以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。リニアモータ1は、図1に示すように、3相リニアパルスモータの一例であって、床面等に固定された固定子であるスケール2と、このスケール2に沿って直線的に相対移動可能とされた可動子であるスライダ3とを備えたものである。
スケール2は、図1に示すように、床面等に沿って一方向に長尺な部材であり、先端面(上面)がスライダ3との間の一定の隙間であるギャップGに面している鉄心21と、鉄心21のうちギャップGに面する先端面(上面)に長手方向Mに沿って一定間隔(例えばP/2、なお「P」は後述するスライダ2におけるティース21のピッチである)で形成した各溝に挿入された永久磁石22とによって構成している。そして、隣り合う永久磁石22同士の磁性が互いに逆方向となるように設定している。また、鉄心21のうち隣り合う永久磁石22同士に挟まれる部分が極歯21aとして機能する。本実施形態ではスケール2のうちギャップGに面する面を面一ないし略面一に設定している。なお、鉄心21に形成する溝は長手方向Mに沿って一定間隔であればよく、上述したピッチ間隔P/2に限られず、スライダ2におけるティース21と同一ピッチ、或いはその他の値のピッチ間隔であってもよい。
スライダ3は、ローラ等の図示しない支持機構によってスケール2の長手方向Mへ移動自在に支持され、A相磁極31A、B相磁極31B及びC相磁極31Cを有する鉄心31と、各磁極31A、31B、31Cにそれぞれ巻回されたコイル32A、32B、32Cとを備え、誘導子及び磁束発生部として機能を有するものである。このスライダ3は、スライダ3において、各磁極31A、31B、31Cは、スケール2の長手方向Mへ順次所定距離ずつ変位して配置されている。スライダ3における各磁極31A、31B、31Cの先端面と、スケール2の先端面との間には、一定の間隙Gが各々形成されている。
そして、このスライダ3において、各磁極31A、31B、31CのうちギャップGに面する先端面には、特定方向に沿って一定間隔Pで極歯(本発明のティースに相当)311が各々形成されている。ここで、各磁極31A、31B、31Cにおいて隣接する極歯311同士の間隙をそれぞれスロット312と称する。そして、各磁極31A、31B、31Cにおける各極歯311には、その先端部において先端面311a、つまりギャップGに面するギャップ面には露出しない位置に、各極歯311の肉厚を狭めるように切り欠き部311bを形成している。各切り欠き部311bは、側断面視コ字型をなし、各極歯311においてそれぞれ同一ないし略同一高さ位置に形成されている。また、図3からも明らかなように、A相磁極31Aにおいて1つの極歯311に形成される切り欠き部311bを、その極歯311を挟む一対のスロット312にそれぞれ連通させて形成している。これは、B相磁極31B、C相磁極31Cについても同様である。換言すれば、各磁極31A、31B、31Cにおいて、切り欠き部311bを極歯311間のスロット312との関係で見ると、1つのスロット312には隣り合う極歯311に形成された切り欠き部311bがそれぞれ連通していることになる。また、本実施形態では、全ての極歯311に特定方向に沿って相互に反する方向に開口する一対(図1の紙面における左右一対)の切り欠き部311bを形成している。したがって、磁極31A、31Cにおいて特定方向に沿った両端部に位置付けられる極歯311のうち、磁極31B側に位置付けられる極歯311には磁極31B側に開口する切り欠き部311bが形成され、反磁極31B側に位置付けられる極歯311(換言すれば磁極31Bから最も離れた位置に配される極歯311)には特定方向に沿って開口し且つスライダ3外に露出し得る切り欠き部311bが形成されている。なお、図1では、極歯を特定方向に沿って一定間隔で形成した態様を例示したが、特定方向に沿った極歯同士の間隔が一定ではない態様であっても構わない。
