JP7291531B2 - 粒子設計プログラム、設計支援プログラム、検査方法および極板の製造方法 - Google Patents
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Description
図1は、実施例1に係るサーバ装置10の機能的構成の一例を示すブロック図である。図1に示すCAE(Computer Aided Engineering)システム1は、あくまで一例として、電池用の極板の材料設計を支援する各種の機能がパッケージ化されたCAEツールを提供するシステムである。
材料を混合した場合や酸化膜、不純物など母材と異なる相が形成されている場合、または空孔が存在する場合など、物性の異なる領域が混在している状態において、各相の物性から全体の伝導性を計算する取り組みは古くから行われてきた。
一方、上記の背景技術の欄でも説明した通り、コンピュータの能力向上や計算技術の向上に伴って、いわゆるシミュレーションと呼ばれる方法が用いられることもある。シミュレーションでは、活物質と導電助剤を粒子としてモデル化し、これらを含む組織構造を分割してグリッドで表現し、ラプラス方程式やポアソン方程式などの基本法則を満たすように各グリッドの物理量が決定される。
これらの課題を解決するアプローチの一側面として、本実施例では、電池のスラリー塗布で作製される極板において、活物質以外の混合材、例えば導電助剤や結着剤、添加剤などを活物質の粒子モデルの周囲を被覆するコーティング剤としてモデル化する粒子設計機能を提供する。
次に、本実施例に係るサーバ装置10の機能的構成について説明する。図1に示すように、サーバ装置10は、通信インタフェイス11と、記憶部13と、制御部15とを有する。なお、図1には、データの授受の関係を表す実線が示されているが、説明の便宜上、最小限の部分について示されているに過ぎない。すなわち、各処理部に関するデータの入出力は、図示の例に限定されず、図示以外のデータの入出力、例えば処理部及び処理部の間、処理部及びデータの間、並びに、処理部及び外部装置の間のデータの入出力が行われることとしてもかまわない。
図3に示すように、第1モデル化部17Bは、SEMを用いて活物質の表面観察が行われることにより活物質の粒子の表面形状が撮像されたSEM画像に対する解析結果、例えば活物質形状および粒子径分布を取得する(ステップS301)。
図5は、実施例1に係る第2モデル化処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、あくまで一例として、上記の第1モデル化処理により活物質の粒子モデルの生成が終了した後であれば任意のタイミングで開始することができる。
まず、下記のステップS503から下記のステップS509までの処理に対応する第1の粒子設計について説明する。ここでは、あくまで一例として、混合材からスラリーを作製してスラリーから合成抵抗を測定することにより、スラリーの合成抵抗の実測値をコーティング剤に設定する例を挙げる。
ここで、スラリーは、活物質以外の混合材、すなわち導電助剤、結着剤、添加剤(増粘剤)、希釈剤から配合比設定部17Aにより設定された配合比にしたがって作製される。あくまで一例として、以下では、スラリーの作製に用いる混練機の一例として、薄膜旋回方式のものを用いる例を挙げる。
上記のステップS503におけるスラリーの濡れ性評価には、あくまで一例として、接触角測定の濡れ性評価2/θ法を用いることができる。
Wa=γlv(1+cosθy)・・・(3)
まず、下記のステップS510から下記のステップS513までの処理に対応する第2の粒子設計について説明する。すなわち、活物質および導電助剤の粒子径の比が上記の閾値を超える場合(ステップS502No)、第2モデル化部17Cは、ステップS501で取得された導電助剤形状および粒子径分布の解析結果に基づいて導電助剤の粒子をモデル化する(ステップS510)。
図10は、実施例1に係るシミュレーション処理の手順を示すフローチャートである。図10には、あくまで一例として、差分法により導電性を計算する場合のシミュレーション処理の手順が示されているが、これに限定されず、他のシミュレーション方法、例えば有限要素法により導電性を計算することとしてもかまわない。
