JP5514717B2 - 筒状編地の編成方法および筒状編地 - Google Patents

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Description

本発明は、横編機によりダブルシステム編成にて筒状編地を編成する方法と、この方法により編成された筒状編地に関する。
一般に、横編機は、少なくとも前後一対の針床と、針床上を往復運動するキャリッジと、これら針床の上方に針床の長手方向と直交する方向に並列される複数の糸道レールとを備える。キャリッジは、針床上に列設される編針に編成動作を行わせるための複数のカムシステムを有する。また、各糸道レールには、給糸部材が針床の長手方向に平行な方向に摺動可能に取り付けられている。
横編機を用いた編成技術の一つとして、ダブルシステム編成がある(例えば、特許文献1)。ダブルシステム編成では、キャリッジで複数の給糸部材を連行し、キャリッジの先行・後行の各カムシステムで駆動される編針の各々に対して各給糸部材から給糸する。これにより、一方向へのキャリッジの移動で2コース分の編成を行う。
特開平10−266047号公報
しかし、従来のダブルシステム編成で筒状に編地を編成する場合、給糸部材の反転位置になる編幅方向端部の一方で、先行の給糸部材から給糸される編糸と後行の給糸部材から給糸される編糸とが交差し、この交差により編地に孔が生じるという問題がある。
例えば、横編機の前面側から見て手前側にある給糸部材5を後行の給糸部材とし、給糸部材5よりも奥側にある給糸部材6を先行の給糸部材とし、反時計回り(図中の細い矢印の方向)に筒状編地を編成する場合を図5(A)に例示する。この図5(A)において、紙面下側が前針床であって、この前針床で筒状編地の前側編地部FFが編成され、紙面上側が後針床であって、この後針床で筒状編地の後側編地部BFが編成される。また、図5(B)は、図5(A)の二点鎖線で示す部分を白抜き矢印の方向から見たループ図である。
図5(A)に示す編成を実施する場合、後針床での編成から前針床での編成に移行するときに、編幅方向の左側端部(二点鎖線で囲った部分)において、給糸部材6から給糸されて、先に形成される編成コースの編糸に対して、後から編成される給糸部材5からの編糸が交差する。そして、この状態からさらに前針床での編成を開始すると、給糸部材5からの編糸と給糸部材6からの編糸との交差状態が編地に反映される。この交差により、図5(B)に示すように、前側編地部FFと後側編地部BFとの境界部Xにおいて、給糸部材6からの編糸で編成された編成コースのシンカーループ(同一コースの隣接する2つの編目を繋ぐ部分)が、給糸部材5からの編糸で編成された編成コースのシンカーループにより引っ張り上げられて、編地に大きな孔gが生じる。この孔gは、実際の編地の写真を示す図6を見ると明らかなように、目視できるほどの大きさであるため、編地の外観を損なう虞がある。なお、図6の写真および後述する図2、図4の写真は、編地を編幅方向に引っ張った状態で撮影されている。
上述した交差の問題は、給糸部材5を先行の給糸部材とし、給糸部材6を後行の給糸部材とした場合であれば、編幅方向の右側端部において発生する。また、図5では、1つの給糸部材から2本の編糸を給糸した例を示しているが、もちろん1つの給糸部材から1本の編糸を給糸した場合でも同様の問題が生じる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダブルシステム編成により筒状に編地の編成を行う場合でも、前側編地部と後側編地部との境界部に大きな孔が発生しない筒状編地の編成方法およびこの編成方法により編成される筒状編地を提供することにある。
本発明の筒状編地の編成方法は、少なくとも前後一対の針床を有し、針床上を往復するキャリッジに備わる複数のカムシステムにより針床の編針に編成動作を行わせるように構成されると共に、針床の上方に針床の長手方向と直交する方向に並列される複数の糸道レールのそれぞれに対して、針床の長手方向に平行な方向に往復可能に取り付けられる複数の給糸部材を備える横編機を用いて、キャリッジの一方向への移動により先行のカムシステムと後行のカムシステムとで2コース分の編成を行う筒状編地の編成方法に係る。そして、本発明の筒状編地の編成方法は、横編機に備わる給糸部材のうち、前面側の一つを手前側給糸部材、手前側給糸部材よりも奥側に位置する給糸部材を奥側給糸部材、手前側給糸部材と奥側給糸部材との間に位置する給糸部材を中側給糸部材としたときに、先行のカムシステムと後行のカムシステムのいずれか一方のカムシステムで駆動される編針に対して手前側給糸部材と奥側給糸部材から給糸させると共に、前記いずれか他方のカムシステムで駆動される編針に対して中側給糸部材から給糸させて筒状に編成を実施することを特徴とする。
