JP5519612B2 - 中枢神経系の虚血性損傷または出血性損傷を、抗α4インテグリンアンタゴニストを用いて処置する方法 - Google Patents
中枢神経系の虚血性損傷または出血性損傷を、抗α4インテグリンアンタゴニストを用いて処置する方法 Download PDFInfo
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Description
本発明は、一般的には、急性の中枢神経系(CNS)の損傷の処置方法に関する。詳細には、本発明は、外傷性の脳の損傷、脊髄の損傷、または発作によって生じるCNSの損傷を処置するための、α4インテグリンのアンタゴニストの使用に関する。選択されたα4インテグリンアンタゴニストは、単独で治療薬として、または他の薬学的な試薬と組合せて使用され得る。
急性の中枢神経系(「CNS」)の損傷は、脳および脊髄に対する広範囲の医学的および外傷性の結果を含む。例えば、発作は、先進国での死亡の第3番目の主要な原因であり、米国においては約1分間に1件の発作が生じている。死亡率は約30%であるが、400万人以上の発作の生存者が、現在生存している。これらの個体の大部分は種々の程度の障害を残している。虚血性の発作(すなわち、血餅/血栓の形成に起因する血液の流れの破壊に関連する発作)および脊髄における治療的な神経防御を実証するための臨床試験ななお、行われている。血栓溶解治療(血栓の溶解または分解を生じる試薬の使用として定義される)は、多くの限界を有するが、これは、唯一の急性の虚血性の発作のための処置の承認された形態である。虚血性の脳の損傷を阻害するための臨床的に試験されている現在のストラテジーは、興奮毒性(excitotoxic)機構、一酸化窒素に関連する神経の損傷、および虚血に関係するニューロンの細胞膜を標的とする。前臨床的な研究ストラテジーもまた、抗アポトーシスおよび抗炎症機構を標的化する。
この状況においては、インテグリンファミリーのメンバーをアンタゴナイズする方法を開発することが有用である。さらに、損傷が虚血性であるかまたは出血性であるかどうかにはかかわらず、有効である発作についての治療形態を開発することが、有用である。
本発明の開示までには、CNSの損傷(例えば、大脳の虚血)におけるインテグリンを含有しているαサブユニットの病理学的役割は、定義されていない。本発明は、局所的な大脳の虚血のラットモデルにおける、インテグリンを含有している阻害性のα4サブユニットの防御効果に一部関係する。本発明は、α4β1および/またはα4β7のインヒビターを使用する、発作のようなCNSの損傷を処置するための方法を記載する。
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1) 中枢神経系損傷を処置する必要のある患者において中枢神経系損傷を処置する方法であって、該方法は、α4インテグリンアンタゴニストの投与を包含する、方法。
(項目2) 前記投与工程が、前記患者に薬理学的薬剤をさらに投与する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記中枢神経系損傷が、発作、外傷性脳損傷、または外傷性脊髄損傷である、項目1または2に記載の方法。
(項目4) 前記損傷が、虚血性または出血性である、項目3に記載の方法。
(項目5) 前記薬剤が、血栓崩壊性である、項目2に記載の方法。
(項目6) 前記血栓崩壊性薬剤が、組織プラスミノーゲン活性化因子およびウロキナーゼからなる群より選択される、項目5に記載の方法。
(項目7) 前記薬剤が、神経保護剤である、項目2に記載の方法。
(項目8) 前記薬剤が、抗炎症剤である、項目2に記載の方法。
(項目9) 前記薬剤が、ステロイドである、項目2に記載の方法。
(項目10) 前記薬剤が、サイトカインまたは成長因子である、項目2に記載の方法。
(項目11) 項目7に記載の方法であって、前記神経保護剤が、レセプターのアンタゴニストであり、該レセプターは、以下:
N−メチル−Dアスパラギン酸レセプター(NMDA)、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸レセプター(AMPA)、グリシンレセプター、カルシウムチャネルレセプター、ブラジキニンB2レセプター、およびナトリウムチャネルレセプター、
からなる群より選択される、方法。
(項目12) 項目8に記載の方法であって、前記抗炎症剤が、インターロイキン−1、および腫瘍壊死因子ファミリーメンバーからなる群より選択される、方法。
(項目13) 項目7に記載の方法であって、前記神経保護剤が、レセプターのアゴニストであり、該レセプターは、以下:
