JP3830035B2 - 植物繊維保存剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然の植物繊維を主原料とする各種の繊維製品の防腐、防虫のために用いられる繊維固着型の水溶性植物繊維保存剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
キトサンと銅、亜鉛、銀から選ばれる金属との錯塩を主体とする木材保存剤は特許第2080251号(特公平7−118970号公報参照)として知られている。この特許発明は、一定分子量(500〜20000)及び脱アセチル化度(50〜90)を有するキトサンに、銅、亜鉛、銀の塩化物等の強酸塩を所定条件で反応させることによって得られるキトサンの金属錯塩を、固着型の木材保存剤として使用するようにしたものである。そしてこのようにして得られたキトサンの金属錯塩は、キトサンに金属単体ではなく、むしろ金属塩化物あるいは強酸塩がそのままの形で結合しており、従って化学的な性質上、高い酸性を呈している。しかもこの酸性を示すイオン基は非揮発性である。
【0003】
ここで、元来、植物繊維は酸性において繊維が切断され、本来の強度を維持することができず劣化するという問題を有している。木材自体もセルロース、ヘミセルロースと呼ばれる植物繊維体より構成されているので、酸によって劣化の影響を受けると予想されるが、木材は単繊維の膨大な集合体であり、しかも繊維間にはこれらを結合させるための非繊維物質であるポリフェノール物質のリグニンを有していることから、一部の繊維が切断されても他の部分やリグニンで強度が維持されるので、上記の特許発明のような酸性を有するキトサンの金属錯塩を用いて木材の保存処理を施しても、実用上大きな問題はない。
【0004】
しかし、ジュート麻、綿実、トウモロコシ、ケナフ等に代表される比較的細く、またリグニン比率の少ない植物繊維の場合、上記の特許発明のような酸性を有するキトサンの金属錯塩を用いて処理をすると、錯塩内に存在する塩素イオンあるいは強酸イオンが水分と作用し、塩酸あるいは塩化水素またはその他の酸が生成されて強い酸性を示すので、繊維が切断されて大きく劣化してしまうものであり、このような従来のキトサンの金属錯塩を用いて、植物繊維を材料とする繊維製品を保存処理すると、強度的品質を維持することができなくなる。
【0005】
一方、ジュート麻等の植物繊維の保存処理には、従来から、ナフテン酸銅等のナフテン酸金属塩を保存剤として用いることで、防腐、防虫等を行なうことが試みられている。しかし、このナフテン酸金属塩のような有機合成薬剤は、屋外で使用する場合には、薬剤の溶出による環境汚染の問題が生じ易く、特に使用目的を終了した後もそのまま放置される場合には薬剤が環境中にいつまでも残存することによる環境汚染が問題になるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようにナフテン酸金属塩等の有機合成薬剤を使用する場合には、使用期間中の薬剤溶脱や使用終了後の放置による環境汚染問題を引き起こすおそれがあるが、上記の特許発明のように、天然素材であるキトサンと、天然に普通に存在する銅、亜鉛、銀とを結合させたキトサンの金属錯塩は、使用期間中には植物繊維体に強固に固着しているために溶脱が少なく、また使用目的後に放置されたとしてもやがて生分解されると共に分解後にも有害な物質が残存しないので、この点において望ましい保存剤である。
【0007】
しかしながら、既述のように、キトサンの金属錯塩はその化合物内に含有される塩素イオン等の酸性を呈するイオンによって、水溶液にして使用する場合や、保存処理後に繊維が水分を吸収した場合に、酸性となり、植物繊維自体の物理的強度を著しく低下させるので、植物繊維用の保存剤としては実用に耐えないものであった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、環境汚染のおそれなく使用することができ、また植物繊維の強度を低下させることがない植物繊維保存剤を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る植物繊維保存剤は、キトサンと銅、亜鉛、銀から選ばれる金属の塩とを反応させて得られる酸性イオン基を含有するキトサンの金属錯塩を、アルカリ処理することにより酸性イオン基を中和して除去し、このキトサンの金属錯塩を揮発性の弱酸の存在下で水溶性にして成ることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
キトサンはカニ、エビ等の甲殻類や、昆虫などの節足動物、あるいは微生物による発酵など、自然界に豊富に存在し、あるい人工的に豊富に得られる天然多糖類のキチンを脱アセチル化することによって得られるものである。本発明においてキトサンは、脱アセチル化度70〜90、分子量2000以上のものであれば特に制限されることなく使用することができるが、脱アセチル化度75〜87、分子量20000〜100000のものが好ましく、特に分子量については30000〜50000のものがより好ましい。本発明においてキトサンは、既述の特許発明の木材保存剤として使用されるものと異なり、内部への浸透性よりも繊維表面での固着性が高いことが望ましいので、繊維との強靭な固着性をより高めることができるように金属イオンの含有量が多いものが望まれるものであり、このために脱アセチル化度の範囲がより高く、また大きな分子量のものが好ましいのである。
