JP6977571B2 - 有機機能性薄膜、有機機能性積層膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子及び有機機能性薄膜形成用塗布液 - Google Patents

有機機能性薄膜、有機機能性積層膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子及び有機機能性薄膜形成用塗布液 Download PDF

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Description

本発明は、有機機能性薄膜、有機機能性積層膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子及び有機機能性薄膜形成用塗布液に関する。より詳細には、本発明は、耐リンス性及び電荷輸送機能に優れた有機機能性薄膜、有機機能性積層膜、有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機機能性薄膜形成用塗布液に関する。
1.はじめに
有機エレクトロニクスデバイス(以下、「有機電子デバイス」ともいう。)として知られている、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)、有機薄膜太陽電池及び有機トランジスタ等においては、電荷輸送、発光及び光電変換等の種々の機能を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜が用いられている。このような有機機能性薄膜の作製方法としては、蒸着法や塗布法等が知られているが、当該有機機能性薄膜のより一層の高性能化の要望を考慮した観点からは、いずれも改善すべき問題がある。
以下においては、有機機能性薄膜を備えた有機電子デバイスの典型例として、有機EL素子を例に挙げて説明する。
2.有機EL素子
2−1.有機EL素子の構造と発光の原理
有機EL素子は、陰極及び陽極の間に、発光性を示す有機化合物(発光材料ともいう)を含有した発光層を含む有機薄膜を挟持した発光素子である。有機EL素子は、電圧を印加することで、陰極及び陽極からそれぞれ注入された電子及び正孔(キャリア)が発光層中で再結合して生じた励起子が、高エネルギー状態から基底状態に戻る際に発する光を利用している。
2−2.有機EL素子中のキャリア伝導機構
一般的に、ほぼ全ての有機化合物は絶縁性を示すが、有機化合物間を電子又は正孔がホッピングで移動するホッピング伝導を利用することで電流が流れるようになる。特に、芳香族性の化合物やπ共役系のポリマーはホッピング伝導しやすいため、これらを用いることによって十分な電荷輸送性を得ることができる。
キャリアのホッピング伝導は以下の式で示され(空間電荷制限電流:SCLC)、低電圧で大電流を流すためには膜厚を薄くする必要がある。
Figure 0006977571
上記式中、J:電流密度(A/cm)、μ:キャリア移動度(cm/V・s)、L:膜厚(m)、ε:誘電率(F/m)、V:印加電圧(V)を示す。
また陽極又は陰極として用いられる金属電極表面には微細な凹凸が存在することが知られており、凸部が電極間に存在する有機薄膜層を突き抜けることによって、陽極と陰極が短絡してしまうことがある。そのため、有機薄膜層はそれをカバーする程度の厚さが必要となる。
以上より、一般的に有機EL素子の有機薄膜層の膜厚はおよそ100〜200nmが好ましいとされている。
2−3.有機EL素子に求められる設計
有機EL素子の高寿命化及び発光の高効率化のためには、注入したキャリアを発光層までバランスよく伝導し、再結合させることが重要となる。
また、電極と隣接する有機薄膜層にキャリアを注入する際に、電極の仕事関数と有機薄膜層のHOMO準位又はLUMO準位に大きなギャップがあると、キャリアが効率的に注入されないという課題がある。
そこで、電極から有機薄膜層へのキャリア注入を効率化する目的で、有機薄膜層は発光層のみからなる単層型の他に、電子輸送層、発光層及び正孔輸送層といった複数の層からなる多層積層型とする素子設計がよく知られている。
多層積層型の場合、より低い電圧で駆動させるためには陽極と電極の間に存在する有機薄膜層全体の膜厚を薄くする必要があり、各層の膜厚は単層型よりも更に薄くなるため、より精密な積層技術が求められる。
3.有機EL素子の製造方法
3−1.真空蒸着法とその課題
上記のような積層構造を容易に形成する手法として、真空蒸着法が用いられる。
しかし真空蒸着法は材料利用効率が低く、真空環境が必須の高エネルギー消費プロセスであり、大型製品の生産には適さず、また連続での生産は難しい。
一方で近年、ディスプレイの大型化や低コスト化が求められており、真空蒸着以外の手法として、溶液を用いる湿式法(塗布法ともいう。)に注目が集まっている。
3−2.湿式法とその課題
機能膜を塗布して順に積層していく湿式法において最も難しいのが、下層を溶解させずに上層を積層することである。よって、多層膜を作製する場合には、上層ほど用いる溶媒や化合物に対する選択性は大幅に低くなることが課題となっていた。
3−3.湿式法に求められる設計
上記の課題を解決するためにこれまで様々な検討が行われてきており、例えば、下層に高分子化合物を用いる手法が知られている。一般的に高分子化合物は低分子化合物よりも溶媒に対する溶解性が低い傾向にある。そこで、その下層に含有する高分子化合物と、その上層を形成する化合物との溶媒に対する溶解性の差を利用して塗布法で積層する方法が知られている。しかし、一般的に、高分子化合物は精製が難しいため、高純度のものが得にくいのが課題である。
また、成膜後にUV照射等の処理を行うことでポリマー化する後架橋型の低分子化合物を下層に用い、下層を不溶化させて上層を積層する手法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、成膜後の処理において未反応のモノマーが残存し、キャリアの伝導性を阻害する可能性がある。
また、低分子化合物に架橋性基を付与することによって、元の低分子化合物の性質そのものを大きく変化させてしまう可能性があった。
また、同一溶媒に対する溶解度の差を利用して、複数の低分子化合物を積層する方法も知られているが、溶媒に対する低分子化合物の溶解度の差を調整するには、緻密な分子設計が求められる。さらに、上層を塗布するために用いることのできる溶媒の種類は非常に限られている。
国際公開第2008/029729号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐リンス性及び電荷輸送機能に優れた有機機能性薄膜、有機機能性積層膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子及び有機機能性薄膜形成用塗布液を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜を、当該有機化合物として芳香環を二つ以上有する芳香族化合物を含有し、さらに、酸素原子又は芳香環を含む官能基を有するグラフェン又はカーボンナノチューブを含有するように形成することで、耐リンス性及び電荷輸送機能に優れた有機機能性薄膜を提供できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る課題は、以下の手段により解決される。
1.電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜であって、
前記有機化合物として、芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)と、グラフェンとを含有し、
前記グラフェンが、酸素原子を含む官能基又は芳香環を含む官能基を有することを特徴とする有機機能性薄膜。
2.前記グラフェンの平均の最大長が、50nm〜1μmの範囲内であることを特徴とする第1項に記載の有機機能性薄膜。
3.電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜であって、
前記有機化合物として、芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)と、カーボンナノチューブとを含有し、
前記カーボンナノチューブが、芳香環を含む官能基を有することを特徴とする有機機能性薄膜。
4.前記カーボンナノチューブが、酸素原子を含む官能基を更に有することを特徴とする第3項に記載の有機機能性薄膜。
.前記カーボンナノチューブが、アームチェア型の単層カーボンナノチューブであることを特徴とする第3項又は第4項に記載の有機機能性薄膜。
.前記カーボンナノチューブを含有し、当該カーボンナノチューブの平均のアスペクト比が、1000以上であることを特徴とする第3項から第5項までのいずれか一項に記載の有機機能性薄膜。
.前記芳香族化合物として、光電変換機能を有する有機化合物を含有することを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の有機機能性薄膜。
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の有機機能性薄膜の片面又は両面に隣接して、他の膜が積層されていることを特徴とする有機機能性積層膜。
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の有機機能性薄膜を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
10.第項に記載の有機機能性薄膜を備えることを特徴とする光電変換素子。
11.電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜形成用塗布液であって、
前記有機化合物として、芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)と、グラフェンとを含有し、
前記グラフェンが、酸素原子を含む官能基又は芳香環を含む官能基を有することを特徴とする有機機能性薄膜形成用塗布液。
12.電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜形成用塗布液であって、
前記有機化合物として、芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)と、カーボンナノチューブとを含有し、
前記カーボンナノチューブが、芳香環を含む官能基を有することを特徴とする有機機能性薄膜形成用塗布液。
13.前記カーボンナノチューブが、酸素原子を含む官能基を更に有することを特徴とする第12項に記載の有機機能性薄膜形成用塗布液。
本発明によれば、耐リンス性及び電荷輸送機能に優れた有機機能性薄膜、有機機能性積層膜、有機エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子及び有機機能性薄膜形成用塗布液を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構は明確になっていないが、以下のように推察している。
本発明の有機機能性薄膜は、電荷輸送性を有する有機化合物として、芳香環を二つ以上有する低分子量の芳香族化合物を含有する。また、本発明の有機機能性薄膜は、カーボンナノ材料であるグラフェン又はカーボンナノチューブを含有し、これらは酸素原子又は芳香環を含む官能基を有している。
ナノカーボン材料はダイヤモンド、グラファイト、フラーレン及びカーボンナノチューブなどの構造を有しており、それらの結晶構造は原子の格子配列を指す。
グラファイト(黒鉛)はナノカーボンの母体となる物質であり、多数の炭素原子からなる平面状のシートが三次元に積層した構造を有する。このシートの一枚分に相当するものがグラフェン、グラフェンが円筒状となったものがカーボンナノチューブである。
グラフェンの炭素原子における4個の価電子は、3個のsp混成軌道と1個の2p軌道に分布しており、後者は自由電子となって平面シート状を行き来するため、グラフェンはバンドギャップを持たず、室温では現在知られる中で最も高い導電性を示す物質の一つである。
