JP5515145B2 - 光エネルギーで発生させた水素の貯蔵方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水素の貯蔵方法に関する。さらに詳しくは太陽エネルギーで発生させた水素の貯蔵方法に関する。
太陽光は究極の1次エネルギーであり、全世界に降り注ぐ太陽光のわずか約10000分の1を有効に利用できれば現代の人類に必要なエネルギーを賄えると言われている。このように、太陽光の持つエネルギーは膨大であり、有効に活用する技術が強く望まれている。
しかし、太陽光には、そのエネルギー密度が低いこと、気候、地域又は時刻による変動が大きいこと等、利用し難い点が多いため、太陽光をそのままエネルギー源として使用できる用途は非常に限られている。さらに、これらの用途を大規模に実施しようとすると、例えば砂漠のように太陽光が安定して照射する地域が有利となる。一般にこのような地域はエネルギーの消費地からは遠く離れているので、採取した太陽エネルギーの消費地への輸送手段が重要となる。
上述のように、太陽エネルギーは、量的に莫大であるという長所を有するが、エネルギー密度が低いこと、変動が大きいこと、輸送手段の確保が必要であること、等の課題を有する。これらの課題に鑑みると、太陽エネルギーを現代社会で利用していくためには、太陽光を適当な手段により社会の中で取り扱いやすいエネルギーの形態に変換した上で、必要であれば貯蔵し、続いてそれを適時に消費地まで輸送することが必要となる。
太陽エネルギーの形態変換方法としては、従来から、下記非特許文献1に記載されたような太陽電池による発電方法、あるいは下記非特許文献2に記載されたような光触媒による水からの水素の製造方法などが知られ、それぞれの方法により電力あるいは水素エネルギーを得ることができる。
しかし、これらの方法で得られるエネルギーの貯蔵性及び輸送性は満足できるものではなかった。例えば、太陽電池による発電の場合、発生した電力を大量に貯蔵するのは困難であり、また遠距離の送電も従来の方法ではロスが多いと予想される。さらに、電力の替わりに、水を電気分解して得られる水素を運ぶ方法も提案されている。水素を運ぶ具体的な方法としては、水素を液化水素又は圧縮水素の形態で輸送する方法が挙げられる(下記非特許文献3、下記非特許文献4を参照)。また、これらの形態の水素をパイプライン又はトレーラー等の輸送手段を用いて輸送する方法も挙げられる。しかし、液体水素又は圧縮水素を利用する場合、その大量輸送は可能になるものの、水素の液化や圧縮に伴うエネルギーロス、−253℃と言う極低温の液化水素を扱うことに伴う危険性やコスト等が問題となる。一方、遠隔地で生産された水素をパイプラインで消費地へ輸送する方法も優れた方法であるが、パイプラインの建設コストが膨大となることが問題となる。また、日本のような島国には海を渡るパイプラインが必要であるが、そのようなパイプラインの建設は技術的に困難であることも問題となる。
さらに、太陽エネルギーの形態変換方法として、水素ガスを一旦ベンゼンやトルエンのような不飽和化合物と反応させ環状飽和炭化水素を得た後、これをエネルギーの消費地へ輸送した後、消費地で水素を発生させる有機ハイドライド方式も知られている(下記非特許文献5を参照)。従来の技術でこのプロセスを組み立てると、太陽電池による電力で一旦水を電気分解し、得られた水素を用いて有機ハイドライド原料を水素化すると言う二段階プロセスが考えられる。しかし、これを実施するためには、水の電気分解による水素ガスの発生装置だけではなく、電気分解により得た水素ガスによる不飽和化合物の水素化を行うための装置を別途用意する必要があり、水の電気分解と不飽和化合物の水素化の2段階の反応を要することの非効率性やコストが高いことが問題となる。
以上の事情から、太陽エネルギーを、貯蔵性及び輸送性に優れたエネルギー形態に、効率よく低コストで変換できる方法が求められていた。
小井沢和明,J.Jpn.Inst.Energy,84巻,728(2005) 荒川裕則,J.Jpn.Inst.Energy,85巻,757(2006) 花田卓爾,エネルギー・資源,30巻(1),49(2009) 岩下博信,エネルギー・資源 30巻(1),45(2009) 市川勝,J.Jpn.Inst.Energy,85巻,517(2006)
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、太陽光を利用して、水素ガスを実質的に発生させることなく、水に由来する水素を貯蔵することが可能な、太陽エネルギーで発生する水素の貯蔵方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る水素の貯蔵方法は、反応装置を用いた水素の貯蔵方法であって、反応装置は、第一槽と、第一槽内に配置された第一電極と、第二槽と、第二槽内に配置された第二電極と、プロトン伝導性の塩橋と、を備え、第一槽と第二槽とは、塩橋を介して連結されており、第一電極の表面には光触媒が担持されており、第一電極は第二電極と電気的に接続されており、第一槽及び第二槽