JP5511363B2 - 金属線条体用リール - Google Patents

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Description

本発明は、金属線条体用リールに関する。特に、本発明は、極細金属線条体を巻き付けるリールとして好適な金属線条体用リールに関する。
金属線条体用リールには、金属線条体が巻かれる。金属線条体は、所定の張力で巻かれる。リールの巻胴に大きな締め付け力が作用する。巻胴に大きな巻き圧が作用する。さらに、巻胴に金属線条体が幾重にも巻かれることで、リールのフランジに押し拡げ力が作用する。フランジに大きな側圧が作用する。このフランジの大きな撓みは、巻胴の変形の原因ともなる。
ワイヤソー用極細金属線(ソーワイヤ)の線径は、例えば、0.12mmから0.16mmである。さらに、その線径は、0.12mm以下のものもある。ゴム製品補強用の撚線スチールコードの素線の線径は、0.15mmから0.40mm程度である。この様な極細金属線条体もリールに巻かれる。この極細金属線条体の線径が小さくなるほど、巻きピッチが密になるほど、巻き付け張力が大きくなるほど、また巻き回数が多くなるほど、巻胴に大きな巻圧が作用し、フランジに大きな側圧が作用する。大きな側圧により、フランジが大きく撓む。フランジの撓みが大きいリールでは、巻胴の変形も大きい。巻胴の変形は、極細金属線条体を巻き取る際のハンチングの原因となる。ハンチングは、極細金属線条体の切断の原因となる。フランジの強度及び剛性を確保することを課題とする発明が、特開2006−240865号公報及び特開2007−39202号公報に記載されている。
図4は、従来のリール1を示している。図4(b)は、図4(a)のB−B線に沿った断面である。このリール1では、巻胴2とフランジ3とが溶接で接合されている。このフランジ3には、リブ4及び凹部5が形成されている。このリブ4が形成されているので、フランジ3の強度及び剛性は大きい。この凹部5が形成されているので、フランジ3の質量の増大が抑制されている。このリール1は、強度及び剛性が高く、質量の増大が抑制されている。
特開2006−240865号公報 特開2007−39202号公報
このリール1では、リブ4及び凹部5を備えることで、フランジ3の強度及び剛性の確保と、質量軽減とが両立されている。本発明の目的は、さらに、強度及び剛性が高く、質量の増大が抑制されている金属線条体リールの提供にある。
本発明に係る金属線条体用リールは、外周面に巻き面が形成される巻胴と、この巻胴の端部に接合される一対のフランジとを備えている。このフランジは、径方向外側に位置する案内部を有している。この案内部に複数のリブとこのリブ間に位置する凹部とが、形成されている。このフランジは、凹部に連続して凹部より径方向内側に位置する端面を有している。この凹部の底面から端面に連続する凹部の側面とリブとの境界で最も径方向内側に位置する端の点P2は、巻き面の軸方向延長面上に位置し、又は巻き面よりも径方向外側に位置している。
好ましくは、この金属線条体用リールでは、上記フランジの外径をDとしたとき、
この巻き面の半径Raとリールの軸線L1から点P2まで距離Rpとの差(Rp−Ra)が、以下の関係式を満たす。
0 ≦ (Rp−Ra) ≦ 0.4(0.5D−Ra)
好ましくは、この金属線条体用リールでは、上記凹部が形成されている部分のフランジの最小肉厚Taと、リブが形成されている部分のフランジの最大肉厚Tbとの比(Ta/Tb)は、0.05以上0.67以下である。
本発明に係る金属線条体用リールの質量は従来のリールと同等であり、フランジ部分の撓みは従来のリールより抑制されている。このリールは、従来のリールに比べて、強度及び剛性が高く、質量の増大が抑制されうる。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る金属線条体リールが示された側面図であり、図1(b)は、図1(a)のB−B線に沿った正面断面図である。 図2は、図1の矢印IIで示された部分拡大図である。 図3は、図2の部分が示された説明図である。 図4(a)は、従来の金属線条体リールが示された側面図であり、図4(b)は、図4(a)のB−B線に沿った正面断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1に示されたリール12は、極細線条体であるソーワイヤが巻かれるリールである。図1(b)の左右方向が、このリール12の軸方向である。図1(b)の一点鎖線L1は、リール12の軸線を示している。このリール12は、巻胴14、一対のフランジ16及び芯パイプ18を備えている。この巻胴14の形状は、円筒形状である。巻胴14には、外周面19が形成されている。巻胴14は、例えば、炭素鋼鋼管(STKM)からなる。炭素鋼鋼管が所定の長さに切断されて、巻胴14に用いられうる。