本発明の有機機能性薄膜は、導電性のナノカーボン材料であるグラフェン及びカーボンナノチューブを有機機能性薄膜中に含有するので、導電性の付与により、電荷輸送機能に優れているものと推察される。
また、一般的なナノカーボン材料は、水中で凝集が生じる。ここで、本発明に係るグラフェン及びカーボンナノチューブは、酸素原子又は芳香環を含む官能基を有するため、水さらには有機溶媒中で分散させることが可能となる。
また、グラフェン及びカーボンナノチューブは、芳香族化合物との間にファンデルワールス力等といった相互作用がより働きやすくなるので、リンス溶媒で洗浄しても膜中の芳香族化合物が流されにくく、耐リンス性が向上したものと推察される。
また、芳香環を含む官能基を有するグラフェン又はカーボンナノチューブでは、芳香族化合物との間でπ−π相互作用等が働くため、上述した耐リンス性の向上の効果を有効に得ていると推察される。
本発明に係るグラフェンの一例における最大長を示す模式図 本発明に係るグラフェンの他の一例における最大長を示す模式図 本発明に係るグラフェンの他の一例における最大長を示す模式図
本発明の有機機能性薄膜は、電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜であって、前記有機化合物として芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)を含有し、さらに、酸素原子を含む官能基又は芳香環を含む官能基を有するグラフェン、あるいは芳香環を含む官能基を有するカーボンナノチューブを含有することを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記グラフェンを含有し、当該グラフェンの平均の最大長が、50nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。グラフェンと芳香族化合物との間の相互作用を効果的に得る観点からは、50nm以上とすることが好ましく、膜の均一性の観点からは、1μm以下とすることが好ましい。
本発明の実施態様としては、導電性付与の観点から、前記カーボンナノチューブを含有し、当該カーボンナノチューブが、アームチェア型の単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
本発明の実施態様としては、本発明の効果を有効に得る観点から、前記カーボンナノチューブを含有し、当該カーボンナノチューブの平均のアスペクト比が、1000以上であることが好ましい。カーボンナノチューブを高アスペクト比の形状とすることにより、本発明に係る低分子の芳香族化合物と相互作用する表面積が十分に大きくなる。また、カーボンナノチューブ同士がファンデルワールス力による絡み合い、薄膜中でより複雑な三次元構造を形成する。これらにより、本発明に係る低分子の芳香族化合物を有機機能性薄膜中に保持しやすくなり、耐リンス性が向上したものと推察される。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記芳香族化合物として、光電変換機能を有する有機化合物を含有することが好ましい。
また、本発明の有機機能性薄膜は、耐リンス性が良好であるため、本発明の有機機能性薄膜の片面又は両面に隣接して他の膜を積層させ、有機機能性積層膜として用いることが好ましい。
また、本発明の有機機能性薄膜は、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機機能性薄膜として好適に用いることができる。本発明の有機機能性薄膜は、電荷輸送機能に優れているため、有機EL素子のキャリア輸送層として好適に利用できる。また、本発明の有機機能性薄膜は発光効率が高いため、有機EL素子の発光層としても好適に利用できる。これは、本発明に係るグラフェン又はカーボンナノチューブを有機層中の発光層に添加した場合、緩和速度が遅いリン光発光性のドーパントの三重項励起子を捕獲することにより、周辺層への拡散が生じにくくなり、エネルギー失活を抑えることが可能となり、発光効率を向上させることができるためである。
また、本発明の有機機能性薄膜は、光電変換素子の有機機能性薄膜として好適に用いることができる。
また、本発明の有機機能性薄膜形成用塗布液は、電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜形成用塗布液であって、当該有機化合物として芳香環を二つ以上有する芳香族化合物と、官能基を有するグラフェン又はカーボンナノチューブと、を含有し、前記官能基が、酸素原子又は芳香環を含むことを特徴とする。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
[有機機能性薄膜]
本発明における有機機能性薄膜は、電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜であって、当該有機化合物として芳香環を二つ以上有する芳香族化合物を含有し、さらに、官能基を有するグラフェン又はカーボンナノチューブを含有し、前記官能基が、酸素原子又は芳香環を含むことを特徴とする。
本発明において、「電荷輸送性の有機化合物」とは、電子及び正孔を輸送する機能の少なくとも一方の性質を有する有機化合物である。好ましくは、Time−Of−Flight法などの電荷輸送性を検知できる公知の方法により、当該化合物を用いて形成した薄膜の電子又は正孔の移動度が、10−7cm/V/秒以上となるものである。電荷輸送性を有する有機化合物は、例えば、有機EL素子の電子輸送層に含有する電子輸送化合物、正孔輸送層に含有する正孔輸送化合物、発光層に含有する発光ドーパント等が挙げられる。また、「電荷輸送性を有する有機化合物」は、有機EL素子用の有機化合物に限られず、例えば、光電変換素子のバルクヘテロジャンクション層(光電変換部)に含有するp型半導体に用いる化合物及びn型半導体に用いる化合物等も挙げられる。
また、本発明に係るグラフェン又はカーボンナノチューブは、酸素原子又は芳香環を含む官能基を有する。このような官能基を有するグラフェン又はカーボンナノチューブは、水さらには有機溶媒中で分散させることが可能となる。
また、グラフェン及びカーボンナノチューブは、芳香族化合物との間にファンデルワールス力等といった相互作用がより働きやすくなるので、リンス溶媒で洗浄しても膜中の芳香族化合物が流されにくく、耐リンス性が向上すると推察される。
また、芳香環を含む官能基を有するグラフェン又はカーボンナノチューブでは、芳香族化合物との間でπ−π相互作用等が働くため、上述した耐リンス性が向上の効果を有効に得ることができると推察される。
また、本発明の「酸素原子を含む官能基」は、酸素原子を含む官能基であれば特に限られないが、例えば、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
また、芳香環を有する官能基は、芳香環を有していれば特にその種類は限られないが、例えば、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等の芳香族炭化水素環、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等の芳香族複素環を有する官能基が挙げられる。
<グラフェン>
グラフェンは、多数の炭素原子がハニカム状に配列し、強固に共有結合した二次元シート状の物質であり、グラファイト(黒鉛)結晶の一原子面がこれに該当する。グラフェンの存在は古くより知られていたものの、グラファイトから1枚のグラフェンを剥離する手法が確立していなかった。2004年に英国のマンチェスター大学のAndre Gemらが無水グラファイトから粘着テープでグラフェンの薄膜を得ることに成功して以来、グラフェンの研究は世界中で行われるようになった。
グラフェンは、鉄の約100倍でダイヤモンドに並ぶ強度をもちつつも柔軟性に優れる点、電子の移動度がシリコンの約100倍を誇る点、可視光に対してほぼ透明(透過度98%)である点、及び非常に高い化学的安定性や耐熱性を持つ点等の特性を有する。これらの特性は、二次元シート全体に広がったπ電子に由来し、今後の新規電子デバイスへの応用研究が数多くなされている。
<グラフェンの形態>
グラフェンは一層からなる単層グラフェンと、複数層からなる多層グラフェンとに分類され、層数が増加するに伴ってその物性はグラファイトに近づくとされる。なお本発明においては、多層グラフェンを2層から数100層程度までのものと定義する。グラフェンの層数は一般的に、ラマン分光法においてスペクトル内に現れるGバンド及びG’バンドの強度比(G/G’)により判別することができる。単層グラフェンの場合にはG/G’はおよそ0.3程度であり、層数の増加によってその値は増加する。また多層化に伴いG’バンドのピーク位置は高波数側にシフトし、半値幅も広がることが知られている((D.Graf et al.,Nano Letters.7,238(2007))。
<酸化グラフェン>
酸化グラフェンはグラフェンの原材料であり、Hummers法、Modified Hummers法あるいは黒鉛の酸化等の報告された公知の手法等を用いて形成される。
例えば上記Hummers法は、グラファイト粉末を過マンガン酸カリウム硫酸溶液中で酸化させることにより酸化グラファイトを含む分散液を得る手法である。形成された酸化グラファイトは、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基等といった酸素を含有した官能基をもつため、グラフェンの層間距離がグラファイトと比較して長くなる。その結果、容易に層間を分離して剥片化することが可能となる(W.S.Hummers.,Journal of American Chemistry(1958)1339、及びM.Hirata.,Carbon 42(2004)2929)。
溶媒は水が最も汎用的だが、酸化グラフェンの凝集が生じない程度で有機溶媒を用いることも可能である。また、適宜市販品を用いることもできる。
また、酸化グラフェンが有する前記の官能基により、水のほか数種類の極性溶媒に対する分散性を示すことに加え、数種類の新たな置換基を導入することが可能となる。本発明においては、芳香環を含む官能基を有することが好ましい。
<グラフェンの最大長>
本発明に係るグラフェンの平均の最大長は、本発明の効果を有効に得る観点からは、50nm〜1μmの範囲内であることが好ましい。グラフェンと芳香族化合物間の相互作用を効果的に得る観点からは、50nm以上とすることが好ましく、膜の均一性の観点からは、1μm以下とすることが好ましい。
グラフェンの最大長は、グラフェンを透過型電子顕微鏡で観察した際に、最大となる長さをいう。グラフェンは、例えば、楕円形状(図1参照)、四角形状(図2参照)、三角形状(図3参照)などの様々な形状をとりうる。グラフェンがいずれの形状をとった場合であっても、その形状での最大の長さが、本発明のグラフェンの最大長D1である。
また、本発明に係るグラフェンの平均の最大長は、グラフェンを含有した溶液を塗布し乾燥させたサンプルを観察し、任意に選択したグラフェン50個の最大長を平均したものを指す。
<カーボンナノチューブ(CNT)>
カーボンナノチューブは、径が0.4〜50nm程度のグラフェンを円筒状に丸めた構造を有し、一層分のグラフェンからなるものを単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二重、三重と入れ子状になったものを多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と呼ぶ。
単層カーボンナノチューブは、グラフェンシートの巻き方(カイラリティ)により炭素原子の結合の仕方が変化するが、特性はその幾何学的構造に強く依存することが一般的に知られている。カイラリティはカイラル指数(n、m:整数)により決定され、n≠mのカイラル型(螺旋型)、m=0のジグザグ型、n=mのアームチェア型に分類される。また、このカイラル指数が2n+mが3の倍数となる時にフェルミ準位に状態を有するため金属となり、それ以外の時にはバンドギャップの形成により半導体性を示すことが知られている。
