JP5516392B2 - カーボン蛍光体及び蛍光体分散液 - Google Patents

カーボン蛍光体及び蛍光体分散液 Download PDF

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Description

本発明は、カーボン蛍光体及び蛍光体分散液に関し、さらに詳しくは、生化学反応を検出するためのプローブ、発光素子、LED、ディスプレイ、蛍光タグなどに用いることができる新規なカーボン蛍光体及び蛍光体分散液に関する。
蛍光体とは、特定の波長の光を吸収することで電子が励起され、励起された電子が基底状態に戻る際に光(蛍光、燐光)を発する物質をいう。
蛍光体としては、
(1)酸化物、窒化物、硫化物などを母体とし、発光中心となるイオンがドープされた無機蛍光体、
(2)希土類錯体などの有機蛍光体、
(3)カーボンナノ粒子、グラフェンナノシートなどのカーボン蛍光体、
などが知られている。
これらの中でも、グラフェンをベースとするカーボン蛍光体は、電気的特性、熱的特性及び機械的特性に優れ、かつ、化学的にも安定であるという特徴を持つ。
このようなグラフェン系材料からなる蛍光体に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、非特許文献1には、
(1)出発原料として、グラフェン酸化物(GO)の熱還元により得られるマイクロメートルサイズの波形のグラフェンナノシート(GSs)を用い、
(2)GSsを高濃度のH2SO4及びHNO3で酸化処理することにより、エッジ及び基底面上にC=O/COOH、OH、C−O−Cなどの酸素含有官能基を導入し、
(3)酸化処理されたGSsを200℃で水熱処理し、
(4)得られたコロイド溶液をろ過及び透析する
ことにより得られるグラフェン量子ドット(GQDs)が開示されている。
同文献には、
(a)水熱処理によって脱酸素が生じ、GQDsの(002)面間隔は、バルクのグラファイトに近づく点、
(b)水熱処理によってGSsの大きさが著しく小さくなり、透析によって極めて微細なGQDs(平均直径:9.6nm)を分離することができる点、
(c)酸化処理されたGSsは、フォトルミネセンス(PL)挙動を示さないのに対し、GQDsは、中性の媒体中においても、明るい青色のルミネセンスを放出する点、
(d)GQDsは、320nmの励起によって、430nmに強いピークを持つPLスペクトルを示す点、及び、
(e)GQDsのPL量子効率は6.9%であり、発光性のカーボンナノ粒子と同等である点、
が記載されている。
非特許文献2には、ヒドラジン蒸気で還元処理されたGO薄膜が開示されている。
同文献には、
(a)GOのPL特性は、sp3マトリックス中に埋め込まれた小さなsp2カーボンクラスターの中に局在している電子−ホール(e−h)対の再結合に由来する点、
(b)GOの吸光度は、ヒドラジン暴露時間と共に増加し、酸素の変化(出発原料のGOの〜39at%から還元処理されたGOの7〜8at%まで)と一致する点、
(c)GO薄膜のPLピーク位置は、還元処理による変化が少なく、390nm付近に中心がある点、及び、
(d)形成直後のGO薄膜のPL強度は弱いのに対し、短時間のヒドラジン蒸気の暴露はPL強度の劇的な増加をもたらす点、
が記載されている。
さらに、非特許文献3には、溶液化学により合成されたグラフェン量子ドットであって、132個の共役炭素を含み、かつ、3方向が溶解を促進させる3個の2'、4'、6'−トリアルキルフェニル基で囲まれているものが開示されている。
同文献には、
(a)このグラフェンは、種々の有機溶媒中において凝集することなく安定である点、
(b)このグラフェンをトルエン中に分散させ、室温において、510nmで励起すると、670nmと740nmに発光ピークが現れる点、
(c)740nmの発光は、燐光であり、その時間依存挙動は、室温において、4μsの時定数を持つ単一の指数関数減衰で表される点、及び、
(d)670nmの発光は、蛍光であり、5.4nsと1.7nsの時定数を持つ双指数間数減衰に適合する点、
が記載されている。
グラフェンナノシートをベースとするカーボン蛍光体は、非特許文献1〜2に記載されているように、青色のルミネセンスを放出する。また、従来の蛍光体の中には、カドミウムのような有害元素を含むものも知られているが、カーボン蛍光体は、PL特性を得るためにこのような有害元素を必要としない。