には、水を含む電解質が入っており、第一槽内において、第一電極が水を含む電解質と接触しており、第二槽内において、第二電極が水を含む電解質と接触しており、水を含む電解質は、プロトン伝導性を有し、水を含む電解質は、水で膨潤させた固体高分子電解質、又は硫酸ナトリウム水溶液のうち少なくともいずれかであり、光触媒に光を照射することにより、第一電極から供給される電子と、第一槽内に存在する不飽和結合を有する有機化合物と、電解質に含まれる水に由来するプロトンとを、第一電極において反応させて、有機化合物を水素化し、または、光触媒に光を照射することにより、第二電極から供給される電子と、第二槽内に存在する不飽和結合を有する有機化合物と、電解質に含まれる水に由来するプロトンとを、第二電極において反応させて、有機化合物を水素化する。水を含む電解質は、水で膨潤させたパーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質であってよい。以下、不飽和結合を有する有機化合物を、場合により「不飽和化合物」と記す。
上記本発明によれば、太陽光が照射された光触媒の触媒作用によって、第一電極又は第二電極のいずれかから供給される電子と、水に由来するプロトン(H)と、不飽和化合物とを反応させて、不飽和化合物を水素化すると共に、対極(上記水素化が行われる電極以外の電極)から酸素ガスを生成させることが可能となる。すなわち、本発明によれば、水の電気分解又は光分解による水素ガスの発生を実質的に経由することなく、太陽エネルギーをエネルギー源として、水に由来する水素を不飽和化合物に直接付加して不飽和化合物の還元体(有機ハイドライド)を合成することが可能となる。なお、「水の光分解」とは、光触媒を用いて水を酸素と水素に分解する反応を意味する。
上記本発明では、有機化合物の水素化が、下記化学反応式(1)で表され、且つ下記不等式(A)で表される条件を満たすことが好ましい。
U(n)+x・HO → U(n−x)+(x/2)・O (1)
式(1)中、U(n)は有機化合物を表し、nはU(n)が有する不飽和結合の数を表す1以上の整数であり、xは1以上n以下の整数であり、U(n−x)は2x個の水素原子が付加された有機化合物を表し、n−xはU(n−x)が有する不飽和結合の数を表す整数である。
0.5V≦ΔG/2F≦1.2V (A)
式(A)中、ΔGは化学反応式(1)で表される反応におけるギブス自由エネルギー変化を前記xで割った値であり、Fはファラデー定数である。なお、化学反応式(1)で表される反応におけるギブス自由エネルギー変化は、x・ΔGと定義される。
上記化学反応式(1)で表され、且つ上記不等式(A)で表される条件を満たす有機化合物の水素化は、光触媒に照射する太陽光のうち、エネルギーの高い紫外領域の光だけではなく、可視光領域の光でも進行させることができる。
図1に示すように、地表に照射する太陽光において、可視光から近赤外光の領域が最もエネルギー量が多い領域である。したがって、本発明において、有機化合物の水素化が上記化学反応式(1)で表され、且つ上記不等式(A)で表される条件を満たす場合、太陽光のうち最もエネルギー量が多い波長領域に属する可視光のエネルギーを有機ハイドライドという形態で固定化することが可能となる。
上記本発明では、光触媒は、可視光を照射されることにより触媒作用を示すことが好ましい。可視光応答性光触媒を用いるにより、紫外光のエネルギーのみならず、可視光のエネルギーも水素の貯蔵(不飽和化合物の水素化)に利用することが可能となる。なお、図1中、矢印Aが示す波長は、水の光分解に必要なエネルギーに対応する波長である。
本発明によれば、太陽光を利用して、水素ガスを実質的に発生させることなく、水に由来する水素を貯蔵することが可能な、太陽エネルギーで発生する水素の貯蔵方法を提供することが可能となる。
太陽光のスペクトルである。 本発明の一実施形態に係る水素の貯蔵方法に用いる反応装置の概略断面図である。 本発明の実施例2における光触媒に対する光の照射時間と第一電極と第二電極との間に流れる光電流の密度を示す図である。 本発明の実施例3における光触媒に対する光の照射時間と第一電極と第二電極との間に流れる光電流の積算量を示す図である。
1・・・反応装置、2・・・第一槽(酸化極槽)、3・・・第二槽(還元極槽)、4・・・第一槽用の支持電解質、5・・・第二槽用の支持電解質、6・・・第一電極、7・・・第二電極、8・・・塩橋、9・・・グラスフィルター、10,11・・・ガス管。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付す。また、上下左右の位置関係は図面に示す通りであるが、寸法の比率は図面に示すものに限定されない。
(不飽和結合を有する有機化合物)
本発明において、不飽和結合を有する有機化合物(不飽和化合物)とは、二重結合あるいは三重結合を分子内に一つ以上有する有機化合物である。二重結合としては、C=C、C=N、C=O、N=O等の炭素−炭素二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−酸素二重結合、窒素−酸素二重結合が例示される。三重結合としては、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素三重結合が例示される。