本発明におけるカーボンナノチューブは、これらのどの型も適用することができるが、導電性付与の観点より、金属性のアームチェア型の単層カーボンナノチューブが最も好ましい。カーボンナノチューブの電気伝導性は非常に高いため、例えば、これを有機EL素子中の発光層に添加させた場合に電気抵抗値は小さくなり、駆動電圧にして効率よく発光させることが可能となる。
カーボンナノチューブの製造方法は特に限定されるものではなく、二酸化炭素の接触水素還元やアーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法(CVD)などを用いることができる。大量生産が可能である点やカイラリティの制御といった観点から、現在一般的に市販されているカーボンナノチューブは金属触媒を用いるCVD法により製造することが好ましい。
CVD法を用いる際に重要となるのは触媒であり、COを高温高圧下でペンタカルボニル鉄(Fe(CO))触媒とともに反応させて気相で成長させるHiPCO法や、コバルトとモリブデンを用いてCO不均化反応を利用するCoMoCAT法、2004年に国立研究開発法人産業技術総合研究所の畠賢治博士らにより見いだされ、生産性を格段に向上し高品質な単層カーボンナノチューブの合成を実現したスーパーグロース法などが利用される。
また、副生成物や触媒金属等の残留物を除去するために、洗浄法、遠心分離法、濾過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブが、各種機能を十分に発現できることから好ましい。
一般的に、カーボンナノチューブへの置換基(官能基)の導入は、公知の技術である強酸(HSO:HNO=3:1、40〜70℃)を用いた表面酸化等により行うことができる。これにより、カーボンナノチューブ表面上はカルボン酸に置換され、さらにアルキルアルコールなどと反応させることにより有機溶媒に対する溶解性を付与することが可能となる。また少量であれば、上記の処理なしに有機溶媒に分散させることも可能である(D.W.Johnson et al., Current Opinion in Colloid&Interface Science 20,367−382(2015))。
<カーボンナノチューブのアスペクト比>
芳香族化合物との反応性には、カーボンナノチューブの形状(径及び長さ)が大きく影響するため、適切なアスペクト比(アスペクト比=長さ/直径)に調整したものを用いることが好ましい。
カーボンナノチューブの形状としては、1本のカーボンナノチューブで長い導電パスを形成させるため、高アスペクト比であることが好ましく、平均アスペクト比が100以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上である。カーボンナノチューブを高アスペクト比の形状とすることにより、本発明に係る低分子の芳香族化合物と相互作用する表面積が十分に大きくなる。また、カーボンナノチューブ同士がファンデルワールス力による絡み合い、薄膜中でより複雑な三次元構造を形成する。これらにより、本発明に係る低分子の芳香族化合物を有機機能性薄膜中に保持しやすくなり、耐リンス性が向上するという効果が得られる。
また、カーボンナノチューブの平均直径は30nmより小さいことが好ましく、より好ましくは1〜10nmである。
本発明に係るカーボンナノチューブの長さ及び直径、アスペクト比の平均値は、グラフェンの測定と同様、透過型電子顕微鏡で観察したサンプル中から任意に選択した50本を用いて得た計測値の算術平均から算出することができる。長さに関しては本来伸ばした直線状のサンプルを測定するべきだが、屈曲しているものも存在するため、電子顕微鏡写真から画像解析装置を用いてサンプルの投影直径及び投影面積を算出し、円柱体を仮定して算出してもよい。
本発明における化合物のアスペクト比の算出は、分子軌道計算ソフトウェアによって得られた有機化合物の最適化構造にもとづいて、分子モデリング・可視化ソフトウェアを用いることで得ることができる。より詳細には、有機化合物の構造最適化には計算手法として、汎関数としてB3LYP、基底関数として6−31G(d)を用いた米国Gaussian社製のGaussian09(RevisionC01,M.J.Frisch et al., Gaussian, Inc., 2010)で行い、アスペクト比の算出にはWinmostar(X−Ability Co.,Ltd. 社製)を用いる。
<芳香族化合物>
本発明に係る芳香族化合物は、芳香環を少なくとも二つ以上有するものであり、分子量は、本発明の効果を有効に得る観点からは、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。芳香族化合物の分子量が小さいと分子サイズも小さくなる傾向があるので、分子量を1500以下の低分子量とすることで、芳香族化合物が本発明に係るグラフェン又はカーボンナノチューブ間に入りやすくなり、本発明の効果を有効に得ることができると推察される。また、本発明に係る芳香族化合物の分子量の下限は特に限られないが、本発明の効果を有効に得る観点からは、300以上であることが好ましい。これにより、溶媒への溶解性を高くしすぎないようにできる傾向があるので、リンス溶媒で洗浄した際に芳香族化合物が流されにくくなり、耐リンス性が向上しやすくなる。
また、本発明に係る低分子量の芳香族化合物は、高分子化合物と比較し、様々な精製手法を使用することができるため、高純度化が容易である。
本発明の有機機能性薄膜に含有する芳香族化合物は、芳香環を少なくとも二つ以上有するものであり、電荷輸送性を有する有機化合物である。なお、芳香環とは芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であって、単環でも複素の環が縮合した縮合環であっても良い。
芳香族炭化水素環としては、例えばベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は、更に置換基を有していても良い。
また、芳香族複素環としては、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。これらの環は同様に、更に置換基を有していてもよい。
また、上記の中でも芳香環として好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ジベンゾフラン環、ベンゼン環であり、特に好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ベンゼン環である。
<有機機能性薄膜形成用塗布液>
本発明の有機機能性薄膜形成用塗布液は、電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜形成用塗布液であって、当該有機化合物として芳香環を二つ以上有する芳香族化合物を含有し、さらに、官能基を有するグラフェン又はカーボンナノチューブを含有し、前記官能基が、酸素原子又は芳香環を含むものである。
本発明の有機機能性薄膜形成用塗布液は、有機溶媒中に、上記芳香族化合物及び本発明に係るグラフェン及びカーボンナノチューブが溶解又は分散されたものである。この有機溶媒とは、本発明における化合物を溶解又は分散しうる液体の媒体を指す。
本発明に係る有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF(N,N−dimethyl formamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)等を用いることができる。また、乾燥工程の観点より、沸点が50〜180℃の範囲の溶媒が好ましい。
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の方法により分散することができる。
<有機機能性薄膜の用途>
本発明の有機機能性薄膜は、本発明に係る芳香族化合物として、電荷輸送機能を有する有機化合物を含有することで、電荷輸送機能を有する有機機能性薄膜として利用することができる。
電荷輸送機能を有する有機機能性薄膜としては、例えば、有機EL素子を構成する層として用いる場合には、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層等が挙げられる。また、光電変換素子を構成する層として用いる場合には、例えば、正孔輸送層及び電子輸送層等が挙げられる。
また、本発明の有機機能性薄膜は、本発明に係る芳香族化合物として、発光機能を有する有機化合物を含有することで、発光機能を有する有機機能性薄膜として利用することができる。発光機能を有する有機機能性薄膜としては、例えば、有機EL素子の発光層が挙げられる。
また、本発明の有機機能性薄膜は、本発明に係る芳香族化合物として、光電変換機能を有する有機化合物を含有することで、光電変換機能を有する有機機能性薄膜として利用することができる。光電変換機能を有する有機機能性薄膜としては、光電変換素子のバルクヘテロジャンクション層(光電変換部)が挙げられる。
また、本発明の有機機能性薄膜は、耐リンス性が良好であるため、本発明の有機機能性薄膜の片面又は両面に隣接して他の膜を積層させ、有機機能性積層膜として用いることが好ましい。
<有機EL素子>
本発明の有機EL素子は、本発明の有機機能性薄膜を備えるものである。
本発明の有機機能性薄膜は、有機EL素子を構成する有機層に用いられることが好ましい。また、本発明の有機機能性薄膜は、後述する有機層中のいずれにも用いることが可能である。
一般的な有機EL素子は、基板上に、陰極及び陽極、及びそれらの間に1層以上の有機層を挟持した構造となっており、例えば以下の構成等が挙げられる。
1)陽極/発光層/陰極
2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
さらに、必要に応じて、電子注入層と陰極間に陰極バッファー層(フッ化リチウム等)や、陽極と正孔注入層間に陽極バッファー層を挿入してもよい。
<基板>
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)又はアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
また樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリアー性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、10−3mL/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、10−5g/(m・24h)以下の高バリアー性フィルムであることが好ましい。
バリアー膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリアー膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
<陽極>
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO(インジウムチンオキシド)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
また、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましい。
陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
<陰極>
陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数100Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
<有機機能層>
以下、本発明の有機EL素子の各有機機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層)について説明する。
本発明の有機層の形成方法は特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、塗布法等による形成方法を用いることができる。