フランジ16には、円板部20、筒部22、案内部24が形成されている。この円板部20に、端面26、芯孔28及び複数の貫通孔30が形成されている。図1の点P1は、この円板部20の中心位置を示している。この点P1は、リール12の軸線L1上に位置している。端面26は、リール12の軸方向外向きに面する平面である。端面26の外形は、点P1を中心とする円形である。芯孔28の中心は、点P1に位置している。貫通孔30は、点P1を中心とする円周上に等間隔で形成されている。
筒部22は、リール12の軸方向内向きに(巻胴14に向かって)起立している。筒部22の形状は、円筒形状である。筒部22の軸線は、リール12の軸線L1に一致している。
案内部24は、円板部20及び筒部22から径方向外側に延びている。案内部24は、筒部22の径方向外側に位置している。この案内部24には、複数の凹部36、複数のリブ38及び縁部40が形成されている。縁部40は、案内部24の径方向外側の端部を形成している。この案内部24には、案内面32が形成されている。この案内面32は、リール12の軸方向内向きに面している。この案内面32は、筒部22の外周面34から縁部40に至る平面である。案内面32は、軸線L1に垂直な平面である。リブ38は、円板部20と縁部40との間に位置している。リブ38は、リール12の軸方向外向きに起立している。リブ38は、案内部24の径方向に延びている。
このフランジ16には、8つのリブ38が形成されている。このリブ38は、フランジ16の円周方向に等間隔で並んでいる。凹部36は、円周方向に隣り合うリブ38の間に形成されている。凹部36は、円板部20と、縁部40と、リブ38との囲まれている。
この凹部36は、リール12の軸方向内向きに凹んでいる。円板部20の端面26は、凹部36の径方向内側に位置している。図2に示されるように、凹部36は、その底面42から立ち上がり端面26に連続する側面44と、底面42から立ち上がり縁部40に連続する側面46を有している。図1及び図2の点P2は、側面44とリブ38との境界で最も径方向内側に位置するリブ38の端に位置する点である。両矢印Rpは、軸線L1(点P1)から点P2までの径方向の距離である。このフランジ16では、端面26の外形は円形である。このリール12では、距離Rpは、端面26の半径より大きくされている。
このフランジ16は、例えば鍛造された炭素鋼鋼材からなる。炭素鋼鋼材が再結晶温度以上の温度に加熱されて、所用の形状に加工される。鍛造により、円板部20、筒部22及び案内部24が成形される。鍛造により、凹部36及びリブ38が成形される。
芯パイプ18の形状は、円筒形状である。この芯パイプ18の外径は、フランジ16の芯孔28の内径に等しい。芯パイプ18は、フランジ16の芯孔28に勘合されている。芯パイプ18は、例えば、炭素鋼鋼管(STKM)からなる。炭素鋼鋼管が所定の長さに切断されて、芯パイプ18に用いられる。
巻胴14の端部にフランジ16の筒部22の端部が溶接されている。巻胴14の外周面19の直径と筒部22の外周面34の直径とが等しい。外周面19から外周面34は、溶接されて、滑らかな一つの外周面を形成している。この外周面19及び外周面34が形成する外周面が、このリール12の巻き面48である。図1の両矢印Raは、この巻き面48の半径を示している。このリール12では、半径Raは、巻胴14の半径でもある。このリール12では、図1に示されるように、半径Raは、距離Rpより小さい。
このリール12では、点P2が、巻き面48の軸方向延長面上に位置している。又は、点P2は、巻き面48よりも径方向外側に位置している。この延長面とは、軸線L1を軸線とし、半径Raの仮想の円周面である。この延長面は、巻き面48を含んでいる。言いかえると、巻き面48の半径Raと、距離Rpとの差(Rp−Ra)は、0mm以上である。これにより、案内部24の撓みが抑制されている。この観点から、差(Rp−Ra)は、以下の関係式を満たすことが好ましい。
0.01(0.5D−Ra) ≦ (Rp−Ra)
更に好ましくは、差(Rp−Ra)は、以下の関係式を満たす。
0.03(0.5D−Ra) ≦ (Rp−Ra)
一方で、距離Rpが大きいフランジ16の質量は大きい。この観点から、差(Rp−Ra)は、以下の関係式をもたすことが好ましい。
(Rp−Ra) ≦ 0.4(0.5D−Ra)
更に好ましくは、差(Rp−Ra)は、以下の関係式を満たす。
(Rp−Ra) ≦ 0.25(0.5D−Ra)