しかしながら、これまでに報告されているカーボン蛍光体の発光効率は、非特許文献1に記載されているように、最大で6.9%である。また、従来の方法により得られるカーボン蛍光体は、非特許文献2に記載されているように、発光波長の制御が難しい。
D.Pan et al., Adv.Mater. 2009, 21, 1-5 G.Eda et al., Adv.Mater. 2010, 22, 505-509 M.L.Mueller et al., Nano Lett. 2010, 10, 2679-2682
本発明が解決しようとする課題は、相対的に高い発光効率を示す新規なカーボン蛍光体を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、発光波長の制御が容易な新規なカーボン蛍光体を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなカーボン蛍光体を含む蛍光体分散液を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るカーボン蛍光体は、単層又は多層の窒素含有グラフェンナノシートからなり、発光効率が15%以上であることを要旨とする。
また、本発明に係る蛍光体分散液は、本発明に係るカーボン蛍光体を溶媒に分散させたものからなる。
グラフェンナノシートに窒素を導入すると、発光効率が増大する。これは、窒素の導入によって、発光中心の濃度が増加するためと考えられる。
また、グラフェンナノシートに窒素を導入すると、発光波長が変化する。これは、窒素の導入によって、電子がπ*励起状態からn*励起状態へエネルギー移動するためと考えられる。
実施例1で合成されたカーボン蛍光体のTEM写真である。 実施例1で合成されたカーボン蛍光体の蛍光スペクトルである。 実施例2で合成されたカーボン蛍光体のTEM写真である。 実施例2で合成されたカーボン蛍光体の蛍光スペクトルである。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. カーボン蛍光体]
本発明に係るカーボン蛍光体は、単層又は多層の窒素含有グラフェンナノシートからなる。カーボン蛍光体は、単層の窒素含有グラフェンナノシート又は多層の窒素含有グラフェンナノシートのいずれか1種のみで構成されていても良く、あるいは、両者の混合物であっても良い。
[1.1. 窒素含有グラフェンナノシート]
本発明において、「グラフェンナノシート」とは、炭素原子で構成された2次元層状構造を少なくとも一部有するものであって、さらには、該層面内の主要部分が炭素の環構造および(sp2結合性の)芳香環を含んだものであって、不可避的不純物としての窒素を0.5wt%未満含有したものをいう。
PL特性を示すためには、グラフェンナノシートは、sp3型の混成軌道をもつ炭素からなる絶縁性のマトリックス(sp3マトリックス)中に、sp2型の混成軌道をもつ炭素からなる微細なクラスター(sp2クラスター)が埋め込まれた構造を備えている必要があると考えられている。すなわち、PL特性を示すグラフェンナノシートにおいて、sp2クラスターは、発光中心として機能すると考えられている。
本発明において、「窒素含有グラフェンナノシート」とは、グラフェンナノシートに意図的に窒素が導入されたものであって、窒素含有量が0.5wt%以上であるものをいう。
本発明において、「窒素が導入されている」とは、
(1)グラフェンナノシートを構成する炭素の一部が窒素で置換されていること、
(2)グラフェンナノシートのエッジ及び/又は基底面に窒素含有官能基が結合していること、又は、
(3)グラフェンナノシートの表面又はシート間に窒素含有化合物が吸着していること、
をいう。
グラフェンナノシートに導入された窒素は、置換、結合又は吸着のいずれか1種の形態で存在していても良く、あるいは、2種以上の形態で存在していても良い。
本発明において、「窒素含有官能基」とは、窒素を構成元素として含む官能基をいう。窒素含有官能基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、N−オキシド基、N−ヒドロキシ基、ヒドラジン基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基などがある。
窒素含有グラフェンナノシートは、これらのいずれか1種の窒素含有官能基が結合しているものでも良く、あるいは、2種以上が結合しているものでも良い。
