JP5517098B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池の水分量の推定を利用した燃料電池システムに関する。
従来から広く知られているように、固体高分子型燃料電池で効率良く発電を行うには、電解質膜を適度な湿潤状態とし、燃料電池内の水分量を過不足な状態にしないことが望ましい。燃料電池のセル面内における水分量を制御する技術として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。これは、反応ガス(空気に代表される酸化ガス及び水素ガスに代表される燃料ガスの総称。)の圧力、湿度、温度、流量及び流路形状による圧損特性の少なくとも一つを調整して、セル面内の液滴または水蒸気としての水分量の分布を制御することを開示している。
特開2004−335444号公報
しかしながら、実際の単セルでは、アノード電極とカソード電極との間で電解質膜を通った水分の移動がある。この点、特許文献1では、電極間の水移動を考慮していないため、セル面内における水分量の分布を精度良く推定し制御することが難しい。
また一般に、システム効率の向上のために燃料電池の間欠運転を行うモードを取り入れている燃料電池システムもある。この間欠運転は、主に低負荷運転の際に行われるものであり、その実行中では、燃料電池に反応ガスを供給する補機類の作動が停止される。
しかし、間欠運転中は燃料電池が昇温しないため、単セル内は水が溜まり易い状況となる。特に、外気温が低い場合には単セル内で水蒸気が凝縮する。このため、間欠運転から通常運転に切り替えた場合、間欠運転中に液水(残水量)が多く溜まった単セルでは、反応ガスの供給が阻害されてセル電圧の低下が生じるおそれがある。
本発明は、間欠運転のモードを取り入れている燃料電池システムにおいて、残水量の推定精度を向上すると共に、間欠運転による水溜りの上昇を精度良く抑制することをその目的としている。
上記目的を達成するべく、本発明の燃料電池システムは、アノード電極、カソード電極、これらの間の電解質膜及び反応ガス流路を有する単セルを複数積層してなるセル積層体を含む燃料電池を備えると共に、所定の低負荷のときに燃料電池の間欠運転を行うモードを備える燃料電池システムにおいて、電解質膜を介してアノード電極とカソード電極との間で行われる水移動を考慮して、各単セルのセル面内における反応ガス流路の残水量分布及び電解質膜の含水量分布を推定する推定部と、推定部により推定された反応ガス流路の残水量に応じて、間欠運転を行う頻度(以下、「間欠頻度」といい、次の式で表されるものをいう。)を設定する運転制御部と、備えたものである。
式:X=Ton/(Ton+TOFF
ただし、Xは間欠頻度であり、Tonは間欠運転を行うモードであることを示す間欠運転フラグのオン時間であり、TOFFは当該間欠運転フラグのオフ時間である。
本発明によれば、電極間の水移動を考慮しているので、セル面内及びセル積層方向それぞれの残水量分布及び含水量分布についての推定精度を向上することができる。また、この向上した推定結果を利用して間欠頻度を設定するので、水溜りの上昇を抑制するような間欠頻度で間欠運転を適切に行うことが可能となる。
好ましくは、運転制御部は、残水量の増加が比較的抑えられる間欠頻度で間欠運転を行うとよい。こうすることで、間欠運転による水溜りの上昇を抑制することができる。
好ましくは、推定部は、所定の低負荷になったときに、この低負荷状態が継続した場合における所定時間後の残水量を二以上の間欠頻度毎に推定し、運転制御部は、間欠頻度毎に推定された残水量のうち、比較的少ない残水量に係る間欠頻度で間欠運転を行うとよい。
より好ましくは、運転制御部は、上記の比較的少ない残水量に係る間欠頻度に代えて、所定時間後の全単セル中の最大残水量と最小残水量との差が比較的小さくなる間欠頻度を用いるとよい。こうすることで、複数の単セルの局所的な水溜りの上昇を抑制することができる。
好ましくは、燃料電池システムは、上記所定時間を記憶する記憶部を備え、記憶部は、燃料電池システムの運転傾向に応じて、前記所定時間を更新して記憶するとよい。こうすることで、例えば燃料電池システムを搭載した車両の運転パターンが人によって異なっていても、その人の運転傾向(低負荷状態の長さ)を踏まえた水溜りの抑制を図ることができる。
より好ましくは、記憶部は、所定の低負荷の状態が最も長く続いたときの継続時間に、上記所定時間を更新するとよい。こうすることで、低負荷状態の継続時間の最大値を学習することができ、この最大値に基づいた間欠頻度で間欠運転を行うことができる。
本発明の別の好ましい一態様によれば、記憶部は、所定の低負荷のたびにその継続時間を記憶すると共に、その記憶した継続時間の中で頻度が高い継続時間に前記所定時間を更新するとよい。こうすることで、低負荷状態がたまたま長く続いたようなレアケースでの継続時間に、上記所定時間が更新されるのを抑制することができる。
実施形態に係る燃料電池の斜視図である。 実施形態に係る燃料電池の内部の一部を示す側面図である。 実施形態に係る単セルの断面図である。 実施形態に係るセパレータの平面図である。 実施形態の第1の変形例に係るセパレータの流路形状を示す概略平面図である。 実施形態の第2の変形例に係るセパレータの流路形状を示す概略平面図である。 実施形態の第3の変形例に係るセパレータの流路形状を示す概略平面図である。 実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。 実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。 実施形態に係るセル面内での水分布の推定方法を示すフローチャートである。 実施形態に係るセル積層体について、反応ガスの供給及び排出とセルチャンネルとの関係を示す図である。 