本発明の筒状編地の編成方法は、先行のカムシステムで駆動される編針に対して手前側給糸部材と奥側給糸部材から給糸させることが好ましい。換言すれば、後行のカムシステムで駆動される編針に対して中側給糸部材から給糸させることが好ましい。
また、本発明の筒状編地は、少なくとも前後一対の針床を有し、針床上を往復するキャリッジに備わる複数のカムシステムにより針床の編針に編成動作を行わせるように構成されると共に、針床の上方に針床の長手方向と直交する方向に並列される複数の糸道レールのそれぞれに対して、針床の長手方向に平行な方向に往復可能に取り付けられる複数の給糸部材を備える横編機を用いて、キャリッジの一方向への移動により先行のカムシステムと後行のカムシステムとで2コース分の編成を行うことにより編成される前後の編地部からなる筒状編地に係る。この筒状編地は、複数本の編糸からなる第1編成コースと、1本以上の編糸からなる第2編成コースとが交互に繰り返されることで形成される。そして、本発明の筒状編地は、前側編地部と後側編地部との境界部において、第1編成コースの編糸のシンカーループを構成する複数本の編糸うち、一部の編糸が、第1編成コースに隣接する第2編成コースのシンカーループに交差し、残部の編糸が、第2編成コースのシンカーループに交差していないことを特徴とする。
本発明の筒状編地の編成方法によれば、筒状編地の前側編地部の編成と後側編地部の編成が切り替わる際、手前側給糸部材からの編糸と中側給糸部材からの編糸が交差するときには、中側給糸部材からの編糸と奥側給糸部材からの編糸が交差しない。また、前後編地部の編成が切り替わる際、奥側給糸部材からの編糸と中側給糸部材からの編糸が交差するときには、中側給糸部材からの編糸と手前側給糸部材からの編糸が交差しない。つまり、ダブルシステム編成で筒状編地を編成しても、前側編地部と後側編地部との境界部(編地の編幅方向の左右に存在する境界部)のいずれにおいても、シンカーループが交差しない編糸が必ず存在することになる。その結果、交差により生じる孔の位置で、交差しない編糸が通常の形状のシンカーループとして前後の編地部間をわたることになるので、生じた孔を目立たなくすることができ、境界部の外観を美しくできる。しかも、編地の両境界部において、シンカーループが交差する編糸と交差しない編糸がそれぞれ存在するので、両境界部の見た目をほとんど同じにすることができ、見た目のバランスがとれた美しい仕上がりの編地とすることができる。さらに、ダブルシステム編成により編成を行うので、編地の生産性を向上できる。
また、先行のカムシステムで駆動される編針に対して手前側給糸部材と奥側給糸部材とから給糸することで、手前側給糸部材と奥側給糸部材とから給糸を受ける第1編成コースが、中側給糸部材から給糸を受ける第2編成コースよりも先に形成されることになる。このとき、前後の編地部の境界部において、既に形成されている手前側給糸部材からの編糸と奥側給糸部材からの編糸のいずれか一方の編糸に、中側給糸部材からの編糸が交差して、前記一方の編糸を第2編成コース側に引っ張り上げる。ここで、中側給糸部材からの編糸に由来する境界部Xのシンカーループの形状は、同じ編成コースにおける境界部X以外のシンカーループの形状に対して大きく変形することがない(後述する図1(B)の給糸部材5由来のシンカーループを参照)。一方、前記いずれか他方の編糸に、中側給糸部材からの編糸が交差することはなく、前記他方の編糸は、形成されたときの状態を維持する。つまり、編地のどの編成コースにおいても、編地における高さが揃ったシンカーループが存在し、それらのシンカーループの形状も揃っているので、編地の見栄えが良い(図1(B)参照)。この場合も、編地の左右の境界部は殆ど同じ見た目となるので、バランスのとれた美しい仕上がりの編地とすることができる。
(A)は、実施形態1に記載の筒状編地の編成方法で編成するときの給糸部材の状態を示す説明図である。(B)は、(A)の点線で囲った側における前後の編地部の境界部を白抜き矢印の方向から見たループ図である。 実施形態1に記載の筒状編地における境界部近傍の写真である。 (A)は、実施形態2に記載の筒状編地の編成方法で編成するときの給糸部材の状態を示す説明図である。(B)は、(A)の点線で囲った側における前後の編地部の境界部を白抜き矢印の方向から見たループ図である。 実施形態2に記載の筒状編地における境界部近傍の写真である。 (A)は、従来の筒状編地の編成方法で編成するときの給糸部材の状態を示す説明図である。(B)は、(A)の点線で囲った側における前後の編地部の境界部を白抜き矢印の方向から見たループ図である。 従来の筒状編地における境界部近傍の写真である。