ブラジキニンB1レセプター、α−アミノ酪酸(GABA)レセプター、およびアデノシンA1レセプター、
からなる群より選択される、方法。
(項目14) 前記損傷が、虚血である、項目4に記載の方法。
(項目15) 前記薬学的薬剤が、血栓崩壊剤である、項目14に記載の方法。
(項目16) 前記血栓崩壊剤が、組織プラスミノーゲン活性化因子およびウロキナーゼからなる群より選択される、項目15に記載の方法。
(項目17) 前記薬剤が、神経保護剤である、項目14に記載の方法。
(項目18) 項目17に記載の方法であって、前記薬剤が、レセプターのアンタゴニストであり、該レセプターは、以下:
NMDAレセプター、AMPAレセプター、グリシンレセプター、カルシウムチャネルレセプター、ナトリウムチャネルレセプター、およびブラジキニンB2レセプター、
からなる群より選択される、方法。
(項目19) 前記薬剤が、抗炎症剤である、項目14に記載の方法。
(項目20) 前記抗炎症剤が、インターロイキン−1、および腫瘍壊死因子ファミリーからなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(項目21) 項目17に記載の方法であって、前記神経保護剤が、レセプターのアゴニストであり、該レセプターは、以下:
ブラジキニンB1レセプター、GABAレセプター、およびアデノシンA1レセプター、
からなる群より選択される、方法。
(項目22) 続発性中枢神経系損傷を処置する必要のある患者において、虚血性発作に起因する続発性中枢神経系損傷を処置する方法であって、該方法は、α4インテグリンアンタゴニストの投与を包含する、方法。
(項目23) 前記中枢神経系損傷が、発作、外傷性脳損傷、および外傷性脊髄損傷である、項目22に記載の方法。
(項目24) 前記発作が、虚血性発作または出血性発作である、項目22に記載の方法。
(項目25) 前記続発性脳損傷が、出血性変化(hemorrhagic transformation)または大脳血管痙攣(cerebral vasospasm)である、項目22に記載の方法。
(項目26) 前記α4インテグリンアンタゴニストが、抗体ホモログである、項目1または22に記載の方法。
(項目27) 前記抗体ホモログが、ヒト化抗体ホモログである、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記抗体ホモログが、抗体ホモログのフラグメントである、項目26に記載の方法。
(項目29) 前記抗体ホモログが、ポリマー分子に連結される、項目26に記載の方法。
(項目30) 前記α4インテグリンアンタゴニストが、単一のα4サブユニットを含むインテグリンをアンタゴナイズし得る、項目1または22に記載の方法。
(項目31) 前記α4インテグリンアンタゴニストが、1を超えるα4サブユニットを含むインテグリンをアンタゴナイズし得る、項目1または22に記載の方法。
(I.定義)
請求される本発明の検討事項をより明確にそして簡潔に示すために、以下の定義が、以下に記載される説明および添付される特許請求の範囲において使用される特異的な用語について提供される。
インテグリンの非常に後期の抗原(VLA)スーパーファミリーは、ほとんど全ての哺乳動物細胞型についての種々の組合せにおいて見出される、(αおよびβ)ヘテロ二量体の膜貫通レセプター分子から構成される、構造的および機能的に関係している糖タンパク質から作成される。(概説については、E.C.Butcher、Cell、67、1033(1991);D.Coxら、「The Pharmacology of the Integrins.」、Medicinal Research Rev.(1994)およびV.W.Englemanら、「Cell Adhesion Integrins as Pharmaceutical Targets」、Ann.Reports in Medicinal Chemistry、第31巻、J.A.Bristol編;Acad.Press,NY,1996、191頁)を参照のこと)。VLAファミリーのインテグリンとして(現在は)、VLA−1、−2、−3、−4、−5、−6、−9、および−11が挙げられる。ここでは分子のそれぞれは、それぞれ、α鎖(α1、α2、α3、α4、α5、α6など)に非共有的に結合したβ1鎖を含む。
(a)「機能的な等価物」は、標準的なハイブリダイゼーション条件下で第2のポリヌクレオチドに対してハイブリダイズする第1のポリヌクレオチドであり、そして/または第1のポリヌクレオチド配列と縮重している。最も好ましくは、これは、インテグリンアンタゴニストタンパク質の活性を有している変異体タンパク質をコードする;
(b)「機能的な等価物」は、第2のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列についての発現をコードする第1のポリヌクレオチドである。
