JP5513863B2 - 有害生物防除剤の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、各種の有害生物に対して忌避、殺虫・殺菌、着生防止などの防除効果を有する有害生物防除剤の製造方法に関するものである。
キトサンを原料として調製した有害生物除去剤は従来から知られている。例えば特許文献1は、キトサンと銅、亜鉛、銀から選ばれる金属との錯塩を主体とする木材保存剤に関するものである。そしてこのものは、一定の分子量(500〜20000)及び脱アセチル化度(50〜90)を有するキトサンに、銅、亜鉛、銀の塩化物等の強酸塩を一定の条件下で反応させることによってキトサンの金属錯塩を調製し、このキトサンの金属錯塩を用いるようにしたものである。
このようにして得られたキトサンの金属錯塩には、キトサンに対して金属が単体ではなく、一部ではむしろ金属塩化物あるいは強酸塩のままの形で結合しており、化学的な性質上、高い酸性を呈している。しかもこの酸性を示すイオン基は非揮発性である。
しかしこのようにキトサンの金属錯塩が酸性を呈すると、キトサンの金属錯塩を天然繊維や再生繊維を防腐・防虫するための有害生物防除剤として利用する場合に問題となる。すなわち、元来、植物繊維は酸性において単繊維が切断され易いので、本来の強度が維持できなくなるという問題がある。例えば、ジュート麻、綿糸、トウモロコシあるいはケナフ等に代表される比較的細く、しかもリグニン比率の少ない天然植物繊維や、レーヨン等のセルロース誘導繊維に、上記のキトサンの金属錯塩で処理を施した場合、錯塩内に存在する塩素イオンあるいは強酸イオンが水分と作用し、塩酸あるいは塩化水素またはその他の酸を生成することで強い酸性を呈することになり、これにより繊維が切断され、植物繊維を材料とする製品の強度的品質を維持できなくなるのである。
そこで、このような問題を解決するために、特許文献2では、キトサンと銅などの金属塩を反応させた後に、水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウム等に代表される強アルカリを添加し、キトサンに結合している酸性イオン基を中和除去するようにしている。そしてこのように酸性イオン基を中和除去したキトサンの金属錯塩は、水溶液に調製しても強酸性を呈するイオンを有さないことから、植物繊維を傷めるようなことなく処理することができるものであった。
ここで、特許文献2では、キトサンと銅などの金属塩とを、金属塩の水溶液中で反応させることによって、この水溶液中でキトサンの金属錯塩を調製し、次にこの水溶液に水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の強アルカリを添加することによって酸性イオン基を中和除去するようにしており、キトサンの金属錯塩は水溶液中に沈殿するので、これをろ過し、ろ過残渣を水洗して乾燥することによって、キトサンの金属錯塩を得るようにしている。
このようにキトサンの金属錯塩はろ過残渣から回収されているが、ろ過後に廃棄されているろ液中にも、ろ過残渣の約1/3質量に相当するキトサンの金属錯塩が残存している。このため、このろ液を廃棄することは大きな損失になり、さらに廃棄すると環境汚染のおそれもある。
そこで特許文献3では、銅などの金属塩の水溶液中でキトサンを金属塩と反応させてキトサンの金属錯塩を調製し、この水溶液にアルカリを添加して中和した後、さらにこの水溶液に揮発性の弱酸を添加してキトサンの金属錯塩をこの水溶液中に溶解させることによって、ろ液と残渣に分別することなく生成されたキトサンの金属錯塩の全てを利用することができるようにしている。
特公平7−118970号(特許第2080251号)公報 特許第3830035号公報 特開2007−302590号公報
しかしその後の研究において、特許文献1における、キトサンの金属錯塩内に残存する強酸性を有する酸性イオン基は、金属成分と強固に結合しており、特許文献2や特許文献3のように強アルカリを用いて中和除去する操作を行なっても、酸性イオン基の一部は完全に除去することができないことが判明した。
そしてこのようにキトサンの金属錯塩に中和除去されない酸性イオン基が残存していると、キトサンの金属錯塩を保管する金属容器を腐食させるおそれがあり、またキトサンの金属錯塩で処理された木材等に接触する釘や金属板などをも腐食させるおそれがあり、さらには海や川、湖などの水中に浸漬した場合に、処理された木材からキトサンの金属錯塩が溶出し易くなるなどの問題が発生するものであった。
さらに特許文献3のようにろ液と残渣を分別することなくキトサンの金属錯塩を製造することができるようにしたものにおいては、中和の際に生成する塩化ナトリウム等の塩類を完全に除去することができず、このような塩類を含むキトサンの金属錯塩を保管装置や処理装置に充填した場合、塩類が水に溶解していわゆる電解質水溶液の環境を作り、容器や設備がステンレス製であっても溶接接合部分などでイオン交換反応が発生し、鉄が溶出することによる金属腐食が生じたり、さらにこの腐食が原因で穿孔が発生して漏洩が起こったりするおそれがあった。また塩素イオンによる容器内壁の錆発生の問題もあった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、強酸性を示すイオンが存在せず、金属腐食等の問題なく使用することができる有害生物防除剤の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る有害生物防除剤の製造方法の第1の態様は、水に2〜15質量%濃度になるように酢酸を溶解して酢酸水溶液を調製し、この酢酸水溶液に2〜8質量%濃度になるようにキトサンを投入して溶解させた後、このキトサンの水溶液に塩濃度として2〜12質量%になるように酢酸銅(II)を投入することを特徴とするものである。