以上の構成において、図6に示すような励磁シーケンスで、A相コイル32Aと、B相コイル32Bと、C相コイル32Cに磁性が反転するパルス電流を供給し、いわゆるバイポーラ駆動する場合の動作について説明する。図7は、スライダ3の各磁極31A、31B、31Cとスケール2の各極歯21aとの間に発生する推力ベクトルを示す図である。同図において、AはA相コイル32Aに正方向に駆動電流を供給した場合に生じる推力ベクトルを示し、A’はA相コイル32Aに負方向に駆動電流を供給した場合に生じる推力ベクトルを示す。同様に、同図中B及びCは、B相コイル32B及びC相コイル32Cに正方向に駆動電流を供給した場合にそれぞれ生じる推力ベクトルを示し、B’及びC’はB相コイル32B及びC相コイル32Cに負方向に駆動電流を供給した場合にそれぞれ生じる推力ベクトルを示す。そして、図6に(1)で示す期間においては、A相コイル32Aに正方向へ駆動電流が供給され、B相コイル32BとC相コイル32Cには負方向へ駆動電流が供給されており、図7に示すように、ベクトルAとベクトルB’とベクトルC’とを合成したベクトルが推力ベクトルとなって、スケール2とスライダ3間に作用する。その後、(2)→(3)→…→(6)で示す順序で各コイル32A、32B、32Cに駆動電流を供給すると、スライダ3の各磁極31A、31B、31Cとスケール2の各極歯21aとの間に発生する推力ベクトルが図7に(2)→(3)→…→(6)で示す順序で変化し、スケール2に対するスライダ3の磁気的安定点が移り変わる。このように、(1)→(2)→(3)→…→(6)の各励磁モードの順、又は(6)→(5)→…→(2)→(1)の各励磁モードの順にパルス励磁を繰り返すことによって、スライダ3が移動することとなる。
ここで、本実施形態のリニアモータ1における推力リプルの低減効果を検証すべく、スライダ3の移動によって磁極位置が変化し、この変化に同期して、実効値が一定の三相電流を流した時の推力値を求めたところ、従来のリニアモータは、電気角(スライダの移動位置)の変化に応じて推力リプル(脈動)が大きく生じているのに対して、本実施形態のリニアモータ1では、従来のリニアモータと推力値自体はほとんど変わらないが、推力リプルは大幅に抑えられている。このように、推力リプルを低減することができる機序については必ずしも明らかではないが、各磁極31A、31B、31Cの極歯311に本実施形態のような切り欠き部311bを形成することによって推力を低減させずにリプルを低減させることができる。
以上に説明したように、本実施形態のリニアモータ1によれば、誘導子としての機能を有するスライダ3の極歯311に切り欠き部311bを形成することで、リニアモータ1本来の推進力を低下させることなく、推力リプルの低減を図ることができる。また、その他の優れた効果としては、コギングの低減や、磁気吸引力やインダクタンスの低減といった現象も確認されたことからも、本実施形態はこの種のリニアモータ1として極めて有用なものであるといえる。
また、本実施形態では、スライダ3における切り欠き部311bを利用して、スライダ3におけるスロット312をそれぞれ蓋封し得るスロットカバー4を取り付けることも可能である。
スロットカバー4は、本実施形態では一例として、非磁性材料からなる矩形板状の部材を適用している。非磁性材料には、樹脂、木材、アルミ、SUS、ガラス、セラミック、カーボン、ガラスエポキシ等から選択される磁性を有さない適宜の材料を用いることができる。図4に、スライダ3にスロットカバー4を取り付けた例を拡大して示すように、特定方向(M方向)に沿ったスロットカバー4の幅寸法は、1つのスロット(図示例ではスロット312)の開口幅寸法と当該スロットに連通する2つの切り欠き部311bの切り欠き深さ(M方向への切り欠き深さ)の合計に略対応している。また、極歯311及びティース21の高さ方向に沿ったスロットカバー4の肉厚は、切り欠き部311bの切り欠き高さ寸法に略対応している。さらにスロットカバー4の長手寸法は、スライダ3の極歯311の長手寸法の長手寸法に略対応させている。このようなスロットカバー4をスライダ3に取り付ける際には、スロットカバー4を1つのスロット312に位置付け、当該スロット312に連通し対向して開口する一対の切り欠き部311bに方向Mにおけるスロットカバー4の端部41を挿入し係合させる。すなわち、スロットカバー4の両端部41は、切り欠き部311b内に位置付けられて取り付けられる突端部として機能し、スロットカバー4のうちこれら両端部41以外の領域は、スロット312を蓋封する蓋部42として機能することとなる。斯かる構成でスロットカバー4をスライダ3に取り付けた場合、スロットカバー4の下面、すなわち蓋部42のギャップGに面する下面42aは、各極歯311の先端面311aよりも若干高位置に位置付けられる。すなわち、スロット312はその開口端部側の一部をごく浅くギャップGに露出していることとなる。スロットカバー4の素材が比較的硬質であれば、スロットカバー4の取付作業はスライダ3の側方(極歯311の長手方向)から行えばよいが、比較的柔軟な場合には、スロットカバー4を撓めることで極歯311の先端面311a側から取り付けることも可能である。