実施形態に係る電解質膜の相対湿度とDH2Oとの関係を表す特性マップである。 実施形態に係るセル面内位置に対する電流密度を示す図である。 実施形態に係るセル面内における反応ガス流路及び電解質膜の相対湿度分布を示す図である。 実施形態に係るセル面内の残水量分布を示す図である。 実施形態に係るセル入口温度の算出方法を示すフローチャートである。 実施形態に係るスタック入口温度が受ける放熱の影響について、単セルの位置及び冷媒流量との関係を示す図である。 実施形態に係るスタック入口温度が受ける放熱の影響について、単セルの位置及び外気温との関係を示す図である。 実施形態に係る単セルごとのエア流量及びエア背圧の算出方法を示すフローチャートである。 実施形態に係る残水量に応じた単セルのP−Q特性を示すマップである。 実施形態に係るセル入口圧力分布を示す図である。 実施形態に係るセル流入流量分布を示す図である。 実施形態に係るセル出口圧力分布を示す図である。 実施形態に係るセル出口温度の算出方法を示すフローチャートである。 実施形態に係るスタック出口温度が受ける放熱の影響について、単セルの位置及び冷媒流量との関係を示す図である。 実施形態に係る燃料電池システムを搭載した車両の電気系統を示す概略図である。 図21に示す燃料電池車両において、間欠頻度を設定して間欠運転を実行する場合の処理内容を示すフローチャートである。 実施形態に係る燃料電池システムにおいて、複数の間欠頻度で間欠運転を実行した場合の時間経過と残水量との関係を示す図である。 実施形態に係る燃料電池システムにおいて、所定時間を最大継続時間に更新する場合の処理内容を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。先ず、燃料電池及び燃料電池システムの概要について説明し、次いで、燃料電池の水分量の推定及びその推定を利用した制御例について説明する。以下では、燃料ガスとして水素ガスを例に説明し、酸化ガスとして空気を例に説明し、燃料ガス及び酸化ガスを反応ガスと総称することがある。
A.燃料電池の概要
図1及び図2に示すように、スタック構造の燃料電池1は、固体高分子電解質型の単セル2を複数積層してなるセル積層体3を有する。セル積層体3の両端にある単セル2(以下、「端部セル2a」という。)の外側に、それぞれ、集電板5a、5b、絶縁板6a、6b及びエンドプレート7a、7bが配置される。テンションプレート8,8がエンドプレート7a、7b間に架け渡されてボルト9で固定され、エンドプレート7bと絶縁板6bとの間に弾性モジュール10が設けられる。
水素ガス、空気及び冷媒は、エンドプレート7aの供給口11a,12a及び13aに接続した供給管14からセル積層体3内のマニホールド15aに供給される。その後、水素ガス、空気及び冷媒は、単セル2の平面方向に流れて、セル積層体3内のマニホールド15bに至り、エンドプレート7aの排出口11b,12b及び13bに接続した排出管16から燃料電池1外に排出される。なお、供給管14、マニホールド15a,15b及び排出管16は、水素ガス、空気及び冷媒の各流体に対応して設けられているが、図2では同一符号を付して説明を省略している。
図3に示すように、単セル2は、MEA20及び一対のセパレータ22A,22Bを備える。MEA20(膜―電極アッセンブリ)は、イオン交換膜からなる電解質膜23と、電解質膜23を挟んだアノード電極24A及びカソード電極24Bと、で構成される。電極24Aにはセパレータ22Aの水素流路25Aが面し、電極24Bにはセパレータ22Bの空気流路25Bが面する。また、セパレータ22A,22Bの冷媒流路26A,26Bが、隣接する単セル2,2間で連通する。
図4は、セパレータ22Aの平面図である。セパレータ22Aは、水素流路25Aの外側にそれぞれ貫通形成された水素入口27a、空気入口28a、冷媒入口29a、水素出口27b、空気出口28b及び冷媒出口29bを有する。入口27a、28a及び29aは、それぞれの流体に対応するマニホールド15aの一部を構成し、同様に、出口27b、28b及び29bは、それぞれの流体に対応するマニホールド15bの一部を構成する。
セパレータ22Aでは、水素ガスが入口27aから水素流路40に導入され、出口27bへと排出される。この点、冷媒の流れも同様である。また、詳述しないが、セパレータ22Aと同様に構成されたセパレータ22Bでも、その平面方向に空気が流れる。このようにして、単セル2内の電極24A、24Bに水素ガス及び空気が供給され、それによりMEA20内で電気化学反応が生じ、起電力が得られる。また、この電気化学反応により、電極24B側に水が生成されると共に発熱する。そして、冷媒が流れることで、各単セル2の熱が低減される。
図5A〜Cは、本実施形態を適用可能なセパレータの他の流路形状を示す概略平面図である。図4に示した直線溝流路(凹凸の繰り返しが一方向に延びるもの。)の態様に代えて、図5Aに示すように、流路25A、25B、26A,26Bの流路形状を、途中に折り返し部があるサーペンタイン流路形状とすることもできる。また、図5Bに示すように、流路25A,25B,26A,26Bを波状とすることもできるし、図5Cに示すように、凹凸をなくした平板状とすることもできる。さらに、反応ガスの流し方についても、図1及び図4から理解されるようなコフロータイプ(水素ガス及び空気が同方向に流れる。)に代えて、水素ガスと空気とが逆方向に流れるカウンターフロータイプを採用することもできる。また、セパレータ22A,22Bの向きも縦、横のどちらでもよい。つまり、後述する燃料電池1の水分量の推定は、燃料電池1のハード構成に限定されるものではない。
B.燃料電池システムの概要
図6に示すように、燃料電池システム100は、空気配管系300、水素配管系400、冷媒配管系500及び制御装置600を備える。燃料電池システム100は、車両、船舶、飛行機、ロボットなどの各種移動体に搭載できるほか、定置型電源にも適用可能である。ここでは、自動車に搭載した燃料電池システム100を例に説明する。