上述してきたように、本実施例に係るサーバ装置10は、電池のスラリー塗布で作製される極板において、活物質以外の混合材、例えば導電助剤や結着剤、添加剤などを活物質の粒子モデルの周囲を被覆するコーティング剤としてモデル化する粒子設計機能を提供する。このような粒子設計機能によって、導電助剤の抵抗値のみならず、その他の結着剤や添加剤、希釈剤などの抵抗値もシミュレーション計算に用いることができる。したがって、本実施例に係るサーバ装置10によれば、シミュレーションの計算値を実測値に近似させる粒子設計並びにシミュレーションを実現できる。
例えば、新シミュレーションは、活物質粒子径の影響を評価するために用いることで、活物質粒子径の影響評価を旧シミュレーションよりも短時間かつ正確に行うことができる。図12A~図12Cは、活物質モデルの一例を示す図である。これら図12A~図12Cには、活物質の粒度分布の視認性を高める側面から、活物質の粒子モデルが抜粋して示されている。ここで、図12A~図12Cに示す活物質モデルの間では、活物質の体積率はいずれも同一である。その一方で、図12Aに示す活物質の平均粒子径は「大」であり、図12Bに示す活物質の平均粒子径は「中」であり、また、図12Cに示す活物質の平均粒子径は「小」である。図12A~図12Cに示す活物質モデルを含む極板モデルに新シミュレーションを適用した場合、次のような抵抗率が得られた。すなわち、抵抗率は、図12A~図12Cの順に100%、108%、98%となる。このような結果から、活物質の粒度は、導電助剤の投入量に比べて抵抗率への影響が小さいことがわかる。
また、新シミュレーションは、活物質量および結着剤投入量の影響を評価するために用いることで、活物質量および結着剤投入量の影響評価を旧シミュレーションよりも短時間かつ正確に行うことができる。図13は、活物質量および結着剤投入量と電気伝導性との関係の一例を示す図である。図13に示すグラフの縦軸は、電気伝導性を指し、また、横軸は、結着剤の投入量を指す。図13には、活物質量が「多」である極板モデルから算出された新シミュレーションの計算値が菱形のマークでプロットされている。さらに、図13には、活物質量が「中」である極板モデルから算出された新シミュレーションの計算値が三角のマークでプロットされている。さらに、図13には、活物質量が「少」である極板モデルから算出された新シミュレーションの計算値が丸印でプロットされている。なお、いずれの極板モデルにおいても導電助剤の添加量は一定であることとする。図13に示すグラフによれば、活物質量の増加によって導電性が向上し、かつ結着剤投入量の増量によっても導電性が向上する効果があることが明らかである。
また、新シミュレーションは、結着剤投入量および導電助剤添加量の影響を評価するために用いることで、結着剤投入量および導電助剤添加量の影響評価を旧シミュレーションよりも短時間かつ正確に行うことができる。図14は、結着剤投入量および導電助剤添加量と極板の抵抗率との関係の一例を示す図である。例えば、極板材料のうち導電助剤の含有量および結着剤の含有量が異なる配合比が列挙された配合比パターンごとに当該配合比パターンに対応する極板モデルに新シミュレーションを適用する。これによって、図14に示すように、結着剤および導電助剤の配合比パターン別の極板の抵抗率(新計算値)を得ることができる。このように、結着剤および導電助剤の配合比パターン別の極板の抵抗率を算出しておくことにより、極板設計で要求される抵抗率が定まれば、当該抵抗率を満たす結着剤および導電助剤の配合比パターンを速やかに検索することができる。
上述の通り、新シミュレーションは、極板材料の配合比を最適化する材料設計に有効活用できる他、極板作製時における品質管理にも有効活用できる。図15A及び図15Bは、シミュレーションの計算値と実測値との関係の一例を示す図である。図15A及び図15Bに示すグラフの縦軸は、抵抗値を指し、また、横軸は、導電助剤の添加量を指す。図15A及び図15Bには、混合材から作製されたスラリーが活物質の粒子モデルのコーティング剤としてモデル化された極板モデルから算出された新シミュレーションの計算値がプロットされている。ここで、極板に含まれる活物質の能力が最大限に発揮された状態をシミュレーションする側面から、新シミュレーションに用いられる極板モデルは、分散性が良好である活物質モデルを有することとする。さらに、図15A及び図15Bには、極板モデルと同一の配合比で作製された極板から測定された実測値がプロットされている。これら図15A及び図15Bのうち、図15Aには、導電助剤Aが極板の作製に用いられる例が示される一方で、図15Bには、導電助剤Bが極板の作製に用いられる例が示されている。