本発明はこのように、強酸性を呈する塩化物、硫酸塩あるいは硝酸塩などを使用することなく、これらの代わりに、弱酸性で、しかも金属腐食性が極めて低い酢酸と銅との塩である酢酸銅(II)をキトサンと反応させることによって、キトサンの銅金属錯塩を得るようにしたものであり、このように生成されたキトサンの銅錯塩の内部には強酸性を示すイオン基が全く存在しない。このため、このキトサンの銅錯塩を主体とする有害生物防除剤で防除処理するにあたって、鉄などの金属が長期間接触しても腐食させることがないものであり、また天然繊維やセルロース誘導繊維などを構成する単繊維を切断するおそれもないものである。しかも、弱酸性であることから、強アルカリによる中和を必要としないものであり、あるいは仮に強アルカリにより中和処理を行なったとしても、塩化ナトリウムのような強い電解質を示す塩類は生成されることがなく、イオン交換反応による金属製容器の腐食や穿孔、塩類による錆の発生のおそれはないものである。また、キトサンと酢酸銅(II)を反応させることによって発生する酢酸は、キトサンの銅錯塩の希釈溶媒となるものであり、少ない量の酢酸を添加するだけで、中和はもちろん、ろ別、水洗などの工程を経ることなく経済的に濃厚な有害生物防除剤を得ることができるものである。
ここで、一般に、強酸性を有する銅の金属塩、特に塩化物を使用してキトサンの金属錯塩を調製した場合には、加水分解によって低分子化されたキトサンの銅錯塩が、中でも分子量が5以下程度のオリゴ塩が大量に含有するものであり(例えば、キチン・キトサン研究会編、「最後のバイオマス キチン・キトサン」p38参照)、このようなオリゴ塩は水に溶解し易く(例えば、フードケミカル1988−2、内田 泰、「キチン・キトサンの抗菌性」p22−29参照)、繊維質への固着性に欠けることが容易に想像されるものであり、結果として強酸性を有する銅の金属塩を用いて得たキトサンの銅錯塩で処理しても、効果の持続性に乏しいことが明らかである。これに対して、本発明のように、弱酸性を示す銅の酢酸塩を使用することにより、水溶性を呈するような低分子オリゴ塩を生成するおそれがないものであり、繊維質に強固に固着し、しかも単繊維を加水分解により低分子化させることもないキトサンの銅錯塩を得ることができるものである。
このようにキトサンを予め酢酸に溶解しておき、これに酢酸銅を反応させることで、反応効率を高めて、短時間でキトサンの銅錯塩の濃厚液を得ることができるものである。
本発明に係る有害生物防除剤の製造方法の第2の態様は、酢酸銅(II)を溶解した水溶液にキトサンを投入し、キトサンに酢酸銅(II)を反応させた後、さらに酢酸を投入して反応生成物を溶解させることを特徴とするものである。
本発明に係る有害生物防除剤の製造方法により得られる有害生物防除剤は、酢酸銅をキトサンと反応させて得られる、キトサンと銅の結合物である銅錯塩を主体とするものであり、このキトサンの銅錯塩の内部には強酸性を示すイオン基が全く存在しないため、有害生物防除剤で防除処理するにあたって、鉄などの金属が接触しても腐食させるようなことがなく、また天然繊維やセルロース誘導繊維などを構成する単繊維を切断するおそれもないものである。しかも、酢酸銅は弱酸性であることから強酸性を示すイオンが存在しないものであり、強アルカリによる中和を必要とせず、仮に強アルカリにより中和処理を行なったとしても、塩化ナトリウムのような強い電解質を示す塩類は生成されることがないものであって、イオン交換反応による金属製容器の腐食や穿孔、塩類による錆の発生のおそれはないものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に用いられるキトサンは、カニ、エビ等の甲殻類、昆虫などの節足動物、あるいは微生物による発酵など、自然界あるいは人工的に豊富に得られる天然多糖類のキチンを脱アセチル化することにより得られるものである。本発明においてキトサンは、脱アセチル化度70〜90、分子量10000以上のものであれば特に制限なく使用することができるが、脱アセチル化度80〜90、分子量500000以下のものが望ましく、さらに分子量については10000以上、200000以下のものが望ましい。本発明では、従来に比べて、より安価な高分子量キトサンも使用することができるものである。
このキトサンと金属錯塩を形成する金属として、本発明では、自然界にごく普通に存在し、しかも有害生物の防除効果が極めて優れており、この防除性能が世界的にも実証されている銅を選んで用いるものである。
そして本発明は、生成されるキトサンの銅錯塩内に強酸のイオン基を残存させないため、また強アルカリにより中和処理を行う必要をなくすため、さらに仮に水酸化ナトリウムなどで中和処理を行なったとしても、水溶液中に塩化ナトリウムのような強電解性の中性塩を形成させないため、キトサンと反応させる銅塩として、酢酸銅(II)を使用するものである。
しかして、キトサンの銅錯塩を調製するにあたっては、酢酸銅(II)を溶解した水溶液にキトサンを投入し、キトサンに酢酸銅を反応させた後、さらに酢酸を投入して反応生成物を溶解させることによって、キトサンと銅の結合物として、キトサンの銅錯塩の濃厚液を得ることができるものである。
また、まず水に酢酸を溶解して酢酸水溶液を調製し、この酢酸水溶液にキトサンを投入して溶解させた後、このキトサンの水溶液に酢酸銅(II)を投入することによって、同様にキトサンと銅の結合物として、キトサンの銅錯塩の濃厚液を得ることができるものである。このとき、酢酸水溶液は、45〜60℃の温水に2〜15質量%濃度になるように酢酸を溶解して調製するのがよい。また酢酸水溶液へのキトサンの投入量は2〜8質量%程度が好ましく、45〜60℃を保ちながらキトサンを完全に溶解するのが好ましい。さらに酢酸銅は水和物であってもよく、キトサンの水溶液に塩濃度として2〜12質量%になるよう投入するのが好ましく、45〜60℃を保ちながら反応させることで、キトサンの銅錯塩の濃厚液を得ることができる。キトサンと酢酸銅の反応に要する時間は2〜6時間程度であり、3〜5時間であるならなお望ましい。
上記のいずれの方法でも、良好なキトサンの銅錯塩の濃厚液を得ることができる。しかも銅塩として酢酸銅を使用することで、キトサンと酢酸銅を反応させると酢酸が生成され、この酢酸にキトサンの銅錯塩を溶解することができるため、従来に比べ5〜15質量%相当量の酢酸の使用を削減できるものである。特に後者の方法のように、予めキトサンを酢酸に溶解しておき、これに酢酸銅を反応させるようにすると、使用する酢酸の量をより一層削減することができるものである。
上記のようにして得られるキトサンの銅錯塩において、キトサンに対する銅金属イオンの結合様式は次のとおりである。キトサン単位構造のCに結合しているアミノ基(−NH)に銅金属イオンがキレート結合するが、平均してキトサン単分子2〜6個に銅金属イオン1個の比率でランダムに配位している。