【0013】
また、キトサンと金属錯塩を形成する金属としては、自然界にごく普通に存在し、植物繊維に対する防腐や防虫の効果が極めて優れていると一般に認められている銅、亜鉛、銀を用いることができる。これらの銅、亜鉛、銀は1種類を単独で用いる他、2種類以上を併用することもできる。キトサンとこれらの金属との金属錯塩は、キトサンに金属塩を反応させることによって得ることができるものであり、金属塩としては通常、銅、亜鉛では塩化物あるいは硫酸塩、銀では硝酸塩を使用することができる。
【0014】
キトサンの金属錯塩を調製するにあたっては、例えば、金属塩を塩濃度として5〜15質量%になるように水に溶解させ、次にこれにほぼ同量のキトサンを添加して、45〜60℃に水温を保ちながら攪拌を続けて反応させることによって行なうことができる。この反応に要する時間は2〜4時間であるが、より望ましくは3〜4時間である。このようにして得られたキトサンの金属錯塩の金属濃度は5〜25質量%であるが、同時に5〜10質量%の塩素イオン、硫酸イオンあるいは硝酸イオンなどの酸性イオンを含有している。
【0015】
キトサンの金属錯塩に対するこれらの塩素イオン、硫酸イオンあるいは硝酸イオンの結合様式として提案されている一例を「化1」に示す。すなわち、キトサン単位構造のC2に結合しているアミノ基(−NH2)に金属イオンがキレート結合するが、キトサン単位分子4〜6個に対して金属イオン1個の比率でランダムに配位する。その際に、上記の金属塩において塩素イオン、硫酸イオンあるいは硝酸イオンは金属イオンにイオン結合しているので、金属イオンから殆ど離れることなく結合したまま、金属イオンを介してキトサンに結合した状態で存在する。「化1」においてMe+は銅、亜鉛、銀の金属イオン、X-は塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどの酸イオンである。
【0016】
【化1】
Figure 0003830035
【0017】
そしてこの状態でキトサンの金属錯塩に水を与えると、塩素イオン、硫酸イオンあるいは硝酸イオンが遊離し、これらの酸性イオンによって水溶液は酸性を呈することになるのである。キトサンの金属錯塩はこのように酸性を呈し、しかもこれら酸性を示すイオンはいずれも非揮発性であるので水が存在あるいは供給される度に酸性を示すので、キトサンの金属錯塩で植物繊維を処理すると、植物繊維は切断されることになる。
【0018】
そこで本発明では、上記のようにキトサンと銅、亜鉛、銀から選ばれる金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩である金属塩を反応させた後に、これにアルカリを添加して、キトサンに結合している酸性イオン基を中和して除去することによって、キトサンの金属錯塩が酸性を呈することによる問題を解決したものである。すなわち、アルカリとしては水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムなどに代表される強アルカリを用い、キトサンと金属塩との反応終了時点で、このアルカリを反応水溶液のpHが7.0〜8.0になるように、より好ましくはpHが7.0〜7.2になるまで攪拌を続けながら添加し、さらに1時間程度攪拌を続けた後、十分に水洗することによって、pHがこの範囲の弱アルカリを呈するキトサンの金属錯塩を得ることができるものである。このようにして得られたキトサンの金属錯塩は酸性を呈するイオンが存在しないので、水が与えられても酸性を示すことがないものである。
【0019】
上記のようにして得られた本発明に係る弱アルカリ性を呈するキトサンの金属錯塩は、有機酸あるいは無機酸を用いて容易に水溶性にすることができる。従って、有機酸あるいは無機酸の存在下でキトサンの金属錯塩を水に溶解した水溶液の状態で植物繊維保存剤として使用することができるものであり、例えばこの水溶液に植物繊維の繊維製品を浸漬したり、植物繊維の繊維製品にこの水溶液を散布したりして、植物繊維を保存剤で処理することができるものである。
【0020】