(概論)
本発明者らは、αインテグリン:α4β1および/またはα4β7の阻害が、急性の発作によって誘導される損傷に対して脳を防御することを発見した。中央の大脳動脈の一時的な閉塞によって引き起こされる発作のラットのモデルを使用して、本発明者らは、α4インテグリンアンタゴニストでの処置の後の脳梗塞において有意な減少を実証した。発作の動物モデルの関連は、Hunterら(1996)Trends in Pharmacological Sciences 6:123によって概説されている。Sprague Dawley(SD)および自発的な高血圧症のラット(Spontaneously Hypertensive Rat(SHR))の両方における可逆的な中央の大脳動脈閉塞のラットモデルは、げっ歯類の発作のモデルのモットの臨床的な関連として広範囲に考察されている。(Hunterら(1996)Trends in Pharmacological Sciences 6:123)。
本発明の目的のために、インテグリンアンタゴニストは、インテグリンとその同族のリガンドとの間またはレセプターとの間での任意の相互作用のアンタゴニストであり得、その結果、リガンド−レセプター相互作用によって誘導される正常な機能は変更される(すなわち、妨げられるか、または遅延させられるか、またはそうでなければ改変される)。インテグリンアンタゴニストの1つの好ましい実施形態は、それらのリガンドとのα4インテグリンの相互作用(例えば、VCAM−1/VLA−4相互作用)のアンタゴニストである。これは、VCAM−1および/またはVLA−4によって媒介される結合を阻害またはブロックし得るか、あるいはそうでなければ、VCAM−1および/またはVLA−4機能を調節し得(例えば、VLA−4−リガンドによって媒介されるVLA−4シグナル伝達またはVCAM−1−リガンドによって媒介されるVCAM−1シグナル伝達を阻害またはブロックすることによる)、そして急性の脳の損傷の処置において有効である(好ましくは、抗VLA−4抗体と同じ様式で)因子(例えば、ポリペプチドまたは他の分子)である。
他の好ましい実施形態においては、細胞表面のα4インテグリン(例えば、VLA−4またはα4β7)および/またはα4インテグリンに対する細胞表面リガンド(例えば、VCAM−1)に結合する(それらをブロックするかまたはコーティングすることを含む)ために、本発明の方法において使用されるアンタゴニストは、先に定義されているような、抗VLA−4および/または抗VCAM−1モノクローナル抗体あるいは抗体ホモログである。処置のための(特に、ヒトの処置のための)好ましい抗体およびホモログとして、ヒトの抗体ホモログ、ヒト化抗体ホモログ、キメラ抗体ホモログ、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびF(v)抗体フラグメント、ならびに抗体重鎖もしくは軽鎖の単量体もしくは二量体またはこれらの混合物が挙げられる。VLA−4に対するモノクローナル抗体は、本発明の方法における好ましい結合因子である。
用語「低分子」のインテグリンアンタゴニストは、インテグリン/インテグリンリガンド相互作用を破壊し得る(例えば、細胞の表面上でVLA−4を結合するかまたは細胞の表面でVCAM−1を結合することによってVLA−4/VCAM−1相互作用をブロックすることによる)化学的な因子(すなわち、有機分子)をいう。このような低分子はまた、それぞれのVLA−4およびVCAM−1レセプターを結合し得る。VLA−4およびVCAM−1低分子インヒビターは、それら自体がペプチド、半ペプチド化合物、または非ペプチド化合物(例えば、VCAM−1/VLA−4相互作用のアンタゴニストである小さい有機分子)であり得る。「低分子」は、本明細書中で定義される場合は、抗体または抗体ホモログを含むことは意図されない。例示的な低分子の分子量は、一般的には、1000未満である。
Minimal Essential Sequence for a Major Cell Type−Specific Adhesion Site(CS1)Within the Alternatively Spliced TypeIII Connecting Segment Domain of Fibronectin Is Leucine−Aspartic Acid−Valine」、J.Biol.Chem.266(23)、15075−79頁(1991))において見出され得る。彼らは、VLA−4に結合するために必須の最少の活性なアミノ酸配列を同定し、そして特定の種のフィブロネクチンのCS−1領域(VLA−4結合ドメイン)のアミノ酸配列に基づいて種々の重複ペプチドを合成した。