塗布法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、かつ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・to・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
層毎に異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
(正孔注入層)
本発明に係る正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記のように陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432や特開2006−135145等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
(正孔輸送層)
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
また、本発明の正孔輸送層の総膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT:PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらにIr(ppy)に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖若しくは側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号、国際公開第2008/029729等である。
また、正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
(発光層)
本発明に係る発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に係る発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
発光層の膜厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
また、本発明に係る個々の発光層の膜厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
本発明の発光層には、(1)発光ドーパント(発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、単にドーパントともいう)と、(2)ホスト化合物(マトリックス材料、発光ホスト化合物、単にホストともいう)とを含有することが好ましい。
(1)発光ドーパント
発光層中の発光ドーパントの濃度については、使用される特定のドーパント及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができ、発光層の膜厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、本発明に係る発光ドーパントは、複数種を併用して用いてもよく、構造の異なるドーパント同士の組み合わせや、蛍光発光性ドーパントとリン光発光性ドーパントとを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。
白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組み合わせ等が挙げられる。
発光層中に用いられる発光ドーパントは、リン光発光ドーパントと蛍光発光ドーパントに大別される。
(蛍光ドーパント)
本発明に係る蛍光ドーパントは、励起一重項からの発光が可能な化合物であり、励起一重項からの発光が観測される限り特に限定されない。
例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。
また、蛍光ドーパントの一例として、青色蛍光発光ドーパントが挙げられる。青色蛍光発光ドーパントとしては、例えば、特開2017−130382号公報に記載の下記化合物を用いることができる。
Figure 0006977571
(リン光ドーパント)
本発明に係るリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
リン光ドーパントの発光は原理としては二種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりリン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明において使用できるリン光ドーパントとして、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater. 17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006/835469号明細書、米国特許公開第2006/0202194号明細書、米国特許公開第2007/0087321号明細書、米国特許公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許公開第2009/0108737号明細書、米国特許公開第2009/0039776号、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2006/0008670号明細書、米国特許公開第2009/0165846号明細書、米国特許公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許公開第2006/0263635号明細書、米国特許公開第2003/0138657号明細書、米国特許公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew.Chem.Int.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第2006/0251923号明細書、米国特許公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許公開第2006/098120号明細書、米国特許公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許公開第2012/228583号明細書、米国特許公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特開2012−195554号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
ここで、本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
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(2)ホスト化合物
本発明に係るホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
好ましくは室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であり、さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。また、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
また、ホスト化合物の励起状態エネルギーは、同一層内に含有される発光ドーパントの励起状態エネルギーよりも高いことが好ましい。
なお、ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
本発明で用いることができるホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でもよく、また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、さらに、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、90℃以上の高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましく、より好ましくは120℃以上である。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号明細書、米国特許出願公開第2006/0280965号明細書、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0017330号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、米国特許出願公開第2005/0238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等である。
<電子輸送層>
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明の電子輸送層の総膜厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明に係る電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
また、電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
(電子注入層)
本発明に係る電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記のように陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
電子注入層は、ごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
<封止>
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフィド、ポリスルホン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムはJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3mL/(m/24h)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10−3g/(m/24h)以下のものであることが好ましい。
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(2液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。
さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコーンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
<有機EL素子の用途>
有機EL素子は、表示装置、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
また、発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源、さらには表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられるが、特にカラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
[光電変換素子]
本発明の有機機能性薄膜は、太陽電池などに用いられる光電変換素子を構成する正孔輸送層、電子輸送層又はバルクヘテロジャンクション層(光電変換部)として好適に用いることができる。
以下、光電変換素子の例として、バルクヘテロジャンクション型の光電変換素子の例を説明する。バルクヘテロジャンクション型の光電変換素子は、例えば、基板の一方面上に、透明電極(陽極)、正孔輸送層、バルクヘテロジャンクション層(光電変換部)、電子輸送層(又はバッファー層ともいう。)及び対極(陰極)が順次積層されている。