このように、スライダ3にスロットカバー4を取り付けた場合には、スロット312内への埃の付着等を防止することができるとともに、スロット312を樹脂モールドで塞ぐ態様と比較して、スライダ3全体の軽量化や製造工程短縮化を図ることができたり、スライダ3とスロットカバー4とを容易に分別したりすることができるというメリットが得られる。
ここで、上述したティース311の切り欠き部311bに対応するスロットカバー4の変形例としては、図5に拡大して示すようなものを採用することも可能である。この変形例に係るスロットカバー4’は、断面形状が冂字型をなし前記スロットカバー4と同等の長手寸法を有し、1つのスロット312に嵌め込まれる部材であって、スロット312の深さ寸法と略等しい高さ寸法を有する一対の脚部41’と、これら脚部41’の下端部を繋ぎスロット312の開口幅寸法に略対応させた平板状の蓋部42’とを一体に形成したものである。一対の脚部41’には、このスロットカバー4’により蓋封されるスロット312を挟む一対の極歯311の各切り欠き部311bに挿入係合される位置に、外側へ突出させた小突起である突端部41a’をそれぞれ形成している。このようなスロットカバー4’をスロット312内に嵌め込み、各突端部41a’をそれぞれ切り欠き部311b内に位置付けて取り付けると、前述のスロットカバー4とは異なり、蓋部42’の下面42は隣接する一対の極歯311の各先端面311aと略面一となるため、スロット312をギャップGに露出させることなく略完全に蓋封することが可能である。
なお、本発明においては、極歯(ティース)に形成される切り欠き部の形状や数、極歯、ティース及びスロットの形状等は上述した実施形態に限られるものではなく、またそれらに対応してスロットカバーの構成についても同実施形態には限られない。ここで図8〜図16に、種々の極歯(ティース)及びスロットカバーの例を示す。
図8に示す極歯A311は、上記実施形態の極歯311に形成した切り欠き部311bと同様の位置に、断面視三角形状をなす切り欠き部A311bをギャップGには直接露出させないように形成したものである。本例では、切り欠き部A311bの下面を極歯A311の先端面A311aと略平行としている。スロットA312には、その両側のティースA311の各切り欠き部A311bが連通している。この場合、例えば上述したスロットカバー4’を用いてもよいが、同図に示すスロットカバーA4のように、スロットカバー4’と同様の一対の脚部A41と蓋部A42とを有し、各脚部A41には切り欠き部A311bに対応した断面視三角形状の突端部A41aをそれぞれ形成したものを適用することができる。このような構成によれば、スロットカバーA4を一旦取り付けると、スケールからの脱落防止効果が高まる上に、スロットカバーA4を弾性変形可能な材質としている場合には、突端部A41aの傾斜面を利用して、スロットカバーA4を極歯A311の先端面A311a側からスロットA312へ容易に挿入し、且つ突端部A41aを切り欠き部A311bへ弾性係合させることができる。
図9に示す極歯B311は、隣接するスロットB312に連通させて部分円弧を2つ連接した蝶々の羽根型をなす断面形状の切り欠き部B311bを形成したものである。このような構成の極歯B311に対して適用されるスロットカバーB4の一例としては、スロットB312にちょうど嵌入される中空の断面矩形状をなす板状部材において、その下壁を蓋部B42として極歯B311の先端面B311aと面一とするとともに、起立壁B41において切り欠き部B311bと対応する位置にそれらと対応する形状の突端部B41aを外方へ突出させて形成したものである。このような構成であっても、切り欠き部B311bを利用して取り付けたスロットカバー242の脱落防止を有効に図ることができる。