不飽和化合物としては、例えば芳香族が使用可能である。芳香族としては、一般には6員環芳香族が用いられるが、3〜14員環の芳香族も使用可能である。また、芳香族環が複数縮合した多環芳香族や、アルキル基などの置換基を有する芳香族も、不飽和化合物として使用できる。さらに、N等のへテロ元素を含んだ芳香族でも、何ら差し支えなく不飽和化合物として使用できる。
不飽和化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン等のオレフィン類、アレン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、へブタジエン、オクタジエン等のジエン類、アセチレン、プロピン、ビニルアセチレン等のアセチレン類、ベンゼン、およびトルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、クメン、安息香酸等のアルキル置換芳香族類を含む炭素鎖置換芳香族類、アニソール、ジメトキシベンゼン、フェノール、アニリン、N、N−ジメチルアニリン等のへテロ置換芳香族類、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フェナントレン、テトラリン等の多環芳香族、シフ塩基類、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン等のヘテロ芳香族類、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾールなどのヘテロ5員環化合物、ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、あるいはアズレン等を挙げることができる。なお、言うまでもないことであるが、二酸化炭素や一酸化炭素は不飽和結合を有しているが一般に有機化合物とは見なされないので、本発明における不飽和化合物から除外される。
上記の不飽和化合物は、後述するように、太陽光を用いた光触媒の作用により、その不飽和結合が水に由来する水素によって水素化され、還元体(有機ハイドライド)に転化される。つまり、本発明では、水に由来する水素を有機ハイドライドという形態で貯蔵することが可能となる。なお、水素化では、不飽和化合物の全ての不飽和結合が還元される必要はない。例えば、ナフタレンはテトラリンまで還元され、ベンゾキノンはハイドロキノンまで還元されてもよい。
不飽和化合物の還元体は、水素の貯蔵物質として任意の場所に輸送された後、エネルギー源として使用され、動力あるいは電力などに変換される。還元体の用途に特に制限はないが、例えば、還元体を水素発生原料として用いることができる。具体的には、適当な触媒の存在下で還元体を脱水素して得た水素を燃料とした燃料電池等から電力を得る方法がある(市川,燃料電池,Vol.1(2)、44(2001)等を参照)。また、還元体を直接燃料電池の燃料として用いる方法もある(Physical Chemistry Chemical Physics, 8, 1724−1730(2006),あるいはZ. Shi、J. Power Sources, 176, 122−127(2008),USP2008/0152960等を参照)。
なお、不飽和結合物の水素化に伴い併産される酸素は、呼吸補助用途、燃焼補助用途、化学品原料等の任意の方法で消費されてもよく、大気に放出されてもよい。
従来は、太陽光発電から得た電力による水の電気分解や水の光分解により、水素ガスを合成してきた。そして、水素ガスは、従来、貯蔵及び輸送のために、液化水素又は圧縮水素等の形態に変換されてきた。しかし、液化水素は極低温下に保持する必要があり、圧縮水素は高圧下に維持する必要がある。そのため、太陽エネルギーを液化水素又は圧縮水素という形態で貯蔵したり、輸送したりすることは、高いコストと大きなエネルギーロスを伴う。一方、本発明では、太陽エネルギーを、水素を貯蔵した有機ハイドライドという形態に変換する。有機ハイドライドは、水素に比べて、常温常圧下で安定した液体として存在するため、その貯蔵や輸送が容易である。したがって、本発明によれば、砂漠等のように太陽エネルギーが豊富であるがエネルギー消費地からは非常に遠い地域において、太陽エネルギー起源のクリーンな高エネルギー物質として有機ハイドライドを生産して、これを貯蔵したり、消費地へ輸送したりすることが容易となる。
(光触媒)
光触媒としては、例えばn型半導体あるいはp型半導体を用いればよいが、下記の条件(1)〜(4)、(3’)、(4’)を満たしていればいかなる化合物を用いても良い。
条件(1):光触媒が光を吸収することで、光触媒の価電子帯(valence band)から伝導帯(conduction band)への電子移動が進行する。
条件(2):光触媒が反応条件下において安定である。