空気配管系300は、燃料電池1に空気を給排するものであり、加湿装置30、供給流路31、排出流路32及びコンプレッサ33を有する。コンプレッサ33により大気中のエア(低湿潤状態の空気)が取り込まれて加湿装置30に圧送され、加湿装置30にて高湿潤状態の酸化オフガスとの間で水分交換が行われる。その結果、適度に加湿された空気が供給流路31から燃料電池1に供給される。排出流路32には、燃料電池1のエア背圧を調整する背圧弁34が設けられる。また、背圧弁34の近傍には、エア背圧を検出する圧力センサP1が設けられる。コンプレッサ33には、燃料電池1へのエア供給流量を検出する流量センサF1が設けられる。
水素配管系400は、燃料電池1に水素ガスを給排するものであり、水素供給源40、供給流路41、循環流路42及びシャットバルブ43などを有する。水素供給源40からの水素ガスは、レギュレータ44によって減圧された後、インジェクタ45によって流量及び圧力を高精度に調整される。その後、水素ガスは、循環流路42上の水素ポンプ46によって圧送された水素オフガスと合流点Aで合流して、燃料電池1に供給される。循環流路42には、パージ弁48付きのパージ路47が分岐接続されており、パージ弁48を開弁することで、水素オフガスが排出流路32に排出される。合流点Aの下流側には、燃料電池1への水素ガスの供給圧力を検出する圧力センサP2が設けられる。また、水素ポンプ46には、流量センサF2が設けられる。なお、別の実施態様では、燃料オフガスを水素希釈器などに導入してもよいし、循環流路42に気液分離器を設けてもよい。
冷媒配管系500は、燃料電池1に冷媒(例えば冷却水)を循環供給するものであり、冷却ポンプ50、冷媒流路51、ラジエータ52、バイパス流路53及び切替え弁54を有する。冷却ポンプ50は、冷媒流路51内の冷媒を燃料電池1内へと圧送する。冷媒流路51は、燃料電池1の冷媒入口側にある温度センサT1と、燃料電池1の冷媒出口側にある温度センサT2と、を有する。ラジエータ52は、燃料電池1から排出される冷媒を冷却する。切替え弁54は、例えばロータリーバルブにより構成され、必要に応じて、ラジエータ52とバイパス流路53との間で冷媒の通流を切り替える。
制御装置600は、内部にCPU,ROM,RAMを備えたマイクロコンピュータとして構成される。制御装置600には、各配管系300,400,500を流れる流体の圧力、温度、流量等を検出するセンサ(P1,P2,F1,F2,T1,T2)の検出情報が入力される。また、制御装置600には、燃料電池1が発電した電流値を検出する電流センサ61の検出情報のほか、外気温センサ62、車速センサ63、アクセル開度センサなどの検出情報が入力される。制御装置600は、これら検出情報等に応じて、システム100内の各種機器(コンプレッサ33、シャットバルブ43、インジェクタ45、水素ポンプ46、パージ弁48、冷却ポンプ50、切替え弁54など)を制御し、燃料電池システム100の運転を統括制御する。また、制御装置600は、各種検出情報を読み込み、ROMに格納されている各種マップを利用して、燃料電池1の水分量を推定する。
図7に示すように、制御装置600は、燃料電池1の水分量を推定してそれに基づく制御を実現するための機能ブロックとして、記憶部65、検出部66、推定部67及び運転制御部68を備える。記憶部65は、燃料電池1の水分量の推定及び制御を実現するための各種のプログラムや、各種のマップを記憶する。なお、マップは、実験又はシミュレーションにより事前に得られたものである。検出部66は、各種センサ(P1,P2,F1,F2,T1,T2,61〜63)などの検出情報を読み込む。運転制御部68は、推定部67による推定結果に基づいて、各種機器に制御指令を送信し、燃料電池1が所望の運転状態(例えば水分状態、温度状態など)となるように運転を制御する。このとき、運転制御部68は、必要に応じて、アノード側とカソード側とを区別した制御を実行する。
推定部67は、検出部66で取得された情報に基づいて、記憶部65にある各種マップを参照して燃料電池1の水分量を推定する。具体的には、推定部67は、電解質膜23を介して電極24A、24B間で行われる水移動を考慮し、単セル2のセル面内における残水量分布及び含水量分布を推定する。また、推定部67は、各単セル2の積層方向(以下、セル積層方向という。)の残水量分布及び含水量分布も推定する。
ここで、「セル面内」とは、単セル2の平面方向(図4の紙面と平行な方向をいい、セル積層方向と直交する方向をいう。)における単セル2の内部を意味する。「残水量」とは、単セル2の反応ガス流路内に存在する液水の量を意味する。反応ガス流路とは、水素流路25A及び空気流路25Bを総称した概念である。「含水量」とは、単セル2の電解質膜23に含まれる水の量を意味する。
C.燃料電池の水分量の推定方法
本実施形態の水分量の推定方法では、残水量と含水量とを区別して推定し、その際、アノード側とカソード側とを分けて残水量分布を推定する。また、残水量と含水量とについて、セル面内での分布のみならずセル積層方向での分布も推定する。以下では、先ず、セル面内での水分布(残水量分布及び含水量分布)の推定方法について説明する。次いで、推定に際してセル積層方向の温度バラツキ・配流バラツキをどのように考慮するかについて説明し、セル積層方向での水分布の推定方法に言及する。
1.セル面内での水分布の推定方法
図8に示すように、先ず、電流値I、セル入口温度Tin,i、セル出口温度TOUT,i、エア流量Qair,i、水素流量QH2,i、エア背圧Pair,i及び水素圧PH2,iを読み込む(ステップS1)。