基板は、順次積層された透明電極、光電変換部及び対極を保持する部材である。基板側から光電変換される光が入射するので、基板は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板は、必須ではなく、例えば、光電変換部の両面に透明電極及び対極を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が構成されてもよい。
光電変換部は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、光電変換素子用材料であるp型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。
p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与又は受容するものではなく、光反応によって、電子を供与又は受容するものである。
基板を介して透明電極から入射された光は、光電変換部のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体又は電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極と対極の仕事関数が異なる場合では透明電極と対極との電位差によって、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ光電流が検出される。例えば、透明電極の仕事関数が対極の仕事関数よりも大きい場合では、電子は透明電極へ、正孔は対極へ輸送される。
なお、仕事関数の大小が逆転すれば、電子と正孔はこれとは逆方向に輸送される。
また、透明電極と対極との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
また、光電変換部で生じた電子及び正孔をそれぞれ効率良く透明電極及び対極に輸送するために、必要に応じて電子輸送層や正孔輸送層を設けることが好ましい。
なお、上記で説明した層に加えて、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、又は平滑化層等の公知の他の層を有していてもよい。
また、さらなる太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成(バルクヘテロジャンクション層を複数有する構成)であってもよい。
タンデム型構成の場合、例えば、基板上に、透明電極、第1の光電変換部、電荷再結合層(中間電極)、第2の光電変換部、対極を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。
上記のような層に用いることができる材料については、例えば、特開2015−149483号公報の段落0045〜0113に記載のn型半導体材料、及びp型半導体材料が挙げられる。
(バルクヘテロジャンクション層の形成方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が配列又は結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。
次に、有機光電変換素子を構成する電極について説明する。
有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層で生成した濾過正電荷と負電荷とが、それぞれp型半導体材料、及びn型半導体材料を経由して、それぞれ透明電極及び対極から取り出され、電池として機能するものである。それぞれの電極には、電極を通過するキャリアに適した特性が求められる。
(対極)
本発明において対極は、光電変換部で発生した電子を取り出す陰極とすることが好ましい。例えば、陰極として用いる場合、導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。
対極材料としては、例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の公知の陰極の導電材を用いることができる。
(透明電極)
本発明において透明電極は、光電変換部で発生した正孔を取り出す機能を有する陽極とすることが好ましい。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは波長380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の公知の陽極用の材料を用いることができる。
(中間電極)
また、タンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましい。材料としては、例えば、特開2014−078742号公報に記載の公知の中間電極用の材料を用いることができる。
次に、電極及びバルクヘテロジャンクション層以外を構成する材料について述べる。
(正孔輸送層及び電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能とするために、バルクヘテロジャンクション層と透明電極との中間には正孔輸送層・電子ブロック層を有していることが好ましい。
正孔輸送層を構成する光電変換素子用材料としては、例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の公知の材料を用いることができる。
(電子輸送層、正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と対極との中間には電子輸送層・正孔ブロック層・バッファー層を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また、電子輸送層としては、例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の公知の材料を用いることができる。また、電子輸送層は、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を対極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与された正孔ブロック層としてもよい。正孔ブロック層とするための材料としては、例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の公知の材料を用いることができる。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
(基板)
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚さ等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の公知の材料を用いることができる。
(光学機能層)
有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、対極で反射した光を散乱させて再度バルクヘテロジャンクション層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
反射防止層、集光層及び光散乱層としては、例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の公知の反射防止層、集光層及び光散乱層をそれぞれ用いることができる。
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の公知の手法を適宜適用することができる。
(封止)
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子等で公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、特開2010−272619、特開2014−078742号公報等に記載の手法を用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例で使用した化合物を以下に示す。
Figure 0006977571
Figure 0006977571
Figure 0006977571
なお、化合物Fは国際公開2010/067746号に記載の手順にて合成を行った。化合物Fの重量平均分子量は8000、分子量分布は2.3であった。
[実施例1]
本発明に係る芳香族化合物である化合物A〜Dのいずれか一つと、グラフェンと、を含有する有機機能性薄膜を作製し、耐リンス性に関する評価を以下の手順にて行った。グラフェンE−1〜E−6は酸化されたグラフェンであり(以下、酸化グラフェンE−1〜E−6ともいう。)、グラフェンの表面にエポキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基及びヒドロキシ基を有する。また、グラフェンE−7〜E−12は、酸化グラフェンE−1〜E−6を後述する手順で芳香環を有するように官能化したものである(以下、官能化された酸化グラフェンE−7〜E−12ともいう。)。また、グラフェンE−CGは、酸化されておらず、かつ官能基を有しない、比較例のグラフェンである。
<酸化グラフェンE−1の合成>
本発明に係る酸化グラフェンは、公知の文献(例えば、J. Am. Chem. Soc., 1958, 80 (6), pp 1339-1339)の手法によって合成することができる。
グラフェンナノプレートレット(東京化成工業(株)製、厚さ6〜8nm、幅5μm)10gをボールミルで粉砕したものと硝酸ナトリウム7.5gとをフラスコに入れ、そこに濃硫酸621gを加えた。フラスコを氷浴に入れ、撹拌しながら、過マンガン酸ナトリウム45gを溶液温度が20℃を超えないように少量ずつ加えた。これを室温に戻し14日間撹拌を続けた後、1Lの5%硫酸を加え1時間撹拌した。さらに、そこに30質量%の過酸化水素水30gを加え、1時間撹拌した。硫酸の濃度が3%、過酸化水素水の濃度が0.5質量%となるように調整した混合溶液1Lを加え希釈した。この溶液を、遠心分離(5000rpm、15分)にかけて上澄みを除去し、同様の混合溶液を加え、再度遠心分離を行うという作業を繰り返し10回行った。同様の遠心分離を純水で10回行い、10回目で上澄みを捨てた後、250mLの純水を加えて、40kHzの超音波を25分間行い、酸化グラフェンの水分散液を調製した。次いで40℃の減圧下で五リン化酸を用いることにより、乾燥した酸化グラフェンE−1を得た。酸化グラフェンE−1の平均の最大長は、1500nmであった。また、この酸化グラフェンE−1を16.2μg、11gのクロロベンゼン中に溶解させ、塗布液を調製した。
<酸化グラフェンE−2〜E−6の合成>
上記の酸化グラフェンE−1の合成手順において水分散液を得た後、超音波処理を行う時間を以下の表Iに記載の時間に変更した以外は同様にして、酸化グラフェンE−2〜E−6を得た。酸化グラフェンE−2〜E−6の平均の最大長は表Iに記載の通りとなった。また、酸化グラフェンE−2〜E−6をそれぞれ16.2μg、11gのクロロベンゼン中に溶解させ、各塗布液を調製した。
<官能化された酸化グラフェンE−7の作製>
酸化グラフェンは、公知の文献(例えば、J. R. Lomeda, C. D. Doyle, D. V. Kosynkin, W. F. Hwang and J. M. Tour, J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 16201-16206.)に記載の手法を用いて、官能化することができる。官能化された酸化グラフェンE−7の合成スキームを以下に示す。
Figure 0006977571
