JP5515955B2 - 粒子充填構造シミュレーション方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ある空間内に充填された粒子の充填構造に係るシミュレーションを行う粒子充填構造シミュレーション方法の技術分野に関する。
この種の方法として、例えば、粒子集合体を所定の大きさの空間内に配置し、重心が低い粒子から自由落下させ、その落下プロセスで、水平方向の自由度、又は既設置粒子を透過する条件として粒子透過係数を与え、最下部に粒子を設置して粒子充填構造をシミュレートする方法が提案されている(特許文献1参照)。或いは、粒子間接触、並びに静電的及び磁気的相互作用を考慮した個別要素法に基づいた紛体挙動計算方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開平8−190576号公報 特開2005−122354号公報
ところで、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等の車両に搭載される電池の安全性の向上を図るため、例えば固体電解質等を用いた全固体電池の開発が進められている。該全固体電池は、例えば活物質と電解質粒子とが型に入れられた後に、押し固められることによって作成される。このような紛体や粒体等の粒子を取り扱う分野では、粒子の挙動を把握することが重要な課題の一つであり、該粒子の挙動の把握には、上述したようなシミュレーションが利用されることが多い。
しかしながら、上記特許文献1では、粒子間に働く反発力については考慮されていないという技術的問題点がある。また、上記特許文献2では、粒子間に働く相互作用を計算する際に粒子を点として扱っているため、十分な精度を得られない可能性があるという技術的問題点がある。
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、全固体電池を構成する粒子の充填構造を再現可能な粒子充填構造シミュレーション方法を提案することを課題とする。
本発明の粒子充填構造シミュレーション方法は、上記課題を解決するために、複数の粒子各々の表面に複数の質点を配置する質点配置工程と、前記複数の粒子を相互に重ならないように空間に夫々配置する粒子配置工程と、前記複数の粒子各々における前記複数の質点の相互間の相対位置が固定された状態で、前記複数の粒子の相互間に働く反発力を設定しつつ、前記空間の圧縮を行う圧縮工程とを備える。
本発明の粒子充填構造シミュレーション方法によれば、質点配置工程において、複数の粒子各々の表面に複数の質点が配置される。複数の質点の各々は、粒子の表面に任意に配置されてもよいが、等間隔に配置されることが望ましい。また、粒子の表面に配置される質点の個数は、後述する圧縮工程において、粒子同士の重なりを回避するためにある程度多いことが望ましい。
粒子配置工程において、複数の粒子が相互に重ならないように空間に夫々配置される。ここで、「空間」は、複数の粒子各々の体積の合計である総体積よりも十分大きな容積を有するように設定される。尚、複数の粒子が相互に重ならないようにするには、例えば、複数の粒子各々の直径(粒子が楕円体である場合は、該楕円体の長軸)のうち最も長い直径よりも長い間隔で、複数の粒子を等間隔で空間に夫々配置すればよい。
圧縮工程において、複数の粒子各々における複数の質点の相互間の相対位置が固定された状態で、複数の粒子の相互間に働く反発力が設定されつつ、前記空間の圧縮が行なわれる。ここで、「複数の粒子各々における複数の質点」とは、同一粒子の表面に配置された複数の質点を意味する。また、「複数の粒子各々における複数の質点の相互間の相対位置が固定された状態」とは、粒子が変形しないこと(即ち、粒子を剛体として扱うこと)を意味する。
尚、「複数の粒子の相互間に働く反発力」は、例えば、一の粒子の表面に配置された一の質点と、他の粒子の表面に配置された一の質点との間に、一の粒子と他の粒子とが相互に近づくと反発する2体力間ポテンシャルを設定すればよい。また、空間の圧縮は、例えば分子動力学法等により行えばよい。
本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、圧粉全固体電池は、活物質と電解質粒子とを型に入れ圧力を加え押し固め、所定の密度とすることによって作成される。圧粉全固体電池が、適切に充放電するためには、活物質と電極との間に導電性が確保されている必要があり、活物質粒子間の結合性が重要となる。活物質粒子間の結合性は、粒子形状や密度に影響を受ける。この影響を実験で解析するためには膨大な時間と費用がかかるため、該影響の解析にはシミュレーションが用いられることが多い。しかしながら、圧縮後の空間に所定の密度まで粒子を配置しようとすると、粒子同士の重なりの発生等により、実際の密度を再現することが困難である。
しかるに本発明では、実際の圧粉全固体電池の製造工程を模擬して、粒子配置工程において、複数の粒子が相互に重ならないように空間に夫々配置され、その後、圧縮工程において、複数の粒子各々における複数の質点の相互間の相対位置が固定された状態で、複数の粒子の相互間に働く反発力が設定されつつ、前記空間の圧縮が行われる。ここで、質点配置工程において、予め、複数の粒子各々の表面に複数の質点が配置されているので、空間の圧縮が行われる際に、粒子同士が相互に重なることを回避することができる。このように、本発明では、実際の圧粉全固体電池の製造工程を模擬すると共に、粒子の重なりを回避した上で粒子間反発力を考慮したシミュレーションを行っているので、全固体電池を構成する粒子の充填構造を精度よく再現することができる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