上記の実施例1で説明したCAEツールにより配合比等の材料設計が行われる極板は、あくまで一例として、次のように作製することができる。最初に材料を混練し、スラリーを作製する工程である。スラリーを作製する工程には、一例として、電池の作製で一般的に使用される混練機(プラネタリミキサー、遊星式撹拌・脱泡装置、薄膜旋回法等)を使用することができる。上記の実施例1で説明したCAEツールを用いて定められた配合比に対応する活物質、導電助剤、結着剤及び添加剤に希釈剤を投入しながら活物質、導電助剤、結着剤及び添加剤を混練してスラリー化し、スラリーを集電体に塗布する。塗布後、乾燥炉で極板乾燥を行う。乾燥後の極板について四探針の抵抗測定を行うことにより得られた実測値と、シミュレーション部19で得られた計算値とを比較することにより評価を行う。このとき、実測値と計算値との差が所定の閾値を超える場合、極板内に凝集が多発しており、分散性に問題がある可能性がある。このため、混練手順や乾燥条件の見直しをおこない、実測値と計算値との差が上記の閾値以内に近似するまで同作業を続ける。これによって、スラリー状の電極材料が得られる。
図17A及び図17Bに、上記のスラリー状の電極材料を用いて作製される電池の一例として、ラミネート型蓄電素子2を示した。図17Aは、ラミネート型蓄電素子2の外観図であり、図17Bは、当該蓄電素子2の内部構造の概略を示す分解斜視図である。ラミネート型蓄電素子2は、図17Aに示したように平板状の外観形状を有し、アルミラミネートフィルム211a、211bが扁平な矩形袋状に成形されてなる外装体211内に発電要素が密封されている。また、ここに示したラミネート型蓄電素子2では、矩形の外装体211の一辺213から正極端子板223および負極端子板233が外方に導出されている。
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図18を用いて、上記の実施例1と同様の機能を有する粒子設計プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。
10 サーバ装置
11 通信インタフェイス
13 記憶部
13A SEM画像
15 制御部
17 粒子設計部
17A 配合比設定部
17B 第1モデル化部
17C 第2モデル化部
19 シミュレーション部
50 クライアント端末
Claims (12)
- 活物質の粒子径および前記粒子径の存在確率が対応付けられた粒子径分布にしたがって前記活物質の粒子径が設定された活物質の粒子モデルをシミュレーションの計算領域に配置し、
前記活物質以外の混合材から作製されるスラリーの前記活物質に対する撥水性に基づいて、前記活物質および前記スラリーの間の界面の面積を決定し、
前記界面の面積に対応する厚みで、前記活物質の粒子モデルを被覆するコーティング剤のモデルを分布させ、
前記活物質の粒子モデルにバルク抵抗を設定するとともに、前記コーティング剤のモデルに前記スラリーの合成抵抗を設定する処理をコンピュータに実行させる粒子設計プログラム。 - 前記混合材は、導電助剤および結着剤を含むか、前記導電助剤、前記結着剤および添加剤を含むか、あるいは前記導電助剤、前記結着剤、前記添加剤および希釈剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の粒子設計プログラム。
- 前記決定する処理は、前記活物質の粒子の径に対する、前記混合材に含まれる導電助剤の粒子の径の比率が所定の閾値以下であることを条件に実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子設計プログラム。
- 前記撥水性に関するパラメータは、接触角及び/又は表面張力であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の粒子設計プログラム。
- 前記コーティング剤は、前記計算領域内の表面エネルギーの総和が最小となる形状にモデル化されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の粒子設計プログラム。