図10に示す極歯C311は、これまで上述してきた極歯(ティース)とは異なり、下辺(先端面C311a)が短く上辺(基端側)が長い断面視略台形状をなすものである。すなわちスロットC312は、開口幅が長く底部(基端側)の幅が短い断面形状となっている。各極歯C311には、例えば上記実施形態の極歯311と同様の切り欠き部C311bが形成されている。このような場合、前述したスロットカバー4と同様に矩形板状のスロットカバーC4を用いることができる。すなわち、スロットカバーC4の両端部C41が切り欠き部C311bと係合する突端部として機能し、その間の領域が蓋部C42として機能する。
また上述した以外にも、極歯(ティース)に形成される切り欠き部は、ギャップGに直接露出するようにティースの先端に形成してもよい。一例として図11に示す極歯D311は、断面視凸形状をなす。すなわち、各極歯D311におけるスロットD312に面する側の下端部は、断面視矩形状に切除された形状となっており、この切除された部分を切り欠き部D311bとしている。このような場合、スロットD312の下端部を挟んでそれに連通する一対の切り欠き部D311bにまたがる断面視矩形状に対応させて、スロットカバーD4として例えば中空の凸字形状(上下を反転させている)のものを用いることができる。この場合、スロットカバーD4の下壁のうち両端部D41が切り欠き部D311bに当接して突端部として機能し、両端部D41を除く下壁の中央部の領域が蓋部D42として機能する結果、スロットD312を蓋封することができる。この場合、切り欠き部D311bを利用して取り付けたスロットカバーD4のズレや脱落防止を図るために、切り欠き部D311bとそれに当接し得るスロットカバーD4の端部D41とを接着等により固定することが好ましい。
図12〜図15に示すスライダ(なお、図12はスライダの概略的な底面図に相当するものであり、図13、図14、図15はそれぞれスライダ3の側面図、図12のB−B線断面図、図12のC−C線断面図に相当するものである)は、各極歯E311において、各起立面にそれぞれ切り欠き部E311bを各極歯E311の長手方向(極歯E311の整列方向に直交する方向)に亘って形成したものである。この切り欠き部E311bは、上述した切り欠き部311bと同様に、極歯E311の下端部(先端部)に形成されたものであり、極歯E311の長手方向の一端から他端に向けて深さを連続的に変化させて形成されている。具体的に切り欠き部E311bは、極歯E311の整列方向に沿った幅寸法の例えば約1/3の深さから極歯E311の起立面(深さ0)に至るまで、平断面視直角三角形状をなしている。このような切り欠き部E311bを、各極歯E311の両起立面に、それぞれ向きを逆にして形成している。その結果、各極歯E311における切り欠き部E311bを形成した高さ位置では、極歯E311のうちその長手方向Mに沿った幅寸法は常に一定となり、この高さ位置においては、隣接する極歯E311間のスロットE312とその両側の切り欠き部E311bとが連続する空間は、平断面視平行四辺形状となる。そして、このような切り欠き部E311bに係合してスロットE312を蓋封するスロットカバーE4には、例えば図4に示すような細長い平行四辺形の板状の部材を適用することができる。このスロットカバーE4においては、長辺側の両端部が、切り欠き部E311bに挿入されて係合する突端部E41として機能し、その間の領域がスロットE312を蓋封する蓋部E42として機能する。
このような形状に切り欠き部E311bを形成して、前述のようなスロットカバーE4を取り付ければ、上記実施形態と同様に、スロットE312への埃等の付着を防止することができる等の同等の効果が得られることができるのはもちろんのこと、推力の低下を伴わずにリプルの低減効果が得られたり、またコギングの低減効果も得られる。
また、例えば図16に示すように、各極歯F311において、一方の起立面側には上記の切り欠き部E311bと同様の切り欠き部F311bを形成し、他方の起立面側には上記実施形態のスライダ3に形成した切り欠き部311bと同様の切り欠き部311bを形成したものを挙げることができる。このような場合、図示しないが、例えば平面視台形状の板状部材からなるスロットカバーを適用することができる。