本発明において、「窒素含有化合物」とは、窒素を構成元素として含む化合物であって、水に溶解又は分散可能なものをいう。窒素含有化合物としては、例えば、
(1)尿素、アンモニア、チオ尿素、ヒドラジン、硝酸エステル、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、ヒドロキシルアミン、ピリジンN−オキシド、N−ヒドロキシルアルキレンイミン、アジ化ナトリウム、ナトリウムアミド、カルボン酸アジド、
(2)メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミンなどのアルキルアミンやそのハロゲン酸塩、
(3)エチレンジアミン、プロパンジアミンなどのジアミン類、
などがある。
窒素含有グラフェンナノシートは、これらのいずれか1種の窒素含有化合物が吸着しているものでも良く、あるいは、2種以上が吸着してるものでも良い。
[1.2. 窒素含有量]
カーボン蛍光体に含まれる窒素含有量は、発光効率及び発光波長に影響を与える。
一般に、窒素含有量が多くなるほど、発光効率が増大し、あるいは、発光波長の変化量が大きくなる。このような効果を得るためには、窒素含有量は、0.5wt%以上である必要がある。窒素含有量は、さらに好ましくは、2wt%以上、さらに好ましくは、5wt%以上である。
一方、窒素含有量が多くなりすぎると、電子状態が大幅に変化し、PL特性が得られない。従って、窒素含有量は、50wt%以下が好ましい。窒素含有量は、さらに好ましくは、20wt%以下、さらに好ましくは、10wt%以下である。
[1.3. 平均厚さ]
窒素含有グラフェンナノシートの厚さ(すなわち、シートの積層数)は、発光効率及び発光波長に影響を与える。
単層の窒素含有グラフェンナノシートであっても、蛍光体として機能する。単層の窒素含有グラフェンナノシートの厚さは、約0.3nmである。すなわち、窒素含有グラフェンナノシートの平均厚さは、0.3nm以上であれば良い。平均厚さは、さらに好ましくは、1nm以上、さらに好ましくは、2nm以上である。
窒素含有グラフェンナノシートの厚さが厚くなるほど、発光波長が長くなる。これは、sp2クラスターのシート積層方向のサイズが大きくなることにより、π−π*エネルギーギャップが小さくなるためと考えられる。
しかしながら、窒素含有グラフェンナノシートの厚さが厚くなりすぎると、電子構造がバルクに近づくため、効率的な発光が得られない。従って、窒素含有カーボンナノシートの平均厚さは、50nm以下が好ましい。平均厚さは、さらに好ましくは、20nm以下、さらに好ましくは、10nm以下である。
ここで、「窒素含有グラフェンナノシートの平均厚さ」とは、無作為に選んだn個(n≧5)の窒素含有グラフェンナノシートの厚さの平均値をいう。
厚さの測定方法としては、
(1)原子間力顕微鏡(AFM)を用いてシートの厚さを直接測定する方法、
(2)透過電子顕微鏡(TEM)写真で観察されるシートの層数から理想的な1層分の厚み(0.34nm)を考慮して厚さを求める方法、
などがある。いずれの方法を用いても、ほぼ同等の結果が得られる。
[1.4. 平均サイズ]
窒素含有グラフェンナノシートのサイズは、発光効率及び発光波長に影響を与える。
一般に、窒素含有グラフェンナノシートのサイズが小さくなるほど、量子サイズ効果により、発光効率は増大するが、発光波長は短くなる。可視光域で発光させるためには、窒素含有グラフェンナノシートの平均サイズは、1nm以上が好ましい。平均サイズは、さらに好ましくは、2nm以上、さらに好ましくは、3nm以上である。
一方、窒素含有グラフェンナノシートのサイズが大きくなりすぎると、発光中心から放出された蛍光がシートに再吸収される、いわゆる「消光」が起こるため、発光効率が低下する。従って、窒素含有グラフェンナノシートの平均サイズは、1000nm以下が好ましい。平均サイズは、さらに好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、100nm以下である。
ここで、「窒素含有グラフェンナノシートの平均サイズ」とは、無作為に選んだn個(n≧5)の窒素含有グラフェンナノシートのサイズの平均値をいう。
また、「窒素含有グラフェンナノシートのサイズ」とは、シート平面の長径(長さが最大となる方向の長さ)をいう。
[1.5. 発光効率]
