JP5515506B2 - 電気亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、主に、家電製品などに用いられる電気亜鉛めっき鋼板の製造方法であり、特に、めっき表面に処理を施すことで、高い白色度を有する電気亜鉛めっき鋼板の製造方法に関するものである。
化成処理の施された電気亜鉛めっき鋼板は、良好な耐食性を有する点や、コストの点などから、現在、多くの用途に用いられているが、かかるめっき鋼板は、製品の外観がよいという点から、一般的に、高い白色度が要求される。そのため、白色度を向上させるための種々の技術が開発されている。
なお、鋼板の白色度は、めっき後の化成処理によって低下するものの、化成処理前のめっき層の表面状態に大きく依存するため、電気亜鉛めっき条件の適正化を図ることで、白色度の向上を図る技術が数多く開発されている。なお、電気亜鉛めっき鋼板の白色度の指標としては、通常、明度(L値)が用いられる。
高い白色度を有する電気亜鉛めっき鋼板を製造する方法として、例えば、特許文献1に開示されているように、硫酸塩酸性亜鉛めっき浴中に、無機イオン(Tl)を含有させ、電気亜鉛めっきを施すという製造方法がある。この製造方法を用いれば、Tlの効果によって高い白色度(明度)を得ることができる。
また、別の方法としては、所定の有機物を添加した電気亜鉛めっき浴を用いることで、電気亜鉛めっき鋼板の白色度を向上させる方法がある。例えば、特許文献2では、所定濃度のグリシン、アスパラギン酸、カルボン酸基を2つ以上有するカルボン酸又はその塩の群から選択された1種以上を含む硫酸酸性亜鉛めっき浴を用い、特許文献3では、ナフテン酸の金属塩、アニリン誘導体、低級アルカノイル化合物、および有機過酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種を、所定量添加した電気亜鉛めっき浴を用いている。
しかしながら、特許文献1のように、無機物を含有するめっき浴を用いて製造された電気亜鉛めっき鋼板は、めっき層中に前記無機物が共析するため、めっき層の耐食性が劣化したり、硬度が上昇するといった、亜鉛めっき層の特性が失われるという問題があった。
また、特許文献2及び3のように、有機物を添加しためっき浴を用いる製造法では、電気亜鉛めっき時に電流効率が低下するという問題や、不溶性アノードの寿命が短くなるという問題があった。また、製造された電気亜鉛めっき鋼板は、めっき浴中に添加された有機物がめっき層中で共析するため、めっき層の硬度が上昇する等の亜鉛めっき層の特性が失われるという問題があった。
特開平9−195082号公報 特開平8−74089号公報 特開平10−287992号公報
本発明の目的は、めっき層の特性の劣化がなく、高い白色度を有する電気亜鉛めっき鋼板を、電気亜鉛めっき時の電流効率を低下させることなく製造できる電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するため検討を重ねた結果、鋼板に電気亜鉛めっき法によりめっき層を形成した後、硝酸イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン及び塩素酸イオンのうちの少なくとも1種を、合計で0.002〜0.05mol/Lの範囲で含有し、pHが4.5以下である酸性水溶液に、0.5秒以上接触させ、水洗及び乾燥を施した後、前記めっき層の表面に化成皮膜を形成することで、前記めっき層の表面形状の適正化が図られることによって、高い白色度を得ることができるとともに、めっき浴中に無機物や有機物を添加する必要がないため、無機物又は有機物の共析に起因しためっき層の特性劣化及び電気めっき時の電流効率の低下についても有効に抑制された電気亜鉛めっき鋼板が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)鋼板に電気亜鉛めっき法により亜鉛含有量が97質量%以上であるめっき層を形成した後、硝酸イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン及び塩素酸イオンのうちの少なくとも1種を、合計で0.002〜0.05mol/Lの範囲で含有し、pHが4.5以下である酸性水溶液に、0.5秒以上接触させ、水洗及び乾燥を施した後、前記めっき層の表面に片面当たりの付着量で0.05〜1g/m 2 化成皮膜を形成することを特徴とする電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(2)前記酸性水溶液のpHは、1以上である上記(1)記載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(4)前記化成皮膜は、無機皮膜、有機皮膜、有機無機複合皮膜、又はこれらの複層皮膜からなる上記(1)〜(3)のいずれか1項記載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、めっき層の特性の劣化がなく、高い白色度を有する電気亜鉛めっき鋼板を、電気亜鉛めっき時の電流効率を低下させることなく製造できる電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することが可能となった。
以下、本発明の構成と限定理由を説明する。