条件(3):光触媒がn型半導体である場合、光照射により光触媒中に生成した励起電子の電位が、不飽和化合物を還元できる電位より負である。
条件(4):光触媒がn型半導体である場合、光照射により光触媒中に生成した正孔の電位が、触媒表面でヒドロキシイオンを酸化し酸素を発生させる電位よりも正である。
条件(3’):光触媒がp型半導体である場合、光照射により光触媒中に生成した励起電子の電位が、不飽和化合物を還元できる電位より負であり、触媒表面で不飽和化合物を還元できる。
条件(4’):光触媒がp型半導体である場合、光照射により光触媒中に生成した正孔の電位が、ヒドロキシイオンを酸化し酸素を発生させる電位よりも正である。
本発明では、光触媒が、短波長の紫外光のみならず、可視光にも応答して触媒作用を示す可視光応答性光触媒であることが好ましい。換言すれば、光触媒は、好ましくは400nm、より好ましくは420nm、更に好ましくは450nm以上の波長を有する光を少なくとも吸収する。
具体的な光触媒としては、Sc、Y、La系列、Ac系列、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb等の元素の酸化物、窒化物、オキシナイトライド、硫化物又はオキシサルファイド等が例示される。これらの元素は最外殻d軌道の電子配置がdあるいはd10であるイオン種であることが好ましく、その具体例としては、Sc(3+)、Y(3+)、La(3+)、Ce(3+)、Pr(3+)、Nd(3+)、Sm(3+)、Eu(3+)、Gd(3+)、Tb(3+)、Dy(3+)、Ho(3+)、Er(3+)、Tm(3+)、Yb(3+)、Lu(3+)、Ti(4+)、Zr(4+)、Hf(4+)、V(5+)、Nb(5+)、Ta(5+)、Cr(6+)、Mo(6+)、W(6+)、Mn(7+)、Re(7+)、Cu(1+)、Ag(1+)、Au(1+)、Zn(2+)、Cd(2+)、Hg(2+)、Ga(3+)、In(3+)、Tl(3+)、Ge(4+)、Sn(4+)、Pb(4+)等を挙げることができる。
更に具体的に光電極触媒を例示するならば、WO、MoO、V、Nb、Ta、CdS、Ga、In、NbON、TaON等を挙げることができる。
光触媒は、第一電極の表面に担持される。第一電極への光触媒の担持方法としては、公知の任意の手法を採用できる。例えば、はけ塗り、吹きつけ、スピンコート、バーコート、ゾルゲル法、有機金属気相成長法、エレクトロンビーム蒸着法、スパッタ法又は電気泳動法等の適当な方法で触媒粉あるいはその前駆体を第一電極に塗布した後、触媒粉あるいはその前駆体に対して焼成等の必要な処理を施すことにより、第一電極の表面に光触媒を担持させることができる。
第一電極としては、金属、SnO、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(Fluorine−doped Tin Oxide)等の導電体からかる基板を用いればよい。また、第二電極としては、白金からかる基板等のように、不飽和化合物に対して水素化活性を有する導電体を用いればよい。
以下、本発明の実施形態について2種類の例を挙げて説明する。以下で説明する有機化合物の水素化反応は、下記化学反応式(1)のように表すことができる。
U(n)+xHO→ U(n−x)+(x/2)O (1)
式(1)中、U(n)は不飽和結合を有する有機化合物(不飽和化合物)を表し、nはU(n)が有する不飽和結合の数を表す1以上の整数であり、xは1以上n以下の整数であり、U(n−x)は2x個の水素原子が付加されたU(n)を表し、n−xはU(n−x)が有する不飽和結合の数を表す整数である。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る水素の貯蔵方法では、不飽和結合を有する上記有機化合物、光触媒、第一電極及び第二電極と共に、図2の反応装置1を用いて実施する。
反応装置1は、第一槽2(酸化極槽)と、第二槽3(還元極槽)とを備える。酸化極槽2と還元極槽3とは、膜状の塩橋8を介して連結されている。塩橋8はその両側をグラスフィルター9によって支持されている。
酸化極槽2には、水を含む支持電解質4が入っている。酸化極槽2の支持電解質4の中には酸化極6(第一電極)が配置されている。酸化極6の表面には光触媒が担持されている。場合によってはガス管10により、N等の不活性ガスを支持電解質4中に供給することもできる。なお、支持電解質4には、不飽和化合物が含まれていない。
還元極槽3には、水を含む支持電解質5が入っている。また、支持電解質5には、不飽和化合物が溶解している。還元極槽3の支持電解質5の中には還元極7(第二電極)が配置されている。ガス管11により、N等の不活性ガスが支持電解質5中に供給されている。
支持電解質4、5としては、光触媒の作用により発生する酸化還元電位に対して安定であり、十分なプロトン伝導性を有するものを用いればよい。例えば、支持電解質4、5としては、水で膨潤させた固体高分子電解質又はNaSO水溶液を用いる。