そして上記のようにして得たキトサンの銅錯塩の濃厚液は任意の割合で水により容易に希釈することができるものであり、目的とする有害生物に応じた割合で希釈することによって、有害生物防除剤として使用するができるものである。
トサンの銅錯塩からなる有害生物防除剤を、木材、合板、パーティクルボードなどの木質材料に使用する場合には、加圧注入処理、浸漬処理あるいは塗布や吹き付け処理することができる。また、毛織物、絹などの天然動物繊維、紙、綿糸、ジュート麻、トウモロコシ、ケナフなどの天然植物繊維、レーヨンなどのセルロース誘導繊維などに対しては、含浸により処理することができる。この場合、キトサンの銅錯塩の希釈液からなる有害生物防除剤中には、単繊維に悪影響を及ぼす、強酸性を示す酸性イオンを有することはないが、有害生物防除剤で処理して、過剰の薬液を絞り取った後、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムに代表される弱アルカリ性を呈する塩類の水希釈液で処理することによって、さらに繊維への固着性を強化することができ、水洗や、水分の暴露を受けても、より一層耐溶出性が向上するものである。また、有害生物防除剤で天然繊維やセルロース誘導繊維等を処理した後、アンモニアガスが充満する環境下に30〜60分程度放置し、さらに天然繊維やセルロース誘導繊維等に吸着されたアンモニアガスを揮発させるようにしても、同様な効果が得られる。
ここで、本発明により得られる有害生物防除剤の防除対象となる有害生物としては、陸上では各種シロアリ類やヒラタキクイムシ類、シバンムシ類、キクイムシ類などの木材害虫、ヤスデ類、ナメクジ類、ダンゴムシ類、ムカデ類などの不快害虫、ヨトウガ類、コガネムシ類、カミキリムシ類、タマムシ類の幼虫などの農業害虫、木材腐朽菌や軟腐朽菌などの木材害菌が、また海域ではフナクイムシ類やキクイムシ類などの木材食害生物、フジツボ類、カキ類、各種海藻などの付着性生物が、挙げられる。勿論これらに限られるものではない。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
容量2リットルのガラス製ビーカーに水道水を803.23g採り、ウォ―ターバスにて加温して50〜55℃に達したところに、酢酸(和光純薬工業株式会社製、試薬1級、純度99%)80gを投入し、溶解させた。
次に、この酢酸水溶液に、50gのキトサン(甲陽ケミカル(株)製「キトサンSK−10」:脱アセチル化度86.9、平均分子量約50000、灰分0.27質量%、フレーク状)を投入し、温度を保ちながら完全に溶解させた。
溶解したことを確認した後、最後に66.77gの酢酸銅(II)・1水和物(和光純薬工業(株)製、試薬1級、純度98%、計算上の銅含有量20.81g)を加え、3時間反応させることによって、1000gのキトサンの銅錯塩の濃厚液を得た。
(実施例2)
容量2リットルのガラス製ビーカーに水道水を803.23g採り、ウォ―ターバスにて加温して50〜55℃に達したところに、酢酸(和光純薬工業株式会社製、試薬1級、純度99%)80gを投入し、溶解させた。
次に、この酢酸水溶液に、50gのキトサン(甲陽ケミカル(株)製「キトサンSK−10」:脱アセチル化度86.9、平均分子量約50000、灰分0.27質量%、フレーク状)を投入し、温度を保ちながら完全に溶解させた。
溶解したことを確認した後、最後に61.61gの酢酸銅(II)(日本化学産業(株)製、純度96.5%、計算上の銅含有量20.81g)を加え、3時間反応させることによって、1000gのキトサンの銅錯塩の濃厚液を得た。
(実施例3)
容量2リットルのガラス製ビーカーに水道水を783.23g採り、ウォ―ターバスにて加温して50〜55℃に達したところに、攪拌しながら酢酸銅(II)・1水和物(和光純薬工業(株)製、試薬1級、純度98%、計算上の銅含有量20.81g)66.77gを投入し、完全に溶解した。
そのまま攪拌しながらこの酢酸銅水溶液に、キトサン(甲陽ケミカル(株)製「キトサンSK−10」:脱アセチル化度86.9、平均分子量約50000、灰分0.27質量%、フレーク状)50gを数回に分けて投入し、3時間反応させた。反応終了後、50gずつ2回に分けて計100gの酢酸(和光純薬工業(株)製、試薬1級、純度99%)を加えて、完全に溶解させることで、1000gのキトサンの銅錯塩の濃厚液を得た。
(比較例1)
容量1リットルのガラス製ビーカーに水道水を700g採り、ウォ―ターバスにて加温して50〜55℃に達したところに、攪拌しながら塩化第二銅(和光純薬工業(株)製、試薬1級、無水、純度95%、計算上の銅含有量20.81g)46.31gを投入し、完全に溶解した。
そのまま攪拌しながらキトサン(甲陽ケミカル(株)製「キトサンSK−10」:脱アセチル化度86.9、平均分子量約50000、灰分0.27質量%、フレーク状)50gを数回に分けて投入し、3時間反応させた。
反応終了後、攪拌をさらに続けながら48質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.0±0.2に調整し、中和を行なった。これを3時間静置し、上澄みをデカンテーションで排出した。さらに300ミリリットルの水道水を加え、30分攪拌した後、1時間静置して同様に上澄みをデカンテーションにて排出した。この操作を合計3回繰り返し、洗浄を行なった。
次に、50〜55℃に調整されたウォ―ターバス内にて加温しながら、酢酸(関東化学(株)製、試薬1級、純度99.5%)を170g投入して30分間攪拌した。さらに全体の重量が1000gになるまで水道水を加え、さらに攪拌を続けてキトサンの銅錯塩を完全に溶解させることで、キトサン銅錯塩濃厚液を得た。
上記の実施例1〜3及び比較例1で得たキトサン銅錯塩の濃厚液の一部を採り、原子吸光分析法((株)島津製作所製「AA−6500S」、吸光度324.8nm)にて、含有する銅量を測定した。
また、実施例1〜3及び比較例1で得たキトサン銅錯塩の濃厚液を、予め正確に秤量した200ミリリットルのビーカーに約20gずつ採り、正確に秤量することで正確な重量を求めた後、60℃に調整されたウォーターバスにて、水分を完全に揮散させた。さらに40℃に調整された循環式オーブン内で48時間以上加熱して乾燥させ、恒量になるまでビーカーごと質量を測定した。そして乾燥前と後の質量測定値より、各実施例のキトサンの銅錯塩の濃厚液中のキトサン銅錯塩の含有率を求めた。