次に本発明の好適な実施の形態(実施形態1,2)を図面に基づいて以下に詳細に説明する。実施形態1,2のいずれも、横編機に備わるキャリッジの1回の往動または復動により、2コース分の編成を一度に行うダブルシステム編成により、前針床で編成される前側編地部と後針床で編成される後側編地部とからなる筒状編地を編成する。この本発明の筒状編地は、前後の編地部が完全に連続した筒状のもの(例えば、セーター)はもちろん、筒の一部が連続していないもの(例えば、カーディガン)も含む。
まず、実施形態で使用する横編機を説明する。横編機は、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する前後一対の針床を有する横編機である。このような横編機としては、前針床と後針床とを備える2枚ベッド横編機や、前後の針床の上方にさらに対向する2枚の針床を備える4枚ベッド横編機などを挙げることができる。
また、使用する横編機は、針床を幾つ備えているかに関わらず、針床の上方に針床の長手方向と直交する方向に並列される複数の糸道レールを備える。各糸道レールには、糸道レール上に摺動可能に給糸部材が取り付けられており、これら給糸部材は、針床の長手方向に平行な方向に往復運動することができる。後述する実施形態1,2の説明に使用する図1、図3においては、給糸部材4、給糸部材5、給糸部材6の3つのみを図示する。これら給糸部材4〜6の位置関係は、横編機前面側から見て一番手前側に給糸部材4(手前側給糸部材)が、一番奥側に給糸部材6(奥側給糸部材)が、これら給糸部材4と給糸部材6との間に給糸部材5(中側給糸部材)が配置される位置関係にある。
さらに、横編機は、針床の編針を駆動させる複数のカムシステムが搭載されたキャリッジを備える。本発明の筒状編地の編成方法では、複数のカムシステムのうち、2つを編目の形成に使用することで、ダブルシステム編成を行う。3つ以上のカムシステムを備えるのであれば、2つを編目の形成に使用し、残りを目移し等に使用すれば良い。
<実施形態1>
以上説明した横編機を使用して、図1に示すような後側編地部BFと前側編地部FFとからなる筒状編地を編成する。図1(A)は、編成時の給糸部材4,5,6の位置関係を示す図である。この図における細い矢印は、給糸部材4,5,6の移動方向(キャリッジの移動方向と同じ)であり、給糸部材4,5,6の移動に伴って紙面下側の前針床で前側編地部FFが編成され、紙面上側の後針床で後側編地部BFが編成される。また、図1(B)は、図1(A)の二点鎖線で示す部分を白抜き矢印の方向から見たループ図であって、前側編地部FFと後側編地部BFとの境界部Xを一点鎖線で示す。なお、後述する実施形態2の説明に使用する図3も、図の見方は同じである。
前側編地部FFと後側編地部BFを連続して編成するにあたり、先行のカムシステムで駆動される編針に対して給糸部材4および6から各1本ずつ編糸が給糸されるようにすると共に、後行のカムシステムで駆動される編針に対して給糸部材5から2本の編糸が給糸されるようにする。このとき、給糸部材4および6は、給糸部材5に先行するように走行させる。なお、キャリッジにおける給糸部材4と給糸部材6の順序は、特に限定されず、これら給糸部材4,6の先端部同士が干渉しないのであれば全く同時であっても構わない。
ここで、先行のカムシステムでの編成と後行のカムシステムでの編成とで編糸の数を揃えると、編地の厚みが均一になるし、両カムシステムで編成する編糸を同色とすれば、編地の見栄えが良くなる。従って、本実施形態では、給糸部材4および6からは各1本ずつ同色の編糸を給糸させ、給糸部材5からは2本の同色の編糸を給糸させている。給糸部材5から2本の編糸を給糸させる代わりに、後行の給糸部材として、給糸部材5およびこの給糸部材5とは別の給糸部材5’(図示せず)から各1本ずつ編糸を給糸させるようにしても構わない。この場合、給糸部材5’は、給糸部材4よりも奥側であって、給糸部材6よりも手前側のものを使用する。