彼らは、8アミノ酸のペプチドGlu−Ile−Leu−Asp−Val−Pro−Ser−Thr、ならびに2つの比較的小さい重複ペンタペプチドGlu−Ile−Leu−Asp−ValおよびLeu−Asp−Val−Pro−Serを、同定した。これらは、フィブロネクチン依存性の細胞接着の対する阻害活性を有する。LDV配列を含有している特定の大きなペプチドが、続いて、インビボで活性であることが示された(T.A.Fergusonら、「Two Integrin Binding Peptides Abrogate T−cell−Mediated Immune Responses In Vivo」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88、8072〜76頁(1991);およびS.M.Wahlら、「Synthetic Fibronectin Peptides Suppress Arthritis in Rats by Interrupting Leukocyte Adhesion and Recruitment」、J.Clin.Invest.94、655−62頁(1994))。環状のペンタペプチドArg−Cys−Asp−TPro−Cys(ここでは、TProは4−チオプロリンを示す)(これは、VLA−4およびVLA−5の両方のフィブロネクチンに対する接着を阻害し得る)もまた記載されている(例えば、D.M.Nowlinら、「A Novel Cyclic Pentapeptide Inhibits Alpha4Beta1 Integrin−mediated Cell Adhesion」、J.Biol.Chem.268(27)、20352−59頁(1993);およびPCT公開PCT/US91/04862号を参照のこと)。このペンタペプチドは、いくつかの細胞外マトリックスタンパク質についての認識部位中の共通のモチーフとして公知である、フィブロネクチンに由来するトリペプチド配列Arg−Gly−Aspに基づく。他のVLA−4インヒビターの例が、例えば、Adamsら「Cell Adhesion Inhibitors」PCT US97/13013号において報告されている。これは、細胞接着阻害活性を有するβアミノ酸を含有している直鎖状のペプチジル化合物を記載している。国際特許出願WO94/15958およびWO92/00995は、細胞接着阻害活性を有する環状のペプチドおよびペプチド模倣化合物を記載する。国際特許出願WO93/08823およびWO92/08464は、グアニジル含有、尿素含有、およびチオ尿素含有の細胞接着阻害化合物を記載している。米国特許第5,260,277号は、グアニジル細胞接着調節化合物を記載している。VLA−4の他のペプチジルアンタゴニストが、以下に記載されている:D.Y.Jacksonら、「Potent α4β1 peptide antagonists as potential anti−inflammatory agents」J.Med.Chem.,40、3359(1997);H.Shroffら、「Small peptide inhibitors of α4β7 mediated MadCAM−1 adhesion to lymphocytes」、Bio.Med.Chem.Lett.,1、2495(1996);米国特許第5,510,332号、PCT公開WO98/53814、WO97/03094、WO97/02289、WO96/40781、WO96/22966、WO96/20216、WO96/01644、WO96106108、およびWO95/15973など。
Binding Molecules」、Science、249、40407頁(1990)を参照のこと。
本明細書中で意図される好ましいインテグリンアンタゴニストは、原核生物または真核生物の宿主細胞中の、インタクトもしくは短縮されたゲノムもしくはcDNAから、または合成のDNAから発現され得る。二量体タンパク質は、培養培地から単離され得、そして/または再度折り畳まれ得、そして生物学的に活性な組成物を形成するようにインビトロで二量体化され得る。ヘテロ二量体は、別々の異なるポリペプチド鎖を組合せることによって、インビトロで形成され得る。あるいは、ヘテロ二量体は、別々の異なるポリペプチド鎖をコードする核酸を同時に発現することによって、単一の細胞中で形成され得る。例えば、いくつかの例示的な組換えヘテロ二量体タンパク質の産生のプロトコールについては、WO93/09229号または米国特許第5,411,941号を参照のこと。現在好ましい宿主細胞として、原核生物細胞(E.coliを含む)または真核生物細胞(酵母、Saccharomyces、昆虫細胞、または哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、またはBSC細胞)を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、他の宿主細胞が有利であるように使用され得ることを理解する。本発明の実施において有用であるタンパク質の詳細な記載(軟骨形成活性のためにこれらを作製し、使用し、そして試験するための方法を含む)が、米国特許第5,266,683号、および同第5,011,691号(これらの開示は本明細書中で参考として援用される)を含む多数の刊行物に開示されている。