本発明の実施形態に係るシミュレーション方法の処理を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るシミュレーション方法の主要な処理の概念を示す概念図である。 シミュレーション結果の一例を示す図である。 粒子の体積密度と結合粒子の割合との関係の一例を示す図である。 シミュレーション結果に基づいて評価された電極と接触している粒子群の一例を、体積密度毎に示す図である。
以下、本発明に係る粒子充填構造シミュレーション方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態に係る粒子充填構造シミュレーション方法の全体の処理の流れについて、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るシミュレーション方法の処理を示すフローチャートであり、図2は、本実施形態に係るシミュレーション方法の主要な処理の概念を示す概念図である。
図1において、先ず、圧粉全固体電池を構成する活物質を模擬した、本発明に係る「粒子」の一例としての楕円体100(図2参照)が複数個発生させられる(ステップS101)。ここで、楕円体100は、例えば、楕円体100の長軸半径、該長軸半径の標準偏差、楕円体100のアスペクト比、該アスペクト比の標準偏差、楕円体100の個数等が指定されることにより発生させられる。尚、楕円体100の長軸半径等の各種パラメータの値は、実際の活物質を測定して求めてもよいし、解析者(即ち、ユーザ)が恣意的に決定してもよい。
次に、図2(a)に示すように、質点配置工程において、楕円体100の表面に、例えば等間隔で複数の質点200が夫々配置される(ステップS102)。配置された質点200は、後述する圧縮工程において使用される。尚、圧縮時の楕円体100同士の重なりを回避するためには、質点200の相互間の間隔は狭いほうがよいが、その分質点200の個数が増加するので、圧縮工程に費やされる時間が長くなる。このため、質点200の個数は、例えば、要求されるシミュレーション結果の精度、解析時間等に応じて調整すればよい。
次に、図2(b)に示すように、粒子配置工程において、複数の楕円体100各々が、空間1内に、相互に重ならないように配置される(ステップS103)。尚、楕円体100同士の重なりの発生を回避するためには、例えば、ステップS101で発生した複数の楕円体100各々の長軸半径のうち、最も長い長軸半径よりも長い間隔で空間1内に等間隔で、複数の楕円体100を夫々配置すればよい。
次に、図2(c)に示すように、圧縮工程において、複数の楕円体100各々の質点200の相対位置が固定された状態で(即ち、楕円体100を剛体とする)、質点200間に反発の2点間ポテンシャルが設定され、分子動力学法で、空間1が所定の密度となる空間1´まで圧縮される(ステップS104)。ここで、圧縮後の空間1´の容積は、例えば、複数の楕円体100各々の体積の合計である楕円体総体積と、予め設定された体積密度とにより決定される。尚、圧縮工程では、楕円体100の運動速度が低下され、楕円体100同士の重なりを回避するために系の温度が冷却される。
上述したステップS101乃至S104の処理の結果、例えば図3に示すような活物質モデルが得られる。図3は、シミュレーション結果の一例を示す図である。
次に、本実施形態に係る粒子充填構造シミュレーションの有効性について、図4を参照して説明する。図4は、粒子の体積密度と結合粒子の割合との関係の一例を示す図である。
図4に示すように、結合粒子の割合が、粒子の体積密度が30〜45%の間で急激に変化していることがわかる。ここで、粒子の結合理論によれば、結合性は、体積密度を増加させた場合、ある閾値で急激に増加すると言われている(パーコレーションの閾値)。図4では、その現象が再現されていることから、本実施形態に係る粒子充填構造シミュレーションは、有効に機能していることがわかる。
尚、活物質モデルの結合性は、例えば次のように評価すればよい。即ち、先ず、空間1´全体をメッシュで分割する。次に、各メッシュ内に楕円体100が共存していた場合、その楕円体100は結合していると判定する。そして、全メッシュで結合判定を行えば、結合している楕円体100群を抽出することができる。メッシュが楕円体100に対して十分小さければ、このような方法で結合性の評価が可能であることが、本願発明者の研究により判明している。
結合した活物質群を模擬した楕円体100群が、例えば電極を空間1´の上面と仮定して、該上面と接していれば有効な活物質と言える。上記方法で電極(即ち、空間1´の上面)と接触している楕円体100のみを抽出すると、例えば図5に示すようになる。図5は、シミュレーション結果に基づいて評価された電極と接触している粒子群の一例を、体積密度毎に示す図である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う粒子充填構造シミュレーション方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1、1´…空間、100…楕円体、200…質点

Claims (1)

  1. 複数の粒子各々の表面に複数の質点を配置する質点配置工程と、
    前記複数の粒子を相互に重ならないように空間に夫々配置する粒子配置工程と、
    前記複数の粒子各々における前記複数の質点の相互間の相対位置が固定された状態で、前記複数の粒子の相互間に働く反発力を設定しつつ、前記空間の圧縮を行う圧縮工程と
    を備えることを特徴とする粒子充填構造シミュレーション方法。
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