上述した位置関係を有する給糸部材4〜6によりダブルシステム編成を行うと、給糸部材4および6から給糸される2本の編糸からなる第1編成コースが、給糸部材5から給糸される2本の編糸からなる第2編成コースよりも先に形成される。この場合、後側編地部BFの編成から前側編地部FFの編成に移行する編幅方向左側端部(図1(A)の二点鎖線で囲まれる部分)では、後側編地部BFの編成が終了したときに、給糸部材5の編糸が、給糸部材6の編糸に交差する。そして、前側編地部FFの編成を開始したときに、給糸部材5の編糸が給糸部材6の編糸を引っ張り上げる。一方、給糸部材4の編糸は、給糸部材5の編糸と交差しないため、後側編地部BFの編成から前側編地部FFの編成に移行するときに、給糸部材5の編糸に引っ張り上げられることがない。
上述のようにして編成される筒状編地の編幅方向左側端部における前側編地部FFと後側編地部BFとの境界部Xの編目の状態は、図1(B)のようになる。この図に示すように、編地の境界部Xにおいて、第1編成コースのシンカーループのうち、給糸部材6に由来するシンカーループは、この第1編成コースよりも後に形成される第2編成コースのシンカーループ(給糸部材5に由来)に掛かって、第2編成コースの側に引っ張り上げられている。このとき、給糸部材5由来のシンカーループの形状は、通常のシンカーループ(境界部X以外のシンカーループ)の形状とほぼ同じ形状である。つまり、第2編成コースでは、境界部Xにおけるシンカーループが、境界部X以外におけるシンカーループとほぼ同じ形状でほぼ同じ高さに揃う。一方、境界部Xにおいて、給糸部材4に由来するシンカーループは、第2編成コースのシンカーループに交差していないため、第2編成コースの側に全く引っ張り上げられることなく、形成されたときの状態(第1編成コースの一つ前に形成される第2編成コースのうち、境界部Xを挟む一対の編目に掛かった状態)を維持する。
以上説明したように、編地のどの編成コースにおいても、編地における高さが揃ったシンカーループが存在し、しかも、それらのシンカーループの形状が揃っているので、編地の見栄えが良い。実際の編地の境界部Xにおける状態を示す写真(図2)を見ても、孔が発生していないことが判る。
一方、編幅方向右端部では、給糸部材4の編糸が、給糸部材5の編糸と交差して、この編糸により引っ張り上げられるが、給糸部材6の編糸は、給糸部材5の編糸と交差せず、この編糸に引っ張り上げられることがない。そのため、編幅方向右側端部における前後の編地部の境界部においても孔が発生しない。
上述した編幅方向左端部の境界部Xと、編幅方向右端部の境界部とでは、第2編成コースを形成する編糸(給糸部材5由来)と交差する第1編成コースを形成する編糸が、給糸部材6からのものか、給糸部材4からのものかという違いはあるものの、第1編成コースを形成する2本の編糸のうち、1本が引き上げられ、残りは引き上げられないと言う点では同じである。そのため、編地における両境界部は、殆ど同じ見栄えとなるので、見た目のバランスがとれた美しい仕上がりの編地となる。
<実施形態2>
実施形態1では、中側給糸部材からの編糸を、後行のカムシステムでの編成に給糸しているが、先行のカムシステムでの編成に給糸しても良い。以下、図3および図4を参照して、中側給糸部材から先行のカムシステムでの編成に給糸する場合を説明する。
図3(A)に示すように、本実施形態のダブルシステム編成では、横編機の前面から奥にかけて、給糸部材4〜6の順に配置されている。そして、後側編地部BFを編成するためにキャリッジを紙面左方向に移動させ、前側編地部FFを編成するためにキャリッジを紙面右方向に移動させる。
上述のような編成を行うと、給糸部材5から給糸される2本の編糸からなる第2編成コースが、給糸部材4および6から給糸される2本の編糸からなる第1編成コースよりも先に形成される。この場合、後側編地部BFの編成から前側編地部FFの編成に移行する編幅方向左側端部(図3(A)の二点鎖線で囲まれる部分)では、後側編地部BFの編成が終了したときに、給糸部材4の編糸が、給糸部材5の編糸に交差する。そして、前側編地部FFの編成を開始したときに、給糸部材4の編糸が給糸部材5の2本の編糸を引っ張り上げる。言い換えれば、給糸部材4の編糸が給糸部材5の2本の編糸によって引き下げられる。一方、給糸部材6の編糸は、給糸部材5の編糸と交差しないため、給糸部材5の編糸に引き下げられることがない。