塩橋8としては、イオン透過能、好ましくはプロトン伝導性を有すると共に、酸化極槽2の支持電解質4と還元極槽3の支持電解質5との混合を防止できる機能を有するものを用いればよく、例えば、ナフィオン膜等を用いることができる。なお、ナフィオンとは、パーフルオロスルホン酸系プロトン交換膜の一種であり、デュポン社の登録商標である。
本実施形態では,光触媒としてn型半導体の性質を持つものを第一電極6に装着し、酸化極となす。第一電極6では、照射された光を吸収したn型半導体光触媒に正孔(h)および電子(e)が発生する。
一般に半導体のバンド構造は他物質との界面で変形するため該界面を越えるためのエネルギー障壁が変化する。n型半導体光触媒を用いる本実施形態では、第一電極6のn型半導体光触媒と支持電解質4との界面において正孔に対する障壁は減少し、電子に対する障壁は増加するようにバンド構造が変形する。このため、正孔が支持電解質4との界面に移動しOHを酸化し酸素を発生させる。一方,電子は逆方向に流れ外部回路を通って第一電極6から第二電極7に移動し不飽和化合物U(n)を還元(水素化)する。
以上のように、本実施形態では、第一電極6の光触媒に太陽光を照射することにより、光触媒に形成された正孔でOHを酸化して酸素ガスを生成させると共に、第一電極6から第二電極7へ供給される電子と、支持電解質5に存在するHと、不飽和化合物とを反応させて、不飽和化合物U(n)を水素化する。すなわち、本実施形態では、水の電気分解又は光分解による水素ガスの発生を実質的に経由することなく、太陽エネルギーをエネルギー源として、水に由来する水素を不飽和化合物に直接付加して、有機ハイドライドを形成することが可能となる。換言すれば、実施形態では、水の電気分解又は光分解による水素ガスの発生を必要としない点において、従来よりも効率よく太陽エネルギーを化学物質として固定化することが可能となる。また、本実施形態では、水素化のための反応装置とは別に、水の電気分解又は光分解による水素ガスの発生のための反応装置を設ける必要がないため、従来よりも小規模でコストの低い反応装置で水素の貯蔵を行うことが可能となる。
上記化学反応式(1)で表されるU(n)の水素化反応におけるギブス自由エネルギー変化をx・ΔGとするとき、0.2V≦ΔG/2F≦1.2Vであることが好ましく、0.3V≦ΔG/2F≦1.15Vであることがより好ましく、0.5V≦ΔG/2F≦1.1Vであることが最も好ましい。なお、Fはファラデー定数である。また、ΔGは、上記化学反応式(1)で表されるU(n)の水素化反応におけるギブス自由エネルギー変化を、U(n)に付加される水素の対(ペア)の数xで平均化した値と見なせる。
ΔG/2Fが上記の条件を満たす不飽和化合物の水素化は、光触媒に照射する太陽光のうち、エネルギーの高い紫外領域の光だけではなく、可視光領域の光でも進行させることができる。
ΔG/2Fが0.2V以下である場合、水素化された不飽和化合物の還元体(有機ハイドライド)として固定化される太陽エネルギーの量が小さ過ぎて、有機ハイドライドをエネルギー源として利用し難くなる傾向がある。一方、ΔG/2Fが1.2Vより大きい場合、上記化学反応式(1)で表されるU(n)の水素化反応が進行し難くなる傾向がある。なお、ΔG/2Fが大き過ぎる場合、不飽和化合物の水素化のみならず、水の光分解も進行する傾向がある。
以上、本発明に係る水素の貯蔵方法の好適な一実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、以下の第二実施形態に示すように、第一槽2の支持電解質4に不飽和化合物を溶解させ、第二槽3の支持電解質5に不飽和化合物を含有させない場合であっても、不飽和化合物の水素化が可能である。なお、以下では、第二実施形態と第一実施形態に共通する事項についての説明を省略し、両者の相違点のみを説明する。
[第二実施形態]
第二実施形態では光触媒としてp型半導体を第一電極6の表面に具備させるため、p型半導体光触媒と支持電解質4との界面においてn型半導体触媒とは逆の障壁が発生する。つまり電子の障壁は低く、正孔の障壁は高くなる。このため、不飽和化合物U(n)の還元(水素化)は第一電極6において進行し,還元に伴う電子の消費を補うように第二電極7から電子が流れ出すため、第二電極7は酸化力を持つようになる。
従って第二実施形態では、第一槽2の支持電解質4に不飽和化合物U(n)を添加し、第二槽3の第二電極7上で酸素発生が進行する。
以上のように、第二実施形態では、第一電極6の光触媒に太陽光を照射することにより、第一電極6の光触媒表面において不飽和化合物を水素化すると共に、第二電極7においてOHを酸化して酸素ガスを生成させる。
なお、以上に示した2種類の実施形態では、第一電極および/または第二電極を支持電解質を含む水中に置いたが、必ずしも水中に置く必要は無く、水を含む電解質と各電極との接触が確保されていれば良い。この場合に用いることができる水を含む電解質は、少なくともプロトン伝導性を有することが必要であり、硫酸ナトリウム水溶液、又は水で膨潤させたナフィオンなど固体高分子電解質である