キトサン銅錯塩含有率及び銅含有量の測定結果、キトサン銅錯塩含有率と銅含有量から算出した銅含有率を、表1に示す。
Figure 0005513863
表1にみられるように、実施例1〜3のものは、比較例1(特許文献3に相当する)のものに比べ、いずれも高い銅含有率を有するキトサンの銅錯塩の濃厚液が得られることが確認される。比較例1では、実施例1〜3に比べて高い収率でキトサンの銅錯塩を含む濃厚液が得られるものの、銅含有量が各実施例より低い。これは、キトサンに銅イオンだけでなく塩素イオンも同様に吸着されているため、生成されたキトサンの銅錯塩量は多いものの、塩化銅(II)を使用することで、かなりの低分子化が進み、数回にわたる中和、洗浄工程中に洗浄液と共にオリゴ化したものが放出されたことによるものと考えられる。このように比較例1のものでは重金属を含有する汚染水が発生することになり、また、塩素イオンが中和過程でも完全に除去しきれないことを示し、これによって天然あるいは天然誘導繊維を処理する際に悪影響を及ぼすおそれがある。
(実施例4)
実施例1により得られたキトサンの銅錯塩の濃厚液を、水道水にて正確に重量比で13倍に希釈して、キトサンの銅錯塩希釈液(銅含有量として0.225質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例2)
比較例1により得られたキトサンの銅錯塩の濃厚液を、水道水にて正確に重量比で8.7倍に希釈して、キトサンの銅錯塩希釈液(銅含有量として0.228質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例3)
容量1リットルのガラス製ビーカーに水道水1000gを採り、塩化第二銅(和光純薬工業(株)製、試薬1級、無水、純度95%、計算上の銅含有量20.81g)を46.31g投入し、攪拌しながら常温で完全に溶解した。次にこの水溶液を50〜55℃に加熱し、攪拌しながらキトサン(甲陽ケミカル(株)社製「キトサンSK−10」:脱アセチル化度86.9、平均分子量約50000、灰分0.27質量%、フレーク状)50gを数回に分けて投入して、4時間反応させた。反応終了後、日本薬局方ガーゼ(タイプ1)を2枚重ねにしたものを用いて、生成したキトサンの銅錯塩をろ別し、水道水で十分洗浄した。
得られたキトサンの銅錯塩を60〜65℃に調整された循環式乾燥機にて約48時間乾燥させることで、銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを得た。これを、水道水93質量部に酢酸4質量部混合して調製した酢酸水溶液中に3質量部を投入し、完全に溶解することで、3質量%のキトサンの銅錯塩溶液(銅含有量として0.228%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例4及び比較例2〜3で得た有害生物防除剤をそれぞれ150ミリリットルずつ、500ミリリットルのガラス製ビーカーに採った。一方、幅2cm、長さ5cm、厚さ2mmステンレス(SUS304)板、鉄丸釘(頭部径6.6mm、胴部径2.75mm、長さ50mm、JIS A 5508)を、予め60℃に調整された循環式のオーブンに48時間放置した後、これらの質量を測定した。次に、このステンレス板および鉄丸釘をビーカーの有害生物防除剤中に浸漬した。そして40℃で30日間放置した後、ステンレス板および釘表面の錆発生状況を観察した。
また、上記の浸漬処理したステンレス板および鉄丸釘をそれぞれ10質量%濃度のシュウ酸液に浸漬し、80℃で3時間加熱した。さらに、ステンレス板や鉄丸釘に生じた表面の錆を流水中で除去した後、60℃に調整された循環式のオーブンに48時間放置し、錆除去後の質量を測定した。そして上記の浸漬処理前と後の質量差より、錆の発生率を求めた。
ステンレス板と鉄丸釘の外観状況の変化と、錆発生率の結果を表2に示す。
Figure 0005513863
表2にみられるように、酢酸銅を用いて調製したキトサンの銅錯塩を用いた実施例4では、錆の発生が殆ど見られないのに対して、比較例2では、ステンレス板、鉄丸釘ともに錆が発生するものであった。この比較例2は、中和過程において発生した塩化ナトリウムが、洗浄において十分に除去しきれなかったことに加え、キトサンの銅錯塩内に残存した塩化銅に起因する塩素イオンにより、錆が発生したものと考えられる。また特許文献1に相当する比較例3においても、キトサンの銅錯塩内に残存した塩化銅に起因する塩素イオンにより、同様に錆が発生するものであった。
(実施例5)
実施例2と同様にして、キトサンの銅錯塩の濃厚液を300kg作製し、これを水で10倍に希釈することによって、3000kgの有害生物防除剤を得た。
(比較例4)
比較例1と同様にしてキトサンの銅錯塩の濃厚液を450kg作製し、これを水で6.7倍に希釈することによって、3015kgの有害生物防除剤を得た。
上記の実施例5、比較例で得た有害生物防除剤を、貯液タンク(素材ステンレスSUS303、内径0.8m、高さ5m、容量10トン)に、それぞれ個別に貯蔵し、内部の有害生物防除剤の状況ならびに貯液タンクの概観を観察した。結果を表3に示す。
Figure 0005513863
表3のように、実施例5では一切の変化が起こらず、有害生物防除剤の保管性に問題は生じなかった。これに対して比較例4では、水酸化ナトリウムにより中和処理することによってキトサンの銅錯塩を調製しているが、中和の際に生成された塩化ナトリウムが十分に除去しきれておらず、しかもキトサンの銅錯塩内に塩素イオンが残存するので、貯液タンクの溶接部の鉄イオンが腐食、あるいはイオン交換を起こし、腐食が進むものであった。
(実施例6)
実施例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で10倍に希釈して、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.723質量%、銅含有量として0.293質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例5)