ここで、電流値Iは、電流センサ61によって検出されたものである。セル入口温度Tin,i等における下付き添え字の「i」は、セル積層体3における単セル2の位置を示すセルチャンネルである。具体的には、図9に示すセル積層体3をモデルにした場合、反応ガスの供給口(図1の供給口11a,12aに相当する。)及び排出口(図1の排出口11b,12bに相当する。)に最も近い端部セル2aのセルチャンネル「i」は1となる。200枚の単位セル2が積層されている場合には、もう一方の端部セル2aのセルチャンネル「i」は200となる。
セル入口温度Tin,i及びセル出口温度TOUT,iは、それぞれ、単セル2(セルチャンネル:i)の冷媒入口29a及び冷媒出口29bでの冷媒温度である。エア流量Qair,i及び水素流量QH2,iは、それぞれ、単セル2iの空気入口28a及び水素入口27aに流入する空気及び水素ガスの供給流量である。エア背圧Pair,i及び水素圧PH2,iは、それぞれ、単セル2iの空気出口28b及び水素入口27aでの空気及び水素ガスの圧力である。燃料電池が一つの単セル2しか有しない場合や、セル積層方向の温度バラツキ・配流バラツキを考慮しない場合は、次のとおりとなる。
in,i:温度センサT1による検出値
OUT,i:温度センサT2による検出値
air,i:流量センサF1による検出値
H2,i:流量センサF2による検出値から求めた水素供給流量
air,i:圧力センサP1による検出値
H2,i::圧力センサP2による検出値
一方、燃料電池1が複数の単セル2を有する場合には、セル積層方向の位置に応じて放熱量や圧損等が異なるので、単セル2間で放熱量バラツキ並びに反応ガス及び冷媒の配流バラツキがある。したがって、この点を考慮したセル入口温度Tin,i等を用いることが望ましい。この考慮の仕方については後述する。
なお、セル入口温度Tin,i等として用いる各検出値は、上記センサ以外のセンサや算出方法による値を用いることもできる。換言すると、温度センサ、流量センサ及び圧力センサは、図6に示す以外の位置にも設けられてもよく、その数及び位置は、適宜設計変更することができる。例えば、水素流量センサを燃料電池1の水素供給口11aの近くに設けて、その検出値を水素流量QH2,iとして用いるようにしてもよい。また、セル入口温度Tin,i及びセル出口温度TOUT,iは端部セル2aもしくはエンドプレート7a,7bに温度センサを取り付けることで、推定することも可能である。このように、冷媒の温度に代えて燃料電池スタック自体の温度を測定することで、より精度の高い水分推定が可能となる。
図8に示すステップS2では、セル入口温度Tin,iから各単セル2iのカソード入口露点TdCA及びアノード入口露点TdANを算出する。本実施形態では、燃料電池システム1に加湿器30が用いられているので、カソード入口露点TdCA及びアノード入口露点TdANとして、それぞれセル入口温度Tin,iを用いることができる。すなわち、空気入口28a及び水素入口27aが冷媒入口29aに近い場合は、次のとおり表すことができ、露点の積層バラツキを考慮することができる。
dCA=TdAN=Tin,i
なお、ステップS2では、セル出口温度Tout,iから各単セル2iのカソード入口露点TdCA及びアノード入口露点TdANを算出してもよい。また、別の実施態様によれば、露点計を用いてもよい。例えば、燃料電池システム1に加湿器が用いられていない場合や、セル入口温度Tin,iを利用しない場合には、燃料電池1のスタック入口(アノード側供給口11a及びカソード側供給口12a)にそれぞれ露点計を設置し、その検出値をカソード入口露点TdCA及びアノード入口露点TdANと設定することもできる。こうすることで、より精度の高い推定が可能となる。
また、空気配管系300に加湿器30が搭載されていないエア系無加湿システムでは、カソード入口露点TdCAを0℃として計算することもできる。あるいは、外気温及び外部湿度センサにより、カソード入口露点TdCA=外気温×外部温度として計算することも可能である。つまり、本推定方法は無加湿システムにも適用可能である。
図8に示すステップS3では、電極24A,24B間の水移動速度VH2OCAANを求める。水移動速度VH2OCAANは、次式により算出される。
H2OCAAN=DH2O×(PH2OCA−PH2OAN
ここで、PH2OCAは、単セル2iの電極24B側の水蒸気分圧であり、カソード入口露点TdCAにより算出される。また、PH2OANは、単セル2iの電極24A側の水蒸気分圧であり、アノード入口露点TdANにより算出される。DH2Oは、電解質膜23中の水拡散係数である。DH2Oは、一定値を用いることもできるが、湿度により変化するものであるため、この点を考慮することが望ましい。
例えば、図10に示すような電解質膜23の相対湿度とDH2Oとの関係を表す特性マップを予め作成しておき、この特性マップを用いて電解質膜23の相対湿度に対応するDH2Oの値を用いることができる。具体的には、燃料電池ステム1の前回運転におけるシャットダウン時に推定した電解質膜23の相対湿度α、燃料電池ステム1の放置(停止)中に推定した電解質膜23の相対湿度α、又は、燃料電池ステム1において今回の推定の直前に推定した電解質膜23の相対湿度αを用いて、今回の推定に用いるDH2Oの値(β)をマップから決定することができる。
図8に示すステップS4では、水移動速度VH2OCAAN、露点TdCA、露点TdAN、温度TOUT,i、エア背圧Pair,i、水素圧PH2,i、エア流量Qair,i、水素流量QH2,i及び電流値Iから、マップを用いて電流密度ix(ただし、xは任意の自然数。)を算出する。電流密度ixは、セル面内の任意の面積での電流密度であり、例えばx=4のときの各面積をs1〜s4とすると、I=i1×s1+i2×s2+i3×s3+i4×s4となる。電流密度ixの分布を算出した結果の一例を図11に示す。