225mgの酸化グラフェンE−1を1質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)界面活性剤225mL中に分散させ、ホモジナイザーで1時間均質化した後、超音波式の破砕装置(Cole−Parmer Ultrasonic Processor model CP750)にて10分間処理を行った。1Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、室温下(22℃)でpHを10に調整した。得られた分散液を60%ヒドラジン水和物(2.25mL、72.23mmol)、80℃で24時間還元した後、グラスウールを用いて濾過して大きな凝集物を除去し、濃度1mg/mLの分散液(S−CCG;chemically converted graphene)を得た。次いで、この分散液20mLをベンゼンジアゾニウム・テトラフルオロボラート(0.33mmol/mL)と1時間室温で反応させた。その後、この混合物を100mLのアセトンで希釈し、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を通して濾過し、得られた固形物を水及びアセトンで3回洗浄し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に再懸濁して、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)及び過剰のジアゾニウム塩を除去した。これに続いて、ポリテトラフルオロエチレンで濾過し、アセトンで十分に洗った固形物を70℃に設定した真空オーブンで一晩乾燥することにより、23mgの官能化された酸化グラフェンE−7を得た。酸化グラフェンE−7の平均の最大長は、1500nmであった。
その後、この得られた官能化された酸化グラフェンE−7を16.2μg、11gのクロロベンゼン中に溶解させ、塗布液を調製した。
<官能化された酸化グラフェンE−8〜E−12の作製>
上記酸化グラフェンE−7の合成において、用いた酸化グラフェンE−1を酸化グラフェンE−2〜E−6にそれぞれ置き換えたこと以外は同様にして、官能化された酸化グラフェンE−7〜E−12を作製し、塗布液を得た。
<グラフェンE−CGの準備>
グラフェンナノプレートレット(東京化成工業(株)製、厚さ6〜8nm、幅5μm)をボールミルで粉砕し、その後40kHzの超音波処理を25分間行い、平均最大長が1500nmのグラフェンE−CGを得た。グラフェンE−CGを16.2μg、11gのクロロベンゼン中に溶解し、塗布液を調製した。
Figure 0006977571
<サンプル1−1a及び1−1bの作製>
300mm×300mm×1.1mmのガラス基板にUVオゾン洗浄処理を10分間行った。調液した酸化グラフェンE−1の塗布液1.1gに、化合物Aを窒素雰囲気下で溶解させ、上記基板上に1000rpm、30秒の条件でスピンコート法にて薄膜を作製した。
続いて、その薄膜を130℃で30分加熱乾燥し、膜厚約60nmの有機機能性薄膜を作製した。このとき、薄膜の耐溶媒性(耐リンス性)の評価を行うため、一種の塗布液あたり2サンプルずつ有機機能性薄膜を作製し、以下に記述するリンス処理を行わなかったものをサンプル1−1a、リンス処理したものをサンプル1−1bとした。
サンプル1−1bに後述するリンス処理を施した後、両サンプルとも130℃で30分間加熱乾燥を行い、両サンプルの両薄膜の上部をガラスカバーで覆った。次いで、ガラスカバーと成膜されたガラス基板とが接触するガラスカバー側の周囲に、シール材として酸素や水分を吸着する吸湿性化合物を内部に含んだエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を用いて、これを陰極側に重ねて基板と密着させた。その後、基板側から、膜を除く部分にUV光を照射することにより硬化させ、封止を行った。
(リンス処理)
サンプル1−1bを再びスピンコート台に設置し、リンス溶媒として約1mLの酢酸ノルマルプロピルを薄膜の上に滴下した後、溶媒を除去するために500rpm、30秒間回転させた。
(耐リンス性の評価)
上記のように作製したサンプル1−1a及び1−1bに対して、分光蛍光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、F−7000)を用いて蛍光スペクトルを測定し、発光極大の発光強度を求めた。なお、耐リンス性に関しては、下記式によって算出し、30%以上を◎、20%以上30%未満を○、10%以上20%未満を△、10%未満を×として評価した。本発明では、◎又は○を合格とした。
耐リンス性={(サンプル1−1bの発光極大強度)/(サンプル1−1aの発光極大強度)}×100(%)
<サンプル1−2a及び1−2b〜サンプル1−53a及び1−53bの作製と評価>
サンプル1−1a及び1−1bの作製において、用いる芳香族化合物とグラフェンを以下の表IIに記載の塗布液構成とした以外は同様にして、サンプル1−2a及び1−2b〜サンプル1−53a及び1−53bを得た。
また、サンプル1−50a及び1−50b〜サンプル1−53a及び1−53bにはナノカーボン(酸化グラフェン)は添加しなかった。
また、サンプル1−2a及び1−2b〜サンプル1−53a及び1−53bも、サンプル1−1a及び1−1bと同様の方法で耐リンス性の評価を行った。結果は表IIに示す。
なお、表IIは、サンプル1−1a及び1−1b〜サンプル1−53a及び1−53bの評価結果を、サンプル1−1〜サンプル1−53の評価結果として示している。
Figure 0006977571
Figure 0006977571
上記の結果より、官能化された酸化グラフェンE−7からE−12を用いた場合に芳香族化合物の耐リンス性が向上した。また、官能化された酸化グラフェンE−8〜E−11を用いた場合は、より効果が大きかった。この要因については、官能化された酸化グラフェン表面の芳香環と、芳香族化合物A〜Dの間でπ−π相互作用が働いたことで、芳香族化合物が流されにくくなったものと考えられる。
また、芳香族化合物A〜Dのいずれを用いた場合でも、本発明の耐リンス性の効果を得られ、特に分子量が500〜1500の芳香族化合物A及びBを用いた場合により効果が大きかった。この結果より、低分子量の芳香族化合物はグラフェン間に入りやすく、本発明の効果を有効に得ることができると推察される。また、分子量が小さすぎた場合は溶媒への溶解度が高く流されやすいと推察される。
[実施例2]
本発明に係る芳香族化合物である化合物A〜Dのいずれか一つと、カーボンナノチューブと、を含有する有機機能性薄膜を作製し、耐リンス性に関する評価を以下の手順にて行った。
カーボンナノチューブE−13〜E−15は酸化されており、カーボンナノチューブの表面にエポキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基及びヒドロキシ基を有するものである。また、カーボンナノチューブE−16〜E−18は、カーボンナノチューブE−16〜E−18を後述する手順で芳香環を有するように官能化したものである。
また、カーボンナノチューブE−CN1〜E−CN3は、酸化されておらず、かつ官能基を有しない、比較例のカーボンナノチューブである。
<カーボンナノチューブE−13の合成>
超音波発生装置と撹拌機とを備えた、温度制御が可能な1Lの反応槽内に、硫酸0.3Lと濃硝酸0.1Lとを加え、40℃に保ちながら撹拌した。ここに40gのアームチェア型の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(Aldrich製、平均直径1.3nm×平均長さ1μm、平均のアスペクト比769)を投入し、超音波をかけながら3時間反応させた。次いで、この溶液を5μmのフィルターでろ過し、得られた固形物を脱イオン水及び水酸化アンモニウム溶液を用いて洗浄した後、真空オーブン中に移動して4時間100℃で加熱乾燥させて酸化したカーボンナノチューブE−13を得た。その後、得られたカーボンナノチューブE−13を11mgとり、1.1gのクロロベンゼンに分散させて塗布液を調製した。
<カーボンナノチューブE−14及びE−15の合成>
上記カーボンナノチューブE−13の合成手順において、用いたカーボンナノチューブを、アームチェア型の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(Aldrich製、平均直径0.78nm×平均長さ1μm、平均のアスペクト比1282)に置き換えた以外は同様にして、カーボンナノチューブE−14を得た。
また、上記カーボンナノチューブE−13の合成手順において、用いたカーボンナノチューブを、アームチェア型の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(東京化成製、平均長さ3nm以下×長さ5μm以上、平均のアスペクト比1667)に置き換えた以外は同様にして、カーボンナノチューブE−15を得た。
また、カーボンナノチューブE−14及びE−15は、カーボンナノチューブE−13と同様に、それぞれ11mgとり、1.1gのクロロベンゼンに分散させて塗布液を得た。
<カーボンナノチューブE−16の合成>
上記で得たカーボンナノチューブE−13を、公知の文献(非特許文献 Stankovich, S. et al., J. Mater. Chem. 2006, 16, 155.)に記載の手法により表面の官能化を行った。その後、クロロベンゼンに溶解させることにより塗布液を得た。
ホモジナイザーを用いて、カーボンナノチューブE−13及び1質量%のドデシル硫酸ナトリウムを水中で1時間均質化した。続いて、10分間超音波処理を行った後、この溶液に1Mの水酸化ナトリウムを添加して室温でpH10に調整した。次に、ベンゼンジアゾニウム・テトラフルオロボラートを加え、水で希釈して撹拌し、官能化完了後アセトンで希釈し、凝集したカーボンナノチューブをポリテトラフルオロエチレンで濾過して収集した。次いで、これをアセトン及び水で洗浄し、60℃の真空オーブン中で一晩加熱乾燥させることにより、カーボンナノチューブE−16を得た。その後、得られたカーボンナノチューブE−16を11mgとり、1.1gのクロロベンゼンに分散させて塗布液を調製した。
<カーボンナノチューブE−17及びE−18の合成>
上記E−16の合成の手順において、表面の官能化に用いるカーボンナノチューブを、カーボンナノチューブE−13からカーボンナノチューブE−14、E−15に置き換えた以外は同様にして、カーボンナノチューブE−17、E−18を合成した。また、それぞれ11mgとり、1.1gのクロロベンゼンに分散させて塗布液を得た。
<カーボンナノチューブE−CN1の準備>
比較例のカーボンナノチューブE−CN1として、アームチェア型の単層カーボンナノチューブ(Aldrich製、平均直径1.3nm×平均長さ1μm、平均のアスペクト比769)を準備した。また、カーボンナノチューブE−CN1を11mgとり、1.1gのクロロベンゼンに分散させて塗布液を調製した。
<カーボンナノチューブE−CN2の準備>
比較例のカーボンナノチューブE−CN2として、アームチェア型の単層カーボンナノチューブ(Aldrich製、平均直径0.78nm×平均長さ1μm、平均のアスペクト比1282)を準備した。また、カーボンナノチューブE−CN2を11mgとり、1.1gのクロロベンゼンに分散させて塗布液を調製した。
<カーボンナノチューブE−CN3の準備>
比較例のカーボンナノチューブE−CN3として、アームチェア型の単層カーボンナノチューブ(東京化成製、平均長さ3nm以下×長さ5μm以上、平均のアスペクト比1667)を準備した。また、カーボンナノチューブE−CN3を11mgとり、1.1gのクロロベンゼンに分散させて塗布液を調製した。
<サンプル2−1a及び2−1bの作製>
実施例1のサンプル1−1a及び1−1bの作製において、酸化グラフェンE−1をカーボンナノチューブE−13に置き換えた以外は同様にして、サンプル2−1a及び2−1bを作製した。
<サンプル2−2a及び2−2b〜サンプル2−27a及び2−27bの作製>
上記サンプル2−1a及び2−1bの作製において、用いる芳香族化合物とカーボンナノチューブを以下の表IIIの塗布液組成とした以外は同様にして、サンプル2−2a及び2−2b〜サンプル2−27a及び2−27bを得た。
<サンプル2−28a及び2−28b〜サンプル2−31a及び2−31bの作製>
上記サンプル2−1a及び2−1b〜サンプル2−4a及び2−4bの作製において、カーボンナノチューブを添加しなかったこと以外は同様にして、サンプル2−28a及び2−28b〜サンプル2−31a及び2−31bを得た。
<耐リンス性の評価>