その他、スライダやスロットカバーをはじめとする各部の具体的構成についても上記実施形態や各種変形例に限られるものではなく、例えばスロットカバーの材質として弱磁性の素材を適用することも可能である。また、極歯(ティース)に形成される切り欠き部の形状は種々変更することができ、それに応じてスロットカバーの形状も、上述した板状、冂字型、凸字型等に限られず、ロ字型、T字型、π字型、鳥居型等、種々の形状のものを採用することが可能である。さらに、各磁極において特定方向に沿った端部に位置付けられる極歯に形成され且つ特定方向に沿って開口方向が相互に向き合う切り欠き部(図1参照)を利用してスロットカバーに準じた形状及び構成を有するカバーを取り付けることができる。このカバーによって特定方向に沿って隣り合う磁極間に形成されるスペースに埃等が付着することを防止できる。また、上述した実施形態や各種変形例では、極歯において特定方向に沿って対面する一対の対向面にそれぞれ切り欠き部を形成した態様を例示したが、一方の対向面にのみ切り欠き部を形成した態様であっても構わない。この場合、スロットカバーの形状や幅寸法は切り欠き部に対応させて適宜変更すればよい。また、複数のスロットを同時に蓋封するように、蓋部及び突端部の組を複数櫛歯状に設けたスロットカバーを適用することもでき、その場合は、スロットカバーをスケールに着脱する工数を減ずることができる。なお、スロットカバーをスライダに取り付けずとも、スライダのティースに上述したような切り欠き部を形成することで、モータの推力を低下させずにコギングの低減、推力リプルの低減、磁気吸引力の低減、インダクタンスの低減等の諸効果を実現することができる。
また、固定子又は可動子のうち誘導子の先端面と対面する面として、図17に示すように、鉄心A21のうち誘導子における磁極の先端面と対面する面に永久磁石A22を積層する態様であってもよい。この場合、複数の永久磁石A22を特定方向に沿って並べて配置し、且つ隣り合う永久磁石A22同士の磁性が互いに逆方向となるように配置すればよい。また、図18に示すように、鉄心B21のうち誘導子における磁極の先端面と対面する面に、特定方向に沿ってティースB211を一定間隔で複数形成した態様であっても構わない。この場合、各ティースB211の先端面B211aがギャップGに面している。また、各ティースB211に、各ティースB211の肉厚を狭めるように切り欠き部B211bを形成してもよい。図18に示す切り欠き部B211bは、側断面視コ字型ないし略コ字型をなし、それぞれ略同一高さ位置に形成されている。このような切り欠き部B211bを隣接するティースB211a間に形成されるスロットB212との関係で見ると、1つのスロットB212には隣り合うティースB211に形成された各切り欠き部B211bがそれぞれ連通していることになる。そして、切り欠き部B211bを利用してスロットB212を蓋封し得るスロットカバーを取り付けることも可能である。なお、切り欠き部B211bを利用してスロットカバーを取り付ける手順はスライダ3に対する上記取付手順に準じる。スロットカバーを取り付けた場合には、スロットB212内への埃の付着等を防止することができる等、上述した諸効果を奏し、特に、上方に開口したスロットB212内へワークが落ち込んだり、埃がたまることを有効に防止することができる。なお、固定子又は可動子のうち誘導子の先端面と対面する面を、上述した実施形態や各変形例を適宜組み合わせた面としても構わない。また、切り欠き部の形状や数等は、上述した各変形例等に応じて種々変更してもよく、それに応じてスロットカバーの形状も、種々の形状のものを採用することが可能である。
さらに本発明は、上記実施形態のような3相リニアパルスモータに限らず、種々のリニアモータや回転式モータ等の各種のモータに適用して有用なものである。本発明を適用して有用なモータとしては、例えば永久磁石型(PM型)、可変リラクタンス型(VR型)やハイブリッド型のステッピングモータ(パルスモータ)やスイッチトリラクタンスモータ等が挙げられる。
また回転式のモータに適用した場合の一例として、図19に示すモータX1、すなわち、円筒状をなして内周面に周方向に沿って磁極X21A、X21B、X21C、X21Dを複数形成し誘導子として機能する固定子たるステータX2と、ステータX2内で配設されステータX2に対して相対移動可能な可動子たるロータX3とを備えたものが挙げられる。ロータX3には、ステータX2における各磁極X21A、X21B、X21C、X21Dの先端面と対向する外周面に、特定方向(周方向)に沿って所定間隔でティースX31を複数形成している。このロータX3は、回転自在に支持されたシャフトX5に取り付けられている。