比較例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で6.7倍に希釈して、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として1.24質量%、銅含有量として0.296質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例6)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が4.0質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.304質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例6、比較例5〜6で得た有害生物防除剤を用いて、木口20×20mm、長さ10mmに調製されたスギ辺材の試験片に減圧注入処理を行なった。
すなわち、容量1リットルのガラス製ビーカーに有害生物防除剤を500ミリリットル入れ、各ビーカーに試験片10個を浮き上がらないようにプラスティック製ネットで押えながら入れて、これを容量5リットルの口付き真空デシケータ内に設置した。口部分には三方コックを取り付け、一方を真空ポンプに接続した後、真空ポンプを稼動させ、120分間、−53kPaの減圧度を維持した。終了後、常圧に戻し、60分間放置した後、試験片をビーカーから取り出した。そして直ちに試験片の質量を測定し、この処理を行なう前に測定した試験片の質量と、処理後の質量の差より、有害生物防除剤の薬剤注入量を求めた。
次に、このように有害生物防除剤で処理した試験片を室内で3週間風乾した後、JIS K 1571(2004)に準拠して耐候操作を行なった。すなわち容量500ミリリットルのガラス製ビーカーに試験片10個を入れ、浮き上がらないようにプラスティック製ネットで固定した上から400ミリリットルの蒸留水を投入した。次にマグネチックスターラを用いて温度25±3℃で毎分400〜450回転で8時間回転させ、試験片中の有害生物防除剤の溶脱を行なった。この後直ちに試験片を取り出し60±2℃の循環式オーブンで揮散操作を行なった。ビーカー内の溶脱水の一部を採り、原子吸光分析法により溶脱した銅金属の量を測定した。
次に、この採取した量と同量の新しい蒸留水をビーカーに追加し、同様な操作と分析を2回目として行なった。
さらに同様な操作と分析を3回目として行なった。結果を表4に示す。
Figure 0005513863
表4にみられるように、実施例6の有害生物防除剤は、比較例5,6よりも銅溶脱率が低く、木材に強固に固着しているものであった。
(実施例7)
実施例2により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で10倍に希釈して、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.729質量%、銅含有量として0.284質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例7)
比較例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で7倍に希釈して、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として1.183質量%、銅含有量として0.283質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例8)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が3.7質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.282質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例7、比較例7〜8で得た有害生物防除剤を用いて、木口10.5×10.5cm、長さ200cm調製されたスギ、ベイツガおよびベイマツ角材の各樹種の試験片に加圧注入処理を行なった。
すなわち、耐圧構造を有するステンレス製のシリンダーに予め質量を測定した各樹種の試験片を5個ずつ入れ、密閉した後、−85kPaの減圧度で30分間の前排気を行ない、次に有害生物防除剤を投入しながら除々に常圧に戻し、有害生物防除剤がシリンダー内に充満して内圧が常圧に戻りしだい、1.3MPaの圧力で180分間加圧し、最後に−85kPaの減圧度で30分間の後排気を行なった。そして直ちに各試験片をシリンダーから取り出し、質量を測定した。処理を行なう前の質量と処理後の質量の差より、有害生物防除剤の薬剤注入量を求めた。
また、上記の処理を終えた試験片を雨水の当たらない風通しの良い屋外にて3週間風乾した。そして風乾後、長さ方向の中央部分より厚さ1cmの切片(木口10.5×10.5cm、長さ(厚さ)1cm)を切り取った。この切片の表面に、1,5−ジフェニルチオカルバゾン(和光純薬工業(株)製、試薬特級)0.1gをクロロホルム(和光純薬工業(株)製、試薬特級)100ミリリットルに溶解させた発色液を噴霧し、側面から1cm部分における薬剤の浸潤度を測定すると共に、その部分における銅金属の含有量(吸収量)を原子吸光分析法により測定した。結果を表5に示す。
なお、薬剤注入量、薬剤浸潤度ならびに銅金属吸収量は次式により求めた。
薬剤注入量(kg/m
=[処理後の試験片質量(kg)−処理前の試験片質量(kg)]÷木材の体積(m
薬剤浸潤度(%)
=[試験片切片側面からの薬剤浸透長さ(mm)÷10(mm)]×100
金属吸収量(kg/m
=分析に供した試験片切片に含有する銅含有量(kg)÷分析に供した試験切片の体積(m
Figure 0005513863
表5にみられるように、実施例7の有害生物防除剤で処理した木材では、特許文献3に係る比較例7と比べ、平均薬剤注入量、平均薬剤浸潤度、平均銅金属吸収量において、全て同等以上の性能を示した。また、特許文献1に係る比較例8は、比較例7より優れた性能を示した。これは、木材への浸透性の高い低分子化されたキトサン銅錯塩が存在することによるものと推察される。すなわち、従来の高分子キトサン銅錯塩では木材中での浸透性に限界があるが、低分子化されることによりこれが改善されるためと考えられる。
(実施例8)