単離されたα4インテグリンアンタゴニストのフラグメント(例えば、本明細書中に記載されている抗体ホモログのフラグメント)はまた、組換え方法によって、タンパク質溶解による消化によって、または当業者に公知の方法を使用する化学合成によっても、効率的に産生され得る。組換え方法においては、ポリペプチドの内部または末端のフラグメントは、単離されたハリネズミのポリペプチドをコードするDNA配列の一方の末端(末端フラグメントについて)または両方の末端(内部フラグメントについて)から1つ以上のヌクレオチドを除去することによって生成され得る。変異させられたDNAの発現によって、ポリペプチドフラグメントを産生する。「末端を少しかじる(end−nibbling)」エンドヌクレアーゼでの消化によってもまた、フラグメントの配列(array)をコードするDNAを生じる。タンパク質のフラグメントをコードするDNAもまた、ランダム剪断、制限消化、またはそれらの組合せもしくは両方によって生成され得る。タンパク質フラグメントは、インタクトなタンパク質から直接生成され得る。ペプチドは、プラスミン、トロンビン、トリプシン、キモトリプシンまたはペプシンを含むがこれらに限定されないタンパク質分解性の酵素によって、特異的に切断され得る。これらの酵素のそれぞれが、それが攻撃するペプチド結合のタイプについて特異的である。トリプシンは、カルボニル基が塩基性のアミノ酸(通常は、アルギニンまたはリジン)に由来するペプチド結合の加水分解を触媒する。ペプシンおよびキモトリプシンは、トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニンのような、芳香族アミノ酸に由来するペプチド結合の加水分解を触媒する。切断されたタンパク質フラグメントの別のセットが、タンパク質分解性の酵素に対して感受性である部位での切断を妨げることによって、生成される。例えば、中程度の塩基性の溶液中のエチルトリフルオロチオアセテートとのリジンのε−アミノ酸基の反応によって、その隣接しているペプチド結合がトリプシンによる加水分解に対してもはや感受性でないブロックされたアミノ酸残基を生じる。タンパク質は、タンパク質分解性の酵素に対して感受性であるペプチド結合を作製するように改変され得る。例えば、β−ハロエチルアミンでのシステイン残基のアルキル化によって、トリプシンによって加水分解されるペプチド結合を生じる(Lindley、(1956)Nature 178、647)。さらに、特異的な残基でペプチド鎖を切断する化学的な試薬が使用され得る。例えば、臭化シアンは、メチオニン残基でペプチドを切断する(GrossおよびWitkip(1961)J.Am.Chem.Soc.83、1510)。従って、改変因子、タンパク質分解性の酵素、および/または化学的な試薬の種々の組合せを用いてタンパク質を処理することによって、タンパク質は、フラグメントの重複を有することなく所望される長さのフラグメントに分けられ得るか、または所望される長さの重複しているフラグメントに分けられ得る。
タンパク質のアミノ酸配列変異体が、タンパク質またはその特定の部分をコードするDNAのランダム変異誘発によって調製され得る。有用な方法として、PCR変異誘発および飽和変異誘発が挙げられる。ランダムなアミノ酸配列変異体のライブラリーもまた、縮重オリゴヌクレオチド配列のセットの合成によって生成され得る。変更されたDNAおよびペプチドを使用して所定のタンパク質のアミノ酸変異体を作成する方法が、当該分野で周知である。このような方法の以下の例は、本発明の範囲を限定するこをと意図するのではなく、単に、例示的な代表的な技術を説明するために提供される。当業者は、これに関して、PCR変異誘発、飽和変異誘発、および縮重オリゴヌクレオチド変異誘発(以下で引用される参考文献に記載されており、そして本明細書中で参考として援用されている)のような他の方法もまた有用であることを、認識する。
PCR変異誘発:例えば、Leungら、(1989)Technique 1、11−15を参照のこと。
飽和変異誘発:1つの方法が、Mayersら(1989)Science 229、242に一般的に記載されている。