また、水素化に供する不飽和化合物も必ずしも水溶液の状態である必要はなく、水あるいは電解質と相分離した状態で反応に供することも可能である。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、熱力学計算により、下記化学反応式(H)で表される水の光分解反応、並びに下記化学反応式(1A)、(1B)、(1C)、及び(1D)で表される不飽和化合物の水素化反応におけるエンタルピー変化ΔH、及びギブス自由エネルギー変化ΔGx=1を計算した。結果を表1に示す。
O → H+(1/2)O (H)
(1/3)TL+HO → (1/3)MCH+(1/2)O (1A)
(1/3)BZ+HO → (1/3)CH+(1/2)O (1B)
(1/5)NPL+HO → (1/5)DCL+(1/2)O (1C)
BQ+HO → HQ+(1/2)O (1D)
式(1A)中、TLはトルエンであり、MCHはメチルシクロヘキサンである。式(1B)中、BZはベンゼンであり、CHはシクロヘキサンである。式(1C)中、NPLはナフタレンであり、DCLはデカリンである。式(1D)中、BQはp−ベンゾキノンであり、HQはp−ハイドロキノンである。
なお、上記化学反応式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)は、下記化学反応式(1)として一般化できる。
U(n)+x・HO → U(n−x)+(x/2)・O (1)
化学反応式(1)で表される反応におけるギブス自由エネルギー変化は、x・ΔGと定義される。U(n)は、TL、BZ、NPL及びBQのいずれかであり、U(n−x)は、MCH、CH、DCL及びHQのいずれかである。
ここで、上記化学反応式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)を化学反応式(1)で表す場合、x=1である。したがって、ΔGx=1=x・ΔG=ΔGが成り立つ。換言すれば、上記化学反応式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)におけるΔH及びΔGx=1は、水素化に関与する水分子の数が1モルであり、水素化される不飽和結合の数が1モルである場合の換算値である。また、上記化学反応式(H)におけるΔH及びΔGx=1は、光分解により1モルの水分子から1モルの水素分子が生成する場合の換算値である。
ΔH及びΔGx=1の計算には、市販の熱力学計算ソフトである「HSC. Chemistry, Outokumpu Research Oy Information Service」を用いた。なお、下記の各熱力学的数値としては、25℃における高位発熱量を採用している。
上記式(H)で表される水の光分解又は上記式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される不飽和化合物の水素化を進行させるためには、光触媒の価電子帯の電子が、光の吸収を受けて、少なくともΔGに相当する電位差以上に励起する必要がある。励起後の電子の電位と励起前の電子の電位との電位差ΔE(還元電位)は下記式(B)で与えられる。
ΔE=−ΔG/nF=−ΔG/2F (B)
式(B)中、nは反応に関与する電子数であり、Fはファラデー定数である。そして、上記式(H)、(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される反応に関与する電子数nは2モルである。また、式(1)は熱力学的に不利な反応であり、そのΔGは正の値をとる。このため、式(B)から明らかなようにΔEは負の値を取る。
上記式(H)(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される各反応におけるΔG(ΔGx=1)を用いて、各反応におけるΔEを計算した。結果を表1に示す。
そして、光による励起した電子のエネルギーと、それに等しい光子のエネルギーは、下記式(C)によって関係付けられる。
eΔE=hν=hc/λ (C)
式(C)中、νは光の周波数である。λは光の波長である。eは電子の電荷(負の値)である。hはプランク定数である。cは真空中での光速度である。
一般に、水の光分解や不飽和化合物の水素化等の光反応では、光触媒に照射された光のエネルギーの全てが反応に使われることはない。光の吸収以後、種々の途中過程でエネルギーが費やされ、光反応に用いられるのは、光触媒に照射された光のエネルギーの一部に過ぎない。したがって、途中過程で費やされるエネルギーが大きく、光反応に供されるエネルギーが必要量に対して不足する場合、光反応を進行させることができなくなる。換言すれば、光触媒に照射された光のエネルギーとeΔEとの差(hc/λ−eΔE)が大きいほど、光反応が進行し易くなる。
光触媒に照射された光の波長λが太陽光の可視光領域に属する600nmである場合の(hc/λ−eΔE)を計算した。結果を表1に示す。なお、波長が600nmである光子の有するエネルギーhc/λは、下記式(D)で表される。
hc/λ=hc/(600×10−9)=2.066eV (D)