実施例2により得られたキトサンの銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で20倍に希釈して、キトサンの銅錯塩希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.365質量%、銅含有量として0.142質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例9)
比較例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で14倍に希釈して、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.591質量%、銅含有量として0.141質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例10)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が1.9質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.145質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例8、比較例9〜10で得た有害生物防除剤を用いて、木口20×20mm、長さ10mmに調製されたスギ辺材の試験片に減圧注入処理を行なった。
すなわち、容量1リットルのガラス製ビーカーに有害生物防除剤を500ミリリットル入れ、ビーカーに試験片18個を浮き上がらないようにプラスティック製ネットで押えながら入れて、これを容量5リットルの口付き真空デシケータ内に設置した。口部分には三方コックを取り付け、一方を真空ポンプに接続した後、真空ポンプを稼動させ、120分間、−53kPaの減圧度を維持した。終了後、常圧に戻し、60分間放置した後、試験片をビーカーから取り出した。そして直ちに試験片の質量を測定し、この処理を行なう前に測定した試験片の質量と、処理後の質量の差より、有害生物防除剤の薬剤吸収量を求めた。
次に、このように有害生物防除剤で処理した試験片を室内で3週間風乾した後、JIS K 1571(2004)に準拠して、防腐効力試験を行なった。有害生物防除剤で処理しない試験片についても同様に防腐効力試験を行なった。結果を表6に示す。
Figure 0005513863
表6にみられるように、実施例8の有害生物防除剤で処理した試験片は質量減少率が小さく、比較例9や比較例10と同等以上に、優れた防腐効力を示すものであった。
(実施例9)
実施例2により得られたキトサンの銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で16.5倍に希釈し、キトサン銅錯塩希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.441質量%、銅含有量として0.172質量%)を得た。
(比較例11)
比較例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で11倍に希釈して、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.753質量%、銅含有量として0.180質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例12)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が2.3質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.175質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例9、比較例11〜12で得た有害生物防除剤を用いて、木口10×10mm、長さ20mmに調製されたアカマツ辺材の試験片に減圧注入処理を行なった。
すなわち、容量1リットルのガラス製ビーカーに有害生物防除剤を500ミリリットル入れ、ビーカーに試験片10個を浮き上がらないようにプラスティック製ネットで押えながら入れて、これを容量5リットルの口付き真空デシケータ内に設置した。口部分には三方コックを取り付け、一方を真空ポンプに接続した後、真空ポンプを稼動させ、120分間、−53kPaの減圧度を維持した。終了後、常圧に戻し、60分間放置した後、試験片をビーカーから取り出した。そして直ちに試験片の質量を測定し、この処理を行なう前に測定した試験片の質量と、処理後の質量の差より、有害生物防除剤の薬剤吸収量を求めた。
次に、このように有害生物防除剤で処理した試験片を室内で3週間風乾した後、JIS K 1571(2004)に準拠して、防腐効力試験を行なった。有害生物防除剤で処理しない試験片についても同様に防腐効力試験を行なった。結果を表7に示す。
Figure 0005513863
表7にみられるように、実施例9の有害生物防除剤で処理した試験片は質量減少率が小さく、比較例11や比較例12と同等以上に、優れた防腐効力を示すものであった。
(実施例10)
実施例2により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で8.8倍に希釈し、キトサンの銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.941質量%、銅含有量として0.225質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例13)
比較例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で11倍に希釈して、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.753質量%、銅含有量として0.180質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例14)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が3.0質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.228質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例10、比較例13〜14で得た有害生物防除剤を用いて、先端を尖らせた木口3×3cm、長さ35cmに調製したクロマツ辺材の試験片に加圧注入処理を行なった。