サンプル2−1a及び2−1b〜サンプル2−31a及び2−31bについて、リンス溶媒の酢酸ノルマルプロピルを、2,2,3,3−テトラフルオロ1−プロパノール(TFPO)に置き換えた以外は実施例1と同様にして、耐リンス性の評価を行った。結果は表IIIに示す。
なお、表IIIには、サンプル2−1a及び2−1b〜サンプル2−31a及び2−31bの評価結果を、サンプル2−1〜2−31の評価結果として示している。
Figure 0006977571
以上の結果より、カーボンナノチューブは官能化されている場合に耐リンス性に優れており、特にアスペクト比が大きい場合に効果が大きいことがわかった。
また、この結果に関しては、芳香環を有するように官能化されたカーボンナノチューブでは、当該芳香環と、芳香族化合物A〜Dの有する芳香環の間でπ−π相互作用が働いたため、膜中の芳香族化合物A〜Dが流されにくく、耐リンス性が向上したものと推察される。
また、芳香族化合物A〜Dのいずれを用いた場合でも、本発明の耐リンス性の効果を得られ、特に分子量が500〜1500の芳香族化合物A及びBを用いた場合により効果が大きかった。この結果より、低分子量の芳香族化合物はカーボンナノチューブ間に入りやすく、本発明の効果を有効に得ることができると推察される。また、分子量が小さすぎた場合は溶媒への溶解度が高く流されやすいと推察される。
[実施例3]
下記表IVに示す有機機能性薄膜形成用塗布液で形成した膜を含む有機EL素子に対し、下記のようにして、駆動電圧の評価を行った。
<有機EL素子3−1の作製>
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を約100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った。
このITO透明電極基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した後にUVオゾン洗浄を5分間行った。
その後、9.0mgの化合物Aを窒素雰囲気下で1.1gのクロロベンゼン中に溶解させて得た塗布液を1500rpm、30秒の条件下のもとスピンコート法にて成膜後,真空下130℃で加熱乾燥することにより溶媒を完全に除去し,膜厚約60nmの薄膜を作製した。
続いて、真空蒸着装置に取り付けた後に真空槽を4×10Paまで減圧し、芳香族化合物ET−1を0.1nm/秒で蒸着して、膜厚約35nmの電子輸送層とした。その後、陰極バッファー層としてフッ化リチウム約1.0nm及び陰極としてアルミニウム約110nmを蒸着して陰極を形成し、サンプル1−1と同様の手順で封止することにより、有機EL素子3−1を作製した。
<有機EL素子3−2〜3−5の作製>
有機EL素子3−1の作製において、塗布液を、当該塗布液中に1.0mgのグラフェンE−9を分散させ、さらに、表IV中に示す芳香族化合物に変更した以外は同様にして、有機EL素子3−2〜3−5を得た。
<有機EL素子3−6〜3−9の作製>
有機EL素子3−1の作製において、塗布液を、当該塗布液中に1.0mgのカーボンナノチューブE−18を分散させ、さらに、表IV中に示す芳香族化合物に変更した以外は同様にして、有機EL素子3−6〜3−9を得た。
<駆動電圧の測定>
上記で得られた有機EL素子3−1〜3−9に対し、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ製)を用いて2.5mA/cmの定電流を与えた際の駆動電圧を測定した。駆動電圧は、有機EL素子3−1の値を100とした相対値で示した。
Figure 0006977571
以上の結果より、本発明に係るグラフェン又はカーボンナノチューブを添加した場合、添加していない場合と比較していずれも駆動電圧が低くなっていることがわかる。すなわち、本発明に係るグラフェン又はカーボンナノチューブの添加により抵抗値が小さくなっており、キャリアの移動度が上昇したことが確認された。
この要因としては、有機層中ではキャリアがホッピングすることにより導電性を示すため、本発明に係るグラフェン又はカーボンナノチューブの添加によってキャリアの移動に要する距離が短くなったことが考えられる。
[実施例4]
以下の表Vに示す芳香族化合物及びグラフェンを含有する第2正孔輸送層を備えた、有機EL素子を作製し、素子寿命及び外部取り出し量子効率の評価を行った。
<有機EL素子4−1の作製>
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を約100nm成膜した基板(AvanStrate社製NA−45)にパターニングを行った。
このITO透明電極基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した後にUVオゾン洗浄を5分間行った。
基板上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS、へレウス社製、商品名:CLEVIOS P VP AI 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により成膜した後、200℃にて1時間乾燥し、膜厚30nmの第1正孔輸送層を設けた。
この基板を窒素雰囲気下に移し、第1正孔輸送層上に、9.0mgの化合物A、1.0mgのグラフェンE−9をクロロベンゼン1.1g中に溶解させて得た塗布液を1500rpm、30秒の条件下、スピンコート法により成膜した。その後、130℃で30分加熱乾燥を行い、膜厚約20nmの第2正孔輸送層とした。
その後、6.8mgの化合物H−1、0.8mgの化合物Dp−1を窒素雰囲気下で1.1gのクロロベンゼン中に溶解させた塗布液を、上記第2正孔輸送層上に1500rpm、30秒の条件下のもとスピンコート法にて成膜後,真空下130℃で加熱乾燥することにより溶媒を完全に除去し,膜厚約50nmの発光層とした。
続いて、真空蒸着装置に取り付けた後に真空槽を4×10Paまで減圧し、芳香族化合物ET−1を0.1nm/秒で蒸着して、膜厚約35nmの電子輸送層とした。その後、陰極バッファー層としてフッ化リチウム約1.0nm及び陰極としてアルミニウム約110nmを蒸着して陰極を形成し、サンプル1−1と同様の手順で封止することにより、有機EL素子4−1を作製した。
<有機EL素子4−2〜4−4の作製>
有機EL素子4−1の作製において、第2正孔輸送層に用いた化合物Aを表Vに記載の化合物に置き換えた以外は同様にして、有機EL素子4−2〜4−4を作製した。
<有機EL素子4−5の作製>
有機EL素子4−1の作製において、第2正孔輸送層に用いたグラフェンE−9をグラフェンE−CGに置き換えた以外は同様にして、有機EL素子4−5を作製した。
<有機EL素子4−6の作製>
有機EL素子4−1の作製において、第2正孔輸送層にグラフェンE−9を添加しなかったこと以外は同様にして、有機EL素子4−6を作製した。
<有機EL素子4−7の作製>
有機EL素子4−1の作製において、第2正孔輸送層に用いた化合物Aを化合物Fに置き換えた以外は同様にして、有機EL素子4−7を作製した。
<有機EL素子4−8の作製>
有機EL素子4−1の作製における第2正孔輸送層の成膜の際、用いる芳香族化合物Aを、後架橋型の高分子材料である化合物G(分子量:541)に置き換えて成膜後、180秒間紫外光を照射して光重合・架橋を行った以外は同様にして、有機EL素子4−8を作製した。
<外部取り出し量子効率の評価>
作製した各有機EL素子について、23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で2.5mA/cmの定電流を印加した際の外部取り出し量子効率(%)を算出した。なお、測定は製膜直後及び初期輝度の半分まで駆動させた有機EL素子で行った。なお、測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)を用いた。結果については、表V中に、有機EL素子4−7の外部取り出し量子効率(%)を100とした場合の相対値で示した。
<発光寿命の評価>
2.5mA/cmの一定電流で駆動したときに、輝度が発光開始直後の輝度(初期輝度)の半分に低下するのに要した時間を測定し、これを半減寿命時間(τ1/2)として発光寿命の指標とした。輝度の測定には、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)を用いた。結果については外部取り出し量子効率の評価と同様に、表V中に、有機EL素子4−7の発光寿命を100として相対値で示した。
Figure 0006977571
ナノカーボンを含有しない有機EL素子4−6については上層を塗布できず、正常な有機EL素子を作製することができなかったため、発光寿命及び取り出し量子効率は測定することができなかった。
また、得られた結果より、後架橋型の化合物Gを用いた有機EL素子4−8では、薄膜の形成の際に架橋しなかった残基が不純物となることや元来の性質が変化してしまうこと等の原因により性能の低下がみられた。
一方で、本発明に係るグラフェンE−9と、本発明に係る芳香族化合物と、を含有する第2正孔輸送層を備えた有機EL素子4−1〜4−4では、発光寿命及び取り出し量子効率の結果が良好であった。よって、本発明に係るグラフェンを膜中に含有させても、これらの性能が阻害されないことが分かった。
[実施例5]
以下の表VIに示す芳香族化合物及びカーボンナノチューブを含有する第2正孔輸送層を備えた、有機EL素子を作製し、素子寿命及び外部取り出し量子効率の評価を行った。
<有機EL素子5−1の作製>
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を約100nm成膜した基板(AvanStrate社製NA−45)にパターニングを行った。
このITO透明電極基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した後にUVオゾン洗浄を5分間行った。
基板上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS、へレウス社製、商品名:CLEVIOS P VP AI 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により成膜した後、200℃にて1時間乾燥し、膜厚30nmの第1正孔輸送層を設けた。
この基板を窒素雰囲気下に移し、第1正孔輸送層上に、9.0mgの化合物A、1.0mgのカーボンナノチューブE−18をクロロベンゼン1.1g中に溶解させて得た塗布液を1500rpm、30秒の条件下、スピンコート法により成膜した。その後、130℃で30分加熱乾燥を行い、膜厚約20nmの第2正孔輸送層とした。
その後、6.8mgの化合物H−2、0.8mgの化合物Dp−1を窒素雰囲気下で1.1gのクロロベンゼン中に溶解させた塗布液を、上記第2正孔輸送層上に1500rpm、30秒の条件下のもとスピンコート法にて成膜後,真空下130℃で加熱乾燥することにより溶媒を完全に除去し,膜厚約50nmの発光層とした。
続いて、真空蒸着装置に取り付けた後に真空槽を4×10Paまで減圧し、芳香族化合物ET−1を0.1nm/秒で蒸着して、膜厚約35nmの電子輸送層とした。その後、陰極バッファー層としてフッ化リチウム約1.0nm及び陰極としてアルミニウム約110nmを蒸着して陰極を形成し、サンプル1−1と同様の手順で封止することにより、有機EL素子5−1を作製した。
<有機EL素子5−2〜5−4の作製>
有機EL素子5−1の作製において、第2正孔輸送層に用いた化合物Aを表VIに記載の芳香族化合物に置き換えた以外は同様にして、有機EL素子5−2〜5−4を作製した。
<有機EL素子5−5の作製>
有機EL素子5−1の作製において、第2正孔輸送層に用いたカーボンナノチューブE−18をカーボンナノチューブE−CN3に置き換えた以外は同様にして、有機EL素子5−5を作製した。
<有機EL素子5−6の作製>
有機EL素子5−1の作製において、第2正孔輸送層にカーボンナノチューブを添加しなかったこと以外は同様にして、有機EL素子5−6を作製した。
<有機EL素子5−7の作製>
有機EL素子5−1の作製において、第2正孔輸送層に用いた化合物Aを化合物Fに置き換えた以外は同様にして、有機EL素子5−7を作製した。
<有機EL素子5−8の作製>