ただし、使用できる酸は酢酸等に代表される揮発性の弱酸に限られる。塩酸や硝酸のような無機強酸を使用すると、酸性イオンが再び金属イオンと結合してキトサンの金属錯塩が元の酸性塩に戻るおそれがある。またリン酸、シュウ酸、クエン酸などの非揮発性の有機酸を使用すると、植物繊維保存剤で処理した植物繊維に酸が残存し、乾燥過程あるいは使用期間中に水の供給があると、この残存した酸で植物繊維が切断されるおそれがある。酢酸等の揮発性の弱酸を用いる場合も植物繊維保存剤で処理する当初は酸性を示すが、植物繊維の切断が発生する前に速やかに揮散するために繊維内に残存することがなく、乾燥過程あるいは使用期間中に水の供給があっても、酸によって植物繊維が切断されるようなことはないものである。酢酸等の揮発性酸は、通常1.0〜5.0質量%濃度の水溶液、より好ましくは1.0〜3.0質量%濃度の水溶液、さらに好ましくは1.0〜2.0質量%濃度の水溶液として用いられるものであり、この揮発性酸の水溶液に弱アルカリ性を呈するキトサンの金属錯塩を溶解して植物繊維保存剤として使用することができるものである。この植物繊維保存剤において、弱アルカリ性を呈するキトサンの金属錯塩の濃度は、1.0〜5.0質量%の範囲に設定するのが望ましい。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0022】
(実施例1)
水道水1000gに塩化第二銅(純度95.5質量%)を50g投入し、攪拌しながら常温で完全に溶解した。次に、これを50〜55℃に加熱し、攪拌しながらキトサン(甲陽ケミカル(株)製「キトサンSK−10」、脱アセチル化度86.9、平均分子量50000)50gを数回に分けて投入し、4時間反応させた。反応終了後、攪拌をさらに続けながら、0.1N(0.1モル/L)に調整した水酸化ナトリウム水溶液を、反応溶液のpHが7.1になるまで少しずつ滴下した。そして最後に、日本薬局方ガーゼ(タイプ1)を2枚重ねにしたものを用いてろ別し、水道水で十分に洗浄することによって、弱アルカリ性を有するキトサンの銅錯塩を得た。
【0023】
このようにして得た弱アルカリ性を有するキトサンの銅錯塩を60〜65℃に調整された循環式乾燥機によって約48時間乾燥させ、これを3g、精製水95gに氷酢酸2gを溶解させたものに少しずつ投入して溶解させることによって、植物繊維保存剤を得た。
【0024】
(比較例1)
水酸化ナトリウム水溶液による処理を行なわない他は、実施例1と同様にして酸性を呈するキトサンの銅錯塩を調製し、これを実施例1と同様に乾燥すると共に氷酢酸の水溶液に溶解することによって、植物繊維保存剤を得た。
【0025】
上記の実施例1、比較例1で得た各植物繊維保存剤に、ジュート麻の織物(8号キャンパス/単糸数28〜30本)、インド綿の織物(単糸数24〜25本)を10分間浸漬し、十分に絞って余分な水溶液を取り除いた後、室内で48時間以上風乾することによって、植物繊維保存剤による処理を行なった。
【0026】
このように植物繊維保存剤による処理を行なった織物について、JIS L 1096(一般織物試験方法、6−12A法)に準拠して引張り強度を測定した。尚、比較のために、植物繊維保存剤による処理を行なっていない織物についても同様に引張り強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003830035
【0028】
表1にみられるように、脱酸イオンの処理を行なわなかった比較例1の植物繊維保存剤を用いた織物は、植物繊維保存剤による処理を行なっていない無処理のものに比較して引張り強度の低下がみられ、その強度低下の程度は33.8〜36.4%と大きく、実用に耐えるとされている10%の低下を大きく超えるものであった。一方、水酸化ナトリウムに代表されるアルカリで脱酸イオンの処理を行なった実施例1の植物繊維保存剤を用いた織物は、無処理のものに比較してむしろ引張り強度が増加する傾向がみられるものであり、実用上有利であることが分かった。
【0029】
(実施例2)
実施例1と同様にして弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩を調製し、さらに実施例1と同様に乾燥した。そしてこれを3g、精製水95.5gに氷酢酸1.5gを溶解させたものに少しずつ投入して溶解させることによって、植物繊維保存剤を得た。
【0030】
そしてこの実施例2で得た植物繊維保存剤に、ジュート麻の織物(6号キャンパス/単糸数26〜27本)を8分間浸漬し、十分に絞って余分な水溶液を取り除いた後、室内で48時間以上風乾することによって、植物繊維保存剤による処理を行なった。
【0031】
また、氷酢酸の代わりに、シュウ酸、クエン酸、塩酸を用い、これらの0.1Nの水溶液を調製し、この水溶液100gに実施例1で調製した弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩の乾燥物を3g溶解することによって、植物繊維保存剤を調製し、この植物繊維保存剤を用いて同様にジュート麻の織物の処理を行なった。(シュウ酸を用いたものを参考例1、クエン酸を用いたものを参考例2、塩酸を用いたものを参考例3とする)
このように実施例2及び参考例1〜3の植物繊維保存剤による処理を行なった織物について、上記と同様にして引張り強度を測定した。尚、比較のために、植物繊維保存剤による処理を行なっていない織物についても同様に引張り強度を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0003830035