本発明に係るカーボン蛍光体は、1%以上の発光効率を示す。平均厚さ、平均サイズ、窒素含有量などを最適化すると、発光効率は、さらに増大する。具体的には、これらを最適化することによって、カーボン蛍光体の発光効率は、7%以上、10%以上、15%以上、あるいは、20%以上となる。
ここで、「発光効率」とは、吸収された光子数に対する蛍光として発光される光子数の割合をいう。
[2. カーボン蛍光体の製造方法]
本発明に係るカーボン蛍光体の製造方法は、
窒素含有化合物を溶解させた水溶液に酸化グラファイト又はグラフェン酸化物を分散させる分散工程と、
前記水溶液を60℃以上で加熱する加熱工程と
を備えている。
[2.1. 分散工程]
[2.1.1. 窒素含有化合物]
「窒素含有化合物」とは、窒素を構成元素として含む化合物であって、水に溶解又は分散可能なものをいう。窒素含有化合物の具体例は、上述した通りであるので、説明を省略する。出発原料には、上述したいずれか1種の窒素含有化合物を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
これらの中でも、尿素は、窒素含有化合物として特に好適である。これは、酸化グラファイト又はグラフェン酸化物中の酸素官能基とペプチド結合を形成しやすく、反応性が高いためである。
窒素含有化合物は、水に溶解又は分散させた水溶液の状態で使用される。水溶液に含まれる窒素含有化合物の濃度は、特に限定されるものではなく、出発原料の種類や要求される特性などに応じて最適な濃度を選択すれば良い。窒素含有化合物の濃度は、通常、0.1〜10mol/Lである。
[2.1.2. 酸化グラファイト及びグラフェン酸化物]
「酸化グラファイト」とは、グラファイトを構成するグラフェンナノシートのエッジ及び/又は基底面上に酸素含有官能基(例えば、COOH−基、OH−基、−C−O−C−基など)が結合しているものをいう。酸化グラファイトは、例えば、強酸(濃硫酸)中で酸化剤(過マンガン酸カリウム、硝酸カリウムなど)を用いてグラファイトを酸化させることにより得られる。
「グラフェン酸化物」とは、酸化グラファイトの層間を剥離させることにより得られるシート状物質をいう。グラフェン酸化物は、例えば、酸化グラファイトを水溶液中に分散させ、超音波を照射することにより得られる。
本発明において、出発原料には、層間剥離を行う前の酸化グラファイト又は層間剥離させたグラフェン酸化物のいずれか一方を用いても良く、あるいは、双方を用いても良い。
酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物は、窒素含有化合物を含む水溶液に添加される。水溶液に含まれる酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物の量は、特に限定されるものではなく、出発原料の種類や要求される特性などに応じて最適な量を選択すれば良い。酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物の量は、通常、0.1〜50g/Lである。
[2.2. 加熱工程]
窒素含有化合物を分散させた水溶液に酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物を分散させた後、水溶液を加熱する。加熱は、反応速度を速くするために行う。加熱温度が水溶液の沸点を超える場合、加熱は、密閉容器内で行う。
加熱温度が低すぎると、現実的な時間内に反応が十分進行しない。従って、加熱温度は、60℃以上である必要がある。加熱温度は、さらに好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、80℃以上である。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、置換や結合した窒素が脱離するおそれがある。また、高価な耐圧容器が必要となり、製造コストが増大する。従って、加熱温度は、200℃以下が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、180℃以下、さらに好ましくは、160℃以下である。
加熱時間は、加熱温度に応じて、最適な時間を選択する。一般に、加熱温度が高くなるほど、短時間で反応を進行させることができる。加熱時間は、通常、1〜20時間である。