図3(B)に、編成された筒状編地の左側端部における境界部Xの編目の状態を示す。この図に示すように、境界部Xにおいて、第1編成コースのシンカーループのうち、給糸部材4に由来するシンカーループは、この第1編成コースよりも先に形成された第2編成コースのシンカーループに掛かって、第2編成コース側に引き下げられている。これに対して、境界部Xにおいて、給糸部材6に由来するシンカーループは、第2編成コースのシンカーループに交差しておらず、第2編成コースの側に全く引き下げられることなく、通常の編成を行ったときのシンカーループと同じ形状、即ち、同じ編成コースにおける境界部Xとは異なる位置にあるシンカーループと同じ形状のシンカーループとなる。より具体的に説明すると、この給糸部材6に由来するシンカーループは、第1編成コースの一つ前に形成される第2編成コースのうち、境界部Xを挟む一対の編目に掛かった状態にある。
ここで、本実施形態の筒状編地の編成方法は、前側編地部FFと後側編地部BFとの境界部Xにおいて、先に形成される編成コース(第2編成コース)のシンカーループが、後に形成される編成コース(第1編成コース)のシンカーループにより引き上げられて変形し、編地に孔が生じると言う点では、従来のダブルシステム編成と同様である。しかし、給糸部材6からの編糸に由来する交差しないシンカーループにより、境界部Xで生じる孔は非常に小さいものになる。実際に、本実施形態の筒状編地の編成方法により編成した編地の境界部における状態を示す写真(図4)を見ても、従来の編成方法により編成した編地(図6)に比べて、孔と言えるような孔が発生していないことが判る。
一方、編幅方向右端部では、給糸部材6の編糸が、給糸部材5からの2本の編糸と交差して、これらの編糸を引っ張り上げるが、給糸部材4の編糸は、給糸部材5からの2本の編糸と交差せず、これらの編糸を引っ張り上げることがない。つまり、編幅方向右側端部も、上段で述べた編幅方向左側端部と同様の見た目となるので、従来の編成方法により編成した編地よりも格段に見た目が良くなる。
本発明の筒状編地の編成方法は、キャリッジの一方向への移動により2コース分の編成を行うことができるダブルシステム編成に好適に利用可能である。
4,5,6 給糸部材
FF 前側編地部
BF 後側編地部
X 前後の編地部の境界部
g 孔

Claims (3)

  1. 少なくとも前後一対の針床を有し、針床上を往復するキャリッジに備わる複数のカムシステムにより針床の編針に編成動作を行わせるように構成されると共に、針床の上方に針床の長手方向と直交する方向に並列される複数の糸道レールのそれぞれに対して、針床の長手方向に平行な方向に往復可能に取り付けられる複数の給糸部材を備える横編機を用いて、キャリッジの一方向への移動により先行のカムシステムと後行のカムシステムとで2コース分の編成を行う筒状編地の編成方法であって、
    横編機に備わる給糸部材のうち、前面側の一つを手前側給糸部材、
    手前側給糸部材よりも奥側に位置する給糸部材を奥側給糸部材、
    手前側給糸部材と奥側給糸部材との間に位置する給糸部材を中側給糸部材としたときに、
    先行のカムシステムと後行のカムシステムのいずれか一方のカムシステムで駆動される編針に対して手前側給糸部材と奥側給糸部材から給糸させると共に、
    前記いずれか他方のカムシステムで駆動される編針に対して中側給糸部材から給糸させて筒状に編成を実施することを特徴とする筒状編地の編成方法。
  2. 先行のカムシステムで駆動される編針に対して手前側給糸部材と奥側給糸部材から給糸させることを特徴とする請求項1に記載の筒状編地の編成方法。
  3. 少なくとも前後一対の針床を有し、針床上を往復するキャリッジに備わる複数のカムシステムにより針床の編針に編成動作を行わせるように構成されると共に、針床の上方に針床の長手方向と直交する方向に並列される複数の糸道レールのそれぞれに対して、針床の長手方向に平行な方向に往復可能に取り付けられる複数の給糸部材を備える横編機を用いて、キャリッジの一方向への移動により先行のカムシステムと後行のカムシステムとで2コース分の編成を行うことにより編成される前後の編地部からなる筒状編地であって、
    複数本の編糸からなる第1編成コースと、
    1本以上の編糸からなる第2編成コースとが交互に繰り返されることで形成され、
    前側編地部と後側編地部との境界部において、第1編成コースのシンカーループを構成する複数本の編糸のうち、一部の編糸が、第1編成コースに隣接する第2編成コースのシンカーループに交差し、残部の編糸が、第2編成コースのシンカーループに交差していないことを特徴とする筒状編地。
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