縮重オリゴヌクレオチド変異誘発:例えば、Harang,S.A.(1983)、Tetrahedron 39,3;Itakuraら(1984)、Ann.Rev.Biochem.53,323およびItakuraら、Recombinant DNA、Proc.3rd Cleveland Symposium on Macromolecules、273−289頁(A.G.Walton編)、Elsevier、Amsterdam、1981。
ランダムではない、または指向された変異誘発は、単離されたポリペプチドの公知のアミノ酸配列の残基の欠失、挿入、または置換を含む変異体を提供するための、単離されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の特異的な配列または特異的な部分中の変異を提供する。変異部位は、例えば、以下によって個々にまたは一連で改変され得る:(1)最初に保存されたアミノ酸で、次いで達成される結果に依存してさらなるラジカルなもの(radical choices)で置換すること;(2)標的の残基を欠失させること;または(3)配置された部位に隣接している同じまたは種々のクラスの残基を挿入すること、あるいは選択肢1〜3の組合せ。
変異体は、アミノ酸配列において、または配列を含まない様式において、あるいはそれらの両方において、他のα4インテグリンアンタゴニストとは異なり得る。本発明の最も好ましいポリペプチドは、インビボまたはインビトロでの(例えば、それらのN末端の)化学的な誘導、ならびにアセチル化、メチル化、リン酸化、アミド化、カルボキシル化、またはグリコシル化における可能性のある変化を含む、好ましい配列以外の改変を有する。
本発明の広範な範囲内では、単一のポリマー分子は、α4インテグリンアンタゴニストと結合体化することで使用され得るが、1つより多いポリマー分子が十分に接着され得ることもまた意図される。本発明の結合体化されたα4インテグリンアンタゴニスト組成物は、インビボおよびインビボではない適用の両方において有用性を見出され得る。さらに、結合体化ポリマーは、目的の使用適用のために適切である場合、任意の他の基、部分、または他の結合体化された種を、利用し得る。例として、いくつかの適用においては、UV分解の耐性もしくは抗酸化、またはポリマーに対して他の特性もしくは特徴を与える機能的な部分をポリマーに共有結合させることが、有用であり得る。さらなる例として、結合体化された材料全体の種々の特性または特徴を増強させるために、それを薬物分子に対して反応性にし、そして架橋することを可能にするように、ポリマーを官能化することが、いくつかの適用において利点であり得る。したがって、ポリマーは、任意の官能基、反復している基、結合、または他の構成する構造を含み得る。これらは、その意図される目的のために、結合体化されたα4インテグリンアンタゴニスト組成物の効力を妨げない。本発明の他の目的および利点が、続く開示および添付される特許請求の範囲からより完全に明らかである。
単位投与量形態を生ずるようにキャリア物質と混合され得る有効成分の量は、処置される宿主、および特定の投与の形態に依存して変化する。しかし、任意の特定の患者についての特別な投与量および処置レジメンは、使用される特異的な化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組合せ、および処置する医師の判断、ならびに処置される特定の疾患の重篤度を含む、種々の因子に依存することが、理解されるべきである。有効成分の量はまた、任意の場合、成分が同時に投与される治療薬または予防薬に依存し得る。
本発明に基く処置方法は、活性な化合物の有効量を被験体に対して内部的にまたは局所的に投与することを含む。本発明の方法における活性な化合物の用量は、有効であり、非毒性である量である。慣用的な臨床試験を利用する当業者は、処置される特定の病気についての最適な用量を決定することが可能である。
(実施例1:ラットにおける可逆的な中大脳動脈の閉塞についてのプロトコール)
雄性のSprague Dawley(SD)または自然発生的な高血圧のラット(SHRS)を、イソフルランを使用して麻酔し、そして右側中大脳動脈(MCAO)を、内頚動脈から中大脳動脈(MCA)の起点まで、4−0のナイロンモノフィラメントの挿入によって閉塞させた(Zea Longaら、1989 Stroke 20:84)。1時間後、フィラメントを回収し、虚血性の領域を再潅流し、そして動物を回復させた。24時間後に、ラットを屠殺し、その時点で、脳を取りだし、そして梗塞の容量を定量するために組織学的に分析した。