加熱条件を最適化すると、窒素含有グラフェンナノシートの窒素含有量、平均厚さ、及び、平均サイズを制御できる。一般に、加熱温度が高くなるほど、及び/又は、加熱時間が長くなるほど、窒素含有量が減少し、平均厚さが薄くなり、あるいは、平均サイズが小さくなる。
得られた窒素含有グラフェンナノシートは、そのまま各種の用途に用いても良く、あるいは、必要に応じて、洗浄、ろ過及び/又は透析を行っても良い。
[3. 蛍光体分散液]
本発明に係る蛍光体分散液は、本発明に係るカーボン蛍光体を溶媒に分散させたものからなる。
溶媒は、特に限定されるものではなく、カーボン蛍光体を均一に分散できるものであれば良い。溶媒には、水、有機溶剤、これらの混合物などを用いることができる。
例えば、カーボン蛍光体は、通常、親水性である。この場合、溶媒には、水及び極性有機溶剤から選ばれるいずれか1種以上を含むもの好ましい。
一方、窒素含有量が多くなるほど、カーボン蛍光体の疎水性が大きくなる。このような場合には、溶媒として1種又は2種以上の非極性有機溶剤を含むものを用いても良い。
蛍光体分散液の濃度は、特に限定されるものではなく、用途に応じて、最適な濃度を選択すれば良い。
[4. カーボン蛍光体及びその製造方法、並びに、蛍光体分散液の作用]
非特許文献1には、酸素含有官能基が導入されたグラフェンナノシート(GSs)を水熱処理すると、青色のルミネセンスを放出するグラフェン量子ドット(GQDs)が得られる点が記載されている。しかしながら、同文献に記載された方法では、430nmに蛍光波長ピークを持つGQDsしか得られない。これは、発光波長を決定するsp2クラスターのサイズを制御できないためである。また、このGQDsは、発光効率が低い。これは、発光中心サイトが少ないためである。
一方、非特許文献2には、グラフェン酸化物の薄膜をヒドラジン蒸気で処理すると、発光強度が増大する点が記載されている。
しかしながら、同文献に記載された方法では、近紫外光である390nmに蛍光波長ピークを持つGSs薄膜しか得られない。これは、発光波長を決定するsp2クラスターのサイズを制御できないためである。また、ヒドラジン蒸気で処理すると、グラフェン酸化物表面のカルボニル基とヒドラジンの反応により窒素がわずかに結合することが知られているが、蛍光波長に影響を与えるほどの結合量または結合状態にはならない。
これに対し、酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物を水に分散させ、所定の温度で加熱すると、酸化グラファイトの層間剥離、及び剥離したシート状のグラフェン酸化物のナノサイズ化が起こる。これと同時に、酸化グラファイト又はグラフェン酸化物に結合している酸素含有官能基(例えば、エポキシド基)の還元反応が起こり、発光中心となるsp2クラスターの濃度が増加する。
この時、水溶液中に窒素含有化合物を添加すると、酸化グラファイト又はグラフェン酸化物に結合している酸素含有官能基の還元と同時に、窒素の置換、結合及び/又は吸着が起こる。その結果、窒素含有化合物を添加しない場合に比べて、高い発光効率が得られる。また、窒素含有量、シートの厚さ、シートの積層数等を制御することにより、発光波長を比較的容易に制御できる。
窒素の導入によって発光効率が増大するのは、
(1)sp3マトリックス中の炭素が窒素で置換されることによって、置換領域がsp2クラスターに類似する発光中心となり、発光中心の濃度が増加するため、又は、
(2)sp3マトリックス中の炭素に窒素含有官能基が結合することによって、結合領域がsp2クラスター領域に類似する発光中心となり、発光中心の濃度が増加するため、
と考えられる。
窒素の導入によって発光波長が変化するのは、sp2クラスター中の炭素が窒素で置換され、sp3マトリックス中の炭素に窒素含有官能基が結合し、又は、sp2クラスターの近傍に窒素含有化合物が吸着することによって、電子が、カーボンの電子励起状態であるπ*励起状態から、よりエネルギーの低い窒素のn*励起状態へエネルギー移動するためと考えられる。
(実施例1)
[1. 蛍光体分散液の作製]
[1.1. 実施例1〜2]
0.1gの酸化グラファイトを0.2mol/Lの尿素水溶液:5mLに分散させた。得られた水溶液を密閉容器中、150℃×10時間で加熱した。加熱後、充分に洗浄を行い、窒素含有グラフェンナノシートを分離した。得られた窒素含有グラフェンナノシートを再度、水に分散させ、蛍光体分散液を得た。
[2. 試験方法]
[2.1. 透過顕微鏡(TEM)観察]