【0033】
表2にみられるように、キトサンの金属錯塩を水に溶解するにあたって、揮発性弱酸である氷酢酸を用いた実施例1に比較して、シュウ酸、クエン酸、塩酸を用いた参考例1,2,3のものでは、上記の比較例1ほどの強度低下ではないものの、繊維の引張り強度がみられた。
【0034】
次に、生分解の試験を行なった。
【0035】
すなわち、上記の実施例2で得た植物繊維保存剤にジュート麻の織物(6号キャンパス/単糸数26〜27本)を10分間浸漬し、余分な水溶液を取り除いて室内で風乾することによって植物繊維保存剤による処理を行なった後、この織物から30mgの試験片を採取した。
【0036】
一方、比較例1と同様にしてアルカリ処理をせずに酸性を呈するキトサンの銅錯塩を調製し、さらに実施例1と同様に乾燥した後、これを3g、精製水95.5gに氷酢酸1.5gを溶解させたものに少しずつ投入して溶解させることによって、植物繊維保存剤を調製した(これを比較例2とする)。次に、この比較例2の植物繊維保存剤に同様にしてジュート麻の織物を浸漬等して植物繊維保存剤による処理を行なった後、この織物から30mgの試験片を採取した。
【0037】
そしてこれらの試験片について、JIS K 6950(プラスチック−活性汚泥による好気的生分解試験方法)に準拠して生分解度を測定した。尚、比較のために、植物繊維保存剤による処理を行なっていない織物についても同様に生分解の試験を行なった。これらの結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
Figure 0003830035
【0039】
表3にみられるように、比較例2の酸性を呈するキトサンの銅錯塩で処理した織物は生分解を受け易いが、実施例2の弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩で処理した織物は、BODが小さく生分解を受けることが非常に小さく、自然界での安定性を有することが確認される。しかし、実施例2の弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩で処理した織物は生分解を小さいながらも受けるので、自然界に長期間放置されるとやがて分解消失し、環境にいつまでも残存して汚染するようなことがないことも確認される。
【0040】
次に、防腐効力の試験を行なった。
【0041】
すなわち、上記の実施例1で得た植物繊維保存剤にジュート麻の織物(8号キャンパス/単糸数28〜30本)を10分間浸漬し、余分な水溶液を取り除いて室内で風乾することによって植物繊維保存剤による処理を行なった後、この織物から40mm×40mmの大きさの試験片を切り出した。
【0042】
一方、上記の比較例1で得た植物繊維保存剤に同様にしてジュート麻の織物を浸漬等して植物繊維保存剤による処理を行なった後、この織物から40mm×40mmの大きさの試験片を切り出した。
【0043】
そしてこれらの試験片について、JIS K 1570(木材防腐材の効力試験方法)に準拠して防腐効力を測定した。尚、比較のために、植物繊維保存剤による処理を行なっていない織物についても同様に防腐効力の試験を行なった。これらの結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
Figure 0003830035
【0045】
表4にみられるように、実施例1の弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩で処理した織物は、優れた防腐効果を示すものであった。一方、比較例1の酸性を呈するキトサンの銅錯塩で処理した織物は、無処理のものと比較すると防腐効力は高いが、実施例1のものより防腐効力が劣る傾向を有するものであった。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様にして弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩を調製し、さらに実施例1と同様に乾燥した。そしてこれを3g、精製水94gに氷酢酸3gを溶解させたものに少しずつ投入して溶解させることによって、植物繊維保存剤を得た。
【0047】
この植物繊維保存剤にジュート麻の織物(8号キャンパス/単糸数28〜30本)を10分間浸漬し、余分な水溶液を取り除いて室内で風乾することによって植物繊維保存剤による処理を行なった後、この織物から70mm×70mmの大きさの試験片を切り出した。そしてこの試験片の四隅をエポキシ樹脂で固めたものを野外試験に供した。野外試験地は表5に示す9地点を選定し、試験期間は2年間とした。また試験片は各試験地に7枚ずつ用い、比較的湿潤で直射日光の当り難い場所を選定して地中5〜10cmの深さに埋設して試験を行なった。尚、比較のために、植物繊維保存剤による処理を行なっていない織物についても同様に野外試験を行なった。これらの結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