- 前記混合材に含まれる導電助剤の粒子の径が前記活物質の粒子の径の1/20以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の粒子設計プログラム。
- 前記コーティング剤は、前記計算領域における単位面積当たりの表面エネルギーが最小となる形状にモデル化されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の粒子設計プログラム。
- 活物質の粒子径および前記粒子径の存在確率が対応付けられた粒子径分布にしたがって前記活物質の粒子径が設定された活物質の粒子モデルをシミュレーションの計算領域に配置し、
前記活物質以外の混合材から作製されるスラリーの前記活物質に対する撥水性に基づいて、前記活物質および前記スラリーの間の界面の面積を決定し、
前記界面の面積に対応する厚みで、前記活物質の粒子モデルを被覆するコーティング剤のモデルを分布させ、
前記活物質の粒子モデルにバルク抵抗を設定するとともに、前記コーティング剤のモデルに前記スラリーの合成抵抗を設定し、
前記活物質の粒子モデルおよび前記粒子モデルを被覆するコーティング剤のモデルを含む計算領域を分割して導電性を計算するシミュレーションを実行する処理をコンピュータに実行させる設計支援プログラム。 - 前記シミュレーションは、前記活物質の粒子モデルの径に基づいて前記計算領域を分割して実行されることを特徴とする請求項8に記載の設計支援プログラム。
- 活物質および前記活物質以外の混合材の配合比を設定し、
前記配合比に設定された活物質の含有量と、前記活物質の粒子径および前記粒子径の存在確率が対応付けられた粒子径分布とにしたがって前記活物質の粒子径が設定された活物質の粒子モデルをシミュレーションの計算領域に配置し、
前記混合材から作製されるスラリーの前記活物質に対する撥水性に基づいて、前記活物質および前記スラリーの間の界面の面積を決定し、
前記配合比に設定された混合材の含有量に基づいて、前記活物質の粒子モデルを被覆するコーティング剤のモデルを前記界面の面積に対応する厚みで分布させ、
前記活物質の粒子モデルにバルク抵抗を設定するとともに、前記コーティング剤のモデルに前記スラリーの合成抵抗を設定し、
前記活物質の粒子モデルおよび前記粒子モデルを被覆するコーティング剤のモデルを含む計算領域を分割して導電性を計算するシミュレーションを実行し、
前記シミュレーションの計算値と、前記配合比で作製された極板から前記導電性が測定された実測値との差が所定の閾値以内であるか否かを判定する処理をコンピュータが実行する検査方法。 - 活物質および前記活物質以外の混合材を混練してスラリー化する工程と、
前記活物質および前記混合材がスラリー化されたスラリーを集電体に塗布する工程と、
前記集電体にスラリーが塗布された極板を乾燥させる工程と、
前記活物質および前記活物質以外の混合材の配合比を設定し、前記配合比に設定された活物質の含有量と、前記活物質の粒子径および前記粒子径の存在確率が対応付けられた粒子径分布とにしたがって前記活物質の粒子径が設定された活物質の粒子モデルをシミュレーションの計算領域に配置し、前記混合材から作製されるスラリーの前記活物質に対する撥水性に基づいて、前記活物質および前記スラリーの間の界面の面積を決定し、前記配合比に設定された混合材の含有量に基づいて、前記活物質の粒子モデルを被覆するコーティング剤のモデルを前記界面の面積に対応する厚みで分布させ、前記活物質の粒子モデルにバルク抵抗を設定するとともに、前記コーティング剤のモデルに前記スラリーの合成抵抗を設定し、前記活物質の粒子モデルおよび前記粒子モデルを被覆するコーティング剤のモデルをモデル化した極板モデルを含む計算領域を分割して導電性を計算するシミュレーションを実行し、前記シミュレーションにより得られる計算値と、乾燥後の極板から導電性が測定された実測値との差が所定の閾値以内に収まるまでスラリー化、塗布および乾燥の各工程を繰り返す工程とを含むことを特徴とする極板の製造方法。 - 請求項11に記載の極板の製造方法において、
前記極板は、正極板及び負極板を含み、
前記正極板及び前記負極板をセパレータを介して積層する工程と、
前記正極板及び前記負極板が前記セパレータを介して積層された電極体を電解液と共に封入する工程とをさらに含むことを特徴とする極板の製造方法。
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