また、ステップS4では、セル面内の電流分布及び相対湿度分布を算出する。これらを示す関数I及びRHは、以下のとおり表される。なお、関数I及びRHのそれぞれのパラメータ(TdCA、TdAN、TOUT,i、Pair,i、PH2,i、Qair,i、QH2,i、VH2OCAAN、ix)に対する感度が予めマップ化される。また、これらのパラメータにより、セル面内の過電圧分布も算出するようにしてもよい。
I=f(TdCA、TdAN、TOUT,i、Pair,i、PH2,i、Qair,i、QH2,i、VH2OCAAN、ix
RH=f(TdCA、TdAN、TOUT,i、Pair,i、PH2,i、Qair,i、QH2,i、VH2OCAAN、ix
図12は、ステップS4で算出したセル面内の相対湿度分布(反応ガス流路及び電解質膜の相対湿度分布)の一例を示す図である。図12において、セル面内位置に関連して水素ガス及び空気の流れが示されるように、本実施形態ではカウンターフローの流路形態を例にしている。図12に示されるように、AN流路(水素流路25A)では水素入口27aから水素出口27bにかけて相対湿度が100%を越えて過飽和の状態にある一方、CA流路(空気流路25B)では空気出口28b側で相対湿度が100%を下回る。また、電解質膜23では、その中央部(単セル2の中心部)が過飽和の状態になっている。
図8に示すステップS5では、アノード側及びカソード側のそれぞれについて、図12に示す相対湿度分布の結果から過飽和度σ1(相対湿度が100%を越えた分)及び未飽和度σ2(相対湿度が100%を下回った分)を算出し、液水生成速度Vvapliq及び液水蒸発速度Vliqvapを以下の式により算出する。これは、反応ガス流路での水の相(気相、液相)が変化することに鑑みて、水素流路25A及び空気流路25BにおけるVvapliq及びVliqvapをそれぞれ算出することにしたものである。
vapliq=k1×σ1
liqvap=k2×σ2
ここで、係数k1、k2は、温度や撥水性による因子であり、反応ガス流路の物性によるものである。係数k1、k2は、実験から予めマップ化される。
図8に示すステップS6では、アノード側及びカソード側のそれぞれについて、反応ガス流路での水移動速度V_liqを以下の式により算出する。反応ガス流路での反応ガスの流れによって液水が吹き飛ばされてセル面内から排出されるので、このことを考慮して、水素流路25A及び空気流路25Bのそれぞれにおける水移動速度V_liqを算出することにしたものである。
V_liq=k3×V_gas
ここで、水移動速度V_liqとは、反応ガスによって吹き飛ばされる液水の移動速度である。また、V_gasとは、反応ガス流路での水蒸気流量であり、反応ガスの供給流量や水蒸気分圧等の状態量に関するマップから算出されたものが用いられる。係数k3は、温度や撥水性による因子であり、反応ガス流路の物性によるものである。係数k3は、実験から予めマップ化される。
図13は、ステップS4〜S6を経て算出したセル面内の残水量分布の一例を示す図である。この残水量分布は、ステップS4で算出した反応ガス流路の相対湿度分布(図12)に、反応ガス流路での液水の変化(すなわち、上記ステップS5及びS6で算出したVvapliq、Vliqvap及びV_liq)を考慮することで求められる。図13から理解されるように、水素流路25Aでは水素出口27b側の方が水素入口27a側よりも残水量が多く、空気流路25Bでは空気出口28b側に向かうにつれて徐々に残水量が減っている。なお、図面として表さないが、セル面内の含水量分布は、ステップS4で算出した電解質膜23の相対湿度分布(図12)から求めることができるものであり、この相対湿度分布と近似したものとなる。
以上説明した手順により、ある計算時間における単セル2iの残水量及び含水量の変化量(水収支)が計算でき、水素流路25Aの残水量分布、空気流路25Bの残水量分布及び電解質膜23の含水量分布を求めることができる。セル面内を感度のあるメッシュ(例えば図13に示す5つのメッシュ)の粗さで水収支を計算することができ、どの部分にどれだけの残水量及び含水量があるのかを精度良く推定することができる。
2.推定に際してのセル積層方向の温度バラツキ・配流バラツキの考慮
各単セル2iについてのTIN,i、TOUT,i、Pair,i、PH2,i、Qair,i及びQH2,iを求めるには、次のように行う。
(1)セル入口温度T IN,i の算出について
図14に示すように、先ず、スタック入口温度Tin、冷媒流量QLLC、外気温T外気、及び車速V車速を読み込む(ステップS11)。ここで、Tinは、温度センサT1による検出値である。QLLCは、燃料電池1に供給される冷媒流量であり、冷却ポンプ50の回転数その他の検出値から推定することができる。あるいは、冷媒流路51に流量センサを設け、流量センサによる検出値を用いてもよい。T外気は、外気温センサ62による検出値であり、V車速は、車速センサ63による検出値である。
一般に、セル積層体3では、反応ガスの供給口14から遠ざかるにつれて、つまりセルチャンネル「i」が大きくなるにつれて放熱量が大きくなる。また、放熱の影響は、冷媒流量、外気温及び車速に応じて変化する。例えば、図15Aに示すように、冷媒流量QLLCが多いほど(Q1>Q2)、スタック入口温度TINは放熱の影響を受けずに済む。つまり、セル入口温度TIN,iがスタック入口温度TINよりも低下せずに済む。また、図15Bに示すように、T外気が高いほど(T外気1>T外気1)、スタック入口温度TINは放熱の影響を受けずに済む。
そこで、このような放熱による冷媒温度の低下を考慮し、セル入口温度TIN,iを次の関数として算出する(ステップS12)。
IN,i=f(QLLC、TIN、T外気、V車速)
これにより、上記したQLLC、TIN、T外気及び車速の各値からセルチャンネルiに対応するセル入口温度TIN,iを求めることができる。
(2)エア流量Q air,i 及びエア背圧P air,i の算出について