Figure 0005515145
式(H)で表される水の光分解におけるΔEの絶対値は1.229Vであり、水の光分解を進行させるためには、eΔEとして、少なくとも1.229eVのエネルギーを光から電子を与え、電子を励起させる必要があることが確認された。そして、上述のように、波長が600nmである光子から、hc/λとして、2.066eVのエネルギーが電子に与えられるため、(hc/λ−eΔE)が正となることが確認された。すなわち、2.066eVである光子のエネルギーは、水の光分解を進行させるためには十分な量であることが確認された。
しかし、式(H)で表される水の光分解は、式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される水素化反応に比べて、そのΔHが大きいばかりではなく、そのΔGも大きく、熱力学的により不利な反応(進行し難い反応)であることが確認された。
一方、式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される水素化反応は、式(H)で表される水の光分解に比べて、そのΔH及びΔGが小さく、熱力学的に有利な反応(進行し易い反応)であることが確認された。
式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される水素化におけるΔEの絶対値は、式(H)で表される水の光分解に比べて小さいことが確認された。すなわち、式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される水素化では、式(H)で表される水の光分解に比べて、光触媒中で電子を励起させるために要する光子のエネルギーの下限値が小さい可能性のあることが確認された。
式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される水素化における(hc/λ−eΔE)は正となることが確認された。すなわち、2.066eVである可視光領域の光子のエネルギーは、式(1)、(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)で表される光触媒による不飽和化合物の水素化を進行させるためには十分な量であることが確認された。
式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される水素化における(hc/λ−eΔE)は、式(H)で表される水の光分解に比べて大きいことが確認された。したがって、式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される水素化では、式(H)で表される水の光分解に比べて、途中過程でのエネルギーロスに許されるマージンが大きく、反応が進行し易いことが確認された。より正確に言えば、式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)で表される水素化反応が進行する確率は、式(H)で表される水の光分解に比べて高くなる可能性のあることが確認された。
なお、表1から明らかなように、ΔG及びΔEの絶対値が小さ過ぎる場合、水素化された不飽和化合物の還元体をエネルギー源として利用し難い傾向がある。一方、ΔG及びΔEの絶対値が大き過ぎる場合、途中過程でのエネルギーロスに許されるマージンが少なくなり、水素化反応が進行し難い傾向がある。
(実施例2)
図2に示す反応装置を用いて、下記のような実施例2に係る実験を行った。
酸化極槽2中の支持電解液4として、90mlの0.1M NaSO水溶液を用いた。また、還元極槽3中の支持電解液5として、90mlの0.1M NaSO水溶液を用いた。還元極槽3中の支持電解液5には、不飽和化合物として、1mMのp−ベンゾキノン(Aldrich社製、98%)を添加した。塩橋8にはナフィオン膜を用いた。
支持電解液4中に配置される酸化極6(第一電極)としては、FTO(Fluorine−doped tin oxide)基板を用いた。酸化極6の表面に担持される可視光応答性光触媒としては、IrOで修飾したタンタルオキシナイトライド(TaON)を用いた。下記の方法で、酸化極6の表面に可視光応答性光触媒を担持させた。
Ta(高純度化学社製、99.99%)を、NH気流中、1123Kで15時間窒化処理してTaONを得た。ヨウ素0.01gを溶かしたアセトン50mLを用いた電気泳動法により、TaONを旭硝子社製のFTO基板に塗布した。電気泳動法での印加電圧は10Vとした。TaCl(高純度化学社製、99.99%)を加えたアンモニア気流中、773Kで1時間、TaONが塗布されたFTO基板を処理した。処理後のFTO基板を吸着法によりIrOコロイドで修飾し、純水で洗浄することにより、酸化極6を得た。
支持電解液5中に配置される還元極7(第二電極)としては、白金線を用いた。