本発明に従う電気亜鉛めっき鋼板の製造方法は、鋼板に電気亜鉛めっき法によりめっき層を形成した後、硝酸イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン及び塩素酸イオンのうちの少なくとも1種を、合計で0.002〜0.05mol/Lの範囲で含有し、pHが4.5以下である酸性水溶液に、0.5秒以上接触させ、水洗及び乾燥を施した後、前記めっき層の表面に化成皮膜を形成することを特徴とする。
上記構成を採用することにより、前記イオンによって、微細な凹凸を有する前記めっき層の表面が平坦化されるため、有効に入射光を反射できる結果、高い白色度(L値)を得ることができ、さらに、めっき浴中に共析物となる無機物や有機物を添加する必要がないため、めっき層の特性(硬度、耐食性や被加工時の耐剥離性など)及び電気亜鉛めっき時の電流効率についても、十分に確保できる。
ここで、前記めっき層は、亜鉛を含有するめっき層のことをいい、電気亜鉛めっき法により形成される。電気亜鉛めっき法に用いられる浴種については特に限定はせず、例えば、硫酸浴、塩化物浴、ジンケート浴又はシアン浴等を用いることができる。また、前記めっき層は、意図的に含有させた成分や不可避的に含有する不純物(原板から溶出する鋼成分や、混入する恐れがあるNi、Co等)を少量含んでいても問題はなく、本発明では、亜鉛の含有量が97質量%以上とする。97質量%未満では、亜鉛以外の成分の影響が大きくなり、安定した性能を発揮できない恐れがあり、また、本来、亜鉛めっき鋼板が有する白色度が低下するためである。なお、前記めっき層中の亜鉛の含有量は、希塩酸等の酸液との接触によりめっき層を溶解させ、溶解成分を湿式分析することで求めることができる。
また、前記めっき層の片面当たりの付着量は、電気亜鉛めっき層の特性と白色度を確保する点から、5〜30g/m2であることが好ましい。なお、前記めっき層の付着量は、めっき層の付着面積を把握した上で、希塩酸等の酸液との接触によりめっき層を溶解させた前後の鋼板の質量変化、又は、溶解しためっき成分の定量化により求めることができる。
本発明では、前記めっき層を形成した鋼板を、硝酸イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン及び塩素酸イオンのうちの少なくとも1種を、合計で0.002〜0.05mol/Lの範囲で含有する酸性水溶液に接触させる必要がある。ここで、前記イオンの種類を、硝酸イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン及び塩素酸イオンのうちの少なくとも1種に限定したのは、前記めっき表層を一定量除去することでめっき結晶の微細な凹凸を平坦化し、白色度を高めることができるからであり、その他のイオンを用いた場合では、同様の効果を奏することができない。また、前記イオンの含有量を0.002〜0.05mol/Lの範囲としたのは、0.002mol/L未満では、イオンの量が少なすぎるため、十分に前記めっき結晶の微細な凹凸の平坦化が行えず、所望の白色度を得ることができないからであり、一方、0.05mol/Lを超えると、イオンの量が多すぎるため、めっき層の表面が荒れ、白色度の低下を招くからである。
なお、上述の各種イオンのイオン源については、所望のイオンが得られれば、特に限定はしない。例えば、それぞれの酸性水溶液や、金属塩、又はこれらの混合物など、イオンの含有量等を考慮して適宜選択することができる。
また、本発明では、前記酸性水溶液のpHを、4.5以下とする必要がある。前記酸性水溶液のpHが4.5を超えると、前記酸性水溶液の反応性が不十分となり、十分に前記めっき層表面の平坦化が行われない結果、白色度を向上できないからである。さらに、前記酸性水溶液のpHは、1.0以上とすることがより好適である。1.0未満の場合、白色度の向上効果は得られるものの、酸性水溶液への接触時に亜鉛めっき層の溶解量が多くなり、亜鉛めっきの付着量を多くする必要があることや、酸性水溶液に溶解した亜鉛イオンを多く除去する必要が生じることから、コストアップを招くためである。さらにまた、所望の白色度向上効果が得られ、めっき層の溶解量も少なくできるという点から、前記pHを2.0〜3.0の範囲とすることが最も好ましい。なお、前記pHの調整については、塩酸や硫酸等の酸、又は、水酸化ナトリウムやアンモニア等の塩基を適宜添加することで行うことができる。
さらに、本発明では、前記めっき層を形成した鋼板を、前記酸性水溶液に0.5秒以上接触させる必要がある。接触時間が0.5秒未満の場合、接触時間が短すぎるため、十分に前記めっき層の表面の平坦化を行えず、所望の白色度を得ることができないからである。なお、接触時間の上限については、白色度を得る効果からは特に限定はしないが、生産性の点からは、5秒以下とすることが好ましい。また、接触方法については、特に限定はせず、例えば、水溶液への浸漬や水溶液の塗布、水溶液のスプレー等の方法を用いることができる。さらに、前記酸性水溶液に接触させた後、該酸性水溶液の後工程への影響(化成皮膜へのコンタミネーション等)をなくすため、水洗及び乾燥を施す。
なお、前記酸性水溶液の温度についても、特に限定はしないが、定温保持性や昇温コストの点から、30〜60℃の範囲とすることが好ましい。また、前記酸性水溶液中には、pH緩衝剤を含有する場合もあり、不可避的不純物が含有されることも考えられる。加えて、めっき層からの溶出成分(Zn、Fe、Ni等)や、めっき浴の汚染成分を少量含有していても構わない。