図16に示すように、先ず、エア流量Qair、エア背圧Pair、スタック入口温度TIN、スタック出口温度TOUT及び電流値Iを読み込む(ステップS21)。ここで、エア流量Qair、エア背圧Pair及びスタック出口温度TOUTは、それぞれ、流量センサF1、圧力センサP1及び温度センサT2による検出値である。また、ステップS21では、マニホールド15aに流入するエアのガス密度をスタック入口温度TIN及びエア流量Qairの関数として算出する。
次のステップS22では、単セル2iにおける残水量に基づいて、当該単セル2iのP−Q特性(エア背圧とエア流量との関係を表す特性)を決定する。例えば、図17に示すような、複数の残水量(x>y)に応じたP−Q特性(圧力―流量特性)を示すマップを予め取得しておき、図8に示すフローによって算出した直前の残水量(単セル2iのカソード側残水量の合計量。)に対応するP−Q特性を決定する。
次に、エア流量Qair、エア背圧Pair、スタック出口温度TOUT、上記で算出したガス密度及び各単セル2iのP−Q特性の関数として、セル入口圧力分布、セル流入流量分布及びセル出口圧力分布をマップより算出する(ステップS23)。これらの一例を示すと、図18A〜Cに示すとおりとなる。ここで、図18Bに示すセル流入流量及び図18Cに示すセル出口圧力は、セルチャンネルiに対応するエア流量Qair,i及びエア背圧Pair,iに相当するので、これらを求めることができる(ステップS24)。
なお、詳述しないが、単セル2iの水素流量QH2,i及び水素圧PH2,iについても、エア流量Qair,i及びエア背圧Pair,iの算出と同様の手法により算出することができる。この場合には、図18Aに示すセル入口圧力が水素圧PH2,iに相当し、図18Bに示すセル流入流量が水素流量QH2,iに相当するので、これらを求めることができる。
(3)セル出口温度T OUT,i の算出について
図19に示すように、先ず、温度センサT2の検出値として、スタック出口温度TOUTを読み込む(ステップS31)。また、上述したスタック入口温度TINの場合と同様に、冷媒流量QLLC、外気温T外気、及び車速V車速を読み込む。さらに、セル電圧Vi及び電流値Iを読み込み、単セル2iごとのI−V特性から各単セル2iの発熱量Qcell,iを推定する。
ここで、セル電圧Viは、図示省略したセルモニタによって検出される各単セル2iの電圧値を用いることができる。ただし、セルモニタ等のセンサを使うのではなく、各単セル2iにI−Vマップ(発電量、エア流量、水素流量、エア背圧、水素圧に依存)をもたせることでセル電圧Viを推定することもできる。なお、発熱量Qcell,iは、TΔSによ
る発熱と過電圧による熱損失とに起因したものである。
上述したスタック入口温度TINと同様に、セル積層体3における単セル2iの位置に応じて、スタック出口温度TOUTは放熱の影響を受ける。例えば、図20に示すように、冷媒流量QLLCが多いほど(QLLC1<QLLC2)、スタック出口温度TOUTは放熱の影響を受けずに済む。
そこで、発熱量Qcell,iのほか、冷媒流量QLLC,i及び放熱を考慮し、セル出口温度TOUT,iを次の関数として算出する(ステップS32)。
OUT,i=f(Qcell,i、QLLC,i、TOUT、T外気、V車速)
これにより、これらのパラメータに示す各検出値又は推定値からセルチャンネルiに対応するセル出口温度TOUT,iを求めることができる。
なお、QLLC,iは、各単セル2に供給される冷媒流量であり、燃料電池スタック1を一点として考えたときの上記の冷媒流量QLLCについて配流バラツキを考慮したものである。具体的には、冷媒流量QLLCとセルチャンネルiとの関係を表すマップをいくつかの冷媒流量QLLCごとに予め作成しておくことで、このマップを用いて、セルチャンネルiに対応するQLLC,iを算出することができる。
以上説明した(1)〜(3)の手順によれば、図8に示すフロー(ステップS1,S2及びS4)において、各単セル2iの状態量についてセル積層方向の温度分布(放熱量のバラツキなど)及び圧損分布(酸化ガス、燃料ガス及び冷媒の配流バラツキなど)を考慮した値を用いることができる。これにより、燃料電池1をスタックとしての一点で捉える場合に比べて、全ての単セル2について(つまりセル積層方向において)残水量分布及び含水量分布を精度良く推定することができる。
D.推定結果を利用した制御例
次に、上記推定方法による推定結果を利用した制御例について説明する。本制御例は、精度の高い推定結果を利用して、燃料電池1の水分布を考えた上で燃料電池1の間欠運転の頻度を設定し、間欠運転による水溜りの上昇を抑制することができるものである。以下、燃料電池システム100を車両に搭載した例にて、間欠運転を行う頻度(以下、間欠頻度という。)を設定する制御例を説明する。
図21は、燃料電池システム100を搭載した車両の電気系統を示す概略図である。
車両は、車輪に連結されたモータ701(負荷)を駆動力源とするものであり、モータ701には、燃料電池1又は蓄電装置702からの電流がインバータ703で三相交流に変換されて供給される。蓄電装置702は、充放電可能な二次電池又はキャパシタであり、モータ701に対し高圧DC/DCコンバータ704を介して燃料電池1に並列接続される。高圧DC/DCコンバータ704により、燃料電池1の出力電圧及び蓄電装置702の充放電が制御される。高圧DC/DCコンバータ704と燃料電池1との間には、燃料電池システム100の運転に供せられる補機類705(例えばコンプレッサ33、インジェクタ45、水素ポンプ46、冷却ポンプ50など)が接続される。なお、高圧DC/DCコンバー704の接続位置など、電気系統の各構成は適宜設計変更できる。
ここで、間欠運転及び間欠頻度について説明する。