ステータX2は、磁束発生部としての機能を有しており、複数の磁極(図示例ではA相磁極X21A、B相磁極X21B、C相磁極X21C、D相磁極X21D)を周方向に等間隔で有する鉄心X21と、各磁極X21A、X21B、X21C、X21Dの基端部にそれぞれ巻回されたコイルX22A、X22B、X22C、X22Dとを備えたものである。ステータX2における各磁極X21A、X21B、X21C、X21Dの先端面と、ロータX3における各ティース31の先端面との間には、一定の間隙XGが各々形成されている。
そして、このステータX2において、各磁極X21A、X21B、X21C、X21DのうちギャップXGに面する先端面には、ロータX3に設けたティース31と同一ないし略同一ピッチで極歯(本発明のティースに相当)X211が各々形成されている。ここで、各磁極X21A、X21B、X21C、X21Dにおいて隣接する極歯X211同士の間隙をそれぞれスロットX212と称する。そして、各磁極X21A、X21B、X21C、X21Dにおける各極歯X211には、その先端部において先端面X211aには露出しない位置に、各極歯X211の肉厚を狭めるように切り欠き部X211bを形成している。図20に示すように、各極歯X211には、側断面視コ字型をなす切り欠き部X211bをそれぞれ同一ないし略同一高さ位置に形成している。また、図20からも明らかなように、A相磁極X21Aにおいて1つの極歯211に形成される切り欠き部X211bを、その極歯X211を挟む一対のスロットX212にそれぞれ連通させて形成している。換言すれば、各磁極X211において、切り欠き部X211bを極歯X211間のスロットX212との関係で見ると、1つのスロットX212には隣り合う極歯X211に形成された切り欠き部X211bがそれぞれ連通していることになる。これは、B相磁極X21B、C相磁極X21C、D相磁極X21Dについても同様である。
このように、ステータX2の極歯X21に切り欠き部X21bを形成することにより、モータの推力を低下させずにコギングの低減を図ることができる等、上述した諸効果を得ることができる。また、切り欠き部X211bを利用して上記実施形態で示したものと同様のスロットカバー(図示省略)をステータX2に取り付けることも可能であり、スロットカバーを取り付けた場合には、各極歯X21の間のスロットX22を蓋封することができ、スロットX22への埃や破損したワークの落ち込みを効率的に防止することができる等、上記実施形態で述べたスロットカバーを取り付けることによって得られる諸効果を得ることができる。なお、回転式のモータにおいても、ロータX3の各ティースX31に、隣接するティースX31間の間隙であるスロットに連通して特定方向に沿ったティースX31の断面形状を部分的に狭める切り欠き部(図示省略)を形成しても構わない。また、極歯(ティース)や切り欠き部、スロットカバーの形状等に関して上述した各種変形例を適用してもよい。なお、アウターが可動子であり、インナーが固定子である回転式のモータであってもよく、この場合、可動子又は固定子の何れか一方を誘導子として機能させ、誘導子における各磁極の極歯(ティース)に切り欠き部を形成したものとすることにより、モータの推力を低下させずにコギングの低減を図ることができる等、上述した諸効果を得ることができる。
本発明の上述した各実施形態において、誘導子における各磁極の先端面に形成されるティース(極歯)の整列方向である特定方向とは、リニアモータの場合には所定の直線方向であり、回転式モータの場合に可動子の回転中心を中心とする所定の円の周方向である。また、誘導子における磁極の先端面からスロットの深さ方向が水平方向である態様であってもよい。この場合、誘導子全体が起立姿勢をとり、各ティース(極歯)は水平方向に突出したものとなる。このようなティース(極歯)に切り込み部を形成することにより、モータの推力を低下させずにコギングの低減化を実現できる等、上述した諸効果を得ることができる。また、水平方向に突出したティース(極歯)に形成した切り込み部にスロットカバーを取り付けた場合には、埃や破損したワークが固定子の側方からスロットへ進入することを防止できる。
また、誘導子の表裏両面にティース(極歯)を形成したタイプのモータ、或いは誘導子の一方の面にのみティース(極歯)を形成したタイプのモータ、これら何れのタイプのモータであってもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。