有機EL素子5−1の作製における第2正孔輸送層の成膜の際、用いる芳香族化合物Aを、後架橋型の高分子材料である化合物G(分子量:541)に置き換えて成膜後、180秒間紫外光を照射して光重合・架橋を行った以外は同様にして、有機EL素子5−8を作製した。
<外部取り出し量子効率及び発光寿命の評価>
実施例4の有機EL素子4−1と同様にして、作製した有機EL素子5−1〜5−8について外部取り出し量子効率及び発光寿命の評価を行った。なお、結果については表VI中に、有機EL素子5−7で得られた結果を100として相対値で示した。
Figure 0006977571
カーボンナノチューブを含有しない有機EL素子5−6については上層を塗布できず、正常な有機EL素子を作製することができなかったため、発光寿命及び取り出し量子効率は測定することができなかった。
また、得られた結果より、後架橋型の化合物Gを用いた有機EL素子5−8では、実施例4の有機EL素子4−8と同様に、薄膜の形成の際に架橋しなかった残基が不純物となることや元来の性質が変化してしまうこと等の原因により性能の低下がみられた。
一方で、本発明に係るカーボンナノチューブE−18と、本発明に係る芳香族化合物と、を含有する第2正孔輸送層を備えた有機EL素子5−1〜5−4では、発光寿命及び取り出し量子効率の結果が良好であった。よって、本発明に係るナノカーボンと同様に、カーボンナノチューブを膜中に含有させても、これらの性能が阻害されないことが分かった。
[実施例6]
後架橋型の化合物Gを用いて形成した第2正孔輸送層と、以下の表VIIに示す組成の有機機能性薄膜形成用塗布液を用いて形成した発光層と、を備えた有機EL素子を作製し、上記実施例4と同様にして素子寿命及び外部取り出し量子効率の評価を行った。表VII中の有機機能性薄膜形成用塗布液は、発光層を形成するための塗布液組成である。
<有機EL素子6−1の作製>
陽極として、100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、ITO(インジウムチンオキシド)を約100nm成膜した基板(AvanStrate社製NA45)に、パターニングを行った。
このITO透明電極基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した後にUVオゾン洗浄を5分間行った。
基板上にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、へレウス社製、商品名:CLEVIOS P VP AI 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により成膜した後、200℃にて1時間乾燥し、膜厚30nmの第1正孔輸送層を設けた。
第1正孔輸送層上に、9.0mgの化合物Gを1.1gのクロロベンゼンに溶解した塗布液を1500rpm、30秒の条件下、スピンコート法により成膜した。次いで、180秒間紫外光を照射し、光重合・架橋を行い、膜厚約20nmの第2正孔輸送層とした。
その後、6.8mgの化合物H−1、0.8mgの化合物Dp−2及び0.08mgのグラフェンE−9を窒素雰囲気下で1.1gのクロロベンゼン中に溶解させた塗布液を、上記第2正孔輸送層上に1500rpm、30秒の条件下のもとスピンコート法にて成膜した。次いで,真空下130℃で加熱乾燥することにより溶媒を完全に除去し、膜厚約50nmの発光層とした。
続いて、この発光層上に5.0mgの化合物ET−2を1.0mLの2−プロパノールに溶解させた塗布液を1000rpm、30秒でスピンコート法により成膜した後、120℃で30分加熱乾燥し、膜厚約30nmの電子輸送層とした。
これを真空蒸着装置に取付け、次いで、真空槽を4×10Paまで減圧し、陰極バッファー層としてフッ化リチウム約1.0nm及び陰極としてアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成した。次いで、サンプル1−1と同様の手順で封止することにより、有機EL素子6−1を作製した。
<有機EL素子6−2〜6−5の作製>
有機EL素子6−1の作製において、発光層のグラフェンE−9を表VIIに記載のナノカーボンに置き換えた以外は同様にして、有機EL素子6−2〜6−4を作製した。
また、有機EL素子6−1の発光層の形成において、グラフェンE−9を添加しなかったこと以外は同様にして、有機EL素子6−5を作製した。
<有機EL素子6−6の作製>
有機EL素子6−1の作製において、発光層のグラフェンE−9を、後架橋型の化合物Gに置き換えて成膜後、180秒間紫外光を照射して光重合・架橋を行った以外は同様にして、有機EL素子6−6を作製した。
<有機EL素子の評価>
作製した有機EL素子について、[実施例4]と同様にして、外部取り出し量子効率及び素子発光寿命を評価した。結果については、有機EL素子6−6の値を100として相対値で示した。
Figure 0006977571
発光層に本発明に係るグラフェン又はカーボンナノチューブを含まない有機EL素子6−5では、上層を塗布できず正常な素子を作製することができなかったため、発光寿命及び外部取り出し量子効率の測定は不可能であった。一方で、本発明に係るグラフェンE−9又はカーボンナノチューブE−18と、本発明に係る芳香族化合物と、を含有する発光層を備えた有機EL素子6−1及び6−2では、発光寿命及び取り出し量子効率の結果が良好であった。よって、グラフェンやカーボンナノチューブを発光層中に含有させても、これらの性能が阻害されないことが分かった。
[実施例7]
<有機光電変換素子1の作製>
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を140nm堆積したものを、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅にパターニングして、透明電極を形成した。
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。この透明基板上に、導電性高分子であるCLEVIOS P VP AI 4083(へレウス社製)を60nmの厚さでスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
これ以降は基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で10分間加熱処理した。
クロロベンゼンにp型半導体材料として、PCPDTBT(重量平均分子量7000〜20000、Nature Mat.vol.6(2007)、p497に記載のポリチオフェン共重合体)を1.0質量%、n型半導体材料としてPCBM(重量平均分子量911、フロンティアカーボン製、NANOM SPECTRAE100H)を2.0質量%、酸化グラフェンE−9を0.1質量%、さらに1,8−オクタンジチオールを2.4質量%溶解した液を調製し、0.45μmのフィルターで濾過し、これを有機機能性薄膜形成用塗布液とした。そして、この有機機能性薄膜形成用塗布液を用いて、インクジェット法にて厚さ100nmの薄膜を形成し、室温で30分乾燥し、光電変換層を得た。
次に、上記光電変換層を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドーマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまで真空蒸着機内を減圧した後、フッ化リチウムを0.5nm、Alを80nm蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、有機光電変換素子を得た。なお、蒸着速度はいずれも2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
得られた有機光電変換素子は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った。これを有機光電変換素子とした。
<有機光電変換素子2の作製>
上記有機光電変換素子1の作製方法において、酸化グラフェンE−9をカーボンナノチューブE−18に変更した以外は同様にして、有機光電変換素子2を作製した。
<有機光電変換素子の評価>
上記で作製した有機光電変換素子1及び2に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルター)の100mW/cmの強度の光を照射ししたところ、それぞれ、光電変換素子として十分な機能を有していることが分かった。
10 グラフェン
D1 グラフェンの最大長

Claims (13)

  1. 電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜であって、
    前記有機化合物として、芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)と、グラフェンとを含有し、
    前記グラフェンが、酸素原子を含む官能基又は芳香環を含む官能基を有することを特徴とする有機機能性薄膜。
  2. 前記グラフェンの平均の最大長が、50nm〜1μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機機能性薄膜。
  3. 電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜であって、
    前記有機化合物として、芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)と、カーボンナノチューブとを含有し、
    前記カーボンナノチューブが、芳香環を含む官能基を有することを特徴とする有機機能性薄膜。
  4. 前記カーボンナノチューブが、酸素原子を含む官能基を更に有することを特徴とする請求項3に記載の有機機能性薄膜。
  5. 前記カーボンナノチューブが、アームチェア型の単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の有機機能性薄膜。
  6. 前記カーボンナノチューブの平均のアスペクト比が、1000以上であることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載の有機機能性薄膜。
  7. 前記芳香族化合物として、光電変換機能を有する有機化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の有機機能性薄膜。
  8. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の有機機能性薄膜の片面又は両面に隣接して、他の膜が積層されていることを特徴とする有機機能性積層膜。
  9. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の有機機能性薄膜を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 請求項に記載の有機機能性薄膜を備えることを特徴とする光電変換素子。
  11. 電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜形成用塗布液であって、
    前記有機化合物として、芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)と、グラフェンとを含有し、
    前記グラフェンが、酸素原子を含む官能基又は芳香環を含む官能基を有することを特徴とする有機機能性薄膜形成用塗布液。
  12. 電荷輸送性を有する有機化合物を含有する有機機能性薄膜形成用塗布液であって、
    前記有機化合物として、芳香環を二つ以上有する芳香族化合物(ただし、グラフェン及びカーボンナノチューブは除く。)と、カーボンナノチューブとを含有し、
    前記カーボンナノチューブが、芳香環を含む官能基を有することを特徴とする有機機能性薄膜形成用塗布液。
  13. 前記カーボンナノチューブが、酸素原子を含む官能基を更に有することを特徴とする請求項12に記載の有機機能性薄膜形成用塗布液。
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