そして、本発明では、前記酸性水溶液に接触させ、水洗及び乾燥を施した電気亜鉛めっき鋼板の表面に、化成皮膜を形成する。この化成皮膜は、前記鋼板表面に、耐食性や、密着性、耐疵付き性などを備えることができるように設けられる層であり、白色度の低下を防ぐ点から、その付着量が片面当たり0.05〜1g/m2の範囲であることが好ましい。
また、前記化成皮膜は、特に制限はなく、従来公知の化成皮膜を使用することができ、例えば、無機皮膜、有機皮膜、有機無機複合皮膜、又はこれらの複層皮膜を用いることができる。要求される特性、つまり、上述の耐食性、密着性、耐疵付き性に応じて、その種類、成分、付着量を適宜選択すればよい。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
本発明の実施例について説明する。
(サンプル1〜26)
以下の(i)〜(iii)の処理工程を行い、サンプルとなる電気亜鉛めっき鋼板を作製した。
(i)冷延鋼板に対して、脱脂・酸洗処理を施した後、電気亜鉛めっき法(条件は、めっき浴:Zn2+イオン1.5mol/L含有する硫酸酸性浴(pH2.0、温度50℃)、相対流速:1.5m/秒、電流密度:50A/dm2)によって、表1に示す付着量(片面当たり)の亜鉛の含有量が97質量%以上の亜鉛めっき層を形成し、その後、水洗・乾燥を行った。
(ii)作製した前記電気亜鉛めっき鋼板を、表1に示すイオンを含有する酸性水溶液に接触させた。なお、酸性水溶液の条件(イオン種類、合計のイオン濃度(mol/L)、イオン源、酸性水溶液のpH、pH調整剤の種類、温度)、及び、酸性水溶液を用いた処理条件(処理方法、接触時間)の詳細については、表1に示す。なお、サンプル24〜26については、前記酸性水溶液による処理を実施していない。
(iii)次に、上述の酸性水溶液処理を施した鋼板を、水洗、乾燥させた後、前記鋼板の表面上に、第一リン酸マンガン100質量部に対し、シリカ(平均粒径:7nm)70質量部を含有する化成処理液をロールコーターで塗布し、140℃の熱風炉で焼付け、乾燥させることで、片面当たりの付着量が0.4g/m2である無機皮膜からなる化成皮膜を形成した。
Figure 0005515506
以上のようにして得られた各電気亜鉛めっき鋼板のサンプル1〜26について評価を行った。評価方法を以下に示す。
(評価方法)
(1)白色度(L値)
各サンプルについて、色差計(日本電色工業(株)製のSE2000)を用いてSCE(正反射光除去)による明度(L値)の測定を行った。評価は、以下の基準に従って行い、測定値及び評価結果を表2に示す。
○:L値が64以上
×:L値が64未満
(2)耐食性
各サンプルについて、JIS Z 2371(2000)に準じて塩水噴霧試験を行い、72時間経過後の白錆発生状態を観察することで、耐食性の評価を行った。評価は、以下の基準に従って行い、評価結果を表2に示す。
○:白錆発生面積率が5%未満
×:白錆発生面積率が5%以上
(3)酸性水溶液との接触によるめっき層の溶解量
電気亜鉛めっき鋼板との接触処理前後における、前記酸性水溶液中のめっき層成分(Zn)濃度を、ICP分析装置を用いて分析し、Zn濃度の増加分からめっきの溶解量(単位面積当たりの溶解量(g/m2))を算出し、評価を行った。算出結果を表2に示す。
(4)電気亜鉛めっきの電流効率
電気亜鉛めっき直後のサンプルについて、亜鉛めっき層を希塩酸(HCl 5質量%水溶液)によって溶解し、溶解前後の質量差から、亜鉛めっき層の付着量を得た。そして、この付着量と、めっき形成時に通じた電気量とから、めっきの電流効率を算出し、評価を行った。算出結果を表2に示す。
Figure 0005515506
表2の結果から、本発明の範囲である実施例のサンプルは、比較例のサンプルに比べて、いずれも優れた白色度を有していることがわかる。さらに、各実施例のサンプルは、めっき電流効率が高く、良好な耐食性を実現できることがわかる。さらに、酸性水溶液のpHを1以上にすることで、めっき溶解量が少なく、製造コスト上昇抑制の観点からも良好な効果が得られることがわかる。
本発明によれば、めっき層の特性の劣化がなく、高い白色度を有する電気亜鉛めっき鋼板を、電気亜鉛めっき時の電流効率を低下させることなく製造できる電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することが可能である。

Claims (3)

  1. 鋼板に電気亜鉛めっき法により亜鉛含有量が97質量%以上であるめっき層を形成した後、硝酸イオン、ヨウ素酸イオン、臭素酸イオン及び塩素酸イオンのうちの少なくとも1種を、合計で0.002〜0.05mol/Lの範囲で含有し、pHが4.5以下である酸性水溶液に、0.5秒以上接触させ、水洗及び乾燥を施した後、前記めっき層の表面に片面当たりの付着量で0.05〜1g/m 2 化成皮膜を形成することを特徴とする電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記酸性水溶液のpHは、1以上である請求項1記載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記化成皮膜は、無機皮膜、有機皮膜、有機無機複合皮膜、又はこれらの複層皮膜からなる請求項1又は2記載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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