図2の両矢印Taは、凹部36が形成された部分の案内部24の最小肉厚を示している。両矢印Tbは、リブ38が形成された部分の案内部24の最大肉厚を示している。このリール12では、リブ38が形成された案内部24の肉厚は厚く、凹部36が形成された案内部24の肉厚が薄くなっている。これにより、案内部24の質量の増大が抑制されている。この観点から、この比(Ta/Tb)は0.67以下にされることが好ましい。一方で、最小肉厚Taが厚い案内部24は、耐久性に優れる。この観点から、この比(Ta/Tb)は0.05以上にされることが好ましい。更に好ましくは、この比(Ta/Tb)は0.2以上である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された構造を備える実施例1のリールを用意した。このリールの巻胴及び芯パイプは、炭素鋼鋼管(STKM材)が用いられた。フランジは、炭素鋼鋼材が用いられた。このフランジは、鍛造により成形されている。実施例1のリールの各部の寸法は、表1に示されている。
[実施例2から6]
実施例1と同様に図1に示された構造を備える実施例2から実施例6のリールを用意した。実施例2から実施例6のリールは、表1に示された各部の寸法及び重量以外は、実施例1と同様の仕様である。
[比較例1]
図4に示される構造を備える比較例1のリールを用意した。このリールの巻胴及び芯パイプは、実施例1と同じものが用いられた。フランジの形状は、図4に示される形状である。このフランジは、実施例1と同じ炭素鋼鋼材が用いられた。このフランジも、鍛造により成形されている。このフランジの質量は、実施例1のリールと同じである。このリールの各部の寸法は、表1に示されている。
実施例1から6及び比較例1のリールに、ソーワイヤが所定の張力(3.4N)で巻かれた。このソーワイヤの線径は、0.13mmであった。巻き長は、750000mであった。巻きピッチは、0.6mmであった。
実施例1から6及び比較例1のリールについて、ソーワイヤが巻かれる前と巻かれた後との案内部の撓み量が測定された。図3の実線は、ソーワイヤが巻かれる前の案内部が示されている。二点鎖線は、ソーワイヤが巻かれた後の案内部が示されている。図3に示されるように、ソーワイヤが巻かれる前の案内部の測定点S(案合面の径方向外側端)と、ソーワイヤが巻かれた後の測定点Sの位置が測定された。その測定結果が、表1に示されている。
Figure 0005511363
実施例のリールと比較例のリールとは同じ質量であっても、実施例のリールのフランジの撓みは、比較例のリールのそれに比べて小さい。同じ質量でありながら、実施例のリールのフランジの強度及び剛性は、比較例のリールのそれに比べて大きい。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたリールは、金属線条体が巻かれるリールに適用されうる。
12・・・リール
14・・・巻胴
16・・・フランジ
18・・・芯パイプ
19・・・外周面
20・・・円板部
22・・・筒部
24・・・案内部
26・・・端面
28・・・芯孔
30・・・貫通孔
32・・・案内面
34・・・外周面
36・・・凹部
38・・・リブ
40・・・縁部
42・・・底面
44、46・・・側面
48・・・巻き面

Claims (1)

  1. 外周面に巻き面が形成される巻胴と、この巻胴の端部に接合される一対のフランジとを備えており、
    このフランジが鍛造された炭素鋼鋼材からなっており、
    このフランジが径方向外側に位置する案内部を有しており、
    この案内部に複数のリブとこのリブ間に位置する凹部とが形成されており、
    このフランジが凹部に連続して凹部より径方向内側に位置する端面を有しており、
    この凹部の底面から端面に連続する凹部の側面とリブとの境界で最も径方向内側に位置する端の点P2が、巻き面よりも径方向外側に位置しており、
    このリブの軸方向の肉厚が半径方向外側から内側に向かって徐々に厚くなっており、
    この端面がリブより軸方向外側に位置しており、
    この端面の外径が巻き面より半径方向外側に位置しており、
    この凹部が形成されている部分のフランジの最小肉厚Taと、リブが形成されている部分のフランジの最大肉厚Tbとの比(Ta/Tb)が、0.20以上0.33以下であり、
    このフランジの外径をDとしたとき、この巻き面の半径Raと、このリールの軸線L1から点P2まで距離Rpとの差(Rp−Ra)が、以下の関係式を満たす金属線条体用リール。
    0.13(0.5D−Ra)≦ (Rp−Ra) ≦ 0.25(0.5D−Ra)
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