TEMを用いて、窒素含有グラフェンナノシートの観察を行った。TEM写真から、シートの平均厚さ及び平均サイズを測定した。
[2.2. 蛍光スペクトル]
分光蛍光光度計(FP−6500、日本分光(株)製)を用いて、蛍光体分散液の蛍光スペクトルを測定した。
[2.3. 発光効率]
分光蛍光光度計(FP−6500、日本分光(株)製)及び紫外可視近赤外分光光度計(UV−3600、島津製作所(株)製)を用いて、発光効率を測定した。発光効率が既知であるキニーネ硫酸塩(0.1モル硫酸水溶液中での発光効率が54%)色素を含む色素分子溶液と蛍光体分散液について、それぞれ、励起波長での吸光度と蛍光強度を測定した。両者の吸光度と蛍光強度の比較から、発光効率を算出した。
[2.4. 窒素含有量]
CHNコーダー(vario MICRO cube, Elementar社製)を用いて、シート中の窒素含有量を測定した。
[3. 結果]
図1に、実施例1で得られたカーボン蛍光体のTEM写真を示す。図1より、平均厚さ:約2nm、平均サイズ:約10nmの窒素含有グラフェンナノシートが生成していることがわかる。
図2に、実施例1で得られたカーボン蛍光体の蛍光スペクトルを示す。実施例1の場合、スペクトルのピーク位置は430nmであり、半値幅は67nmであった。また、実施例1の発光効率は24%であり、非特許文献1に比べて非常に高い値であった(表1参照)。さらに、実施例1の窒素含有量は、8.1wt%であった(表1参照)。
(実施例2)
[1. 蛍光体分散液の作製]
加熱条件を80℃×10時間とした以外は、実施例1と同様にして、蛍光体分散液を得た。
[2. 試験方法]
実施例1と同一条件下で、TEM観察、並びに、蛍光スペクトル、発光効率、及び、窒素含有量の測定を行った。
[3. 結果]
図3に、実施例2で得られたカーボン蛍光体のTEM写真を示す。図3より、平均厚さ:約10nm、平均サイズ:約200nmの窒素含有グラフェンナノシートが生成していることがわかる。
図4に、実施例2で得られたカーボン蛍光体の蛍光スペクトルを示す。実施例2の場合、スペクトルのピーク位置は520nmであり、半値幅は85nmであった。また、実施例2の発光効率は19%であり、非特許文献1に比べて非常に高い値であった(表1参照)。さらに、実施例2の窒素含有量は、7.8wt%であった(表1参照)。
(比較例1)
[1. 蛍光体分散液の作製]
尿素水溶液に代えて水を用いた以外は、実施例1と同様にして、グラフェンナノシートが水に分散している蛍光体分散液を得た。
[2. 試験方法]
実施例1と同一条件下で、TEM観察、並びに、蛍光スペクトル、発光効率、及び、窒素含有量の測定を行った。
[3. 結果]
比較例1の場合、スペクトルのピーク位置は450nmであり、半値幅は127nmであった。しかしながら、発光効率は、1%未満であった(表1参照)。
さらに、比較例1の窒素含有量は、検出限界以下であった(表1参照)。
Figure 0005516392
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るカーボン蛍光体及び蛍光体分散液は、生化学反応を検出するためのプローブ、発光素子、LED、ディスプレイ、蛍光タグなどに用いることができる。

Claims (5)

  1. 単層又は多層の窒素含有グラフェンナノシートからなり、
    発光効率が15%以上であるカーボン蛍光体。
  2. 窒素含有量は、0.5wt%以上50wt%以下である請求項1に記載のカーボン蛍光体。
  3. 前記窒素含有グラフェンナノシートは、
    平均厚さが0.3nm以上50nm以下であり、
    平均サイズが1nm以上1000nm以下である
    請求項1又は2に記載のカーボン蛍光体。
  4. 前記窒素含有グラフェンナノシートは、
    窒素含有化合物を溶解させた水溶液に酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物を分散させ、前記水溶液を60℃以上で加熱する
    ことにより得られるものである請求項1から3までのいずれかに記載のカーボン蛍光体。
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載のカーボン蛍光体を溶媒に分散させた蛍光体分散液。
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