すなわち、耐圧構造を有するステンレス製のシリンダーに予め質量を測定した試験片を5本ずつ入れ、密閉した後、−85kPaの減圧度で30分間の前排気を行ない、次に有害生物防除剤を投入しながら除々に常圧に戻し、有害生物防除剤がシリンダー内に充満して内圧が常圧に戻りしだい、1.3MPaの圧力で180分間加圧し、最後に−85kPaの減圧度で30分間の後排気を行なった。そして直ちに各試験片をシリンダーから取り出し、質量を測定した。この処理を行なう前の試験片の質量と処理後の質量の差より、有害生物防除剤の薬剤注入量を求めた。
次に、このように有害生物防除剤で処理した試験片を雨水のあたらない、風通しの良い屋外で3週間風乾した後、JIS K 1571(2004)に準拠して、防蟻効力試験を行なった。結果を表9に示す。
なお、蟻害指数は次の式により求めた。
蟻害指数(四捨五入により整数で表示する)=平均食害度×被害発生率
(平均食害度=処理試験片の食害度の合計÷処理試験片数、被害発生率=被害の発生した処理試験片の数÷処理試験片の数)
また食害度は[表8]により求めた。
Figure 0005513863
Figure 0005513863
表9にみられるように、実施例10の有害生物防除剤は、比較例13や比較例14と同等以上に、優れた防蟻効力を示すものであった。
(実施例11)
実施例2により得られたキトサンの銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で12.5倍に希釈し、キトサンの銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.583質量%、銅含有量として0.227質量%)を得た。
(比較例15)
比較例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で8.8倍に希釈して、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.941質量%、銅含有量として0.225質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例16)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が3.0質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.228質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例11、比較例15〜16で得た有害生物防除剤を用いて、木口3×3cm、長さ30cmに調製したスギ辺材とアカマツ辺材の各6本の試験片に加圧注入処理を行なった。
すなわち、耐圧構造を有するステンレス製のシリンダーに予め質量を測定した試験片を10本ずつ入れ、密閉した後、−93kPaの減圧度で30分間の前排気を行ない、次に有害生物防除剤を投入しながら除々に常圧に戻し、有害生物防除剤がシリンダー内に充満して内圧が常圧に戻りしだい、1.4MPaの圧力で180分間加圧し、最後に−93kPaの減圧度で30分間の後排気を行なった。そして直ちに各試験片をシリンダーから取り出し、質量を測定した。この処理を行なう前の試験片の質量と処理後の質量の差より、有害生物防除剤の薬剤注入量を求めた。
次に、このように有害生物防除剤で処理した試験片を雨水のあたらない、風通しの良い屋外で2週間風乾した。そしてこの乾燥した試験片を、ステンレス製のかごに各試験片が接触しないように水平に並べ、浮き上がらないように上からステンレス製の網をかぶせてさらに重しを載せた状態で、鳥取県東伯郡周辺の海中に水面から50cmの箇所に75日間浸漬した。この試験を終了した後、各試験片のフナクイムシによる食害状況を観察した。また有害生物防除剤で処理しない試験片についても同様に食害試験を行なった。結果を表10に示す。
Figure 0005513863
表10にみられるように、実施例11の有害生物防除剤は、比較例15や比較例16と同等以上に、フナクイムシに対する優れた食害抑制効果を示すものであった。
(実施例12)
実施例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で13倍に希釈して、キトサンの銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.556質量%、銅含有量として0.225質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例17)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が3.0質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.228質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例12、比較例17で得た有害生物防除剤中に、ジュート麻織物(8号キャンパス、単糸数28〜30本)を10分間浸漬し、この後、直ちにロール式絞り機にて十分に絞って余分な有害生物防除剤を取り除いた後、5×5cm、10×10cm、10×30cmの3種類の大きさに裁断した。
一方、6号植木鉢に予め10cmの高さまで成長させた白菜の苗を移植したものを準備した。そして5×5cmに裁断したジュート麻織物は、植木鉢内の土壌表面に敷き詰め、その上に約1cmの厚さで土をかけた。また、10×10cmに裁断したジュート麻織物は、植木鉢の下に敷きこんだ。さらに10×30cmに裁断したジュート麻織物は、植木鉢の周囲に巻きつけた。この各植木鉢を屋外にて1ヶ月放置した後、白菜のナメクジによる食害の有無を観察した。また有害生物防除剤で処理しないジュート麻織物についても同様に食害試験を行なった。結果を表11に示す。
Figure 0005513863
表11にみられるように、実施例12の有害生物防除剤は、比較例17と同等に、ナメクジに対する優れた忌避効果と食害抑制効果を示すものであった。
