後型をテーブルに記録する(S167)。第1安定度計算部13の制御量の方が少ないと判断された場合(S162のN)は、パターンと事前演算型と第1安定度計算部13で計算した制御対象をテーブルに記録する(S169)。
このようにテーブル作成部16が作成したテーブル例を図3に示す。パターン1は第1安定度計算部13での計算結果から安定であると判断されたパターンである。パターンaは第1安定度計算部13での計算結果から安定でないと判断された後、第2安定度計算部14での計算が行われ、第1安定度計算部13及び第2安定度計算部14での計算結果が同じまたは第2安定度計算部14の制御量の方が少ないと判断されたパターンである。
パターンbは第1安定度計算部13での計算結果から安定でないと判断された後、第2安定度計算部14での計算が行われ、第1安定度計算部13及び第2安定度計算部14の計算結果が第1安定度計算部13の制御量の方が少ないと判断されたパターンである。
次に、上記のように構成された本発明における第1の実施形態において、実際に系統事故が発生した場合の作用を説明する。
事故が検出されると、パターン判定部31において事故種別検出情報から、発生した事故のパターンが判定され、照合処理部32によってテーブル作成部16で作成されたテーブルと照合される。ここでは、テーブル16の判定型の項目が、安定か事後型か事前型かが判断される。
事前型であると判断された場合は、制御対象の項目に記載されている制御対象を事前演算型として制御する指令を制御出力部4から出力する。事後型であると判断された場合は、事後演算部2からの制御量演算部22の制御量演算結果の出力を待ち、その結果を制御出力部4から出力する。安定と判断された場合は、制御を行わない。
このように、本発明の第1の実施形態によれば、比較的軽い事故では事後型で事故の大きさを反映した制御をすることが可能となる。また、重い事故のため、迅速な制御が必要な場合は、事前型の結果に従い、早く制御することで制御量を少なくすることが可能となる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図4乃至図6を参照して、実施形態1と異なる点のみ説明する。
図4は、第2の実施形態を示す構成図である。この第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、オンライン事前演算部1aに第3安定度計算部14aが追加され、その結果、第1安定度計算部13乃至第3安定度計算部14aの計算結果に基づいてテーブル作成部16aでテーブルが作成される点である。
第3安定度計算部14aは、第1安定度計算部13で複数の制御対象を制御すると判定した場合に演算を行い、複数台の制御対象のうち、n台を事故発生後一定時間(一般的な値は150ms)後に制御し、残りを事故除去後一定時間(一般的な値は250ms)後に制御するとして安定度を計算する。
ここで、テーブル作成部16aの処理フローを、第1の実施形態における図2に示した処理フローと同一部分に同符号を記した図5に示す。第1安定度計算部13と第2安定度計算部14の計算結果が同じでないと判断された(S162のN)場合、第1安定度計算部13と第3安定度計算部14aの計算結果が同じか否かを判断する(S163)。同じまたは第3安定度計算部14aの制御量の方が少ないと判断された場合(S163のY)は、パターン、事後型、制御対象(第3安定度計算部14aでの事故発生後一定時間(一般的な値は150ms)後に制御した対象)を記録する(S168)。同じでないと判断された場合(S163のN)は、パターン、事前型、制御対象(第1安定度計算部の制御対象)を記録する(S169)。
上記のようにテーブル作成部16aが作成したテーブル例を図6に示す。パターン1、a、は第1の実施形態と同様である。パターンbは第1安定度計算部13と第3安定度計算部14aの計算結果が同じまたは第3安定度計算部14aの制御量の方が少ないと判断されたパターンである。パターンcは第1安定度計算部13と第3安定度計算部14aの計算結果が異なると判断されたパターンである。
次に、上記のように構成された第2の実施形態において、実際に系統事故が発生した場合の作用を説明する。
事故が検出されると、パターン判定部31において事故種別検出情報から、発生した事故のパターンが判定され、照合処理部32aによってテーブル作成部16で作成されたテーブルと照合される。ここでは、テーブル作成部16aが作成したテーブルの判定型の項目が、安定か事後型か或いは事前型かが判断される。事前型であると判断された場合(パターンc)は、制御対象の項目に記載されている制御対象を事前演算型として制御する指令を制御出力部4から出力する。
事後型と判断された場合は、次に制御対象の項目に制御対象が記載されているか否かを判断する。制御対象が記載されている場合(パターンb)、記載された制御対象を事前演算型として制御する指令を制御出力部4から出力するとともに、残りの制御対象に対しては事後演算部2aからの制御量演算結果の出力を待ち、その結果を制御出力部4から出力する。なお、この際事後演算部2aでは、事前型として制御された発電機は、演算に反映されている。
事後型と判断され、制御対象が記載されていないと判断された場合(パターンa)は、事後演算部2aからの制御量演算結果の出力を待ち、その結果を制御出力部4から出力する。
このように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、複数台制御しないと安定化できない重大事故において、一部を事前演算型、他の一部を事後演算型による制御を実施することが可能となるため、より実系統の系統現象を反映した制御を実施することができる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下の実施形態も採用することができる。尚、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
系統安定化装置の概略フローは第1の実施形態と同様であるが、図4における第2安定度計算部14で、制御量を求める際の安定化計算を事後演算部2aと同様の演算を行う点が異なっている。
この実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、図4における第2安定度計算部14による計算と事後演算部2aによる計算が同様の結果となるため、更に制御量を抑えた制御が可能となる。
1…オンライン事前演算部
2…事後演算部
3…演算型切替部
4…制御出力部
11…状態推定部
12…潮流計算部
13…第1安定度計算部
14…第2安定度計算部
14a…第3安定度計算部
15…想定パターン部
16、16a…テーブル作成部
21…事故前演算部
22…制御量演算部
31…パターン判定部
32、32a…照合処理部
33、33a…演算型切替部
41…制御量決定
42…制御実施部

Claims (1)

  1. 事故発生時に電力系統を安定化させるために必要な制御量を、事前に演算する事前演算
    部と、事故発生前後の系統状態から電力系統を安定化させるために必要な制御量を演算す
    る事後演算部とを備える系統安定化装置において、
    事故発生の一定時間後に制御を行う場合の安定度と制御量を計算する第1安定度計算部
    と、
    事故除去後の一定時間後に制御を行う場合の安定度と制御量を計算する第2安定度計算
    部と、
    前記第1及び第2の安定度計算部の計算結果に基づいて、事故パターンの制御方式及び
    制御対象を決定した結果を記録するテーブル作成部と、
    前記テーブル作成部に記録された結果に基づいて、前記事前演算部による制御か前記事
    後演算部による制御かを切り替える演算型切替部と、
    前記第1の安定度計算部による計算結果で制御対象が複数台選択された場合、任意の対象
    を事故発生後の一定時間後に制御を行い、残りの対象を事故除去後の一定時間後に制御を
    行う場合の制御量と安定度を計算する第3安定度計算部とを有し、
    前記テーブル作成部は、前記第1乃至第3安定度計算部の計算結果に基づいて、事故パタ
    ーンの制御方式及び制御対象を決定した結果を記録する
    ことを特徴とする系統安定化装置。
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