Figure 0003830035
【0049】
表5から明らかなように、実施例3の弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩で処理した織物は質量減少が小さく、十分な防腐効力を有することが確認された。
【0050】
次に、野外試験後の織物の強度試験を行なった。
【0051】
すなわち、実施例3で得た植物繊維保存剤にジュート麻の織物(8号キャンパス/単糸数28〜30本)を10分間浸漬し、余分な水溶液を絞り出して室内で風乾することによって植物繊維保存剤による処理を行なった後、この織物から40mm×40mmの大きさの試験片を切り出した。そしてこの試験片を鹿児島県鹿児島市周辺において上記と同様にして野外試験に供した。
【0052】
一方、比較例1と同様にしてアルカリ処理をせずに酸性を呈するキトサンの銅錯塩を調製し、さらに実施例1と同様に乾燥した後、これを3g、精製水94gに氷酢酸3gを溶解させたものに少しずつ投入して溶解させることによって、植物繊維保存剤を調製した(これを比較例3とする)。次に、この比較例3の植物繊維保存剤に同様にしてジュート麻の織物を浸漬等して植物繊維保存剤による処理を行なった後、この織物から40mm×40mmの大きさの試験片を切り出した。そしてこの試験片を鹿児島県鹿児島市周辺において上記と同様にして野外試験に供した。
【0053】
また、実施例1と同様にして弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩を調製し、さらに実施例1と同様に乾燥した。そしてこれを3g、精製水9gにクエン酸3gを溶解させたものに少しずつ投入して溶解させることによって、植物繊維保存剤を得た(これを参考例4とする)。次に、この参考例4の植物繊維保存剤に同様にしてジュート麻の織物を浸漬等して植物繊維保存剤による処理を行なった後、この織物から40mm×40mmの大きさの試験片を切り出した。そしてこの試験片を鹿児島県鹿児島市周辺において上記と同様にして野外試験に供した。
【0054】
このように実施例3、比較例3、参考例4の植物繊維保存剤による処理を行なった織物を野外試験した後、上記と同様にして引張り強度を測定した。尚、比較のために、植物繊維保存剤による処理を行なっていない織物についても野外試験をした後に同様に引張り強度を測定し、さらにこの植物繊維保存剤による処理を行なっていない織物について野外試験をする前にも同様に引張り強度を測定した。これらの結果を表6に示す。
【0055】
【表6】
Figure 0003830035
【0056】
表6から明らかなように、比較例3の酸性を呈するキトサンの銅錯塩で処理した織物は大きく強度低下しているが、実施例3の弱アルカリ性を呈するキトサンの銅錯塩で処理した織物は屋外に放置しても殆ど強度低下がなく、高い保存性能を有することが確認される。また揮発性有機酸である氷酢酸を用いた実施例3に比較して、非揮発性有機酸であるクエン酸を用いた参考例4のものでは、比較例3ほどの強度低下ではないもの、繊維の引張り強度の低下を引き起こすものであった。
【0057】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る植物繊維保存剤は、キトサンと銅、亜鉛、銀から選ばれる金属の塩とを反応させて得られる酸性イオン基を含有するキトサンの金属錯塩を、アルカリ処理することにより酸性イオン基を中和して除去したものを主体とするものであるので、天然素材であるキトサンと、天然に普通に存在する銅、亜鉛、銀を原料するものであって、植物繊維体に強固に固着して溶脱が少なく、しかも使用目的後に放置されたとしてもやがて生分解されて有害な物質が残存せず、環境汚染のおそれなく使用することができるものである。またキトサンの金属錯塩に結合している酸性イオンはアルカリ処理によって除去されており、酸によって植物繊維が切断されることを防止することができ、植物繊維の強度を低下させることなく保存処理を行なうことができるものである。
【0058】
また、上記のキトサンの金属錯塩を揮発性の弱酸の存在下で水溶性にしたので、植物繊維保存剤を水溶液として使用することができ、植物繊維の繊維製品にこの水溶液を散布したりして、植物繊維を保存剤で容易に処理することができるものであり、しかも無機強酸や非揮発性の有機酸の存在下で水溶性にする場合のような、キトサンの金属錯塩が酸性塩に戻ったり、保存剤で処理した植物繊維に酸が残存したりすることを防ぐことができ、酸によって植物繊維が切断されるようなことを防止することができるものである。

Claims (1)

  1. キトサンと銅、亜鉛、銀から選ばれる金属の塩とを反応させて得られる酸性イオン基を含有するキトサンの金属錯塩を、アルカリ処理することにより酸性イオン基を中和して除去し、このキトサンの金属錯塩を揮発性の弱酸の存在下で水溶性にして成ることを特徴とする植物繊維保存剤。
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