(実施例13)
実施例1により得られたキトサン銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で13倍に希釈し、キトサンの銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.556質量%、銅含有量として0.225質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例18)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が3.0質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.228質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例13、比較例18で得た有害生物防除剤中に、幅62cm、長さ62cmのジュート麻織物(8号キャンパス、単糸数28〜30本)を10分間浸漬し、この後、直ちにロール式絞り機にて十分に絞って余分な有害生物防除剤を取り除いた後、十分乾燥させた。これを2つ折りにし、2辺を縫い合わせることで幅30cm、長さ60cmの袋を作製した。この袋の中に、クローバーの種10gを混ぜ込んだ園芸用培養土(コーナン商事製)4リットルを詰め、口をステンレス製の針金(直径1mmにてしっかり結んだ。そしてこれを、鳥取県鳥取市河原の山林内に、6ヶ月間放置した。観察結果を表12に示す。
Figure 0005513863
表12にみられるように、実施例13の有害生物防除剤で処理したジュート麻袋は、腐朽に耐え、しかもクローバーの成長を促進することが認められるまた、その効力は、比較例18と同等以上に優れたものであった。
(実施例14)
実施例1により得られたキトサンの銅錯塩の濃厚液を、水にて重量比で13倍に希釈し、キトサンの銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.556質量%、銅含有量として0.225質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
(比較例19)
比較例3で調製した銅含有率7.61質量%のキトサン銅錯塩フレークを用い、これをキトサン銅錯塩が3.0質量%になるように、酢酸4質量%を含む水道水に溶解し(銅含有量0.228質量%)、有害生物防除剤を得た。
上記の実施例14、比較例19で得た有害生物防除剤中に、縦10cm、横10cmの寸法に裁断したジュート麻(8号キャンパス、単糸数28〜30本)及びインド綿(単糸数24〜25本)の各織物を10分間浸漬し、十分絞って余分な溶液を取り除いた後、室内で48時間以上風乾した。そしてこの処理を施したジュート麻とインド綿の各織物の引張り強度を測定した。
また実施例14の有害生物防除剤中に上記と同様なジュート麻及びインド綿の各織物を10分間浸漬し、十分絞って余分な溶液を取り除いた後、室内で3時間軽く乾燥した。次いで、このジュート麻及びインド綿の各織物を炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製、試薬1級、純度99.5〜100.3%)の10質量%水溶液に60分間浸漬し、アルカリで中和処理した後、余分な液を搾り取って、室内で48時間以上風乾した。そしてこの処理を施したジュート麻とインド綿の各織物についても、同様に引張り強度を測定した。結果を表13に示す。
Figure 0005513863
表13にみられるように、塩化銅を用い、しかも中和処理を行なわないで調製したキトサン銅錯塩からなる比較例19のものは、ジュート麻やインド綿に著しい強度低下を引き起こすものであった。これに対して、酢酸銅を用いて調製したキトサン銅錯塩からなる実施例14の有害生物防除剤は、ジュート麻やインド綿に強度的な低下をほとんど起こすことがないものであった。このため、特にアルカリ処理を施すような必要なく、実用に供せることが判明した。
(実施例15)
実施例2により得られたキトサンの銅錯塩の濃厚液を、水にて質量比で12.5倍に希釈し、キトサン銅錯塩の希釈液(キトサンの銅錯塩量として0.583質量%、銅含有量として0.227質量%)を調製し、有害生物防除剤を得た。
この実施例15で得た有害生物防除剤を用いて、直径10cm、長さ100cmに調製されたスギ丸太の試験片6本に加圧注入処理を行なった。
すなわち、耐圧構造を有するステンレス製のシリンダーに予め質量を測定した試験片を入れ、密閉した後、−93kPaの減圧度で30分間の前排気を行ない、次に有害生物防除剤を投入しながら除々に常圧に戻し、有害生物防除剤がシリンダー内に充満して内圧が常圧に戻りしだい、1.4MPaの圧力で180分間加圧し、最後に−93kPaの減圧度で30分間の後排気を行なった。そして直ちに試験片をシリンダーから取り出し、質量を測定した。そしてこの処理を行なう前の試験片の質量と処理後の質量の差より、有害生物防除剤の薬剤注入量を求めた。
この処理を終了した試験片を、雨水のあたらない風通しの良い屋外にて2週間風乾した。そして試験片に完全に海中に沈むように下部に重石を付け、さらに上部に流失防止用にひもを付けて、これを鳥取県東伯郡周辺の海中に60日間浸漬した。この海中への浸漬試験を終了した後、試験片の表面のフジツボならびに海藻類の付着状況を観察した。また、無処理のスギ丸太についても、同様に浸漬試験した。結果を表14に示す。
Figure 0005513863
表14にみられるように、実施例15の有害生物防除剤は、フジツボや海草の付着に対する優れた防除効果を有することが確認された。

Claims (2)

  1. 水に2〜15質量%濃度になるように酢酸を溶解して酢酸水溶液を調製し、この酢酸水溶液に2〜8質量%濃度になるようにキトサンを投入して溶解させた後、このキトサンの水溶液に塩濃度として2〜12質量%になるように酢酸銅(II)を投入することを特徴とする有害生物防除剤の製造方法
  2. 酢酸銅(II)を溶解した水溶液にキトサンを投入し、キトサンに酢酸銅(II)を反応させた後、さらに酢酸を投入して反応生成物を溶解させることを特徴とする有害生物防除剤の製造方法
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