MCAOを受けたビヒクル処置コントロールラットは、脳の皮質から皮質下の領域にわたる広範囲の病変を維持した。虚血性の脳半球は、顕著に腫大し、そして有意な挙動の欠乏が観察された(例えば、順間および手足の衰弱を生じる半身麻痺)。自然発生的な高血圧のラットは、同じ外科手術手順に供したSprague Dawleyラットより顕著で再現性のある脳梗塞を維持した。梗塞の容量は、平均値±s.e.m.で示す。統計学的な分析を、不対のスチューデントtテスト(*は、p<0.05を示し、**はp<0.01を示す)を使用して行った。
Claims (20)
- 脊髄損傷を処置する必要のある患者において脊髄損傷を処置するための組成物であって、該組成物は、
α4インテグリンアンタゴニスト
を含み、ここで、該α4インテグリンアンタゴニストは、抗α4抗体またはそのα4結合フラグメントである、組成物。 - 二次外傷性脳損傷を処置する必要のある患者において二次外傷性脳損傷を処置するための組成物であって、該組成物は、α4インテグリンアンタゴニストを含み、ここで、該二次外傷は、虚血性であり、ここで、該α4インテグリンアンタゴニストは、抗α4抗体またはそのα4結合フラグメントである、組成物。
- 前記組成物が、前記患者に薬理学的薬剤と組合わせて投与されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記薬剤が、血栓崩壊性薬剤である、請求項3に記載の組成物。
- 前記血栓崩壊性薬剤が、組織プラスミノーゲン活性化因子およびウロキナーゼからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
- 前記薬剤が、神経保護剤である、請求項3に記載の組成物。
- 前記薬剤が、抗炎症剤である、請求項3に記載の組成物。
- 前記薬剤が、ステロイドである、請求項3に記載の組成物。
- 前記薬剤が、サイトカインまたは成長因子である、請求項3に記載の組成物。
- 請求項6に記載の組成物であって、前記神経保護剤が、レセプターのアンタゴニストであり、該レセプターは、以下:
N−メチル−Dアスパラギン酸(NMDA)レセプター、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸(AMPA)レセプター、グリシンレセプター、カルシウムチャネルレセプター、ブラジキニンB2レセプター、およびナトリウムチャネルレセプター、
からなる群より選択される、組成物。 - 請求項7に記載の組成物であって、前記抗炎症剤が、インターロイキン−1、および腫瘍壊死因子ファミリーメンバーからなる群より選択される、組成物。
- 請求項6に記載の組成物であって、前記神経保護剤が、レセプターのアゴニストであり、該レセプターは、以下:
ブラジキニンB1レセプター、α−アミノ酪酸(GABA)レセプター、およびアデノシンA1レセプター、
からなる群より選択される、組成物。 - 前記抗α4抗体またはそのα4結合フラグメントが、ヒト化抗体またはフラグメントである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記抗α4抗体またはそのα4結合フラグメントが、ポリマー分子に連結される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記α4インテグリンアンタゴニストが、単一のα4サブユニットを含むインテグリンをアンタゴナイズし得る、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記α4インテグリンアンタゴニストが、1を超えるα4サブユニットを含むインテグリンをアンタゴナイズし得る、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記α4インテグリンアンタゴニストは、ヒト化モノクローナル抗α4抗体またはそのα4結合フラグメントである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記α4インテグリンアンタゴニストは、キメラ抗α4抗体またはそのα4結合フラグメントである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記α4インテグリンアンタゴニストは、Fab、Fab‘、F(ab’) 2 またはFvフラグメントである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記α4インテグリンアンタゴニストは、ヒトBエピトープ特異的抗α4抗体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
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