間欠運転とは、燃料電池1のシステム効率が低下する所定の低負荷時(アイドリング時など)に燃料電池1の発電を停止する運転をいう。間欠運転では、電極24A,24Bへ水素ガス及び空気を供給する補機類705(コンプレッサ33、インジェクタ45、水素ポンプ46など)の作動を停止すると共に、燃料電池1の発電を停止する。そして、この間欠運転中に必要なモータ701の駆動力及び補機類705の補機動力は、蓄電装置702などの補助電源から供給される。上記した制御装置600の記憶部65には、間欠運転を行うモード及び間欠運転を行わない通常運転のモードなどが記憶されており、運転制御部68が、所定の低負荷のときに、必要に応じて通常運転のモードから間欠運転のモードに切り替える。
間欠頻度Xとは、間欠運転モードであることを示す間欠運転フラグのオン時間(Ton)の時間的割合をいう。具体的に、間欠頻度Xとは、次の式で表されるものであり、間欠運転フラグのオン時間(Ton)を、そのオン時間(Ton)とオフ時間(TOFF)とを加算したスイッチング周期で除したものである。
X=Ton/(Ton+TOFF
図22は、図21に示す燃料電池車両において、間欠頻度Xを設定して間欠運転を実行する処理内容を示すフローチャートである。この処理は、燃料電池システム100を始動させるスタートスイッチがオン状態になったときから、制御装置600のCPUによってある時間毎(例えば10μ秒毎)に実行される(ステップS101)。
本ルーチンが実行されると、間欠運転を行うほどの所定の低負荷であるかどうか、すなわちモータ701の要求負荷(要求パワー)が所定値Psより小さいか否かが判断される(ステップS102)。この要求負荷は、制御装置600によって次の手順で求められる。先ず、上記したアクセル開度センサの出力から、モータ701の目標回転数及び目標トルクを設定する。これらの積は、モータ701から出力すべき動力となるので、次に、この動力を、トラクションモータ701の運転効率、消費電力当たりに出力される動力の比で除する。これにより、要求負荷が求められる。
所定値Psは、間欠運転モードを行うかどうかの判断基準となるものであり、その一例が本願と同一出願人の特開2005−71797号公報(特に図4及び0044)に開示されている。つまり、所定値Psは、燃料電池1の出力が低いためにシステム効率が低くなる低負荷領域の燃料電池出力の境界値であり、例えば燃料電池1の発電能力の約10%に設定される。ただし、所定値Psは、蓄電装置702の充放電能力やその残存容量等に応じて適宜設定することが可能であり、上記したものに限られるものではない。
ステップS102において要求負荷が所定値Psよりも小さい場合には(ステップS102;Yes)、この低負荷の状態が所定時間t1だけ継続すると仮定した場合における単セル2内の残水量について、複数の間欠頻度Xごとに推定する(ステップS103)。
より詳細に説明すると、図23に示すように、間欠頻度Xの大きさにより、時間経過ごとの残水量は異なることになる。例えば、間欠頻度X=0.25である場合の曲線L1と、間欠頻度X=0.5である場合の曲線L2とでは、燃料電池1の発電による昇温のし易さの関係上、時間経過に伴う残水量の変化量が異なる。間欠運転の開始時(時間t0)から所定時間t1が経過した時点では、間欠頻度が低い曲線L1の方が残水量が多いが、その後の時間2の時点では、両者の関係は逆転する。
ステップ103では、複数の間欠頻度(X=0、0.25、0.5、0.75、1など)の場合について、それぞれ間欠運転を行った場合に推定される所定時間t1での残水量を算出する。この残水量の推定は、上記した推定部67による推定方法を用いて、全ての単セル2の水素流路25A及び空気流路25Bそれぞれの残水量分布を推定することで行われる。
ここで、ステップS103における所定時間t1は、所定の低負荷運転が開始されてからの任意又は一定の時間が経過した時点に設定することができるが、好ましくは更新可能に記憶部65に記憶されるとよい。つまり、所定時間t1は、燃料電池システム100の運転傾向に応じて学習されることが好ましい。この場合、所定時間t1は、以下に順に述べるとおり、最大継続時間又は頻度の高い継続時間に更新されるとよい。
図24は、所定時間t1を最大継続時間に更新する場合の処理内容を示すフローチャートである。本ルーチンでは、先ず、モータ701の要求負荷が所定値Psより小さいとき、その継続時間tmを計測する(ステップS111)。この継続時間tmの計測は、制御装置600に組み込まれたタイマー部(図示省略)によって行われる。なお、要求負荷及び所定値Psは、上記した図22のステップS102における要求負荷及び所定値Psと同じである。
そして、継続時間tmが今までに記憶していた最大継続時間を上回る場合には(ステップS112;Yes)、現在の所定時間t1である最大継続時間を継続時間tmに更新する(ステップS113)。これにより、低負荷状態の継続時間の最大値が記憶部65で学習される。よって、燃料電池車両の運転パターンが人によって異なっていても、その人の運転傾向(低負荷状態の長さ)を踏まえた所定時間t1に設定することができる。なお、継続時間tmが今までに記憶していた最大継続時間以下である場合には、その継続時間を記憶部65に随時記憶させる必要はない。
次に、所定時間t1を頻度の高い継続時間に設定・更新する場合を説明する。この場合も、先ず、ステップS111と同様に、モータ701の要求負荷が所定値Psより小さいときに、その継続時間tmを計測する。このとき、計測した都度の継続時間tmを全て記憶部65に記憶させる。そして、この記憶させた継続時間の頻度分布をとり、その中で最も頻度の高い継続時間に、現在の所定時間t1を更新する。これにより、低負荷の状態がたまたま長く続いたようなレアケースでの継続時間に、所定時間t1が更新されるのを抑制することができる。
再び図22に戻って説明する。