Xeランプ(ウシオ電機社製)から発生し、カットオフフィルターを通過した420nm以上の波長を有する可視光を、FTO基板に担持された光触媒に照射した。Xeランプで発生する光の可視光域の分光分布は、太陽光の可視光域の分光分布に近い。したがって、Xeランプから光触媒へ照射される光は、太陽光の可視光領域の光と見なせる。
可視光の照射中は、酸化極槽2中の支持電解液4及び還元極槽3中の支持電解液5を窒素ガスでバブリングした。また、可視光の照射を開始する前の時点から照射を停止した後の時点までの酸化極6と還元極7との間の電流―電位特性を、ポテンシオスタット(HSV−100、北斗電工社製)を用いて測定した。
可視光の光触媒への照射中、酸化極6の表面から酸素ガスが発生していることが確認された。また、可視光の光触媒への照射中、還元極7の表面から気泡が発生していないことが確認された。
ポテンシオスタットによる測定の結果、図3に示すように、可視光を光触媒に照射した間においてのみ電流が流れたことが確認された。すなわち、可視光に光触媒が応答して、反応が進行していることが確認された。
(実施例3)
可視光を光触媒に35時間照射したこと以外は実施例2と同様の方法で、実施例3の実験を行った。可視光を光触媒に35時間照射した後、還元極槽3中の支持電解液5について、下記の条件で高速液体クロマトグラフィー分析を行った。
カラム:YMC―Pack Ph A―403 4.6mmID×250mm。
移動相:5mM酢酸水溶液。
注入量:10μl。
流速:100mL/min。
p−ベンゾキノンの検出波長:245nm。
p−ハイドロキノンの検出波長:290nm。
p−ベンゾキノンの保持時間:9.8分。
p−ハイドロキノンの保持時間:6.5分
クロマトグラフィー分析による定量の結果、還元極槽3の支持電解液5中に、0.038mmolのp−ハイドロキノンが生成していることが確認された。一方、図4に示す光電流の積算値の変化から求めた積算光電気量は0.025mmolであった。該積算光電気量とp−ハイドロキノンの生成量には若干差があるが、測定精度を考慮すれば、両者は良い一致を見せているといえる。
以上のように、実施例2及び3では、第一電極6の光触媒に太陽光の可視光に相当する光を照射することにより、第一電極6において酸素ガスが生成すると共に、第二電極7においてp−ベンゾキノンが水素化され、p−ハイドロキノンが生成することが確認された。

Claims (4)

  1. 反応装置を用いた水素の貯蔵方法であって、
    前記反応装置は、第一槽と、前記第一槽内に配置された第一電極と、第二槽と、前記第二槽内に配置された第二電極と、プロトン伝導性の塩橋と、を備え、
    前記第一槽と前記第二槽とは、前記塩橋を介して連結されており、
    前記第一電極の表面には光触媒が担持されており、
    前記第一電極は前記第二電極と電気的に接続されており、
    前記第一槽及び前記第二槽には、水を含む電解質が入っており、
    前記第一槽内において、前記第一電極が前記水を含む電解質と接触しており、
    前記第二槽内において、前記第二電極が前記水を含む電解質と接触しており、
    前記水を含む電解質は、プロトン伝導性を有し、
    前記水を含む電解質は、水で膨潤させた固体高分子電解質、又は硫酸ナトリウム水溶液のうち少なくともいずれかであり、
    前記光触媒に光を照射することにより、前記第一電極から供給される電子と、前記第一槽内に存在する不飽和結合を有する有機化合物と、前記電解質に含まれる前記水に由来するプロトンとを、前記第一電極において反応させて、前記有機化合物を水素化し、
    または、
    前記光触媒に光を照射することにより、前記第二電極から供給される電子と、前記第二槽内に存在する不飽和結合を有する有機化合物と、前記電解質に含まれる前記水に由来するプロトンとを、前記第二電極において反応させて、前記有機化合物を水素化する、
    水素の貯蔵方法。
  2. 前記水を含む電解質は、水で膨潤させたパーフルオロスルホン酸系固体高分子電解質である、
    請求項1に記載の水素の貯蔵方法。
  3. 前記有機化合物の水素化が、下記化学反応式(1)で表され、且つ下記不等式(A)で表される条件を満たす、
    請求項1又は2に記載の水素の貯蔵方法。
    U(n)+xHO → U(n−x)+(x/2)O (1)
    [式(1)中、U(n)は前記有機化合物を表し、nはU(n)が有する不飽和結合の数を表す1以上の整数であり、xは1以上n以下の整数であり、U(n−x)は2x個の水素原子が付加された前記有機化合物を表し、n−xはU(n−x)が有する不飽和結合の数を表す整数である。]
    0.5V≦ΔG/2F≦1.2V (A)
    [式(A)中、ΔGは前記化学反応式(1)で表される反応におけるギブス自由エネルギー変化を前記xで割った値であり、Fはファラデー定数である。]
  4. 前記光触媒は、可視光を照射されることにより触媒作用を示す、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素の貯蔵方法。
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