ステップS104では、ステップS103で間欠頻度Xごとに推定された残水量のうち、残水量の増加(上昇幅)が比較的抑えられる間欠頻度で間欠運転を行う。例えば図23に示した一例に照らすと、所定時間t1の時点では曲線L2(間欠頻度X=0.5)の方が残水量が比較的少ないので、この間欠頻度X=0.5にて間欠運転を行うように、通常運転モードから間欠運転モードに切り替える。
ここで、ステップ104において、間欠頻度Xを決定する際に用いる残水量(推定値)について詳述する。この残水量(推定値)としては、所定時間t1の時点での任意、所定又は全ての単セル2の残水量を用いることができるが、その中でも端部セル2aの残水量を用いることが好ましい。これは、セル積層体3における複数の単セル2の中で、端部セル2aが最も残水量が溜まり易いからである。特に、セル積層体3における反応ガスの供給方向下流側に位置する端部セル2aほど、残水量が溜まり易いので、この端部セル2aについてステップS103で推定された間欠頻度Xごとの残水量のうち、所定時間t1における推定値が最も小さくなる間欠頻度Xで間欠運転を行うとよい。
別の態様では、間欠頻度Xを決定する際に用いる残水量(推定値)として、所定時間t1の時点での全単セル2中の最大残水量と最小残水量との差を用いることも好ましい。そして、ステップS103で推定された間欠頻度Xごとの残水量のうち、最大残水量と最小残水量との差が比較的小さくなる間欠頻度Xで間欠運転を行うとよい。こうすることで、単セル2によって残水量のバラツキがあっても、複数の単セル2の局所的な水溜りの上昇を抑制することができる。なお、比較的小さくなる間欠頻度Xには、差が最も小さくなる間欠頻度Xを含む。
なお、上記のとおり、ステップS103では単セル2の水素流路25A及び空気流路25Bそれぞれの残水量分布が推定されるため、ステップS104において間欠頻度Xを決定する際に用いる残水量(推定値)の種類として、単セル2における総残水量、単セル2の水素流路25Aにおける総残水量、単セル2の空気流路25Bにおける総残水量、水素流路25Aにおける部分的な残水量、又は空気流路25Bにおける部分的な残水量が考えられる。ステップS104では、これらのいずれかを用いればよい。ただし、その中でも空気流路25における総残水量を用いることが好ましい。これは、ユーザーのフィーリング(車両の加速感)を損なうエア不足を確認できるからである。そして、より好ましくは、水素流路25Aにおける総残水量を用いることが好ましい。これは、単セル2を劣化させる水素ガス不足を確認できるからである。
以上説明したように、本実施形態の制御例によれば、精度の高い水分布の推定結果を利用しているので、単セル2内の水溜りの上昇を抑制するような間欠頻度Xで間欠運転を行うことができる。また、間欠運転を実際に行う必要が生じたときに残水量の推定を開始し、所定時間t1の時点での残水量(推定値)を基準として間欠頻度Xを設定するので、水溜りの上昇をより確実に抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、間欠運転による水溜りを起因としたセル電圧の低下を精度良く抑制することができ、システム全体としても燃費を向上することができる。
1:燃料電池、2:単セル、2a:端部セル、3:セル積層体、23:電解質膜、24A:アノード電極、24B:カソード電極、25A:水素流路(燃料ガス流路)、25B:空気流路(酸化ガス流路)、67:推定部、68:運転制御部、100:燃料電池システム、300:空気配管系、400:水素配管系、500:冷媒配管系、600:制御装置

Claims (7)

  1. アノード電極、カソード電極、これらの間の電解質膜及び反応ガス流路を有する単セルを複数積層してなるセル積層体を含む燃料電池を備えると共に、所定の低負荷のときに前記燃料電池の間欠運転を行うモードを備える燃料電池システムにおいて、
    前記電解質膜を介して前記アノード電極と前記カソード電極との間で行われる水移動を考慮して、各単セルのセル面内における反応ガス流路の残水量分布及び電解質膜の含水量分布を推定する推定部と、
    前記推定部により推定された反応ガス流路の残水量に応じて、前記間欠運転を行う頻度(以下、「間欠頻度」といい、次の式で表されるものをいう。)を設定する運転制御部と、備えた、燃料電池システム。
    式:X=Ton/(Ton+TOFF
    ただし、Xは間欠頻度であり、Tonは間欠運転を行うモードであることを示す間欠運転フラグのオン時間であり、TOFFは当該間欠運転フラグのオフ時間である。
  2. 前記運転制御部は、前記残水量の増加が比較的抑えられる間欠頻度で間欠運転を行う、請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記推定部は、前記所定の低負荷になったときに、この状態が継続した場合における所定時間後の残水量を二以上の間欠頻度毎に推定し、
    前記運転制御部は、間欠頻度毎に推定された残水量のうち、比較的少ない残水量に係る間欠頻度で間欠運転を行う、請求項1に記載の燃料電池システム。
  4. 前記運転制御部は、前記比較的少ない残水量に係る間欠頻度に代えて、前記所定時間後の全単セル中の最大残水量と最小残水量との差が比較的小さくなる間欠頻度を用いる、請求項3に記載の燃料電池システム。
  5. 前記所定時間を記憶する記憶部を更に備え、
    前記記憶部は、当該燃料電池システムの運転傾向に応じて、前記所定時間を更新して記憶する、請求項3又は4に記載の燃料電池システム。
  6. 前記記憶部は、前記所定の低負荷の状態が最も長く続いたときの継続時間に、前記所定時間を更新する、請求項5に記載の燃料電池システム。
  7. 前記記憶部は、前記所定の低負荷のたびにその継続時間を記憶すると共に、その記憶した継続時間の中で頻度が高い継続時間に前記所定時間を更新する、請求項5に記載の燃料電池システム。
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